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特開2024-157848撓み量計測システム及び撓み量計測方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024157848
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】撓み量計測システム及び撓み量計測方法
(51)【国際特許分類】
   G01B 11/16 20060101AFI20241031BHJP
【FI】
G01B11/16 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023072458
(22)【出願日】2023-04-26
(71)【出願人】
【識別番号】000222668
【氏名又は名称】東洋建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001999
【氏名又は名称】弁理士法人はなぶさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】芥川 真一
(72)【発明者】
【氏名】小西 優貴
(72)【発明者】
【氏名】山野 貴司
(72)【発明者】
【氏名】鶴ヶ崎 和博
(72)【発明者】
【氏名】河田 晃靖
(72)【発明者】
【氏名】小田切 祐樹
(72)【発明者】
【氏名】和田 眞郷
(72)【発明者】
【氏名】金谷 恵輔
(72)【発明者】
【氏名】宮原 和仁
【テーマコード(参考)】
2F065
【Fターム(参考)】
2F065AA65
2F065BB13
2F065CC06
2F065FF41
2F065GG04
2F065LL03
(57)【要約】
【課題】鋼材打設時における管理測定の信頼性及び施工効率を向上させる。
【解決手段】長尺鋼材70に追従して撓むように取り付けられた管状のガイド材16と、ガイド材16の一端部に取り付けられてレーザー光Lを照射するレーザー照射ユニット20と、ガイド材16の他端部でレーザー光Lを受光するように複数の光ファイバー28の一端側が配置されたセンサーユニット24と、光ファイバー28の他端側から得られるレーザー光Lの受光情報に基づいて、レーザー光Lの受光位置の移動量及び移動方向を算出する情報処理ユニット32とを含む。これにより、長尺鋼材70が水中や土中に打設されても、受光位置の移動量及び移動方向に基づいて、長尺鋼材70の撓み量及び撓み方向を把握することができるため、管理測定の信頼性を向上させることができ、センサーの挿入などが不要で迅速に計測を行うことができるため、施工効率を向上させることもできる。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水中乃至土中へ打設される長尺鋼材の撓み量を計測するシステムであって、
前記長尺鋼材の撓みに追従して撓むように、前記長尺鋼材の長手方向に沿って該長尺鋼材に取り付けられた管状のガイド材と、
該ガイド材の一端部に取り付けられ、前記ガイド材の内部を通して該ガイド材の他端部に向けてレーザー光を照射するレーザー照射ユニットと、
前記ガイド材の前記他端部に取り付けられ、前記レーザー照射ユニットから照射された前記レーザー光を受光するように、複数の光ファイバーの一端側が、前記ガイド材の長手方向と直交する断面方向に互いに間隔を空けて配置されたセンサーユニットと、
前記複数の光ファイバーの他端側から得られる前記レーザー光の受光情報に基づいて、前記ガイド材が撓んでいない状態を基準としたときの、前記レーザー光の受光位置の移動量及び移動方向を算出する情報処理ユニットと、を含むことを特徴とする撓み量計測システム。
【請求項2】
前記ガイド材が丸鋼管で形成され、
前記複数の光ファイバーの前記一端側は、1本の光ファイバーを中心としてその他の光ファイバーが同心円状に配置されていることを特徴とする請求項1記載の撓み量計測システム。
【請求項3】
前記複数の光ファイバーの前記一端側が配置される同心円において、前記中心からそのすぐ外側に位置する円までの間隔と、隣り合う円同士の間隔と、同じ円上で隣り合う光ファイバー同士の間隔とが、前記レーザー光の直径よりも小さくなっていることを特徴とする請求項2記載の撓み量計測システム。
【請求項4】
前記ガイド材と、その両端部に取り付けられる前記レーザー照射ユニット及び前記センサーユニットとが、纏めて計測ユニットとされて、該計測ユニットが前記長尺鋼材の長手方向に沿って複数設置され、
前記情報処理ユニットは、複数の前記計測ユニットから算出された前記移動量及び前記移動方向を合算して、前記長尺鋼材の撓み量及び撓み方向を算出することを特徴とする請求項1記載の撓み量計測システム。
【請求項5】
前記ガイド材、前記レーザー照射ユニット、前記センサーユニット、並びに、前記レーザー照射ユニット及び前記センサーユニットに接続される配線を、前記長尺鋼材と共に囲うように設置される保護材を含むことを特徴とする請求項1から4のいずれか1項記載の撓み量計測システム。
【請求項6】
水中乃至土中へ打設される長尺鋼材の撓み量を計測する方法であって、
管状のガイド材を、前記長尺鋼材の撓みに追従して撓むように、前記長尺鋼材の長手方向に沿って該長尺鋼材に取り付け、
前記ガイド材の内部を通して該ガイド材の一端部から他端部に向けてレーザー光を照射するように、前記ガイド材の前記一端部にレーザー照射ユニットを取り付け、
前記ガイド材の前記他端部に、前記レーザー照射ユニットから照射された前記レーザー光を受光するためのセンサーユニットを取り付け、このとき、該センサーユニットに接続した複数の光ファイバーの一端側を、前記ガイド材の長手方向と直交する断面方向に互いに間隔を空けて配置し、
