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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024157864
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】ピールオフパック化粧料
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/81 20060101AFI20241031BHJP
   A61K 8/73 20060101ALI20241031BHJP
   A61K 8/02 20060101ALI20241031BHJP
【FI】
A61K8/81
A61K8/73
A61K8/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023072487
(22)【出願日】2023-04-26
(71)【出願人】
【識別番号】501360821
【氏名又は名称】MP五協フード&ケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002734
【氏名又は名称】弁理士法人藤本パートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】山本(桑名) 由紀
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AB032
4C083AC102
4C083AC122
4C083AC302
4C083AD092
4C083AD111
4C083AD112
4C083AD212
4C083AD351
4C083AD352
4C083CC07
4C083EE01
4C083EE03
4C083EE06
(57)【要約】
【課題】本発明は、肌への塗り心地に優れ且つ肌に塗布されたときの液垂れが抑制されたピールオフパック化粧料を提供することを課題とする。
【解決手段】ポリビニルアルコールと、脱アシル型ジェランガムとを含む、ピールオフパック化粧料。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリビニルアルコールと、脱アシル型ジェランガムとを含む、ピールオフパック化粧料。
【請求項2】
前記脱アシル型ジェランガムの含有量が0.5~2.0質量%である、請求項1に記載のピールオフパック化粧料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ピールオフパック化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、パック化粧料は、皮膚を被覆する皮膜の形成に用いられている。パック化粧料のなかでもピールオフパック化粧料は、水分の補給効果に優れるとともに、皮膚表面の汚れや古い角質、毛穴の黒ずみや角栓、産毛などを除去する効果に優れるため、よく用いられている。そして、ピールオフパック化粧料の品質の向上を図るために、各種提案がなされている。
【0003】
例えば、特許文献1~5に記載のように、ピールオフパック化粧料としてポリビニルアルコールを含むものが提案されている。特許文献1では、皮膜を剥離する際の痛みを軽減するために、ポリビニルアルコールとともにカチオン性ポリマーを含ませることが提案されている。また、特許文献2では、皮膜の破れを抑制するとともに剥離の際の痛みを軽減するために、ビニルピロリドンコポリマーを含ませることが提案されている。
【0004】
また、特許文献3では、使用感の向上に加えて、ゲル化等の劣化を抑制するために、ポリオキシアルキレンアルキルグルコシドを含ませることが提案されている。また、特許文献4では、厚塗りを可能にするとともに剥離の際の痛みを軽減することに加えて、ゲル化による劣化を抑制するために、固体状のポリエチレングリコールを含ませることが提案されている。また、特許文献5では、パール顔料を含有するパック化粧料において、パール顔料の沈降を防止するためにキサンタンガムを含ませることが提案されている。
【0005】
