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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024157891
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】レシーバ及び冷凍サイクルシステム
(51)【国際特許分類】
   F25B 43/00 20060101AFI20241031BHJP
【FI】
F25B43/00 L
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023072525
(22)【出願日】2023-04-26
(71)【出願人】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】川村 浩伸
(72)【発明者】
【氏名】米田 広
(72)【発明者】
【氏名】関谷 禎夫
(57)【要約】
【課題】小型化可能なレシーバを提供する。
【解決手段】レシーバ9は、冷媒を気液分離するタンク91と、タンク91に接続され、タンク91の内側面92を向く開口21A,22A,23Aをそれぞれ備える複数の配管21,22,23と、を備え、タンク91は有底円筒状を有し、タンク91に接続され、開口21A,22A,23Aよりも低位置に配置する開口20Aを備える配管20を備え、開口20Aは、複数の配管21,22,23のそれぞれに備えられた開口21A,22A,23Aの方向に開口21A,22A,23Aから内側面92に向かって延びる線分21B,22B,23B上とは異なる位置に配置される
【選択図】図2A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷媒を気液分離するタンクと、
前記タンクに接続され、前記タンクの内側面を向く第1開口をそれぞれ備える複数の第1配管と、を備える
ことを特徴とするレシーバ。
【請求項2】
前記タンクは有底円筒状を有する
ことを特徴とする請求項1に記載のレシーバ。
【請求項3】
前記タンクに接続され、前記第1開口よりも低位置に配置される第2開口を備える第2配管を備える
ことを特徴とする請求項1に記載のレシーバ。
【請求項4】
前記第2開口は、複数の前記第1配管のそれぞれに備えられる前記第1開口から前記内側面に向かって延びるそれぞれの線分上とは異なる位置に配置される
ことを特徴とする請求項3に記載のレシーバ。
【請求項5】
前記タンクは有底筒状を有し、
前記第1配管及び前記第2配管は、何れも、前記タンクの下面又は上面の何れかを貫通して前記タンクの内部にまで延在する
ことを特徴とする請求項3に記載のレシーバ。
【請求項6】
前記タンクは有底筒状を有し、
前記第1配管は、前記タンクの下面又は上面の何れか一方の面を貫通して前記タンクの内部にまで延在し、
前記第2配管は、前記タンクの下面又は上面の何れか他方の面を貫通して前記タンクの内部にまで延在する
ことを特徴とする請求項5に記載のレシーバ。
【請求項7】
前記第1配管は少なくとも3本備えられ、
前記第2開口は、レシーバの上面視で前記第1配管同士を結ぶ線で囲まれた領域内に配置される
ことを特徴とする請求項3に記載のレシーバ。
【請求項8】
前記第1配管は、前記第2開口を中心とする円周上に配置される
ことを特徴とする請求項7に記載のレシーバ。
【請求項9】
複数の前記第1配管のそれぞれに備えられた前記第1開口は、水平方向、又は、前記第2開口の高さ方向位置から遠ざかる方向に向いている
ことを特徴とする請求項3に記載のレシーバ。
【請求項10】
前記タンクに接続され、前記第1開口よりも高位置に配置する第3開口を備える第3配管を備える
ことを特徴とする請求項1に記載のレシーバ。
【請求項11】
前記第1配管は、前記第1開口を前記第1配管の側面に備え、
前記第1配管のそれぞれにおいて、前記タンク内に配置される側の端部が底を有する有底状に形成される
ことを特徴とする請求項1に記載のレシーバ。
【請求項12】
複数の前記第1配管のそれぞれに備えられた前記第1開口は、何れも、前記第1開口から前記内側面に向かって延びるそれぞれの線分同士が交わらない位置に配置される
ことを特徴とする請求項1に記載のレシーバ。
【請求項13】
新設
圧縮機と、第1熱交換器と、膨張機構と、第2熱交換器と、を備え、前記圧縮機と前記第1熱交換器と前記膨張機構と前記第2熱交換器とが配管により接続される冷凍サイクルと、
前記配管を流れる冷媒を気液分離し、液体の冷媒を流出させるレシーバと、を備え、
前記レシーバは、
