(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024157858
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】半導体モジュール
(51)【国際特許分類】
H01L 25/07 20060101AFI20241031BHJP
【FI】
H01L25/04 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023072480
(22)【出願日】2023-04-26
(71)【出願人】
【識別番号】000233273
【氏名又は名称】ミネベアパワーデバイス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】安田 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】高柳 雄治
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 康二
(57)【要約】
【課題】
制御回路基板固定用インサートナットに浮遊容量が発生して放電や短絡が発生することを抑制でき、半導体モジュールのケースに制御回路基板を取り付ける実装態様と取り付けない実装態様の両方に対応できる半導体モジュールを提供する。
【解決手段】
半導体モジュール1が、スイッチング素子を含む回路と、回路を内部に収納するケース2と、ケース2に埋め込まれ、スイッチング素子を駆動するための制御回路基板10をケース2の外部に取り付けるための制御回路基板固定用インサートナット5Bとを有し、制御回路基板固定用インサートナット5Bは、絶縁体で構成されている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スイッチング素子を含む回路と、
前記回路を内部に収納するケースと、
前記ケースに埋め込まれ、前記スイッチング素子を駆動するための制御回路基板を前記ケースの外部に取り付けるための制御回路基板固定用インサートナットとを有し、
前記制御回路基板固定用インサートナットは、絶縁体で構成されていることを特徴とする半導体モジュール。
【請求項2】
請求項1において、
前記回路に電気的に接続され前記ケースの外部に引き出された外部端子と、
前記ケースに埋め込まれ、ネジ止めしたときに前記外部端子に接触する位置に設けられた外部端子接続用インサートナットとを有することを特徴とする半導体モジュール。
【請求項3】
請求項2において、
前記制御回路基板固定用インサートナットは、ネジ止めしたときに前記外部端子に接触しない位置に設けられていることを特徴とする半導体モジュール。
【請求項4】
請求項2において、
前記外部端子接続用インサートナットは、導電性の金属で構成されていることを特徴とする半導体モジュール。
【請求項5】
請求項2において、
前記外部端子接続用インサートナットは、絶縁体で構成されていることを特徴とする半導体モジュール。
【請求項6】
請求項2において、
複数の前記外部端子接続用インサートナットを有し、
複数の前記外部端子接続用インサートナットのうちの一部の前記外部端子接続用インサートナットは導電性の金属で構成され、他の一部の前記外部端子接続用インサートナットは絶縁体で構成されていることを特徴とする半導体モジュール。
【請求項7】
請求項2において、
前記外部端子接続用インサートナットが前記制御回路基板固定用インサートナットを兼ねていることを特徴とする半導体モジュール。
【請求項8】
請求項1において、
前記ケースおよび前記絶縁体は、樹脂で構成されていることを特徴とする半導体モジュール。
【請求項9】
請求項1において、
前記ケースは、ポリフェニレンサルファイドで構成され、
前記絶縁体は、ポリフェニレンサルファイド、ガラスエポキシ、セラミックス、ガラスの何れかで構成されていることを特徴とする半導体モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
電力変換装置などに用いられる半導体モジュールとしては、例えば特許文献1があり、特許文献1の
図2には、半導体モジュール(パワーモジュール)に、これを駆動するための制御回路基板(ドライバ回路基板)をネジ止めする構成が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
半導体モジュールのケースに制御回路基板を取り付ける場合は、半導体モジュールのケースに埋め込まれた制御回路基板固定用インサートナットを用いて制御回路基板を半導体モジュールにネジ止めするのが一般的である。そして、従来の制御回路基板固定用インサートナットは、導電性の金属で構成されていた。
