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特開2024-157865高周波解凍装置及びプラズマ発生装置
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024157865
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】高周波解凍装置及びプラズマ発生装置
(51)【国際特許分類】
   H05B 6/56 20060101AFI20241031BHJP
【FI】
H05B6/56
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023072488
(22)【出願日】2023-04-26
(71)【出願人】
【識別番号】399048917
【氏名又は名称】日立グローバルライフソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】市川 勝英
(72)【発明者】
【氏名】藤本 貴行
(72)【発明者】
【氏名】堀内 敬介
【テーマコード(参考)】
3K090
【Fターム(参考)】
3K090AA20
3K090AB03
3K090BA03
3K090DA08
3K090PA06
(57)【要約】
【課題】小型、低コストに優れ、食材の差材や形状によらず解凍温度差の小さい解凍が可能な高周波解凍装置を提供する。
【解決手段】本発明の高周波解凍装置100は、高周波電源1が出力する電力により冷凍食材10を誘電加熱する電極と、高周波電源1と前記電極との間に配置され、高周波電源1とのインピーダンス整合を調整するアンテナチューナ2と、を備える。前記電極は、上部平板電極4と、下部平板電極5と、上部スパイラル電極6と、下部スパイラル電極7と、を備える。上部スパイラル電極6及び下部スパイラル電極7は、高周波電源1が出力する出力周波数の波長の1/4の整数倍の長さであって、外周部を上部平板電極4、下部平板電極5と接続し、内周端を開放状態とした。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
高周波電源と、前記高周波電源が出力する電力により被加熱物を誘電加熱する電極と、前記高周波電源と前記電極との間に配置され、前記高周波電源とのインピーダンス整合を調整する調整回路と、前記被加熱物及び前記電極を収容する筐体と、を備えた高周波解凍装置であって、
前記電極は、上部平板電極と、前記上部平板電極に対向して配置された下部平板電極と、前記上部平板電極と前記下部平板電極とが対向する側に位置し、前記上部平板電極もしくは前記下部平板電極の少なくとも何れか一方と接続されたスパイラル電極と、を備え、
前記スパイラル電極は、前記高周波電源が出力する出力周波数の波長の1/4の整数倍の長さであって、前記スパイラル電極の外周部を前記上部平板電極もしくは前記下部平板電極の少なくとも何れか一方と接続し、前記スパイラル電極の内周端を開放状態としたことを特徴とする高周波解凍装置。
【請求項2】
請求項1に記載の高周波解凍装置おいて、
前記高周波電源と前記調整回路との間に配置され前記調整回路に入力する入射電力と反射電力を測定する方向性結合器と、前記方向性結合器が測定した結果を入力し、前記反射電力が小さくなるように前記調整回路を制御する制御回路と、を備えたことを特徴とする高周波解凍装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の高周波解凍装置おいて、
前記調整回路は、リレーによりコンデンサの容量値とインダクタンス値を切り替える構成のアンテナチューナであることを特徴とする高周波解凍装置。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の高周波解凍装置おいて、
前記調整回路は、対向する平板の有効面積を可変できる構成の可変容量コンデンサとインダクタから構成されたアンテナチューナであることを特徴とする高周波解凍装置。
【請求項5】
請求項1又は2に記載の高周波解凍装置おいて、
前記被加熱物と前記スパイラル電極との間には、前記スパイラル電極の中心部と容量結合する電界拡散板を配置したことを特徴とする高周波解凍装置。
【請求項6】
請求項5に記載の高周波解凍装置おいて、
前記電界拡散板は、U字状に形成され開放側を隙間を設けて対向させた2つの枠部と、前記2つの枠部の中央部同士を接続する接続部と、前記接続部の中央位置に形成した中心電極板から構成したことを特徴とする高周波解凍装置。
【請求項7】
請求項6に記載の高周波解凍装置おいて、
前記筐体の庫内の両側であって前記庫内の内側に向かって突出した複数の棚受けと、前記電界拡散板を取り付けた第1樹脂板と、を備え、
前記第1樹脂板は前記棚受けに載置したことを特徴とする高周波解凍装置。
【請求項8】
請求項7に記載の高周波解凍装置おいて、
前記被加熱物を載置する第2樹脂板を備え、
前記第2樹脂板は前記棚受けに載置したことを特徴とする高周波解凍装置。
【請求項9】
請求項1又は2に記載の高周波解凍装置おいて、
前記電極と前記調整回路との間に配置され、前記調整回路から出力された電力を平衡信号変換するバランを備えたことを特徴とする高周波解凍装置。
【請求項10】
請求項1又は2に記載の高周波解凍装置おいて、
前記スパイラル電極の最外周を、前記上部平板電極もしくは前記下部平板電極の反対向側に位置させたことを特徴とする高周波解凍装置。
【請求項11】
高周波電源と、前記高周波電源が出力する電力により被処理物にプラズマ処理を行う電極と、前記被処理物及び前記電極を収容すると共に原料ガスを導入するチャンバと、を備えたプラズマ発生装置であって、
前記電極は、上部平板電極と、前記上部平板電極に対向して配置された下部平板電極と、前記上部平板電極と前記下部平板電極とが対向する側に位置し、前記上部平板電極もしくは前記下部平板電極の少なくとも何れか一方と接続されたスパイラル電極と、を備え、
前記スパイラル電極は、前記高周波電源が出力する出力周波数の波長の1/4の整数倍の長さであって、前記スパイラル電極の外周部を前記上部平板電極もしくは前記下部平板電極の少なくとも何れか一方と接続し、前記スパイラル電極の内周端を開放状態としたことを特徴とするプラズマ発生装置。
【請求項12】
請求項11に記載のプラズマ発生装置において、
