(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024157863
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】金属材の表面処理方法、金属材、及び表面処理システム
(51)【国際特許分類】
C25D 11/18 20060101AFI20241031BHJP
C25D 11/30 20060101ALI20241031BHJP
C25D 11/26 20060101ALI20241031BHJP
【FI】
C25D11/18 314A
C25D11/18 305
C25D11/30
C25D11/26 Z
C25D11/18 314B
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023072486
(22)【出願日】2023-04-26
(71)【出願人】
【識別番号】305060567
【氏名又は名称】国立大学法人富山大学
(74)【代理人】
【識別番号】100114074
【弁理士】
【氏名又は名称】大谷 嘉一
(74)【代理人】
【識別番号】100222324
【弁理士】
【氏名又は名称】西野 千明
(72)【発明者】
【氏名】佐伯 淳
(72)【発明者】
【氏名】橋爪 隆
(72)【発明者】
【氏名】山本 美宗
(57)【要約】
【課題】多孔質層を有する陽極酸化皮膜を用いて着色する際に、多色化が容易でカラー画像形成も可能な金属材の表面処理方法、金属材、及び表面処理システムの提供を目的とする。
【解決手段】金属材の表面に多孔質層を有する陽極酸化皮膜を形成するステップを有し、前記陽極酸化皮膜の表面側に第1の着色層を形成するステップと、レーザー光、電子ビームまたはイオンビームのいずれかを照射することで前記第1の着色層を部分的に除去し、前記除去された部位に第2の着色層を形成するステップとを繰り返すことを特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属材の表面に多孔質層を有する陽極酸化皮膜を形成するステップを有し、
前記陽極酸化皮膜の表面側に第1の着色層を形成するステップと、
レーザー光、電子ビームまたはイオンビームのいずれかを照射することで前記第1の着色層を部分的に除去し、前記除去された部位に第2の着色層を形成するステップとを繰り返すことを特徴とする金属材の表面処理方法。
【請求項2】
前記着色層は封孔処理後にレーザー光、電子ビームまたはイオンビームのいずれかを照射し、部分的に除去されることを特徴とする請求項1記載の金属材の表面処理方法。
【請求項3】
前記着色層は前記多孔質層に付着される、染料又はインクであることを特徴とする請求項2記載の金属材の表面処理方法。
【請求項4】
前記金属材は、アルミニウム及びその合金、マグネシウム及びその合金、チタン及びその合金のいずれかであることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の金属材の表面処理方法。
【請求項5】
多孔質層を有する陽極酸化皮膜の表面に形成された第1の着色層と、前記第1の着色層の一部が除去された除去部位と、前記除去部位に形成された第2の着色層とを有することを特徴とする金属材。
【請求項6】
前記第1の着色層又は前記第2の着色層の一部が除去された除去部位と、前記除去部位に形成された第3の着色層を有することを特徴とする請求項5記載の金属材。
【請求項7】
前記金属材は、アルミニウム及びその合金、マグネシウム及びその合金、チタン及びその合金のいずれかであることを特徴とする請求項5又は6に記載の金属材。
【請求項8】
前記第1の着色層の一部がレーザー光、電子ビームまたはイオンビームのいずれかにより除去された除去部位であることを特徴とする請求項5に記載の金属材。
【請求項9】
前記第1の着色層又は前記第2の着色層の一部がレーザー光、電子ビームまたはイオンビームのいずれかにより除去された除去部位であることを特徴とする請求項6に記載の金属材。
【請求項10】
金属材の表面に形成された陽極酸化皮膜を着色する着色装置と、レーザー光を照射するレーザー光照射装置とを有し、前記レーザー光照射装置は入力された画像データに基づいて着色された陽極酸化皮膜上を線状又は2次元に走査する走査制御手段とを有することを特徴とする表面処理システム。
【請求項11】