これらの他、ポリビニルアルコールに代わる成分の提案もなされている。例えば、特許文献6では、低粘性化されたアクリル系モノマーの重合体を含有するピールオフパック化粧料が提案されている。かかる化粧料によれば、低粘性化により肌における延びが良くなるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2014-73977号公報
【特許文献2】特開2002-104920号公報
【特許文献3】特開2002-226354号公報
【特許文献4】特開平10-245320号公報
【特許文献5】特開平10-265336号公報
【特許文献6】特開平6-040879号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、ピールオフパック化粧料の使用においては、膜厚のバラつきが少ない皮膜を形成することが重要である。これによって、肌全体にわたって化粧料成分を均一に行きわたらせることができるとともに、剥離性が向上して上記のような痛みを軽減できる等の効果がある。
【0008】
しかしながら、従来のこの種の化粧料は、肌への塗り心地を改善するための工夫はなされているが、塗布後の液垂れの抑制が不十分である。このため、従来の化粧料は、肌に塗布後の液垂れによって膜厚にバラつきが生じ、上記のような効果を十分に得られないという問題点を有する。
【0009】
上記事情に鑑み、本発明は、肌への塗り心地に優れ且つ肌に塗布されたときの液垂れが抑制されたピールオフパック化粧料を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一態様に係るピールオフパック化粧料は、ポリビニルアルコールと、脱アシル型ジェランガムとを含む。
【0011】
かかる構成によれば、ポリビニルアルコールとともに脱アシル型ジェランガムを含むことによって、肌に塗り広げ易く且つ肌に塗布されたときの液垂れが抑制されたものとなる。
【0012】
また、本発明の一態様に係るピールオフパック化粧料は、前記脱アシル型ジェランガムの含有量が0.5~2.0質量%である。
【0013】
かかる構成によれば、上記含有量の脱アシル型ジェランガムを含むことによって、肌への塗り心地に優れ且つ肌に塗布されたときの液垂れが抑制されたものとなる。
【発明の効果】
【0014】
以上のとおり、本発明によれば、肌への塗り心地に優れ且つ肌に塗布されたときの液垂れが抑制されたピールオフパック化粧料を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の一実施形態に係るピールオフパック化粧料について説明する。
【0016】
本実施形態のピールオフパック化粧料は、水と、ポリビニルアルコールと、脱アシル型ジェランガムと、アルコールと、キレート剤とを含む。本実施形態のピールオフパック化粧料は、使用者の肌に塗布された後、乾燥されることによって、使用者の肌を被覆する皮膜を形成し、皮膜の剥離時に皮膚表面の角質等の汚れを除去するために用いられる。
【0017】
本実施形態の水は、1価又は2価の金属イオンを実質的に含まないものである。また、前記金属としては、例えば、アルカリ金属、カルシウム等のアルカリ土類金属が挙げられる。かかる水としては、脱イオン水や蒸留水が好ましい。これによって、ピールオフパック化粧料は、前記脱アシル型ジェランガムに起因するゲル化が抑制され、保管安定性を有するものとなる。
【0018】
本実施形態の水の含有量は、ピールオフパック化粧料の総質量に対して70質量%以上である。水の含有量は、90質量%以下が好ましく、80質量%以下がより好ましい。
【0019】
本実施形態のポリビニルアルコールは、けん化度が90mol%以下の部分けん化型である。より具体的には、本実施形態のポリビニルアルコールのけん化度は、70mol%以上90mol%以下である。ポリビニルアルコールのけん化度は、85mol%以上90mol%以下が好ましい。なお、前記ポリビニルアルコールは、けん化度が90mol%よりも大きい中間けん化型又は完全けん化型であってもよい。本実施形態のピールオフパック化粧料は、中間けん化型又は完全けん化型のポリビニルアルコールを含む場合であっても、脱アシル型ジェランガムを含むことによって所望の性能を十分に発揮し得る。また、本実施形態のポリビニルアルコールは、重合度が100~4000である。ポリビニルアルコールの重合度は、100~2000が好ましく、100~1000がより好ましく、200~700がさらに好ましい。なお、ポリビニルアルコールのけん化度及び重合度は、JIS K 6726-1994(ポリビニルアルコール試験方法)に規定の方法によって測定することができる。
