(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024157857
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】開閉器
(51)【国際特許分類】
H01F 27/02 20060101AFI20241031BHJP
H01F 27/06 20060101ALI20241031BHJP
H02B 1/28 20060101ALI20241031BHJP
【FI】
H01F27/02 A
H01F27/06
H02B1/28 G
H01F27/02 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023072479
(22)【出願日】2023-04-26
(71)【出願人】
【識別番号】000000262
【氏名又は名称】株式会社ダイヘン
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 英仁
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 登夫
(72)【発明者】
【氏名】志賀 大介
(72)【発明者】
【氏名】綾部 浩一
(72)【発明者】
【氏名】後藤 裕哉
【テーマコード(参考)】
5E059
5G016
【Fターム(参考)】
5E059BB02
5E059JM01
5E059KK16
5E059LL06
5G016AA03
5G016CC02
5G016CC17
(57)【要約】
【課題】異物の飛散を抑制することができる開閉器を提供する。
【解決手段】本開示に係る開閉器1は、所定の電路10を開閉する開閉器本体13と、該開閉器本体13の動作を制御する制御装置6に給電するための変圧器15と、該変圧器15を支持する支持部材4と、前記開閉器本体13、前記変圧器15、及び前記支持部材4を収容する密閉ケース11とを備え、該密閉ケース11は、内部の気体の圧力の上昇に応じて前記気体を外部に放出するための空隙が形成されるように構成され、前記支持部材4は、前記変圧器15が取り付けられる支持板41と、該支持板41に設けられ、前記密閉ケース11の前記空隙が形成される部分の少なくとも一部を覆う被覆板42とを備え、1枚の金属板を折り曲げることによって形成されていることを特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の電路を開閉する開閉器本体と、
該開閉器本体の動作を制御する制御装置に給電するための変圧器と、
該変圧器を支持する支持部材と、
前記開閉器本体、前記変圧器、及び前記支持部材を収容する密閉ケースと
を備え、
該密閉ケースは、内部の気体の圧力の上昇に応じて前記気体を外部に放出するための空隙が形成されるように構成され、
前記支持部材は、
前記変圧器が取り付けられる支持板と、
該支持板に設けられ、前記密閉ケースの前記空隙が形成される部分の少なくとも一部を覆う被覆板と
を備え、
1枚の金属板を折り曲げることによって形成されていることを特徴とする開閉器。
【請求項2】
前記密閉ケースは、
下向きに開口している矩形箱状の上部ケースと、
上向きに開口している矩形箱状の下部ケースと
を備え、
前記圧力の上昇に応じて、前記上部ケースの開口周縁部と前記下部ケースの開口周縁部との間に前記空隙が形成されるようにして、前記上部ケースの前記開口周縁部と前記下部ケースの前記開口周縁部とが気密に互いに取り付けられ、
前記支持部材は前記上部ケースに取り付けられ、複数の前記被覆板を備え、
前記支持板は矩形状をなし、両面が上下に向くようにして前記下部ケースに収容され、
一の前記被覆板は、前記支持板の一辺部から上向きに突出し、前記上部ケース及び前記下部ケース夫々の前記開口周縁部の一辺の半分以上を覆い、
他の前記被覆板は、前記支持板の他辺部から上向きに突出し、該他辺部は前記支持板の前記一辺部に対向し、前記開口周縁部の他辺の半分以上を覆い、該他辺は前記開口周縁部の前記一辺に対向することを特徴とする請求項1に記載の開閉器。
【請求項3】
前記上部ケース及び前記下部ケース夫々の前記開口周縁部は一方向に長い矩形状をなし、
前記開口周縁部の前記一辺及び前記他辺は前記開口周縁部の一方の長辺及び他方の長辺であり、
前記支持板は一方向に長い矩形状をなし、
前記支持板の前記一辺部及び前記他辺部は前記支持板の一方の長辺部及び他方の長辺部であり、
各被覆板は前記長辺部の全長にわたり、
前記支持部材は、各被覆板の縁部から前記被覆板の一面に交差する方向に突出し、前記上部ケースに取り付けられる取付板を更に備えることを特徴とする請求項2に記載の開閉器。