前記陽極酸化皮膜を着色する着色装置は、シアン、マゼンタ、イエロー、ブラックの染料又はインクを用いて着色できることを特徴とする請求項8記載の表面処理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属材の表面に陽極酸化皮膜を形成した後に着色する表面処理方法、金属材、及び表面処理システムに関し、特に多色化が容易な表面処理方法、金属材、及び表面処理システムに係る。
【背景技術】
【0002】
例えば、アルミニウム又はその合金からなる金属材の表面に無数の微細な孔からなる多孔質の陽極酸化皮膜を形成し、その後に染色した後に封孔処理することで耐食性に優れた着色被膜が得られる。
この場合に着色処理は、染料を溶解した浴に浸漬することで行われることから、原則的に一色になる。
【0003】
これまで多色化する場合には、特許文献1に示すように一旦、全体を染色した後に部分的にレジスト膜でマスキングし、他の部分を脱色あるいは、さらに着色したりする方法や、特許文献2に示すように部分的にスクリーン印刷した後に、染色する方法等、いずれも複雑なマスキング工程が必要であり、また多色化の自由度が低いものである。
特許文献3には、染色時間を部位により変化させることで着色に濃淡をつけることが記載されているが、これはグラデーションが可能でも多色化できるものではない。
特許文献4には、アルミニウムの陽極酸化皮膜にレーザー光を照射し、画像を形成することが記載されているが、この技術はレーザー光にて部分的に陽極酸化膜を溶解するのが目的であって、多色化を図るのには適していない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭60-75599号公報
【特許文献2】特開昭61-163296号公報
【特許文献3】特開2010-270350号公報
【特許文献4】特開平11-78245号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、多孔質層を有する陽極酸化皮膜を用いて着色する際に、多色化が容易でカラー画像形成も可能な金属材の表面処理方法、金属材、及び表面処理システムの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る金属材の表面処理方法は、金属材の表面に多孔質層を有する陽極酸化皮膜を形成するステップを有し、前記陽極酸化皮膜の表面側に第1の着色層を形成するステップと、レーザー光、電子ビームまたはイオンビームのいずれかを照射することで前記第1の着色層を部分的に除去し、前記除去された部位に第2の着色層を形成するステップとを繰り返すことを特徴とする。
【0007】
電解液中にて金属材を陽極にし、対極としてカーボンやSUS材等の陰極を配置し、電解処理を行うと金属材の表面には基部側の極く薄いバリアー層と、このバリアー層から表面に向けて無数のポーラス層を有する多孔質層が形成される。
このポーラス層は孔径が100~300nmレベルであり、深さがほぼ陽極酸化皮膜の厚さに相当し、吸着活性に優れる。
【0008】
したがって、この陽極酸化皮膜が形成された金属材を染料やインク等の着色剤の溶液とデッピングやスプレー等にて接触させると、着色剤(色素)が多孔質層の表面側に吸着(付着)され着色される。
しかし、この着色剤が吸着されるのはポーラス層の極く表面側に限られている。
そこで本発明は、この着色層をレーザー光、電子ビームまたはイオンビームのいずれかの照射にて除去し、第2の着色剤を新たに、このポーラス層に吸着させることが出来た点に特徴がある。
したがって、この第2の着色層をレーザー光、電子ビームまたはイオンビームのいずれかの照射(以下、必要に応じてレーザー光等と称する。)にて除去し、さらに第3の着色剤で着色することを繰り返すことも可能である。
よって、本発明は一回の陽極酸化処理にて得られた多孔質層を利用して容易に多色化が可能となる。
【0009】
陽極酸化皮膜の多孔質層の表面側に着色剤を吸着させただけでは耐食性等が劣るから一般的には封孔処理が行われる。
本発明においてもレーザー光等の照射と、着色を繰り返し、最後に封孔処理してもよく、また着色工程毎に一旦封孔処理を行い、着色層を安定化させた後にレーザー光等を照射し、封孔処理した着色層を部分的に除去するようにすることもできる。
【0010】
本発明において、着色層を形成するのに用いられる着色剤は、ポーラス層に吸着されるものであれば制限されない。
例えば、有機又は無機の染料、インク、蛍光塗料等が例として挙げられる。
