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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024157897
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】管理装置及び管理方法
(51)【国際特許分類】
   G01J 5/48 20220101AFI20241031BHJP
   G01N 25/18 20060101ALI20241031BHJP
【FI】
G01J5/48 C
G01N25/18 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023072550
(22)【出願日】2023-04-26
(71)【出願人】
【識別番号】000191009
【氏名又は名称】新東工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】前田 晃毅
(72)【発明者】
【氏名】藪田 詳時
(72)【発明者】
【氏名】草野 公一
【テーマコード(参考)】
2G040
2G066
【Fターム(参考)】
2G040AA08
2G040AB08
2G040AB12
2G040BA15
2G040BA28
2G040CA02
2G040DA06
2G040GA01
2G040HA01
2G040HA05
2G040ZA05
2G066AC09
2G066BC15
2G066CA02
2G066CA04
2G066CA16
(57)【要約】
【課題】配管の内部に堆積物が存在しているか否かを管理するための管理装置及び管理方法を実現する。
【解決手段】管理装置(1)は、プロセッサ(11)を備えている。プロセッサ(11)は、赤外線カメラを備える無人飛行装置(2)から配管が被写体として含まれる熱画像を取得する取得処理と、前記配管の区間毎の温度情報を、前記取得処理において取得した熱画像を参照して特定する特定処理と、前記特定処理において特定した前記温度情報の履歴を示す履歴情報を、前記配管の区間毎に生成する生成処理と、を実行する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
赤外線カメラを備える無人飛行装置から配管が被写体として含まれる熱画像を取得する取得処理と、
前記配管の区間毎の温度情報を、前記取得処理において取得した熱画像を参照して特定する特定処理と、
前記特定処理において特定した前記温度情報の履歴を示す履歴情報を、前記配管の区間毎に生成する生成処理と、を実行する少なくとも1つのプロセッサを備えている、
ことを特徴とする管理装置。
【請求項2】
前記生成処理において、前記プロセッサは、前記履歴情報を、前記配管の区間の各々に対応する位置情報を関連付けて記録する、
ことを特徴とする請求項1に記載の管理装置。
【請求項3】
前記プロセッサは、前記生成処理において生成した、各区間に対応する履歴情報に基づいて、該区間に堆積物が存在しているか否かを推定する推定処理をさらに実行する、ことを特徴とする請求項1に記載の管理装置。
【請求項4】
前記特定処理において、前記プロセッサは、前記配管の各区間を複数の領域に分割し、
前記複数の領域の各々の温度情報を、前記取得処理において取得した熱画像を参照して特定する、
ことを特徴とする請求項1に記載の管理装置。
【請求項5】
前記取得処理において、前記プロセッサは、可視光カメラをさらに備える無人飛行装置から当該可視光カメラで撮像した可視光画像を取得し、前記熱画像及び前記可視光画像を表示する、
ことを特徴とする請求項1に記載の管理装置。
【請求項6】
前記プロセッサは、前記配管に沿って飛行するように指示する信号を前記無人飛行装置に送信し、当該無人飛行装置の飛行を制御する、
ことを特徴とする請求項1に記載の管理装置。
【請求項7】
前記プロセッサは、前記配管のメインテナンスを促すために、前記履歴情報を含む検査結果を前記配管のユーザが管理する端末に表示させる、
ことを特徴とする請求項1に記載の管理装置。
【請求項8】
少なくとも1つのプロセッサが、赤外線カメラを備える無人飛行装置から配管が被写体として含まれる熱画像を取得する取得処理と、
前記プロセッサが、前記配管の区間毎の温度情報を、前記取得処理において取得した熱画像を参照して特定する特定処理と、
前記プロセッサが、前記特定処理において特定した前記温度情報の履歴を示す履歴情報を生成する生成処理と、を含んでいる、