【0020】
本実施形態のポリビニルアルコールの含有量は、ピールオフパック化粧料の総質量に対して3質量%以上である。ポリビニルアルコールの含有量は、5質量%以上30質量%以下が好ましく、10質量%以上30質量%以下がより好ましく、10質量%以上20質量%以下がさらに好ましい。本実施形態のピールオフパック化粧料は、脱アシル型ジェランガムを含むことによって、ポリビニルアルコールの増量に伴う塗り心地や皮膜の均一性の改善、若しくは前記皮膜の剥離時の痛みを抑制する、又は、ポリビニルアルコールの減量に伴う塗布時の液垂れが抑制されたものとなる。
【0021】
ジェランガムは、微生物Sphingomonas elodeaが産出する発酵多糖類である。ジェランガムは、D-グルコース、D-グルクロン酸、D-グルコース、及びL-ラムノースで構成される繰り返し構造を有する。上記の微生物が産出するジェランガムは、1位水酸基及び3位水酸基がグリコシド結合したD-グルコースの2位水酸基にアシル基としてグリセリル基が結合し且つ6位水酸基にアシル基としてアセチル基が結合している。また、前記繰り返し構造あたり、平均1個のグリセリル基が存在し、平均1/2個のアセチル基が存在する。
【0022】
ジェランガムは、アシル基が除去されていないネイティブ型ジェランガム(ハイアシルジェランガムとも呼ばれる)と、前記ネイティブ型ジェランガムのアシル基が除去された前記脱アシル型ジェランガム(ローアシルジェランガムとも呼ばれる)とに分類される。市販品としては、ネイティブ型の「ケルコゲルHM、LT-100」、脱アシル型の「ケルコゲル」(いずれもMP五協フード&ケミカル株式会社製)を挙げることができる。本発明で用いられる脱アシル型ジェランガムは、化粧料分野で一般的に使用されているものであれば、特に制限されずに使用することができる。
【0023】
このように、本実施形態のピールオフパック化粧料は、多糖類として前記脱アシル型ジェランガムを含む。本実施形態の脱アシル型ジェランガムの含有量は、ピールオフパック化粧料の総質量に対して0.5質量%以上である。前記脱アシル型ジェランガムの含有量は、1質量%以上が好ましい。これによって、ピールオフパック化粧料の塗り心地が向上し、且つ、塗布後の液垂れが抑制される。また、前記脱アシル型ジェランガムの含有量は、2質量%以下が好ましい。これによって、ピールオフパック化粧料のゲル化が抑制される。
【0024】
前記脱アシル型ジェランガムの含有量は、前記ポリビニルアルコールの質量に対して、5質量%以上が好ましく、7質量%以上がより好ましく、10質量%以上がさらに好ましい。また、前記脱アシル型ジェランガムの含有量は、前記ポリビニルアルコールの質量に対して、30質量%以下が好ましく、15質量%以下がより好ましい。
【0025】
本実施形態では、前記アルコールとして、1価アルコールと多価アルコールとを含む。前記1価アルコールとしては、エタノール、プロパノール等の炭素数が2以上4以下の低級アルコールが挙げられる。前記1価アルコールとしては、エタノールが好ましい。前記多価アルコールとしては、炭素数3~10の多価アルコールが好ましく、例えば、2価アルコール(例えば、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ペンチレングリコール等)、3価アルコール(例えば、グリセリン、トリメチロールプロパン等)、4価アルコール(例えば、ジグリセリン、1,2,6-ヘキサントリオール等のペンタエリスリトール等)、多価アルコール重合体(例えば、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリグリセリン等)が挙げられる。前記ピールオフパック化粧料は、1種のアルコールを含んでいてもよく、複数種のアルコールを含んでいてもよい。前記ピールオフパック化粧料は、2種以上の前記多価アルコールを含むことが好ましい。本実施形態のピールオフパック化粧料は、前記アルコールを含むことによって、適度な清涼感と保湿性に優れるものとなる。さらに、アルコールを含むことによって、ポリビニルアルコールの水への分散性が向上し、泡がみを抑制することができ、それによって肌全体にわたって成分を均一に行きわたらせることができるとともに、肌に塗布・剥離後に適度な清涼感と保湿性を付与することができる。