前記複数の光ファイバーの他端側から得られる前記レーザー光の受光情報に基づいて、前記ガイド材が撓んでいない状態を基準としたときの、前記レーザー光の受光位置の移動量及び移動方向を算出することを特徴とする撓み量計測方法。
【請求項7】
前記ガイド材を丸鋼管で形成し、
前記複数の光ファイバーの前記一端側を、1本の光ファイバーを中心としてその他の光ファイバーを同心円状に配置することを特徴とする請求項6記載の撓み量計測方法。
【請求項8】
前記複数の光ファイバーの前記一端側を配置する同心円において、前記中心からそのすぐ外側に位置する円までの間隔と、隣り合う円同士の間隔と、同じ円上で隣り合う光ファイバー同士の間隔とを、前記レーザー光の直径よりも小さくすることを特徴とする請求項7記載の撓み量計測方法。
【請求項9】
前記ガイド材と、その両端部に取り付けられる前記レーザー照射ユニット及び前記センサーユニットとを、纏めて計測ユニットとし、該計測ユニットを前記長尺鋼材の長手方向に沿って複数し、
複数の前記計測ユニットから算出した前記移動量及び前記移動方向を合算して、前記長尺鋼材の撓み量及び撓み方向を算出することを特徴とする請求項6記載の撓み量計測方法。
【請求項10】
前記ガイド材、前記レーザー照射ユニット、前記センサーユニット、並びに、前記レーザー照射ユニット及び前記センサーユニットに接続する配線を、前記長尺鋼材と共に囲うように、保護材を設置することを特徴とする請求項6から9のいずれか1項記載の撓み量計測方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水中乃至土中へ打設される長尺鋼材の撓み量を計測する撓み量計測システム及び撓み量計測方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
建設事業には、鋼矢板や鋼管矢板などの鋼材を、水中及び土中へ打設する工事が多く存在し、このような鋼材の打設は、打設位置や深度、傾斜角度を管理し、鋼材全体の状態を把握しながら施工することが求められる。また、長尺の鋼材を打設する際には、打設先の地盤の影響を受けて鋼材が撓むことも考えられ、そのような状況を把握することも必要となる。このような鋼材の打設は、従来、下記に挙げるような幾つかの方法で実施されていた。まず、1つ目の方法では、鋼材の打設時に、測量員が気中部にある鋼材の側面を少なくとも2方向からトランシットで視準し、目標位置とのズレを目視で確認すると共に正規の位置へ誘導することで、打設精度を確保している。
【0003】
次に、2つ目の方法では、上述した1つ目の方法に加えて、打設する鋼材の常に気中部分となる天端部分へ傾斜角計測器を取り付け、測量員によるトランシットの視準確認と併用することで、打設位置、深度、傾斜角度を常時把握し、より高い精度で管理を行って打設精度の向上を図っている(例えば、特許文献1参照)。続いて、3つ目の方法では、鋼材の打設完了後に、予め設置しておいた計測用の内空管(ガイド管)内に挿入式孔内傾斜計を挿入して、ガイド管の曲がりを測定し、初期値とその後の計測結果との差から変位量を求めるものであって、鋼管杭の打設精度の確認に利用されている。また、4つ目の方法では、鋼管杭などの打設精度の管理とは異なるが、曲がりボーリング削孔管による土中の削孔において、ジャイロスコープを用いて移動軌跡を算出すると共に、削孔位置の3次元座標をモニタで表示し、削孔位置を管理している(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平01-039515号公報
【特許文献2】特開2011-007502号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、上述した1つ目及び2つ目の方法は、常に地上或いは水面上に露出している鋼材の側面などを測定した結果から、土中部の鋼材の傾斜や位置を推測するものである。すなわち、これらの方法は、鋼材が土中部で撓まない剛体であることを前提としているものであって、そのような前提が確保できないと推定値の信頼性が低下してしまう。特に長尺な鋼材の場合、それ自身の撓みや、打設中に地盤の影響を受けて撓むことも考えられるため、土中部の鋼材の撓みを把握しなければ、土中部の撓み状況は推測の域を出ないこととなり、測定結果の信頼性の面で課題が残るものであった。これに対し、3つ目及び4つ目の方法は、1つ目や2つ目の方法よりも測定結果の信頼性が高いものの、測定の度に測定装置を挿入、抜取する作業が必要になる。このため、打設中に頻繁に測定を行うには多大な時間を要することになり、鋼材打設の施工効率が著しく低下してしまうことから、実用的ではなかった。
【0006】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、鋼材打設時における管理測定の信頼性及び施工効率を向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(発明の態様)
以下の発明の態様は、本発明の構成を例示するものであり、本発明の多様な構成の理解を容易にするために、項別けして説明するものである。各項は、本発明の技術的範囲を限定するものではなく、発明を実施するための最良の形態を参酌しつつ、各項の構成要素の一部を置換し、削除し、又は、更に他の構成要素を付加したものについても、本発明の技術的範囲に含まれ得るものである。
【0008】