ことを特徴とする管理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工場等の施設において、配管を管理するための管理装置及び管理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
工場等の施設において、配管の内部に堆積物(例えば、ダスト)が存在している場合、火災、粉塵爆発等の重大な事故に繋がる危険性がある。そのため、配管の内部に堆積物が存在しているか否かを検査することは非常に重要である。配管の内部に堆積物が存在しているか否かを検査する技術としては、例えば、特許文献1に記載の技術が知られている。特許文献1に記載の技術では、ユーザが赤外線カメラで配管を撮像した撮像画像から当該配管の温度分布を色相の違いで示した熱画像を取得し、周囲と異なる色相の部分がある場合は、その部分に堆積物が存在していると判定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2022-86489号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のような技術は、ユーザによって撮像された撮像画像に含まれている配管の内部に堆積物が存在しているか否かを判定するため、局所的な配管の検査には適しているが、工場等施設内の配管全体を網羅的に点検する場合には、かなりの手間であるため適していない。また、熱画像の色相の違いに基づいて判定をしているため、堆積物が少なく、周囲との温度差が小さい場合には、判定が困難である。
【0005】
本発明の一態様は、上記の問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、工場等施設内の配管全体を網羅的に点検し、かつ、より精度高く堆積物の存在している位置を特定する管理装置を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る管理装置は、取得処理と、特定処理と、生成処理とを実行するプロセッサを備えている。また、本発明の一態様に係る管理方法は、取得処理と、特定処理と、生成処理とを含んでいる。ここで、取得処理は、プロセッサが赤外線カメラを備える無人飛行装置から配管が被写体として含まれる熱画像を取得する処理である。特定処理は、前記配管の区間毎の温度情報を、前記取得処理において取得した熱画像を参照して特定する処理である。生成処理は、前記特定処理において特定した前記温度情報の履歴を示す履歴情報を、前記配管の区間毎に生成する処理である。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一態様によれば、堆積物が存在している配管を特定し、且つ、その配管の位置情報をユーザに通知する管理装置及び管理方法を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の一実施形態に係る管理システムの構成を示す模式図である。
図2図1に示す管理システムに含まれる管理装置の構成を示すブロック図である。
図3図2に示す管理装置が実施する管理方法の流れを示すフローチャートである。
図4】管理装置に表示される表示画像の一例を示す図である。
図5図1に示す管理システムの使用例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の一実施形態について図1図5を参照して説明する。
【0010】
本明細書において、「配管」とは、その内部を流れる流体を運ぶものであり、例えば、鉄鋼プラント等の建物内で空調、換気、排煙等の目的で設備される。また、「熱画像」とは、温度範囲の上限値及び下限値を設定し、その温度範囲内で被写体の温度分布を色で示した画像である。また、「温度情報」とは、熱画像から取得する配管の表面温度である。
【0011】
(管理システムの構成)
本発明の一実施形態に係る管理システムSについて、図1を参照して説明する。図1は、管理システムSの構成を示す模式図である。
【0012】
管理システムSは、工場等の施設において、配管を管理するためのシステムである。一般的に、配管の表面温度は、配管の内部を流れる流体からの熱伝達により変動する。そのため、配管の内部に堆積物が存在している場合には、流体から配管の内壁への熱伝達が妨げられることにより、堆積物が存在する内壁に対向する配管の表面及び当該表面の周辺の温度が下がる傾向にある。管理システムSでは、無人飛行装置2が取得した熱画像の温度情報を特定し、記録した履歴情報に基づいて配管Dの内部に堆積物が存在しているか否かを検査する。
