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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024157862
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】洗濯機および洗濯機用の回転翼盤
(51)【国際特許分類】
   D06F 17/10 20060101AFI20241031BHJP
【FI】
D06F17/10 A
D06F17/10 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023072485
(22)【出願日】2023-04-26
(71)【出願人】
【識別番号】399048917
【氏名又は名称】日立グローバルライフソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】小松 源
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 博紀
(72)【発明者】
【氏名】朴 成一
(72)【発明者】
【氏名】本多 武史
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 有輝也
(72)【発明者】
【氏名】大塚 文音
【テーマコード(参考)】
3B168
【Fターム(参考)】
3B168AA12
3B168AA15
3B168AE01
3B168AE02
3B168BA08
3B168CE01
3B168CE02
3B168CE04
(57)【要約】
【課題】衣類の傷みを低減する洗濯機および洗濯機用の回転翼盤を提供する。
【解決手段】本発明は、回転翼盤の上面が、内径側の膨出部と、前記膨出部の外径側に位置して周方向に複数設けられる谷部と、隣り合う前記谷部の間に位置して径方向に延びる複数の尾根部と、を有し、前記回転翼盤の下面が、前記膨出部の下側に位置して径方向に延びる複数の第1羽根と、少なくとも前記尾根部の下側に位置して径方向に延びる複数の第2羽根と、を有し、周方向に隣り合う前記第1羽根の間には、前記回転翼盤を上下に貫通する複数の第1貫通孔が形成され、複数の前記尾根部の全てについて、前記膨出部の中央から前記尾根部の外径側にかけて、下降してから上昇する連続した傾斜を有しており、前記膨出部の上端が、前記尾根部の上端よりも高い。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
洗濯槽と、
前記洗濯槽の底部に設けられた回転翼盤と、
前記洗濯槽を内包し洗濯水を溜める外槽と、
前記洗濯槽および前記回転翼盤を回転駆動する駆動部と、を備え、
前記回転翼盤の上面は、内径側の膨出部と、前記膨出部の外径側に位置して周方向に複数設けられる谷部と、隣り合う前記谷部の間に位置して径方向に延びる複数の尾根部と、を有し、
前記回転翼盤の下面は、前記膨出部の下側に位置して径方向に延びる複数の第1羽根と、少なくとも前記尾根部の下側に位置して径方向に延びる複数の第2羽根と、を有し、
周方向に隣り合う前記第1羽根の間には、前記回転翼盤を上下に貫通する複数の第1貫通孔が形成され、
複数の前記尾根部の全てについて、
前記膨出部の中央から前記尾根部の外径側にかけて、下降してから上昇する連続した傾斜を有しており、
前記膨出部の上端が、前記尾根部の上端よりも高いことを特徴とする洗濯機。
【請求項2】
請求項1に記載の洗濯機において、
前記回転翼盤は、前記膨出部の下側であって前記第1羽根より内径側に、前記駆動部の動力により回転する軸を支持する軸受をさらに有し、
前記膨出部、前記谷部、前記尾根部、前記第1羽根、前記第2羽根および前記軸受が、一体で形成されていることを特徴とする洗濯機。
【請求項3】
請求項2に記載の洗濯機において、
前記回転翼盤は、前記膨出部の下側に位置して周方向に延びる複数の第3羽根をさらに有し、
前記第1羽根は、前記第1羽根と前記軸受との境界に設けられた内径側の第3羽根と、前記第1羽根と前記第2羽根の境界に設けられた外径側の第3羽根と、に連結されていることを特徴とする洗濯機。