(1)水中乃至土中へ打設される長尺鋼材の撓み量を計測するシステムであって、前記長尺鋼材の撓みに追従して撓むように、前記長尺鋼材の長手方向に沿って該長尺鋼材に取り付けられた管状のガイド材と、該ガイド材の一端部に取り付けられ、前記ガイド材の内部を通して該ガイド材の他端部に向けてレーザー光を照射するレーザー照射ユニットと、前記ガイド材の前記他端部に取り付けられ、前記レーザー照射ユニットから照射された前記レーザー光を受光するように、複数の光ファイバーの一端側が、前記ガイド材の長手方向と直交する断面方向に互いに間隔を空けて配置されたセンサーユニットと、前記複数の光ファイバーの他端側から得られる前記レーザー光の受光情報に基づいて、前記ガイド材が撓んでいない状態を基準としたときの、前記レーザー光の受光位置の移動量及び移動方向を算出する情報処理ユニットと、を含む撓み量計測システム。
【0009】
本項に記載の撓み量計測システムは、管状のガイド材、レーザー照射ユニット、センサーユニット、及び情報処理ユニットを含み、ガイド材は、計測対象の長尺鋼材に取り付けられ、このとき、長尺鋼材の撓みに追従して撓むように、長尺鋼材の長手方向に沿って取り付けられる。このようなガイド材の両端部には、レーザー照射ユニットとセンサーユニットとが取り付けられている。ガイド材の一端部に取り付けられたレーザー照射ユニットは、管状のガイド材の内部を通して、センサーユニットが取り付けられたガイド材の他端部に向けてレーザー光を照射する。ガイド材の他端部に取り付けられたセンサーユニットには、複数の光ファイバーの一端側が接続されている。そして、これら複数の光ファイバーの一端側は、レーザー照射ユニットからガイド材の内部を通して照射されたレーザー光を受光するように、ガイド材の長手方向と直交する断面方向に互いに間隔を空けて配置されている。
【0010】
情報処理ユニットは、センサーユニットから延びる複数の光ファイバーの他端側から、光ファイバーの一端側で受光したレーザー光の受光情報を取得する。ここでの受光情報とは、予めセンサーユニットにおける配置位置が把握されている、複数の光ファイバーの一端側の各々で受光された、レーザー光の濃淡(明るさ)に係る情報である。情報処理ユニットは、このような受光情報と複数の光ファイバーの一端側の配置位置との関係性から、センサーユニットにおけるレーザー光の受光位置(照射位置)を特定する。そして、情報処理ユニットは、ガイド材が撓んでいない状態のときの、センサーユニットにおけるレーザー光の受光位置を予め把握しておき、この受光位置を基準として、測定されたレーザー光の受光位置の移動量及び移動方向を算出する。すなわち、長尺鋼材に外力が作用して長尺鋼材及びガイド材が撓んだ状態になると、外力が作用せずにガイド材が真直ぐな状態であるときのレーザー光の受光位置から、受光位置が移動するため、その移動量及び移動方向を算出する。
【0011】
更に、情報処理ユニットは、上記のように算出したレーザー光の受光位置の移動量及び移動方向に基づいて、ガイド材の撓み量及び撓み方向を把握し、これらを以って、計測対象の長尺鋼材の、ガイド材が取り付けられた範囲の撓み量及び撓み方向とするものである。これにより、長尺鋼材が水中や土中に打設されていても、水中や土中にある長尺鋼材の撓み量及び撓み方向が把握されるため、管理測定の信頼性が向上されるものとなる。また、従来技術と異なり、センサーの挿入や抜取の作業を必要としないため、迅速に計測が行われるものとなり、施工効率が向上されるものである。更に、信頼性の向上から、施工後の打ち直しによる時間及び費用の増加が抑制されるため、これによっても施工効率が向上されるものとなる。
【0012】
(2)上記(1)項において、前記ガイド材が丸鋼管で形成され、前記複数の光ファイバーの前記一端側は、1本の光ファイバーを中心としてその他の光ファイバーが同心円状に配置されている撓み量計測システム。
本項に記載の撓み量計測システムは、ガイド材が丸鋼管で形成されていることで、ガイド材の撓み易さが円周方向について均一になり、更に、鋼材である丸鋼管は長尺鋼材に対して溶接で固定されるものとなる。このため、ガイド材が長尺鋼材の撓みに精度よく追従するものとなり、管理測定の信頼性がより向上されるものである。加えて、ガイド材の溶接固定により、長尺鋼材の打設時の振動や衝撃に十分耐え得るものとなる。
【0013】
また、上記のようなガイド材の他端部に取り付けられたセンサーユニットにおいて、複数の光ファイバーの一端側は、丸鋼管で形成されたガイド材の断面形状に対応するように、1本の光ファイバーを中心としてその他の光ファイバーが同心円状に配置されている。このため、ガイド材が撓んでいないときのレーザー光の照射位置が、丸鋼管の円形断面の中心に位置する光ファイバーに合わせられていることで、ガイド材が撓むと、レーザー光の照射位置は、中心の光ファイバーを囲うように配置された何れかの光ファイバーの配置方向へと移動することになる。これにより、レーザー光の受光位置の移動量及び移動方向が、容易に把握されるものとなる。
【0014】
(3)上記(2)項において、前記複数の光ファイバーの前記一端側が配置される同心円において、前記中心からそのすぐ外側に位置する円までの間隔と、隣り合う円同士の間隔と、同じ円上で隣り合う光ファイバー同士の間隔とが、前記レーザー光の直径よりも小さくなっている撓み量計測システム。
本項に記載の撓み量計測システムは、センサーユニットに接続される複数の光ファイバーの一端側の配置間隔が、レーザー照射ユニットから照射されるレーザー光の直径よりも小さくなっているものである。その具体的な間隔の位置は、同心円の中心に位置する光ファイバーからそのすぐ外側に位置する円上の光ファイバーまでの間隔、光ファイバーが配置された隣り合う円同士の間隔、及び同じ円上で隣り合う光ファイバー同士の間隔である。このような構成により、レーザー照射ユニットから照射されるレーザー光は、ガイド材が撓んでも、常に何れかの光ファイバーの一端側によって受光されることになり、また、状況により2つや3つといった複数の光ファイバーの一端側によって受光されるものとなる。このため、レーザー光の受光位置の移動量及び移動方向が、より確実に算出されるものである。
