(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024157895
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】フッ素ゴム架橋用組成物および成形品
(51)【国際特許分類】
C08L 27/16 20060101AFI20241031BHJP
C08K 3/22 20060101ALI20241031BHJP
C08K 5/14 20060101ALI20241031BHJP
C08K 5/17 20060101ALI20241031BHJP
C08K 5/49 20060101ALI20241031BHJP
C08K 5/13 20060101ALI20241031BHJP
C08K 5/3492 20060101ALI20241031BHJP
【FI】
C08L27/16
C08K3/22
C08K5/14
C08K5/17
C08K5/49
C08K5/13
C08K5/3492
【審査請求】有
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023072544
(22)【出願日】2023-04-26
(71)【出願人】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000486
【氏名又は名称】弁理士法人とこしえ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】川崎 一良
(72)【発明者】
【氏名】竹村 光平
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002BD141
4J002DE096
4J002EJ028
4J002EK039
4J002EN137
4J002EU199
4J002EW177
4J002FD148
4J002FD156
4J002FD159
4J002FD207
4J002GQ00
(57)【要約】
【課題】高い架橋速度で架橋させることができ、しかも、架橋密度が高い成形品を得ることができるフッ素ゴム架橋用組成物を提供すること。
【解決手段】フッ素ゴム(a)、添加剤(b)、脱フッ化水素剤(c)、架橋剤(d)、有機パーオキサイド(e)、および、共架橋剤(f)を含有し、添加剤(b)が、銀化合物および銅化合物からなる群より選択される少なくとも1種であり、架橋剤(d)が、少なくとも1のヒドロキシ基を有する化合物(d1)、化合物(d1)のオニウム塩、化合物(d1)のアルカリ金属塩、化合物(d1)のアルカリ土類金属塩、および、化合物(d1)とカルボン酸とから誘導されるエステルからなる群より選択される少なくとも1種であるフッ素ゴム架橋用組成物を提供する。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フッ素ゴム(a)、添加剤(b)、脱フッ化水素剤(c)、架橋剤(d)、有機パーオキサイド(e)、および、共架橋剤(f)を含有し、
添加剤(b)が、
銀化合物および銅化合物からなる群より選択される少なくとも1種であり、
架橋剤(d)が、
少なくとも1のヒドロキシ基を有する化合物(d1)、
化合物(d1)のオニウム塩、
化合物(d1)のアルカリ金属塩、
化合物(d1)のアルカリ土類金属塩、および、
化合物(d1)とカルボン酸とから誘導されるエステル
からなる群より選択される少なくとも1種である
フッ素ゴム架橋用組成物。
【請求項2】
添加剤(b)が、銀化合物である請求項1に記載のフッ素ゴム架橋用組成物。
【請求項3】
添加剤(b)が、酸化銀(I)および酸化銀(II)からなる群より選択される少なくとも1種である請求項1または2に記載のフッ素ゴム架橋用組成物。
【請求項4】
添加剤(b)が、銅化合物である請求項1に記載のフッ素ゴム架橋用組成物。
【請求項5】
添加剤(b)が、酸化銅(I)および酸化銅(II)からなる群より選択される少なくとも1種である請求項1または2に記載のフッ素ゴム架橋用組成物。
【請求項6】
添加剤(b)の含有量が、フッ素ゴム(a)100質量部に対し、0.1~10質量部である請求項1または2に記載のフッ素ゴム架橋用組成物。
【請求項7】
フッ素ゴム(a)が、ビニリデンフルオライド単位を含む請求項1または2に記載のフッ素ゴム架橋用組成物。
【請求項8】
フッ素ゴム(a)が、パーオキサイド架橋可能なフッ素ゴムである請求項1または2に記載のフッ素ゴム架橋用組成物。
【請求項9】
フッ素ゴム(a)が、ヨウ素原子を有する請求項1または2に記載のフッ素ゴム架橋用組成物。
【請求項10】
脱フッ化水素剤(c)が、第4級アンモニウム塩および第4級ホスホニウム塩からなる群より選択される少なくとも1種である請求項1または2に記載のフッ素ゴム架橋用組成物。
【請求項11】
架橋剤(d)が、化合物(d1)および化合物(d1)のオニウム塩からなる群より選択される少なくとも1種である請求項1または2に記載のフッ素ゴム架橋用組成物。
【請求項12】
架橋剤(d)の含有量が、フッ素ゴム(a)100質量部に対し、0.1~10質量部である請求項1または2に記載のフッ素ゴム架橋用組成物。
【請求項13】
有機パーオキサイド(e)の含有量が、フッ素ゴム(a)100質量部に対し、0.05~10質量部である請求項1または2に記載のフッ素ゴム架橋用組成物。
【請求項14】
共架橋剤(f)が、パーオキサイド架橋用共架橋剤である請求項1または2に記載のフッ素ゴム架橋用組成物。
【請求項15】
共架橋剤(f)が、トリアリルイソシアヌレートである請求項1または2に記載のフッ素ゴム架橋用組成物。
【請求項16】
共架橋剤(f)の含有量が、フッ素ゴム(a)100質量部に対し、0.1~10質量部である請求項1または2に記載のフッ素ゴム架橋用組成物。
【請求項17】
受酸剤(g)をさらに含有し、受酸剤(g)の含有量が、フッ素ゴム(a)100質量部に対し、0.1~50質量部である請求項1または2に記載のフッ素ゴム架橋用組成物。
【請求項18】
請求項1または2に記載のフッ素ゴム架橋用組成物から得られる成形品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、フッ素ゴム架橋用組成物および成形品に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、
(A)(イ)ビニリデンフルオライド単位と(ロ)ヘキサフルオロプロピレン単位及び場合により(ハ)35重量%以下のテトラフルオロエチレン単位から成り、かつ(イ)単位と(ロ)単位の重量比が40:60ないし80:20であり極限粘度数が40~200ml/g、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比Mw/Mnが3~25の範囲にある結合ヨウ素を含有し、その分子量分布が多ピーク型である含フッ素エラストマーと
(B)(ニ)ポリヒドロキシ芳香族化合物と(ホ)アンモニウム塩、ホスホニウム塩及びイミニウム塩の中から選ばれた少なくとも一種と、(ヘ)二価の金属酸化物及び二価の金属水酸化物の中から選ばれた少なくとも一種とから成るポリオール加硫配合剤又は、(ト)ポリアミン化合物と(チ)二価の金属酸化物とから成るポリアミン加硫配合剤、あるいはその両方
(C)有機過酸化物及び
(D)多官能性不飽和化合物
を含有してなる含フッ素エラストマー組成物が記載されている。
【0003】
特許文献2には、
(a)沃素または臭素を含有するフッ素ゴム、
(b)有機過酸化物、
(c)多官能化合物、および
(d)銀化合物
を含んで成ることを特徴とするフッ素ゴム加硫用組成物が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平04-209643号公報
【特許文献2】特開平02-097547号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本開示では、高い架橋速度で架橋させることができ、しかも、架橋密度が高い成形品を得ることができるフッ素ゴム架橋用組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示によれば、フッ素ゴム(a)、添加剤(b)、脱フッ化水素剤(c)、架橋剤(d)、有機パーオキサイド(e)、および、共架橋剤(f)を含有し、添加剤(b)が、銀化合物および銅化合物からなる群より選択される少なくとも1種であり、架橋剤(d)が、少なくとも1のヒドロキシ基を有する化合物(d1)、化合物(d1)のオニウム塩、化合物(d1)のアルカリ金属塩、化合物(d1)のアルカリ土類金属塩、および、化合物(d1)とカルボン酸とから誘導されるエステルからなる群より選択される少なくとも1種であるフッ素ゴム架橋用組成物が提供される。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、高い架橋速度で架橋させることができ、しかも、架橋密度が高い成形品を得ることができるフッ素ゴム架橋用組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本開示の具体的な実施形態について詳細に説明するが、本開示は、以下の実施形態に限定されるものではない。
【0009】
本開示のフッ素ゴム架橋用組成物は、フッ素ゴム(a)、添加剤(b)、脱フッ化水素剤(c)、架橋剤(d)、有機パーオキサイド(e)、および、共架橋剤(f)を含有する。
【0010】
従来、フッ素ゴム架橋用組成物として、特許文献1に記載のように、特定の構成を有する含フッ素エラストマーに対して、ポリオール加硫配合剤またはポリアミン加硫配合剤、有機過酸化物および多官能性不飽和化合物を配合した組成物が知られている。特許文献1の記載によれば、このような組成物を用いることによって、高強度でかつ強度と伸びのバランスに優れた物性を有する加硫物が得られ、さらに、架橋密度が上がるために圧縮永久歪が改善される。
【0011】
しかしながら、従来よりも高い生産性でフッ素ゴムの成形品を製造することができ、さらには、従来の成形品よりも一層高い架橋密度を有する成形品を製造することができるフッ素ゴム架橋用組成物が求められる。
【0012】
フッ素ゴムに対して、脱フッ化水素剤、架橋剤、有機パーオキサイドおよび共架橋剤を配合するとともに、銀化合物および銅化合物からなる群より選択される少なくとも1種の添加剤を配合することによって、従来のフッ素ゴム架橋用組成物よりも高い架橋速度で架橋させることができ、しかも、従来のフッ素ゴム架橋用組成物から得られる成形品よりも架橋密度が高い成形品を与えることができるフッ素ゴム架橋用組成物が得られることが見出された。
【0013】
以下、本開示のフッ素ゴム架橋用組成物の各成分について、説明する。
【0014】
(a)フッ素ゴム
本開示のフッ素ゴム架橋用組成物は、フッ素ゴムを含有する。本開示において、フッ素ゴムとは、非晶質フルオロポリマーである。「非晶質」とは、フルオロポリマーの示差走査熱量測定〔DSC〕(昇温速度10℃/分)あるいは示差熱分析〔DTA〕(昇温速度10℃/分)において現われた融解ピーク(ΔH)の大きさが4.5J/g以下であることをいう。フッ素ゴムは、架橋することにより、エラストマー特性を示す。エラストマー特性とは、ポリマーを延伸することができ、ポリマーを延伸するのに必要とされる力がもはや適用されなくなったときに、その元の長さを保持できる特性を意味する。
【0015】
フッ素ゴムは、部分フッ素化ゴムであってもよいし、パーフルオロゴムであってもよいが、好ましくは部分フッ素化ゴムである。部分フッ素化ゴムとは、フルオロモノマー単位を含み、全重合単位に対するパーフルオロモノマー単位の含有量が90モル%未満のフルオロポリマーであって、20℃以下のガラス転移温度を有し、4.5J/g以下の融解ピーク(ΔH)の大きさを有するフルオロポリマーである。
【0016】
パーフルオロモノマーとは、分子中に炭素原子-水素原子結合を含まないモノマーである。上記パーフルオロモノマーは、炭素原子及びフッ素原子の他、炭素原子に結合しているフッ素原子のいくつかが塩素原子で置換されたモノマーであってもよく、炭素原子の他、窒素原子、酸素原子、硫黄原子、燐原子、硼素原子又は珪素原子を有するものであってもよい。上記パーフルオロモノマーとしては、全ての水素原子がフッ素原子に置換されたモノマーであることが好ましい。上記パーフルオロモノマーには、架橋部位を与えるモノマーは含まれない。
【0017】
架橋部位を与えるモノマーとは、架橋剤により架橋を形成するための架橋部位をフルオロポリマーに与える架橋性基を有するモノマー(キュアサイトモノマー)である。
【0018】
本開示で用いるフッ素ゴムとしては、特に限定されず、パーオキサイド架橋可能なフッ素ゴムとして知られているフッ素ゴム、ポリオール架橋可能なフッ素ゴムとして知られているフッ素ゴムなどが挙げられる。また、特表2018-514627号公報に記載のピリジニウム型塩を用いた架橋が可能なフッ素ゴムであってもよい。
【0019】
パーオキサイド架橋可能なフッ素ゴムは、パーオキサイド架橋可能な部位を有するフッ素ゴムである。パーオキサイド架橋可能な部位としては特に限定されず、例えば、フッ素ゴムが有するヨウ素原子、臭素原子、CN基;フッ素ゴムの主鎖または側鎖に存在する炭素-炭素間の不飽和結合;などが挙げられる。本開示においては、フッ素ゴムとしてパーオキサイド架橋可能なフッ素ゴムを用い得るが、このことは、本開示のフッ素ゴム架橋用組成物の架橋反応が、従来公知のパーオキサイド架橋可能なフッ素ゴムの架橋反応と同様に進行することを意味するものではない。
【0020】
ポリオール架橋可能なフッ素ゴムは、ポリオール架橋可能な部位を有するフッ素ゴムである。ポリオール架橋可能なフッ素ゴムとしては、ポリオール架橋可能な部分フッ素化ゴムが好ましい。ポリオール架橋可能なフッ素ゴムとしては、特に限定されず、ビニリデンフルオライド(VdF)系フッ素ゴムが挙げられる。本開示においては、フッ素ゴムとしてポリオール架橋可能なフッ素ゴムを用い得るが、このことは、本開示のフッ素ゴム架橋用組成物の架橋反応が、従来公知のポリオール架橋可能なフッ素ゴムの架橋反応と同様に進行することを意味するものではない。
【0021】
ポリオール架橋可能な部位を有するフッ素ゴムとしては、VdF系フッ素ゴム、側鎖および/または主鎖にポリオール架橋可能な官能部位を有するゴムなどがあげられる。ポリオール架橋可能な部位を有するフッ素ゴムとしては、非パーフルオロフッ素ゴム、主鎖に-CH2-(メチレン基)を含有するフッ素ゴムなどがあげられる。ポリオール架橋可能な部位を有するフッ素ゴムは、たとえば、
特開2003-277563号公報に記載の極性末端基が実質的にないフッ化ビニリデン(VDF)系フルオロエラストマー、