前記高周波電源と前記電極との間に配置され、前記高周波電源とのインピーダンス整合を調整する調整回路を備えたことを特徴とするプラズマ発生装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高周波解凍装置及びプラズマ発生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
食品の加工工場等では、冷凍状態の食材を解凍して食品を加工する場合がある。食品加工工場等で使用する解凍機の一種として、対向する電極間に配置した冷凍食品に、MHz帯域の高周波電界を印加し、誘電加熱により冷凍食品を解凍する高周波解凍装置が知られている。
【0003】
高周波誘電加熱とは、被加熱物である誘電体に高周波電圧を印加し、被加熱物を構成する極性分子の振動等に起因する自己発熱(誘電損失)により、被加熱物を内部から加熱する技術である。電子レンジによるマイクロ波(GHz帯域)による誘電加熱では氷と水の発熱差が大きいため、食品表層部の融解した部分が著しく発熱することで加熱ムラが生じる。しかしながら、マイクロ波よりも低い周波数帯域を使用する高周波誘電加熱では、エネルギーの浸透深度がマイクロ波よりも深く、また、氷と水の発熱量の差も小さいため、加熱ムラが生じ難いという利点があることが一般に知られている。
【0004】
MHz帯域の高周波電界を用いた誘電加熱の従来技術として、例えば特許文献1に記載の技術がある。特許文献1には、高周波電源からのMHz帯域の高周波電力により電極間に置かれた被加熱物を加熱する場合に、被加熱物の温度上昇に伴うインピーダンス変化を反射電力検知手段により検知して可変インダクタとコンデンサからなる整合回路の定数を切り替えて整合状態を維持する構成の高周波加熱装置が記載されている。電極は、平行平板電極が用いられる。
【0005】
また、特許文献2には、半導体のドライエッチングや薄膜形成などのプラズマ処理で用いられるMHz帯域の高周波電源印加装置が記載されている。その構成を図16に示す。図16に示すように高周波電力印加装置は、高周波電源1601、整合回路1602、チャンバ1603、第2の高周波電源1608より構成されている。チャンバ1603内にはコイル1604、被処理物1605、下部電極1606、絶縁体1607が配置されている。
【0006】
高周波電源1601からのMHz帯の高周波信号(RF信号)は整合回路1602により、高周波電力の波長の1/4のほぼ整数倍の長さのコイル1604と下部電極1606間に置かれた被処理物1605に対してインピーダンス整合を図ることで電力を効率よく伝送させる。さらに、第2の高周波電源1608により、絶縁体1607上に配置された下部電極1606を介して被処理物1605に高周波電圧を印加することで被処理物1605に電力を効率よく伝送させ、プラズマ処理を行うものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005-56781号公報
【特許文献2】特開平9-293600号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1の高周波加熱装置に特許文献2の高周波電力印加装置(図16)を適用して誘電加熱による食材の解凍を行う場合、数100W程度の電力が必要となるが、この場合、特許文献1の高周波加熱装置と同様に整合回路には、数1000V以上の電圧が発生するため、可変容量コンデンサには、例えば、真空バリアブルコンデンサなどの高耐圧な素子が必要になることから、回路の小型化、低コスト化に課題があった。
【0009】
同様に特許文献2の高周波電源印加装置を用いてプラズマ処理を行う場合においても、高耐圧の整合回路が必要となり、回路の小型化、低コスト化が課題となっていた。
【0010】
さらに、コイル1604が高周波電力の波長λの1/4にほぼ等しい長さである場合、コイル1604には、給電される中心部の電界が最も高く、接地される最外周が最も低くなるような定在波が発生する。このため、食材がコイル1604に近い大きさになると食材の中心部の解凍は進むが、電界が低くなる食材の端部は加熱が不十分となり、食材中心部と端部での温度差が大きくなり均質解凍ができないという課題があった。
【0011】
なお、誘電加熱による解凍では、低い電力である程度時間をかけて解凍する場合は中心部の加熱が熱伝導により端部へ伝わるため、食材中心部と端部の温度差は小さくなるが、高い電力を用いて短時間で解凍しようとした場合、熱伝導による端部への伝導が間に合わず食材の中心部と端部温度差が大きくなってしまう。そして、この温度差は、高周波電力の大きさや食材の素材や形状などによって依存するという課題があった。
【0012】
本発明の目的は、上記課題を解決し、小型、低コストに優れ、食材の差材や形状によらず解凍温度差の小さい解凍が可能な高周波解凍装置及びプラズマ発生装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記目的を達成するために本発明は、高周波電源と、前記高周波電源が出力する電力により被加熱物を誘電加熱する電極と、前記高周波電源と前記電極との間に配置され、前記高周波電源とのインピーダンス整合を調整する調整回路と、前記被加熱物及び前記電極を収容する筐体と、を備えた高周波解凍装置であって、前記電極は、上部平板電極と、前記上部平板電極に対向して配置された下部平板電極と、前記上部平板電極と前記下部平板電極とが対向する側に位置し、前記上部平板電極もしくは前記下部平板電極の少なくとも何れか一方と接続されたスパイラル電極と、を備え、前記スパイラル電極は、前記高周波電源が出力する出力周波数の波長の1/4の整数倍の長さであって、前記スパイラル電極の外周部を前記上部平板電極もしくは前記下部平板電極の少なくとも何れか一方と接続し、前記スパイラル電極の内周端を開放状態としたことを特徴とする。
【0014】