【請求項4】
前記変圧器は、
雌ネジが設けられた変圧器本体と、
該変圧器本体から上向きに突出し、前記電路に電気的に接続される接続端子と
を備え、
前記支持板を下側から貫通した雄ネジが、前記雌ネジに螺合することによって、前記支持板の上面に取り付けられることを特徴とする請求項2又は3に記載の開閉器。
【請求項5】
前記密閉ケースの壁部を気密に貫通するブッシングを更に備え、
前記開閉器本体は、前記ブッシングを通して前記密閉ケースに引き込まれる前記電路を開閉し、
前記空隙は、前記ブッシングよりも下側に形成され、
前記被覆板は、前記ブッシングの下側にて前記密閉ケースの前記空隙が形成される部分の少なくとも一部を覆うことを特徴とする請求項1から3の何れか一項に記載の開閉器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、開閉器に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載の開閉器は電磁スイッチ(開閉器本体)及び電源変圧器(変圧器)を備える。電磁スイッチは配電線(電路)を開閉する。電磁スイッチの動作を制御する開閉器子局(制御装置)は、配電線から電源変圧器を介して受電する。電磁スイッチ及び電源変圧器は、密閉されたケース(密閉ケース)に収容される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
開閉器に異常(例えば内部短絡によるケース内部の過熱)が生じたことによってケース内部の気圧が過剰に上昇した場合、ケースの破損を防止するために、ケース内部の気体をケース外部に放出することが考えられる。しかしながら、気体の放出に伴いケース内部からケース外部に異物が飛散する虞がある。
【0005】
本開示の目的は、異物の飛散を抑制することができる開閉器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る開閉器は、所定の電路を開閉する開閉器本体と、該開閉器本体の動作を制御する制御装置に給電するための変圧器と、該変圧器を支持する支持部材と、前記開閉器本体、前記変圧器、及び前記支持部材を収容する密閉ケースとを備え、該密閉ケースは、内部の気体の圧力の上昇に応じて前記気体を外部に放出するための空隙が形成されるように構成され、前記支持部材は、前記変圧器が取り付けられる支持板と、該支持板に設けられ、前記密閉ケースの前記空隙が形成される部分の少なくとも一部を覆う被覆板とを備え、1枚の金属板を折り曲げることによって形成されていることを特徴とする。
【0007】
本開示にあっては、開閉器が開閉器本体、変圧器、支持部材、及び密閉ケースを備える。開閉器本体、変圧器、及び支持部材は密閉ケースに収容される。開閉器本体は所定の電路を開閉する。変圧器は制御装置に給電するためのものであり、制御装置は開閉器本体による電路の開閉を制御する。
支持部材は支持板及び被覆板を備える。支持板に変圧器が取り付けられることにより、支持部材は変圧器を支持する。被覆板は支持板に設けられる。
【0008】
開閉器に異常が生じた場合、密閉ケース内部の気体の圧力(密閉ケースの内圧)が過剰に上昇することがある。そこで、密閉ケースは、密閉ケースの内圧の上昇に応じて圧力放出部が形成されるように構成される。圧力放出部とは、密閉ケース内部の気体を密閉ケース外部に放出するための空隙である。圧力放出部を通って密閉ケース内部から密閉ケース外部に気体が噴出するので、密閉ケースの内圧が下がる。故に、内圧による密閉ケースの破損を防止することができる。
【0009】
被覆板は、密閉ケースの圧力放出部が形成される部分の少なくとも一部を覆う。故に、圧力放出部が形成された場合、被覆板は圧力放出部の少なくとも一部を覆う。従って、圧力放出部を異物が通過することを被覆板によって抑制することができる。この結果、異物の飛散を抑制することができる。
変圧器を支持する支持部材が、異物の飛散を抑制する部材を兼ねるので、部品点数を削減することができる。しかも、支持部材は、1枚の金属板を折り曲げることによって容易に形成することができる。
【0010】