【0013】
管理システムSは、図1に示すように、管理装置1と無人飛行装置2とを含んでいる。無人飛行装置2は、ネットワークを介し管理装置1と通信可能に構成されている。
【0014】
無人飛行装置2は、赤外線カメラを備え、当該赤外線カメラで撮像した撮像画像から熱画像を取得し、管理装置1に送信する。一例として、無人飛行装置2は、コントローラ21から受信するユーザUa(例えば、配管を点検する者)の入力操作を示す指示信号に基づいて、管理システムSを使用する施設(例えば、工場)内の配管Dに沿って飛行しながら、赤外線カメラの撮像範囲FAに含まれる配管Dを撮像する。また、撮像した画像に基づいて配管Dが被写体として含まれる熱画像を取得し、管理装置1に送信する。無人飛行装置2として使用可能なデバイスとしては、ドローンが挙げられる。なお、本実施形態において、無人飛行装置2は、ユーザUaのコントローラ21に対する入力操作に基づいて飛行するが、これに限定されない。例えば、無人飛行装置2に予め記憶される配管Dの配置情報に基づいて自律飛行してもよいし、管理装置1の制御により飛行してもよい。管理装置1の制御により飛行する場合には、後述する管理装置1のプロセッサ11が配管Dに沿って飛行するように指示する信号を無人飛行装置2に送信し、無人飛行装置2は、その信号に基づいて飛行する。なお、管理装置1が送信する信号は、管理装置1を操作するユーザUbの入力操作に基づいてもよいし、管理装置1に予め記憶される配管Dの配置情報に基づいてもよい。
【0015】
管理装置1は、管理システムSを使用する施設外に配置される。一例として、管理装置1は、管理システムSを使用する施設内の配管の販売業者のもとに配置される。管理装置1は、無人飛行装置2から配管Dが被写体として含まれる熱画像を取得すると、当該熱画像を参照して配管Dの区間毎の温度情報の履歴を示す履歴情報を生成する。また、当該履歴情報に基づいて配管Dの各区間に堆積物が存在しているか否かを推定し、堆積物が存在する区間がある場合には、その区間の位置情報を含む情報を表示部16に表示することによりユーザUb(例えば、配管の販売・管理業者)に通知する。本実施形態においては、管理装置1として、管理システムSを使用する施設外(例えば、管理システムSを使用する施設内の配管の販売業者のもと)に配置されるノート型PC(Personal Computer)を想定するが、これに限定されない。例えば、管理システムSを使用する施設内に配置されるデスクトップPC、ノート型PC、タブレットPC、又はスマートフォン等を管理装置1としてもよい。
(管理装置の構成)
管理装置1の構成について、図2を参照して説明する。図2は、管理装置1の構成を示すブロック図である。
【0016】
管理装置1は、図2に示すように、プロセッサ11と、一次メモリ12と、二次メモリ13と、通信インタフェース14と、バス15と、を備えている。プロセッサ11、一次メモリ12、二次メモリ13、及び通信インタフェース14は、バス15を介して相互に接続されている。
【0017】
二次メモリ13には、管理プログラムPが格納されている。プロセッサ11は、二次メモリ13に格納されている管理プログラムPを一次メモリ12上に展開する。そして、プロセッサ11は、一次メモリ12上に展開された管理プログラムPに含まれる命令に従って、後述する管理方法M1に含まれる各処理を実行する。プロセッサ11として利用可能なデバイスとしては、例えば、CPU(Central Processing Unit)を挙げることができる。また、一次メモリ12として利用可能なデバイスとしては、例えば、半導体RAM(Random Access Memory)を挙げることができる。また、二次メモリ13として利用可能なデバイスとしては、例えば、HDD(Hard Disk Drive)を挙げることができる。
【0018】
通信インタフェース14は、ネットワークを介して無人飛行装置2と通信を行うためのインタフェースである。通信インタフェース14として利用可能なインタフェースとしては、例えば、イーサネット(登録商標)インタフェースが挙げられる。また、利用可能なネットワークとしては、PAN(Personal Area Network)、LAN(Local Area Network)、CAN(Campus Area Network)、MAN(Metropolitan Area Network)、WAN(Wide Area Network)、GAN(Global Area Network)、又は、これらのネットワークを含むインターネットワークが挙げられる。インターネットワークは、イントラネットであってもよいし、エクストラネットであってもよいし、インターネットであってもよい。