【0026】
本実施形態の1価アルコール(好ましくはエタノール)は、ピールオフパック化粧料の総質量に対しての含有量は、0.1質量%以上15質量%以下であることが好ましい。一方、多価アルコールの含有量は、ピールオフパック化粧料の総質量に対して5質量%以上15質量%以下であることが好ましい。ピールオフパック化粧料は、5質量%以上の3価アルコール(好ましくはグリセリン)を含むことが好ましく、これとともに1質量%以上の2価アルコール(好ましくはペンチレングリコール)を含むことがより好ましい。これによって、さらに保湿性等の上記効果に優れるものとなる。
【0027】
本実施形態のキレート剤は、脱アシル型ジェランガムの溶解性を改善するために添加されている。具体的には、本実施形態のキレート剤は、脱アシル型ジェランガムの水に対する溶解温度を低下させることができるものである。かかるキレート剤としては、クエン酸ナトリウム、EDTA-2Na、EDTA-3Na、EDTA-4Na等のエチレンジアミンテトラ酢酸金属塩、エチドロン酸、エチドロン酸4Na、グルコン酸、グルコン酸ナトリウム、メタリン酸ナトリウム、フィチン酸、フィチン酸ナトリウム、ヒドロキシエタンジホスホン酸、ジエチレントリアミン五酢酸、エチレンジアミンヒドロキシエチル三酢酸三ナトリウム二水塩、ヒドロキシエタンジホスホン酸液等が挙げられる。本実施形態のピールオフパック化粧料は、キレート剤を含むことによって、脱アシル型ジェランガムの溶解性が向上し、塗り心地の改善や液垂れの抑制機能がより発揮され易くなる。
【0028】
前記キレート剤の含有量は、前記脱アシル型ジェランガムの質量に対して、5質量%以上20質量%以下であることが好ましい。
【0029】
前記ピールオフパック化粧料は、6rpmでの低剪断粘度が30,000mPa・s以上100,000mPa・s以下であることが好ましく、80,000mPa・s以上100,000mPa・s以下であることがより好ましい。また、前記ピールオフパック化粧料は、30rpmでの中剪断粘度が10,000mPa・s以上50,000mPa・s以下であることが好ましく、30,000mPa・s以上50,000mPa・s以下であることがより好ましい。さらに、前記ピールオフパック化粧料は、60rpmでの高剪断粘度が5,000mPa・s以上30,000mPa・s以下であることが好ましく、20,000mPa・s以上30,000mPa・s以下であることがより好ましい。なお、各粘度値は、実施例に記載の測定方法で測定することができる。
【0030】
前記ピールオフパック化粧料は、下記式で求められるTI値が0.1以上0.5以下であることが好ましく、0.2以上0.3以下であることがより好ましい。
TI値=60rpmの粘度値/6rpmの粘度値
【0031】
以上のように、本実施形態のピールオフパック化粧料は、前記ポリビニルアルコールと前記脱アシル型ジェランガムとを含むことによって、使用者の肌への塗り心地を良好なものとしている。さらに、本実施形態のピールオフパック化粧料は、肌に塗布されたときの液垂れが抑制されており、すなわち、乾燥するまでの間において肌上で塗布液が下方に移動することなく保持される。このことによって、膜厚のバラつきが少ない皮膜を使用者の肌に形成することができる。そして、かかる皮膜は、使用者の肌を万遍なく保湿させ、清浄にする等の効果を奏する。
【0032】
また、本実施形態のピールオフパック化粧料は、上記配合によって相溶性に優れたものとなる。さらに、本実施形態のピールオフパック化粧料は、ゲル化剤である前記脱アシル型ジェランガムを含むにも関わらず、30日間保管してもゲル化することなく、すなわち、保管安定性に優れている。
【0033】
