(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024157854
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】運転行動変容支援装置及び運転行動変容支援プログラム
(51)【国際特許分類】
B60W 40/09 20120101AFI20241031BHJP
B60W 50/08 20200101ALI20241031BHJP
G08G 1/16 20060101ALI20241031BHJP
G08G 1/00 20060101ALI20241031BHJP
【FI】
B60W40/09
B60W50/08
G08G1/16 F
G08G1/00 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023072474
(22)【出願日】2023-04-26
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【氏名又は名称】矢作 和行
(74)【代理人】
【識別番号】100121991
【弁理士】
【氏名又は名称】野々部 泰平
(74)【代理人】
【識別番号】100145595
【弁理士】
【氏名又は名称】久保 貴則
(72)【発明者】
【氏名】浅井 朋香
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 有華里
(72)【発明者】
【氏名】清水 泰博
(72)【発明者】
【氏名】林 哲洋
(72)【発明者】
【氏名】千葉 晋彦
(72)【発明者】
【氏名】一丸 太一郎
【テーマコード(参考)】
3D241
5H181
【Fターム(参考)】
3D241BA60
3D241BA70
3D241DD05Z
5H181AA01
5H181BB20
5H181CC03
5H181CC04
5H181CC11
5H181CC12
5H181CC14
5H181EE02
5H181EE12
5H181FF10
5H181FF33
5H181LL08
5H181LL20
(57)【要約】
【課題】ドライバの自律的な運転行動の変容を促すことを可能とする運転行動変容支援装置を提供する。
【解決手段】運転行動変容支援装置としてのHCU1は、少なくとも1つのプロセッサを備え、車両のドライバの運転行動の変容を支援する。少なくとも1つのプロセッサは、ドライバの支援受容性を高めるための事前情報をドライバへ向けて提供することと、事前情報に対するドライバの反応を把握することと、ドライバの反応に応じて、実支援の態様を決定することと、決定された実支援の態様に基づいてドライバを支援することと、を実行するように構成される。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つのプロセッサを備え、車両のドライバの運転行動の変容を支援する運転行動変容支援装置であって、
前記少なくとも1つのプロセッサは、
前記ドライバの支援受容性を高めるための事前情報を前記ドライバへ向けて提供することと、
前記事前情報に対する前記ドライバの反応を把握することと、
前記ドライバの反応に応じて、実支援の態様を決定することと、
決定された前記実支援の態様に基づいて前記ドライバを支援することと、を実行するように構成された運転行動変容支援装置。
【請求項2】
前記少なくとも1つのプロセッサは、
前記実支援することにおいて、前記ドライバの運転時の実支援と、運転終了時の実支援と、を両方実行する請求項1に記載の運転行動変容支援装置。
【請求項3】
前記少なくとも1つのプロセッサは、
前記運転時の実支援に対する前記ドライバの反応を把握することを、さらに実行し、
前記決定することにおいて、前記事前情報に対する前記ドライバの反応に応じて、前記運転時の実支援の態様を決定し、前記運転時の実支援に対する前記ドライバの反応に応じて、前記運転終了時の前記実支援の態様を決定する請求項2に記載の運転行動変容支援装置。
【請求項4】
前記少なくとも1つのプロセッサは、
前記ドライバの内発的意欲を高めるコーチングの手法を用いた前記実支援の態様と、前記ドライバの外発的意欲を高めるゲーミフィケーションの手法を用いた前記実支援の態様と、を選択的に決定する請求項1に記載の運転行動変容支援装置。
【請求項5】
前記少なくとも1つのプロセッサは、
前記決定することにおいて、前記コーチングの手法を用いた前記実支援又は前記ゲーミフィケーションの手法を用いた前記実支援の実行による前記ドライバの行動変容の進行ペースが予め設定された設定ペースよりも遅い場合、前記コーチングの手法を用いた前記実支援又は前記ゲーミフィケーションの手法を用いた前記実支援に代えて、前記ドライバに錯覚を感じさせることで、無意識に前記ドライバの行動変容を促すベクションの手法を用いた前記実支援を採用することを決定する請求項4に記載の運転行動変容支援装置。
【請求項6】
車両のドライバの運転行動の変容を支援する運転行動変容支援プログラムであって、
少なくとも1つのプロセッサに、
前記ドライバの支援受容性を高めるための事前情報を前記ドライバへ向けて提供することと、
前記事前情報に対する前記ドライバの反応を把握することと、
前記ドライバの反応に応じて、実支援の態様を決定することと、