【0019】
なお、プロセッサ11に管理方法M1を実行させるための管理プログラムPは、コンピュータ読み取り可能な一時的でない有形の記録媒体に記録され得る。この記録媒体は、二次メモリ13であってもよいし、その他の記録媒体であってもよい。例えば、テープ、ディスク、カード、半導体メモリ、プログラマブル論理回路等がその他の記録媒体として利用可能である。
【0020】
また、本実施形態においては、単一のプロセッサ(プロセッサ11)を用いて管理方法M1を実行する構成を採用しているが、本発明はこれに限定されない。すなわち、複数のプロセッサを用いて管理方法M1を実行する構成を採用してもよい。この場合、管理方法M1を実行する複数のプロセッサは、単一のコンピュータに設けられ、バスを介して相互に通信可能に構成されてもよいし、複数のコンピュータに分散して設けられ、ネットワークを介して相互に通信可能に構成されていてもよい。例えば、クラウドサーバを構成する複数のコンピュータの各々が備えるプロセッサが連携して管理方法M1を実行する態様や、管理装置1のプロセッサ11と無人飛行装置2またはコントローラ21のプロセッサとが連携して管理方法M1を実行する態様等も考えられる。
【0021】
(管理方法の流れ)
管理装置1が実施する管理方法M1の流れについて、図3を参照して説明する。図3は、管理方法M1の流れを示すフローチャートである。
【0022】
管理方法M1は、図3に示すように、取得処理M11と、特定処理M12と、生成処理M13と、推定処理M14と、通知処理M15とを含んでいる。管理方法M1がこれらの処理を実行するタイミングは、任意に設定され得る。例えば、無人飛行装置2から配管Dが被写体として含まれる熱画像を受信する度に実行してもよいし、無人飛行装置2が飛行を終了したことを管理装置1が検出したタイミングで実行してもよい。
【0023】
取得処理M11は、配管Dが被写体として含まれる熱画像を取得するための処理である。取得処理M11において、管理装置1のプロセッサ11は、無人飛行装置2から受信した配管Dが被写体として含まれる熱画像を取得する。一例として、管理装置1のプロセッサ11は、無人飛行装置2が配管Dに沿って飛行しながら取得した配管Dの各区間ΔD1~ΔDn(nは2以上の任意の自然数とする)が被写体として含まれる熱画像を取得する。
【0024】
なお、配管Dの各区間ΔD1~ΔDnは、任意に設定することができる。各区間ΔD1~ΔDnの設定方法としては、無人飛行装置2に基づいて設定する方法と人為的に設定する方法とが挙げられる。より詳細に説明すると、無人飛行装置2に基づいて設定する方法では、無人飛行装置2が飛行する所定の距離(例えば、1m)毎に撮像した配管Dを各区間ΔD1~ΔDnとしたり、無人飛行装置2が飛行する所定の時間(例えば、1秒)毎に撮像した配管Dを各区間ΔD1~ΔDnとしたりする。所定の距離及び所定の時間は任意に設定し得る。この場合、無人飛行装置2は、所定の距離毎又は所定の時間毎に熱画像を取得し、管理装置1に送信する。人為的に設定する方法では、ユーザUa又はユーザUbが配管Dの各区間D1~Dnを設定し、配管D上にQRコード(登録商標)やARマーカーでラベリングする。無人飛行装置2は、配管D上に配置された各区間D1~Dnを示すQRコード(登録商標)やARマーカーを読み取ることで各区間D1~Dnを把握して区間毎の熱画像を取得し、管理装置1に送信する。
【0025】
また、取得処理M11において、管理装置1のプロセッサ11は、可視光カメラをさらに備える無人飛行装置2から当該可視光カメラで撮像した可視光画像を取得してもよく、無人飛行装置2から取得した熱画像及び可視光画像、又は熱画像と可視光画像とを重畳した検出画像を表示部16に表示させてもよい。
【0026】
取得処理M11において無人飛行装置2から受信する熱画像は、当該無人飛行装置2が備える赤外線カメラで撮像した赤外線画像に基づいて作成されたものである。なお、熱画像において表現される温度の上限値Tw+及び下限値Tw-は、例えば、以下の何れかの方法により定めることができる。
方法1:赤外線画像に含まれる各画素の示す温度の最高温度を上限値Tw+とし、最低温度を下限値Tw-とする。