【請求項4】
請求項3に記載の洗濯機において、
前記内径側の第3羽根と、前記外径側の第3羽根と、の間にさらに別の第3羽根が設けられたことを特徴とする洗濯機。
【請求項5】
請求項1に記載の洗濯機において、
前記第2羽根は、外径端における下方への突出量が、内径側よりも大きいことを特徴とする洗濯機。
【請求項6】
請求項1に記載の洗濯機において、
前記第2羽根は、前記谷部の下側にも形成され、
周方向に隣り合う前記第2羽根の間には、前記回転翼盤を上下に貫通する複数の第2貫通孔が形成され、
前記第2貫通孔は、前記尾根部には形成されず、前記谷部に形成されることを特徴とする洗濯機。
【請求項7】
洗濯機の洗濯槽の底部に設けられる、洗濯機用の回転翼盤であって、
前記回転翼盤の上面は、内径側の膨出部と、前記膨出部の外径側に位置して周方向に複数設けられる谷部と、隣り合う前記谷部の間に位置して径方向に延びる複数の尾根部と、を有し、
前記回転翼盤の下面は、前記膨出部の下側に位置して径方向に延びる複数の第1羽根と、少なくとも前記尾根部の下側に位置して径方向に延びる複数の第2羽根と、を有し、
周方向に隣り合う前記第1羽根の間には、前記回転翼盤を上下に貫通する複数の第1貫通孔が形成され、
複数の前記尾根部の全てについて、
前記膨出部の中央から前記尾根部の外径側にかけて、下降してから上昇する連続した傾斜を有しており、
前記膨出部の上端が、前記尾根部の上端よりも高いことを特徴とする、洗濯機用の回転翼盤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洗濯機および洗濯機に用いられる回転翼盤に関する。
【背景技術】
【0002】
洗濯槽を縦に置いた洗濯機は、洗濯槽の底部に回転翼盤を設け、この回転翼盤を正逆回転させて洗濯を行っている。例えば、特許文献1に記載の洗濯機における回転翼盤(攪拌翼)の上面は、内径側に設けられて水流を起こすスクリューと、スクリューの外径側に位置して外径側に延びる複数(4本)の羽根部と、を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-136460号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の回転翼盤では、4本の羽根部のうち2本(羽根部120)が、径方向の内周と外周との中間付近が表面から軸方向に最も膨らんだ形状となっている(段落0035)。すなわち、この2本の羽根部の外径側は高くないので、その下面(裏面側)に設けられる羽根(ブレード)も、外径側を高くすることが難しい。すると、回転翼盤の下に存在する水のうち、外径側の水を回転により押し出す作用が弱くなり、循環流量が少なくなるため、洗浄に要する時間が長くなる可能性がある。その結果、特許文献1に記載の技術では、衣類どうしが擦れる時間も長くなり、布が傷み易くなる可能性がある。
【0005】
本発明の目的は、衣類の傷みを低減する洗濯機および洗濯機用の回転翼盤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、回転翼盤の上面が、内径側の膨出部と、前記膨出部の外径側に位置して周方向に複数設けられる谷部と、隣り合う前記谷部の間に位置して径方向に延びる複数の尾根部と、を有し、前記回転翼盤の下面が、前記膨出部の下側に位置して径方向に延びる複数の第1羽根と、少なくとも前記尾根部の下側に位置して径方向に延びる複数の第2羽根と、を有し、周方向に隣り合う前記第1羽根の間には、前記回転翼盤を上下に貫通する複数の第1貫通孔が形成され、複数の前記尾根部の全てについて、前記膨出部の中央から前記尾根部の外径側にかけて、下降してから上昇する連続した傾斜を有しており、前記膨出部の上端が、前記尾根部の上端よりも高い。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、衣類の傷みを低減する洗濯機および洗濯機用の回転翼盤を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本実施形態に係る回転翼盤が搭載される洗濯機を示す右側縦断面図。