決定された前記実支援の態様に基づいて実支援することと、を実行させるように構成された運転行動変容支援プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この明細書による開示は、車両においてドライバの運転行動の変容を支援する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ドライバの安全運転を支援する技術が知られている。例えば特許文献1に開示の技術は、安全運転に関するリスクが検出された場合に、リスクが検出されていない場合よりも注意喚起を発しやすくしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の技術では、リスクが検出された場合のその場限りの安全運転の実行は支援できるかも知れない。しかしながら、ドライバの自律的な運転行動の変容を促すことこそが真の安全運転につながる。
【0005】
この明細書の開示による目的のひとつは、ドライバの自律的な運転行動の変容を促すことを可能とする運転行動変容支援装置及び運転行動変容支援プログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
ここに開示された装置は、少なくとも1つのプロセッサを備え、車両のドライバの運転行動の変容を支援する運転行動変容支援装置であって、
少なくとも1つのプロセッサは、
ドライバの支援受容性を高めるための事前情報をドライバへ向けて提供することと、
事前情報に対するドライバの反応を把握することと、
ドライバの反応に応じて、実支援の態様を決定することと、
決定された実支援の態様に基づいてドライバを支援することと、を実行するように構成される。
【0007】
また、開示されたプログラムは、車両のドライバの運転行動の変容を支援する運転行動変容支援プログラムであって、
少なくとも1つのプロセッサに、
ドライバの支援受容性を高めるための事前情報をドライバへ向けて提供することと、
事前情報に対するドライバの反応を把握することと、
ドライバの反応に応じて、実支援の態様を決定することと、
決定された実支援の態様に基づいて実支援することと、を実行させるように構成される。
【0008】
これらによると、実支援の態様は、ドライバへ提供した事前情報に対する反応に応じて、決定される。この事前情報は、支援受容性を高める情報であり、これに対するドライバの反応を織り込んだ実支援を実行するため、ドライバの自律的な運転行動の変容を効果的に促すことが可能となる。
【0009】
なお、特許請求の範囲等に含まれる括弧内の符号は、後述する実施形態の部分との対応関係を例示的に示すものであって、技術的範囲を限定することを意図するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図2】HCUによる処理の例を示すフローチャート。
【
図3】各タイミングでの情報提供又は支援の意図を説明する図。
【
図6】コーチングでの運転終了時の支援を説明する図。
【
図7】ゲーミフィケーションでの事前情報提供を説明する図。
【
図8】ゲーミフィケーションでの事前情報提供を説明する図。
【
図9】ゲーミフィケーションでの運転中の支援を説明する図。
【
図10】ゲーミフィケーションでの運転終了時の支援を説明する図。
【
図11】ゲーミフィケーションでの運転終了時の支援を説明する図。
【
図12】ベクションでの運転中の支援を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
一実施形態を図面に基づいて説明する。
【0012】
(第1実施形態)
図1に示すように、第1実施形態による運転行動変容支援装置は、車両に用いられ、ドライバの運転行動の変容を支援する。運転行動変容支援装置は、例えばHCU(Human Machine Interface Control Unit)1である。HCU1は、複数のHMI(Human Machine Interface/Human Machine Interaction)デバイスを用いたHMI機能を統合的に制御する。HCU1が搭載される車両は、ドライバによる手動運転が可能な車両である。HCU1が搭載される車両は、自車両ともいう。自車両は、例えばSAEに定義される自動化レベル0~2の車両であってよく、手動運転モードに移行することがある自動化レベル3,4の車両であってもよい。
【0013】
HCU1は、コンピュータを主体として構成されており、メモリ及びプロセッサを、少なくとも1つずつ有している。メモリは、プロセッサにより読み取り可能なプログラム及びデータ等を非一時的に記憶する、例えば半導体メモリ、磁気媒体、及び光学媒体等のうち、少なくとも1種類の非遷移的実体的記憶媒体であってよい。さらにメモリとして、例えばRAM(Random Access Memory)等の書き換え可能な揮発性の記憶媒体が設けられていてもよい。プロセッサは、例えばCPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、及びRISC(Reduced Instruction Set Computer)-CPU等のうち、少なくとも1種類をコアとして含んでいてよい。プロセッサは、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、NPU(Neural network Processing Unit)及び他の専用機能を備えたIPコア等をさらに含む構成であってよい。またプロセッサは、プリント基板に個別に実装された構成であってもよい。また、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、SoC(System on Chip)及びFPGA等に実装された構成がプロセッサに相当してもよい。
