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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024157844
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】釣用ルアーの傘針固定構造及びルアー
(51)【国際特許分類】
   A01K 85/00 20060101AFI20241031BHJP
【FI】
A01K85/00 301A
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023072452
(22)【出願日】2023-04-26
(71)【出願人】
【識別番号】000002439
【氏名又は名称】株式会社シマノ
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100161506
【弁理士】
【氏名又は名称】川渕 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100175824
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 淳一
(72)【発明者】
【氏名】竹本 嘉透
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼下 昌士
(72)【発明者】
【氏名】永井 彬雄
(72)【発明者】
【氏名】浅井 信之介
【テーマコード(参考)】
2B307
【Fターム(参考)】
2B307BA12
2B307BA14
(57)【要約】
【課題】低コストで接着手段を用いない固定手段を採用することができ、傘針自体の環境負荷を低減できる。
【解決手段】角部を有する多角形断面の軸部20と、軸部20の角数の2倍より多い複数の針31を周方向に配置し、複数の針31の内側に中空部30aが形成される傘針30と、を備え、軸部20は、中空部30aに挿入され、隣接する一対の針31の間に形成される溝部30bのうちの少なくとも一つが角部21cのうちの少なくとも一つに係止される構成の釣用ルアーの傘針固定構造を提供する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
角部を有する多角形断面の軸部と、
前記軸部の角数の2倍より多い複数の針を周方向に配置し、前記複数の針の内側に中空部が形成される傘針と、を備え、
前記軸部は、前記中空部に挿入され、
隣接する一対の針の間に形成される溝部のうちの少なくとも一つが前記角部のうちの少なくとも一つに係止される釣用ルアーの傘針固定構造。
【請求項2】
前記軸部の先端部には、前記傘針の抜け出しを規制する規制部を有する、請求項1に記載の釣用ルアーの傘針固定構造。
【請求項3】
前記規制部は前記軸部に嵌合する嵌合部材である、請求項2に記載の釣用ルアーの傘針固定構造。
【請求項4】
前記規制部は、前記中空部より少なくとも一部が大径に変形した断面変形部を有する、請求項2に記載の釣用ルアーの傘針固定構造。
【請求項5】
前記傘針は、前記複数の針に外嵌する嵌合筒を備える、請求項1に記載の釣用ルアーの傘針固定構造。
【請求項6】
前記軸部は、正多角形断面である、請求項1に記載の釣用ルアーの傘針固定構造。
【請求項7】
前記軸部は四角形断面である、請求項1に記載の釣用ルアーの傘針固定構造。
【請求項8】
前記軸部は長方形断面である、請求項1に記載の釣用ルアーの傘針固定構造。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれか1項に記載の釣用ルアーの傘針固定構造を有するルアーであって、
前記軸部の一部が挿入されるルアー本体を備えるルアー。
【請求項10】
前記ルアー本体は、前記軸部の前記ルアー本体側の端部と前記傘針とを離反する方向に付勢する付勢部を備える、請求項9に記載のルアー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、釣用ルアーの傘針固定構造及びルアーに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、エギやスッテと呼ばれるイカ釣り用の疑似餌にはカンナあるいは傘針と呼ばれる、複数の針が放射状に配置されたものが用いられている(例えば、特許文献1参照)。これは、一般的な釣りのように餌を咥えた口に掛けるのではなく、イカがいずれの方向から疑似餌に抱き着いても、確実にイカの足に掛けるためと考えられる。このような傘針においては接着剤で複数の針を軸周りに固定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4555067号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、近年では海洋生分解性の疑似餌が求められている。疑似餌の本体を海洋生分解性の材料で成形することは可能だが、接着強度が低いと傘針が軸に対して回転してしまい、抱き着こうとするイカに対して針先が逃げてしまう恐れがあるため、前述した接着剤を海洋生分解性のあるものに変更することは強度的な点で困難であった。