冷媒を気液分離するタンクと、
前記タンクに接続され、前記タンクの内側面を向く第1開口をそれぞれ備える複数の第1配管と、を備える
ことを特徴とする冷凍サイクルシステム。
【請求項14】
前記冷凍サイクルには、前記レシーバにおいて前記第1開口が冷媒の液面よりも下方に配置される量の冷媒が封入されている
ことを特徴とする請求項13に記載の冷凍サイクルシステム。
【請求項15】
前記レシーバは、前記タンクに接続され、前記第1開口よりも低位置に配置される第2開口を備える第2配管を備え、
前記第1配管は、冷媒が前記タンクに流入及び前記タンクから流出することで前記冷凍サイクルとの間で双方向に冷媒が流れる配管であり、
前記第2配管は、冷媒が前記タンクから流出することで前記冷凍サイクルに向けて一方向に冷媒が流れる配管である
ことを特徴とする請求項13に記載の冷凍サイクルシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、レシーバ及び冷凍サイクルシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
複数の熱交換器を備える冷凍サイクルでは、運転条件によって各熱交換器がそれぞれ蒸発器又は凝縮器になるように冷媒配管(冷媒が循環する経路)が切り替えられる。運転条件によって冷媒の流通方向、負荷等が異なる冷凍サイクルになっても、効率よく運転することが好ましい。この場合、冷凍サイクル毎に、循環する冷媒量を適正に調整することが好ましい。例えば、冷凍サイクルは、循環する冷媒量が過剰の場合でも、冷媒量が不足した場合でも、冷凍サイクルの効率が低下する。そこで、レシーバを使用することで冷媒量を調整できる。レシーバは液体の冷媒を貯留するものであり、冷凍サイクルの運転条件によって貯留される冷媒量を調整できる。
【0003】
レシーバでは、気液二相の冷媒が流入した場合に、冷凍サイクルを効率よく運転するため、気液分離が行われる。レシーバには、凝縮器として動作する熱交換器から凝縮しきれずに気液二相状態で流入する可能性がある。このため、レシーバで気液分離が行われれ、レシーバから流出する冷媒を液単相にすることが好ましい。レシーバから流出する冷媒は、膨張弁を介して蒸発器として動作する熱交換器に導かれる。このため、気液分離ができないと、気液二相の状態で膨張弁に流入し得る。この結果、膨張弁を通過するときの圧力損失が過大になり、冷凍サイクルの効率低下の原因になる。また、冷凍サイクルの運転条件によっては、上記のように、熱交換器の動作が凝縮器から蒸発器に切り替わり、蒸発器から凝縮器に切り替わる。このため、レシーバでは、流入及び流出からなる双方向となる冷媒の流れに対応するとともに、レシーバから流出する冷媒を気液分離し、流出する冷媒を液単相にすることが好ましい。
【0004】
特許文献1の要約書には、「密閉容器61内部を仕切り板62により室63、64に2分割し、それぞれの室63、64を所定の高さ位置で連通するとともに、各室63、64に、冷媒流入・出用パイプ65、66を各別に連通接続する。」ことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10-170107号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の可逆方向レシーバ6では、冷媒流入出用パイプ65と冷媒流入出用パイプ66との間に、仕切板62が備えられる(図2)。仕切板62は、冷媒を気液分離するものである(段落0019~0020)。このため、冷媒流入出用パイプの本数が多いほど、備えられる仕切板の数も多くなり、可逆方向レシーバ6が大型化する。
本開示が解決しようとする課題は、小型化可能なレシーバ及び冷凍サイクルシステムの提供である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示のレシーバは、冷媒を気液分離するタンクと、前記タンクに接続され、前記タンクの内側面を向く第1開口をそれぞれ備える複数の第1配管と、を備える。その他の解決手段は発明を実施するための形態において後記する。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、小型化可能なレシーバ及び冷凍サイクルシステムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本開示の冷凍サイクルシステムを示す系統図である。
図2A】本開示のレシーバの内部を上方から視た図である。
図2B図2Aにおいて白抜き矢印の方向から本開示のレシーバの内部を視た図である。