【0014】
HCUは、プロセッサによる運転行動変容支援プログラムの実行により、運転行動支援機能を実現するための、複数の機能部を有する。具体的にHCU1は、シーン認識部10、ドライバ理解部20、事故要因予測部30、優先度調停部40及び行動変容支援部50を含む構成である。
【0015】
シーン認識部10は、車外情報、自車情報、及びドライバ情報を取得し、これらの情報から自車両及びドライバがおかれているシーンを認識する。シーンは、シナリオと言い換えてもよい。
【0016】
車外情報は、環境情報、地図情報、ADAS(Advanced Driving Assistant System)情報等を含んでいてよい。環境情報は、日時、車外の明るさ、天候等を含んでいてよい。これらは、例えば自車両の通信システムを介して、クラウドサーバ等から受信してもよい。また車外の明るさは、自車両に設けられた日照センサから取得されてもよい。地図情報は、道路種別、道路形状、車線数等を含んでいてよい。地図情報は、自車両に設けられた地図データベース(以下、地
図DB)から取得されてよい。地
図DBは、自車両の運転支援システムが備えていてもよく、ナビゲーションシステムが備えていてもよく、HCU1が備えていてもよい。ADAS情報は、自車両の周辺に存在する他車両、歩行者等の情報、車線区画線(白線)等の物標に関する情報を含む。ADAS情報は、自車両に設けられた周辺監視センサから取得されてよい。周辺監視センサは、例えばカメラ、ミリ波レーダ、超音波ソナー及びLiDAR(Light Detection and Ranging/Laser Imaging Detection and Ranging)のうち1つのセンサ、又は、1種類以上の複数のセンサの組み合わせにより構成されていてよい。
【0017】
自車情報は、運転操作情報、車両挙動情報、車両仕様情報、車両設定情報等を含んでいてよい。運転操作情報は、運転アクチュエータのドライバによる操作情報を含んでいてよい。運転アクチュエータは、パワートレイン、ステアリング、ブレーキ等である。車両挙動情報は、自車両の速度、ヨーレート等を含んでいてよい。車両仕様情報は、自車両の車種、自車両のサイズ、仕様等の情報を含んでいてよい。車両設定情報は、自車両の車外を照明するライトの設定、ナビゲーションシステムの設定等を含んでいてよい。
【0018】
ドライバ情報は、ドライバがHMIデバイスを通じて入力した情報、DSM(Driver Status Monitor)を通じて取得した情報等を含んでいてよい。ドライバがHMIデバイスを通じて入力した情報には、ドライバの個人情報が含まれていてよい。DSMは、ドライバ(例えばドライバの頭部)を撮影するカメラ、及び撮影された画像を解析する制御ユニットを含む構成である。制御ユニットは、乗員のアイポイントの位置、視線方向、及び表情等を解析する。
【0019】
具体的に、シーン認識部10は、危険シーン特定部11及び危険運転行動抽出部12を、サブ機能部として有する。危険シーン特定部11は、車外情報に基づき、危険シーンを特定する。危険シーンは、例えば、死角から他車両や歩行者等が飛び出すシーン、死角が存在する交差点のシーン、右左折時の二輪車等巻き込みシーン等である。危険運転行動抽出部12は、車外情報、自車情報、ドライバ情報及び危険シーン特定部11による危険シーンの特定情報に基づき、ドライバの危険運転行動を抽出する。危険運転行動は、安全確認に関する行動、車速に関する行動及び自車位置に関する行動等を含む。
【0020】
ドライバ理解部20は、自車情報及びドライバ情報を取得し、ドライバの性質及びドライバの行動を理解する。具体的に、ドライバ理解部20は、自車情報及びドライバ情報に基づき、ドライバプロファイリングを生成する。
【0021】
ドライバプロファイリングは、性質の推定結果、行動の推定結果及び行動変容に対する情報を含む。性質の推定結果は、走行経路に対する慣れやすさのついての推定結果、天候への慣れやすさについての推定結果、及び明るさへの慣れやすさについての推定結果を含む。行動の推定結果は、目的地の推定結果及び走行経路の推定結果を含む。行動変容に対する情報は、危険運転行動特性、危険運転行動要因、ドライバ課題(ドライバに課す課題)、行動変容ステージ等の情報を含む。行動変容に対する情報は、事故要因予測部30及び優先度調停部40による最新の処理結果に基づいて、更新可能に構成されていてよい。
【0022】
これらのドライバプロファイリングは、ドライバデータ21として、記憶媒体に記憶される。記憶媒体は、上述のメモリと共用されていてもよく、ドライバデータ21専用の記憶媒体であってもよい。ドライバデータ21専用の記憶媒体は、上述のプロセッサにより読み取り可能なプログラム及びデータ等を非一時的に記憶する、例えば半導体メモリ、磁気媒体、及び光学媒体等のうち、少なくとも1種類の非遷移的実体的記憶媒体であってよい。
【0023】
事故要因予測部30は、シーン認識部10から危険シーンの特定情報及び危険運転行動の検出情報を取得し、危険シーンと危険運転行動とを紐付け(関連付け)した運転行動データ33を生成し、記憶媒体に記憶する。記憶媒体は、上述のメモリと共用されていてもよく、運転行動データ33専用の記憶媒体であってもよい。運転行動データ33専用の記憶媒体は、上述のプロセッサにより読み取り可能なプログラム及びデータ等を非一時的に記憶する、例えば半導体メモリ、磁気媒体、及び光学媒体等のうち、少なくとも1種類の非遷移的実体的記憶媒体であってよい。事故要因予測部30は、このように記憶した運転行動データ33を使用して、自車両が将来遭遇する可能性のある事故と、その要因を予測する。