本開示に係る開閉器は、前記密閉ケースは、下向きに開口している矩形箱状の上部ケースと、上向きに開口している矩形箱状の下部ケースとを備え、前記圧力の上昇に応じて、前記上部ケースの開口周縁部と前記下部ケースの開口周縁部との間に前記空隙が形成されるようにして、前記上部ケースの前記開口周縁部と前記下部ケースの前記開口周縁部とが気密に互いに取り付けられ、前記支持部材は前記上部ケースに取り付けられ、複数の前記被覆板を備え、前記支持板は矩形状をなし、両面が上下に向くようにして前記下部ケースに収容され、一の前記被覆板は、前記支持板の一辺部から上向きに突出し、前記上部ケース及び前記下部ケース夫々の前記開口周縁部の一辺の半分以上を覆い、他の前記被覆板は、前記支持板の他辺部から上向きに突出し、該他辺部は前記支持板の前記一辺部に対向し、前記開口周縁部の他辺の半分以上を覆い、該他辺は前記開口周縁部の前記一辺に対向することを特徴とする。
【0011】
本開示にあっては、密閉ケースが上部ケース及び下部ケースを備える。上部ケースは下向きに開口している矩形箱状をなす。下部ケースは上向きに開口している矩形箱状をなす。上部ケースの開口の周縁部と下部ケースの開口の周縁部とが気密に互いに取り付けられることによって密閉ケースが構成される。
密閉ケースの内圧の上昇に応じて上部ケースの開口周縁部と下部ケースの開口周縁部との間に圧力放出部が形成される。上部ケース及び下部ケース夫々の開口周縁部は矩形状をなすので、圧力放出部は矩形環状をなす。
【0012】
支持板は下部ケースに収容されるが、支持部材は上部ケースに取り付けられる。即ち、下部ケースは変圧器の重量を受け止めない。故に、変圧器の重量によって下部ケースが上部ケースに対して相対的に下向きに位置ずれし、密閉ケースの気密を損なう、という不都合を防止することができる。
【0013】
支持板は矩形状をなし、両面が上下に向く。支持部材が備える複数の被覆板の内、一の被覆板は、支持板の一辺部から上向きに突出し、他の被覆板は、支持板の一辺部に対向する他辺部から上向きに突出する。
一の被覆板は、上部ケース及び下部ケース夫々の開口周縁部の一辺の半分以上を覆い、他の被覆板は、上部ケース及び下部ケース夫々の開口周縁部の一辺に対向する他辺の半分以上を覆う。故に、圧力放出部が形成された場合、一の被覆部は圧力放出部の一辺の半分以上を覆い、他の被覆部は圧力放出部の一辺に対向する他辺の半分以上を覆う。従って、異物の飛散を効果的に抑制することができる。
【0014】
本開示に係る開閉器は、前記上部ケース及び前記下部ケース夫々の前記開口周縁部は一方向に長い矩形状をなし、前記開口周縁部の前記一辺及び前記他辺は前記開口周縁部の一方の長辺及び他方の長辺であり、前記支持板は一方向に長い矩形状をなし、前記支持板の前記一辺部及び前記他辺部は前記支持板の一方の長辺部及び他方の長辺部であり、各被覆板は前記長辺部の全長にわたり、前記支持部材は、各被覆板の縁部から前記被覆板の一面に交差する方向に突出し、前記上部ケースに取り付けられる取付板を更に備えることを特徴とする。
【0015】
本開示にあっては、上部ケース及び下部ケース夫々の開口周縁部が一方向に長い矩形状をなす。故に圧力放出部は一方向に長い矩形環状をなす。
支持板は一方向に長い矩形状をなす。支持部材が備える複数の被覆板の内、一の被覆板は、支持板の一方の長辺部から上向きに突出し、他の被覆板は、支持板の一方の長辺部に対向する他方の長辺部から上向きに突出する。各被覆板は支持板の長辺部の全長にわたるので、支持板と被覆板とが互いを確実に補強することができる。
支持部材は取付板を更に備える。取付板は上部ケースに取り付けられる。取付板は被覆板の縁部から被覆板の一面に交差する方向に突出するので、被覆板と取付板とが互いを補強することができる。
【0016】
一の被覆板は、上部ケース及び下部ケース夫々の開口周縁部の一方の長辺の半分以上を覆い、他の被覆板は、上部ケース及び下部ケース夫々の開口周縁部の一方の長辺に対向する他方の長辺の半分以上を覆う。故に、圧力放出部が形成された場合、一の被覆部は圧力放出部の一方の長辺の半分以上を覆い、他の被覆部は圧力放出部の一方の長辺に対向する他方の長辺の半分以上を覆う。従って、異物の飛散を効果的に抑制することができる。
【0017】
本開示に係る開閉器は、前記変圧器は、雌ネジが設けられた変圧器本体と、該変圧器本体から上向きに突出し、前記電路に電気的に接続される接続端子とを備え、前記支持板を下側から貫通した雄ネジが、前記雌ネジに螺合することによって、前記支持板の上面に取り付けられることを特徴とする。
【0018】
本開示にあっては、変圧器が変圧器本体及び接続端子を備える。
変圧器本体には雌ネジが設けられる。変圧器は、支持板を下側から貫通した雄ネジが、変圧器本体に設けられた雌ネジに螺合することによって、下部ケースに収容された支持板の上面に取り付けられる。変圧器本体と支持板との間に変圧器支持用の別部材が介在しないので、部品点数を削減することができる。
【0019】
