(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024157846
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】車両挙動計測装置
(51)【国際特許分類】
G01M 17/007 20060101AFI20241031BHJP
G01P 15/18 20130101ALI20241031BHJP
G01M 17/02 20060101ALI20241031BHJP
【FI】
G01M17/007 J
G01P15/18
G01M17/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023072456
(22)【出願日】2023-04-26
(71)【出願人】
【識別番号】000004695
【氏名又は名称】株式会社SOKEN
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】安木 佑介
(72)【発明者】
【氏名】重岡 恵二
(72)【発明者】
【氏名】石川 朝幸
(57)【要約】
【課題】車両の挙動と車輪の挙動とを正確に同期させて車両の状態の解析に用いる情報を取得できる車両挙動計測装置を実現する。
【解決手段】車両挙動計測装置は、GPS信号を参照して第1の同期信号を生成する第1の同期信号生成部20と、車両10の挙動を検出して車両挙動信号を出力する車両挙動検出部22と、前記第1の同期信号に同期して前記車両挙動信号を記録する第1の記録部24と、を有する制御基板12と、GPS信号を参照して第2の同期信号を生成する第2の同期信号生成部28と、車輪16の状態を検出して車輪状態信号を出力する車輪状態検出部30と、前記ホイールの回転角を検出して回転角信号を記録する慣性記録装置34と、前記第2の同期信号に同期して前記車輪状態信号および前記回転角信号を記録する第2の記録部36と、を有する計測基板14を備え、前記第1の同期信号と前記第2の同期信号とは、同期している、ことを特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両内部に設置される制御基板と、
ホイールまたはハブユニットに設置される計測基板と、
を備え、
前記制御基板は、
GPS信号を参照して第1の同期信号を生成する第1の同期信号生成部と、
車両の挙動を検出して車両挙動信号を出力する車両挙動検出部と、
前記第1の同期信号に同期して前記車両挙動信号を記録する第1の記録部と、
を有し、
前記計測基板は、
GPS信号を参照して第2の同期信号を生成する第2の同期信号生成部と、
車輪の状態を検出して車輪状態信号を出力する車輪状態検出部と、
前記ホイールの回転角を検出して回転角信号を記録する慣性記録装置と、
前記第2の同期信号に同期して前記車輪状態信号および前記回転角信号を記録する第2の記録部と、
を有し、
前記第1の同期信号と前記第2の同期信号とは、同期している、
ことを特徴とする車両挙動計測装置。
【請求項2】
前記第1の同期信号生成部は、前記第1の同期信号をアナログデータに変換するデジタルアナログ変換処理を行う、
ことを特徴とする請求項1に記載の車両挙動計測装置。
【請求項3】
前記慣性記録装置は、前記ホイールの回転軸中心に配置される、
ことを特徴とする請求項1に記載の車両挙動計測装置。
【請求項4】
前記ハブユニットに固定されるアダプタをさらに有し、
前記アダプタは、
先端に凸部を有する円筒形状の部材であり、
車軸の先端のねじ山部に締結され、
前記ハブユニットに固定する側に開口部を有し、
当該開口部に
前記ねじ山部に対応するめねじ山と、
前記めねじ山よりも前記ハブユニットから遠位側に前記めねじ山よりも径が大きい逃がし部と、
を有し、
前記ホイールを装着したときに、前記凸部が前記ホイールの平面部から突出する長さを有し、
前記ホイールを装着したときに、前記凸部に前記計測基板が固定される、
ことを特徴とする請求項1に記載の車両挙動計測装置。
【請求項5】
前記第1の同期信号生成部および前記第2の同期信号生成部は、それぞれ内部タイマーを有し、前記GPSのPPS信号を受信すると、それぞれ前記内部タイマーをリセットする、