図2C】本開示のレシーバの内部を上方から視た図であり、図2Aとは異なる方向を紙面下方向に向けた図である。
図2D図2Cにおいて白抜き矢印の方向から本開示のレシーバの内部を視た図である。
図3A】別の実施形態に係るレシーバの内部を上方から視た図である。
図3B図3Aにおいて白抜き矢印の方向からレシーバの内部を視た図である。
図3C】別の実施形態に係るレシーバの内部を上方から視た図であり、図3Aとは異なる方向を紙面下方向に向けた図である。
図3D図3Cにおいて白抜き矢印の方向からレシーバの内部を視た図である。
図4A】別の実施形態に係るレシーバの内部を上方から視た図である。
図4B図4Aにおいて白抜き矢印の方向からレシーバの内部を視た図である。
図4C】別の実施形態に係るレシーバの内部を上方から視た図であり、図4Aとは異なる方向を紙面下方向に向けた図である。
図4D図4Cにおいて白抜き矢印の方向からレシーバの内部を視た図である。
図5A】別の実施形態に係るレシーバの内部を上方から視た図である。
図5B図5Aにおいて白抜き矢印の方向からレシーバの内部を視た図である。
図5C】別の実施形態に係るレシーバの内部を上方から視た図であり、図5Aとは異なる方向を紙面下方向に向けた図である。
図5D図5Cにおいて白抜き矢印の方向からレシーバの内部を視た図である。
図6】別の実施形態に係るレシーバの内部を側方から視た図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しながら本開示を実施するための形態(実施形態と称する)を説明する。以下の一の実施形態の説明の中で、適宜、一の実施形態に適用可能な別の実施形態の説明も行う。本開示は以下の一の実施形態に限られず、異なる実施形態同士を組み合わせたり、本開示の効果を著しく損なわない範囲で任意に変形したりできる。また、同じ部材については同じ符号を付すものとし、重複する説明は省略する。更に、同じ機能を有するものは同じ名称を付すものとする。図示の内容は、あくまで模式的なものであり、図示の都合上、本開示の効果を著しく損なわない範囲で実際の構成から変更したり、図面間で一部の部材の図示を省略したり変形したりすることがある。また、同じ実施形態で、必ずしも全ての構成を備える必要はない。
【0011】
図1は、本開示の冷凍サイクルシステム100を示す系統図である。冷凍サイクルシステム100は、冷凍サイクル101、レシーバ9とを備える。冷凍サイクル101は、圧縮機1と、熱交換器3(第1熱交換器)と、膨張弁10,11,12,13(何れも膨張機構の一例)と、熱交換器4,5,7(第2熱交換器)と、を備える。本開示の例では、熱交換器5は、冷却対象6を適宜冷却する冷却器として機能する。また、熱交換器7は、加熱冷却対象8を適宜加熱又は冷却する加熱冷却器として機能する。圧縮機1と熱交換器3と膨張弁10,11,12,13と熱交換器4,5,7とは、配管102により接続される。他にも、冷凍サイクルシステム100は、四方弁2、及び、開閉弁14,15を備える。
【0012】
レシーバ9は、配管102を流れる冷媒を気液分離し、液体の冷媒をレシーバ9から流出させるものである。レシーバ9の具体的構造は、図2A等を参照しながら後記する。レシーバ9は、配管102の一部である配管20,21,22,23を通じて、冷凍サイクル101に接続される。配管20,21,22,23は、それぞれ、膨張弁12,10,11,13を介し、レシーバ9と熱交換器5,3,4,7とを接続する。
【0013】
冷凍サイクル100は、例えば工場、バッテリを搭載した船舶、車両(例えば電気自動車、鉄道車両等)に配置できる。冷凍サイクル100が例えば工場に配置される場合、熱交換器3は例えば室外(外部)に設置される室外熱交換器であり、熱交換器4は例えば工場における居室(室内)に設置される室内熱交換器(空気調和機)である。また、冷却対象6は、適宜の冷却が行われる機械、装置等の構造物である。加熱冷却対象8は、適宜の加熱又は冷却が行われる機械、装置等の構造物である。
【0014】
冷凍サイクル100が例えばバッテリを搭載した船舶に配置される場合、熱交換器3,4は、例えば、工場に配置した場合と同様である。また、冷却対象6は、例えば回転電機(モータ、発電機等)、電力変換装置(インバータ、コンバータ等)、エンジン等であり、加熱冷却対象8は、船舶に搭載され、適宜の加熱又は冷却が行われる機械、装置等の構造物である。
【0015】
冷凍サイクル100が例えば車両に配置される場合、熱交換器3は例えば車室外(外部)に設置される室外熱交換器であり、熱交換器4は例えば船舶に配置される場合と同様である。また、冷却対象6は、例えばモータ等の構造物であり、加熱冷却対象8は、例えばバッテリである。