また本発明は、高周波電源と、前記高周波電源が出力する電力により被処理物にプラズマ処理を行う電極と、前記被処理物及び前記電極を収容すると共に原料ガスを導入するチャンバと、を備えたプラズマ発生装置であって、前記電極は、上部平板電極と、前記上部平板電極に対向して配置された下部平板電極と、前記上部平板電極と前記下部平板電極とが対向する側に位置し、前記上部平板電極もしくは前記下部平板電極の少なくとも何れか一方と接続されたスパイラル電極と、を備え、前記スパイラル電極は、前記高周波電源が出力する出力周波数の波長の1/4の整数倍の長さであって、前記スパイラル電極の外周部を前記上部平板電極もしくは前記下部平板電極の少なくとも何れか一方と接続し、前記スパイラル電極の内周端を開放状態としたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、小型、低コストに優れ、食材の差材や形状によらず解凍温度差の小さい解凍が可能な高周波解凍装置及びプラズマ発生装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の実施例1に係る高周波解凍装置100の概略を示す構成図である。
図2A図1の高周波解凍装置100においてλ/4のスパイラル電極上に発生する定在波による電界とスパイラル電極に流れる電流の分布を示した図である。
図2B】下部電界拡散板9を用いた高周波解凍装置の斜視図である。
図2C】電界拡散板を用いた高周波解凍装置の側面図である。
図3A図1で示した高周波解凍装置100の上部平板電極4と下部平板電極5間のインピーダンス特性とリターンロス特性の電磁界解析結果の一例を示す図である。
図3B】平行平板電極(従来技術)用いた高周波加熱装置の電極間における電磁界解析結果の一例を示す図である。
図4A】アンテナチューナ2の構成の一例を示す図である。
図4B】アンテナチューナ2の他の一例を示す図である。
図5】本発明の実施例2に係る高周波解凍装置200の概略を示す構成図である。
図6】冷凍食材10を解凍開始から終了するまでを示すフローチャートである。
図7】本発明の実施例3に係る高周波解凍装置300の概略を示す構成図である。
図8】本発明の実施例4に係る高周波解凍装置400の概略を示す構成図である。
図9A】特許文献1で示した高周波印加装置により誘電加熱を行った場合の従来技術の解析結果を示す図である。
図9B図1で示した実施例1の高周波解凍装置100での解析結果を示す図である。
図9C図8で示した実施例4の高周波解凍装置400での解析結果を示す図である。
図10】本発明の実施例5に係る高周波解凍装置500の概略を示す構成図である。
図11】本発明の実施例6に係る高周波解凍装置の構成例を示す概略側面図である。
図12図11に示す高周波解凍装置の背面側の構造例を示す背面図である。
図13図11に示す高周波解凍装置の表面及び庫内の構造例を示す概略斜視図である。
図14】本発明の実施例7に係るプラズマ発生装置の概略を示す構成図である。
図15】本発明の実施例8に係るプラズマ発生装置の概略を示す構成図である。
図16】従来技術に関する高周波電力印加装置の概略を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して本発明の実施例について説明する。本発明の実施例に係る高周波解凍装置は、原理は高周波誘電加熱であり、被加熱物の加熱場面で広く適用することができるが、以下の実施例では解凍に特化して使用する場合について説明する。図中、矢印で示す方向を上下、前後、左右と定義する。
【0018】
また、本発明の実施例においては、コンビニエンスストアやスーパーマーケット等の小売店のバックヤードやレストラン等に高周波解凍装置を設置し、入店する客数に応じて貯蔵している冷凍状態の弁当や惣菜等の冷凍されている食品や食材を解凍し、店舗内の陳列棚にチルド品として並べる場合や、解凍した食材を調理して客に提供する場合等を想定している。
【0019】
ただし、以下の説明は、本発明の内容の具体例を示すものであり、本発明がこれらの説明に限定されるものでは無く、本明細書に開示される技術的思想の範囲内において、当業者による様々な変更および修正が可能である。
【実施例0020】
図1は、本発明の実施例1に係る高周波解凍装置100の概略を示す構成図である。高周波解凍装置100は、ISMバンド(産業科学医療用バンド、ISM:Industrial, Scientific and Medical)である13.56MHz、27.12MHz、40.68MHzなどのMHz帯を出力する高周波電源1、アンテナチューナ2(調整回路)、筐体3、上部平板電極4、下部平板電極5、上部スパイラル電極6(スパイラル電極)、下部スパイラル電極7(スパイラル電極)、上部電界拡散板8(電界拡散板)、下部電界拡散板9(電界拡散板)より構成され、被加熱物である冷凍食材10をこれら電極(上部平板電極4、下部平板電極5、上部スパイラル電極6、下部スパイラル電極7)で発生する電界による誘電加熱により解凍を行う。高周波電源1の一方はアンテナチューナ2を介して上部平板電極4に接続され、高周波電源1の他方は下部平板電極5に接続されている。また、下部平板電極5は筐体3に接続されている。筐体3はフレームグランド(FG)となっている。
【0021】
上部平板電極4および下部平板電極5は、例えば銅板で形成される。上部スパイラル電極6および下部スパイラル電極7は高周波電源1の出力周波数のλ/4の整数倍の長さとなっている。上部スパイラル電極6は上部平板電極4の下方に位置し、下部スパイラル電極7は下部平板電極5の上方に位置する。そして、上部スパイラル電極6および下部スパイラル電極7は対向するように配置される。上部スパイラル電極6の外周端は上部平板電極4と接続され、内周端は開放状態となっている。同様に、下部スパイラル電極7の外周端は下部平板電極5と接続され、内周端は開放状態となっている。また、上部スパイラル電極6および下部スパイラル電極7は、放熱性を考慮し、スパイラル状の銅板を積層して形成される。さらに、上部スパイラル電極6および下部スパイラル電極7は、上部平板電極4および下部平板電極5からそれぞれ15mm程度離して設置されている。なお、上部スパイラル電極6および下部スパイラル電極7は、プリント基板上に銅箔、またはメッキ処理を施して形成するようにしても良い。
【0022】
上記全体構成において、図1の高周波電源1からのMHz帯の高周波電力が上部平板電極4と下部平板電極5間に印加されることにより平板電極内に電界が発生する。この電界により、上部スパイラル電極6は下部平板電極5との電位差、下部スパイラル電極7は上部平板電極4と電位差により各スパイラル電極が励振され定在波が発生し、各スパイラル電極の外周端よりも開放端である電極中央部に電界が集中する。
【0023】