ことを特徴とする請求項1に記載の車両挙動計測装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両および車輪の挙動を計測する車両挙動計測装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両の挙動と車輪の挙動とを計測して、車両の状態の解析に用いられる情報を取得する車両挙動計測装置が知られている。車両の状態を解析するためには、まず、車輪の挙動を精度良く検出する必要がある。そのため、検出方法や、検出したデータの受け渡し方法など、様々な工夫を加えた技術が提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、車軸6分力計のスリップリング支持機構が開示されている。特許文献1では、ナックルやアクスルケースのような車軸部材にスリップリングを連結支持させることにより、スリップリングの初期水平設定や取付作業が容易となり、車輪の挙動の測定精度も向上させることが可能とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、車両の状態をより正確に解析するためには、車両および車輪の挙動を精度良く検出することに加え、それぞれの挙動を示すデータを正確に同期させて利用することが必要である。ここで、車両の挙動と車輪の挙動とを同期させるときに、車輪の挙動を示すデータを車両側に伝送し、車両と車輪とのデータを揃えた上で解析が行われることがある。このデータの伝送を無線で行う場合には、送信速度に起因する計測チャネル数やサンプリング数の制約などの問題が発生し得る。また、データの伝送を有線で行う場合には、重量の増加や実装における工数の増加などの問題が発生し得る。
【0006】
そこで、無線や有線によらずに、車両の挙動と車輪の挙動とを正確に同期させて車両の状態の解析に用いる情報を取得できる車両挙動計測装置を実現する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本明細書で開示する車両挙動計測装置は、車両内部に設置される制御基板と、ホイールまたはハブユニットに設置される計測基板と、を備え、前記制御基板は、GPS信号を参照して第1の同期信号を生成する第1の同期信号生成部と、車両の挙動を検出して車両挙動信号を出力する車両挙動検出部と、前記第1の同期信号に同期して前記車両挙動信号を記録する第1の記録部と、を有し、前記計測基板は、GPS信号を参照して第2の同期信号を生成する第2の同期信号生成部と、車輪の状態を検出して車輪状態信号を出力する車輪状態検出部と、前記ホイールの回転角を検出して回転角信号を記録する慣性記録装置と、前記第2の同期信号に同期して前記車輪状態信号および前記回転角信号を記録する第2の記録部と、を有し、前記第1の同期信号と前記第2の同期信号とは、同期している、ことを特徴とする。
【0008】
上記の構成によれば、第1の同期信号と第2の同期信号とは、同期している。すなわち、第1の同期信号に同期して車両挙動信号を記録する第1の記録部と、第2の同期信号に同期して車輪状態信号および回転角信号を記録する第2の記録部と、に記録されたデータは、GPS信号から得られた同じ同期信号で記録される。したがって、車両の挙動と、車輪状態および回転角から得られる車輪の挙動と、を正確に同期できる。
【0009】
また、前記車両挙動計測装置の前記第1の同期信号生成部は、前記第1の同期信号をアナログデータに変換するデジタルアナログ変換処理を行う、ことを特徴とする。
【0010】
上記の構成によれば、アナログデータの同期信号が得られ、各種のセンサで車両挙動を検出する際にこの同期信号を利用することができる。
【0011】
また、前記車両挙動計測装置の前記慣性記録装置は、前記ホイールの回転軸中心に配置される、ことを特徴とする。
【0012】
上記の構成によれば、慣性記録装置をホイールの回転軸中心に配置することで、偏心や遠心力の影響を受けることが抑えられる。
【0013】
また、前記車両挙動計測装置は、前記ハブユニットに固定されるアダプタをさらに有し、前記アダプタは、先端に凸部を有する円筒形状の部材であり、車軸の先端のねじ山部に締結され、前記ハブユニットに固定する側に開口部を有し、当該開口部に前記ねじ山部に対応するめねじ山と、前記めねじ山よりも前記ハブユニットから遠位側に前記めねじ山よりも径が大きい逃がし部と、を有し、前記ホイールを装着したときに、前記凸部が前記ホイールの平面部から突出する長さを有し、前記ホイールを装着したときに、前記凸部に前記計測基板が固定される、ことを特徴とする。
【0014】
上記の構成によれば、計測基板のより安定した設置が可能となる。
【0015】
また、前記車両挙動計測装置の前記第1の同期信号生成部および前記第2の同期信号生成部は、それぞれ内部タイマーを有し、前記GPSのPPS信号を受信すると、それぞれ前記内部タイマーをリセットする、ことを特徴とする。
【0016】
上記の構成によれば、GPSから受信したクロックによりリセットされることで、内部タイマーによる累積する時刻のずれが抑えられる。
【発明の効果】
【0017】