接続端子は電路に電気的に接続される。接続端子は変圧器本体から上向きに(即ち上部ケースの天壁に向けて)突出する。つまり接続端子が下部ケースの底壁又は側壁に向けて突出することはない。一方、接続端子と上部ケースの天壁との間には空間的な余裕がある。故に、密閉ケースが導電性を有している場合でも、接続端子と密閉ケースの内面との間に絶縁体を介在させる必要がない。従って、部品点数を削減することができる。
【0020】
本開示に係る開閉器は、前記密閉ケースの壁部を気密に貫通するブッシングを更に備え、前記開閉器本体は、前記ブッシングを通して前記密閉ケースに引き込まれる前記電路を開閉し、前記空隙は、前記ブッシングよりも下側に形成され、前記被覆板は、前記ブッシングの下側にて前記密閉ケースの前記空隙が形成される部分の少なくとも一部を覆うことを特徴とする。
【0021】
本開示にあっては、開閉器がブッシングを更に備える。ブッシングは密閉ケースの壁部を気密に貫通する。開閉器本体は、ブッシングを通して密閉ケースに引き込まれる電路を開閉する。
ブッシングが磁器製又は合成樹脂製等の場合、開閉器の異常時にブッシングが破損して破片が生じることがある。
【0022】
圧力放出部はブッシングよりも下側に形成される。被覆板は、ブッシングの下側にて、密閉ケースの圧力放出部が形成される部分の少なくとも一部を覆う。故に、圧力放出部が形成された場合、被覆板はブッシングの下側の空間(即ちブッシングの破片が落下しやすい空間)にて圧力放出部の少なくとも一部を覆う。従って、圧力放出部を異物(特にブッシングの破片)が通過して飛散することを被覆板によって効果的に阻止することができる。
【発明の効果】
【0023】
本開示の開閉器によれば、異物の飛散を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】実施の形態1に係る開閉器の要部のブロック図である。
【
図3】上部ケース及び下部ケースの概略を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本開示の実施の形態について説明する。以下の説明では、図において矢符で示す上下、前後、及び左右を使用する。
【0026】
実施の形態 1.
図1は実施の形態1に係る開閉器の要部のブロック図である。
図中1は開閉器であり、開閉器1は、密閉ケース11、ブッシング12、開閉器本体13、低圧回路14、及び変圧器15を備える。
図1には密閉ケース11及び後述する支持部材4夫々の断面形状が示されている。
図2は開閉器1の外観を示す正面図である。
【0027】
図1及び
図2に示す密閉ケース11は矩形箱状をなし、例えば金属製である。密閉ケース11は開閉器本体13、低圧回路14、変圧器15を収容している。密閉ケース11は接地される。密閉ケース11は、例えば密閉ケース11の上部に設けられた複数のフック111を用いて、不図示の電柱の上部に設けられた支持体に吊り下げられる。
密閉ケース11の前側壁の外面にはハンドル112が設けられている。また、密閉ケース11の前側壁には外部端子113(例えばメタルコンセント)が設けられている。
【0028】
ブッシング12は筒状をなし、例えば磁器製又は合成樹脂製である。ブッシング12は2つ1組で用いられる。2つ1組のブッシング12は互いに左右に隣り合う。2つ1組のブッシング12の一方は、軸長方向が左右に向くようにして、密閉ケース11の左側壁(壁部)を気密に貫通している。2つ1組のブッシング12の他方は、軸長方向が左右に向くようにして、密閉ケース11の右側壁(壁部)を気密に貫通している。2つ1組のブッシング12を通して、電路10が密閉ケース11に気密に引き込まれ、且つ密閉ケース11から引き出されている。電路10は、例えば電柱に架設された電線に接続するための電路であり、導線及び棒状の導体等を用いて構成されている。
【0029】
開閉器本体13は電路10を開閉する。電路10の開閉のために、開閉器本体13は、例えば電路10の中途に設けられた真空バルブを有する。真空バルブが閉じている場合、電路10は閉じており、真空バルブが開いている場合、電路10は開いている。
低圧回路14は、例えば開閉器本体13の真空バルブを開閉するマグネットコイルを有する。給電されているマグネットコイルは真空バルブを閉じ、給電されていないマグネットコイルは真空バルブを開く。
【0030】
変圧器15は、例えば単相変圧器である。
図1に示すように、変圧器15は、変圧器本体151、高圧端子152(接続端子)、及び低圧端子153を一体的に備える。
変圧器本体151は不図示のコイル及びコアを有する。変圧器本体151の下部には不図示の雌ネジが設けられている。