また、本実施形態のピールオフパック化粧料は、保管容器等からの液垂れも抑制されており、且つ、曳糸性が低減されているため、非常に取り扱い易いものとなっている。
【0034】
以上のように、例示としての実施形態を示したが、本発明に係るピールオフパック化粧料は、上記実施形態の構成に限定されるものではない。また、本発明に係るピールオフパック化粧料は、上記した作用効果により限定されるものでもない。本発明に係るピールオフパック化粧料は、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0035】
例えば、本発明のピールオフパック化粧料は、前記脱アシル型ジェランガム以外の多糖類として、タマリンドガム、前記ネイティブ型ジェランガム、寒天、ローカストビーンガム、カラギーナンからなる群から選択される1種以上を含んでいてもよい。
【0036】
前記タマリンドガムは、タマリンド(Tamarindus Indica L.)の種子から得られる多糖類である。前記タマリンドガムは、β-(1-4)結合した4分子のD-グルコースからなる主鎖と、主鎖のD-グルコースに結合した側鎖とで構成される繰り返し構造を有する。側鎖は、主鎖のD-グルコースにα-(6-1)結合したD-キシロースと、D-キシロースにβ-(2-1)結合したD-ガラクトースとで構成されている。
【0037】
前記ローカストビーンガムは、多年生常緑樹カロブ樹(Celatonia silique Linne)の種子から得られる多糖類である。前記ローカストビーンガムは、β-(1-4)結合した4分子のマンノースからなる主鎖と、主鎖のマンノースにα-(6-1)結合したガラクトースからなる側鎖とで構成される繰り返し構造を有する。
【0038】
前記カラギーナンとしては、κ-カラギーナン、λ-カラギーナン、又はι-カラギーナンのいずれであってもよい。
【0039】
ただし、前記ピールオフパック化粧料が含み得る多糖類の総質量に対する前記脱アシル型ジェランガムの質量割合は、70質量%以上が好ましく、90質量%以上がより好ましく、95質量%以上がさらに好ましい。
【0040】
また、本発明のピールオフパック化粧料は、カルボマーを含んでいてもよい。これによって、肌への塗り心地が向上する。前記カルボマーの含有量は、前記脱アシル型ジェランガムの質量に対して10~30質量%が好ましい。
【実施例0041】
以下、実施例により本発明をさらに説明するが、本発明は、これらに限定されるものではない。
【0042】
[使用原料]
ポリビニルアルコール:三菱ケミカル株式会社製、ゴーセノール40C
脱アシル型ジェランガム:MP五協フード&ケミカル株式会社製、ケルコゲル
ネイティブ型ジェランガム:MP五協フード&ケミカル株式会社製、ケルコゲルHM
タマリンドガム:MP五協フード&ケミカル株式会社製、グリロイド6C
寒天:伊那食品工業株式会社製、伊那寒天UX-30ウルトラ即溶性寒天
ローカストビーンガム:三晶株式会社製、GENU GUM type RL-200-J
カラギーナン:三晶株式会社製、GENULACTA carrageenan type P-100-J
カルボマー:住友精化株式会社製、AQUPEC HV-805EG-300 CT-1
【0043】
[製造例]
下記の表1、3、5に示す配合割合で、下記(1)~(6)の手順に従ってピールオフパック化粧料を作製した。
(1)容器を用い、水にクエン酸ナトリウムを溶解させた。
(2)別の容器を用い、ポリビニルアルコール、多糖類、アルコールを混合した。
(3)(1)の溶液を撹拌機で撹拌しながら(2)の混合物を加えた。
(4)80℃以上で加熱溶解した(200rpm、30分)。
(5)加熱を止め、温度を常温まで下げることによってピールオフパック化粧料とした。
(6)カルボマーを含む試験例(比較例11、実施例9)においては、(5)の溶液にカルボマー加えて混合した後、水酸化カリウム水溶液を加えて撹拌し、ピールオフパック化粧料とした。
【0044】
[粘度の測定]
25℃の恒温槽で2時間以上放置したピールオフパック化粧料(以下、サンプルと呼ぶ)をB型粘度計(東機産業製、TVB35L型粘度計(ローターNo.3又は4)回転数6、12、30、60rpm)を用いて測定した。また、6rpm、60rpmでの粘度値から下記計算式によってTI値を算出した。尚、ここでのTI値とは、溶液の流動性を示す指標であり、0(ゼロ)に近いほどシュードプラスチック性が強いことを示し、1に近いほどニュートン流動を呈すことを示す。結果は、表1、3、5に示したとおりである。