【0024】
具体的に、事故要因予測部30は、特性推定部31及び要因推定部32を、サブ機能部として有する。特性推定部31は、運転行動データ33及びドライバデータ21に基づき、ドライバの危険運転行動特性を推定する。危険運転行動特性は、危険シーンに関する特性、危険運転行動に関する特性及び発生要因を含む。発生要因は、例えば天候、時間帯、道路形状、交通状況(例えば渋滞)等の外部環境である。特性推定部31は、推定した最新の危険運転行動特性を、運転行動データ33に追加又は更新して記憶するようにしてもよい。
【0025】
要因推定部32は、危険運転行動特性の推定結果、運転行動データ33及びドライバデータ21に基づき、ドライバの危険運転行動要因を推定する。危険運転行動要因は、例えば危険軽視、錯覚、場面本能行動、不注意、近道等の省略行動、集団欠陥が挙げられる。要因推定部32は、推定した最新の危険運転行動特性及び危険運転行動要因を、ドライバデータ21に追加又は更新して記憶するようにしてもよい。
【0026】
優先度調停部40は、事前情報に対するフィードバック(FB)を取得し、ドライバの運転行動の変容を支援する手法ないし手段に関する、優先度を決定し、調停する。具体的に、優先度調停部40は、ステージ判定部41及び課題設定部42を、サブ機能部として有する。事前情報に対するフィードバックは、後述する事前情報に対するドライバの反応であってもよい。
【0027】
ステージ判定部41は、危険運転行動の抽出結果、運転行動データ33及びドライバデータ21、事前情報に対するFBを取得し、これらに基づいてドライバの現在の行動変容ステージを判定する。ステージ判定部41は、判定した最新の変容行動ステージを、ドライバデータ21に追加又は更新して記憶するようにしてよい。
【0028】
行動変容ステージは、例えばトランスセオレティカル・モデルに基づいて定義される、ドライバが行動を変容される過程の各段階を示す。例えば変容行動ステージは、無関心期、関心期、準備期、実行期及び維持期を含む。無関心期は、ドライバが行動を変化させる意志をもたず、問題も否定する段階を示す時期である。関心期は、ドライバが問題及び変化の必要性に気付き、行動変化を考え始める段階を示す時期である。準備期は、ドライバが意思決定をし、行動のための準備を始める段階を示す時期である。実行期は、ドライバが行動を変えるが習慣化できてきない段階を示す時期である。維持期は、ドライバが望ましい行動を規則的に行っている時期である。
【0029】
課題設定部42は、危険運転行動特性の推定結果、危険運転行動要因の推定結果、行動変容ステージの判定結果及び事前情報に対するFBを取得し、これらに基づいて、ドライバ課題を設定する。換言すれば、課題設定部42は、行動変容の支援内容の優先度を決定しているといえる。ここで課題設定部42は、定義されたシーン毎に、異なるドライバ課題を設定してもよい。
【0030】
行動変容支援部50は、ドライバ課題を達成するための改善手法を決定し、実行する。ここでいう改善手法は、ドライバへの支援内容を含んでいてよい。行動変容支援部50は、短期的支援部51及び長期的支援部52を、サブ機能部として有する。
【0031】
短期的支援部51は、ドライバへの短期的支援を実行する。短期的支援は、ドライバの知覚に対する支援及びドライバの運転操作に対する支援である。短期的支援部51は、ドライバ課題、走行環境、行動変容ステージ、危険シーン及び危険運転行動に応じて、当該シーンでの最適な支援を決定する。そして、短期的支援部51は、決定された支援を実行するための実行命令を、実像表示装置61、虚像表示装置62等の情報提示装置へ逐次出力する。
【0032】
長期的支援部52は、ドライバへの長期的支援を実行する。長期的支援は、危険運転行動特性及び危険運転行動要因の根本的改善である。長期的支援部52は、ドライバ課題、走行環境、行動変容ステージに応じて、特性及び要因の改善のための支援を決定する。長期的支援部52は、決定された支援を実行するための実行命令を、実像表示装置61、虚像表示装置62等の情報提示装置へ出力する。
【0033】
情報提示装置は、自車両に1つ又は複数搭載されているHMIデバイスである。情報提示装置は、実像表示装置61、虚像表示装置62等の表示装置であってもよい。実像表示装置61は、例えばメータディスプレイ、センターディスプレイであり、画面61aに実像を表示可能である。虚像表示装置62は、例えばヘッドアップディスプレイであり、自車両の外界OSと重畳して視認される虚像を表示可能である。また、情報提示装置は、スピーカ等の音声による情報提示装置であってもよい。
【0034】
ここで、センターディスプレイは、表示を行なう画面61aにおいて、ドライバによるタッチ操作が可能なタッチパネル機能を有していてよい。ここでのタッチ操作で入力された情報は、ドライバがHMIデバイスを通じて入力した情報に該当する。
【0035】
次に、HCU1が備えるプロセッサによる、ドライバの行動変容を支援する処理フローの概要を、
図2のフローチャートを用いて説明する。
図2のS1~5による処理は、ドライバが自車両を運転する前後を含む、一連の流れの中で実行される。