【0016】
例えば夏場には、冷凍サイクル100を制御する制御装置(不図示)は、開閉弁14を開け、開閉弁15を閉じる。そして、制御装置は、圧縮機1からの高温高圧の冷媒を、四方弁2を介して熱交換器3に流入させる。これにより、冷媒は外気に放熱し、放熱後の冷媒は、全開の膨張弁10を介して配管21を通じてレシーバ9に流入する。レシーバ9に流入した冷媒は、配管20,22,23に分かれ、膨張弁12,11,13に至る。膨張弁11で減圧した冷媒は、熱交換器4で室内を冷房等する。膨張弁12で減圧した冷媒は、熱交換器5で冷却対象6を冷却する。膨張弁13で減圧した冷媒は、熱交換器7で加熱冷却対象8を冷却する。それぞれ冷却後の冷媒は、圧縮機1に戻る。
【0017】
例えば冬場には、上記制御装置は、開閉弁14を開け、開閉弁15を閉じる。そして、制御装置は、圧縮機1からの高温高圧の冷媒を、四方弁2を介して熱交換器4に流入させる。これにより、冷媒が室内に放熱し、室内が暖房等される。放熱後の冷媒は、全開の膨張弁11を介して配管22を通じてレシーバ9に流入する。レシーバ9に流入した冷媒は、配管20,21,23に分かれ、膨張弁12,10,13に至る。膨張弁10で減圧した冷媒は、熱交換器3で外気から吸熱する。膨張弁12で減圧した冷媒は、熱交換器5で冷却対象6を冷却する。膨張弁13で減圧した冷媒は、熱交換器7で加熱冷却対象8を冷却する。それぞれ冷却後の冷媒は、圧縮機1に戻る。
【0018】
加熱冷却対象8の中には、例えばバッテリ等、低温の場合に運転効率、駆動効率等の効率が低下するものがある。そこで、冬場には、加熱冷却対象8の温度(例えば筐体温度)が低過ぎる場合の効率低下を抑制するため、加熱冷却対象8を加熱する運転が行われる。具体的には例えば、上記制御装置は、加熱冷却対象8の温度が設定温度となるまで、開閉弁14を閉じ開閉弁15を開ける。これにより、圧縮機1からの高温高圧の冷媒が熱交換器4,7に流入し、室内の暖房に加えて、熱交換器7を用いて加熱冷却対象8を加熱する。熱交換器4,7から流出した冷媒は、膨張弁11,13を介して、レシーバ9に流入する。レシーバ9の冷媒は、配管20,21に分かれて流出する。配管21を流れる冷媒は、膨張弁10で減圧した冷媒が熱交換器3で外気から吸熱し、圧縮機1に戻る。配管20を流れる冷媒は、膨張弁12で減圧された後、熱交換器5で冷却対象6を冷却し、圧縮機1に戻る。
【0019】
これらのように、本開示の例において、冷凍サイクル100では、レシーバ9に接続される4本の配管20,21,22,23のうち、配管21,22,23(何れも第1配管の一例)では、冷媒が一方向及び他方向に流れる。即ち、配管21,22,23は、冷媒がレシーバ9を構成するタンク91(図2A等)に流入及びタンク91から流出することで冷凍サイクル100との間で双方向に冷媒が流れる配管である。配管21は、上記のように、膨張弁10を介して、レシーバ9と熱交換器3とを接続する。配管22は、上記のように、膨張弁11を介して、レシーバ9と熱交換器4とを接続する。配管23は、上記のように、膨張弁13を介して、レシーバ9と熱交換器7とを接続する。
【0020】
配管20は、膨張弁12を介して、レシーバ9から熱交換器5に向けて、一方向にのみ冷媒を流す。即ち、配管20(第2配管の一例)は、冷媒がタンク91から流出することで冷凍サイクル100に向けて一方向に冷媒が流れる配管である。ただし、配管20は、冷凍サイクル100の構成によっては備えられなくてもよい。
【0021】
図2Aは、本開示のレシーバ9の内部を上方から視た図である。図2Bは、図2Aにおいて白抜き矢印の方向から本開示のレシーバ9の内部を視た図である。図2A及び図2Bにおいて、破線矢印は、双方向に冷媒が流れる配管21,22,23におけるレシーバ9からの流出時の冷媒の流れ方向を示す。実線矢印は、双方向に冷媒が流れる配管21,22,23におけるレシーバ9からの流入時の冷媒の流れ方向を示す。直線部分(矢の部分以外)が二重線で示された矢印は、一方向に冷媒が流れる配管20におけるレシーバ9からの流出時の流れ方向を示す。これらの事項は、以降の図面において同様である。
【0022】