図2】回転翼盤の上面側の形状を示す斜視図。
図3】回転翼盤の上面図。
図4図3のA-Aで切断した回転翼盤の断面図。
図5図3のB-Bで切断した回転翼盤の断面図。
図6】回転翼盤の正面図。
図7】回転翼盤の下面側の形状を示す斜視図。
図8図7のC-Cで切断した回転翼盤の断面斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を実施するための形態(以下「実施形態」という)について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以下では、洗濯、すすぎ、脱水、乾燥を行うことができる洗濯機S(いわゆる、縦型の洗濯乾燥機)を例に挙げて説明する。
【0010】
図1は、本実施形態に係る回転翼盤が搭載される洗濯機を示す右側縦断面図である。図1に示すように、洗濯機Sは、筐体の外枠1、洗濯水を貯留する外槽2、洗濯兼脱水槽3(洗濯槽)、回転翼盤4(パルセータ)、および駆動モータ(駆動部)10を備えている。
【0011】
外枠1は、板金(鉄板)をプレス加工等によって四角筒状に形成したものである。また、外枠1の下部には、合成樹脂製のベース32が設けられている。また、外枠1の上部には、合成樹脂製のトップカバー(上板)6が設けられている。なお、図示していないが、外枠1の内部は、補強部材を用いて外枠1が補強されている。また、ベース32は、内部に格子状のリブなどを設けて補強されている。
【0012】
外槽2は、合成樹脂製であり、有底略円筒状を呈し、外枠1内の中央において、防振装置(不図示)を介して支持されている。防振装置は、バネや弾性ゴムからなり、外枠1内の上部から外槽2を吊り下げ支持している。
【0013】
洗濯兼脱水槽(洗濯槽)3は、洗濯、脱水、乾燥される洗濯物(衣類)を収容する有底円筒形状を有する。また洗濯兼脱水槽3は、回転軸が略鉛直方向を向いている。また、洗濯兼脱水槽3は、外槽2の内部中央に設けられ、外槽2内において回転自在に支持される。また、洗濯兼脱水槽3は、その外周壁に通水および通風のための多数の小さな貫通孔3a(図1では一部のみ図示)を有している。また、洗濯兼脱水槽3は、その底壁に通水および通風のための複数の貫通孔3bを有している。また、洗濯兼脱水槽3の上縁部には、流体バランサー3cを備えている。また、洗濯兼脱水槽3の底部には、洗濯水を攪拌して、洗いやすすぎなどを行う回転翼盤4が回動自在に設けられている。
【0014】
回転翼盤4は、洗濯兼脱水槽3の底部中央に回転可能に設置されており、洗濯運転時および乾燥運転時に、正転/逆転を繰り返す動作が行われる。なお、回転翼盤4の詳細については後述する。
【0015】
駆動モータ10は、外枠1内に設けられ、回転翼盤4および洗濯兼脱水槽3を選択的に回転駆動する。また、駆動モータ10は、例えばDCブラシレスモータが使用される。DCブラシレスモータは、ベクトル制御によって制御が行われる。また、駆動モータ10は、回転翼盤4および洗濯兼脱水槽3をダイレクトドライブするものであってもよく、ベルトなどの減速機構を用いて駆動してもよい。
【0016】
外枠1の上部には、開閉自在な外蓋5が設けられている。外蓋5は、外枠1の上部に設けられたトップカバー6に後側が軸支持されている。外槽2の上部には、外蓋5の下方に、内蓋34が後側の軸周りに開閉自在に設けられている。洗濯兼脱水槽3に対する洗濯物の出し入れは、外蓋5および内蓋34を開くことで行われる。
【0017】
外枠1内には、トップカバー6の外蓋5の後側に、給水ユニット7が設けられている。給水ユニット7は、内部に複数の水路を有する給水ボックス(図示せず)を有している。給水ユニット7は、トップカバー6から上方に突き出る給水ホース接続口8から供給される。この給水ホース接続口8から水道水や風呂水が供給され、外槽2の内部に注がれる。また、トップカバー6の前側には、洗剤および仕上剤の投入装置35が設けられている。洗剤および仕上剤は、投入ホース36により、外槽2と洗濯兼脱水槽3の間に注がれる。
【0018】