【0011】
本発明に用いることができる金属材は、陽極酸化により多孔質層が形成されるものであれば、特に制限はない。
例えば、アルミニウム及びその合金、チタン及びその合金等のいわゆるバルブ金属やマグネシウム及びその合金等が例として挙げられる。
電解液及び電解の条件も金属材に適した条件を適宜設定すればよい。
電解液としては硫酸水溶液、リン酸水溶液、クロム酸水溶液、有機酸水溶液等が例として挙げられ、電解条件としては直流、交流、パルス、交直重畳法等が例として挙げられる。
【0012】
本発明に係る金属材は、多孔質層を有する陽極酸化皮膜の表面に形成された第1の着色層と、前記第1の着色層の一部が除去された除去部位と、前記除去部位に形成された第2の着色層とを有することを特徴とする。
また、さらに前記第1の着色層又は前記第2の着色層の一部が除去された除去部位と、前記除去部位に形成された第3の着色層を有することを繰り返してもよい。
ここで、除去部位とは、通常、第1の着色層の一部を除去できる、あるいは、第1の着色層又は第2の着色層の一部を除去できるものの照射によって形成された着色層の除去部位をいうが、特に、レーザー光、電子ビーム、イオンビーム等の照射により形成された着色層の除去部位をいう。
したがって、除去部位は、レーザー光、電子ビーム、イオンビーム等をそれぞれ照射した場合、レーザー光、電子ビーム、イオンビーム等のそれぞれの照射跡として特定できる。
レーザー光、電子ビーム、イオンビーム等のうち、特に好ましくは、レーザー光であり、レーザー光によって、微細な部分も除去することができる。
本発明に係る金属材は、陽極酸化により多孔質層が形成されるものであれば、特に制限はない。
例えば、アルミニウム及びその合金、チタン及びその合金等のいわゆるバルブ金属やマグネシウム及びその合金等が例として挙げられる。
【0013】
本発明に係る表面処理システムは、金属材の表面に形成された陽極酸化皮膜を着色する着色装置と、レーザー光を照射するレーザー光照射装置とを有し、前記レーザー光照射装置は入力された画像データに基づいて着色された陽極酸化皮膜上を線状又は2次元に走査する走査制御手段とを有することを特徴とする。
前記陽極酸化皮膜を着色する着色装置は、シアン、マゼンタ、イエロー、ブラックの染料又はインクを用いて着色できることが好ましい。
シアン、マゼンタ、イエロー、ブラックの4色の着色層を形成することにより、美しいカラー画像を形成することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る表面処理方法にあっては、金属材の表面に陽極酸化皮膜を形成した後に着色とレーザー光照射による着色層の一部除去を繰り返すことで多色化が可能で、複数の色相からなるカラー画像や、例えばパルスレーザー光をドット照射することで、CMYK色によるカラー画像表現、さらには蛍光塗料を着色剤として用いることで、発光性のある文字や画像に表現することもできる。
本発明に係る金属材にあっては、多色で着色された陽極酸化皮膜が形成されているので、従来は形成困難だったカラー画像を有する金属材になる。
通常のインク印刷とは異なり、陽極酸化膜のインク定着率は高く、耐久性に優れる。
また、種々のインクで着色でき、蛍光インクを用いれば夜間でも見える画像を形成することが可能である。
本金属材は、スマートフォン、タブレット、ノートパソコン等の携帯機器や、水筒、食器類、ドア等に適用できる。また、陽極酸化できる金属なら適用が可能である。
本発明に係る表面処理システムにあっては、金属膜上に耐久性のあるカラー画像が容易に形成できる表面処理システムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図3】赤色に着色した表面の中央部の出力を変化させて、レーザー照射により除去し、青色に着色した例を示す。
【
図4】デジタルマイクロスコープの焦点深度によるプロファイル測定結果を示す。
【
図5】赤色の第1着色層に対して縦方向直線状にレーザー光を照射し、次に青色の第2着色層を形成し、次に横方向直線状にレーザー光を照射し、部分的に除去し、黄色の第3着色層を形成した例を示す。
【
図7】複数の着色層が形成された金属材の例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1及び
図2に基づいて、本発明に係る着色のプロセスについて説明する。