レシーバ9は、タンク91と、タンク91に接続される複数の配管20,21,22,23とを備える。配管20,21,22,23は、少なくともタンク91の内部では、何れも、例えば断面形状が円である円管により構成され、曲げ部分が存在しない直管により構成される。配管21,22,23(何れも第1配管の一例)は、タンク91の内側面92を向く開口21A,22A,23A(開口21Aは図2D参照)をそれぞれ備える。即ち、配管21は開口21Aを備え、配管22は開口22Aを備え、配管23は開口23Aを備える。開口21A,22A,23Aは、例えば、タンク91の高さ方向で中央よりも下方に配置される。内側面92は、タンク91を構成する内壁面のうち、内側上面93(天面)及び内側下面94(底面)以外の内面である。冷媒は、内側面92、内側上面93及び内側下面94によって区画される空間(内部空間)に流入する。タンク91において液体の冷媒は、内側下面94側に溜まり、液面24が形成される。
【0023】
配管21,22,23は、それぞれ、開口21A,22A,23Aを配管21,22,23の側面に備える。配管21,22,23のそれぞれにおいて、タンク91内に配置される側の端部が底を有する有底状に形成される。即ち、配管21,22,23のうち、タンク91内に配置される側の端部は封止されている。これにより、開口21A,22A,23Aから流出した冷媒流をタンク91の側方に向けることができ、タンク91の内側面92に沿って気液分離できる。また、開口21A,22A,23Aから冷媒が流出するときに、開口21A,22A,23Aが下方を向いていないため、タンク91の内側下面94に溜まった異物を吸い込むことを抑制できる。
【0024】
開口21A,22A,23Aは、それぞれ、内側面92のうち、配管21,22,23から最も近い部分に対向する。即ち、開口21A,22A,23Aは、何れもタンク91の外側を向く。また、開口21A,22A,23Aと、最も近い当該部分との間には部材は備えられていない。このため、開口21A,22A,23Aからタンク91に流入した冷媒は内側面92に向かう。そして、冷媒は内側面92に衝突し、相対的に比重の小さい気相(気体)は上方に向かい、相対的に比重の大きい液相(液体)は下方に向かう。これにより、気液二相で流入した冷媒を気液分離できる。
【0025】
また、それぞれの開口21A,22A,23A同士が直接対向せずに内側面92に向くため、一の開口から流入した冷媒が他の開口にそのまま流入することを抑制できる。これにより、流入した冷媒が気液二相であっても、気液二相の冷媒がそのままタンク91から流出することを抑制できる。
【0026】
複数の配管21,22,23のそれぞれに備えられた開口21A,22A,23Aは、何れも、開口21A,22A,23A(例えばそれぞれの中心)から内側面92に向かって延びるそれぞれの線分21B,22B,23B同士が交わらない位置に配置される。ここでいう「交わらない位置」とは、例えば図2Aに示す上面視で交わらない位置でもよいし、例えば図2Bに示す側面視で交わらない位置でもよい。前者の場合、本開示の例のように、例えば線分21B,22B,23Bが例えば上面視で円形状の内側面92の法線と一致する場合である。後者の場合、例えば線分21B,22B,23Bが、上面視では内側面92のうちの特定の1箇所に集まるが、開口21A,22A,23Aの高さ方向位置が異なる場合が挙げられる。このようにすることで、開口21A,22A,23A同士の距離をある程度長くでき、一の開口から流出した冷媒が、気液分離が不十分なまま他の開口から流出することを抑制できる。
【0027】
開口21A,22A,23Aは、水平方向、又は、開口20Aの高さ方向位置から遠ざかる方向に向いている。即ち、線分21B,22B,23Bは、水平方向、又は、開口20Aの高さ方向位置から遠ざかる方向に延在する。本開示の例では、開口21A,22A,23Aは水平方向を向いている。これにより、開口21A,22A,23Aから流出した冷媒を内側面92に向けて流すことができ、内側面92に沿って気液分離できる。
【0028】
また、開口21A,22A,23Aが、開口20Aの高さ方向位置から遠ざかる方向に向く場合、開口21A,22A,23Aは、内側面92に向くとともに、開口20Aの高さ方向位置から遠ざかる方向を向く。具体的には例えば、開口21A,22A,23Aは、斜め上を向く。従って、レシーバ9の側面視で、線分21B,22B,23Cと水平方向とのなす角度(即ち、線分21B,22B,23Cがどの程度水平方向から傾いているか)は、タンク91の高さ、開口21A,22A,23Aの高さ位置等に応じて適宜決定すればよい。
【0029】
タンク91は、内側上面93及び内側下面94を含む有底筒状を有する。本開示の例では、タンク91は、有底円筒状を有する。これにより、タンク91の内部で冷媒の圧力を平準化でき、流入及び流出の偏りを抑制できる。ただし、タンク91は円筒に限られず、角筒等でもよい。
【0030】