また、洗濯機Sは、洗濯物を乾かす乾燥機構9を備えている。乾燥機構9は、洗濯兼脱水槽3内の洗濯物を乾燥する乾燥用空気の循環送風や除湿を行う。乾燥機構9は、大部分が乾燥用空気循環路で占められている。乾燥用空気循環路は、外槽2の底部に連通する底部循環路20と、底部循環路20から上向きに延びる除湿用縦通路21とを備える。
【0019】
また、乾燥機構9は、洗濯機Sの乾燥運転において、乾燥風を作る送風機22およびヒータ(不図示)を有する。送風機22の下部の吸込側は、除湿用縦通路21の上端部に接続される。送風機22と除湿用縦通路21の間には乾燥フィルタ54が配置され、送風機22に異物が流入しないようになっている。送風機22の前部の排出側は、戻り接続循環路25と接続され連通している。戻り接続循環路25は、その一部の上部蛇腹ホース23を介して、外槽2の上部に連通する。戻り接続循環路25には、乾燥風を洗濯兼脱水槽3内に吐出する吐出口23aが形成されている。吐出口23aからは、図1において矢印で示すように、乾燥風が上部蛇腹ホース23から洗濯兼脱水槽3内に鉛直方向下方に向けて吐出され、回転翼盤4の外周領域に吹き付けられるようになっている。
【0020】
底部循環路20は、その一部の下部蛇腹ホース26を介して、外槽2の底部に連通している。下部蛇腹ホース26は、外槽2の底落込部31に接続されている。底落込部31は、排水時のみ開弁される常閉型の排水弁53を介して、排水用の洗濯水排水路52に連通する。
【0021】
排水弁53は、洗濯運転時や乾燥運転時には閉じられている。排水弁53は、洗濯水を排水する排水時に開いて、外槽2に溜まっている洗濯水や濯ぎ水を、洗濯水排水路52から洗濯機Sの外部(機外)に排出する。
【0022】
洗濯機Sは、外槽2に溜まる洗濯水や濯ぎ水の水位を検知する水位センサ55を備えている。外槽2の底部近傍にはエアートラップ50が設けられている。エアートラップ50に連通してエアーチューブ56が接続されており、このエアーチューブ56の上端には水位センサ55が連通して接続される。
【0023】
外槽2に溜まる洗濯水や濯ぎ水は、循環水路51a、61aから循環水路51b、61bに流入し、循環水路51b、61b内を上方へ向かって流れる。循環水路51bを上昇した洗濯水は、糸くずが糸くずフィルタ33で取り除かれ、洗濯兼脱水槽3内に入る。一方、循環水路61bを上昇した洗濯水は、スリット状の吐出口61cから洗濯兼脱水槽3内の中央付近にシャワー状に散水される。
【0024】
次に、本実施形態に係る洗濯機Sの洗濯運転および乾燥運転における動作について説明する。
【0025】
洗い工程では、まず、給水ユニット7が、投入装置35に給水することで、洗剤と水道水等が外槽2内に供給される。そして、個体洗剤は水道水等で溶かされ、液体洗剤は水道水等で希釈され、高濃度洗剤液が生成される。このとき、必要に応じて、駆動モータ10が回転翼盤4を回転し、後述する第1羽根46および第2羽根47による水流を発生させることで、高濃度洗剤液を生成しても良い。給水ユニット7は、回転翼盤4の下面(裏面)の第1羽根46および第2羽根47が浸かる程度の第1水位になると、給水を停止する。なお、第1水位は、回転翼盤4の上面を超えない低い水位が望ましいが、回転翼盤4の上面を僅かに超える水位であっても良い。
【0026】
第1水位において駆動モータ10が回転翼盤4を回転させると、外槽2の底に溜まっている高濃度洗剤液が、循環水路51b、61bを上方へ向かって流れ、洗濯兼脱水槽3内に供給される。このように、高濃度洗剤液を洗濯物に降り掛けるように循環させながら、回転翼盤4を正逆方向に交互に回転させて尾根部41が洗濯物に上向きの力を繰り返し作用させることによって押し洗いする(前洗い)。その後、給水ユニット7が、第1水位より高い第2水位になるまで給水し、駆動モータ10が洗濯兼脱水槽3および回転翼盤4を正逆方向に交互に回転させ、高水位での洗いが行われる(本洗い)。
【0027】