【0015】
(4)上記(1)項において、前記ガイド材と、その両端部に取り付けられる前記レーザー照射ユニット及び前記センサーユニットとが、纏めて計測ユニットとされて、該計測ユニットが前記長尺鋼材の長手方向に沿って複数設置され、前記情報処理ユニットは、複数の前記計測ユニットから算出された前記移動量及び前記移動方向を合算して、前記長尺鋼材の撓み量及び撓み方向を算出する撓み量計測システム。
本項に記載の撓み量計測システムは、何れも計測対象の長尺鋼材に設置されることとなる、ガイド材とその両端部に取り付けられるレーザー照射ユニット及びセンサーユニットとが、一纏めの構成単位として計測ユニットとされる。そして、このような計測ユニットが、計測対象の長尺鋼材に、長尺鋼材の長手方向に沿って複数設置される。
【0016】
また、情報処理ユニットは、長尺鋼材に複数設置された計測ユニットの各々から、レーザー光の受光情報を取得し、それらの受光情報に基づいて、各計測ユニットにおけるレーザー光の受光位置の移動量及び移動方向を算出する。更に、情報処理ユニットは、複数の計測ユニットにおけるレーザー光の受光位置の移動量及び移動方向を合算して、長尺鋼材全体の撓み量及び撓み方向として算出するものである。これにより、計測対象の長尺鋼材の長さに応じて、設置される計測ユニットの数量が調整されるものとなるため、様々な長さの長尺鋼材の計測に対応するものとなる。更に、各計測ユニットのガイド材の長さも、複数の光ファイバーの一端側の配置領域の大きさに関連するガイド材の断面積の大きさ、換言すれば計測可能な受光位置の移動量の大きさと共に調整可能であるため、実質的にあらゆる長さの長尺鋼材の計測に対応するものである。
【0017】
(5)上記(1)から(4)項において、前記ガイド材、前記レーザー照射ユニット、前記センサーユニット、並びに、前記レーザー照射ユニット及び前記センサーユニットに接続される配線を、前記長尺鋼材と共に囲うように設置される保護材を含む撓み量計測システム。
本項に記載の撓み量計測システムは、更に保護材を含むものであって、この保護材は、計測対象の長尺鋼材に設置される本システムの構成要素を、長尺鋼材と共に囲うように設置され、それらの構成要素を保護するものである。そのような構成要素には、ガイド材、ガイド材の両端部に取り付けられるレーザー照射ユニット及びセンサーユニット、並びに、レーザー照射ユニットに接続されるレーザー照射用の電源ケーブルや、センサーユニットに接続される複数の光ファイバーが束ねられたファイバーケーブルといった配線が含まれる。これにより、これらの構成要素が設置された長尺鋼材が土中に打設されても、土砂圧力などによる破損が発生しないように、保護材によって保護されるものである。
【0018】
(6)水中乃至土中へ打設される長尺鋼材の撓み量を計測する方法であって、管状のガイド材を、前記長尺鋼材の撓みに追従して撓むように、前記長尺鋼材の長手方向に沿って該長尺鋼材に取り付け、前記ガイド材の内部を通して該ガイド材の一端部から他端部に向けてレーザー光を照射するように、前記ガイド材の前記一端部にレーザー照射ユニットを取り付け、前記ガイド材の前記他端部に、前記レーザー照射ユニットから照射された前記レーザー光を受光するためのセンサーユニットを取り付け、このとき、該センサーユニットに接続した複数の光ファイバーの一端側を、前記ガイド材の長手方向と直交する断面方向に互いに間隔を空けて配置し、前記複数の光ファイバーの他端側から得られる前記レーザー光の受光情報に基づいて、前記ガイド材が撓んでいない状態を基準としたときの、前記レーザー光の受光位置の移動量及び移動方向を算出する撓み量計測方法。
【0019】
(7)上記(6)項において、前記ガイド材を丸鋼管で形成し、前記複数の光ファイバーの前記一端側を、1本の光ファイバーを中心としてその他の光ファイバーを同心円状に配置する撓み量計測方法。
(8)上記(7)項における、前記複数の光ファイバーの前記一端側を配置する同心円において、前記中心からそのすぐ外側に位置する円までの間隔と、隣り合う円同士の間隔と、同じ円上で隣り合う光ファイバー同士の間隔とを、前記レーザー光の直径よりも小さくする撓み量計測方法。
(9)上記(6)項において、前記ガイド材と、その両端部に取り付けられる前記レーザー照射ユニット及び前記センサーユニットとを、纏めて計測ユニットとし、該計測ユニットを前記長尺鋼材の長手方向に沿って複数し、複数の前記計測ユニットから算出した前記移動量及び前記移動方向を合算して、前記長尺鋼材の撓み量及び撓み方向を算出する撓み量計測方法。
【0020】
(10)上記(6)から(9)項において、前記ガイド材、前記レーザー照射ユニット、前記センサーユニット、並びに、前記レーザー照射ユニット及び前記センサーユニットに接続する配線を、前記長尺鋼材と共に囲うように、保護材を設置する撓み量計測方法。
そして、(6)から(10)項に記載の撓み量計測方法は、各々、上記(1)から(5)項の撓み量計測システムを使用して実行されることで、上記(1)から(5)項の撓み量計測システムに対応する同等の作用を奏するものである。
【発明の効果】
【0021】
本発明は上記のような構成であるため、鋼材打設時における管理測定の信頼性及び施工効率を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の実施の形態に係る撓み量計測システムの構成の一例を概略的に示すブロック図である。