レシーバ9は、タンク91に接続される配管20(第2配管の一例)を備える。配管20は、開口21A,22A,23Aよりも低位置に配置される開口20A(第2開口の一例)を備える。開口20Aは、例えば円形状を有するが、楕円形状、矩形状を有してもよい。開口20Aは、上方に向かって開口する。上記のように、開口21A,22A,23Aから流入した気液二相の冷媒のうち、液体の冷媒は下方に向かう。このため、開口20Aの位置を開口21A,22A,23Aよりも下方に配置することで、液体の冷媒のみ(即ち液単相の冷媒)を開口20Aを通じて配管20に流し易くできる。
【0031】
開口20Aは、複数の配管21,22,23のそれぞれに備えられる開口21A,22A,23Aから内側面92(タンク91の外側)に向かって延びるそれぞれの線分21B,22B,23B上とは異なる位置に配置される。即ち、開口20Aは、開口21Aから内側面92に向かって延びる線分21Bと交わらない(重ならない)位置に配置される。同様に、開口20Aは、開口22Aから内側面92に向かって延びる線分22Bと交わらない(重ならない)位置に配置され、開口23Aから内側面92に向かって延びる線分23Bと交わらない(重ならない)位置に配置される。このようにすることで、開口21A,22A,23Aから流入した冷媒がすぐに開口20Aに至って、冷媒が「素通り」することを抑制でき、気体の冷媒が開口20Aを通じて配管20に流れることを抑制できる。
【0032】
配管21,22,23及び配管20は、何れも、タンク91の内側下面94(下面の一例)又は内側上面93(上面の一例)の何れかを貫通してタンク91の内部にまで延在する。これにより、タンク91の内部で開口20A,21A,22A,23Aの位置合わせを容易に実行できる。
【0033】
配管21,22,23は、タンク91の内側下面94又は内側上面93の何れか一方の面を貫通してタンク91の内部にまで延在する。配管20は、タンク91の内側下面94又は内側上面93の何れか他方の面を貫通してタンク91の内部にまで延在する。このようにすることで、双方向に冷媒が通る開口21A,22A,23Aと、一方向にのみ冷媒が通る開口20Aとの高さ位置を調整し易くできる。このため、配管21,22,23の何れかを流れる冷媒の挙動を、タンク91の内部で揃え易くでき、冷媒流の偏りを抑制できる。
【0034】
本開示の例では、配管21,22,23は、タンク91の内側上面93を貫通してタンク91の内部にまで延在する。配管20は、タンク91の内側下面94を貫通してタンク91の内部にまで延在する。
【0035】
配管21,22,23は少なくとも3本備えられる。本開示の例では、3本の配管21,22,23が備えられる。開口20Aは、図2Aに示すレシーバ9の上面視で配管21,22,23(例えば配管21,22,23の中心)同士を結ぶ線L1で囲まれた領域V内に配置される。これにより、外側を向く開口21A,22A,23Aから視て、何れも内側に開口20Aを配置できる。このため、開口21A,22A,23Aから流入した冷媒がすぐに開口20Aに至って、冷媒が「素通り」することを抑制でき、気体の冷媒が開口20Aを通じて配管20に流れることを抑制できる。本開示の例では、配管20自体が領域V内に配置される。
【0036】
配管21,22,23(例えばそれぞれの中心)は、開口20A(例えば円形状を有する開口20Aの中心)を中心とする円周L2上に配置される。これにより、配管21,22,23に形成される開口21A,22A,23Aと開口20Aとの間の距離を同程度にできる。このため、配管21,22,23の何れかを流れる冷媒の挙動を、タンク91の内部で揃え易くでき、冷媒流の偏りを抑制できる。
【0037】
冷凍サイクル100(図1)には、レシーバ9において開口20A,21A,22A,23Aが冷媒の液面24よりも下方に配置される量の冷媒が封入されている。このようにすることで、開口20A,21A,22A,23Aを冷媒の液中に配置させることができ、液体の冷媒のみを開口20Aでは配管20を通じて流すことができる。また、液体の冷媒のみを、開口21Aでは配管21を通じて流すことができ、開口22Aでは配管22を通じて流すことができ、開口23Aでは配管23を通じて流すことができる。封入量は、熱交換器3,4,5,7の大きさ、配管102の長さ、レシーバ9の大きさ等に応じて適宜設定すればよい。好ましくは、冷凍サイクル100の運転時、レシーバ9に溜まる液体の冷媒が最も少ない状態のときでも開口20A,21A,22A,23Aが液面24より下方になるように、冷媒量を決定すればよい。
【0038】