すすぎ工程では、洗い工程と同様に、外槽2の底部に溜まるように給水した濯ぎ水を洗濯物に降り掛けるように循環させながら回転翼盤4を正逆方向に回転させて、洗濯物に含まれる洗剤成分を取り除く、すすぎを行う。脱水工程では、駆動モータ10が洗濯兼脱水槽3および回転翼盤4を一方向(逆回転の向き)に高速回転させることで、洗濯物に含まれる水分が遠心力によって脱水される。この脱水工程が終了すると、洗濯運転から乾燥運転に移行する。乾燥運転では、回転翼盤4を正逆方向に回転させながら外槽2内の空気を吸い出して水冷除湿した後に加熱して洗濯兼脱水槽3内に吹き込むように循環させて洗濯物を乾燥させる。
【0028】
ここで、図2および図3を用いて、回転翼盤4の上面側の形状について、詳細に説明する。図2は回転翼盤の上面側の形状を示す斜視図であり、図3は回転翼盤の上面図である。回転翼盤4の上面側の形状は、前述した洗濯運転および乾燥運転において、洗濯物の動きに影響を与える。
【0029】
図2および図3に示すように、回転翼盤4の上面は、内径側の膨出部43と、膨出部43の外径側に位置して周方向に複数設けられる谷部42と、隣り合う谷部42の間に位置して径方向に延びる複数の尾根部41と、を有する。本実施形態では、尾根部41および谷部42をそれぞれ4つとした回転翼盤4の例を示すが、尾根部41および谷部42の個数は4つに限定されず、例えば3個や5個であっても良い。ただし、尾根部41の下側に形成される後述の第2羽根47は、回転翼盤4の下に存在する水を押し出す作用に大きく寄与するので、高い循環流量を得るには尾根部41は3個以上とするのが望ましい。
【0030】
尾根部41は、周方向について相対的に高い稜線と、その周方向両側にあって連続的に下る周方向傾斜面41aと、を有している。このため、回転翼盤4が回転すると、周方向傾斜面41aによって、回転翼盤4上に載っている洗濯物に上向きの分力が繰り返し作用する。
【0031】
谷部42は、尾根部41と比べて相対的に低い凹状傾斜面(谷状の凹曲面)を有しており、径方向の中央部分が低く、内径側部分と外径側部分が高い、所謂お椀状となっている。また、谷部42は、通水および通風のために回転翼盤4を上下に貫通する多数の第2貫通孔42aも有している。第2貫通孔42aは、隣り合う第2羽根47(後述)の間に形成される。ここで、第2貫通孔42aは、尾根部41に形成しないことで、洗濯物との引っ掛かりを抑えることができ、洗濯物の布痛みを軽減できる。
【0032】
洗い工程時に回転翼盤4が回転すると、尾根部41の周方向傾斜面41aによって洗濯物が押し上げられる。このときに押し上げられた洗濯物が落下するときのたたき洗い効果と、回転翼盤4と洗濯物との間の摩擦力によるこすり洗い効果により洗浄力が向上する。また、乾燥運転時に回転翼盤4が回転すると、尾根部41の周方向傾斜面41aにより、洗濯物が押し上げられ、上下の洗濯物の入れ替わりが促進される。この洗濯物の入れ替わりにより、洗濯物の乾燥むらが低減する。
【0033】
なお、本実施形態では、尾根部41と谷部42とが、それぞれ回転中心に対して点対称に設けられている。そのため、回転翼盤4を正回転させても逆回転させても、洗濯物の動きが変わらないので、布絡みや布片寄りが生じ難く、洗いむらや布傷みを抑制できる。
【0034】
図4図3のA-Aで切断した回転翼盤の断面図であり、図5図3のB-Bで切断した回転翼盤の断面図であり、図6は回転翼盤の正面図である。回転翼盤4は、その回転中心の周辺に、上方へ膨出する膨出部43を有しており、膨出部43の下側(内部)には、駆動モータ10の動力により回転する軸を支持する軸受45が形成されている。また、回転翼盤4の下面には、突条部を成す(リブ状の)裏羽根として、第1羽根46、第2羽根47、第3羽根48および第4羽根49が形成されている。なお、第3羽根48および第4羽根49の詳細については、図8を用いて後述する。各羽根は下方へ突出し、その下端は、略同一平面上に位置している。これらの裏羽根は、回転翼盤4の強度を向上させる役割を果たすとともに、特に第1羽根46および第2羽根47は、洗い工程およびすすぎ工程において、外槽2の底部に溜まった洗剤液や濯ぎ水に水流を発生させる役割も果たす。
【0035】
以下、図7および図8を用いて、回転翼盤4の下面側の形状について、詳細に説明する。図7は回転翼盤の下面側の形状を示す斜視図であり、図8図7のC-Cで切断した回転翼盤の断面斜視図である。
【0036】