図2】長尺鋼材に対する図1の撓み量計測システムの設置例を示しており、(a)は側面図、(b)は1つの計測ユニットについて拡大したイメージ図である。
図3】センサーユニットにおける複数の光ファイバーの配置例を示すイメージ図である。
図4】撓み量計測システムが図2(a)のように長尺鋼材に取り付けられた場合の断面イメージ図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明を実施するための形態を、添付図面に基づき説明する。ここで、従来技術と同一部分、若しくは相当する部分については、詳しい説明を省略することとし、また、図面の全体にわたって、同一部分若しくは対応する部分は、同一の符号で示している。
図1は、水中や地中に打設される長尺鋼材の撓み量及び撓み方向を計測する、本発明の実施の形態に係る撓み量計測システム10の構成の一例を概略的に示し、図2は、撓み量計測システム10の一部の構成要素が、計測対象の長尺鋼材70に取り付けられた状態を示している。図示のように、本発明の実施の形態に係る撓み量計測システム10は、複数の計測ユニット12、情報処理ユニット32、及び保護材40を含んでいる。
【0024】
複数の計測ユニット12は、図2(a)に示すように、計測対象の長尺鋼材70に取り付けられるものであって、本実施形態では4つの計測ユニット12が用いられている。計測ユニット12の各々は、ガイド材16、レーザー照射ユニット20、及びセンサーユニット24で大略構成されている。ガイド材16は、長尺の管状を成すものであって、本実施形態ではガス管などに用いられる丸鋼管で形成されている。ガイド材16は、図2(b)に示すように、長尺鋼材70の撓みに追従して撓むように、長尺鋼材70の長手方向と平行に長尺鋼材70に沿って取り付けられている。本実施形態では、鋼材である丸鋼管で形成されたガイド材16が、溶接によって長尺鋼材70に対して取り付けられており、これについては後述する。なお、図2(b)では、計測ユニット12などの大きさを誇張して図示している。
【0025】
レーザー照射ユニット20は、ガイド材16の一端部に取り付けられ、図2(b)ではガイド材16の上端部に取り付けられている。レーザー照射ユニット20は、ガイド材16の一端部から、管状であるガイド材16の内部を通して、ガイド材16の他端部(図2(b)では下端部)へ向けてレーザー光Lを照射するようになっている。このため、レーザー照射ユニット20には、レーザー光Lの照射のための電力供給や制御を行うための電源ケーブル46が配線44として接続されている。なお、図2(b)での電源ケーブル46の図示は省略している。
【0026】
センサーユニット24は、ガイド材16の他端部に取り付けられ、図2(b)ではガイド材16の下端部に取り付けられている。センサーユニット24は、ガイド材16の一端部からレーザー照射ユニット20によって照射されるレーザー光Lを、センサーユニット24に接続された複数の光ファイバー28の一端側で受光するようになっている。なお、複数の光ファイバー28の他端側は、複数の光ファイバー28が束ねられた配線44としてのファイバーケーブル48を介して、情報処理ユニット32に接続されている。本実施形態のセンサーユニット24は、複数の光ファイバー28の一端側が配置された、レーザー光Lを受光するための受光部分が、丸鋼管で形成されるガイド材16の断面形状に合わせて、図3に示すように平面視で円形を成している。
【0027】
図3には、光ファイバー28の一端側が黒丸で図示されており、平面視円形の中心に1本の光ファイバー28が配置され、この1本の光ファイバー28を中心とした2つの同心円状に、その他の光ファイバー28が配置されている。2つの同心円のうち、内側の同心円には、45°毎に8本の光ファイバー28が配置され、外側の同心円には、22.5°毎に16本の光ファイバー28が配置されている。そして、中心の光ファイバー28と合わせて、合計で25本の光ファイバー28の一端側がセンサーユニット24に対して接続されている。また、中心の光ファイバー28からそのすぐ外側に位置する内側の同心円上の光ファイバー28までの間隔と、内側の同心円から外側の同心円までの間隔と、同じ同心円上で隣り合う光ファイバー28同士の間隔とは、レーザー光Lの直径よりも小さく設定されている。なお、図3には、複数の光ファイバー28の配置位置を明確にするための補助線が、一点鎖線で示されている。
【0028】
ここで、レーザー照射ユニット20は、図3のようなセンサーユニット24の円形の受光部分の、中心に配置された光ファイバー28に向けて、レーザー光Lを照射するように、ガイド材16の一端部に取り付けられる。なお、図3には、中心に向けて照射されたレーザー光Lが実線で示され、また、後述する理由によって中心からズレた位置に照射されたレーザー光Lが二点鎖線で示されている。
ガイド材16の一端部に取り付けられるレーザー照射ユニット20と、ガイド材16の他端部に取り付けられるセンサーユニット24とは、ねじ切りや接着剤などが使用されて、止水性が確保されるように取り付けられる。これによって、計測ユニット12内が完全防水とされ、水中や土中での計測に対応するものとなる。また、上記のようにガイド材16の両端部にレーザー照射ユニット20及びセンサーユニット24が取り付けられた構成の計測ユニット12は、ガイド材16の長さが計測距離となる。
【0029】