TI値=60rpmの粘度値/6rpmの粘度値
【0045】
[pHの測定]
25℃の恒温槽で2時間以上放置したサンプルを卓上型pHメーター(堀場製作所製、LAQUA)で測定した。結果は、表1、3、5に示したとおりである。
【0046】
[評価1:液垂れ]
(評価方法)
(1)サンプルを0.3gずつ量り取り、実験台の上に水平に置いたプラスチック板の上に載せる。
(2)プラスチックプレートを実験台に対して垂直に立て、2分間放置した際のサンプルの液垂れの距離を測定する。
(評価基準)
◎:液垂れしない。(0cm以上1cm未満)
○:ほとんど液垂れしない。(1cm以上3cm未満)
△:やや液垂れする。(3cm以上5cm未満)
×:非常に液垂れする。(5cm以上)
【0047】
[評価2:塗り心地]
(評価方法)
摩擦感テスター(KES-SE:カトーテック株式会社)を用いて、下記測定条件及び測定手順によって、ピールオフパック化粧料を塗り広げる際のMIU(平均摩擦係数)とMMD(平均摩擦係数の変動)を測定する。なお、MIUは、人の指で物体の表面を触るときに感じる滑りやすさ、滑りにくさと相関があり、値が大きいほどすべりにくいと感じる。また、MMDは、人の指が物体の表面を触るときに感じるなめらかさ、ざらつき感と相関があり、値が大きいほど物体の表面はざらついている。
(測定条件)
荷重:50g(アーム25g+分銅25g)
移動速度:0.5mm/sec
摩擦子:シリコン
布の種類:人工皮革(プロテインレザーPBZ13001:イデアテックスジャパン)
(測定手順)
(1)3cm×30cmに切断した人工皮膚と密閉容器に入れたサンプルを37℃、湿度50%RHの環境試験機に1時間以上放置し、十分に馴化させる。
(2)サンプルチャックのねじを緩めて試料台との間に(1)の人口皮膚を挟み込み再び締める。
(3)サンプルチャックで固定した反対側の端に張力おもりを挟む。
(4)センサーにアームを掛ける。
(5)(1)で恒温になったサンプルを0.2g量り取り、人口皮膚上に載せる。このとき、サンプルの上に摩擦子が乗るように位置を調節する。
(6)測定ボタンを押してデータを取得する。各サンプルに対して2回ずつ測定を行い、2回の平均値を測定値とする。測定値は有効数字が2桁になるよう小数第3位の数字を四捨五入する。
(評価基準:MIU)
◎:非常に滑りやすい。(MIU:0.30未満)
○:滑りやすい。(MIU:0.30以上0.45未満)
△:普通である(基準)(MIU:0.45以上0.60未満)
×:ざらつきがある(MIU:0.60以上)
(評価基準:MMD)
◎:非常に滑らかである。(MMD:0.0070未満)
○:滑らかである。(MMD:0.0070以上0.0090未満)
△:普通である(基準)(MMD:0.0090以上0.0110未満)
×:ざらつきがある(MMD:0.0110以上)
【0048】
[評価3:皮膜の均一性]
(評価方法)
(1)100mLガラスビーカーを裏返し、底にサンプル(0.5g)を指で塗り広げる。
(2)塗り広げた後の塗布膜の状態を観察する。
(評価基準)
◎:塗布膜表面が非常に均一で滑らかな状態である。
○:塗布膜表面が概ね滑らかな状態である。
△:塗布膜表面の半分程度が凸凹な状態である。
×:塗布膜表面の全体が凸凹で不均一な状態である。
【0049】
[評価4:曳糸性]
(評価方法)
サンプル2.0gを直径3.5cmのプラスチック容器に入れ、クリープメーター(RE2-33005S:山電)を用いて以下の測定を3回行い、平均値を算出した。
(測定方法)
(1)プランジャー(P3プランジャー:直径16mm)をサンプルにつける。
(2)0.5mm/secの速さでプランジャーを引く。
(3)サンプルが切れるまでの時間をストップウォッチで測定する。
(4)下記式により糸曳きの長さを算出する。
糸曳きの長さ=サンプルが切れるまでの時間(sec)×スピード(0.5mm/sec)
(評価基準)
糸曳きの長さが短いと容器から取り出しやすく、肌への塗布がしやすいため良いと判断した。