特表2018-527449号公報に記載のフッ化ビニリデン(VDF)に由来する繰り返し単位および少なくとも1種の追加の(ペル)フッ素化モノマーに由来する繰り返し単位を含むフッ化ビニリデンベースフルオロエラストマー、
特開平7-316377号公報に記載の67重量%未満の少量のフッ素を有し、40から68重量%のフッ化ビニリデン(VDF)単位と、20から50重量%のヘキサフルオロプロピレン(HFP)単位とを、合計で100になるように含有し、任意に、不飽和エチレンを有する1つまたはそれ以上のコモノマー類を含有してなる100部(phr)の硬化フルオロエラストマー
などであってよい。
【0022】
本開示で用いるフッ素ゴムとしては、ビニリデンフルオライド(VdF)単位を含むフッ素ゴム(VdF系フッ素ゴム)が好ましい。
【0023】
VdF系フッ素ゴムとしては、テトラフルオロエチレン(TFE)/プロピレン/VdF系フッ素ゴム、エチレン/ヘキサフルオロプロピレン(HFP)/VdF系フッ素ゴム、VdF/HFP系フッ素ゴム、VdF/TFE/HFP系フッ素ゴムなどがあげられる。これらポリオール架橋可能な部位を有するフッ素ゴムをそれぞれ単独で、または本開示の効果を損なわない範囲で任意に組み合わせて用いることができる。
【0024】
VdF系フッ素ゴムとしては、下記一般式(1)で表されるものが好ましい。
【0025】
-(M1)-(M2)-(N1)- (1)
(式中、構造単位M1はビニリデンフルオライド(m1)由来の構造単位であり、構造単位M2は含フッ素エチレン性単量体(m2)由来の構造単位であり、構造単位N1は単量体(m1)および単量体(m2)と共重合可能な単量体(n1)由来の繰り返し単位である)
【0026】
一般式(1)で表されるVdF系フッ素ゴムの中でも、構造単位M1を30~85モル%、構造単位M2を55~15モル%含むものが好ましく、より好ましくは構造単位M1を50~80モル%、構造単位M2を50~20モル%である。構造単位N1は、構造単位M1と構造単位M2の合計量に対して、0~20モル%であることが好ましい。
【0027】
含フッ素エチレン性単量体(m2)としては、1種または2種以上の単量体が利用でき、たとえばTFE、クロロトリフルオロエチレン(CTFE)、トリフルオロエチレン、HFP、トリフルオロプロピレン、テトラフルオロプロピレン、ペンタフルオロプロピレン、トリフルオロブテン、テトラフルオロイソブテン、パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)(PAVE)、一般式(2):
CF2=CFO(Rf1O)q(Rf2O)rRf3 (2)
(式中、Rf1およびRf2はそれぞれ独立に炭素数1~6の直鎖または分岐したパーフルオロアルキレン基、Rf3は炭素数1~6の直鎖または分岐したパーフルオロアルキル基、qおよびrはそれぞれ独立に0~6の整数(ただし0<q+r≦6を満たす)である)で表される含フッ素単量体、一般式(3):
CHX11=CX12Rf4 (3)
(式中、X11およびX12は、一方がHであり、他方がFであり、Rf4は炭素数1~12の直鎖または分岐したフルオロアルキル基である)で表される含フッ素単量体、フッ化ビニルなどの含フッ素単量体があげられるが、これらのなかでも、TFE、HFP、PAVEが好ましい。
【0028】
単量体(n1)としては、単量体(m1)および単量体(m2)と共重合可能なものであれば、いかなるものでもよいが、たとえばエチレン、プロピレン、アルキルビニルエーテル、架橋部位を与える単量体、ビスオレフィン化合物などをあげることができる。これらをそれぞれ単独で、または任意に組合わせて用いることができる。
【0029】
このような架橋部位を与える単量体としては、一般式(4):
CY1
2=CY1-Rf5CHR1X41 (4)
(式中、Y1は、独立に、水素原子、フッ素原子または-CH3、Rf5は、フルオロアルキレン基、パーフルオロアルキレン基、フルオロポリオキシアルキレン基またはパーフルオロポリオキシアルキレン基、R1は、水素原子または-CH3、X41は、ヨウ素原子または臭素原子)で表されるヨウ素または臭素含有単量体、一般式(5):
CF2=CFO(CF2CF(CF3)O)m(CF2)n-X51 (5)
(式中、mは、0~5の整数、nは、1~3の整数、X51は、シアノ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、臭素原子、ヨウ素原子)で表される単量体、一般式(6):
CH2=CH(CF2)pI (6)
(式中、pは1~10の整数)で表される単量体などがあげられ、たとえば特公平5-63482号公報、特開平7-316234号公報に記載されているようなパーフルオロ(6,6-ジヒドロ-6-ヨード-3-オキサ-1-ヘキセン)やパーフルオロ(5-ヨード-3-オキサ-1-ペンテン)などのヨウ素含有単量体、特開平4-217936号公報記載のCF2=CFOCF2CF2CH2Iなどのヨウ素含有単量体、特開昭61-55138号公報に記載されている4-ヨード-3,3,4,4-テトラフルオロ-1-ブテンなどのヨウ素含有単量体、特開平4-505341号公報に記載されている臭素含有単量体、特開平4-505345号公報、特開平5-500070号公報に記載されているようなシアノ基含有単量体、カルボキシル基含有単量体、アルコキシカルボニル基含有単量体などがあげられる。これらをそれぞれ単独で、または任意に組合わせて用いることができる。
またビスオレフィン化合物としては特開平8-12726号公報に記載されたものを用いることができる。
【0030】
上記VdF系フッ素ゴムとして具体的には、VdF/HFP系ゴム、VdF/HFP/TFE系ゴム、VdF/TFE/PAVE系フッ素ゴム、VdF/CTFE系ゴム、VdF/CTFE/TFE系ゴムなどが好ましくあげられる。
【0031】
側鎖および/または主鎖にポリオール架橋可能な官能部位を有するゴムとしては、特開昭60-44511号公報または特許第3890630号公報に記載されたテトラフルオロエチレン(TFE)/パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)(PAVE)/R1CH=CR2R3(式中R1およびR2は水素および弗素から独立的に選択され、そしてR3は水素、フッ素、アルキルおよびパーフルオロアルキルから独立的に選択される)で表わされる硬化部位単量体からなる共重合単位より構成されるゴム、側鎖および/または主鎖に二重結合を有するゴムなどがあげられる。
【0032】
これらのなかでも、フッ素ゴムとしては、VdFと他の少なくとも1種のフッ素含有モノマーからなるフッ素ゴムであることが好ましく、特にVdF/HFP系フッ素ゴム、VdF/TFE/HFP系フッ素ゴム、および、VdF/TFE/PAVE系フッ素ゴムからなる群から選ばれる少なくとも1種のゴムであることが好ましく、VdF/HFP系フッ素ゴム、および、VdF/TFE/HFP系フッ素ゴムからなる群から選ばれる少なくとも1種のゴムであることがより好ましい。
【0033】
フッ素ゴムは、100℃におけるムーニー粘度(ML1+10(100℃))が、2以上であることが好ましく、10以上であることがより好ましく、20以上であることがさらに好ましく、30以上であることが特に好ましい。また、200以下であることが好ましく、150以下であることがより好ましく、120以下であることがさらに好ましく、100以下であることが特に好ましい。ムーニー粘度は、ASTM D1646-15およびJIS K6300-1:2013に準拠して測定する。
【0034】
フッ素ゴムは、フッ素含有率が50~75質量%であることが好ましい。より好ましくは60~73質量%であり、さらに好ましくは63~72質量%である。フッ素含有率は、フッ素ゴムを構成する単量体単位の組成比から計算により求められる。
【0035】
フッ素ゴムは、ガラス転移温度が-50~0℃であることが好ましい。ガラス転移温度は、示差走査熱量計を用い、試料10mgを20℃/minで昇温することによりDSC曲線を得て、DSC曲線の二次転移前後のベースラインの延長線と、DSC曲線の変曲点における接線との交点を示す温度をガラス転移温度として求めることができる。
【0036】
フッ素ゴムは、ヨウ素原子および臭素原子の少なくとも一方を有していてもよく、ヨウ素原子を有していてもよい。フッ素ゴムのヨウ素原子および臭素原子の含有量の合計は、好ましくは0.001~10質量%であり、より好ましくは5.0質量%以下であり、さらに好ましくは1.0質量%以下であり、特に好ましくは0.7質量%以下であり、最も好ましくは0.5質量%以下であり、より好ましくは0.01質量%以上であり、さらに好ましくは0.05質量%以上であり、特に好ましくは0.08質量%以上であり、最も好ましくは0.10質量%以上である。フッ素ゴムにおけるヨウ素原子および臭素原子の結合位置は、フッ素ゴムの主鎖の末端でも側鎖の末端でもよく、もちろん両者であってもよい。
【0037】
ヨウ素含有量は、次の方法により測定できる。Na2CO3とK2CO3とを1対1(重量比)で混合し、得られた混合物を純水20mlに溶解することにより、吸収液を調製し、試料(含フッ素ポリマー)12mgにNa2SO3を5mg混ぜて混合物を調製し、石英製のフラスコ中、酸素中で燃焼させ、発生した燃焼ガスを吸収液に導入し、得られた吸収液を30分間放置した後、吸収液中のヨウ素イオンの濃度を、島津20Aイオンクロマトグラフを用い測定し、ヨウ素イオン0.5ppmを含むKI標準溶液および1.0ppmを含むKI標準溶液を用いて作成した検量線を用いて、測定値からヨウ素イオンの含有量を決定することができる。
【0038】
ヨウ素原子および臭素原子の少なくとも一方を有するフッ素ゴムは、たとえば、ヨウ素または臭素含有単量体を重合する方法、重合開始剤または連鎖移動剤として臭素化合物またはヨウ素化合物を用いて重合する方法、などによって製造することができる。
【0039】
連鎖移動剤として臭素化合物またはヨウ素化合物を用いて重合する方法としては、たとえば、実質的に無酸素状態で、臭素化合物またはヨウ素化合物の存在下に、加圧しながら水媒体中で乳化重合を行う方法があげられる(ヨウ素移動重合法)。使用する臭素化合物またはヨウ素化合物の代表例としては、たとえば、
一般式:R8IxBry
(式中、xおよびyはそれぞれ0~2の整数であり、かつ1≦x+y≦2を満たすものであり、R8は炭素数1~16の飽和もしくは不飽和のフルオロ炭化水素基またはクロロフルオロ炭化水素基、または、炭素数1~3の炭化水素基であり、酸素原子を含んでいてもよい)で表される化合物があげられる。
【0040】
臭素化合物およびヨウ素化合物としては、たとえば1,3-ジヨードパーフルオロプロパン、2-ヨードパーフルオロプロパン、1,3-ジヨード-2-クロロパーフルオロプロパン、1,4-ジヨードパーフルオロブタン、1,5-ジヨード-2,4-ジクロロパーフルオロペンタン、1,6-ジヨードパーフルオロヘキサン、1,8-ジヨードパーフルオロオクタン、1,12-ジヨードパーフルオロドデカン、1,16-ジヨードパーフルオロヘキサデカン、ジヨードメタン、1,2-ジヨードエタン、1,3-ジヨード-n-プロパン、CF2Br2、BrCF2CF2Br、CF3CFBrCF2Br、CFClBr2、BrCF2CFClBr、CFBrClCFClBr、BrCF2CF2CF2Br、BrCF2CFBrOCF3、1-ブロモ-2-ヨードパーフルオロエタン、1-ブロモ-3-ヨードパーフルオロプロパン、1-ブロモ-4-ヨードパーフルオロブタン、2-ブロモ-3-ヨードパーフルオロブタン、3-ブロモ-4-ヨードパーフルオロブテン-1、2-ブロモ-4-ヨードパーフルオロブテン-1、ベンゼンのモノヨードモノブロモ置換体、ジヨードモノブロモ置換体、ならびに(2-ヨードエチル)および(2-ブロモエチル)置換体などがあげられ、これらの化合物は、単独で使用してもよく、相互に組み合わせて使用することもできる。
【0041】
これらのなかでも、重合反応性、架橋反応性、入手容易性などの点から、1,4-ジヨードパーフルオロブタン、1,6-ジヨードパーフルオロヘキサン、2-ヨードパーフルオロプロパンを用いるのが好ましい。
【0042】
以上説明したフッ素ゴムは、常法により製造することができる。
【0043】
(b)添加剤
本開示のフッ素ゴム架橋用組成物は、化合物および銅化合物からなる群より選択される少なくとも1種の添加剤を含有する。本開示のフッ素ゴム架橋用組成物は、脱フッ化水素剤、架橋剤、有機パーオキサイドおよび共架橋剤に加えて、さらに、銀化合物および銅化合物からなる群より選択される少なくとも1種の添加剤を含有することから、高い架橋速度で架橋させることができ、しかも、架橋密度が高い成形品を得ることができる。
【0044】
銀化合物は、無機銀化合物および有機銀化合物のいずれであってもよいが、無機銀化合物が好ましい。銀化合物としては、酸化銀、ハロゲン化銀、硫化銀、シアン化銀、硝酸銀、硫酸銀、酢酸銀などが挙げられ、なかでも、酸化銀が好ましい。
【0045】
銅化合物として、無機銅化合物および有機銅化合物のいずれであってもよいが、無機銅化合物が好ましい。銅化合物としては、酸化銅、ハロゲン化銅、硫化銅、シアン化銅、硝酸銅、硫酸銅、酢酸銅などが挙げられ、なかでも、酸化銅が好ましい。
【0046】
フッ素ゴム架橋用組成物の一実施形態においては、添加剤として、銀化合物を含有する。また、フッ素ゴム架橋用組成物の一実施形態においては、添加剤として、酸化銀(I)および酸化銀(II)からなる群より選択される少なくとも1種を含有する。
【0047】
フッ素ゴム架橋用組成物の一実施形態においては、添加剤として、銅化合物を含有する。また、フッ素ゴム架橋用組成物の一実施形態においては、添加剤として、酸化銅(I)および酸化銅(II)からなる群より選択される少なくとも1種を含有する。
【0048】
添加剤の含有量としては、一層高い架橋速度で架橋させることができ、架橋密度が一層高い成形品を得ることができることから、フッ素ゴム100質量部に対して、好ましくは0.1~10質量部であり、より好ましくは0.1~5質量部であり、さらに好ましくは0.1~3質量部であり、特に好ましくは0.1~1.5質量部である。
【0049】
(c)脱フッ化水素剤
本開示のフッ素ゴム架橋用組成物は、脱フッ化水素剤を含有する。脱フッ化水素剤を用いると、フッ素ゴム主鎖の脱フッ酸反応における分子内二重結合の形成を促進することにより架橋反応を促進することができる。
【0050】
脱フッ化水素剤としては、オニウム化合物が挙げられる。オニウム化合物としては特に限定されず、たとえば、第4級アンモニウム塩等のアンモニウム塩、第4級ホスホニウム塩等のホスホニウム塩、スルホニウム塩などがあげられ、これらの中でも第4級アンモニウム塩、第4級ホスホニウム塩が好ましい。
【0051】