上記のような構成の複数(4つ)の計測ユニット12は、図2(a)に示すように、長尺鋼材70の長手方向に沿って連続して取り付けられる。このような計測ユニット12の各々に接続された配線44は、長尺鋼材70の打設位置から離れた位置に設置される情報処理ユニット32まで延びている。そして、4つの計測ユニット12と、それらの計測ユニット12から延びる配線44の長尺鋼材70に沿った部分とが、保護材40により覆われている。より詳しくは、図4に示すように、本実施形態では溝形鋼により形成された保護材40が、長尺鋼材70と共に計測ユニット12及び配線44を囲うように、長尺鋼材70に溶接などで固定されている。
【0030】
これによって、4つの計測ユニット12の全てについて、計測ユニット12を構成するガイド材16、レーザー照射ユニット20、及びセンサーユニット24と、レーザー照射ユニット20に接続された電源ケーブル46と、センサーユニット24に接続されたファイバーケーブル48とが、保護材40により覆われることになる。保護材40の図2(a)における下端は閉じられて、土砂の侵入を防いでおり、保護材40の図2(a)における上端は開放されて、配線44の進入口になっている。なお、図4には、丸鋼管で形成されたガイド材16が、長尺鋼材70に対して、溶接母材52を介して溶接箇所56で溶接された様子も図示されている。
【0031】
図1に戻り、情報処理ユニット32は、計測ユニット12の各々からファイバーケーブル48を介して、レーザー光Lの受光情報を取得する。すなわち、各計測ユニット12においてレーザー照射ユニット20から照射されたレーザー光Lは、図3に示したようにセンサーユニット24に配置された複数の光ファイバー28のうち、1本以上の光ファイバー28の一端側によって受光される。すると、レーザー光Lを受光した光ファイバー28の他端側には、レーザー光Lの強さやレーザー光Lの何れの部分を受光したかなどに応じた、光の濃淡(明るさ)の情報が伝達されるため、それを受光情報として取得する。更に、情報処理ユニット32は、受光情報を取得した光ファイバー28の、図3のようなセンサーユニット24における配置位置を加味して、センサーユニット24でのレーザー光Lの受光位置を特定する。なお、情報処理ユニット32における受光情報の取得方法は、特開2021-162595号公報に詳細に開示されている。
【0032】
本実施形態では、複数の光ファイバー28の他端側が、図2(b)に示すように、情報処理ユニット32に含まれる固定プレート36に接続されている。固定プレート36には、固定プレート36における光ファイバー28の接続位置からセンサーユニット24における光ファイバー28の配置位置が把握できるように、複数の光ファイバー28の接続先が一対一で設定されている。更に、本実施形態の情報処理ユニット32は、図示及び詳細な説明は控えるが、複数の光ファイバー28のセンサーユニット24における配置位置と、情報端末のカメラによって固定プレート36を撮影し、そこから把握される、複数の光ファイバー28の各々での受光情報との関係性から、センサーユニット24でのレーザー光Lの受光位置を特定する。なお、情報処理ユニット32における受光情報の取得方法は、特開2021-162595号公報に詳細に開示されている。
【0033】
また、情報処理ユニット32は、上記のように特定したレーザー光Lの受光位置から、ガイド材16が撓まずに真直ぐな状態のときを基準とした、受光位置の移動量及び移動方向を算出する。すなわち、ガイド材16が撓まずに真直ぐな状態のときのレーザー光Lの受光位置は、図3に実線で示したように、平面視円形のセンサーユニット24の中心位置であり、ガイド材16が全く撓んでいなければ、受光位置がこのままの位置で維持される。これに対し、土中に打設された影響などによって計測対象の長尺鋼材70が撓み、それに追従してガイド材16が撓むと、ガイド材16の一端部に取り付けられたレーザー照射ユニット20と他端部に取り付けられたセンサーユニット24との位置関係が変化するため、ガイド材16の撓み方向及び撓み量に応じて、レーザー光Lの受光位置が移動する。例えば、図3に二点鎖線で示された位置に受光位置が移動した場合は、符号Dで示された移動量及び移動方向に、受光位置が移動したことになる。情報処理ユニット32は、このような移動量及び移動方向を算出する。
【0034】
更に、本実施形態の情報処理ユニット32は、上記のように算出したレーザー光Lの受光位置の移動量及び移動方向を、該当する計測ユニット12のガイド材16の撓み量及び撓み方向として採用する。また、情報処理ユニット32は、各計測ユニット12での計測結果から把握されたガイド材16の撓み量及び撓み方向を、計測対象の長尺鋼材70の、各計測ユニット12が取り付けられた範囲の撓み量及び撓み方向として採用する。このため、情報処理ユニット32は、4つの計測ユニット12でのガイド材16の撓み量及び撓み方向(レーザー光Lの受光位置の移動量及び移動方向)を合算して、図2(a)のように4つの計測ユニット12が取り付けられた長尺鋼材70の略全範囲の、撓み量及び撓み方向として算出する。
【0035】
情報処理ユニット32は、上記の固定プレート36や携帯端末に加えて、上述したような処理を行う任意のハードウェアやソフトウェアを含むものであってよい。例えば、電源ケーブル46を介してレーザー照射ユニット20によるレーザー光Lの照射を制御する部位は、情報処理ユニット32から独立していてもよく、手動で制御が行われてもよい。また、レーザー光Lの受光位置の特定を行う方法も、上記の固定プレート36や携帯端末を用いた方法に限定されずに、別の装置構成による別の方法であってもよい。
【0036】