【0005】
ここで、上述した特許文献1には軸に多角形部を設け、個々の針はそれぞれの角部に回り止め固定されるように配置された傘針が開示されている。特許文献1の構成では、例えば多角形が四角ならその倍の8本しか針を配置できず、10本なら五角形、12本なら六角形の多角形部が軸に必要になる。このような多角形部を軸に加工するのはコストがかかる。また、回り止めはできても、軸方向の抜け止めには接着またはロウ付けや半田付けのような手段が必要となることから、接着等の固定手段でない構造が求められていた。
このように、従来の傘針として、低コスト、かつ傘針自体の環境負荷が小さくなるものが必要とされており、その点で改善の余地があった。
【0006】
本発明は、このような事情に考慮してなされたもので、その目的は、低コストで接着手段を用いない固定手段を採用することができ、傘針自体の環境負荷を低減できる釣用ルアーの傘針固定構造及びルアーを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)本発明に係る釣用ルアーの傘針固定構造の態様1は、角部を有する多角形断面の軸部と、前記軸部の角数の2倍より多い複数の針を周方向に配置し、前記複数の針の内側に中空部が形成される傘針と、を備え、前記軸部は、前記中空部に挿入され、隣接する一対の針の間に形成される溝部のうちの少なくとも一つが前記角部のうちの少なくとも一つに係止されることを特徴としている。
【0008】
本発明に係る釣用ルアーの傘針固定構造の態様1によれば、複数の針のうち一部の針同士の間の溝部を軸部の角部に係止させることで、接着やまたはロウ付けや半田付けのような手段を用いることなく、傘針全体を軸部に対して回り止めさせることができる。また、本発明では、1箇所の角部に対して係止する1箇所の溝部があればよい。すなわち、少なくとも1箇所の溝部を形成する2本の針が設けられていればよく、軸部の断面の角数に関わらず、例えば角部の数の2倍より大きな数の針を配置することができる。
また、本態様1では、軸部を針の本数に合わせた多角形に加工する必要がないので、加工コストを低減できる。
さらに、本態様1では、傘針と軸部との固定に接着剤を使用しない構成となることから、傘針自体の環境負荷を小さくすることができる。
【0009】
(2)本発明の態様2は、態様1の釣用ルアーの傘針固定構造において、前記軸部の先端部には、前記傘針の抜け出しを規制する規制部を有することが好ましい。
【0010】
この場合には、接着剤を使用しない規制部を軸部の先端部に設けることで、傘針の抜け出しを規制することができる。この場合にも、接着剤を使用しないことから、傘針自体の環境負荷を小さくできる。
【0011】
(3)本発明の態様3は、態様2の釣用ルアーの傘針固定構造において、前記規制部は前記軸部に嵌合する嵌合部材であることが好ましい。
【0012】
この場合には、嵌合部材を軸部に嵌合させることで固定でき、軸部に対する傘針の抜け出しを規制することができる。そのため、嵌合部材として、接着剤を使用しない材料で設けることが容易となる。
【0013】
(4)本発明の態様4は、態様2又は態様3の釣用ルアーの傘針固定構造において、前記規制部は、前記中空部より少なくとも一部が大径に変形した断面変形部を有することを特徴としてもよい。
【0014】
この場合には、例えば押し潰し加工や曲げ加工により接着剤を使用しない大径に変形した断面変形部を軸部の先端部に設けることで、傘針の抜け出しを規制することができる。この場合にも、接着剤を使用しないことから、傘針自体の環境負荷を小さくできる。
【0015】
(5)本発明の態様5は、態様1から態様4のいずれか一つの釣用ルアーの傘針固定構造において、前記傘針は、前記複数の針に外嵌する嵌合筒を備えることを特徴としてもよい。
【0016】
この場合には、傘針の複数の針が外周側から嵌合筒によって保持されるので、これら複数の針が環状に維持される。そのため、本発明では、複数の針が外方に広がらないように規制され、傘針における軸部に対する回り止めの機能を十分に発揮できる。
【0017】