例えば、アルミニウムやアルミニウム合金からなる金属材の表面を多色化する例で説明する。
アルミニウム材を電解液中に浸漬し、陽極酸化し、表面に陽極酸化皮膜を形成する。
次に、水洗いし、染料等の着色剤を溶解した着色槽等に浸漬すると、着色剤が多孔質層の表面側に吸着され、表面が着色される。
図2に陽極酸化皮膜の断面を模式的に示す。
上記の処理にて、金属材1の表面に形成された陽極酸化皮膜の多孔層2の表面に、第1着色層が形成される。
次に、
図1のフローでは封孔処理する例で示したが、封孔処理することなくレーザー光を部分的に照射して、第1着色層11を除去してもよい。
すると、
図2に示すようにレーザー光3が照射された部位が除去され、2色目工程として染料で染色し、第2着色層12が形成される。
さらに、多色化する場合には、
図2に示すように部分的にレーザー光3を照射し、第2着色層の一部を除去し、次に別の染料で着色し、第3着色層13を得ることができる。
さらに、多色化したい場合には、部分的にレーザー光の照射による除去と着色を繰り返すことになる。
【0017】
<サンプルの作成条件>
サンプルを作成し、評価したので、以下説明する。
(1)金属材として、JIS A6061、アルミニウム合金の板材「15mm×24mm」を用いた。
(2)電解液として、15wt%硫酸水溶液を用い、1mmの純アルミ線にて上記金属材を陽極側に固定した。
陰極側には、ハードカーボンを用いた。
(3)電解液の温度23℃、電極間距離15mm、直流0.2A×15minの電解を行った後に、イオン交換水にて洗浄した。
陽極酸化皮膜の膜厚は、約9μmであった。
(4)着色には、市販のインクジェットプリンター用詰め替えインクを用い、実験ではマゼンダ(ELECOM)、シアン(ELECOM、THE-32C3)、イエロー(EPSON、HAR-Y)の3色を用いた。
(5)染料の濃度は、イオン交換水50mlに4滴を加えた。
(6)着色は50℃×15min(2回目以降は50℃×30min)とした。
(7)レーザー光の照射は、炭酸ガスレーザー(Oh-laser株式会社、HAJIME CL1 PLUS、波長10.6μm、ビーム径0.08mm、高さ20mm)を用いて、走査速度1mm/s、走査回数1回とし、出力を変化させて実験を実施した。
【0018】
(実施例1)
上記条件にて、まず
図3に示すように赤色に着色した後に、横一文字にレーザー光を走査し、陽極酸化皮膜の一部を除去し、青色に着色した。
図3にて、レーザー光の出力を(a)0.4W、(b)2W、(c)4W、(d)8W、(e)16W、(f)24W、(g)32W、(h)40Wと順次高くして、赤色の着色層を横一文字に除去し、その後に青色の着色した表面の光学顕微鏡画像を示す。
レーザー光の出力(a)0.4Wでは、赤色層が除去されていなかったが、(b)2W、(c)4W、(d)8Wでは、赤色層が除去された部分に青色層が良好に形成されているのが分かる(
図3はグレースケールで示す。)。
本実施例では、(f)24W以上になると陽極酸化皮膜全体が除去され、アルミニウム金属の表面が現れていたことから、陽極酸化皮膜の作成条件や、厚みに合せて適したレーザー光出力を調整することが必要であるものの、レーザー光の照射にて部分的に除去しても、その部位に次の染料で着色されることが明らかになった。
【0019】
図4に、デジタルマイクロスコープ(KEYENCE)の焦点深度計測による、
図3の青色方向と直交する方向のプロファイルを示す。
陽極酸化皮膜の表面側の一部が、レーザー光照射により除去されているのが確認できた。
【0020】
(実施例2)
図5は、第1工程目に赤色の着色層を形成し、次に縦一文字にレーザー光(4W)を照射した後に、第2工程目として青色に着色(染色)し、次に横一文字にレーザー光(4W)を照射し、第3工程目として黄色に着色(染色)した後に、封孔処理した光学顕微鏡画像を示す。
図5は、グレースケールのため色は分かりにくいが、赤色の表面に対して縦一文字に青色の表面が形成され、さらに第3工程目にて青色及び赤色の表面に黄色に染色された帯が形成された。
これにより、着色とレーザー光の照射を繰り返すことで、多色化できることが確認できた。
【0021】
(実施例3)
図6は、レーザー光照射によって、第1工程目で形成された第1着色層を除去し、その後に蛍光塗料を用いて第2工程目の着色をし、紫外線ランプで照らした結果、発光により画像が浮き上がることが確認できた。
【0022】
(実施例4)
図7に、前述の表面処理方法を用いて、複数色の着色層を形成する例を示す。