図2Aは、図1の高周波解凍装置100においてλ/4のスパイラル電極上に発生する定在波による電界とスパイラル電極に流れる電流の分布を示した図である。図2Aの図中、rは下部スパイラル電極201の外周端から内周端までの距離を示している。図2Aにおいて、下部スパイラル電極201の長さを波長λの1/4にすると共に外周端を下部平板電極5と接続(ショート)し、内周端を開放状態とすることで、下部スパイラル電極201には上部平板電極4との電位差によりλ/4のオープンショートの定在波が励振される。これにより、平板電極と同電位となる外周端よりも内周端の電位が定在波の振幅分だけ高くなることから、中央部の電界レベルEがより高くなる。
【0024】
これに対し、下部スパイラル電極201に流れる電流Iは、内周端が開放状態であるため内周端には電流は流れず、外周端が最も電流が流れる動作となる。換言すると、下部スパイラル電極201に流れる電流Iは、外周端が最も高く、外周端から内周端に向かって距離rが伸びるに従い電流Iが低下し、内周端で電流Iが0となる。
【0025】
なお、図2Aでは下部平板電極5に下部スパイラル電極201を接続する構成を示したが、上部平板電極4側も同様であり、さらに上下平板電極ともスパイラル電極を接続することでより電界集中効果を得ることができる。このとき、上下スパイラル電極の巻き方向で流れる電流により発生する磁束が同じ方向と逆方向で等価的なλ/4の長さが異なる。図1では上下スパイラル電極の巻き方向が逆の場合は、発生する磁束が同じ方向となって強め合うため、上下スパイラル電極の長さを相互結合分だけ若干短くする。一方、上下スパイラル電極の巻き方向が同じで磁束が逆の方向であれば相互結合分だけ上下スパイラル電極の長さを長くする必要がある。
【0026】
図3Aは、図1で示した高周波解凍装置100の上部平板電極4と下部平板電極5間のインピーダンス特性とリターンロス特性の電磁界解析結果の一例を示す図である。図3Bは、平行平板電極(従来技術)用いた高周波加熱装置の電極間における電磁界解析結果の一例を示す図である。なお、リターンロス特性は横軸が周波数[MHz]、縦軸はリターンロス[dB]である。解析は周波数40.68MHzで上部、下部平板電極は30cm×30cm、スパイラル長は約200cm、食材は20cm×20cm×5cmの大きさの模擬食材を-20℃まで冷凍したものを用いており、周波数は10MHzから100MHzまで振った結果を示したものである。
【0027】
図3Bに示すように平行平板電極による解凍では、電極間インピーダンスは容量性を示し、リターンロス特性では、ほぼ全反射の特性であることが分かる。このため、整合回路を用いて整合を図った場合、送電電力が数100W程度であれば電極間には整合用のインダクタと電極の直列共振により電極間には数1000V以上の高い電圧が発生する。このため、従来の高周波解凍機には高耐圧の整合回路が必要となることから、回路が大型となり、コストが高くなるという問題を有していた。
【0028】
これに対して、図3Aに示すようにスパイラル電極と平板電極を用いた本実施例では、スパイラル電極のインダクタ成分により平板電極および食材の容量成分と40.68MHzの送電周波数付近で直列共振による整合点が平板電極間に発生するため、平板電極間に発生する電圧は比較的低くなる。このため、食材の解凍状態に伴う誘電率変化による整合点のずれを一般的なアマチュア無線などで用いられる低耐圧なアンテナチューナにより調整が可能となることから、回路の小型化、低コスト化が図れる。
【0029】
しかし、食材がスパイラルインダクタ程度まで大きい場合、食材中心部に対し、端部の電界レベルが不十分となり、食材中心部に対し、端部の解凍が進まないという課題を有していた。このため、スパイラル電極の中心部に容量結合する金属板と食材の周囲付近に沿った形状の金属板を接続するとともに、食材周囲の金属板が閉ループとなって逆起電力による不要な電流が流れないように金属板を切り欠いた構成の上部電界拡散板8および下部電界拡散板9を上下スパイラル電極と食材間に配置した。これにより、食材端部の電界がスパイラル電極中心部とほぼ同等の大きさにできることから、均質解凍が可能な高周波解凍装置を得ることができる。
【0030】
なお、送電電力や食材の素材および形状により、食材中心部と端部の解凍状態に違いが出るため、これらの状態に応じて電界拡散板の大きさを変えることで、送電電力や様々な食材に対しても均質解凍が可能となる。
【0031】
図2Bは、下部電界拡散板9を用いた高周波解凍装置の斜視図である。図2Cは、電界拡散板を用いた高周波解凍装置の側面図である。図1と重複する部分については同じ番号を付し説明を省略する。
【0032】
下部電界拡散板9は、周囲を形成する枠部206,207と、枠部206,207の一部が切欠かれた切り欠き部203,204と、切り欠かれた枠部206,207を接続する接続部208と、接続部208の中央部に位置し、接続部208の幅より広く形成された中心電極板202を備えている。
【0033】
換言すると、下部電界拡散板9は、U字状に形成された2つの枠部206,207の開放側を隙間を設けて対向させ、枠部206と枠部207の中央部同士を接続部208で接続し、さらに接続部の中央位置に中心電極板202を備えている。
【0034】
下部スパイラル電極201の中心部と下部電界拡散板9の中心電極板202は、容量結合205により結合しているため、下部電界拡散板9の中央部には電界結合により発生した電界が発生すると共に、冷凍食材10の外周部の金属板と接続されていることから、中心部の電界結合で発生した電界とほぼ同レベルの電界が下部電界拡散板9の全体で発生する。この時、下部電界拡散板9は図2Cに示すように下部スパイラル電極201と冷凍食材10の間に配置することで冷凍食材10のほぼ全体が同一の電界レベル(E,E’)で加熱されるため、均質解凍が可能となる。また、下部電界拡散板9の中心電極板202を大きくすると下部スパイラル電極201との容量結合205も大きくすることができるが、結合量が不足する場合は、下部スパイラル電極201の内周端の幅を変えることでも容量結合量を調整することが可能となる。
【0035】
なお、図2B図2Cでは、下部平板電極5に下部スパイラル電極201、下部電界拡散板9を用いた例を示したが、上部平板電極4側も同様である。スパイラル電極、電界拡散板は、上部平板電極4もしくは下部平板電極5の少なくとも一方に配置すれば良い。
【0036】