第4級アンモニウム塩としては特に限定されず、たとえば、8-メチル-1,8-ジアザビシクロ[5,4,0]-7-ウンデセニウムクロリド、8-メチル-1,8-ジアザビシクロ[5,4,0]-7-ウンデセニウムアイオダイド、8-メチル-1,8-ジアザビシクロ[5,4,0]-7-ウンデセニウムハイドロキサイド、8-メチル-1,8-ジアザビシクロ[5,4,0]-7-ウンデセニウムメチルスルフェート、8-エチル-1,8-ジアザビシクロ[5,4,0]-7-ウンデセニウムブロミド、8-プロピル-1,8-ジアザビシクロ[5,4,0]-7-ウンデセニウムブロミド、8-ドデシル-1,8-ジアザビシクロ[5,4,0]-7-ウンデセニウムクロリド、8-ドデシル-1,8-ジアザビシクロ[5,4,0]-7-ウンデセニウムハイドロキサイド、8-エイコシル-1,8-ジアザビシクロ[5,4,0]-7-ウンデセニウムクロリド、8-テトラコシル-1,8-ジアザビシクロ[5,4,0]-7-ウンデセニウムクロリド、8-ベンジル-1,8-ジアザビシクロ[5,4,0]-7-ウンデセニウムクロリド(以下、DBU-Bとする)、8-ベンジル-1,8-ジアザビシクロ[5,4,0]-7-ウンデセニウムハイドロキサイド、8-フェネチル-1,8-ジアザビシクロ[5,4,0]-7-ウンデセニウムクロリド、8-(3-フェニルプロピル)-1,8-ジアザビシクロ[5,4,0]-7-ウンデセニウムクロリド、ベンジルジメチルオクタデシルアンモニウムクロリド、テトラブチルアンモニウムブロミド、テトラブチルアンモニウムクロリド、ベンジルトリブチルアンモニウムクロリド、ベンジルトリエチルアンモニウムクロリド、テトラブチルアンモニウム硫酸水素塩、テトラブチルアンモニウムヒドロキシドなどがあげられる。これらの中でも、架橋性、架橋物の物性の点から、DBU-Bまたはベンジルジメチルオクタデシルアンモニウムクロリドが好ましい。
【0052】
また、第4級ホスホニウム塩としては特に限定されず、たとえば、テトラブチルホスホニウムクロリド、ベンジルトリフェニルホスホニウムクロリド(以下、BTPPCとする)、ベンジルトリメチルホスホニウムクロリド、ベンジルトリブチルホスホニウムクロリド、トリブチルアリルホスホニウムクロリド、トリブチル-2-メトキシプロピルホスホニウムクロリド、ベンジルフェニル(ジメチルアミノ)ホスホニウムクロリドなどをあげることができ、これらの中でも、架橋性、架橋物の物性の点から、ベンジルトリフェニルホスホニウムクロリド(BTPPC)が好ましい。
【0053】
脱フッ化水素剤の含有量としては、架橋反応が適切な速度であることおよび高温での圧縮永久歪み特性により一層優れた成形品を得ることができることから、フッ素ゴム100質量部に対して、好ましくは0.1~10質量部であり、より好ましくは0.1~5質量部であり、さらに好ましくは0.1~3質量部であり、特に好ましくは0.1~1.5質量部である。なお、架橋剤が、化合物(d1)のオニウム塩である場合には、脱フッ化水素剤の含有量は、架橋剤のカチオン部分(すなわち、オニウム化合物由来のカチオン)の質量を含めた値である。
【0054】
(d)架橋剤
本開示のフッ素ゴム架橋用組成物は、架橋剤を含有する。
【0055】
本開示のフッ素ゴム架橋用組成物に含まれる架橋剤は、
少なくとも1のヒドロキシ基を有する化合物(d1)、
化合物(d1)のオニウム塩、
化合物(d1)のアルカリ金属塩、
化合物(d1)のアルカリ土類金属塩、および、
化合物(d1)とカルボン酸とから誘導されるエステル
からなる群より選択される少なくとも1種である。
【0056】
化合物(d1)が有するヒドロキシ基の数は、少なくとも1であり、好ましくは2以上であり、好ましくは4以下であり、より好ましくは3以下であり、さらに好ましくは2以下である。一実施形態において、化合物(d1)は、芳香族環を構成する炭素原子に直接結合した2のヒドロキシ基を分子内に有している。化合物(d1)が有するヒドロキシ基は、後述するとおり、カルボン酸ともにエステルを形成してもよい。すなわち、化合物(d1)は、ヒドロキシ基に代えて、アルキルカルボニルオキシ基を有してもよい。一実施形態において、化合物(d1)は、2のヒドロキシ基、または、1のヒドロキシ基および1のアルキルカルボニルオキシ基を有する。
【0057】
化合物(d1)として、ポリオール架橋に用いる架橋剤(ポリオール架橋用架橋剤)として従来から知られている化合物を好適に用い得る。
【0058】
このような化合物としては、ポリヒドロキシ芳香族化合物などのポリヒドロキシ化合物が挙げられる。ポリヒドロキシ芳香族化合物としては、特に限定されず、たとえば、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン(以下、ビスフェノールAという)、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)パーフルオロプロパン(以下、ビスフェノールAFという)、レゾルシン、1,3-ジヒドロキシベンゼン、1,7-ジヒドロキシナフタレン、2,7-ジヒドロキシナフタレン、2,6-ジヒドロキシナフタレン、1,6-ジヒドロキシナフタレン、4,4’―ジヒドロキシジフェニル、4,4’-ジヒドロキシスチルベン、2,6-ジヒドロキシアントラセン、ヒドロキノン、カテコール、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ブタン(以下、ビスフェノールBという)、4,4-ビス(4-ヒドロキシフェニル)吉草酸、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)テトラフルオロジクロロプロパン、4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4’-ジヒドロキシジフェニルケトン、トリ(4-ヒドロキシフェニル)メタン、3,3’,5,5’-テトラクロロビスフェノールA、3,3’,5,5’-テトラブロモビスフェノールAなどがあげられる。
【0059】
また、化合物(d1)として、芳香族環、芳香族環を構成する炭素原子に直接結合した2以上のヒドロキシ基、および、Hammettの置換基定数σmおよびσpの少なくとも一方の値が、0.03以上であって、芳香族環を構成する炭素原子に直接結合した1~6の置換基(γ)(ただし、ヒドロキシ基を含有する置換基およびアルキルカルボニルオキシ基を除く)を有する化合物(d1-1)も好適に用い得る。
【0060】
芳香族環は、単環または多環のいずれであってもよい。芳香族環は、炭素原子だけではなく、炭素原子と酸素原子、硫黄原子および窒素原子などのヘテロ原子とにより構成されるいわゆる複素環であってよい。芳香族環において、カルボニル基の炭素原子が環構造を構成していてもよい。
【0061】
単環の芳香族環としては、単環の5~7員環の芳香族環が挙げられ、具体的にはベンゼン環、単環の5~7員環の芳香族複素環(トロポン構造の7員環を含む)が好ましく、ベンゼン環、フラン環およびチオフェン環がより好ましく、ベンゼン環がさらに好ましい。
【0062】
多環の芳香族環が有する芳香族環の数は、2以上であり、好ましくは2~8であり、より好ましくは2~4であり、さらに好ましくは2または3であり、特に好ましくは2である。
【0063】
多環の芳香族環としては、多環式芳香族炭化水素環または多環式芳香族複素環が好ましく、多環式芳香族炭化水素環がより好ましい。多環式芳香族炭化水素環は、2つの環が結合を介して連結した多環、縮合環またはスピロ環であってよい。
【0064】
多環式芳香族炭化水素環の炭素数は、好ましくは3~30であり、より好ましくは5以上であり、さらに好ましくは6以上であり、より好ましくは20以下であり、さらに好ましくは14以下である。
【0065】
多環式芳香族炭化水素環の環数は、好ましくは2~4であり、より好ましくは2または3であり、さらに好ましくは2である。
【0066】
多環式芳香族炭化水素環としては、
ビフェニル環、ジフェニルメタン環、ジフェニルエーテル環、ジフェニルスルホン環、ジフェニルケトン環などの2つの環が結合を介して連結した多環式芳香族炭化水素環;
ナフタレン環、フェナントレン環、アントラセン環、フルオレン環、テトラセン環、クリセン環、ピレン環、ペンタセン環、ベンゾピレン環、トリフェニレン環、アズレン環などの縮合多環式炭化水素環;
などが挙げられる。
【0067】
多環式芳香族炭化水素環としては、なかでも、ナフタレン環またはビフェニル環が好ましい。
【0068】
多環式芳香族複素環においては、カルボニル基が芳香族環の一部を構成していてもよい。多環式芳香族複素環には、炭素原子およびカルボニル基の酸素原子のみで構成されている環も含まれる。
【0069】
多環式芳香族複素環としては、炭素原子と炭素原子以外の原子により形成される環が好ましい。炭素原子以外の原子としては、窒素原子、酸素原子または硫黄原子が好ましく、酸素原子または硫黄原子がより好ましい。すなわち、複素環としては、含窒素複素環、含酸素複素環または含硫黄複素環が好ましく、含酸素複素環または含硫黄複素環がより好ましい。環中の炭素原子以外の原子の数は、好ましくは1~3である。
【0070】
多環式芳香族複素環の環数は、好ましくは2~4であり、より好ましくは2または3であり、さらに好ましくは2である。
【0071】
多環式芳香族複素環としては、含酸素多環式芳香族複素環が好ましく、たとえば、キサンテン環、1-ベンゾピラン環、2-ベンゾピラン環、1-ベンゾフラン環、2-ベンゾフラン環などが挙げられる。
【0072】
芳香族環として、架橋密度が一層高く、高温での圧縮永久歪み特性に一層優れる成形品を得ることができることから、好ましくはベンゼン環、ナフタレン環またはビフェニル環であり、より好ましくはベンゼン環である。
【0073】
化合物(d1-1)は、芳香族環およびとともに、ヒドロキシ基および置換基(γ)を有する。
【0074】
化合物(d1-1)が有するヒドロキシ基の数は、2以上であり、好ましくは4以下であり、より好ましくは3以下である。一実施形態において、化合物(d1-1)は、芳香族環を構成する炭素原子に直接結合した2のヒドロキシ基を分子内に有している。化合物(d1-1)が有するヒドロキシ基は、後述するとおり、カルボン酸ともにエステルを形成してもよい。すなわち、化合物(d1-1)は、ヒドロキシ基に代えて、アルキルカルボニルオキシ基を有してもよい。
【0075】
置換基(γ)には、ヒドロキシ基を含有する置換基およびアルキルカルボニルオキシ基は含まれない。ヒドロキシ基を含有する置換基には、ヒドロキシ基、および、ヒドロキシ基をその構造の一部として有する基が含まれる。
【0076】
化合物(d1-1)が有する置換基(γ)の総数は、好ましくは1~4であり、より好ましくは1または2であり、さらに好ましくは1である。
【0077】
置換基(γ)は、一価の置換基であって、Hammettの置換基定数σmおよびσpの少なくとも一方の値が、0.03以上である置換基である。置換基(γ)の置換基定数σmおよびσpの少なくとも一方の値は、好ましくは0.05以上であり、より好ましくは0.10以上であり、好ましくは1.40以下であり、より好ましくは1.00以下であり、さらに好ましくは0.80以下である。
【0078】
一実施形態において、置換基(γ)の置換基定数σmの値が、0.03以上であり、好ましくは0.05以上であり、より好ましくは0.10以上であり、好ましくは1.40以下であり、より好ましくは1.00以下であり、さらに好ましくは0.80以下である。
【0079】
一実施形態において、置換基(γ)の置換基定数σpの値が、0.03以上であり、好ましくは0.05以上であり、より好ましくは0.10以上であり、好ましくは1.40以下であり、より好ましくは1.00以下であり、さらに好ましくは0.80以下である。
【0080】
Hammett則は、ベンゼン誘導体の反応または平衡に及ぼす置換基の影響を定量的に論ずるために1935年L.P.Hammettにより提唱された経験則であるが、これは今日広く妥当性が認められている。Hammett則に求められた置換基定数にはσp値とσm値があり、これらの値は多くの一般的な成書に見出すことができるが、本発明においては、Chem.Rev.,1991年,91巻,165~195ページのうち「TABLE1 Hammett and Modified Swain-Lupton Constants」に記載された値を採用する。なお、上記文献に記載されていない置換基については、文献「The Effect of Structure upon the Reactions of Organic Compounds. Benzene Derivatives」(J.Am.Chem.Soc.1937, 59, 1, 96-103)に記載された計算方法に従って算出された値を採用する。
【0081】
化合物(d1-1)には、ベンゼン誘導体ではない物も含まれるが、置換基の電子効果を示す尺度として、置換位置に関係なくσm値およびσp値を使用する。本開示においては、σm値およびσp値をこのような意味で使用する。
【0082】
置換基(γ)として、具体的には、一部がフッ素化された炭素数1~5のアルキル基、炭素数1~5のパーフルオロアルキル基、フッ素原子、塩素原子、炭素数(ただし、カルボニル基を構成する炭素原子の数を除く)1~5のアルコキシカルボニル基、炭素数(ただし、カルボニル基を構成する炭素原子の数を除く)1~5の一部がフッ素化されたアルコキシカルボニル基、炭素数(ただし、カルボニル基を構成する炭素原子の数を除く)1~5のパーフルオロアルコキシカルボニル基、炭素数1~5のアルコキシ基、炭素数1~5の一部がフッ素化されたアルコキシ基、炭素数1~5のパーフルオロアルキコキシ基、炭素数(ただし、カルボニル基を構成する炭素原子の数を除く)1~5の一部がフッ素化されたアシルオキシ基、炭素数(ただし、カルボニル基を構成する炭素原子の数を除く)1~5のパーフルオロアシルオキシ基、炭素数(ただし、カルボニル基を構成する炭素原子の数を除く)0~5のアシル基、炭素数(ただし、カルボニル基を構成する炭素原子の数を除く)0~5の一部がフッ素化されたアシル基、炭素数(ただし、カルボニル基を構成する炭素原子の数を除く)0~5のパーフルオロアシル基、炭素数1~5のアルキルスルホニル基、炭素数1~5の一部がフッ素化されたアルキルスルホニル基、炭素数1~5のパーフルオロアルキルスルホニル基、トリメトキシシリル基などが挙げられる。
【0083】