【0036】
S1は、ドライバが乗車し、運転を開始するまでに実行される処理である。S1では、行動変容支援部50は、ドライバに対して運転実施前の事前情報を提供する。この事前情報は、ドライバの支援受容性を高めるための情報を含む。支援受容性とは、ドライバがHCU1による支援を、自身の運転行動の変容に活用するために、受け入れる性質を意味する。S1の処理後、S2へ進む。
【0037】
S2では、ドライバ理解部20及び優先度調停部40のうち少なくとも一方は、事前情報の提供に対するドライバの反応を把握する。ドライバの反応の把握は、例えばDSMによって解析されたドライバの視線情報、事前情報に対するドライバのHMIデバイスへの入力情報によって実行される。すなわち、ドライバ理解部20及び優先度調停部40のうち少なくとも一方は、視線情報及び入力情報に基づき、事前情報に対するドライバの興味度合いを推測する。ドライバ理解部20は、事前情報に対するドライバの反応ないしその解析結果を、ドライバプロファイリングに反映させる。S2の処理後、S3へ進む。
【0038】
S3では、行動変容支援部50は、実支援の態様を決定する。すなわち、事前情報に対するドライバの反応を考慮して更新されたドライバプロファイリングは、上述のように、事故要因予測部30ないし優先度調停部40の処理を経て、行動変容支援部50での実支援の決定に反映されることとなる。また、事前情報に対するFBとして取得された情報が、優先度調停部40の処置に影響し、行動変容支援部50での実支援の決定に反映されることとなる。ここでの実支援とは、運転中ないし運転終了時に実行される、運転に関する具体的な支援を意味する。S3の処理後、S4へ進む。
【0039】
S4は、ドライバが運転を開始し終了するまでの、運転中に実行される処理である。S4では、行動変容支援部50は、S3で決定した態様に基づき、情報提示装置等のHMIデバイスを通じて、運転中の支援を実行する。S4の処理後、S5へ進む。
【0040】
S5は、ドライバが運転を終了した後に実行される処理である。S5では、行動変容支援部50は、運転終了時の支援を実行する。S5の処理を以って一連の処理を終了する。
【0041】
以下、
図2に示された処理について詳細を説明する。まず、タイミング別の支援の意図及び目的について、
図3を用いて説明する。第1のタイミングである運転前においては、上述のように、ドライバの支援受容性を高めるため、ドライバへ気づきを与えること、思い出してもらうこと、又は目標の設定を導くことによるモチベーション向上を促すこと等が重要である。
【0042】
すなわち、行動変容支援部50は、HMIデバイスを通じて、ドライバがこれから運転するにあたり、ドライバの安全意識を向上させる事前情報を提供する。安全意識を向上させるための意識支援として、行動変容支援部50は、最新の事故情報、安全運転を促すメッセージ、降雪等の天候情報等をドライバへ提供する。
【0043】
なお、事前情報の提供タイミングは、ドライバが乗車した後、運転を開始するまでに限らず、運転中において運転負荷の低い時及び生活ベースの隙間時間のうち、少なくとも1つに拡張されてもよい。運転負荷の低い時は、例えば信号待ち時、ACC(Adaptive Cruise Control)の実行時、渋滞時等が該当する。生活ベースの隙間時間は、ドライバが自車両に乗車していない時間を含んでいてよく、この場合、行動変容支援部50は、HMIデバイスとしてドライバが所有するスマートフォン等の、HCU1又は自車両と通信可能に構成された携帯端末等を通じて事前情報を提供する。生活ベースの隙間時間は、例えば給油中、車載電池の充電中、送り迎えの待ち時間、ドライバが乗車するために駐車位置へ向かう途中、ドライバが携帯端末で自車両を遠隔操作する時等が該当する。自車両の遠隔操作は、例えば自車両の空調の設定操作である。
【0044】
第2のタイミングである運転中(
図3における「該当区間」)においては、ドライバに対して、制限速度を意識させること、現在の自車両の車速を意識させること、状況の良し悪しを理解させること等が重要である。そして、行動変容支援部50は、情報提示する行動変容の支援が、例えば危険であることの警告、経路案内等のより優先度の高い情報提示と重なった場合に、行動変容の支援をキャンセル又は延期する。
【0045】
第3のタイミングである運転終了時においては、ドライバに対して、結果を理解させること、良かった点及び悪かった点を理解させること、継続意欲を繋げさせること等が重要である。行動変容支援部50は、ドライバが確認する可能性が高く、かつ、ドライバの記憶に残りやすいタイミングにて、ドライバに情報提示を行う。例えば、ドライバがシフトポジションをパーキングへ変更したタイミングにて、行動変容の支援に関する情報提示が開始されるようにしてもよい。あるいは、自車両のエンジンスイッチがオフ操作されたタイミングにて、携帯端末での行動変容の支援に関する情報提示が開始されるようにしてもよい。
【0046】
次に、実支援の態様について、
図4~12を用いて説明する。実支援の態様は、例えばコーチング、ゲーミフィケーション、ベクション等の手法ないし手段によって実現される。行動変容支援部50は、ドライバに最適な実支援の態様を実現するための手法を、事前に用意されている手法の中から1つ又は複数選択する。さらに、行動変容支援部50は、選択した手法を用いた具体的な支援内容を決定する。
【0047】