また、電界拡散板の中心電極板202を2つに分割し、E字状の電界拡散板を水平方向に対向させる構成とすれば、互いの対向距離を変えることで異なる大きさの食材にも対応可能となる。この場合、異なる大きさの拡散板を複数用意することが不要となる。
【0037】
図4Aは、アンテナチューナ2の構成の一例を示す図である。チューナ入力端子401とチューナ出力端子402には、インダクタ404,405,406が直列に接続されると共に、それぞれのインダクタの両端にはリレー410が並列に接続されており、接続端子403からの制御信号によりリレー410を切り替えることで直列のインダクタンス値を変えることが可能となる。
【0038】
また、チューナ端子とGND間にはコンデンサ407、408、409がそれぞれリレー415を介して並列に接続されており、GNDへの接地容量値を切り替える構成となっている。この時、切り替え用のリレー411は、電極間インピーダンスが高周波電源1のインピーダンスより高い場合はチューナ入力端子側に、低い場合はチューナ出力端子側に切り替えることでインピーダンス整合を調整する構成となっている。リレー411,415はリレー410と同様、接続端子403からの制御信号により切り替え制御される。なお、本実施例では、電極間で主な整合が図れることから、アンテナチューナ2では、解凍による誘電率の変動による500kHz程度以下の微調整を行うため、これらの素子は耐圧が1000V程度の比較的低コストの一般的な部品で構成可能である。
【0039】
図4Bは、アンテナチューナ2の他の一例を示す図である。チューナ入力端子401とチューナ出力端子402にはインダクタ412が接続され、チューナ入力端子401とGND間、チューナ出力端子402とGND間には、それぞれ低コストの可変容量コンデンサ413、414(バリアブルコンデンサ)が接続されている。図4Bでは、機械的な調整機構が必要となるが、対向する平板の有効面積を可変できる構成の可変容量コンデンサを用いることで連続的に整合点のずれを調整することが可能となる。
【0040】
本実施例によれば、小型、低コストに優れ、食材の差材や形状によらず解凍温度差の小さい解凍が可能な高周波解凍装置を提供することができる。
【実施例0041】
図5は、本発明の実施例2に係る高周波解凍装置200の概略を示す構成図である。高周波解凍装置200は、13.56MHz、27.12MHz、40.68MHzなどのMHz帯を出力するRF信号源501(RF:Radio Frequency)、減衰器502、高周波電力増幅器503、電源回路504、方向性結合器505、制御回路506より構成され、さらに、高周波電力増幅器503は分配回路511、高周波アンプ512、合成回路513より構成されている。その他、図1で示した高周波解凍装置の実施例1と重複する部分には同じ番号を付し説明を省略する。
【0042】
図5に示す高周波解凍装置200は、高周波電源1(図1)に代えて、RF信号源501、減衰器502、高周波電力増幅器503、電源回路504、方向性結合器505が適用され、電源回路504,制御回路506、温度センサ507が付加された点が図1と相違している。
【0043】
図5の高周波電力増幅器503は、RF信号源501からのMHz帯の高周波を減衰器502により所望の高周波電力に減衰した後、分配回路511により各高周波アンプ512に分配して電力増幅を行い、合成回路513により電力合成された数100W程度の高周波電力を方向性結合器505およびアンテナチューナ2を介して電極に供給される構成となっている。
【0044】
方向性結合器505はアンテナチューナ2に入力する入射電力と反射電力を測定し、その結果を制御回路506に出力する。高周波電力を用いる装置では、電力を出力する側のインピーダンスと電力を消費する側のインピーダンスのバランスが不均衡のときに出力した電力が消費側で消費されずに反射されて出力側に戻ってくる。制御回路506は、方向性結合器505の反射電力が最小となるようにアンテナチューナ2の定数の最適化を行う構成となっている。また、制御回路506は温度センサ507からの冷凍食材10の温度を測定し、目標の解凍温度に達した場合は送電を停止する。あるいは、温度状態により減衰器502により出力電力の調整を行う構成となっている。
【0045】
以上の構成では、高周波電力増幅器503により増幅されたRF信号により上部スパイラル電極6、下部スパイラル電極7間に置かれた冷凍食材10を誘電加熱により解凍を行うものであるが、冷凍食材10の大きさや解凍状態により変わる電極間インピーダンスに対し、整合状態を方向性結合器505により検知し、制御回路506によりアンテナチューナ2の定数を調整して電極間で発生する整合周波数点の調整を行うことで効率よく解凍を行うものである。また、解凍の完了状態は、温度センサ507により冷凍食材の温度を計測することで判定するものである。
【0046】
本実施例は、冷凍食材10がスパイラル電極程度まで大きい場合、均質解凍を行うため、上部スパイラル電極6と冷凍食材10の間に上部電界拡散板8を、下部スパイラル電極7と冷凍食材10の間に下部電界拡散板9を配置して端部の電界低下を抑えることで均質解凍が可能となること、小型で低コストの高周波解凍機を得るため市販のアンテナチューナを用いた各点において工夫されたものである。
【0047】
次に、図6を用いて冷凍食材10を解凍開始から終了するまでの流れを説明する。図6は、冷凍食材10を解凍開始から終了するまでを示すフローチャートである。
【0048】
図6では、冷凍食材10の解凍が進むにつれて誘電率が変わることで電極間のインピーダンス整合点がずれるため、アンテナチューナより整合点の調整を行い加熱効率の良い状態を保ちつつ解凍を行う動作を中心に記載している。
【0049】
上部スパイラル電極6および下部スパイラル電極7間に冷凍食材10をセットし、冷凍食材10の解凍をスタートする(ステップS100)。
【0050】
制御回路506は、アンテナチューナ2のリセットを実施し(ステップS101)、減衰器502を調整して高周波電力増幅器503から出力される高周波電力を通常の解凍に必要な電力よりも低い電力で送電を開始する(ステップS102)。
【0051】
次に、制御回路506は、方向性結合器505から入射電力量および反射電力量を測定し、反射電力が最小となるようにアンテナチューナ2を調整する(ステップS103)。
【0052】