【0005】
ここで、制御回路基板固定用インサートナットは、半導体モジュールの内部の回路には電気的に接続されていないので、制御回路基板固定用インサートナットをフローティング状態のままにしておくと、制御回路基板固定用インサートナットと半導体モジュールの内部や制御回路基板との間で浮遊容量が発生して、電位差が大きくなったときに放電や短絡が発生する可能性があるという問題がある。そこで、従来は、制御回路基板側で、制御回路基板固定用インサートナットをネジ止めした際に、制御回路基板固定用インサートナットをグランドなどの基準電位に接続していた。
【0006】
また、別の実装態様として、半導体モジュールのケースには制御回路基板を取り付けず、別の場所に制御回路基板を固定し、半導体モジュールには配線のみを取り付けて、半導体モジュールを駆動する態様もある。この場合は、制御回路基板固定用インサートナットは不要であり、上記した浮遊容量が発生して放電や短絡が発生する可能性があるという問題を回避するため、制御回路基板固定用インサートナットを設けない半導体モジュールを用いていた。
【0007】
したがって、従来は、導電性の金属で構成された制御回路基板固定用インサートナットを有する半導体モジュールと、制御回路基板固定用インサートナットを設けない半導体モジュールの2種類の仕様の半導体モジュールが必要になるという課題があった。
【0008】
本発明が解決しようとする課題は、制御回路基板固定用インサートナットに浮遊容量が発生して放電や短絡が発生することを抑制でき、半導体モジュールのケースに制御回路基板を取り付ける実装態様と取り付けない実装態様の両方に対応できる半導体モジュールを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記した課題を解決するために、本発明の半導体モジュールは、スイッチング素子を含む回路と、前記回路を内部に収納するケースと、前記ケースに埋め込まれ、前記スイッチング素子を駆動するための制御回路基板を前記ケースの外部に取り付けるための制御回路基板固定用インサートナットとを有し、前記制御回路基板固定用インサートナットは、絶縁体で構成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明の半導体モジュールによれば、制御回路基板固定用インサートナットを絶縁体で構成したことにより、制御回路基板固定用インサートナットに浮遊容量が発生して放電や短絡が発生することを抑制できるので、半導体モジュールのケースに制御回路基板を取り付ける実装態様と取り付けない実装態様の両方に対応できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を用いて本発明の実施例を説明する。各図、実施例において、同一または類似の構成要素については同じ符号を付け、重複する説明は省略する。
【0013】
図1は、実施例の半導体モジュールの上面図である。
図2は、
図1のA-A断面図である。
【0014】
実施例の半導体モジュール1は、図示しないスイッチング素子を含む回路と、この回路を内部に収納するケース2と、この回路に電気的に接続されケース2の外部に引き出された外部端子3と、放熱用のベースプレート4と、ケース2に埋め込まれたインサートナット5とを有する。半導体モジュール1は、例えば電力変換装置などに用いることができる。
【0015】
図2に示すように、半導体モジュール1のケース2の外部には、スイッチング素子を駆動するための制御回路基板10をネジ11によって取り付けることができる。なお、制御回路基板10とネジ11は、
図2では点線で示しており、
図1では図示を省略している。
【0016】
図示しないスイッチング素子を含む回路は、例えばIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)やMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)などのスイッチング素子と、ダイオードなどが、絶縁基板上に搭載され、配線で接続されることにより電力変換回路などの回路を構成している。
【0017】
ケース2は、例えばポリフェニレンサルファイド(PPS)などの樹脂で構成されている。
【0018】
外部端子3は、主電流が流れる外部主端子3Aと、内部の回路のスイッチング素子などを駆動するための外部補助端子3Bとを有する。外部主端子3Aは、例えば高電位側主端子と、低電位側主端子と、交流端子を有している。外部補助端子3Bは、例えばスイッチング素子のゲートに接続されたゲート端子と、各種の電位を検出するためのセンス端子と、温度計測用のサーミスタ端子とを有している。なお、これらの端子は一例であり、これに限られない。