(6)本発明の態様6は、態様1から態様5のいずれか一つの釣用ルアーの傘針固定構造において、前記軸部は、正多角形断面であることを特徴としてもよい。
【0018】
この場合には、軸部の中心と周方向に配置される複数の針の中心がずれている場合であっても、少なくとも一つの一対の針(溝部)を少なくとも一つの角部と係止させることができる。
【0019】
(7)本発明の態様7は、態様1から態様6のいずれか一つの釣用ルアーの傘針固定構造において、前記軸部は四角形断面であることを特徴としてもよい。
【0020】
この場合には、プレス加工やワイヤカット加工などで比較的容易な加工方法により軸部の断面を加工することができる。
【0021】
(8)本発明の態様8は、態様1から態様7のいずれか一つの釣用ルアーの傘針固定構造において、前記軸部は長方形断面であることを特徴としてもよい。
【0022】
この場合には、軸部の中心と複数の針の中心を揃えても複数の角部に複数の溝部を係止することができる。
【0023】
(9)本発明に係るルアーの態様9は、態様1から態様8のいずれか一つの釣用ルアーの傘針固定構造を有するルアーであって、前記軸部の一部が挿入されるルアー本体を備えることを特徴としている。
【0024】
本発明に係るルアーの態様9によれば、上述した効果を有する傘針固定構造を備えた優れたルアーを提供できる。
【0025】
(10)本発明の態様10は、態様9のルアーにおいて、前記ルアー本体は、前記軸部の前記ルアー本体側の端部と前記傘針とを離反する方向に付勢する付勢部を備えることを特徴としてもよい。
【0026】
この場合には、傘針を付勢部の付勢力によって軸部に設けられる規制部側に向けて押し付けることができる。これにより、傘針の軸部に沿う軸方向への振れを抑制でき、しかも付勢部の付勢力による押し付けによって傘針の回転を規制できる。
【発明の効果】
【0027】
本発明に係る釣用ルアーの傘針固定構造及びルアーによれば、低コストで接着手段を用いない固定手段を採用することができ、傘針自体の環境負荷を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】本発明の実施形態によるルアーを示す側面図である。
図2図1に示すルアーの尾部の一部を示す拡大斜視図である。
図3図1に示すルアーの尾部の一部を示す水平断面図である。
図4】軸部に固定した傘針の斜視図である。
図5図4に示す傘針を後方から見た図である。
図6】第1変形例によるルアーの尾部の一部を示す水平断面図である。
図7】第2変形例によるルアーの尾部の一部を示す水平断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明に係る釣用ルアーの傘針固定構造及びルアーの実施形態について図面を参照して説明する。なお、各図面において、各構成部材を視認可能な大きさとするために必要に応じて各構成部材の縮尺を適宜変更している場合がある。
【0030】
図1図3に示すように、実施形態のルアー1(釣用ルアー)は、魚釣り用として使用され、生分解性樹脂製の素材から形成されたエビの形態を摸したルアー、いわゆるエギを一例とする。なお、本実施形態のルアー1の生分解性樹脂としては、酢酸セルロースやPHA(ポリヒドロキシアルカノエート)が採用できる。特に、PHAの中でもP3HB(ポリ[(R)-3-ヒドロキシブチレート])やその共重合体であるP3HB4HB(ポリ[(R)-3-ヒドロキシブチレート-co-4-ヒドロキシブチレート])、P3HBV(ポリ[(R)-3-ヒドロキシブチレート-co-(R)-3-ヒドロキシバレレート])、P3HBH(ポリ[(R)-3-ヒドロキシブチレート-co-(R)-3-ヒドロキシヘキサノエート])などは海水中での生分解性(海洋生分解性)に優れており、これらを採用することが望ましい。
【0031】
ここで、ルアー1において、頭部と尾部とが一直線上に結ぶ方向を前後方向X1とし、頭部側を前方、前側とし、尾部側を後方、後側と定義する。また、上方から見て、前後方向X1と直交する横方向を左右方向X2と定義して以下説明する。
【0032】
ルアー1は、二分割された一対のボディ10A、10Bを接合するルアー本体10と、ルアー本体10の後端部10bに突設され、ルアー本体10の前後方向X1に沿う中心軸O1に軸方向を向けてルアー本体10に一部が挿入される軸部20と、軸部20におけるルアー本体10の外方側に設けられる傘針30と、を備えている。
【0033】
ルアー本体10は、魚を模擬した流線形状に形成され、半割の一対のボディ10A、10Bの周縁部10d同士を接着又は溶着等で接合して一体的に形成される。ルアー本体10は、頭部11と、胴部12と、尾部13と、が一体で設けられる。なお、頭部11、胴部12および尾部13は、それぞれ分割されて、各部同士が左右方向X2に揺動自在に設けられていてもよい。図1において、紙面左側がルアー本体10の頭部11側の前端部10aであり、紙面右側がルアー本体10の尾部13側の後端部10bである。