高圧端子152は変圧器本体151の上部から上向きに突出しており、電路10に電気的に接続されている。電路10と高圧端子152とを結ぶ通電路101の中途に耐雷素子16が設けられていることが望ましい。
低圧端子153は変圧器本体151の側部から横向きに(非上下方向に)突出しており、外部端子113を介して、制御装置6に電気的に接続されている。
【0031】
変圧器15は制御装置6に給電するためのものである。電路10から高圧端子152を通して変圧器本体151に供給された電力は、変圧器本体151によって降圧され、変圧器本体151から低圧端子153及び外部端子113を通して制御装置6に供給される。
以下では、密閉ケース11の内部空間をケース内部といい、密閉ケース11の外部空間をケース外部という。
【0032】
制御装置6はケース外部に配されており、開閉器本体13による電路10の開閉を制御する。例えば制御装置6は、通常時は低圧回路14のマグネットコイルへの給電により開閉器本体13の真空バルブを閉じて電路10を閉じる。一方、制御装置6は、異常時は低圧回路14のマグネットコイルへの給電停止により開閉器本体13の真空バルブを開いて電路10を開く。電路10を開くべき異常の例としては、電路10を過電流が流れたこと等が挙げられる。
なお、電路10の開閉はハンドル112が手動で操作された場合に行なわれてもよい。
【0033】
開閉器1に異常(例えば内部短絡によるケース内部の過熱)が生じた場合、ケース内部の気体の圧力(密閉ケース11の内圧)が過剰に上昇することがある。そこで、密閉ケース11は、密閉ケース11の内圧の上昇に応じて圧力放出部が形成されるように構成されている。圧力放出部とは、ケース内部の気体をケース外部に放出するための空隙である。圧力放出部を通ってケース内部からケース外部に気体が噴出するので、密閉ケース11の内圧が下がる。故に、内圧による密閉ケース11の破損を防止することができる。
本実施の形態では、密閉ケース11が上部ケース2及び下部ケース3を備え(
図2参照)、上部ケース2及び下部ケース3との間に圧力放出部が形成される場合について説明する。
【0034】
図3は上部ケース2及び下部ケース3の概略を示す斜視図である。
図1及び
図3に示すように、上部ケース2は、ケース本体21、フランジ22、及び取着片23を一体に備える。
ケース本体21は一面が全面的に解放された矩形箱状をなす。ケース本体21は下向きに開口するようにして用いられる。ケース本体21は前後方向に最も長い。ケース本体21の開口周縁部は前後方向に長い矩形状をなす。ケース本体21の開口周縁部の左辺及び右辺夫々はケース本体21の開口周縁部の長辺である。
【0035】
フランジ22はケース本体21の開口周縁部から外向きに突出している。フランジ22は矩形環状の帯板であり、両面が上下に向く。
取着片23はフランジ22の先端部分から下向きに突出している。取着片23は、基部231と4つの先端部232を一体に備える。基部231は矩形筒状をなし、フランジ22の全長にわたって設けられている。基部231の左側壁及び右側壁夫々において、2つの先端部232が前後に並設されている。各先端部232は舌片状をなし、基部231の下端から下向きに突出している。先端部232にはボルト止め用の貫通孔233が設けられている。
【0036】
ケース本体21、フランジ22、及び取着片23は、例えば所定の形状に打ち抜かれた金属板を折り曲げ、ケース本体21の隣り合う側壁同士を溶接することによって形成されている。
ケース本体21の左側壁には3つの貫通孔211が前後方向に並設されている。ケース本体21の右側壁にも3つの貫通孔211が前後方向に並設されている。左側の3つの貫通孔211と右側の3つの貫通孔211とは左右に互いに対向している。
図3に示す上部ケース2を用いる場合、開閉器1は3組のブッシング12を備え、6つのブッシング12は6つの貫通孔211に1つずつ挿し通される。図示はしないが、ケース本体21の前側壁にはハンドル112の支軸が気密に貫通する貫通孔が設けられている。
【0037】
下部ケース3は、ケース本体31、フランジ32、及び複数の取着片33を一体に備える。
ケース本体31は一面が全面的に解放された矩形箱状をなす。ケース本体31は上向きに開口するようにして用いられる。ケース本体31は前後方向に最も長い。ケース本体31の開口周縁部は前後方向に長い矩形状をなす。ケース本体31の開口周縁部の左辺及び右辺夫々はケース本体31の開口周縁部の長辺である。
フランジ32はケース本体31の開口周縁部から外向きに突出している。フランジ32は矩形環状の帯板であり、両面が上下に向く。