図2Cは、本開示のレシーバ9の内部を上方から視た図であり、図2Aとは異なる方向を紙面下方向に向けた図である。図2Dは、図2Cにおいて白抜き矢印の方向から本開示のレシーバ9の内部を視た図である。本開示の例では、配管20,21,22,23は同じ太さ(外径及び内径)を有する。従って、図2Cに示す白抜き矢印の方向からレシーバ9の内部を視ると、配管20の一部と配管21の一部とが重複する。
【0039】
開口21A,22A,23Aは、図2Dでは開口21Aのみを例示するが、例えば円形状を有する。しかし、開口21A,22A,23Aは、楕円形状、矩形状を有してもよい。
【0040】
レシーバ9内での冷媒の動作について、説明の簡略化のために一例として、配管21から冷媒が流入し、配管20,22,23から冷媒が流出する場合を説明する。
【0041】
配管21を通じてレシーバ9に流入した冷媒は、開口21Aを通じて内側面92に向けて流出し、内側面92に当たる。これにより、冷媒が気液二相の場合には、気相の冷媒は、内側面92に沿って上昇する。また、液体の冷媒が流出する配管22,23について、開口22A,23Aは、開口21Aとは異なる方向に向いている。このため、開口21Aから流出した気相の冷媒が、レシーバ9の内部で配管22,23を回り込んで開口22A,23Aに流入することが抑制される。これにより、液体の冷媒のみを配管22,23を通じて流すことができる。
【0042】
なお、図2A図2Dの例では、レシーバ9に流入する配管は、双方向に流れる配管21であるが、同様の作用及び効果が、流入する配管を配管22及び流出する配管21,23の場合、流入する配管を配管23及び流出する配管22,23の場合にも同様に適用される。
【0043】
更に、配管21,22,23のうち、2本の配管から冷媒が流入し、残りの1本の配管から冷媒が流出する場合でも、流入した冷媒を内側面92に当てて気相の冷媒を内側面92に沿って上昇できる。このため、気液分離に関する動作及び効果を達成できる。
【0044】
また、図2A図2Dの例のように、円筒状のタンク91に開口21A,22A,23Aを設けた配管21,22,23のみを配置することで、配管以外の部材(例えば仕切り板)を備えることなく、流入した気液二相の冷媒を気液分離できる。このため、レシーバ9を小型化できる。
【0045】
本開示では、筒状のレシーバ9に接続され、冷媒の流れが双方向になる配管21,22,23の開口21A,22A,23Aは、レシーバ9の内側面92を向く。このため、気液二相でレシーバ9に流入した冷媒は内側面92にあたり、内側面92に沿って気相を上昇させて気液分離できる。これにより、流入した配管とは異なる配管から液体の冷媒が流出する場合において、気相の影響を抑制して液単相で流出し易くできる。また、常に冷媒が流出する配管20は、開口21A,22A,23Aが内側面92を向く配管21,22,23同士の内側に配置される。これにより、気相の影響を抑制でき、開口20Aを通じて冷媒を液単相で流出し易くできる。
【0046】
図3Aは、別の実施形態に係るレシーバ9の内部を上方から視た図である。図3Bは、図3Aにおいて白抜き矢印の方向からレシーバ9の内部を視た図である。図3Cは、別の実施形態に係るレシーバ9の内部を上方から視た図であり、図3Aとは異なる方向を紙面下方向に向けた図である。図3Dは、図3Cにおいて白抜き矢印の方向からレシーバ9の内部を視た図である。
【0047】
図3A図3Dに示す例では、上記の配管20(図2A)に代えて、配管30が備えられる。配管30は、タンク91への接続部位が異なること以外は、配管20(図2A)と同じである。即ち、配管21,22,23及び配管30(第2配管の一例)は、何れも、タンク91の内側下面94又は内側上面93の何れかを貫通してタンク91の内部にまで延在する。これにより、配管21,22,23,30の接続形態の自由度を増大できる。
【0048】
図示の例では、配管30は、タンク91の内側上面93に接続される。そして、配管30に備えられる開口30A(第2開口の一例)は、下方に向く。従って、配管21,22,23及び配管30は、何れも、タンク91の内側上面93を貫通してタンク91の内部にまで延在する。
【0049】
図4Aは、別の実施形態に係るレシーバ9の内部を上方から視た図である。図4Bは、図4Aにおいて白抜き矢印の方向からレシーバ9の内部を視た図である。図4Cは、別の実施形態に係るレシーバ9の内部を上方から視た図であり、図4Aとは異なる方向を紙面下方向に向けた図である。図4Dは、図4Cにおいて白抜き矢印の方向からレシーバ9の内部を視た図である。
【0050】