方法2:ユーザUaが指定した最高温度を上限値Tw+とし、最低温度を下限値Tw-とする。
方法3:下記の式に従って設定する。なお、下記の式において、Twは、温度範囲であり、T1は、施設内の温度(気温)であり、T2は、赤外線画像に被写体として含まれる配管の任意の点における温度である。また、k、A、B、C及びDは、予め定められた係数である。
Tw=k×A×(T2-T1)+C・・・(1)
Tw+=T2+D×Tw ・・・(2)
Tw-=T2-(1-D)×Tw ・・・(3)
【0027】
特定処理M12は、配管Dの各区間ΔD1~ΔDnの温度情報を特定するための処理である。特定処理M12において、管理装置1のプロセッサ11は、取得処理M11において無人飛行装置2から取得した配管Dの区間毎の熱画像を参照して当該区間毎の温度情報を取得する。例えば、無人飛行装置2から取得した配管Dの各区間ΔD1~ΔDnに対応する熱画像が1つの場合、すなわち、配管Dの各区間ΔD1~ΔDn全体を被写体として含む熱画像である場合には、当該熱画像の中心部に対応する各画素の温度を温度情報として特定する。各区間に対応する熱画像が複数ある場合には、各熱画像の中心部に対応する各画素の温度の平均値を温度情報として特定する。
【0028】
また、特定処理M12において、管理装置1のプロセッサ11は、取得処理M11において無人飛行装置2から取得した配管Dの各区間ΔD1~ΔDnの熱画像を複数の領域に分割して、各領域の温度情報を取得してもよい。一例として、管理装置1のプロセッサ11は、熱画像において被写体として含まれる配管Dの各区間ΔD1~ΔDnを当該各区間ΔD1~ΔDn内部の流体の流れる方向に対して平行な方向に3分割して、各領域の温度情報を取得する。ここで各領域の温度情報は、各領域の中心部に対応する熱画像の各画素の温度とする。なお、配管Dの各区間ΔD1~ΔDnの熱画像の分割数及び分割方法は、限定されるものではなく任意に決定することができる。
【0029】
生成処理M13は、配管Dの各区間ΔD1~ΔDnの温度情報の履歴を示す履歴情報を生成する(更新する)ための処理である。生成処理M13において、管理装置1のプロセッサ11は、古い履歴情報に、特定処理M12において特定された配管Dの各区間ΔD1~ΔDnの温度情報を追加することによって新たな履歴情報を生成する。プロセッサ11は、配管Dの検査を実施する時期毎に履歴情報を生成してもよい。例えば、1年を3か月毎に分け、12月~2月に検査したときの履歴情報、3月~5月に検査したときの履歴情報、6月~8月に検査したときの履歴情報、9月~11月に検査したときの履歴情報のように所定の期間毎に履歴情報を生成してもよいし、各月毎に履歴情報を生成してもよい。これにより、施設内の温度(気温)による温度情報への影響を考慮した検査を実施することができる。また、管理装置1のプロセッサ11は、配管Dの各区間ΔD1~ΔDnの履歴情報を当該各区間ΔD1~ΔDnの位置情報と関連付けて記録する。
【0030】
配管Dの各区間ΔD1~ΔDnの位置情報は、一例として、無人飛行装置2が配管Dの各区間ΔD1~ΔDnを撮像するときの当該無人飛行装置2の位置情報に基づいて特定する。当該無人飛行装置2の位置情報は、無人飛行装置2が備える各種センサに基づく方法、又は、電波情報に基づく方法によって特定され得る。具体例を挙げると、各種センサに基づく方法では、無人飛行装置2は、GPS(Global Positioning System)センサ、測距センサ、ジャイロセンサ、速度センサ等を備え、これらのセンサから取得した情報に基づいて自身の位置情報を特定する。電波情報に基づく方法では、無人飛行装置2は、WiFi(登録商標)のアクセスポイントから発せられる電波、又は、ビーコンが発信するBluetooth(登録商標)の電波を収集することにより自身の位置情報を特定する。このように特定した無人飛行装置2の位置情報と、配管Dの配置を示す情報(例えば、工場CAD図)と、を照合して配管Dの各区間ΔD1~ΔDnの位置情報を特定する。
【0031】