【0038】
取着片33はフランジ32の先端部分から下向きに突出している。取着片33の構成は取着片23の構成と同様であり、基部231及び4つの先端部232に対応する基部331及び4つの先端部332を備える。先端部332には貫通孔233に対応する貫通孔333が設けられている。
ケース本体31、フランジ32、及び取着片33は、例えば所定の形状に打ち抜かれた金属板を折り曲げ、ケース本体31の隣り合う側壁同士を溶接することによって形成されている。
【0039】
上部ケース2の開口の周縁部と下部ケース3の開口の周縁部とが気密に互いに取り付けられることによって密閉ケース11が構成される。
下部ケース3が上部ケース2に取り付けられる場合、フランジ22の下面とフランジ32の上面との間に、環状のシール部材17が挟み込まれる。また、取着片23の内面が取着片33の外面に対向し、取着片23の貫通孔233と取着片33の貫通孔333とを貫通するボルトがナットに螺合する。以上の結果、上部ケース2の開口周縁部と下部ケース3の開口周縁部とが気密に互いに取り付けられる。
【0040】
開閉器1の異常により密閉ケース11の内圧が過剰に上昇した場合、フランジ22,32及び取着片23,33等の変形が生じて下部ケース3が急激に下向きに位置ずれする。この結果、上部ケース2の開口周縁部と下部ケース3の開口周縁部との間に圧力放出部が自然に形成される。
上部ケース2及び下部ケース3夫々の開口周縁部は矩形状をなすので、圧力放出部は矩形環状をなす。
圧力放出部を形成する必要があるので、上部ケース2及び下部ケース3夫々の周縁部が互いに固定(例えば溶接)されることはない。
【0041】
一般的に変圧器15は重い。しかも本実施の形態の開閉器1は変圧器15を4つ備える。下部ケース3が変圧器15の重量を受け止めている場合、変圧器15の重量によって下部ケース3が徐々に下向きに位置ずれし、ケース本体31の開口周縁部がケース本体21の開口周縁部から離隔して、密閉ケース11の気密を損なう虞がある。このような変形は微小なので開閉器1の管理者が気づきにくい。しかも、気密が損なわれた密閉ケース11に雨等の異物が侵入して事故の原因となり得る。
【0042】
そこで、開閉器1は支持部材4を備える。支持部材4は密閉ケース11に収容されている。支持部材4は4つの変圧器15を支持しており、且つ、上部ケース2に取り付けられている。即ち、下部ケース3は変圧器15の重量を受け止めない。故に、変圧器15の重量によって下部ケース3が上部ケース2に対して相対的に下向きに位置ずれし、密閉ケース11の気密を損なう、という不都合を防止することができる。
【0043】
図4は支持部材4の概略を示す斜視図である。
図1及び
図4に示すように、支持部材4は、支持板41、2つの被覆板42、及び2つの取付板43を一体に備える。
支持板41は一方向に長い矩形状をなす。支持板41は、両面が上下に向き、長手方向が前後に向くようにして、下部ケース3に収容されている。支持板41の左辺部及び右辺部夫々は支持板41の長辺部である。支持板41には複数の貫通孔が互いに離隔して設けられている。
【0044】
変圧器15は、支持板41の貫通孔を下側から貫通した雄ネジが、変圧器本体151の下部に設けられた雌ネジに螺合することによって、支持板41の上面に取り付けられている。支持板41に変圧器15が取り付けられることにより、支持部材4は変圧器15を支持する。変圧器本体151と支持板41との間に変圧器支持用の別部材が介在しないので、部品点数を削減することができる。
4つの変圧器15は、支持板41の上面にて前後2列、左右2列に並んでいる。
【0045】
高圧端子152は変圧器本体151の上部から上向きに(即ち上部ケース2の天壁に向けて)突出している。つまり高圧端子152が下部ケース3の底壁又は側壁に向けて突出することはない。一方、高圧端子152と上部ケース2の天壁との間には空間的な余裕がある。故に、高圧端子152と密閉ケース11の内面との間に絶縁体を介在させる必要がない。従って、部品点数を削減することができる。
【0046】
2つの被覆板42夫々は支持板41に設けられている。各被覆板42は一方向に長い矩形状をなし、両面が左右に向き、長手方向が前後に向く。被覆板42は支持板41の長辺部の全長にわたり、支持板41は被覆板42の長辺部の全長にわたる。故に、支持板41と被覆板42とが互いを確実に補強することができる。2つの被覆板42の内、一方の被覆板42は支持板41の左辺部から上向きに突出している。他方の被覆板42は、支持板41の右辺部から上向きに突出している。
【0047】