制御回路506は、入射電力量と反射電力量で計算される整合状態を示すVSWR(Voltage Standing Wave Ratio)を計算し、VSWRが整合状態であるしきい値以下か否かを判断する(ステップS104)。ステップS104において、VSWRがしきい値以下であり整合が取れた状態である場合(ステップS104のYes)、制御回路506は、高周波電力増幅器503から出力される高周波電力を解凍に必要な高い電力で送電を開始する(ステップS106)。
【0053】
一方、処理ステップS104において、VSWRがしきい値以上であった場合(ステップS104のNo)は、制御回路506は冷凍食材10の位置や高さを変更するよう報知する。報知する手段としては、例えば音声発生装置のよる音声の発生、表示装置による文字での表示等を用いる。使用者は、報知内容を確認し、冷凍食材10の位置や高さを変更する(ステップS105)。処理ステップS105において、冷凍食材10の位置や高さを変更して調整後、再度処理ステップS101に戻り、制御回路506はアンテナチューナをリセットして再度チューニングを行う。
【0054】
ステップS106にて送電が開始された後、制御回路506は、温度センサ507により冷凍食材10の温度を測定し、解凍終了となる目標の温度に達したか否かを判定する(ステップS107)。冷凍食材10の温度が目標温度に達した場合は(ステップS107のYes)、制御回路506は、冷凍食材10の解凍が完了したことを報知し、処理を終了する(ステップS111)。
【0055】
冷凍食材10の温度が目標温度に達していない場合は(ステップS107のNo)、制御回路506は、方向性結合器505から入射電力量および反射電力量を測定する(ステップS108)。
【0056】
制御回路506は、入射電力量と反射電力量で計算される整合状態を示すVSWR(Voltage Standing Wave Ratio)を計算し、VSWRが整合状態であるしきい値以下か否かを判断する(ステップS109)。
【0057】
ステップS109において、VSWRがしきい値以下であり整合が取れた状態である場合(ステップS109のYes)、制御回路506は、ステップS106に戻り、高周波電力増幅器503から出力される高周波電力を解凍に必要な高い電力で送電を開始する(ステップS106)。
【0058】
一方、処理ステップS109において、VSWRがしきい値以上であった場合(ステップS109のNo)は、制御回路506は高周波電力増幅器503から出力される高周波電力を下げてアンテナチューナ2により整合点を調整する(ステップS110)。その後、ステップS104の処理に戻り、VSWRがしきい値以下であれば解凍に必要な電力を送電し、再度、冷凍食材10の解凍を行う。
【0059】
このように可変整合回路入力の電圧振幅を測定することで整合状態の検知ができることで比較的簡単な制御で冷凍食材の解凍が可能となる。
【0060】
以上の構成とすることで、解凍により冷凍食材10の誘電率が変化してもアンテナチューナを反射電力が最小となるように調整することで加熱効率の優れた高周波解凍機を得ることができる。
【実施例0061】
図7は、本発明の実施例3に係る高周波解凍装置300の概略を示す構成図である。高周波解凍装置300は、アンテナチューナ2と上部平板電極4、下部平板電極5間にバラン601が接続される構成となっており、その他、図5で示した高周波解凍装置の実施例2と重複する部分には同じ番号を付し説明を省略する。
【0062】
図7に示す実施例3では、アンテナチューナ2から出力された高周波電力をバラン601により平衡信号に変換し、それぞれ、上部平板電極4および下部平板電極5に接続される点が図5で示した実施例2と相違している。
【0063】
図5で示した実施例2に係る高周波解凍装置の構成では、上部スパイラル電極6で発生した電界は、筐体3との容量結合により、解凍には寄与しない無効の高周波電流が流れ、これが損失となり加熱効率の低下を招く可能性がある。また、厚みのある冷凍食材では、筐体3の側面と結合してしまい、冷凍食材の中心部まで電界が到達できず、中心部の解凍が促進できないという問題があった。
【0064】
そこで実施例3に係る高周波解凍装置では、上部スパイラル電極6および下部スパイラル電極7より平衡の電界が印加されるため、筐体側面との容量結合による損失が低減されると共に、縦方向の電界結合が強くなるため、厚い食材でも中心部に電界が通るようになることから、均質解凍が可能となる。
【実施例0065】
図8は、本発明の実施例4に係る高周波解凍装置400の概略を示す構成図である。高周波解凍装置400は、上部平板電極701上に上部スパイラル電極702が配置される構成となっており、その他、図1で示した高周波解凍装置の実施例1と重複する部分には同じ番号を付し説明を省略する。
【0066】
本実施例は、図1で示した実施例1の高周波解凍装置と比較して、上部スパイラル電極702で発生する電界の低い少なくとも最外周を上部平板電極701の上側となる裏面側(下部平板電極との反対向側)に配置するとともに、残りの上部スパイラル電極702の内周側を上部平板電極701の下方側に広げる構成とした点が相違している。これにより、上部スパイラル電極702の発生する電界の冷凍食材10の中心部と端部での差を小さくできることから均質解凍性を向上することができる。
【0067】
さらに、上部スパイラル電極702の最外周は流れる電流が最も大きくなるため、上部スパイラル電極702の抵抗成分によるジュール熱が発生し、冷凍食材10の端部の表面部分のみの解凍が進む加熱ムラの発生を低減することが可能となる。
【0068】
図9A図9B図9Cには各実施例による誘電加熱の発熱分布の解析結果を示す。図9Aは、特許文献1で示した高周波印加装置により誘電加熱を行った場合の従来技術の解析結果を示す図である。図9Bは、図1で示した実施例1の高周波解凍装置100での解析結果を示す図である。図9Cは、図8で示した実施例4の高周波解凍装置400での解析結果を示す図である。図9Bでは、他の解析と条件を同じにするため、実施例1の高周波解凍装置において上部電極のみスパイラル電極と電界拡散板(上部電界拡散板8)がある構成で解析を行った。
【0069】
スパイラル電極の大きさは、約17cm×17cmとし、20cm×20cm×5cmの模擬食材を-20℃に冷凍した状態で解析を行った。周波数は40.68MHzとし、図9Bの実施例1の高周波解凍装置(図1の構成)では、電界拡散板として16cm×21cmの大きさのものを用いた。