【0034】
ルアー本体10は、前後方向X1の中央部10eで断面が最も大きくなる形状をなしている。すなわち、ルアー本体10は、前端部10aから中央部10eに向けて太くなり、中央部10eから後端部10bに向かうに従い先細る形状で、全体が滑らかな曲線を形成している。
【0035】
ルアー本体10の胴部12は、中空部100を形成している。頭部11及び尾部13は、中実であり、全体が生分解性樹脂からなる。
一対のボディ10A、10Bの中空部100に面する内面10cには、中空部100に向けて突出する補強リブ14が設けられている。補強リブ14は、上下方向に延び、リブ面14aを前後方向X1に交差させて配置されている。補強リブ14を設けることにより、生分解性樹脂製の素材から形成されるボディ10A、10Bが補強される。そのため、ルアー本体10は、外圧に耐え得るように強度が高められる。
【0036】
図2及び図3に示すように、軸部20は、ルアー本体10の尾部13における後端部10bにおいて、左右一対のボディ10A、10Bによって挟まれた状態で取り付けられる。すなわち、軸部20の一部は、ボディ10A、10Bの中空部100に挿入されている。軸部20は、軸本体21と、ボディ10A、10B内に位置する軸本体21の挿入端部21a(挿入部分)から径方向両側に突出する突出部22(22A、22B)と、を有する。軸部20の後端は、平面視してT型に形成される。軸部20の軸本体21及び突出部22の断面は、矩形である。
【0037】
突出部22A、22Bは、矩形断面をなし、平面視して軸本体21の軸方向に垂直に延びる。突出部22A、22Bの突出端22aは、ルアー本体10の側面(周縁部10d)に露出しない長さである。突出部22A、22Bは、それぞれボディ10A、10Bに係合する。突出部22A、22Bは、それぞれボディ10A、10Bの周縁部10dから所定距離をあけて配置される。
【0038】
軸本体21のルアー本体10から後方に露出する後端部には、二つの傘針30A、30Bが装着されている。軸本体21の先端部21bは、ルアー本体10側と反対側に配置される傘針30Bの先端部とほぼ同じ位置となる。
【0039】
ルアー本体10の後端部10bには、それぞれ軸部20を係合する係合穴15を有する。係合穴15は、前後方向X1に沿って延びて軸部20が係合する第1係合孔151と、左右方向X2に延びて突出部22が係合する第2係合孔152と、を備えている。第1係合孔151および第2係合孔152は、それぞれ矩形断面をなしている。第1係合孔151は、軸部20と同断面形状の孔部である。第2係合孔152は、突出部22と同断面形状の孔部である。ルアー本体10に挿入される軸部20を係合穴15に係合させることで固定強度を高める構成となるので、一対のボディ10A、10Bの材質の制限がなくなり、生分解性樹脂製の素材で形成することができる。
【0040】
また、図4及び図5に示すように、軸部20の軸本体21は、角部21cを有する四角形断面(多角形断面)である。具体的に軸本体21は、長方形断面である。
【0041】
図1図3に示すように、一対のボディ10A、10Bの尾部13における周縁部10dには、周方向に延在する環状部材16が外嵌する。環状部材16は、少なくとも軸部20の外周側の位置に配置される。一対のボディ10A、10Bの周縁部10dには、周方向に延びる凹溝17が設けられている。凹溝17に環状部材16が嵌合する。一対のボディ10A、10Bは、凹溝17に環状部材16が嵌合することで、外周側から押さえられて分離が抑制される。
【0042】
図1に示すように、ルアー本体10の前端部10aには、釣り糸取付け軸部40が設けられている。釣り糸取付け軸部40は、前端に釣り糸が接続される環状の釣り糸係止部41を備え、後端に頭部11に挿入された状態で係合する環状の係合環42を備える。ルアー本体10の頭部11には、釣り糸取付け軸部40の後側部分を挿入させて固定する挿入部18を有する。挿入部18は、ルアー本体10の前端部10aから後方に延びる挿入孔181と、挿入孔181の奥側には釣り糸取付け軸部40の係合環42を係合する係合穴部182と、を有する。釣り糸取付け軸部40は、一対のボディ10A、10Bに挟持された状態で非接着で螺子固定でなく挿入部18に係合することで固定されている。
【0043】