置換基(γ)としては、炭素数1~5の一部がフッ素化されたアルキル基、炭素数1~5のパーフルオロアルキル基、フッ素原子、塩素原子、炭素数1~5のアルコキシ基、炭素数(ただし、カルボニル基を構成する炭素原子の数を除く)0~5のアルコキシカルボニル基、炭素数(ただし、カルボニル基を構成する炭素原子の数を除く)0~5のアシル基からなる群より選択される少なくとも1種が好ましく、炭素数1~5のパーフルオロアルキル基、フッ素原子、塩素原子、炭素数1~5のアルコキシ基、炭素数(ただし、カルボニル基を構成する炭素原子の数を除く)0~5のアルコキシカルボニル基、および、炭素数(ただし、カルボニル基を構成する炭素原子の数を除く)0~5のアシル基からなる群より選択される少なくとも1種であることがより好ましく、炭素数1~5のパーフルオロアルキル基、フッ素原子、塩素原子および炭素数(ただし、カルボニル基を構成する炭素原子の数を除く)0~5のアシル基からなる群より選択される少なくとも1種がさらに好ましく、塩素原子、フッ素原子、アセチル基、メトキシカルボニル基およびメトキシ基からなる群より選択される少なくとも1種が尚さらに好ましく、アセチル基およびメトキシカルボニル基からなる群より選択される少なくとも1種が特に好ましい。
【0084】
化合物(d1-1)としては、 一般式(d1-1-1)で示される化合物または一般式(d1-1-2)で示される化合物が好ましい。
【0085】
一般式(d1-1-1):
【化1】
(式中、mは1または2であり、Xは置換基(γ)であり、nは1~3の整数である)
【0086】
一般式(d1-1-2):
【化2】
(式中、aおよびbはそれぞれ独立に1または2であり、X
1およびX
2はそれぞれ独立に置換基(γ)であり、cおよびdはそれぞれ独立に0~3の整数(ただしcおよびdの合計は1以上の整数である)であり、Aは単結合、炭素数1~13のアルキレン基、炭素数6~13のアリーレン基、チオカルボニル基、オキシ基、カルボニル基、スルフィニル基またはスルホニル基であり、これらの基は塩素原子およびフッ素原子の一方または両方を含んでもよい)
【0087】
一般式(d1-1-1)中、mは、ベンゼン環に結合するヒドロキシ基の数を表している。mは、1または2であり、好ましくは1である。Xは、ベンゼン環に結合する置換基(γ)を表している。nは、ベンゼン環に結合する置換基(γ)の数を表している。nは、1~3の整数であり、好ましくは1または2であり、より好ましくは1である。
【0088】
一般式(d1-1-2)中、aおよびbは、2つのベンゼン環にそれぞれ結合するヒドロキシ基の数を表している。aおよびbは、それぞれ独立に、1または2であり、好ましくは1である。
【0089】
一般式(d1-1-2)中、Aは、2つのベンゼン環を連結する結合の種類を表しており、単結合、炭素数1~13のアルキレン基、炭素数6~13のアリーレン基、チオカルボニル基、オキシ基、カルボニル基、スルフィニル基またはスルホニル基である。これらの基が置換可能な水素原子を有する場合、該水素原子は、塩素原子およびフッ素原子により置換されていてもよい。すなわち、これらの基は、塩素原子およびフッ素原子の一方または両方を含んでもよい。Aとしては、単結合または炭素数1~13のアルキレン基が好ましく、単結合がより好ましい。
【0090】
一般式(d1-1-2)中、X1およびX2は、2つのベンゼン環にそれぞれ結合する置換基(γ)を表している。また、cおよびdは、2つのベンゼン環にそれぞれ結合する置換基(γ)の数を表している。cおよびdは、それぞれ独立に、0~3の整数であり、ただしcおよびdの合計は1以上の整数である。cおよびdの合計が2以上である場合、2つのベンゼン環の両方に、それぞれ1以上の置換基(γ)が結合していることが好ましい。cおよびdは、それぞれ独立に、好ましくは1~3の整数であり、より好ましくは1または2であり、さらに好ましくは1である。
【0091】
架橋剤は、化合物(d1)のオニウム塩、化合物(d1)のアルカリ金属塩、化合物(d1)のアルカリ土類金属塩、または、化合物(d1)とカルボン酸とから誘導されるエステルであってもよい。これらの塩およびエステルのなかでも、化合物(d1)のオニウム塩が好ましい。化合物(d1)のオニウム塩は、化合物(d1)由来のアニオン部分およびオニウム化合物由来のカチオン部分から構成されるオニウム塩である。架橋剤(d)としてオニウム塩を用いることにより、オニウム塩が架橋剤として作用するだけでなく、脱フッ化水素剤としても作用する。
【0092】
化合物(d1)のオニウム塩は、水または有機溶媒中で化合物(d1)に対して、水酸化ナトリウムなどのアルカリ性物質を、または有機溶媒中で金属ナトリウムを反応させたのち、さらにベンジルトリフェニルホスホニウムクロリドなどのオニウム化合物を反応させ、水または有機溶媒を留去することで得られる。また途中、必要に応じて反応生成物の溶液をろ過したり、反応生成物を水や有機溶媒などにより洗浄を行ない、塩化ナトリウムなどの副生成物を除いてもよい。
【0093】
アルカリ金属としては、NaまたはKが好ましい。アルカリ土類金属としては、CaまたはMgが好ましい。
【0094】
オニウム塩としては、たとえば、アンモニウム塩、ホスホニウム塩、スルホニウム塩などが挙げられる。
【0095】
オニウム塩を構成するオニウム化合物としては、アンモニウム化合物、ホスホニウム化合物、スルホニウム化合物などを挙げることができる。
【0096】
オニウム塩を構成するオニウム化合物としては、アンモニウム化合物、ホスホニウム化合物が好ましく、ホスホニウム化合物がより好ましく、第4級ホスホニウム化合物がさらに好ましく、なかでも、ベンジルトリフェニルホスホニウムが特に好ましい。アンモニウム化合物としては、第4級アンモニウム化合物が好ましく、8-ベンジル-1,8-ジアザビシクロ[5,4,0]-7-ウンデセニウム、ベンジルジメチルオクタデシルアンモニウムがより好ましい。
【0097】
化合物(d1)とカルボン酸とから誘導されるエステルは、たとえば、化合物(d1)とカルボン酸とを反応させることによって得られる。エステルは、化合物(d1)が有するヒドロキシ基の一部または全部に代えて、アルキルカルボニルオキシ基を有する。
【0098】
アルキルカルボニルオキシ基としては、一般式:
R-C(=O)-O-
(式中、Rは、炭素数1~5のアルキル基である)で示される基が好ましい。アルキル基の炭素数は、好ましくは1~3であり、より好ましくは1である。Rとして、好ましくはメチル基である。
【0099】
架橋剤の含有量としては、架橋工程における架橋反応が適切な速度で進行することおよび十分な引張強さ、切断時伸びおよび高温での圧縮永久歪み特性、適度な硬さを有する成形品を得ることができることから、好ましくは0.1~10質量部であり、より好ましくは0.5~6質量部であり、さらに好ましくは0.7~5質量部であり、特に好ましくは0.7~2.5質量部である。架橋剤が、化合物(d1)のオニウム塩である場合には、上記架橋剤の含有量(質量部)は、架橋剤のカチオン部分(すなわち、オニウム化合物由来のカチオン)の質量を除いた値である。
【0100】
(e)有機パーオキサイド
本開示のフッ素ゴム架橋用組成物は、有機パーオキサイドを含有する。
【0101】
有機パーオキサイドとしては、熱や酸化還元系の存在で容易にパーオキシラジカルを発生するものが好ましい。具体的には、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)-3,5,5-トリメチルシクロヘキサン、2,5-ジメチルヘキサン-2,5-ジヒドロパーオキサイド、ジ-t-ブチルパーオキサイド、t-ブチルクミルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、α,α’-ビス(t-ブチルパーオキシ)-p-ジイソプロピルベンゼン、2,5-ジメチル-2,5-ビス(t-ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5-ジメチル-2,5-ビス(t-ブチルパーオキシ)-ヘキシン-3、ベンゾイルパーオキサイド、t-ブチルパーオキシベンゼン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(ベンゾイルパーオキシ)へキサン、t-ブチルパーオキシマレイン酸、t-ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、t-ブチルパーオキシベンゾエイトなどをあげることができる。これらの中でも、2,5-ジメチル-2,5-ビス(t-ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5-ジメチル-2,5-ビス(t-ブチルパーオキシ)-ヘキシン-3が好ましい。
【0102】
有機パーオキサイドの含有量は、一層高い架橋速度で架橋させることができ、架橋密度が一層高い成形品を得ることができることから、フッ素ゴム100質量部に対して、好ましくは0.05~10質量部であり、より好ましくは0.1質量部以上であり、より好ましくは5質量部以下であり、さらに好ましくは1質量部以下である。
【0103】
(f)共架橋剤
本開示のフッ素ゴム架橋用組成物は、共架橋剤を含有する。共架橋剤として、パーオキサイド架橋に用いる架橋剤(パーオキサイド架橋用共架橋剤)として知られているものを好適に用い得る。
【0104】
共架橋剤としては、トリアリルシアヌレート、トリメタリルイソシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート(TAIC)、トリアクリルホルマール、トリアリルトリメリテート、N,N’-m-フェニレンビスマレイミド、ジプロパギルテレフタレート、ジアリルフタレート、テトラアリルテレフタレートアミド、トリアリルホスフェート、ビスマレイミド、フッ素化トリアリルイソシアヌレート(1,3,5-トリス(2,3,3-トリフルオロ-2-プロペニル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6-トリオン)、トリス(ジアリルアミン)-S-トリアジン、亜リン酸トリアリル、N,N-ジアリルアクリルアミド、1,6-ジビニルドデカフルオロヘキサン、ヘキサアリルホスホルアミド、N,N,N’,N’-テトラアリルフタルアミド、N,N,N’,N’-テトラアリルマロンアミド、トリビニルイソシアヌレート、2,4,6-トリビニルメチルトリシロキサン、トリ(5-ノルボルネン-2-メチレン)シアヌレート、トリアリルホスファイトなどが挙げられる。これらの中でも、トリアリルイソシアヌレート(TAIC)が好ましい。フッ素ゴムと共架橋剤とを混練りする際には、共架橋剤を不活性無機粉体などに含浸させたものを用いてもよい。
【0105】
共架橋剤の含有量は、一層高い架橋速度で架橋させることができ、架橋密度が一層高い成形品を得ることができることから、フッ素ゴム100質量部に対して、0.1~10質量部が好ましく、0.5~5質量部がより好ましい。
【0106】
(g)受酸剤
本開示のフッ素ゴム架橋用組成物は、受酸剤をさらに含有してもよい。受酸剤を含有することにより、フッ素ゴム架橋用組成物の架橋反応が一層円滑に進行し、高温での圧縮永久歪み特性が一層向上する。
【0107】
受酸剤としては、たとえば、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化ビスマス、酸化亜鉛等の金属酸化物、水酸化カルシウム等の金属水酸化物、ハイドロタルサイト、メタケイ酸ナトリウム等の特表2011-522921号公報に記載されたアルカリ金属ケイ酸塩、特開2003-277563号公報に記載された弱酸の金属塩等が挙げられる。弱酸の金属塩としては、Ca、Sr、Ba、Na、Kの炭酸塩、安息香酸塩、蓚酸塩、亜リン酸塩などが挙げられる。
【0108】
受酸剤としては、高温での圧縮永久歪み特性により一層優れた成形品を得ることができることから、金属酸化物、金属水酸化物、アルカリ金属ケイ酸塩、弱酸の金属塩およびハイドロタルサイトからなる群より選択される少なくとも1種が好ましく、メタケイ酸ナトリウムの水和物、水酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化ビスマス、ハイドロタルサイトがより好ましい。また、得られる成形品に、良好な耐水性、耐酸性またはバイオディーゼルを含む耐有機酸エステル性が必要とされる場合には、受酸剤としては、酸化ビスマスおよびハイドロタルサイトからなる群より選択される少なくとも1種が好ましい。
【0109】
フッ素ゴム架橋用組成物において、受酸剤の含有量としては、高温での圧縮永久歪み特性により一層優れた成形品を得ることができることから、フッ素ゴム100質量部に対して、好ましくは0.1~100質量部であり、より好ましくは1~50質量部であり、さらに好ましく1~30質量部であり、特に好ましくは1~20質量部である。
【0110】
受酸剤の含有量が多くなると、得られる成形品の耐水性、耐酸性およびバイオディーゼルを含む耐有機酸エステル性が低下する傾向にあり、一方、受酸剤の含有量が少なくなると架橋速度が低下し、架橋密度の低下により機械物性が低下する傾向にある。そのため、得られる成形品の用途に応じて、受酸剤の含有量を選択することができる。また、水酸化カルシウム以外の受酸剤を含有する場合、水酸化カルシウムの含有量を0~1.5質量部などに減量したうえで、他方の受酸剤の含有量を調整して架橋密度を調整することにより、高温での圧縮永久歪み特性が一層良好な成形品を得ることができる。
【0111】
(h)その他の成分
フッ素ゴム架橋用組成物は、必要に応じてフッ素ゴム架橋用組成物に配合される通常の添加物、たとえば充填剤(カーボンブラック、瀝青炭、硫酸バリウム、珪藻土、焼成クレー、タルク、ウォラストナイト、カーボンナノチューブ等)、加工助剤(ワックス等)、可塑剤、着色剤、安定剤、粘着性付与剤(クマロン樹脂、クマロン・インデン樹脂等)、離型剤、導電性付与剤、熱伝導性付与剤、表面非粘着剤、柔軟性付与剤、耐熱性改善剤、難燃剤、発泡剤、国際公開第2012/023485号に記載の酸化防止剤などの各種添加剤を配合することができ、前記のものとは異なる常用の架橋剤、脱フッ化水素剤を1種またはそれ以上配合してもよい。
【0112】
このうちカーボンブラックとしては、サーマルカーボンブラック、ファーネスカーボンブラックが好ましく、MTカーボンブラック、FTカーボンブラック、SRFカーボンブラックがより好ましい。カーボンブラック、またはFTカーボンブラックなどの比較的粒径の大きいカーボンブラックを配合すると圧縮永久歪み特性に優れた成形品が得られ、細かい粒径のカーボンブラックを配合すると強度や伸びに優れた成形品が得られる。異なるグレードを併用して配合することにより、上記特性のバランスをとることができる。
【0113】
カーボンブラック以外の充填剤としては、硫酸バリウム、ウォラストナイトが好ましい。
【0114】