2つの取付板43は、2つの被覆板42に1つずつ設けられている。取付板43は帯板状をなす。取付板43の長手方向は前後に向く。取付板43の両面は上下に向く。左側の被覆板42に設けられている取付板43は、被覆板42の上辺部から左向きに突出している。右側の被覆板42に設けられている取付板43は、被覆板42の上辺部から右向きに突出している。取付板43は被覆板42の長辺部の全長にわたり、被覆板42は取付板43の長辺部の全長にわたる。故に、被覆板42と取付板43とが互いを確実に補強することができる。
【0048】
取付板43の上部ケース2への取り付けのために、上部ケース2に4つの取付金具24が取り付けられており(
図1参照)、各取付板43の前端部及び後端部夫々に1つずつ貫通孔431が設けられている。
4つの取付金具24は、ケース本体21の開口周縁部の四隅よりも上側に1つずつ配されている。各取付金具24には取付金具24を貫通するネジ孔が設けられている。取付金具24は、取付金具24のネジ孔が上下に延びるようにして、ケース本体21の隣り合う2つの側壁夫々の内面に固定(例えば溶接)されている。例えば左前側の取付金具24はケース本体21の左側壁及び前側壁夫々の内面に固定されており、右後側の取付金具24はケース本体21の右側壁及び後側壁夫々の内面に固定されている。
【0049】
2つの取付板43は4つの取付金具24に下側から接触している。左側の取付板43は左前側の取付金具24及び左後側の取付金具24にわたっており、右側の取付板43は右前側の取付金具24及び右後側の取付金具24にわたっている。取付板43は、貫通孔431を下側から貫通した雄ネジが取付金具24のネジ孔に螺合することによって、取付金具24に取り付けられている。
2つの取付板43が4つの取付金具24に取り付けられることにより、支持部材4は上部ケース2に取り付けられる。
【0050】
以上のような支持部材4は、例えば所定の形状に打ち抜かれた金属板を折り曲げることによって形成されている。また、支持板41及び被覆板42が互いを補強し、被覆板42及び取付板43が互いを補強するので、例えば支持部材4を補強するためのリブを支持部材4に溶接する必要がない。以上の結果、支持部材4を容易且つ低コストに得ることができる。
【0051】
左側の取付板43が左前側の取付金具24及び左後側の取付金具24にわたるので、左側の被覆板42は、ケース本体21,31夫々の開口周縁部の左辺を略全長にわたって覆う。同様に、右側の取付板43が右前側の取付金具24及び右後側の取付金具24にわたるので、右側の被覆板42は、ケース本体21,31夫々の開口周縁部の右辺を略全長にわたって覆う。
即ち、左右2つの被覆板42は、左右のブッシング12の下側にて、密閉ケース11の圧力放出部が形成される部分の少なくとも一部を覆う。
【0052】
開閉器1の異常時にはブッシング12が破損して破片が生じることがある。ブッシング12は上部ケース2の左側壁又は右側壁を貫通しており、圧力放出部は上部ケース2と下部ケース3との間に形成されるので、圧力放出部はブッシング12よりも下側の空間(即ちブッシング12の破片が落下しやすい空間)に位置している。
【0053】
しかしながら、圧力放出部が形成された場合、左右2つの被覆板42は、左右のブッシング12の下側にて、圧力放出部の左辺及び右辺を全長にわたって覆う。従って、ケース内部からケース外部への気体が放出される場合に、圧力放出部を異物(特にブッシング12の破片)が通過することを被覆板42によって効果的に抑制することができる。この結果、異物の飛散を抑制することができる。
変圧器15を支持する支持部材4が、異物の飛散を抑制する部材を兼ねるので、部品点数を削減することができる。
【0054】
なお、密閉ケース11は柱上に装着される構成に限定されない。
変圧器15の個数は4つに限定されない。変圧器15は単相変圧器に限定されず、三相変圧器でもよい。変圧器15は例えばモールド変圧器であるが、これに限定されない。
圧力放出部は上部ケース2及び下部ケース3との間に形成される構成に限定されない。例えば圧力放出部は、開放された安全弁でもよい。この安全弁は、密閉ケース11の側壁に設けられる。密閉ケース11に設けられた安全弁は、支持部材4の被覆板42によって被覆されており、密閉ケース11の内圧が所定値を超過した場合に開放される。
【0055】
取付金具24はケース本体21の隣り合う2つの側壁夫々に固定される構成に限定されず、例えば1つの側壁のみに固定されてもよい。しかしながら、取付金具24がケース本体21の隣り合う2つの側壁夫々に固定される構成には、取付金具24が下向きにたわみにくいという利点がある。