推定処理M14は、配管Dの各区間ΔD1~ΔDnに堆積物が存在しているか否かを推定するための処理である。推定処理M14において、管理装置1のプロセッサ11は、生成処理M13において生成した、配管Dの各区間ΔD1~ΔDnに対応する履歴情報に基づいて堆積物が存在しているか否かを推定する。一例として、管理装置1のプロセッサ11は、生成処理M13において新たに生成(更新)した配管Dの各区間ΔD1~ΔDnの温度情報と履歴情報に最初に記録されている配管Dの各区間ΔD1~ΔDnの温度情報とを対応する区間毎に比較し、予め設定された閾値以上の温度差が検出された場合に、当該対応する区間に堆積物が存在していると推定する。ここで予め設定された閾値とは、履歴情報に最初に記録されている温度情報を取得したときの熱画像において表現される温度範囲の上限値Tw+ならびに下限値Tw-、及び基準温度Tに基づいて設定され得る値である。すなわち、配管Dの検査を実施する時期毎に履歴情報が生成されている場合には、検査を実施する時期に対応する時期の履歴情報に、最初に記録されている温度情報を取得したときの熱画像において表現される温度範囲の上限値Tw+ならびに下限値Tw-、及び基準温度Tに基づいて設定され得る値である。なお、基準温度Tとは、当該熱画像に被写体として含まれる配管Dにおいて堆積物が存在しない位置(例えば、当該配管Dの中心部)に対応する各画素の示す温度である。
【0032】
例えば、基準温度Tから、上限値Twから下限値Tw-を減じた温度の所定割合A(例えば、25%)を基準温度Tから減算した温度を、減算した値を、正の閾値として設定する。式で表すと以下の式(4)である。なお、所定割合Aは任意に設定し得る値である。
((Tw+)-(Tw-))×A・・・(4)
【0033】
また、管理装置1のプロセッサ11は、生成処理M13により生成した履歴情報において、配管Dの各区間ΔD1~ΔDnの温度情報が検査回数の増加に伴い、低下している場合には、配管Dの対応する区間に堆積物が存在していると推定してもよい。さらに、温度情報の低下が一定の温度で止まった場合には、配管Dの対応する区間では、堆積物の堆積が進行しており清掃や交換等の対応が必要であると推定してもよい。
【0034】
なお、本実施形態においては、生成処理M13において生成(更新)した履歴情報に基づいて配管Dの各区間ΔD1~ΔDnにおいて堆積物が存在しているか否かを推定するが、本発明はこれに限定されない。例えば、推定処理M14は、取得処理M11において無人飛行装置2から取得した配管Dの各区間D1~Dnの熱画像において、顕著な色相の変化が生じている場合に対応する区間において堆積物が存在していると推定してもよい。
【0035】
通知処理M15は、配管Dの検査結果をユーザUbに通知するための処理である。通知処理M15において、管理装置1のプロセッサ11は、検査結果を示す表示画像を管理装置1の表示部16に表示する。一例として、表示画像には、生成処理M13において生成される履歴情報が含まれている。なお、当該表示画像に含まれる情報は限定されるものではなく、上述した各処理に関連するすべての情報を含み得る。また、当該表示画像は、管理装置1の表示部16に加えて、管理システムSを使用する施設内においてユーザUaが操作するコントローラ21に表示されてもよい。
【0036】
(表示例)
検査結果をユーザUbに通知するために管理装置1の表示部16に表示される検査結果を示す表示画像の具体例について、図4を参照して説明する。図4は、検査結果を示す表示画像の一具体例を示す図である。
【0037】
図4に示すように、検査結果を示す表示画像には、生成処理M13において生成される履歴情報として配管Dの各区間ΔD1~ΔDnの温度情報と位置情報とが関連付けられた履歴情報の一覧表と、推定処理M14において、堆積物が存在していると推定された区間を示す図とが表示されてもよい。なお、図4に示す履歴情報の一覧表においては、一例として、管理システムSを使用する施設の工場CAD図に記載されている配管の識別番号を位置情報としている。
【0038】
図4に示すように、履歴情報の一覧表では、検査回数が増えるとともに配管Dの区間ΔD2の表面温度が低下している。したがって、配管Dの区間ΔD2には、堆積物が存在していると推定される。また、4回目以降の検査において区間ΔD2の温度が60.0℃から変化しないときには、配管Dの区間ΔD2において堆積物の堆積が進行していると推定される。この場合、配管Dの区間ΔD2において清掃や交換が必要であると判断してもよい。
【0039】
(管理システムの効果)
上述のように、管理システムSは、管理方法M1を実行することにより、配管Dを区間D1~Dnに区切って網羅的に検査できる。また、各区間D1~Dnを複数の領域に分割することでより精度高く検査することができる。さらに、管理装置1は、管理方法M1を繰り返し実施することで、配管Dにおいて特に堆積物が溜まりやすい位置等の傾向を把握することができ、清掃口を適切な位置に設けたり、適切な点検頻度を見出したり等の策を講じて火災や粉塵爆発等の事故を未然に防ぐことができる。