加工助剤としては、特に限定されないが、例えばステアリルアミンなどの脂肪族アミン、ステアリン酸エステルやセバシン酸エステルのような脂肪酸エステル、ステアリン酸アミドのような脂肪酸アミド、長鎖アルキルアルコール、天然ワックス、ポリエチレンワックス、リン酸トリクレジルなどのリン酸エステル、シリコーン系加工助剤などを配合してもよく、必要に応じて2種以上を適切な量で配合すると成形時の金型離型性と成形品の物性のバランスがよくなることがある。
【0115】
カーボンブラックなどの充填剤の含有量としては、特に限定されるものではないが、フッ素ゴム100質量部に対して0~300質量部であることが好ましく、1~150質量部であることがより好ましく、2~100質量部であることが更に好ましく、2~75質量部であることが特に好ましい。
【0116】
ワックス等の加工助剤の含有量としては、フッ素ゴム100質量部に対して0~10質量部であることが好ましく、0~5質量部であることが更に好ましく、0~2質量部であることが特に好ましい。加工助剤、可塑剤や離型剤を使用すると、得られる成形品の機械物性やシール性が下がる傾向があるので、目的とする得られる成形品の特性が許容される範囲でこれらの含有量を調整する必要がある。
【0117】
フッ素ゴム架橋用組成物は、ジアルキルスルホン化合物を含有してもよい。ジアルキルスルホン化合物を含有することにより、フッ素ゴム架橋用組成物の架橋効率が高まったり、架橋速度が速くなったり、圧縮永久歪み特性がより一層向上したり、ゴム生地の流動性が向上する。ジアルキルスルホン化合物としては、ジメチルスルホン、ジエチルスルホン、ジブチルスルホン、メチルエチルスルホン、ジフェニルスルホン、スルホラン等が挙げられる。なかでも、架橋効率および圧縮永久歪み特性の観点、ならびに、沸点が適当であることから、スルホランが好ましい。ジアルキルスルホン化合物の含有量としては、フッ素ゴム100質量部に対して0~10質量部であることが好ましく、0~5質量部であることがさらに好ましく、0~3質量部であることが特に好ましい。本開示のフッ素ゴム架橋用組成物がジアルキルスルホン化合物を含有する場合には、ジアルキルスルホン化合物の含有量の下限値は、たとえば、フッ素ゴム100質量部に対して、0.1質量部以上であってよい。
【0118】
架橋速度、成形時におけるゴム生地の流動性、成形時の金型離型性、成形品の機械特性のバランスのよいものとなることから、上記ジアルキルスルホン化合物と上記加工助剤をともに配合してもよい。
【0119】
フッ素ゴム架橋用組成物は、フッ素ゴム(a)、添加剤(b)、脱フッ化水素剤(c)、架橋剤(d)、有機パーオキサイド(e)、共架橋剤(f)などを、一般に使用されているゴム混練り装置を用いて混練りすることにより得られる。ゴム混練り装置としては、ロール、ニーダー、バンバリーミキサー、インターナルミキサー、二軸押し出し機などを用いることができる。
【0120】
また、各成分をゴム中に均一に分散させるために、一部の成分をニーダーなどの密閉型の混練り装置を用いて100~200℃の高温で溶融させながら混練りした後に、残りの成分をこれ以下の比較的低温で混練りする方法を用いてもよい。
【0121】
さらに、フッ素ゴム(a)、添加剤(b)、脱フッ化水素剤(c)、架橋剤(d)、有機パーオキサイド(e)、共架橋剤(f)などを混練りした後に、室温にて12時間以上置いた後に再度混練りすることで、さらに分散性を高めることができる。
【0122】
<成形品>
フッ素ゴム架橋用組成物を架橋することにより、本開示の成形品を得ることができる。また、フッ素ゴム架橋用組成物を成形し、架橋することによっても、本開示の成形品を得ることができる。フッ素ゴム架橋用組成物は、従来公知の方法で成形することができる。成形および架橋の方法および条件としては、採用する成形および架橋において公知の方法および条件の範囲内でよい。成形および架橋の順序は限定されず、成形した後架橋してもよいし、架橋した後成形してもよいし、成形と架橋とを同時に行ってもよい。
【0123】
成形方法としては、圧縮成形法、注入成形法、インジェクション成形法、押出し成形法、ロートキュアーによる成形法などが例示できるが、これらに限定されるものではない。架橋方法としては、スチーム架橋法、加熱による架橋法、放射線架橋法等が採用でき、なかでも、スチーム架橋法、加熱による架橋法が好ましい。限定されない具体的な架橋条件としては、通常、140~250℃の温度範囲、1分間~24時間の架橋時間内で、架橋剤(b)、脱フッ化水素剤(c)、有機パーオキサイド(d)、受酸剤(e)などの種類により適宜決めればよい。
【0124】
また得られた成形品をオーブン等により加熱することで、引張強さなどの機械物性、耐熱性および高温での圧縮永久歪み特性などを向上させることができる。限定されない具体的な架橋条件としては、通常、140~300℃の温度範囲、30分間~72時間の範囲で、架橋剤(b)、脱フッ化水素剤(c)、有機パーオキサイド(d)、受酸剤(e)などの種類により適宜決めればよい。
【0125】
本開示の成形品は、耐熱性、耐油性、耐薬品性、柔軟性などの諸特性に優れており、さらに、高温での圧縮永久歪み特性に優れている。したがって、本開示の成形品は、他材と接触して摺動したり、他材、物質を封止、密封したり、防振、防音を目的とする部位一般に用いられ、自動車産業、航空機産業、半導体産業等の各分野において各種部品として使用することができる。
【0126】
用いられる分野としては、たとえば、半導体関連分野、自動車分野、航空機分野、宇宙・ロケット分野、船舶分野、化学プラント等の化学品分野、医薬品等の薬品分野、現像機等の写真分野、印刷機械等の印刷分野、塗装設備等の塗装分野、分析機器、計器等の分析・理化学機械分野、食品プラント機器及び家庭用品を含む食品機器分野、飲料食品製造装置分野、医薬品製造装置分野、医療部品分野、化学薬品輸送用機器分野、原子力プラント機器分野、鉄板加工設備等の鉄鋼分野、一般工業分野、電気分野、燃料電池分野、電子部品分野、光学機器部品分野、宇宙用機器部品分野、石油化学プラント機器分野、石油、ガス等のエネルギー資源探索採掘機器部品分野、石油精製分野、石油輸送機器部品分野などが挙げられる。
【0127】
成形品の使用形態としては、たとえば、リング、パッキン、ガスケット、ダイアフラム、オイルシール、ベアリングシール、リップシール、プランジャーシール、ドアシール、リップ及びフェースシール、ガスデリバリープレートシール、ウエハサポートシール、バレルシール等の各種シール材やパッキンなどが挙げられる。シール材としては、耐熱性、耐溶剤性、耐薬品性、非粘着性が要求される用途に用いることができる。
【0128】
また、チューブ、ホース、ロール、各種ゴムロール、フレキシブルジョイント、ゴム板、コーティング、ベルト、ダンパー、バルブ、バルブシート、バルブの弁体、耐薬品用コーティング材料、ラミネート用材料、ライニング用材料などとしても使用できる。
【0129】
上記リング、パッキン、シールの断面形状は、種々の形状のものであってよく、具体的には、たとえば、四角、O字、へルールなどの形状であってもよいし、D字、L字、T字、V字、X字、Y字などの異形状であってもよい。
【0130】
上記半導体関連分野においては、たとえば、半導体製造装置、液晶パネル製造装置、プラズマパネル製造装置、プラズマディスプレイパネル製造装置、プラズマアドレス液晶パネル製造装置、有機ELパネル製造装置、フィールドエミッションディスプレイパネル製造装置、太陽電池基板製造装置、半導体搬送装置等に用いることができる。そのような装置としては、たとえば、CVD装置、半導体用ガス制御装置等のガス制御装置、ドライエッチング装置、ウェットエッチング装置、プラズマエッチング装置、反応性イオンエッチング装置、反応性イオンビームエッチング装置、スパッタエッチング装置、イオンビームエッチング装置、酸化拡散装置、スパッタリング装置、アッシング装置、プラズマアッシング装置、洗浄装置、イオン注入装置、プラズマCVD装置、排気装置、露光装置、研磨装置、成膜装置、乾式エッチング洗浄装置、UV/O3洗浄装置、イオンビーム洗浄装置、レーザービーム洗浄装置、プラズマ洗浄装置、ガスエッチング洗浄装置、抽出洗浄装置、ソックスレー抽出洗浄装置、高温高圧抽出洗浄装置、マイクロウェーブ抽出洗浄装置、超臨界抽出洗浄装置、フッ酸、塩酸、硫酸、オゾン水等を用いる洗浄装置、ステッパー、コータ・デベロッパー、CMP装置、エキシマレーザー露光機、薬液配管、ガス配管、NF3プラズマ処理、O2プラズマ処理、フッ素プラズマ処理等のプラズマ処理が行われる装置、熱処理成膜装置、ウエハ搬送機器、ウエハ洗浄装置、シリコンウエハ洗浄装置、シリコンウエハ処理装置、LP-CVD工程に用いられる装置、ランプアニーリング工程に用いられる装置、リフロー工程に用いられる装置などが挙げられる。
【0131】
半導体関連分野における具体的な使用形態としては、たとえば、ゲートバルブ、クォーツウィンドウ、チャンバー、チャンバーリット、ゲート、ベルジャー、カップリング、ポンプのO-リングやガスケット等の各種シール材;レジスト現像液や剥離液用のO-リング等の各種シール材、ホースやチューブ;レジスト現像液槽、剥離液槽、ウエハ洗浄液槽、ウェットエッチング槽のライニングやコーティング;ポンプのダイアフラム;ウエハ搬送用のロール;ウエハ洗浄液用のホースチューブ;クリーンルーム等のクリーン設備用シーラントといったクリーン設備用シール材;半導体製造装置やウエハ等のデバイスを保管する保管庫用のシーリング材;半導体を製造する工程で用いられる薬液移送用ダイアフラムなどが挙げられる。
【0132】
上記自動車分野においては、エンジン本体、主運動系、動弁系、潤滑・冷却系、燃料系、吸気・排気系、駆動系のトランスミッション系、シャーシのステアリング系、ブレーキ系や、基本電装部品、制御系電装部品、装備電装部品等の電装部品などに用いることができる。なお、上記自動車分野には、自動二輪車も含まれる。
【0133】
上述のようなエンジン本体やその周辺装置では、耐熱性、耐油性、燃料油耐性、エンジン冷却用不凍液耐性、耐スチーム性が要求される各種シール材に、成形品を用いることができ、そのようなシール材としては、たとえば、ガスケット、シャフトシール、バルブステムシール等のシールや、セルフシールパッキン、ピストンリング、割リング形パッキン、メカニカルシール、オイルシール等の非接触型又は接触型のパッキン類、ベローズ、ダイアフラム、ホース、チューブの他、電線、緩衝材、防振材、ベルトAT装置に用いられる各種シール材などが挙げられる。
【0134】
上記燃料系における具体的な使用形態としては、燃料インジェクター、コールドスタートインジェクター、燃料ラインのクイックコネクター、センダー・フランジ・クイックコネクター、燃料ポンプ、燃料タンク・クイック・コネクター、ガソリン混合ポンプ、ガソリンポンプ、燃料チューブのチューブ本体、燃料チューブのコネクター、インジェクター等に用いられるO-リング;呼気系マニフォールド、燃料フィルター、圧力調整弁、キャニスター、燃料タンクのキャップ、燃料ポンプ、燃料タンク、燃料タンクのセンダーユニット、燃料噴射装置、燃料高圧ポンプ、燃料ラインコネクターシステム、ポンプタイミングコントロールバルブ、サクションコントロールバルブ、ソレノイドサブアッシー、フューエルカットバルブ等に用いられるシール;キャニスタ・パージ・ソレノイド・バルブシール、オンボード・リフューエリング・ベイパー・リカバリー(ORVR)バルブシール、燃料ポンプ用のオイルシール、フューエルセンダーシール、燃料タンクロールオーバー・バルブシール、フィラーシール、インジェクターシール、フィラーキャップシール、フィラーキャップバルブのシール;燃料ホース、燃料供給ホース、燃料リターンホース、ベーパー(エバポ)ホース、ベント(ブリーザー)ホース、フィラーホース、フィラーネックホース、燃料タンク内のホース(インタンクホース)、キャブレターのコントロールホース、フューエルインレットホース、フューエルブリーザホース等のホース;燃料フィルター、燃料ラインコネクターシステム等に用いられるガスケットや、キャブレター等に用いられるフランジガスケット;蒸気回収ライン、フューエルフィードライン、ベーパー・ORVRライン等のライン材;キャニスター、ORVR、燃料ポンプ、燃料タンク圧力センサー、ガソリンポンプ、キャブレターのセンサー、複合空気制御装置(CAC)、パルセーションダンパー、キャニスター用、オートコック等に用いられるダイアフラムや、燃料噴射装置のプレッシャーレギュレーターダイアフラム;燃料ポンプ用のバルブ、キャブレーターニードルバルブ、ロールオーバーチェックバルブ、チェックバルブ類;ベント(ブリーザー)、燃料タンク内に用いられるチューブ;燃料タンク等のタンクパッキン、キャブレターの加速ポンプピストンのパッキン;燃料タンク用のフューエルセンダー防振部品;燃料圧力を制御するためのO-リングや、ダイアフラム;アクセレレータ・ポンプ・カップ;インタンクフューエルポンプマウント;燃料噴射装置のインジェクタークッションリング;インジェクターシールリング;キャブレターのニードルバルブ芯弁;キャブレターの加速ポンプピストン;複合空気制御装置(CAC)のバルブシート;フューエルタンク本体;ソレノイドバルブ用シール部品などが挙げられる。
【0135】
上記ブレーキ系における具体的な使用形態としては、マスターバック、油圧ブレーキホースエアーブレーキ、エアーブレーキのブレーキチャンバー等に用いられるダイアフラム;ブレーキホース、ブレーキオイルホース、バキュームブレーキホース等に用いられるホース;オイルシール、O-リング、パッキン、ブレーキピストンシール等の各種シール材;マスターバック用の大気弁や真空弁、ブレーキバルブ用のチェック弁;マスターシリンダー用のピストンカップ(ゴムカップ)や、ブレーキカップ;油圧ブレーキのマスターシリンダーやバキュームブースター、油圧ブレーキのホイールシリンダー用のブーツ、アンチロック・ブレーキ・システム(ABS)用のO-リングやグロメットなどが挙げられる。
【0136】
上記基本電装部品における具体的な使用形態としては、電線(ハーネス)の絶縁体やシース、ハーネス外装部品のチューブ、コネクター用のグロメットなどが挙げられる。
【0137】
制御系電装部品における具体的な使用形態としては、各種センサー線の被覆材料などが挙げられる。
【0138】
上記装備電装部品における具体的な使用形態としては、カーエアコンのO-リング、パッキンや、クーラーホース、高圧エアコンホース、エアコンホース、電子スロットルユニット用ガスケット、ダイレクトイグニッション用プラグブーツ、ディストリビューター用ダイアフラムなどが挙げられる。また、電装部品の接着にも用いることができる。
【0139】