【0070】
図9Aの従来技術による誘電加熱では、冷凍食材10端部の解凍が進んでいないことが分かる。これに対して、図9Bの電界拡散板(上部電界拡散板8)の使用および図9Cの上部スパイラル電極702外周の裏面配置は共に冷凍食材10の端部まで発熱していることが分かる。なお、冷凍食材10の端部については、まだ、発熱の低い部分もあるが、実際は中心部からの発熱が熱伝導により端部に伝導していくため、しばらくすると、熱伝導により冷凍食材10の端部に熱が伝導して解凍が進むことから均質解凍が可能となる。
【実施例0071】
図10は、本発明の実施例5に係る高周波解凍装置500の概略を示す構成図である。高周波解凍装置500は、アンテナチューナ2と上部平板電極701、下部平板電極801間にバラン601が接続され、さらに、下部平板電極801上に配置された下部スパイラル電極802は、上部スパイラル電極702と同様に少なくとも最外周を下部平板電極801の裏面側(下側)に配置される構成となっており、その他、図7で示した高周波解凍装置の実施例3と重複する部分には同じ番号を付し説明を省略する。
【0072】
図7で示した実施例3の高周波解凍装置と比較して、上部スパイラル電極702および下部スパイラル電極802は少なくとも最外周が各平板電極の裏面に配置される点が相違している。
【0073】
実施例3の高周波解凍装置と同様、平板電極に差動の高周波電力を印加することで筐体側面との容量結合による損失が低減されるとともに厚い食材でも均質解凍が可能となることに加え、スパイラル最外周で発生するジュール熱により、冷凍食材10の端部の表面のみが解凍されてしまうことで発生する加熱ムラを低減することができる。
【実施例0074】
図11は、本発明の実施例6に係る高周波解凍装置の構成例を示す概略側面図である。本実施例では、図10の構成(実施例5)の構成を用いている。
【0075】
図10は、高周波解凍装置の主として電気回路構成を示しているが、図11図10の電気回路を収納する筐体内の構造を側面図で示している。なお、図10で示した実施例5に係る高周波解凍装置と重複する部分には同じ符号を付し説明を省略する。
【0076】
図11において、筐体3内には、方向性結合器505、高周波電力増幅器503、筐体3の開口部を開閉する扉1101、冷凍食材10を載置する樹脂板1102、上部電界拡散板を貼り付けた樹脂板1103、下部電界拡散板を貼り付けた樹脂板1104、実装基板1105、放熱板1106、放熱フィン1107、ファン1108などが図示の位置に配置され、構成されている。
【0077】
図11において、高周波電力増幅器503を構成する分配回路511、高周波アンプ512および合成回路513は、実装基板1105上に実装され、実装基板1105の裏面には放熱板1106が取り付けられ、さらに放熱板1106には放熱フィン1107およびファン1108が放熱板に実装されている。
【0078】
また、これら高周波電力増幅器503および放熱板1106は、高周波解凍機の筐体3の背面奥に立て掛けるように搭載することで、背面から放熱し易くするとともに、上部平板電極701,下部平板電極801との接続ケーブルを短くできることから、ケーブルの損失を小さくすることができる。
【0079】
また、冷凍食材10は、樹脂板1102上に置かれるとともに、上部スパイラル電極702と冷凍食材10の間には、電界拡散板を貼りつけた樹脂板1103、下部スパイラル電極802と冷凍食材10の間には、電界拡散板を貼りつけた樹脂板1104を配置することで、冷凍食材10の端部の電界低下が抑えられ、均質解凍が可能となる。
【0080】
図12は、図11に示す高周波解凍装置の背面側の構造例を示す背面図である。図12において、図10で示した実施例5に係る高周波解凍装置と重複する部分には同じ符号を付し説明を省略する。
【0081】
図12において1201は電源コンセントに接続する電源プラグであり、筐体3の背面側は、放熱板1106、放熱フィン1107およびファン1108の搭載部分が切り欠かかれており、高周波電力増幅器の放熱性の向上を図っている。また、送電アンプの下部には電源回路504を配置するとともに、操作パネル側(向かって左側)に制御回路506を配置し、その反対側にアンテナチューナ2を配置する構成となっている。
【0082】
図13は、図11に示す高周波解凍装置の表面及び庫内の構造例を示す概略斜視図である。図13において、図10で示した実施例5に係る高周波解凍装置と重複する部分には同じ符号を付し説明を省略する。
【0083】
図13に示すように、電極を収容する筐体3の庫内の両側には、樹脂製の絶縁された棚受け1301、1302が備えられている。棚受け1301、1302は、筐体3の庫内内側に向かって突出した複数の突起から形成されている。また、高周波解凍装置の前方右側の操作パネル1300には、調理メニュー、表示パネル1303、ボタン1304、1305、調整つまみ1306が図示の位置に配置されている。
【0084】
棚受け1301、1302は、冷凍食材10が置かれる樹脂板1102(第2樹脂板)および上部電界拡散板8、下部電界拡散板9がそれぞれ取り付けられた樹脂板1103、1104(第1樹脂板)を支える構造となっている。樹脂板1102(第2樹脂板)及び樹脂板1103、1104(第1樹脂板)は、棚受けに載置する位置を変えることで冷凍食材10の高さの変更や電界拡散板の取り換えが容易に行えるようになっている。
【0085】
また、操作パネル1300に設けた表示パネル1303には現在の解凍状況や温度設定値などを表示することが可能となっている。さらに、操作パネル1300に設けたボタン1304、1305は、加熱の開始や停止を操作するためのものであり、調整つまみ1306は解凍完了の温度等を設定するものである。操作パネル1300の奥(後)には制御回路506が搭載されている。
【0086】
以上の構成とすることで、方向性結合器505、高周波電力増幅器503、アンテナチューナ2から上部平板電極701,下部平板電極801へ接続するケーブルの長さを短くすることで伝送損失が低減できるとともに、冷凍食材10の高さや電界拡散板の変更が容易にでき、高さの異なる冷凍食材10に対しても解凍で可能な高周波解凍装置を得ることができる。
【実施例0087】