【0019】
放熱用のベースプレート4は、内部の回路で発生した熱を放熱する役割を有している。また、放熱用のベースプレート4は、半導体モジュール1を外部に固定するための固定用の穴を有している。
【0020】
インサートナット5は、外部端子接続用インサートナット5Aと、制御回路基板固定用インサートナット5Bとを有している。
【0021】
外部端子接続用インサートナット5Aは、
図2に示すように、ケース2に埋め込まれ、ネジ止めしたときに外部端子3に接触する位置に設けられている。なお、
図2では外部端子3が外部補助端子3Bである場合を示しているが、外部主端子3Aについても同様である。外部端子接続用インサートナット5Aは、導電性の金属で構成されており、ネジ11によりネジ止めしたときに外部端子3と電気的に接続され、外部端子3と制御回路基板10との間の電気的接続を確実にすることができる。
【0022】
制御回路基板固定用インサートナット5Bは、
図2に示すように、ケース2に埋め込まれ、ネジ11によりネジ止めすることにより、制御回路基板10をケース2の外部に取り付けることができる。制御回路基板固定用インサートナット5Bは、ネジ止めしたときに外部端子3に接触しない位置に設けられている。
図1では、制御回路基板固定用インサートナット5Bを4か所に設けた例を示しているが、これに限られない。
【0023】
ここで、本実施例の制御回路基板固定用インサートナット5Bは、従来のような導電性の金属に代えて、絶縁体で構成されている構成とした。これにより、制御回路基板固定用インサートナット5Bに浮遊容量が発生して放電や短絡が発生することを抑制できる。したがって、本実施例の半導体モジュール1は、半導体モジュール1のケース2に制御回路基板10を取り付ける実装態様と取り付けない実装態様の両方に対応できる。
【0024】
制御回路基板固定用インサートナット5Bは、例えばポリフェニレンサルファイド、ガラスエポキシ、セラミックス、ガラスの何れかで構成することができるが、これに限られず、他の絶縁性の材料で構成してもよい。電荷の蓄積を抑制するためには、制御回路基板固定用インサートナット5Bの比誘電率は、ケース2の比誘電率にできるだけ近いことが望ましい。例えば、制御回路基板固定用インサートナット5Bの比誘電率は、ケース2の比誘電率の1/2以上、2倍以下であることが望ましいが、これに限られない。
【0025】
以上、本発明の実施例を説明したが、本発明は実施例に記載された構成に限定されず、本発明の技術的思想の範囲内で種々の変更が可能である。また、実施例で説明した構成の一部または全部を組み合わせて適用してもよい。
【0026】
例えば、外部端子接続用インサートナット5Aについても、制御回路基板固定用インサートナット5Bと同様に絶縁体で構成するようにしてもよい。これにより、導電性の金属のインサートナットと絶縁体のインサートナットの2種類を準備する必要がなくなり、部材の共通化を図ることができる。但し、この場合は、外部端子3と制御回路基板10との間の電気的接続を確実にするために、制御回路基板10の裏面(外部端子3に当接する面)に配線を設けるなど、制御回路基板10側で外部端子3と制御回路基板10との間の電気的接続を確実にするための構造を設けることが望ましい。
【0027】
また、複数の外部端子接続用インサートナット5Aのうちの一部の外部端子接続用インサートナット5Aは導電性の金属で構成され、他の一部の外部端子接続用インサートナット5Aは絶縁体で構成されている構成としてもよい。例えば、サーミスタ端子などの一部の外部端子3は使用しない場合もあるので、使用しない可能性がある外部端子接続用インサートナット5Aについては絶縁体で構成することにより、浮遊容量が発生して放電や短絡が発生することを抑制できる。
【0028】
また、外部端子接続用インサートナット5Aでも制御回路基板10をネジ止めして固定することができるので、外部端子3との接続に用いず制御回路基板10を取り付けるためだけの制御回路基板固定用インサートナット5Bを設けないようにし、外部端子接続用インサートナット5Aが制御回路基板固定用インサートナット5Bを兼ねている構成としてもよい。この場合は、制御回路基板固定用インサートナット5Bを兼ねた外部端子接続用インサートナット5Aを絶縁体で構成するとともに、制御回路基板10を安定して固定できるように制御回路基板10の形状またはインサートナット5の配置を決定することが望ましい。
【符号の説明】
【0029】
1 半導体モジュール
2 ケース
3 外部端子
3A 外部主端子
3B 外部補助端子
4 ベースプレート
5 インサートナット
5A 外部端子接続用インサートナット
5B 制御回路基板固定用インサートナット
10 制御回路基板
11 ネジ