◎:10mm未満
○:10mm以上20mm未満
△:20mm以上30mm未満
×:30mm以上
【0050】
[評価5:相溶性]
(評価方法)
サンプルの外観観察により評価した。
(評価基準)
相溶性とは、ポリビニルアルコールと多糖類、ポリビニルアルコールとカルボマーの反応性を指す。相溶性に優れる組合せは均一で滑らかな液状を保ち、相溶性に劣る組合せはゲル状を呈する、あるいは凝集物ができる。均一な液状を保つものを良いと判断した。
尚、多糖類を含まない比較例1~5は相溶性の評価対象外のため「-」と記載した。
◎:均一で滑らかな溶液である。
○:概ね滑らかな溶液である。
△:局所的にゲル状部分又は凝集物がある。
×:ゲル化する、又は凝集する。
【0051】
[評価6:保管安定性]
(評価方法)
サンプルを密閉容器に入れ、常温にて30日間の保管安定性試験を行った。評価方法は以下の基準で行い、保管開始日と保管30日後で状態に変化がないか(ゲル化や分離しないか等)を観察する。
(評価基準)
○:変化なし。
△:沈殿物又は凝集物が認められる。
×:相分離が認められる。
【0052】
評価1~5の結果については、表1~6に示したとおりである。
【0053】
【表1】
【0054】
【表2】
【0055】
表1及び表2は、脱アシル型ジェランガムの有無についての評価結果をまとめたものである。実施例1~3は、ポリビニルアルコールと脱アシル型ジェランガムとを含むことにより、液垂れ及び塗り心地(滑り性:MIU、滑らかさ:MMD)が優れ、曳糸性も弱く、また均一な皮膜を形成した。このように、実施例1~3は、液垂れの抑制により容器や手指等からの垂れ落ちも抑制され、且つ、曳糸性にも優れているため、使用時の作業性に優れるものであった。
【0056】
これに対して、脱アシル型ジェランガムを含まない比較例1(ポリビニルアルコール5質量%)、比較例2(ポリビニアルアルコール10質量%)、及び比較例3(ポリビニルアルコール15質量%)は、液垂れがあり、また、比較例1は均一な皮膜ができず、比較例2と比較例3は塗り心地が悪かった。ポリビニルアルコールの量を増やした比較例4(ポリビニルアルコール20質量%)は、液垂れは少ないが、肌の上で塗り広げたときに滑り性(MIU)が悪くてざらつき(MMD)があり、更に塗り心地が悪いものであった。ポリビニルアルコールの配合量をさらに増やした比較例5(ポリビニルアルコール30質量%)は、曳糸性が強すぎて一定量を容器から取り出すことができず、塗り心地が悪く、皮膜も不均一になるなど、当該化粧料として使用できるものではなかった。このように、脱アシル型ジェランガムを含まず、ポリビニルアルコールを配合したピールオフパック化粧料では、液垂れと塗り心地とを両立させることは難しく、曳糸性等の性能を兼ね備えさせることはさらに難しいといえる。
【0057】
【表3】
【0058】
【表4】
【0059】
表3及び表4は、脱アシル型ジェランガムを他の多糖類やカルボマー(合成ポリマー)に変更したピールオフパック化粧料の評価結果をまとめたものである。多糖類の種類やカルボマーによって評価結果は異なるが、液垂れや塗り心地、皮膜の均一性、保管安定性等において、それぞれ悪い評価であった。これら比較例6~11の結果は、他の多糖類等では脱アシル型ジェランガムのような改善効果を得られないことを示すものといえる。
【0060】
【表5】
【0061】
【表6】
【0062】
表5及び表6は、脱アシル型ジェランガムとともにタマリンドガム、ネイティブ型ジェランガム、寒天、ローカストビーンガム、カラギーナンの多糖類、あるいはカルボマーを併用した化粧料の評価結果をまとめたものである。
実施例4~9は、実施例1~3と同様に、肌に塗布後の液垂れ及び塗り心地(滑り性:MIU、滑らかさ:MMD)が良好であり、均一な皮膜を形成し易いものであった。さらに、液垂れの抑制により容器や手指等からの垂れ落ちも抑制され、且つ、曳糸性にも優れているため、使用時の作業性に優れるものといえる。
【0063】
実施例1~9は、TI値が0.40未満でありシュードプラスチック性が比較的強いものであった。そして、実施例1~9が高粘度であっても塗り心地に優れる理由は、このシュードプラスチック性が関与していると考えられる。