上記吸気・排気系における具体的な使用形態としては、吸気マニホールド、排気マニホールド等に用いられるパッキンや、スロットルのスロットルボディパッキン;EGR(排気再循環)、押圧コントロール(BPT)、ウエストゲート、ターボウエストゲート、アクチュエーター、バリアブル・タービン・ジオメトリー(VTG)ターボのアクチュエーター、排気浄化バルブ等に用いられるダイアフラム;EGR(排気再循環)のコントロールホース、エミッションコントロールホース、ターボチャージャーのターボオイルホース(供給)、ターボオイルホース(リターン)、ターボエアホース、インタークーラーホース、ターボチャージャーホース、インタークーラーを備えたターボエンジンのコンプレッサーと接続されるホース、排気ガスホース、エアインテークホース、ターボホース、DPF(ディーゼル微粒子捕集フィルター)センサーホース等のホース;エアダクトやターボエアダクト;インテークマニホールドガスケット;EGRのシール材、ABバルブのアフターバーン防止バルブシート、(ターボチャージャーなどの)タービンシャフトシールや、自動車のエンジンにおいて使用されるロッカーカバーや空気吸い込みマニホールドなどの溝部品に用いられるシール部材などが挙げられる。
【0140】
その他、排出ガス制御部品において、蒸気回収キャニスター、触媒式転化装置、排出ガスセンサー、酸素センサー等に用いられるシールや、蒸気回収および蒸気キャニスターのソレノイド・アーマチュアのシール;吸気系マニフォールドガスケットなどとして用いることができる。
【0141】
また、ディーゼルエンジンに関する部品において、直噴インジェクター用のO-リングシール、回転ポンプシール、制御ダイアフラム、燃料ホース、EGR,プライミングポンプ,ブーストコンペンセーターのダイアフラムなどとして用いることができる。また、尿素SCRシステムに用いられるO-リング、シール材、ホース、チューブ、ダイアフラム、ガスケット材、パイプや、尿素SCRシステムの尿素水タンク本体、および尿素水タンクのシール材などにも用いることができる。
【0142】
上記トランスミッション系における具体的な使用形態としては、トランスミッション関連のベアリングシール、オイルシール、O-リング、パッキン、トルコンホースなどが挙げられる。ミッションオイルシールや、ATのミッションオイルホース、ATFホース、O-リング、パッキン類なども挙げられる。
【0143】
なお、トランスミッションには、AT(オートマチック・トランスミッション)、MT(マニュアル・トランスミッション)、CVT(連続可変トランスミッション)、DCT(デュアル・クラッチ・トランスミッション)などがある。
【0144】
また、手動または自動変速機用のオイルシール、ガスケット、O-リング、パッキンや、無段変速機(ベルト式またはトロイダル式)用のオイルシール、ガスケット、O-リング、パッキンの他、ATFリニアソレノイド用パッキング、手動変速機用オイルホース、自動変速機用ATFホース、無段変速機(ベルト式またはトロイダル式)用CVTFホースなども挙げられる。
【0145】
ステアリング系における具体的な使用形態としては、パワーステアリングオイルホースや高圧パワーステアリングホースなどが挙げられる。
【0146】
自動車エンジンのエンジン本体において用いられる形態としては、たとえば、シリンダーヘッドガスケット、シリンダーヘッドカバーガスケット、オイルパンパッキン、一般ガスケットなどのガスケット、O-リング、パッキン、タイミングベルトカバーガスケットなどのシール、コントロールホースなどのホース、エンジンマウントの防振ゴム、コントロールバルブダイアフラム、カムシャフトオイルシールなどが挙げられる。
【0147】
自動車エンジンの主運動系においては、クランクシャフトシール、カムシャフトシールなどのシャフトシールなどに用いることができる。
【0148】
自動車エンジンの動弁系においては、エンジンバルブのバルブステムオイルシール、バタフライバルブのバルブシートなどに用いることができる。
【0149】
自動車エンジンの潤滑・冷却系においては、エンジンオイルクーラーのエンジンオイルクーラーホース、オイルリターンホース、シールガスケットや、ラジエータ周辺のウォーターホース、ラジエータのシール、ラジエータのガスケット、ラジエータのO-リング、バキュームポンプのバキュームポンプオイルホースなどの他、ラジエーターホース、ラジエータータンク、オイルプレッシャー用ダイアフラム、ファンカップリングシールなどに用いることができる。
【0150】
このように、自動車分野における使用の具体例の一例としては、エンジンヘッドガスケット、オイルパンガスケット、マニフォールドパッキン、酸素センサー用シール、酸素センサーブッシュ、酸化窒素(NOx)センサー用シール、酸化窒素(NOx)センサーブッシュ、酸化硫黄センサー用シール、温度センサー用シール、温度センサーブッシュ、ディーゼルパーティクルフィルターセンサー用シール、ディーゼルパーティクルフィルターセンサーブッシュ、インジェクターO-リング、インジェクターパッキン、燃料ポンプのO-リングやダイアフラム、ギアボックスシール、パワーピストンパッキン、シリンダーライナーのシール、バルブステムのシール、スタティックバルブステムシール、ダイナミックバルブステムシール、自動変速機のフロントポンプシール、リアーアクスルピニオンシール、ユニバーサルジョイントのガスケット、スピードメーターのピニオンシール、フートブレーキのピストンカップ、トルク伝達装置のO-リングやオイルシール、排ガス再燃焼装置のシールやベアリングシール、再燃焼装置用ホース、キャブレターのセンサー用ダイアフラム、防振ゴム(エンジンマウント、排気部、マフラーハンガー、サスペンションブッシュ、センターベアリング、ストラットバンパーラバー等)、サスペンション用防振ゴム(ストラットマウント、ブッシュ等)、駆動系防振ゴム(ダンパー等)、燃料ホース、EGRのチューブやホース、ツインキャブチューブ、キャブレターのニードルバルブの芯弁、キャブレターのフランジガスケット、オイルホース、オイルクーラーホース、ATFホース、シリンダーヘッドガスケット、水ポンプシール、ギアボックスシール、ニードルバルブチップ、オートバイ用リードバルブのリード、自動車エンジンのオイルシール、ガソリンホースガンのシール、カーエアコン用シール、エンジンのインタークーラー用ゴムホース、送油経路コネクター装置(fuel line connector systems)のシール、CACバルブ、ニードルチップ、エンジン回り電線、フィラーホース、カーエアコンO-リング、インテークガスケット、燃料タンク材料、ディストリビューター用ダイアフラム、ウォーターホース、クラッチホース、PSホース、ATホース、マスターバックホース、ヒーターホース、エアコンホース、ベンチレーションホース、オイルフィラーキャップ、PSラックシール、ラック&ピニオンブーツ、CVJブーツ、ボールジョイントダストカバー、ストラットダストカバー、ウェザーストリップ、グラスラン、センターユニットパッキン、ボディーサイトウェルト、バンパーラバー、ドアラッチ、ダッシュインシュレーター、ハイテンションコード、平ベルト、ポリVベルト、タイミングベルト、歯付きベルト、Vリブドベルト、タイヤ、ワイパーブレード、LPG車レギュレータ用ダイアフラムやプランジャー、CNG車レギュレータ用ダイアフラムやバルブ、DME対応ゴム部品、オートテンショナのダイアフラムやブーツ、アイドルスピードコントロールのダイアフラムやバルブ、オートスピードコントロールのアクチュエーター,負圧ポンプのダイアフラムやチェックバルブやプランジャー、O.P.S.のダイアフラムやO-リング、ガソリン圧抜きバルブ、エンジンシリンダースリーブのO-リングやガスケット、ウェットシリンダースリーブのO-リングやガスケット、ディファレンシャルギヤのシールやガスケット(ギヤ油のシールやガスケット)、パワーステアリング装置のシールやガスケット(PSFのシールやガスケット)、ショックアブソーバのシールやガスケット(SAFのシールやガスケット)、等速ジョイントのシールやガスケット、ホイール軸受のシールやガスケット、メタルガスケットのコーティング剤、キャリパーシール、ブーツ類、ホイールベアリングシール、タイヤの加硫成形に使用されるブラダーなどが挙げられる。
【0151】
上記航空機分野、宇宙・ロケット分野、船舶分野においては、特に燃料系統や潤滑油系統に用いることができる。
【0152】
上記航空機分野においては、たとえば、航空機用各種シール部品、航空機用エンジンオイル用途の航空機用各種部品、ジェットエンジンバルブステムシールやガスケットやO-リング、ローテーティングシャフトシール、油圧機器のガスケット、防火壁シール、燃料供給用ホースやガスケットやO-リング、航空機用ケーブルやオイルシールやシャフトシールなどとして用いることが可能である。
【0153】
上記宇宙・ロケット分野においては、たとえば、宇宙船、ジェットエンジン、ミサイル等のリップシール、ダイアフラム、O-リングや、耐ガスタービンエンジン用オイルのO-リング、ミサイル地上制御用防振台パッドなどとして用いることができる。
【0154】
また、船舶分野においては、たとえば、スクリューのプロペラシャフト船尾シール、ディーゼルエンジンの吸排気用バルブステムシール、バタフライバルブのバルブシール、バタフライバルブのバルブシートや軸シール、バタフライ弁の軸シール、船尾管シール、燃料ホース、ガスケット、エンジン用のO-リング、船舶用ケーブル、船舶用オイルシール、船舶用シャフトシールなどとして使用することができる。
【0155】
上記化学プラント等の化学品分野、医薬品等の薬品分野においては、高度の耐薬品性が要求されるような工程、たとえば、医薬品、農薬、塗料、樹脂等の化学品を製造する工程に用いることができる。
【0156】
上記化学品分野及び薬品分野における具体的な使用形態としては、化学装置、化学薬品用ポンプや流量計、化学薬品用配管、熱交換器、農薬散布機、農薬移送ポンプ、ガス配管、燃料電池、分析機器や理化学機器(たとえば、分析機器や計器類のカラム・フィッティングなど)、排煙脱硫装置の収縮継ぎ手、硝酸プラント、発電所タービン等に用いられるシールや、医療用滅菌プロセスに用いられるシール、メッキ液用シール、製紙用ベルトのコロシール、風洞のジョイントシール;反応機、攪拌機等の化学装置、分析機器や計器類、ケミカルポンプ、ポンプハウジング、バルブ、回転計等に用いられるO-リングや、メカニカルシール用O-リング、コンプレッサーシーリング用のO-リング;高温真空乾燥機、ガスクロマトグラフィーやpHメーターのチューブ結合部等に用いられるパッキンや、硫酸製造装置のガラス冷却器パッキン;ダイアフラムポンプ、分析機器や理化学機器等に用いられるダイアフラム;分析機器、計器類に用いられるガスケット;分析機器や計器類に用いられるはめ輪(フェルール);バルブシート;Uカップ;化学装置、ガソリンタンク、風洞等に用いられるライニングや、アルマイト加工槽の耐食ライニング;メッキ用マスキング冶具のコーティング;分析機器や理化学機器の弁部品;排煙脱硫プラントのエキスパンジョンジョイント;濃硫酸等に対する耐酸ホース、塩素ガス移送ホース、耐油ホース、ベンゼンやトルエン貯槽の雨水ドレンホース;分析機器や理化学機器等に用いられる耐薬品性チューブや医療用チューブ;繊維染色用の耐トリクレン用ロールや染色用ロール;医薬品の薬栓;医療用のゴム栓;薬液ボトル、薬液タンク、バッグ、薬品容器;耐強酸、耐溶剤の手袋や長靴等の保護具などが挙げられる。
【0157】
上記現像機等の写真分野、印刷機械等の印刷分野、塗装設備等の塗装分野においては、乾式複写機のロール、ベルト、シール、弁部品等として用いることができる。
【0158】
上記写真分野、印刷分野及び塗装分野における具体的な使用形態としては、複写機の転写ロールの表面層、複写機のクリーニングブレード、複写機のベルト;複写機、プリンター、ファクシミリ等のOA機器用のロール(たとえば、定着ロール、圧着ロール、加圧ロールなどが挙げられる。)、ベルト;PPC複写機のロール、ロールブレード、ベルト;フィルム現像機、X線フィルム現像機のロール;印刷機械の印刷ロール、スクレーパー、チューブ、弁部品、ベルト;プリンターのインキチューブ、ロール、ベルト;塗布、塗装設備の塗装ロール、スクレーパー、チューブ、弁部品;現像ロール、グラビアロール、ガイドロール、磁気テープ製造塗工ラインのガイドロール、磁気テープ製造塗工ラインのグラビアロール、コーティングロールなどが挙げられる。
【0159】
上記食品プラント機器及び家庭用品を含む食品機器分野においては、食品製造工程や、食品移送器用または食品貯蔵器用に用いることができる。
【0160】
上記食品機器分野における具体的な使用形態としては、プレート式熱交換器のシール、自動販売機の電磁弁シール、ジャーポットのパッキン、サニタリーパイプパッキン、圧力鍋のパッキン、湯沸器シール、熱交換器用ガスケット、食品加工処理装置用のダイアフラムやパッキン、食品加工処理機用ゴム材料(たとえば、熱交換器ガスケット、ダイアフラム、O-リング等の各種シール、配管、ホース、サニタリーパッキン、バルブパッキン、充填時にビンなどの口と充填剤との間のジョイントとして使用される充填用パッキン)などが挙げられる。また、酒類、清涼飲料水等の製品、充填装置、食品殺菌装置、醸造装置、湯沸し器、各種自動食品販売機等に用いられるパッキン、ガスケット、チューブ、ダイアフラム、ホース、ジョイントスリーブなども挙げられる。
【0161】
上記原子力プラント機器分野においては、原子炉周辺の逆止弁や減圧弁、六フッ化ウランの濃縮装置のシールなどに用いることができる。
【0162】
上記一般工業分野における具体的な使用形態としては、工作機械、建設機械、油圧機械等の油圧機器用シール材;油圧、潤滑機械のシールやベアリングシール;マンドレル等に用いられるシール材;ドライクリーニング機器の窓等に用いられるシール;サイクロトロンのシールや(真空)バルブシール、プロトン加速器のシール、自動包装機のシール、空気中の亜硫酸ガスや塩素ガス分析装置(公害測定器)用ポンプのダイアフラム、スネークポンプライニング、印刷機のロールやベルト、搬送用のベルト(コンベアベルト)、鉄板等の酸洗い用絞りロール、ロボットのケーブル、アルミ圧延ライン等の溶剤絞りロール、カプラーのO-リング、耐酸クッション材、切削加工機械の摺動部分のダストシールやリップゴム、生ごみ焼却処理機のガスケット、摩擦材、金属またはゴムの表面改質剤、被覆材などが挙げられる。また、製紙プロセスで用いられる装置のガスケットやシール材、クリーンルーム用フィルターユニットのシーリング剤、建築用シーリング剤、コンクリートやセメント等の保護コーティング剤、ガラスクロス含浸材料、ポリオレフィンの加工助剤、ポリエチレンの成形性改良添加剤、小型発電機や芝刈機等の燃料容器、金属板にプライマー処理を施すことによって得られるプレコートメタルなどとしても使用することができる。その他、織布に含浸させて焼付けてシート及びベルトとして使用することもできる。
【0163】
上記鉄鋼分野における具体的な使用形態としては、鉄板加工設備の鉄板加工ロールなどが挙げられる。
【0164】