本明細書で開示の車両挙動計測装置によれば、無線や有線によらずに、車両の挙動と車輪の挙動とを正確に同期させて車両の状態の解析に用いる情報を取得できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】車両挙動計測装置の全体構成を模式的に示す図である。
【
図4】専用アダプタを設置した状態を示す概略平面図である。
【
図5】
図4に示す専用アダプタの断面を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照して車両挙動計測装置について説明する。なお、各図において、「Fr」、「Up」、および、「Rh」は、それぞれ、車両前方、上方、および、右側方を示している。
【0020】
図1は、車両挙動計測装置の全体構成を模式的に示す図である。実施形態の車両挙動計測装置は、車両の挙動と車輪の挙動とをそれぞれ記録し、車両と車輪とのそれぞれにおいて生成した同期信号を同期させて記録を利用する装置である。車両挙動計測装置は、車両10に設けられ、制御基板12と、計測基板14と、を備える。制御基板12は、車両10の内部、すなわち、車体上の適切な位置(例えば、コンソールボックスの近傍)に設置される。一方、計測基板14は、車輪16に設置される。より詳しくは、計測基板14は、ホイールまたはハブユニットに固定される。
【0021】
図1に示すように、車両10の内部には、第1の制御部18と、第1の同期信号生成部20と、を有する制御基板12に加えて、車両挙動検出部22も設けられる。第1の制御部18は、マイクロコンピュータなどから構成されたECU(Electronic Control Unit)を含んで構成され、制御基板12の各部の動作を制御する。
図1に示すように、第1の同期信号生成部20は、GPS信号を受信して、第1の同期信号を生成する。車両挙動検出部22は、車両の挙動を検出して、車両挙動信号を出力する。ここで、車両挙動信号とは、例えば、車両10の前後、左右、および、上下方向にかかる加速度をそれぞれ計測可能な3軸加速度センサ(図示なし)などから構成される挙動センサ(図示なし)が検出した車両10の挙動を表す信号である。制御基板12は、さらに第1の記録部24を有する。第1の記録部24は、車両挙動検出部22で検出された車両挙動信号を第1の同期信号に同期して記録する。なお、制御基板12は、上記以外の車載機器を制御するための機能を有してもよい。
【0022】
次に、計測基板14について説明する。
図1においては、計測基板14の構成を破線で囲んだA部に示している。
図1のA部に示すように、計測基板14は、第2の制御部26と、第2の同期信号生成部28と、車輪状態検出部30と、慣性記録装置34と、第2の記録部36と、を有する。第2の制御部26は、マイクロコンピュータなどから構成されたECUを含んで構成され、計測基板14の各部の動作を制御する。第2の同期信号生成部28は、GPS信号を受信して、第2の同期信号を生成する。ここで、第2の同期信号生成部28が生成する第2の同期信号と、上記した第1の同期信号生成部20が生成した第1の同期信号とは、それぞれ独立して生成されるが、同じGPS信号に基づいて生成するため、両者は正確に同期している。
【0023】
車輪状態検出部30は、車輪16の状態を検出して車輪状態信号を出力する。ここで、車輪状態信号とは、車輪16に設けられたセンサ32が検出した車輪16の状態を表す信号である。具体的には、例えば、ホイールとハブとの締結面にセンサ32が設けられる場合には、センサ32は面圧センサとして、タイヤの空気圧や、ホイールの歪みなどの状態を検出する。
【0024】
慣性記録装置34は、ジャイロセンサとも呼ばれる角速度センサであって、ホイールの回転角を検出して回転角信号を記録する。ホイールは回転体であるため、各信号を検出したときに検出された値は、ホイールがどの位置にあった時の値であるかを把握することが必要である。そのため、本例においては、ホイールの回転角の検出機能を有する慣性記録装置34を設けている。また、慣性記録装置34は、ホイールの回転軸中心に配置される。一般に、ホイールの回転角などの角度の検出の精度を高めるためには、ロータリエンコーダを設けることがある。しかし、体格が大きくなるというデメリットもあるため、本例においては、慣性記録装置34をホイールの回転軸中心(言い換えると、計測基板14の略中央)に配置する構成としている。
【0025】
第2の記録部36は、第2の同期信号に同期して、車輪状態信号および回転角信号を記録する。第2の記録部36は、例えば、マイクロSDなどの不揮発性のメモリである。
【0026】