図4~6に表示例を示すコーチングは、ドライバに寄り添うことにより、ドライバの自己成長による行動変容を促す手法である。より詳細に、コーチングは、事前にドライバの内発的モチベーションを促す目標を設定し、運転中に当該目標を達成しやすくするための実支援を実行し、運転終了時にドライバの内発的継続意欲を促す手法である。
【0048】
具体的に、コーチングにおける事前情報提供を示す
図4のように、行動変容支援部50は、実像表示装置61を用いて、目標設定コンテンツCN1を表示する。目標設定コンテンツCN1は、例えば複数の目標をドライバが選択できるように提示することで、ドライバの支援受容性を高めるための事前情報を提供するコンテンツである。提示対象かつ選択対象となる複数の目標は、優先度調停部40(特に課題設定部42)が設定したドライバ課題に基づき、行動変容支援部50により生成される。目標の生成は、ニューラルネットワークを含むように構成され、予め学習された目標生成モデルを用いて実現されてもよい。
【0049】
また、目標は、ドライバが目標値や達成条件をカスタマイズすることが可能であってもよい。目標は、未達成の状態であっても、ドライバの意思に応じて、又は、状況変化に応じて、再設定可能であってもよい。
【0050】
ドライバプロファイリングが、ドライバの特性として、煩雑さを嫌う特性を示す場合、行動変容支援部50は、目標設定においてドライバの設定操作を減少させるようにしてもよい。例えば、行動変容支援部50は、目標設定コンテンツCN1を、ドライバプロファイリングが煩雑さを嫌う特性を示さない場合に採用する目標設定コンテンツCN1に対して、ドライバの操作回数が減少するようなコンテンツへ変更してもよい。例えば行動変容支援部50は、目標設定コンテンツCN1を、お勧めの目標を1つ表示するだけで、ドライバの選択が不要なコンテンツへ変更してもよい。目標を再設定する場合には、行動変容支援部50は、目標設定コンテンツCN1を、「ちょっと難しくする」「ちょっと易しくする」等の簡易な応答だけで再設定を可能とするコンテンツへ変更してもよい。
【0051】
また、目標の提示に対してドライバが選択操作をしない場合、行動変容支援部50は、ドライバが選択しない理由を解消して、ドライバが選択できる状況を実現してもよい。ドライバが目標設定コンテンツCN1を見ていない場合、行動変容支援部50は、目標設定コンテンツCN1を表示するHMIデバイスを、例えば実像表示装置61から虚像表示装置62へと変更してもよい。あるいは、ドライバが目標設定コンテンツCN1を見ていない場合、行動変容支援部50は、目標設定コンテンツCN1の表示タイミングを変更してもよい。あるいは、ドライバが目標設定コンテンツCN1を見ていない場合、行動変容支援部50は、ドライバの代わりに同乗者が目標を選択するように音声等で報知してもよい。
【0052】
ドライバが目標設定コンテンツCN1を見たが目標を選択しない場合、行動変容支援部50は、提示する目標を変更してもよい。あるいは、ドライバが目標設定コンテンツCN1を見ていない場合、行動変容支援部50は、同乗者に選択するように音声等で報知してもよい。
【0053】
次に、コーチングにおける運転中の実支援を示す
図5のように、行動変容支援部50は、虚像表示装置62を用いて、外界OSと重畳する運転中支援コンテンツCN2を表示する。運転中支援コンテンツCN2は、運転中のドライバの視界に入る位置に表示される画像であって、制限速度を示す画像IM1、自車両の車速を示す画像IM2及び設定された目標の達成状況を示す画像IM3を含む。
【0054】
次に、コーチングにおける運転終了時の実支援を示す
図6のように、行動変容支援部50は、実像表示装置61を用いて、目標継続状況コンテンツCN3を表示する。目標継続状況コンテンツCN3は、目標継続状況を示す画像IM4及び目標継続状況に対するコメントCM1を含む。目標継続状況を示す画像IM4は、例えばカレンダーに目標にチャレンジした日(又は目標をクリアした日)をマーキングした画像等のハビットチェーンを視覚化した画像であってよい。目標継続状況に対するコメントCM1は、ドライバを前向きに激励するような、ドライバの内発的継続意欲を促すコメントであることが好ましい。
【0055】
図7~11に表示例を示すゲーミフィケーションは、ゲーム感覚で目標を達成させることで、ドライバの行動変容を促す手法である。ゲーミフィケーションは、事前にドライバの外発的モチベーションを促す目標を設定し、運転中に外発的モチベーションをさらに高める実支援を実行し、運転終了時にドライバの外発的継続意欲を促す手法である。
【0056】
具体的に、ゲーミフィケーションにおける事前情報提供を示す
図7のように、行動変容支援部50は、実像表示装置61を用いて、目標設定コンテンツCN4を表示する。ここでの目標設定コンテンツCN4は、チャレンジ設定コンテンツと称されてもよい。目標設定コンテンツCN4は、複数のチャレンジ項目毎に獲得できるアイテムをアイコン等を用いて一覧表示することで、アイテムを獲得するためのコレクター欲を高めるコンテンツである。アイテムは、例えばバッジ、カップ、トロフィー等である。そして、
図8に示すように、行動変容支援部50は、ドライバのコレクター欲に乗じて、ドライバにチャレンジを成功するための詳細な条件や説明を情報提示し、確認させる。
【0057】
また、行動変容支援部50は、ドライバにゲーミフィケーションをやりたいかやりたくないかを選択させる。あるいは、行動変容支援部50は、ドライバに複数のチャレンジを提案し、チャレンジの種類を選択させる。