第1羽根46は、径方向に延びる裏羽根であり、軸受45の外径端よりも径方向外側に複数設けられ、回転翼盤4の強度を向上させている。第1羽根46は、膨出部43の下側に位置しているので、特に膨出部43の補強に寄与する。さらに、第1羽根46は、洗い工程等において、回転翼盤4の回転に伴い、外槽2の底部のうち中央付近(膨出部43の下側付近)に溜まった洗剤液等を主に外径側に押し出し、その勢いで循環水路51b、61bを経由して、洗濯兼脱水槽3内に洗剤液等を供給する。なお、本実施形態では、第1羽根46が周方向に6枚形成された回転翼盤4の例を示すが、第1羽根46の枚数は6枚に限定されない。
【0037】
また、周方向に隣り合う第1羽根46の間には、回転翼盤4を上下に貫通する複数の第1貫通孔43aが形成されている。この第1貫通孔43aにより、周方向に隣り合う第1羽根46の間に、回転翼盤4の上方から洗剤液等が流れ込み易くなり、洗剤液等を外径側に押し出す勢いも強くなるので、洗剤液等の循環流量の増大に寄与する。
【0038】
第2羽根47は、径方向に延びる裏羽根であり、第1羽根46と異なる(径方向にずれた)位置、具体的には、第1羽根46の外径端よりも径方向外側に設けられ、回転翼盤4全体の強度を向上させている。第2羽根47は、洗い工程等において、回転翼盤4の回転に伴い、外槽2の底部のうち外径側付近に溜まった洗剤液等や、第1羽根46によって外径側に押し出された洗剤液等を外径側に押し出し、その勢いで循環水路51b、61bを経由して、洗濯兼脱水槽3内に洗剤液等を供給する。
【0039】
ここで、第2羽根47は、尾根部41の下側だけでなく、谷部42の下側にも設けられる。回転翼盤4の上面は、尾根部41にしても谷部42にしても、外径側の方が高く形成されるため、第2羽根47の下方への突出量は、外径端において内径側よりも大きくなる。したがって、第1羽根46によって外径側に押し出された洗剤液等が、さらに外径側にかき出され易く、循環水路51b、61bへ導かれ易くなっている。ただし、尾根部41の下側の第2羽根47の方が、谷部42の下側の第2羽根47よりも高さ寸法が大きいため、洗剤液等を押し出す作用により大きく寄与する。
【0040】
さらに、複数の第2羽根47のうち一部、具体的には、対向する2つの谷部42の周方向中間位置に形成される小型第2羽根47aは、外径端まで延びておらず、径方向寸法が短くなっている。このため、洗濯兼脱水槽3に対して回転翼盤4を嵌め込む際に、回転翼盤4を撓ませ易くなり、洗濯機Sの組立性が向上する。なお、図7では、2枚の小型第2羽根47aを含めて、合計16枚の第2羽根47が周方向に形成された例を示すが、第2羽根47の枚数は16枚に限定されない。
【0041】
第3羽根48は、膨出部43の下側に位置して周方向に延びる裏羽根であり、同心円状に複数設けられ、回転翼盤4の強度を向上させている。また、第3羽根48は、第1羽根46と軸受45との境界に設けられた内径側第3羽根48aと、第1羽根46と第2羽根47の境界に設けられた外径側第3羽根48bと、内径側第3羽根48aと外径側第3羽根48bとの間に設けられた2枚の中間第3羽根48cと、で構成されている。これらの第3羽根48に、第1羽根46が連結されているので、第1羽根46の強度がより高められるだけでなく、膨出部43全体の強度も高められるので、第1貫通孔43aの数や大きさを増やすことも可能となる。また、中間第3羽根48cを設けることで、膨出部43の下側の空間がより細かく区画され、洗剤液等の流速が高まり易くなるため、第1貫通孔43aを介して洗剤液等を吸い込む勢いや、第1羽根46を介して洗剤液等が押し出される勢いが強くなる。
【0042】
第4羽根49は、谷部42または尾根部41の下側に位置して周方向に延びる裏羽根であり、回転翼盤4の強度を向上させている。なお、第3羽根48や第4羽根49の枚数は、図7図8に示すものに限定されない。
【0043】