更に、本発明の実施の形態に係る撓み量計測システム10の全体構成や他の構成要素についても、図1図4の構成に限定されるものではなく、計測対象の長尺鋼材70や状況などに応じて、適宜、適切な構成を取り得るものである。例えば、長尺鋼材70へ取り付ける計測ユニット12の数量は、長尺鋼材70の長さや各計測ユニット12のガイド材16の長さなどに応じて、3つ以下や5つ以上であってもよい。また、センサーユニット24に配置される光ファイバー28の数量も、ガイド材16の断面積の大きさなどに応じて、図3の例から増減してよく、配置形態も図3の例と異なっていてもよい。すなわち、光ファイバー28の一端側の配置は、図3のような1本の光ファイバー28を中心としてその他の光ファイバー28が同心円状に配置された構成に限定されるものではなく、1本の光ファイバー28を中心としてその他の光ファイバー28が任意の位置に配置された構成や、全ての光ファイバー28が任意の位置に配置された構成であってもよい。更に、図2(b)ではガイド材16の上端部に取り付けられたレーザー照射ユニット20と、ガイド材16の下端部に取り付けられたセンサーユニット24とが、反対に設置されていてもよい。
【0037】
ここで、本発明の実施の形態に係る撓み量計測システム10の一部の構成要素について、大きさなどの数値例を挙げるが、これは理解を深めるための例示に過ぎず、本発明の実施の形態に係る撓み量計測システム10の構成を限定するものではない。まず、図2(a)に示される長尺鋼材70は、長さが19m程度のものが挙げられ、それに対して取り付けられる4つの計測ユニット12のガイド材16の長さは、4m程度が挙げられる。また、図3を参照して、レーザー光Lの直径は5mm程度、これに対する光ファイバー28の配置間隔は4mm程度が挙げられる。更に、電源ケーブル46やファイバーケーブル48の長さは60m程度が挙げられ、この長さは、例えば、長尺鋼材70が水底の地盤に打設され、その打設位置から離れた船上に情報処理ユニット32が設置される場合に、長尺鋼材70から情報処理ユニット32まで十分に届く距離である。
【0038】
さて、上記構成をなす本発明の実施の形態によれば、次のような作用効果を得ることが可能である。すなわち、本発明の実施の形態に係る撓み量計測システム10は、図1に示すように、管状のガイド材16、レーザー照射ユニット20、センサーユニット24、及び情報処理ユニット32を含んでいる。ガイド材16は、図2(b)に示すように、計測対象の長尺鋼材70に取り付けられ、このとき、長尺鋼材70の撓みに追従して撓むように、長尺鋼材70の長手方向に沿って取り付けられる。このようなガイド材16の両端部には、レーザー照射ユニット20とセンサーユニット24とが取り付けられている。
【0039】
ガイド材16の一端部に取り付けられたレーザー照射ユニット20は、管状のガイド材16の内部を通して、センサーユニット24が取り付けられたガイド材16の他端部に向けてレーザー光Lを照射する。ガイド材16の他端部に取り付けられたセンサーユニット24には、複数の光ファイバー28の一端側が接続されている。そして、これら複数の光ファイバー28の一端側は、レーザー照射ユニット20からガイド材16の内部を通して照射されたレーザー光Lを受光するように、ガイド材16の長手方向と直交する断面方向に互いに間隔を空けて配置されている。
【0040】
情報処理ユニット32は、センサーユニット24から延びる複数の光ファイバー28の他端側から、光ファイバー28の一端側で受光したレーザー光Lの受光情報を取得する。ここでの受光情報とは、予めセンサーユニット24における配置位置が把握されている、複数の光ファイバー28の一端側の各々で受光された、レーザー光Lの濃淡(明るさ)に係る情報である。情報処理ユニット32は、このような受光情報と複数の光ファイバー28の一端側の配置位置との関係性から、センサーユニット24におけるレーザー光Lの受光位置(照射位置)を特定する。
【0041】
そして、情報処理ユニット32は、ガイド材16が撓んでいない状態のときの、センサーユニット24におけるレーザー光Lの受光位置(図3に実線で示されたレーザー光L参照)を予め把握しておき、この受光位置を基準として、測定されたレーザー光Lの受光位置の移動量及び移動方向を算出する。すなわち、長尺鋼材70に外力が作用して長尺鋼材70及びガイド材16が撓んだ状態になると、外力が作用せずにガイド材16が真直ぐな状態であるときのレーザー光Lの受光位置から、受光位置が移動する(図3に二点鎖線で示されたレーザー光L参照)ため、その移動量及び移動方向を算出する。
【0042】
更に、情報処理ユニット32は、上記のように算出したレーザー光Lの受光位置の移動量及び移動方向に基づいて、ガイド材16の撓み量及び撓み方向を把握し、これらを以って、計測対象の長尺鋼材70の、ガイド材16が取り付けられた範囲の撓み量及び撓み方向とするものである。これにより、長尺鋼材70が水中や土中に打設されていても、水中や土中にある長尺鋼材70の撓み量及び撓み方向を把握することができるため、管理測定の信頼性を向上させることができる。また、従来技術と異なり、センサーの挿入や抜取の作業を必要としないため、迅速に計測を行うことが可能となり、施工効率を向上させることができる。更に、信頼性の向上から、施工後の打ち直しによる時間及び費用の増加を抑制することができるため、これによっても施工効率を向上させることが可能となる。
【0043】
また、本発明の実施の形態に係る撓み量計測システム10は、図4で確認できるように、ガイド材16が丸鋼管で形成されていることで、ガイド材16の撓み易さが円周方向について均一になり、更に、鋼材である丸鋼管は長尺鋼材70に対して溶接で固定することができる。このため、ガイド材16を長尺鋼材70の撓みに精度よく追従させることができ、管理測定の信頼性をより向上させることが可能となる。加えて、ガイド材16の溶接固定により、長尺鋼材70の打設時の振動や衝撃に十分耐えることができる。