図14は、本発明の実施例7に係るプラズマ発生装置の概略を示す構成図である。プラズマ発生装置700は、チャンバ1401、上部平板電極1402、上部スパイラル電極1403、被処理物1404、下部平板電極1405、絶縁体1406、高周波電源1407より構成され、その他、図5で示した実施例2の高周波解凍装置の構成と重複する部分には同じ番号を付し説明を省略する。
【0088】
図14において、チャンバ1401内の上部に配置された上部平板電極1402には、送電周波数のλ/4の長さの整数倍に等しい上部スパイラル電極1403の外周端を上部平板電極1402に接続するとともに、内周端を開放状態とする。
【0089】
さらに、上部平板電極1402はアンテナチューナ2および方向性結合器505を介してMHz帯の高周波電力増幅器503が接続され、高周波電力が上部平板電極1402供給されることで、上部スパイラル電極1403の中心部には電界が発生する。
【0090】
また、チャンバ1401の下部には、絶縁体1406によりチャンバ1401と絶縁された下部平板電極1405上には、被処理物1404が置かれており、チャンバ1401内には導入された原料ガスが満たされており、上部スパイラル電極1403で発生する電界やス上部スパイラル電極1403に流れる電流で発生する磁界により、原料ガスをプラズマ化することで被処理物1404に対して薄膜形成やドライエッチングなどの表面処理が可能となる。
【0091】
また、下部平板電極1405に接続された高周波電源1407により被処理物1404に高周波バイアス電圧をかけることでプラズマ放電を発生し易くなる構成となっている。
【0092】
以上の構成では、図16で示した従来の高周波電力印加装置(プラズマ発生装置)では、コイル1604に整合回路1602を介して高周波電源1601を印加しているため、コイル1604には電源インピーダンスも含めて励振されるため、発生電界を高くするには限度がある。さらに整合回路1602には高耐圧が求められるため、回路の小型化低コスト化に課題があった。
【0093】
これに対し、図14に示す実施例7のプラズマ発生装置では、上部スパイラル電極1403の外周端がショート、内周端が開放状態であり、信号源インピーダンスが含まれないため高い電界が発生することができる。これにより、本実施例ではプラズマ放電が容易に得られるとともに、低耐圧、低コストのアンテナチューナによる整合が可能なプラズマ発生装置を得ることができる。
【実施例0094】
図15は、本発明の実施例8に係るプラズマ発生装置の概略を示す構成図である。プラズマ発生装置800は、GHz帯のマイクロ波電源1501、方向性結合器1502、スタブチューナ1503、上部スパイラル電極1504より構成され、その他、図14で示した実施例7のプラズマ発生装置の構成と重複する部分には同じ番号を付し説明を省略する。
【0095】
図15に示すプラズマ発生装置は、GHz帯のマイクロ波電源1501を方向性結合器1502、スタブチューナ1503を介して上部平板電極1402に印加する構成であり、上部平板電極1402上には、GHz帯のマイクロ波のλ/4の整数倍の長さとなる上部スパイラル電極1504が複数配置されている点が相違している。
【0096】
本実施例の構成では、GHz帯のマイクロ波としてISM帯の2.4GHzの高周波電力を上部平板電極1402に印加すると、上部平板電極1402に複数配置された上部スパイラル電極1504には定在波が発生する。そして、本実施例では、それぞれ上部スパイラル電極1504で発生する電界の合成により被処理物1404のプラズマ処理を行う。また、本実施例では、方向性結合器1502を用いることにより、電極の整合を検知してスタブチューナ1503を調整してインピーダンス整合を図っている。
【0097】
以上の構成では、周波数が高く、スパイラル電極の長さが短い場合であっても、スパイラル電極に給電が不要の構成であるため、複数のスパイラル電極を容易に配置可能であり、さらにスタブチューナも比較的低耐圧な小型で低コストのチューナの使用が可能となる。
【0098】
以上、実施例1から実施例8を通じて、均質解凍と小型化、低コスト化の工夫を述べてきたが、これらのうちの主な工夫点を整理、列挙するならば、以下の通りである。
【0099】
第1点は、平板電極上にλ/4の長さのスパイラル電極を形成し、外周端を平板電極に接続することでスパイラル電極のインダクタ成分と冷凍食材の容量結合による共振により平板内で整合点が生じるため、整合回路の小型、低コストが図れる。
【0100】
第2点は、スパイラル電極で発生する電界は冷凍食材の端部が低くなるため、スパイラルと冷凍食材間に電界拡散板を配置することで均質解凍が得られる。また、出力電力や食材の大きさや素材が変わっても電界拡大板の形状を変えることで対応可能である。
【0101】
第3点は、スパイラル電極の外周を平板の裏面に配置することでも均質性が向上する。さらにスパイラル電極の外周の発熱により食材表面のみで発生する加熱ムラを低減することができる。
【0102】
第4点は、バランを用いて平板電極を差動構成により給電することで厚い食材でも電界が筐体側のGND面に逃げずに中心まで届くことから、厚い食材に対しても均質解凍が可能となる。
【符号の説明】
【0103】
1…高周波電源、2…アンテナチューナ、3…筐体、4…上部平板電極、5…下部平板電極、6…上部スパイラル電極、7…下部スパイラル電極、8…上部電界拡散板、9…下部電界拡散板、10…冷凍食材、100…高周波解凍装置、200…高周波解凍装置、201…下部スパイラル電極、202…中心電極板、203…切り欠き部、204…切り欠き部、205…容量結合、206…枠部、207…枠部、208…接続部、300…高周波解凍装置、400…高周波解凍装置、401…チューナ入力端子、402…チューナ出力端子、403…接続端子、404…インダクタ、405…インダクタ、406…インダクタ、407…コンデンサ、408…コンデンサ、409…コンデンサ、410…リレー、411…リレー、412…インダクタ、413…可変容量コンデンサ、414…可変容量コンデンサ、415…リレー、500…高周波解凍装置、501…信号源、502…減衰器、503…高周波電力増幅器、504…電源回路、505…方向性結合器、506…制御回路、507…温度センサ、511…分配回
図1
図2A
図2B
図2C
図3A
図3B
図4A
図4B
図5
図6
図7
図8
図9A
図9B
図9C
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16