上記電気分野における具体的な使用形態としては、新幹線の絶縁油キャップ、液封型トランスのベンチングシール、変圧器のシール、油井ケーブルのジャケット、電気炉等のオーブンのシール、電子レンジの窓枠シール、CRTのウェッジとネックとを接着させる際に用いられるシール材、ハロゲンランプのシール材、電気部品の固定剤、シーズヒーターの末端処理用シール材、電気機器リード線端子の絶縁防湿処理に用いられるシール材などが挙げられる。また、耐油・耐熱電線、高耐熱性電線、耐薬品性電線、高絶縁性電線、高圧送電線、ケーブル、地熱発電装置に用いられる電線、自動車エンジン周辺に用いられる電線等の被覆材に用いることもできる。車両用ケーブルのオイルシールやシャフトシールに用いることもできる。更には、電気絶縁材料(たとえば、各種電気機器の絶縁用スペーサ、ケーブルのジョイントや末端部などに用いる絶縁テープ、熱収縮性のチューブなどに使用される材料)や、高温雰囲気で用いられる電気および電子機器材料(たとえば、モータ用口出線材料、高熱炉まわりの電線材料)にも使用可能である。また、太陽電池の封止層や保護フィルム(バックシート)にも使用できる。
【0165】
上記燃料電池分野においては、固体高分子形燃料電池、リン酸塩型燃料電池等における、電極間、電極-セパレーター間のシール材や、水素、酸素、生成水等の配管のシールやパッキン、セパレーターなどとして用いることができる。
【0166】
上記電子部品分野においては、放熱材原料、電磁波シールド材原料、コンピュータのハードディスクドライブ(磁気記録装置)用のガスケット等に用いることができる。また、ハードディスクドライブの緩衝ゴム(クラッシュストッパー)、ニッケル水素二次電池の電極活物質のバインダー、リチウムイオン電池の活物質のバインダー、リチウム二次電池のポリマー電解質、アルカリ蓄電池の正極の結着剤、EL素子(エレクトロルミネセンス素子)のバインダー、コンデンサーの電極活物質のバインダー、封止剤、シーリング剤、光ファイバーの石英の被覆材、光ファイバー被覆材等のフィルムやシート類、CMOS電子回路、トランジスタ、集積回路、有機トランジスタ、発光素子、アクチュエータ、メモリ、センサ、コイル、コンデンサー、抵抗等の電子部品、回路基板のポッティングやコーティングや接着シール、電子部品の固定剤、エポキシ等の封止剤の変性剤、プリント基板のコーティング剤、エポキシ等のプリント配線板プリプレグ樹脂の変性材、電球等の飛散防止材、コンピュータ用ガスケット、大型コンピュータ冷却ホース、二次電池、特にリチウム二次電池用のガスケットやO-リング等のパッキン、有機EL構造体の外表面の片面または両面を覆う封止層、コネクター、ダンパーなどとしても用いられる。
【0167】
上記化学薬品輸送用機器分野においては、トラック、トレーラー、タンクローリー、船舶等の安全弁や積出しバルブなどに用いることができる。
【0168】
上記石油、ガス等のエネルギー資源探索採掘機器部品分野においては、石油、天然ガス等の採掘の際に用いられる各種シール材、油井に使われる電気コネクターのブーツなどとして用いられる。
【0169】
上記エネルギー資源探索採掘機器部品分野における具体的な使用形態としては、ドリルビットシール、圧力調整ダイアフラム、水平掘削モーター(ステーター)のシール、ステーターベアリング(シャフト)シール、暴噴防止装置(BOP)に用いられるシール材、回転暴噴防止装置(パイプワイパー)に用いられるシール材、MWD(リアルタイム掘削情報探知システム)に用いられるシール材や気液コネクター、検層装置(ロギングエクイップメント)に用いられる検層ツールシール(たとえば、O-リング、シール、パッキン、気液コネクター、ブーツなど)、膨張型パッカーやコンプリーションパッカー及びそれらに用いるパッカーシール、セメンチング装置に用いられるシールやパッキン、パーフォレーター(穿孔装置)に用いられるシール、マッドポンプに用いられるシールやパッキンやモーターライニング、地中聴検器カバー、Uカップ、コンポジションシーティングカップ、回転シール、ラミネートエラストメリックベアリング、流量制御のシール、砂量制御のシール、安全弁のシール、水圧破砕装置(フラクチャリングエクイップメント)のシール、リニアーパッカーやリニアーハンガーのシールやパッキン、ウェルヘッドのシールやパッキン、チョークやバルブのシールやパッキン、LWD(掘削中検層)用シール材、石油探索・石油掘削用途で用いられるダイアフラム(たとえば、石油掘削ピットなどの潤滑油供給用ダイアフラム)、ゲートバルブ、電子ブーツ、穿孔ガンのシールエレメントなどが挙げられる。
【0170】
その他、厨房、浴室、洗面所等の目地シール;屋外テントの引き布;印材用のシール;ガスヒートポンプ用ゴムホース、耐フロン性ゴムホース;農業用のフィルム、ライニング、耐候性カバー;建築や家電分野等で使用されるラミネート鋼板等のタンク類などにも用いることができる。
【0171】
更には、アルミ等の金属と結合させた物品として使用することも可能である。そのような使用形態としては、たとえば、ドアシール、ゲートバルブ、振り子バルブ、ソレノイド先端の他、金属と結合されたピストンシールやダイアフラム、金属ガスケット等の金属と結合された金属ゴム部品などが挙げられる。
【0172】
また、自転車におけるゴム部品、ブレーキシュー、ブレーキパッドなどにも用いることができる。
【0173】
また、成形品は、ベルトへの適用が可能である。
【0174】
ベルトとしては、次のものが例示される。動力伝達ベルト(平ベルト、Vベルト、Vリブドベルト、歯付きベルトなどを含む)、搬送用ベルト(コンベアベルト)として、農業用機械、工作機械、工業用機械等のエンジン周りなど各種高温となる部位に使用される平ベルト;石炭、砕石、土砂、鉱石、木材チップなどのバラ物や粒状物を高温環境下で搬送するためのコンベアベルト;高炉等の製鉄所などで使用されるコンベアベルト;精密機器組立工場、食品工場等において、高温環境下に曝される用途におけるコンベアベルト;農業用機械、一般機器(たとえば、OA機器、印刷機械、業務用乾燥機等)、自動車用などのVベルトやVリブドベルト;搬送ロボットの伝動ベルト;食品機械、工作機械の伝動ベルトなどの歯付きベルト;自動車用、OA機器、医療用、印刷機械などで使用される歯付きベルトなどが挙げられる。
【0175】
特に、自動車用歯付きベルトとしては、タイミングベルトが代表的である。
【0176】
上記ベルトは、単層構造であってもよいし、多層構造であってもよい。
【0177】
多層構造である場合、上記ベルトは、フッ素ゴム架橋用組成物を架橋して得られる層及び他の材料からなる層からなるものであってもよい。
【0178】
多層構造のベルトにおいて、他の材料からなる層としては、他のゴムからなる層や熱可塑性樹脂からなる層、各種繊維補強層、帆布、金属箔層などが挙げられる。
【0179】
成形品はまた、産業用防振パッド、防振マット、鉄道用スラブマット、パッド類、自動車用防振ゴムなどに使用できる。自動車用防振ゴムとしては、エンジンマウント用、モーターマウント用、メンバマウント用、ストラットマウント用、ブッシュ用、ダンパー用、マフラーハンガー用、センターベアリング用などの防振ゴムが挙げられる。
【0180】
また、他の使用形態として、フレキシブルジョイント、エキスパンションジョイント等のジョイント部材、ブーツ、グロメットなどが挙げられる。船舶分野であれば、たとえばマリンポンプ等が挙げられる。
【0181】
ジョイント部材とは、配管および配管設備に用いられる継ぎ手のことであり、配管系統から発生する振動、騒音の防止、温度変化、圧力変化による伸縮や変位の吸収、寸法変動の吸収や地震、地盤沈下による影響の緩和、防止などの用途に用いられる。
【0182】
フレキシブルジョイント、エキスパンションジョイントは、たとえば、造船配管用、ポンプやコンプレッサーなどの機械配管用、化学プラント配管用、電気配管用、土木・水道配管用、自動車用などの複雑形状成形体として好ましく用いることができる。
ブーツは、たとえば、等速ジョイントブーツ、ダストカバー、ラックアンドピニオンステアリングブーツ、ピンブーツ、ピストンブーツなどの自動車用ブーツ、農業機械用ブーツ、産業車両用ブーツ、建築機械用ブーツ、油圧機械用ブーツ、空圧機械用ブーツ、集中潤滑機用ブーツ、液体移送用ブーツ、消防用ブーツ、各種液化ガス移送用ブーツなどの各種産業用ブーツなどの複雑形状成形体として好ましく用いることができる。
【0183】
成形品は、フィルタープレス用ダイアフラム、ブロワー用ダイアフラム、給水用ダイアフラム、液体貯蔵タンク用ダイアフラム、圧力スイッチ用ダイアフラム、アキュムレーター用ダイアフラム、サスペンション等の空気ばね用ダイアフラムなどにも使用できる。
【0184】
成形品をゴムや樹脂に添加することにより、雨、雪、氷や汗等の水に濡れる環境下において滑りにくい成形品やコーティング被膜を得る滑り防止剤が得られる。
【0185】
また、成形品は、たとえば、メラミン樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂等による化粧合板、プリント基板、電気絶縁板、硬質ポリ塩化ビニル積層板等を製造する際の熱プレス成形用クッション材としても用いることができる。
【0186】
成形品は、その他、兵器関連の封止ガスケット、侵襲性化学剤との接触に対する保護衣服のような各種支持体の不浸透性化に寄与することもできる。
【0187】
また、自動車、船舶などの輸送機関などに使われるアミン系添加剤(特に酸化防止剤、清浄分散剤として用いられるアミン系添加剤)が含まれる潤滑油(エンジンオイル、ミッションオイル、ギヤーオイルなど)や燃料油、グリース(特にウレア系グリース)をシール、封止するために使われるO(角)-リング、V-リング、X-リング、パッキン、ガスケット、ダイアフラム、オイルシール、ベアリングシール、リップシール、プランジャーシール、ドアシール、リップおよびフェースシール、ガスデリバリープレートシール、ウエハサポートシール、バレルシールその他の各種シール材等に用いることができ、チューブ、ホース、各種ゴムロール、コーティング、ベルト、バルブの弁体などとしても使用できる。また、ラミネート用材料、ライニング用材料としても使用できる。
【0188】
自動車等の内燃機関のトランスミッション油及び/又はエンジン油に接触しその油温及び/又は油圧を検出するセンサーのリード電線などに使用される耐熱耐油性電線の被覆材料や、オートマチック・トランスミッションやエンジンのオイルパン内等の高温油雰囲気中においても使用することが可能である。
【0189】
その他、成形品に加硫被膜を形成させて使用する場合がある。具体的には、複写機用非粘着耐油ロール、耐候結氷防止用ウェザーストリップ、輸液用ゴム栓、バイアルゴム栓、離型剤、非粘着軽搬送ベルト、自動車エンジンマウントのプレーガスケットの粘着防止被膜、合成繊維の被覆加工、パッキング被覆薄層をもつボルト部材または継ぎ手等の用途が挙げられる。
【0190】
なお、成形品の自動車関連部品用途については、同様の構造の自動二輪車の部品用途も含まれる。
【0191】
また、上記自動車関連における燃料としては、軽油、ガソリン、ディーゼルエンジン用燃料(バイオディーゼルフューエルを含む)などが挙げられる。
【0192】
成形品はまた、転がり軸受用シール部材にも使用できる。
【0193】
上記転がり軸受としては、玉軸受、ころ軸受、軸受ユニット、リニア軸受等が挙げられる。
【0194】
玉軸受としては、ラジアル玉軸受、スラスト玉軸受、スラストアンギュラ玉軸受等が挙げられる。
【0195】
上記ラジアル玉軸受としては、深溝玉軸受、アンギュラ玉軸受、4点接触玉軸受、自動調心玉軸受等が挙げられる。
【0196】
上記深溝玉軸受は、たとえば、電動機、家庭用電気製品、OA機器等に用いられる。
【0197】
上記アンギュラ玉軸受には、単列アンギュラ玉軸受、組み合わせアンギュラ玉軸受、複列アンギュラ玉軸受等が挙げられ、単列アンギュラ玉軸受は、電動機、家庭用電気製品、OA機器等や、ラジアル荷重の他にアキシアル荷重がかかる油圧ポンプ、縦型ポンプ等に用いられる。組み合わせアンギュラ玉軸受は、軸の回転精度の向上や剛性アップが求められる工作機械の主軸、研削スピンドル等に用いられる。複列アンギュラ玉軸受は、自動車のエアコン用電磁クラッチ等に用いられる。
【0198】
上記4点接触玉軸受は、両方向からのアキシアル荷重がかかり、軸受幅のスペースを大きくとれない減速機等に用いられる。
【0199】
上記自動調心玉軸受は、軸とハウジングの心合せが困難な個所や軸がたわみやすい伝動軸等に用いられる。
【0200】
上記スラスト玉軸受には、単式スラスト玉軸受、複式スラスト玉軸受があり、これらの玉軸受が使用される従来公知の用途に適用可能である。
【0201】
上記スラストアンギュラ玉軸受は、工作機械の主軸のアキシアル荷重受けとして、複列円筒ころ軸受と組み合わせて用いられる。
【0202】
上記ころ軸受としては、ラジアルころ軸受、スラストころ軸受等が挙げられる。
【0203】
上記ラジアルころ軸受としては、円筒ころ軸受、針状ころ軸受、円すいころ軸受、自動調心ころ軸受が挙げられる。
【0204】
上記円筒ころ軸受は、一般機械、工作機械、電動機、減速機、鉄道用車軸、航空機等に用いられる。
【0205】
針状ころ軸受は、一般機械、自動車、電動機等に用いられる。
【0206】
円すいころ軸受は、工作機械、自動車用及び鉄道用車軸、圧延機、減速機等に用いられる。
【0207】
自動調心ころ軸受は、一般機械、圧延機、製紙機械、車軸等に用いられる。
【0208】
上記スラストころ軸受としては、スラスト円筒ころ軸受、スラスト針状ころ軸受、スラスト円すいころ軸受、スラスト自動調心ころ軸受等が挙げられる。
【0209】
スラスト円筒ころ軸受は、工作機械、一般機械等に用いられる。
【0210】
スラスト針状ころ軸受は、自動車、ポンプ、一般機械等に用いられる。
【0211】
スラスト円すいころ軸受は、一般機械、圧延機等に用いられる。
【0212】
スラスト自動調心ころ軸受は、クレーン、押出機、一般機械等に用いられる。
【0213】
フッ素ゴム架橋用組成物は、架橋して成形品として使用する以外にも、種々の工業分野において各種部品として使用することもできる。そこで次に、フッ素ゴム架橋用組成物の用途について説明する。
【0214】
フッ素ゴム架橋用組成物は、金属、ゴム、プラスチック、ガラスなどの表面改質材;メタルガスケット、オイルシールなど、耐熱性、耐薬品性、耐油性、非粘着性が要求されるシール材および被覆材;OA機器用ロール、OA機器用ベルトなどの非粘着被覆材、またはブリードバリヤー;織布製シートおよびベルトへの含浸、焼付による塗布などに用いることができる。
【0215】