図2及び図3に示すように、二つの傘針30A,30Bは、軸部20の軸方向に直列に配置される。図4及び図5に示すように、傘針30A,30Bは、それぞれ軸本体21の角数の2倍より多い複数の針31を軸本体21の周方向に配置し、これら複数の針31の内側に中空部30aを形成している。すなわち、本実施形態の傘針30の針31の本数は、軸本体21の4つの角部21cの2倍の角数である8つより多い9本が設けられている。周方向に配置される9本の針31同士は、周方向に接している。隣接する一対の針31、31の間の内周側に形成される溝部30bのうちの少なくとも一つ(ここでは4つ)が軸本体21の角部21cのうちの少なくとも一つに係止される。つまり軸本体21の角部21cが隣接する針31同士の間の溝部30bに嵌った状態となり、これにより複数の針31が固定される。
【0044】
各針31は、鋭角に屈曲し、屈曲部31aを有する。傘針30は、屈曲部31aに係止させ、複数の針31に外嵌する嵌合筒32を備える。傘針30は、嵌合筒32によって軸本体21の周囲に配置される複数の針31が外周側から保持されることで、これら複数の針31が固定される。
【0045】
次に、このように構成されるルアー1の傘針固定構造及びルアー1の作用について、図1図6に基づいて詳細に説明する。
本実施形態による釣用ルアーの傘針固定構造では、角部21cを有する四角形(長方形)断面の軸部20と、軸部20の軸本体21の角数の2倍より多い複数の針31を周方向に配置し、複数の針31の内側に中空部30aが形成される傘針30と、を備える。軸部20は、中空部30aに挿入され、隣接する一対の針31の間に形成される溝部30bのうちの少なくとも一つが角部21cのうちの少なくとも一つに係止される。
【0046】
本実施形態では、複数の針31のうち一部の針31同士の間の溝部30bを軸部20の角部21cに係止させることで、接着やまたはロウ付けや半田付けのような手段を用いることなく、傘針30全体を軸部20に対して回り止めさせることができる。また、本実施形態では、1箇所の角部21cに対して係止する1箇所の溝部30bがあればよい。すなわち、少なくとも1箇所の溝部30bを形成する2本の針31が設けられていればよく、軸部20の断面の角数に関わらず、例えば角部21cの数の2倍より大きな数の針31を配置することができる。
なお、中空部30aと軸部20の間には充填剤が充填されていてもよい。これにより溝部30bと角部21cのずれを防ぐことができる。
【0047】
また、本実施形態では、軸部20を針31の本数に合わせた多角形に加工する必要がないので、加工コストを低減できる。
さらに、本実施形態では、傘針30と軸部20との固定に接着剤を使用しない構成となることから、傘針30自体の環境負荷を小さくすることができる。
【0048】
また、本実施形態では、傘針30は、複数の針31に外嵌する嵌合筒32を備える。このように構成することで、傘針30の複数の針31が外周側から嵌合筒32によって保持されるので、これら複数の針31が環状に維持される。そのため、本実施形態では、複数の針31が外方に広がらないように規制され、傘針30における軸部20に対する回り止めの機能を十分に発揮できる。
【0049】
さらに、本実施形態では、軸部20が正多角形断面である。この場合には、軸部20の中心と周方向に配置される複数の針31の中心がずれている場合であっても、少なくとも一つの一対の針31(溝部30b)を少なくとも一つの角部21cと係止させることができる。
【0050】
また、本実施形態では、軸部20は四角形断面であることを特徴としてもよい。これにより、プレス加工やワイヤカット加工などで比較的容易な加工方法により軸部20の断面を加工することができる。
【0051】
また、本実施形態では、軸部20は長方形断面であるので、軸部20の中心と複数の針31の中心を揃えても複数の角部21cに複数の溝部30bを係止することができる。
【0052】
上述のように構成された本実施形態による釣用ルアーの傘針固定構造及びルアーでは、低コストで接着手段を用いない固定手段を採用することができ、傘針30自体の環境負荷を低減できる。
【0053】
(第1変形例)
次に、図6に示すように、第1変形例によるルアー1Aは、軸部20の軸本体21の先端部21bには、傘針30の抜け出しを規制する嵌合部材33(規制部)を有する。嵌合部材33は、円板形状である。嵌合部材33の中心部には、厚さ方向に貫通し、軸本体21に嵌合する長方形状の穴部(図示省略)を有する。すなわち、嵌合部材33は、周方向に配置される複数の針31同士の径方向内側に形成される中空部30aよりも少なくとも一部が大径に変形した断面変形部を有する。嵌合部材33は、軸本体21に対して摩擦接触により嵌合する。なお、嵌合部材33の外径は円形であることに限定されることはなく、例えば正方形などの矩形であってもよい。