例えば、第1の記録部24および第2の記録部36は、データの格納や蓄積を行う機器であるデータロガーであってもよい。第1の制御部18は、車両のデータロガーである第1の記録部24に、第1の同期信号および車両挙動信号を記録させる。また、第2の制御部26は、車輪16のデータロガーである第2の記録部36に、センサ32から車輪の状態を示す信号および慣性記録装置34からのホイールの回転角を示す信号を記録させる。なお、センサ32からの検出信号は、通常アナログ信号であり、アンプなどで所定の増幅をした後、アナログ・デジタル変換し、デジタルデータとして第2の記録部36に記録される。そして、走行終了後に、第1の制御部18が、第2の記録部36からデータを受け取り、第1の記録部24と第2の記録部36とのデータを照合する。このとき、第1の同期信号と第2の同期信号とは同期しているため、車両挙動計測装置は、車両の状態の解析に用いられる精度の良い情報の取得が可能となる。なお、車両状態の解析は、外部のコンピュータなどによって行ってもよい。
【0027】
次に、
図2,3を参照して、第1の同期信号生成部20および第2の同期信号生成部28でそれぞれ生成される同期信号について説明する。
図2は、車輪の計測基板の構成を示す回路図である。また、
図3は、車両の制御基板の構成を示す回路図である。
【0028】
GPS信号は、緯度、経度、時刻、などの情報を得ることのできるNMEA信号と、原子時計を基とする1秒間に1つ出力される正確なPPS信号と、を含む。
図2に示すように、本例では、この2種類の信号からの時間に関する情報を参照し、かつ、2つのタイマー38,40を用いることにより同期信号(すなわち、
図2においては、第2の同期信号)を生成する。
【0029】
図2に示すように、NMEA信号は、時刻解析部42に入力される。NMEA信号は、時刻についての情報を含み、時刻解析に用いられるため、時刻解析部42から秒以上の時刻を表す信号が出力される。
【0030】
PPS信号は、タイマー38に入力される。PPS信号の入力(例えば、立ち上がりエッジ)は、タイマー38においてリセットに用いられる。タイマー38は、100MHzの内部クロックをカウントし、1秒ごとにオーバーフローする。また、PPS信号により、1秒経過したらリセットされる。したがって、PPS信号による1秒間のカウント値がタイマー38に得られ、これが秒未満の信号として現在時刻演算部46に供給される。
【0031】
さらに、タイマー38からのオーバーフロー出力は、他端にPPS信号が入力されるOR回路38aに入力される。このため、OR回路38aからは、タイマー38のオーバーフロー出力またはPPS信号という同期した1Hzの信号が出力され、これが現在時刻演算部46に供給される。
【0032】
このように、タイマー38は、PPS信号により1秒ごとにリセットされるため、内部クロックの誤差は1秒以上累積されることはない。すなわち、GPS信号(具体的には、PPS信号)によりリセットされることで、内部タイマーによる累積する時刻のずれが抑えられる。
【0033】
タイマー40は、センサ32で検出されたアナログ信号をデジタル信号に変換するAD変換用に設けたタイマーである。タイマー40では、100MHzの内部クロックをカウントし、100,000になったことでオーバーフローする。したがって、1kHzの信号をオーバーフロー端子から出力する。そして、この1kHzの信号が、ADコンバータ44にサンプリングクロックとして供給される。したがって、ADコンバータ44は、入力されてくるセンサからの信号1およびセンサからの信号2という2つのアナログ信号を1kHzのサンプリングクロックに同期してAD変換し、デジタル信号として出力する。ADコンバータ44の出力は、第2の記録部36に供給されて記録される。この第2の記録部36には、現在時刻演算部46からGPS信号に基づいて生成された正確な時刻信号が供給されており、ADコンバータ44から供給されるデジタル信号が時刻に対応付けて保存される。すなわち、現在時刻演算部46からの時刻信号に同期して、センサからの信号1,2が記録される。すなわち、現在時刻演算部46から出力された信号が、第2の同期信号であるといえる。
【0034】
次に、
図3を用いて、車両10の制御基板12の構成を説明する。なお、
図2と共通の構成については、適宜説明を省略する。
図3においては、制御基板12は、タイマー40の出力先をDAコンバータ48としている。タイマー40から出力された1kHzの信号は、デジタル信号をアナログ信号に変換するDAコンバータ48においてサンプリングクロックとして用いられる。DAコンバータ48は、現在時刻演算部46から供給される時分秒を示す時刻信号を、アナログ信号に変換する。この例では、DAコンバータ48は、現在時刻のデジタル信号から、分、秒、および、ミリ秒(ms)の3つのアナログ信号を出力する。DAコンバータ48の出力は、他の車載センサや、車載制御部に供給され、ここで各種信号処理に利用される。言い換えると、第1の同期信号生成部20は、第1の同期信号として、アナログ信号の同期信号を生成する。これは、車両挙動の詳細な計測や解析には、デジタルデータではなくアナログデータでの計測が多いことに対応するためである。このように、DAコンバータ48からアナログの同期信号を出力することで、アナログ信号を取り扱う機器において、GPS信号からの正確な同期信号に基づいて計測や解析を行うことができる。なお、DAコンバータ48のアナログ出力は、BNCなどで出力することができる。