図4A図4Dに示す例では、上記の配管21,22,23に代えて、配管41,42,43が備えられる。配管41,42,43は、タンク91への接続部位が異なること以外は、配管21,22、23(図2A)と同じである。また、配管41,42,43にそれぞれ備えられる開口41A,42A,43Aは、それぞれ、上記の開口21A,22A,23Aに関する事項と同様の事項を適用できる。更に、開口41A,42A,43Aから内側面92に向かって延びる線分41B,42B,43Bも、それぞれ、上記の開口21A,22A,23Aに関する事項と同様の事項を適用できる。
【0051】
配管41,42,43(何れも第1配管の一例)及び配管20は、何れも、タンク91の内側下面94又は内側上面93の何れかを貫通してタンク91の内部にまで延在する。これにより、配管20,41,42,43の接続形態の自由度を増大できる。
【0052】
図示の例では、配管41,42,43は、それぞれ、タンク91の内側下面94に接続される。従って、配管41,42,43及び配管20は、何れも、タンク91の内側下面94を貫通してタンク91の内部にまで延在する。そして、開口41A,42A,43Aは、内側面92に向かって開口する。
【0053】
図5Aは、別の実施形態に係るレシーバ9の内部を上方から視た図である。図5Bは、図5Aにおいて白抜き矢印の方向からレシーバ9の内部を視た図である。図5Cは、別の実施形態に係るレシーバ9の内部を上方から視た図であり、図5Aとは異なる方向を紙面下方向に向けた図である。図5Dは、図5Cにおいて白抜き矢印の方向からレシーバ9の内部を視た図である。
【0054】
図5A図5Dに示す例では、上記の配管20,21,22,23(図2A)に代えて、配管30,41,42,43が備えられる。配管30は、上記図3A図3Dを参照して説明したとおりである。配管41,42,43、開口41A,42A,43A及び線分41B,42B,43Bは、何れも、上記図4A図4Dを参照して説明したとおりである。従って、配管30は、タンク91の内側上面93を貫通してタンク91の内部にまで延在する。配管41,42,43は、何れもタンク91の内側下面94を貫通してタンク91の内部にまで延在する。これにより、配30,41,42,43の接続形態の自由度を増大できる。
【0055】
図6は、別の実施形態に係るレシーバ9の内部を側方から視た図である。図6に示すレシーバ9は、上記配管20(図2A)に代えて、配管60を備える。配管60(第3配管の一例)は、タンク91に接続され、開口21A,22A,23Aよりも高位置に配置する開口60A(第3開口の一例)を備える。開口60Aは、上方に向くこと以外は、開口20A(図2B)と同様である。また、配管60に関する、これらの事項以外は、上記配管20に関する事項を適用できる。
【0056】
上記配管20は、レシーバ9から冷媒を流出するための一方向にのみ冷媒を流す配管である。しかし、配管60は、レシーバ9に冷媒を流入させるための一方向にのみ冷媒を流す配管である。従って、開口60Aを開口21A,22A,23Aよりも高位置に配置することで、開口60Aを通じて流入した気液二相の冷媒のうちの液相を、開口60Aよりも下方の開口21A,22A,23A(開口21Aは図2D参照)を通じて流出できる。これにより、配管21,22,23に液体の冷媒を流すことができる。一方で、開口60Aを通じて流入した気液二相の冷媒のうちの気相は、開口60Aから内側上面93に向けて上昇する。このため、レシーバ9において気液分離できる。
【符号の説明】
【0057】
1 圧縮機
10 膨張弁
100 冷凍サイクルシステム
101 冷凍サイクル
102 配管
11 膨張弁(膨張機構)
12 膨張弁(膨張機構)
13 膨張弁(膨張機構)
14 開閉弁(膨張機構)
15 開閉弁
2 四方弁
20 配管(第2配管)
20A 開口(第2開口)
21 配管(第1配管)
21A 開口(第1開口)
21B 線分
22 配管(第1配管)
22A 開口(第1開口)
22B 線分
23 配管(第1配管)
23A 開口(第1開口)
23B 線分
23C 線分
24 液面
3 熱交換器(第1熱交換器)
30 配管
4 熱交換器(第2熱交換器)
41 配管
41A 開口
42 配管
42A 開口
43 配管
43A 開口
5 熱交換器(第2熱交換器)
6 冷却対象
60 配管
60A 開口
7 熱交換器(第2熱交換器)
8 加熱冷却対象
9 レシーバ
91 タンク
92 内側面
93 内側上面
94 内側下面
L1 線
L2 円周
図1
図2A
図2B
図2C
図2D
図3A
図3B
図3C
図3D
図4A
図4B
図4C
図4D
図5A
図5B
図5C
図5D
図6