ここで、図4に基づき、膨出部43の高さと、尾根部41の稜線41bの高さと、の関係について説明する。なお、膨出部43と尾根部41とは一体で形成されているため、その境界の位置は図4に示されていないが、第1羽根46が設けられる領域は膨出部43であり、第2羽根47が設けられる領域は尾根部41である。図4に示すように、膨出部43の中央から尾根部41の外径側にかけて、下降してから上昇する連続した傾斜が形成されている。すなわち、膨出部43の外径側は、膨出部43の中央より低く、尾根部41の稜線41bのうち内径側稜線41b1は、膨出部43の中央や外径側稜線41b2よりも低くなっている。
【0044】
また、膨出部43の上端(図4の43T)は、尾根部41の上端(図4の41T)よりも高くなっているため、膨出部43の下側の空間を大きくできる。その結果、膨出部43の下側に溜めることのできる洗剤液等の量が増大するとともに、第1羽根46の下方への突出量の増大によって洗剤液等の吸い込みおよび押し出しの作用を強めることが可能となる。すると、洗剤液等が循環水路へ導かれて回転翼盤4の外径側の洗剤液等が不足しても、第1羽根46のこうした作用により、回転翼盤4の外径側へ洗剤液等を供給し続けることができる。さらに、駆動モータ10として安価で大型のものが用いられた場合でも、膨出部43の下側の空間に、駆動モータ10を収納することが可能となる。
【0045】
なお、尾根部41の上端は、回転翼盤4の周縁部44よりも高くなっている。その結果、尾根部41の下側における第2羽根47の高さ寸法を大きくでき、水を押し出す作用をより強めることが可能となる。さらに、尾根部41の上端の高さと、膨出部43の上端の高さと、の差を小さくできるので、洗濯物が膨出部43に集まることが抑制され、回転翼盤4の上面での洗濯物の動きが促進される。
【0046】
以上述べたように、本実施形態では、回転翼盤4が回転するとき、回転翼盤4の上面から第1貫通孔43aを介して洗剤液等が流れ込み、第1羽根46が洗剤液等を外径側に押し出す勢いと、第2羽根47が洗剤液等を外径側に押し出す勢いとの相乗効果により、中心付近から外径側に向かう洗剤液等の流れが格段に大きくなる。特に、本実施形態では、全ての尾根部41について、内径側や径方向中間付近よりも、外径側の方が高く形成されているので、外径側の下側に設けられる第2羽根47の突出量を大きくできる。すると、回転翼盤4の周速度が高くなる外径側において、水を押し出す作用が効率的に高められるため、循環水路51b、61bを経由して洗濯兼脱水槽3内に循環する洗剤液等の流量が増加し、洗浄力が向上する。したがって、洗い工程およびすすぎ工程において回転翼盤4の回転数を変えずに費やす時間だけを短くしても、一定の洗浄力を維持できる。すなわち、洗い工程等において回転翼盤4が回転する時間を短くできるので、洗濯物どうしが擦れる時間も短くでき、布傷みを低減し、糸くずの発生量を少なくすることが可能である。
【0047】
また、本実施形態の回転翼盤4は、膨出部43、谷部42、尾根部41、第2羽根47、第3羽根48、第4羽根49だけでなく、第1羽根46や軸受45も、一体で形成されているので、部品点数や組み立て工数が増加することはない。第1羽根46を回転翼盤4に固定するネジ穴も不要であるため、隣り合う第1羽根46の間の隙間を大きくでき、第1貫通孔43aの数や大きさを増やすことが可能となり、発生する水流を強くできる。
【0048】
なお、本発明は前述した実施形態に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、前述した実施形態では、乾燥機構を備える洗濯乾燥機について説明したが、乾燥機構を備えない全自動洗濯機に対しても適用できる。
【符号の説明】
【0049】
S 洗濯機
1 外枠
2 外槽
3 洗濯兼脱水槽(洗濯槽)
4 回転翼盤
10 駆動モータ(駆動部)
41 尾根部
41a 周方向傾斜面
41b 稜線
41b1 内径側稜線
41T 尾根部の上端
42 谷部
42a 第2貫通孔
43 膨出部
43a 第1貫通孔
43T 膨出部の上端
44 周縁部
45 軸受
46 第1羽根
47 第2羽根
47a 小型第2羽根
48 第3羽根
48a 内径側第3羽根
48b 外径側第3羽根
48c 中間第3羽根
49 第4羽根
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8