アルミニウム材料で作製したスマートフォン用の筐体21の表面に多孔質層を有する陽極酸化皮膜を形成し、陽極酸化皮膜表面をブラックの染料でブラックの着色層を形成する。
ここから、CMYK法を用いて、シアン、マゼンタ、イエロー、ブラックの4色の着色層を形成することにより、カラー画像を形成する。
カラー画像形成領域22のシアンに着色すべき部分に、レーザー光を照射し、前記ブラックの着色層を部分的に除去し、除去した部位にシアンの染料でシアンの着色層を形成する。
次に、カラー画像形成領域22のマゼンタに着色すべき部分に、レーザー光を照射し、前記ブラックの着色層を部分的に除去し、除去した部位にマゼンタの染料でマゼンタの着色層を形成する。
次に、カラー画像形成領域22のイエローに着色したい部分に、レーザー光を照射し、前記ブラックの着色層を部分的に除去し、除去した部位にイエローの染料でイエローの着色層を形成する。
ここではリンゴの写真のカラー画像を形成する例を示した。
これによって、シアン、マゼンタ、イエロー、ブラックの4色の着色層が形成されたアルミニウム筐体が作製できる。
金属材は、アルミニウム以外にも、その合金、マグネシウム及びその合金、チタン及びその合金のいずれかの材料を用いることができる。
また、スマートフォン以外にも、タブレット、パソコンの筐体材料に適用することもできる。
【0023】
(実施例5)
図8に、本発明の表面処理システムの構成図を示す。
金属材上に陽極酸化された陽極酸化皮膜を着色する着色装置31と、レーザー光を照射するレーザー光照射装置32とを有し、前記レーザー光照射装置32は入力された画像データ33に基づいて線状または2次元に走査されて、前記金属材上の着色された陽極酸化皮膜に照射される。
以下に本発明の表面処理システムの処理工程の例を説明する。
陽極酸化皮膜付きの金属材34が着色装置31にセットされ、着色装置31で第1色に着色された後、金属材は金属材支持・走査部35に搬送される。
第1色に着色された陽極酸化皮膜付きの金属材は、金属材支持・走査部35でレーザー光照射装置32によりレーザー光照射され、部分的に第1着色層が除去される。
次に、本金属材は着色装置31に搬送され、第2色に着色される。
第2色に着色された陽極酸化皮膜付きの金属材は、金属材支持・走査部35に搬送され、金属材支持・走査部35でレーザー光照射装置32によりレーザー光照射され、部分的に第1着色層が除去される。
次に、本金属材は着色装置31に搬送され、第3色に着色される。
以下同様に、着色したい部分に着色することができる。
本表面処理システムを用いて、CMYK法によりシアン、マゼンタ、イエロー、ブラックの4色の着色層を形成することにより、カラー画像を形成することができる。
【0024】
(実施例6)
図9に、本発明のレーザー光照射装置の概略図を示す。
レーザー光源41から照射されたレーザー光3は、ポリゴンミラー42によって反射された後、走査レンズ43を通して金属材1上に形成された陽極酸化皮膜表面の着色層44に照射される。
レーザー光3はポリゴンミラー42によって線状に走査され、金属材1を紙面鉛直方向に機械的に走査することにより、レーザー光3は金属材上の陽極酸化皮膜表面の着色層44に対して2次元に照射することができる。
【0025】
図10に、本発明のレーザー光照射装置の斜視図を示す。
レーザー光源41から照射されたレーザー光3は、ポリゴンミラー42によって反射された後、走査レンズ43を通り、ミラー45にて金属材1上の着色層に照射する例である。
レーザー光3をポリゴンミラー42で光学的に線状に走査し、着色層付きの金属材1を機械的に走査することにより、2次元にレーザー光を照射することができる。
また、ここでは着色層付きの金属材1を機械的に走査する方法を示したが、前記ミラー45をポリゴンミラーにすることにより、すべてを光学的な走査にすることもできる。
この場合、機械的な操作が不要となり、着色層付きの金属材1は固定しておけばよいので、システムはコンパクトにできる利点がある。
【符号の説明】
【0026】
1 金属材
2 多孔層
3 レーザー光
11 第1着色層
12 第2着色層
13 第3着色層
21 スマートフォン用の筐体
22 カラー画像形成領域
31 着色装置
32 レーザー光照射装置
33 画像データ
34 陽極酸化皮膜付き金属材
35 金属材支持・走査部
41 レーザー光源
42 ポリゴンミラー
43 走査レンズ
44 着色層
45 ミラー