【0054】
第1変形例では、接着剤を使用しない嵌合部材33を軸部20の先端部21bに設けることで、傘針30の抜け出しを規制することができる。本変形例では、接着剤を使用しない材料で嵌合部材33を設けることが容易となる。そして、嵌合部材33の嵌合部分においても接着剤を使用せずに固定できるから、傘針30自体の環境負荷を小さくできる。
【0055】
また、第1変形例では、例えば押し潰し加工や曲げ加工により接着剤を使用しない大径に変形した断面変形部を軸本体21の先端部21bに設けることで、傘針30の抜け出しを規制することができる。
【0056】
なお、第1変形例では、嵌合部材33を規制部としているが、他の形態、形状の規制部を採用することも可能である。例えば、軸本体21の先端部21bに螺合させて取り付ける規制部であってもよい。
【0057】
(第2変形例)
次に、図7に示すように、第2変形例によるルアー1Bは、軸部20のルアー本体10側の端部(突出部22)と傘針30とを離反する方向に付勢するコイルばね34(付勢部)を備える。コイルばね34は、軸部20の軸本体21に被せた状態で、ルアー本体10内で突出部22と傘針30との間に配置される。コイルばね34は、一端34aが突出部22に係止し、他端34bが傘針30(30A)に係止している。軸本体21の先端部21bには、第1変形例の嵌合部材33が設けられている。
【0058】
第2変形例では、傘針30をコイルばね34の付勢力によって軸部20の軸本体21に設けられる嵌合部材33側に向けて押し付けることができる。これにより、傘針30の軸部20に沿う軸方向への振れを抑制でき、しかもコイルばね34の付勢力による押し付けによって傘針30の回転を規制できる。
【0059】
なお、第2変形例では、付勢部としてコイルばね34が採用されているが、コイルばね34に代えて他のばね部材を採用することも可能である。また、付勢部の取り付け位置も、本第2変形例に限定されることはない。
【0060】
以上、本発明による釣用ルアーの傘針固定構造及びルアーの実施形態を説明したが、これらの実施形態は例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。実施形態は、その他様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。実施形態やその変形例には、例えば当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、均等の範囲のものなどが含まれる。
【0061】
例えば、上記実施形態では、ルアー1の軸部20の断面形状として、四角形をなす長方形断面を採用し、傘針30の針31の本数を9本設けた構成の一例を示しているが、軸部20の断面形状や傘針30の針31の本数はこれに限定されることはない。要は、軸部は多角形断面であればよく、また針の本数は軸部の角数の2倍より多い本数が設けられていればよいのである。
【0062】
また、本実施形態では、二つの傘針30A,30Bを直列に配置した構成としているが、傘針30の数量は限定されず、例えば一つの傘針30であってもよい。
さらに、傘針30には、複数の針31を外周側から保持する嵌合筒32を設けた構成としているが、複数の針31が連結した状態で維持される構成であればよく、例えば紐状の部材で囲む構成であってもよい。
【0063】
また、ルアーの形状も、上記の実施形態に限定されることはない。例えば、ルアー本体10に設けられる係合穴15(係合部)は、一対のボディ10A、10Bの両方に設けられているが、いずれか一方のボディのみに係合部が設けられる構成であってもよい。
また、本実施形態では、ルアー本体10の内面10cに中空部100に突出する補強リブ14の形状、数量、向き等の構成は、適宜変更可能である。また、補強リブ14を省略することも可能である。
【0064】
また、本実施形態では、ルアー本体10の素材として、生分解性樹脂により形成された構成としているが、他の素材を採用することもできる。例えば、従来のように樹脂製や金属製で、従来よりも厚みを薄くかつ軽量な部材を採用することが可能である。
【符号の説明】
【0065】
1、1A、1B ルアー
10 ルアー本体
10A、10B ボディ
11 頭部
12 胴部
13 尾部
20 軸部
21 軸本体
21b 先端部
21c 角部
22 突出部(端部)
30、30A、30B 傘針
30a 中空部
30b 溝部
31 針
32 嵌合筒
33 嵌合部材(規制部)
34 コイルばね(付勢部)
X1 前後方向
X2 左右方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7