【0035】
また、DAコンバータ48の出力は、フルレンジ(例えば、0-5V)ではなく、最大電圧を抑えてよい。例えば、5V電源の出力を有していた制御基板12の出力が、何らかの影響で、4.95Vに低下してしまった場合に、時刻信号が0-4.95Vに制約され、出力である同期信号が変化してしまうことを考慮するためであり、例えば、0-4Vで変換することで、出力の安定性を高めている。本例では、計測中は、Wi-Fiによる無線通信は行わない。すなわち、計測中は、計測基板14の第1の記録部24などで記録するため、送信速度に起因するチャネル数やサンプリング数の制約なしに、所望する仕様での計測が可能となる。
【0036】
次に、
図4,5を参照して、計測基板14の車輪16への締結について説明する。
図4は、専用アダプタを設置した状態を示す概略平面図である。また、
図5は、
図4に示す専用アダプタの断面を模式的に示す図である。
【0037】
計測基板14は、ノイズの影響を考慮すると、車輪16の挙動を検出しているセンサ32の近傍(例えば、ホイールまたはハブユニット)に固定して用いるのがよい。しかし、例えば、ホイールの仕様の違いによるホイールの歪みの差異を検出する場合には、計測対象であるホイールに接触しない方がよい。そこで、本例では、車両により仕様に大きな差のないハブ部に着目した。具体的には、ハブを固定するハブロックナットに代わり、専用のアダプタを設けて、ホイールに接触しない構成とした。
【0038】
図4では、専用アダプタ50を濃墨部分として示している。
図4に示すように、専用アダプタ50は、車軸52の先端のねじ山部(図示なし)に締結される。そして、専用アダプタ50の前端部は、ベース部54に固定される。
図5を用いて、専用アダプタ50の構成について説明すると、専用アダプタ50は、円筒形状の本体部56と、本体部56から車両前方向に突出する凸部58とで構成される。専用アダプタ50は、ハブユニットに固定される側に開口部60を有する。この開口部60には、車軸52の先端のねじ山部に対応するめねじ山62と、めねじ山62よりもハブユニットから遠位側に設けられめねじ山62よりも径が大きい逃がし部64と、を有する。すなわち、周面にめねじ山62が形成された部分は、車軸52の先端のおねじがねじ込まれるが、一定長さのめねじ山62の先の部分は、おねじが自由に行き来できる逃がし部64となっている。例えば、走行の多い実験車両の場合には、車軸が多少曲がっていることがある。そのため、めねじ山62が長い場合には、車軸との締結ができないことがある。かかる事態に対応するため、本例では、逃がし部64を設けている。なお、めねじ山62および逃がし部64の径の大小を示すため、
図5において二点鎖線で表している。
【0039】
開口部60は、ホイールを装着したときに、凸部58がホイールの平面部から突出する長さとする。かかる構成により、ホイール締結後に、凸部58に計測基板14を固定するベース部54を設置しても、ベース部54はホイールの平面部と干渉しない。そのため、計測基板14とホイールとの供回りが可能となる。なお、本例では、凸部58を6角形状とする。これは、専用アダプタ50はハブロックナットの代わりにハブを固定する役割があるため、6角部にハブロックナットと同様の規定トルクをかけて締結するためである。上記の構成により、計測基板14の車輪16へのより安定した設置が可能となる。
【0040】
なお、これまでの説明は一例であり、本明細書で開示する車両挙動計測装置は、車両内部に設置される制御基板と、ホイールまたはハブユニットに設置される計測基板とにおいて、それぞれ車両の挙動と車輪の挙動とを記録し、GPS信号から得られた同期信号を同期させる構成であればよい。したがって、車両挙動計測装置のその他の構成は、適宜、変更されてもよい。例えば、計測基板の車輪への設置は、1輪だけではなく、4輪に設置してもよい。
【符号の説明】
【0041】
10 車両、12 制御基板、14 計測基板、16 車輪(ホイール、ハブユニット)、18 第1の制御部、20 第1の同期信号生成部、22車両挙動検出部、24 第1の記録部、26 第2の制御部、28 第2の同期信号生成部、30 車輪状態検出部、32 センサ、34 慣性記録装置、36 第2の記録部。