【0058】
次に、ゲーミフィケーションにおいて運転中の実支援を示す
図9のように、行動変容支援部50は、虚像表示装置62を用いて、外界OSと重畳する運転中支援コンテンツCN5を表示する。運転中支援コンテンツCN5は、運転中のドライバの視界に入る位置に表示される画像であって、制限速度を示す画像IM1、自車両の車速を示す画像IM2及びゲーミフィケーション画像IM5を含む。ゲーミフィケーション画像IM5は、例えば自車線上に置かれたコインを表す画像、現在の獲得コイン数を表す画像及び獲得目標のアイテムを表す画像を含む。
【0059】
例えば目標が制限速度を守ることである場合、自車両が制限速度を守った状態でコインの位置を通過すると、コインを獲得することができる。そして、獲得コイン数が予め設定された獲得コイン数に到達すると、獲得目標のアイテムを獲得することができる(
図8も参照)。
【0060】
次に、ゲーミフィケーションにおいて運転終了時の実支援を示す
図10,11のように、行動変容支援部50は、実像表示装置61を用いて、アイテム獲得のためのチャレンジ結果を示すチャレンジ結果コンテンツCN6,CN7を表示する。
図10のように、チャレンジ結果コンテンツCN6は、獲得アイテムを示す画像IM6及び獲得コイン数を示す画像IM7を含んでいてよい。また、
図10の表示からドライバの操作によって切り替えられる
図11の画面61aでは、チャレンジ結果コンテンツCN7は、獲得コイン数のランキングを示す画像IM8を含んでいてよい。ランキングは、他車両のドライバの獲得コイン数とを比較し、順位付けしたものである。ランキングは、V2X通信等により接続されたサーバに自車両のドライバの獲得コイン数を送信することで、サーバが集計したものである。行動変容支援部50は、サーバから集計されたランキングを取得する。このように、他車両のドライバとの競争を促すことで、ドライバの外発的モチベーションをさらに高めることができる。
【0061】
ベクションは、視覚誘導性自己運動感覚とも呼ばれており、ドライバに錯覚を感じさせることで、無意識にドライバの行動変容を促す手法である。例えば、運転中の実支援を示す
図12に示すように、行動変容支援部50は、虚像表示装置62を用いて、自車両が走行する道路TRに重畳するように、ベクションコンテンツCN8を表示する。ベクションコンテンツCN8は、視覚的錯覚を与えるコンテンツであって、例えば前方の道路TRの延伸方向に沿った複数の直線により、ドライバにスピード感を錯覚させるコンテンツを含んでいてよい。視覚的錯覚を与えるコンテンツは、道路に円形を配列した模様を重畳表示することで、ドライバに対して道路に凹凸が存在すると錯覚させるコンテンツであってもよい。
【0062】
ベクションコンテンツCN8は、視覚的錯覚を与えるコンテンツの他、スピーカを用いた聴覚的錯覚を与えるコンテンツ、ステアリングハンドルや運転席に搭載された振動装置を用いた触覚的錯覚を与えるコンテンツをさらに含んでいてもよい。聴覚的錯覚を与えるコンテンツは、例えば高速走行時のロードノイズを模擬的に再現した音声であってよい。ベクションコンテンツCN8は、ドライバにより好みの態様にカスタマイズできる仕様であってもよい。
【0063】
次に、行動変容支援部50が実支援の態様を決定するアルゴリズムについて説明する。行動変容支援部50は、長期的な観点で、コーチング、ゲーミフィケーション及びベクションから最適な手法を選択する。最適な手法の選択は、ドライバプロファイリング及び優先度調停部40による処理に基づいて実行される。具体的に、行動変容支援部50は、以前実行された実支援に対する支援受容性、及び今回の事前情報に対するドライバの反応に応じて、今回の実支援の態様を決定する。
【0064】
行動変容支援部50は、ドライバに対して、最初にコーチング又はゲーミフィケーションを用いた支援を試みる。コーチング及びゲーミフィケーションのいずれを選択するかは、最適な手法の選択は、ドライバプロファイリング及び優先度調停部40による処理に基づいて決定すればよい。例えばゲームに親しみの少ない高齢者に対してはコーチングが選択され、ゲームに親しみのある若者に対してはゲーミフィケーションが選択されるようにしてもよい。ドライバがHMIデバイスの操作によってコーチング及びゲーミフィケーションのいずれかを選択するようにしてもよい。
【0065】
具体的に、行動変容支援部50が提供した目標設定コンテンツCN1,CN4に対するドライバの反応をドライバ理解部20及び優先度調停部40のうち少なくとも一方が分析し、当該反応に応じて行動変容支援部50が運転時の実支援の詳細を決定する。さらに、運転時の実支援に対するドライバの反応をドライバ理解部20及び優先度調停部40のうち少なくとも一方が分析し、当該反応に応じて行動変容支援部50が運転終了時の実支援の詳細を決定してもよい。
【0066】
例えば行動変容支援部50は、ドライバの興味度合いの高い事前情報に関連する実支援よりも、ドライバの興味度合いの低い事前情報に関連する運転中の実支援を強化してもよい。実支援の強化は、運転中支援コンテンツCN2,CN5についての、早めの表示タイミングの設定、長い表示時間の設定、表示サイズの拡大等により実現されてもよい。実支援の強化は、コーチング又はゲーミフィケーションによる支援に、ベクションを組み合わせることにより実現されてもよい。これにより、ドライバは目標を達成しやすくなり、内発的継続意欲ないし外発的継続意欲の向上につながる。
【0067】