本実施の形態における4つの取付金具24はケース本体21の開口周縁部の四隅に対応するように配されているが、これに限定されない。例えば、4つの取付金具24の内、2つはケース本体21の左後隅及び右後隅に対応するように配され、残りの2つはケース本体21の左辺部及び右辺部の中途に対応するように配されてもよい。
【0056】
本実施の形態では支持部材4の被覆板42がケース本体21,31夫々の開口周縁部の長辺を略全長にわたって覆うが、これに限定されない。しかしながら、被覆板42はケース本体21,31夫々の開口周縁部の長辺の半分以上を覆うことが望ましい。
被覆板42は支持板41の長辺部の全長にわたるが、これに限定されない。例えば、被覆板42の前後方向の長さは支持板41の長辺部よりも短くてもよい。
【0057】
2つの被覆板42は支持板41の前辺部及び後辺部夫々に1つずつ設けられてもよい。この場合も各被覆板42の先端部分に取付板43が設けられてもよい。このとき、前側の取付板43は左前側の取付金具24及び右前側の取付金具24にわたり、前側の被覆板42はケース本体21,31夫々の開口周縁部の前辺を略全長にわたって覆う。後側の取付板43は左後側の取付金具24及び右後側の取付金具24にわたり、後側の被覆板42はケース本体21,31夫々の開口周縁部の後辺を略全長にわたって覆う。
支持板41の4辺部夫々に被覆板42が設けられてもよい。取付板43は、2つの長辺部(又は2つの短辺部)に設けられた被覆板42夫々に設けてあればよい。
被覆板42は1つでもよい。
【0058】
ケース本体21,31夫々の開口周縁部の内、被覆板42によって覆われていない部分は、支持部材4とは別体の部材(例えば耐雷素子16を支持する板状金具)、又は被覆板42(若しくは取付板43)の縁部から延出した板部に覆われていてもよい。
【0059】
支持部材4の上部ケース2への取り付けの際、まず、支持板41に変圧器15が取り付けられ、変圧器15に対する配線が行なわれてから、取付板43が取付金具24にネジ留めされる。配線作業時は、例えば上部ケース2が上下逆向きの姿勢で作業台に載置され、フランジ22に所定の治具が一時的にセットされる。この治具の上に支持部材4が上下逆向きの姿勢で仮置きされることにより、上部ケース2と支持部材4との間に配線作業用の空間が形成される。
【0060】
図5は開閉器1の変形例を示すブロック図である。
図5には密閉ケース11及び支持部材4、並びに後述する閉鎖部材5夫々の断面形状が示されている。
図5に示す支持部材4においては、各被覆板42に窓孔421が設けられている。窓孔421の形状、寸法、及び配置は限定されない。窓孔421は、支持部材4の強度が低下しすぎない範囲で広く開口している。
開閉器1の組み立て時に、作業者は窓孔421を通して被覆板42の向こう側を視認することができる。故に、被覆板42が開閉器1の組み立て時の作業性を悪化させる虞はない。
【0061】
各窓孔421は、開閉器1の組み立てが終了する前に、閉鎖部材5により閉鎖される。閉鎖部材5の構成は限定されない。例えば、閉鎖部材5は、窓孔421を全体的に閉鎖する板状の部材本体51と、部材本体51の縁部から延出しており、取付板43と共に取付金具24に共締めされる取付片52とを一体に備える。
なお、閉鎖部材5は省略されてもよい。閉鎖部材5が省略される場合、密閉ケース11の圧力放出部が形成される部分は、被覆板42の窓孔421が設けられていない部分に覆われることが望ましい。
【0062】
今回開示された実施の形態は、全ての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上述した意味ではなく、特許請求の範囲と均等の意味及び特許請求の範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
特許請求の範囲に記載した独立請求項及び従属請求項は、引用形式に関わらず全てのあらゆる組み合わせにおいて、相互に組み合わせることが可能である。更に、特許請求の範囲には他の2以上のクレームを引用するクレームを記載する形式(マルチクレーム形式)を用いているが、これに限るものではない。マルチクレームを少なくとも一つ引用するマルチクレーム(マルチマルチクレーム)を記載する形式を用いて記載してもよい。
【符号の説明】
【0063】
1 開閉器; 10 電路; 11 密閉ケース; 12 ブッシング; 13 開閉器本体; 15 変圧器; 151 変圧器本体; 152 高圧端子(接続端子); 2 上部ケース; 3 下部ケース; 4 支持部材; 41 支持板; 42 被覆板; 43 取付板; 6 制御装置