【0044】
また、上記のようなガイド材16の他端部に取り付けられたセンサーユニット24において、複数の光ファイバー28の一端側は、図3に示すように、丸鋼管で形成されたガイド材16の断面形状に対応するように、1本の光ファイバー28を中心としてその他の光ファイバー28が同心円状に配置されている。このため、ガイド材16が撓んでいないときのレーザー光Lの照射位置を、丸鋼管の円形断面の中心に位置する光ファイバー28に合わせることで、ガイド材16が撓むと、レーザー光Lの照射位置を、中心の光ファイバー28を囲うように配置された何れかの光ファイバー28の配置方向へと移動させることができる。これにより、レーザー光Lの受光位置の移動量及び移動方向を、容易に把握することができる。
【0045】
更に、本発明の実施の形態に係る撓み量計測システム10は、センサーユニット24に接続される複数の光ファイバー28の一端側の配置間隔が、レーザー照射ユニット20から照射されるレーザー光Lの直径よりも小さくなっているものである。その具体的な間隔の位置は、同心円の中心に位置する光ファイバー28からそのすぐ外側に位置する円上の光ファイバー28までの間隔、光ファイバー28が配置された隣り合う円同士の間隔、及び同じ円上で隣り合う光ファイバー28同士の間隔である。このような構成により、レーザー照射ユニット20から照射されるレーザー光Lを、ガイド材16が撓んでも、常に何れかの光ファイバー28の一端側によって受光することができ、また、状況により2つや3つといった複数の光ファイバー28の一端側によって受光することができる。このため、レーザー光Lの受光位置の移動量及び移動方向を、より確実に算出することが可能となる。なお、例えば港湾工事の共通仕様書では、鋼材の打設の測定単位が1/1000と定められているため、ガイド材16の長さが4mのときに光ファイバー28の配置間隔を4mm以下とすれば、4mmの撓みを計測することができるため、共通仕様書の測定単位に対応することができる。
【0046】
加えて、本発明の実施の形態に係る撓み量計測システム10は、図1に示すように、何れも計測対象の長尺鋼材70に設置されることとなる、ガイド材16とその両端部に取り付けられるレーザー照射ユニット20及びセンサーユニット24とが、一纏めの構成単位として計測ユニット12とされる。そして、このような計測ユニット12が、図2(a)に示すように、計測対象の長尺鋼材70に、長尺鋼材70の長手方向に沿って複数設置される。また、情報処理ユニット32は、長尺鋼材70に複数設置された計測ユニット12の各々から、レーザー光Lの受光情報を取得し、それらの受光情報に基づいて、各計測ユニット12におけるレーザー光Lの受光位置の移動量及び移動方向を算出する。
【0047】
更に、情報処理ユニット32は、複数の計測ユニット12におけるレーザー光Lの受光位置の移動量及び移動方向を合算して、長尺鋼材70全体の撓み量及び撓み方向として算出するものである。これにより、計測対象の長尺鋼材70の長さに応じて、設置する計測ユニット12の数量を調整することができるため、様々な長さの長尺鋼材70の計測に対応することができる。更に、各計測ユニット12のガイド材16の長さも、複数の光ファイバー28の一端側の配置領域の大きさに関連するガイド材16の断面積の大きさ、換言すれば計測可能な受光位置の移動量の大きさと共に調整することができるため、実質的にあらゆる長さの長尺鋼材70の計測に対応することが可能となる。
【0048】
また、本発明の実施の形態に係る撓み量計測システム10は、図2(a)及び図4に示すように、更に保護材40を含むものであって、この保護材40は、計測対象の長尺鋼材70に設置される本システム10の構成要素を、長尺鋼材70と共に囲うように設置され、それらの構成要素を保護するものである。そのような構成要素には、ガイド材16、ガイド材16の両端部に取り付けられるレーザー照射ユニット20及びセンサーユニット24、並びに、レーザー照射ユニット20に接続されるレーザー照射用の電源ケーブル46や、センサーユニット24に接続される複数の光ファイバー28が束ねられたファイバーケーブル48といった配線44が含まれる。これにより、これらの構成要素が設置された長尺鋼材70が土中に打設されても、土砂圧力などによる破損が発生しないように、保護材40によって保護することができる。
【0049】
更に、本発明の実施の形態に係る撓み量計測システム10は、計測ユニット12内の止水性が保持されていれば、長尺鋼材70の打設が終了した後であっても、打設後の残留変位や他の長尺鋼材の打設時の影響について、継続的に計測を行うことができる。
ここで、本発明の実施の形態に係る撓み量計測システム10は、更に長尺鋼材70の上端付近の気中部に傾斜計が設置される構成であれば、長尺鋼材70の傾斜角を測定することができるため、長尺鋼材70の撓み量や撓み方向に加えて、長尺鋼材70の深度方向の変位を把握することも可能となる。
他方、本発明の実施の形態に係る撓み量計測方法は、上述したような本発明の実施の形態に係る撓み量計測システム10を使用して実行されることで、本発明の実施の形態に係る撓み量計測システム10に対応する同等の作用効果を奏することができる。
【符号の説明】
【0050】
10:撓み量計測システム、12:計測ユニット、16:ガイド材、20:レーザー照射ユニット、24:センサーユニット、28:光ファイバー、32:情報処理ユニット、40:保護材、44:配線、70:長尺鋼材、L:レーザー光
図1
図2
図3
図4