このような支援によっても、コーチング又はゲーミフィケーションを用いた支援によるドライバの行動変容の進行ペースが予め設定された設定ペースよりも遅い場合、行動変容支援部50は、コーチング及びゲーミフィケーションによる支援を断念し、ベクションによる支援に切り替える。ドライバの行動変容の進行ペースが予め設定された設定ペースよりも遅い場合とは、例えば、設定された目標ないしチャレンジの達成ペースが、予め設定されたペースよりも遅い場合であってよい。ドライバの行動変容の進行ペースが予め設定された設定ペースよりも遅い場合とは、例えば、ステージ判定部41により判定される行動変容ステージが、予め設定された期間経過しても移行しない場合であってよい。
【0068】
以上説明した第1実施形態によると、実支援の態様は、ドライバへ提供した事前情報に対する反応に応じて、決定される。この事前情報は、支援受容性を高める情報であり、これに対するドライバの反応を織り込んだ実支援を実行するため、ドライバの自律的な運転行動の変容を効果的に促すことが可能となる。
【0069】
また、第1実施形態によると、ドライバの運転時の実支援と、運転終了時の実支援とが両方実行される。すなわち、事前情報の提供、運転時の実支援、運転終了時の実支援という、3つのタイミングでドライバに行動変容を促すことにより、ドライバの安全運転への意識を高めることができる。
【0070】
また、第1実施形態によると、事前情報に対するドライバの反応に応じて、運転時の実支援の態様が決定され、運転時の実支援に対するドライバの反応に応じて、運転終了時の実支援の態様が決定される。このように、各タイミングでのドライバの反応に応じて、次のタイミングでの実支援の態様が決定されるので、ドライバの自律的な運転行動の変容を効果的に促すことが可能となる。
【0071】
また、第1実施形態によると、ドライバの内発的意欲を高めるコーチングの手法を用いた実支援の態様と、ドライバの外発的意欲を高めるゲーミフィケーションの手法を用いた実支援の態様とが選択的に決定される。ドライバの適した手法が選択されるので、ドライバの自律的な運転行動の変容を効果的に促すことが可能となる。
【0072】
また、第1実施形態によると、コーチングの手法を用いた実支援又はゲーミフィケーションの手法を用いた実支援の実行によるドライバの行動変容の進行ペースが予め設定された設定ペースよりも遅い。この場合に、コーチングの手法を用いた実支援又はゲーミフィケーションの手法を用いた実支援に代えて、ドライバに錯覚を感じさせることで、無意識にドライバの行動変容を促すベクションの手法を用いた実支援を採用することが決定される。行動変容のための意欲の向上が難しいドライバに対して、無意識の行動変容を促すことで、ドライバの運転行動の変容を実現は、より容易なものとなる。
【0073】
(他の実施形態)
以上、一実施形態について説明したが、本開示は、当該実施形態に限定して解釈されるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲内において種々の実施形態に適用することができる。
【0074】
他の実施形態として、ドライバ理解部20及び優先度調停部40のうち少なくとも一方は、事前情報に対するドライバの反応を、ドライバが発する音声やジェスチャを分析することによって把握してもよい。
【0075】
他の実施形態として、行動変容支援部50は、コーチング又はゲーミフィケーションを用いた支援によるドライバの行動変容の進行ペースが予め設定された設定ペースよりも遅い場合、同乗者である子どもへ向けた交通安全に関する情報提供を実施してもよい。この情報提供は、子どもが理解可能なコンテンツであることが好ましい。子どもの交通安全に対する意識を高め、子どもを通じてドライバへ行動変容を促すことが可能である。
【0076】
他の実施形態として、ゲーミフィケーションにおいて、チャレンジ達成の報酬としてドライバに付与される報酬は、上述のアイテム以外の実生活に役立つ報酬であってよい。例えば報酬は、ディーラー等での商品購入やメンテナンス費用に充当可能なポイントであってもよく、割引券であってもよい。
【0077】
他の実施形態として、運転行動変容支援装置は、HCU1以外の、あらゆるハードウエア構成によって実現可能である。例えば運転行動変容支援装置は、車両の運転及び表示を統合的に制御するECUによって実現されてもよい。運転行動変容支援装置は、車両に搭載されず、車両と通信可能に構成されたサーバによって実現されてもよい。
【0078】
本開示に記載の制御部及びその手法は、コンピュータプログラムにより具体化された一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサを構成する専用コンピュータにより、実現されてもよい。あるいは、本開示に記載の装置及びその手法は、専用ハードウエア論理回路により、実現されてもよい。もしくは、本開示に記載の装置及びその手法は、コンピュータプログラムを実行するプロセッサと一つ以上のハードウエア論理回路との組み合わせにより構成された一つ以上の専用コンピュータにより、実現されてもよい。また、コンピュータプログラムは、コンピュータにより実行されるインストラクションとして、コンピュータ読み取り可能な非遷移有形記録媒体に記憶されていてもよい。
【符号の説明】
【0079】
1:HCU、10:シーン認識部、20:ドライバ理解部、30:事故要因予測部、40:優先度調停部、50:行動変容支援部、61:実像表示装置、62:虚像表示装置