フッ素ゴム架橋用組成物は、高粘度、高濃度にすることによって、通常の用法により複雑な形状のシール材、ライニング、シーラントとして用いることができ、低粘度にすることによって、数ミクロンの薄膜フィルムの形成に用いることができ、また中粘度にすることによりプレコートメタル、O-リング、ダイアフラム、リードバルブの塗布に用いることができる。
【0216】
さらに、織布や紙葉の搬送ロールまたはベルト、印刷用ベルト、耐薬品性チューブ、薬栓、ヒューエルホースなどの塗布にも用いることができる。
【0217】
フッ素ゴム架橋用組成物により被覆する物品基材としては、鉄、ステンレス鋼、銅、アルミニウム、真鍮などの金属類;ガラス板、ガラス繊維の織布及び不織布などのガラス製品;ポリプロピレン、ポリオキシメチレン、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリスルホン、ポリエーテルサルホン、ポリエーテルエーテルケトンなどの汎用および耐熱性樹脂の成形品および被覆物;SBR、ブチルゴム、NBR、EPDMなどの汎用ゴム、およびシリコーンゴム、フッ素ゴムなどの耐熱性ゴムの成形品および被覆物;天然繊維および合成繊維の織布および不織布;などを使用することができる。
【0218】
フッ素ゴム架橋用組成物から形成される被覆物は、耐熱性、耐溶剤性、潤滑性、非粘着性が要求される分野で使用でき、具体的な用途としては、複写機、プリンター、ファクシミリなどのOA機器用のロール(たとえば、定着ロール、圧着ロール)および搬送ベルト;シートおよびベルト;O-リング、ダイアフラム、耐薬品性チューブ、燃料ホース、バルブシール、化学プラント用ガスケット、エンジンガスケットなどが挙げられる。
【0219】
フッ素ゴム架橋用組成物はまた、溶剤に溶解し、塗料、接着剤として使用できる。また、乳化分散液(ラテックス)として、塗料としても使用できる。
【0220】
フッ素ゴム架橋用組成物は、各種装置、配管等のシール材やライニング、金属、セラミックス、ガラス、石、コンクリート、プラスチック、ゴム、木材、紙、繊維等の無機及び有機基材からなる構造物の表面処理剤等として使用される。
【0221】
フッ素ゴム架橋用組成物は、ディスペンサー方式塗装やスクリーン印刷塗装により基材等に塗布することができる。
【0222】
フッ素ゴム架橋用組成物は、フィルムを流延するため、またはファブリック、プラスチック、金属、またはエラストマーのような基材を浸漬するための塗料組成物として使用されてもよい。
【0223】
特に、フッ素ゴム架橋用組成物は、ラテックスの形態として、被覆ファブリック、保護手袋、含浸繊維、O-リング被覆、燃料系クイック連結O-リング用被覆、燃料系シール用被覆、燃料タンクロールオーバーバルブダイヤフラム用被覆、燃料タンク圧力センサーダイヤフラム用被覆、オイルフィルターおよび燃料フィルターシール用被覆、燃料タンクセンダーシールおよびセンダーヘッドフィッテングシール用被覆、複写機定着機構ロール用被覆、並びにポリマー塗料組成物を製造するために使用されてもよい。
【0224】
それらはシリコーンラバー、ニトリルラバー、および他のエラストマーの被覆に有用である。その熱安定性と同様に基材エラストマーの耐透過性および耐薬品性の両方を高める目的のために、それらはそのようなエラストマーから製造される部品の被覆にも有用である。他の用途は、熱交換器、エキスパンジョンジョイント、バット、タンク、ファン、煙道ダクトおよび他の管路、並びに収納構造体、たとえばコンクリート収納構造体用の被覆を含む。フッ素ゴム架橋用組成物は、多層部品構造の露出した断面に、たとえばホース構造およびダイアフラムの製造方法において塗布されてもよい。接続部および結合部におけるシーリング部材は、硬質材料からしばしば成り、そしてフッ素ゴム架橋用組成物は、改良された摩擦性界面、シーリング面に沿って低減された微量の漏れを伴う高められた寸法締りばめを提供する。そのラテックスは、種々の自動車システム用途におけるシール耐久性を高める。
【0225】
それらは、パワーステアリング系統、燃料系統、エアーコンディショニング系統、並びに、ホースおよびチューブが別の部品に接続されるいかなる結合部の製造においても使用されることもできる。フッ素ゴム架橋用組成物のさらなる有用性は、3層燃料ホースのような多層ラバー構造における、製造欠陥(および使用に起因する損傷)の補修においてである。フッ素ゴム架橋用組成物は、塗料が塗布される前または後に、形成され、またはエンボス加工され得る薄鋼板の塗布にも有用である。たとえば、被覆された鋼の多数の層は組み立てられて、2つの剛性金属部材の間にガスケットを作ることもできる。シーリング効果は、その層の間にフッ素ゴム架橋用組成物を塗布することにより得られる。このプロセスは、組み立てられた部品のボルト力およびひずみを低下させ、一方、低い亀裂、たわみ、および穴ひずみにより良好な燃料節約および低放出を提供する目的のために、エンジンヘッドガスケットおよび排気マニフォールドガスケットを製造するために使用され得る。
【0226】
フッ素ゴム架橋用組成物は、その他、コーティング剤;金属、セラミック等の無機材料を含む基材にディスペンサー成形してなる基材一体型ガスケット、パッキン類;金属、セラミック等の無機材料を含む基材にコーティングしてなる複層品などとしても使用することができる。
【0227】
フッ素ゴム架橋用組成物は、軽くて曲げられる電子機器の配線材料としても好適で、公知の電子部品に使用することできる。CMOS電子回路、トランジスタ、集積回路、有機トランジスタ、発光素子、アクチュエータ、メモリ、センサ、コイル、コンデンサー、抵抗等の電子部品が挙げられる。これを用いることにより、太陽電池、各種ディスプレイ、センサ、アクチュエータ、電子人工皮膚、シート型スキャナー、点字ディスプレイ、ワイヤレス電力伝送シート等のフレキシブルな電子機器が得られる。
【0228】
以上、実施形態を説明したが、特許請求の範囲の趣旨および範囲から逸脱することなく、形態や詳細の多様な変更が可能なことが理解されるであろう。
【0229】
<1> 本開示の第1の観点によれば、
フッ素ゴム(a)、添加剤(b)、脱フッ化水素剤(c)、架橋剤(d)、有機パーオキサイド(e)、および、共架橋剤(f)を含有し、
添加剤(b)が、
銀化合物および銅化合物からなる群より選択される少なくとも1種であり、
架橋剤(d)が、
少なくとも1のヒドロキシ基を有する化合物(d1)、
化合物(d1)のオニウム塩、
化合物(d1)のアルカリ金属塩、
化合物(d1)のアルカリ土類金属塩、および、
化合物(d1)とカルボン酸とから誘導されるエステル
からなる群より選択される少なくとも1種である
フッ素ゴム架橋用組成物が提供される。
<2> 本開示の第2の観点によれば、
添加剤(b)が、銀化合物である第1の観点によるフッ素ゴム架橋用組成物が提供される。
<3> 本開示の第3の観点によれば、
添加剤(b)が、酸化銀(I)および酸化銀(II)からなる群より選択される少なくとも1種である第1または第2の観点によるフッ素ゴム架橋用組成物が提供される。
<4> 本開示の第4の観点によれば、
添加剤(b)が、銅化合物である第1の観点によるフッ素ゴム架橋用組成物が提供される。
<5> 本開示の第5の観点によれば、
添加剤(b)が、酸化銅(I)および酸化銅(II)からなる群より選択される少なくとも1種である第1または第2の観点によるフッ素ゴム架橋用組成物が提供される。
<6> 本開示の第6の観点によれば、
添加剤(b)の含有量が、フッ素ゴム(a)100質量部に対し、0.1~10質量部である第1~第5のいずれかの観点によるフッ素ゴム架橋用組成物が提供される。
<7> 本開示の第7の観点によれば、
フッ素ゴム(a)が、ビニリデンフルオライド単位を含む第1~第6のいずれかの観点によるフッ素ゴム架橋用組成物が提供される。
<8> 本開示の第8の観点によれば、
フッ素ゴム(a)が、パーオキサイド架橋可能なフッ素ゴムである第1~第7のいずれかの観点によるフッ素ゴム架橋用組成物が提供される。
<9> 本開示の第9の観点によれば、
フッ素ゴム(a)が、ヨウ素原子を有する第1~第8のいずれかの観点によるフッ素ゴム架橋用組成物が提供される。
<10> 本開示の第10の観点によれば、
脱フッ化水素剤(c)が、第4級アンモニウム塩および第4級ホスホニウム塩からなる群より選択される少なくとも1種である第1~第9のいずれかの観点によるフッ素ゴム架橋用組成物が提供される。
<11> 本開示の第11の観点によれば、
架橋剤(d)が、化合物(d1)および化合物(d1)のオニウム塩からなる群より選択される少なくとも1種である第1~第10のいずれかの観点によるフッ素ゴム架橋用組成物が提供される。
<12> 本開示の第12の観点によれば、
架橋剤(d)の含有量が、フッ素ゴム(a)100質量部に対し、0.1~10質量部である第1~第11のいずれかの観点によるフッ素ゴム架橋用組成物が提供される。
<13> 本開示の第13の観点によれば、
有機パーオキサイド(e)の含有量が、フッ素ゴム(a)100質量部に対し、0.05~10質量部である第1~第12のいずれかの観点による記載のフッ素ゴム架橋用組成物が提供される。
<14> 本開示の第14の観点によれば、
共架橋剤(f)が、パーオキサイド架橋用共架橋剤である第1~第13のいずれかの観点によるフッ素ゴム架橋用組成物が提供される。
<15> 本開示の第15の観点によれば、
共架橋剤(f)が、トリアリルイソシアヌレートである第1~第14のいずれかの観点によるフッ素ゴム架橋用組成物が提供される。
<16> 本開示の第16の観点によれば、
共架橋剤(f)の含有量が、フッ素ゴム(a)100質量部に対し、0.1~10質量部である第1~第15のいずれかの観点によるフッ素ゴム架橋用組成物が提供される。
<17> 本開示の第17の観点によれば、
受酸剤(g)をさらに含有し、受酸剤(g)の含有量が、フッ素ゴム(a)100質量部に対し、0.1~50質量部である第1~第16のいずれかの観点によるフッ素ゴム架橋用組成物が提供される。
<18> 本開示の第18の観点によれば、
第1~第17のいずれかの観点によるフッ素ゴム架橋用組成物から得られる成形品が提供される。
【実施例0230】
つぎに本開示の実施形態について実施例をあげて説明するが、本開示はかかる実施例のみに限定されるものではない。
【0231】
実施例の各数値は以下の方法により測定した。
【0232】
<フッ素ゴムの単量体組成>
19F-NMR(Bruker社製AC300P型)を用いて測定した。
【0233】
<フッ素含有率>
19F-NMRにて測定されたフッ素ゴムの組成から計算によって求めた。
【0234】
<ムーニー粘度>
ASTM D1646-15およびJIS K6300-1:2013に準拠して測定した。測定温度は100℃である。
【0235】
<ガラス転移温度(Tg)>
示差走査熱量計(メトラー・トレド社製、DSC822e、もしくは、日立ハイテクサイエンス社製、X-DSC7000)を用い、試料10mgを20℃/分で昇温することによりDSC曲線を得て、DSC曲線の二次転移前後のベースラインの延長線と、DSC曲線の変曲点における接線との交点を示す温度をガラス転移温度とした。
【0236】
<融解熱>
示差走査熱量計(メトラー・トレド社製、DSC822e、もしくは、日立ハイテクサイエンス社製、X-DSC7000)を用い、試料10mgを20℃/分で昇温することによりDSC曲線を得て、DSC曲線において現われた融解ピーク(ΔH)の大きさから融解熱を算出した。
【0237】
<ヨウ素含有量>
Na2CO3とK2CO3とを1対1(重量比)で混合し、得られた混合物を純水20mlに溶解することにより、吸収液を調製した。試料(フッ素ゴム)12mgにNa2SO3を5mg混ぜて混合物を調製し、石英製のフラスコ中、酸素中で燃焼させ、発生した燃焼ガスを吸収液に導入した。得られた吸収液を30分間放置した後、吸収液中のヨウ素イオンの濃度を、島津20Aイオンクロマトグラフを用いて測定した。ヨウ素イオン0.5ppmを含むKI標準溶液および1.0ppmを含むKI標準溶液を用いて作成した検量線を用いて、ヨウ素イオンの含有量を決定した。
【0238】
<架橋特性(最大トルク(MH)、最適架橋時間(T90))>
フッ素ゴム架橋用組成物について、一次架橋時に加硫試験機(エムアンドケー社製 MDR H2030)を用いて、各表に記載の温度で架橋曲線を求め、トルクの変化より、最大トルク(MH)および最適架橋時間(T90)を求めた。最大トルク(MH)が大きいほど、架橋密度が高いことを意味する。
【0239】
<引張強さおよび切断時伸び>
厚さ2mmの架橋シートを用いて、ダンベル6号形状の試験片を作製した。得られた試験片および引張試験機(エー・アンド・デイ社製テンシロンRTG-1310)を使用して、JIS K6251:2010に準じて、500mm/分の条件下、23℃における引張強さおよび切断時伸びを測定した。
【0240】
<硬さ>
厚さ2mmの架橋シートを3枚重ねて、JIS K6251-3:2012に準じて、デュロメータ硬さ(タイプA、ピーク値)を測定した。
【0241】
<圧縮永久歪み>
圧縮永久歪み測定用小形試験片を用いて、JIS K6262:2013のA法に準じて、圧縮率25%、試験温度200℃、試験時間72時間で測定した。
【0242】
実施例および比較例では、以下の材料を用いた。
フッ素ゴムA:
フッ化ビニリデン/ヘキサフルオロプロピレンのモル比:78/22
フッ素含有率:66%
ムーニー粘度(ML1+10(100℃)):60
ガラス転移温度:-18℃
融解熱:セカンドランでは認めず
ヨウ素含有量 0.17質量%
【0243】
MTカーボン(N2SA:8m2/g、DBP:43ml/100g)
架橋剤A:ビスフェノールAF
架橋剤B:3’,5’-ジヒドロキシアセトフェノン
脱フッ化水素剤A:ベンジルジメチルオクタデシルアンモニウムクロリド91質量%とイソプロピルアルコール9質量%との混合物
共架橋剤A:トリアリルイソシアヌレート
有機パーオキサイドA:2,5-ジメチルー2,5-ビス(t-ブチルパーオキシ)ヘキサン
水酸化カルシウム
酸化マグネシウム
酸化銀(I):富士フイルム和光純薬株式会社より入手
酸化銅(I):富士フイルム和光純薬株式会社より入手
酸化銅(II):富士フイルム和光純薬株式会社より入手
酸化銀(II):富士フイルム和光純薬株式会社より入手
【0244】
実施例1~10、比較例1~3
各表に記載の処方に従って、各実施例および各比較例の成分を配合し、オープンロール上で混練りして、フッ素ゴム架橋用組成物を調製した。得られたフッ素ゴム架橋用組成物の最大トルク(MH)および最適架橋時間(T90)を各表に示す。次に、各表に記載の条件の一次架橋(プレス架橋)、および、各表に記載の条件の二次架橋(オーブン架橋)により、フッ素ゴム架橋用組成物を架橋させ、架橋シート(厚さ2mm)および圧縮永久歪み測定用小形試験片を得た。得られた架橋シートの評価結果および圧縮永久歪み試験の結果を各表に示す。
【0245】
【0246】
【0247】