【0040】
(管理システムの使用例)
上述した管理システムSの一使用例(以下、「管理システムS1」と記載する)について、図5を参照して説明する。図5は、管理システムS1の概要を示す模式図である。
【0041】
管理システムS1は、図5に示すように、管理システムSにユーザ端末3をさらに含む構成である。ユーザ端末3は、管理装置1とネットワークを介して相互に通信可能に構成されている。
【0042】
管理装置1のプロセッサ11は、上述した管理方法M1の各処理を実行し、配管Dのメインテナンスを促すために、生成処理M13において生成された配管Dの各区間ΔD1~ΔDnの温度情報と位置情報とが関連付けられた履歴情報を含む検査結果を示す表示画像をユーザ端末3のディスプレイに表示する。表示画像には、一例として、上述した履歴情報の他に、堆積物が存在していると推定された配管Dの区間と対応する位置にマークを付した配管Dの配置を示す情報(例えば、工場CAD図)、メインテナンスの必要性を訴えるメッセージ、堆積物が存在していると推定された配管Dの区間の検出画像等が含まれていてもよく、当該表示画像に含まれる情報は適宜ユーザUbが選択することができる。
【0043】
ユーザ端末3は、管理システムS1を使用する施設外に配置される。一例として、ユーザ端末3は、管理システムS1を使用する施設の管理者であるユーザUcが管理する端末である。本実施形態においては、ユーザ端末3として、管理システムS1を使用する施設外(例えば、管理システムS1を使用する施設の管理者のもと)に配置されるタブレットPC(Personal Computer)を想定するが、これに限定されない。例えば、管理システムS1を使用する施設内に配置されるデスクトップPC、ノート型PC、又はスマートフォン等をユーザ端末3としてもよい。
【0044】
上述のように、メインテナンスを促すために、配管Dの各区間ΔD1~ΔDnの温度情報と位置情報とが関連付けられた履歴情報を含む検査結果をユーザ端末3に表示する管理システムS1は、検査結果に基づいた配管Dの清掃、交換、又は、新しい装置の導入を提案するビジネスモデルにも適用することができる。
【0045】
(付記事項)
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【0046】
(まとめ)
【0047】
本発明の態様1に係る管理装置は、赤外線カメラを備える無人飛行装置から配管が被写体として含まれる熱画像を取得する取得処理と、前記配管の区間毎の温度情報を、前記取得処理において取得した熱画像を参照して特定する特定処理と、前記特定処理において特定した前記温度情報の履歴を示す履歴情報を、前記配管の区間毎に生成する生成処理と、を実行する少なくとも1つのプロセッサを備えている。
【0048】
上記の構成によれば、工場等の施設内における配管を網羅的に検査することができ、かつ、履歴情報に基づくため精度高く検査することができる。
【0049】
本発明の態様2に係る管理装置は、上記態様1において、前記生成処理において、前記プロセッサは、前記履歴情報を、前記配管の区間の各々に対応する位置情報を関連付けて記録する。
【0050】
上記の構成によれば、配管の区間の各々と位置情報が関連付けられているので、各区間が配管のどこを示しているかをユーザが把握できる。
【0051】
本発明の態様3に係る管理装置は、上記態様1又は2において、前記プロセッサは、前記生成処理において生成した、各区間に対応する履歴情報に基づいて、該区間に堆積物が存在しているか否かを推定する推定処理をさらに実行する。
【0052】
上記の構成によれば、配管の内部に堆積物が存在するか否かを各区間の温度情報の変化に基づいて精度高く推定することができる。
【0053】
本発明の態様4に係る管理装置は、上記態様1~3の何れか1項において、前記特定処理において、前記プロセッサは、前記配管の各区間を複数の領域に分割し、前記複数の領域の各々の温度情報を、前記取得処理において取得した熱画像を参照して特定する。
【0054】
上記の構成によれば、各区間の複数の領域の各々において堆積物が存在しているか否かを推定することができる。これにより、清掃口を適切な位置に設ける等その他の用途に供することができる。
【0055】
本発明の態様5に係る管理装置は、上記態様1~4の何れか1項において、前記取得処理において、前記プロセッサは、可視光カメラをさらに備える無人飛行装置から当該可視光カメラで撮像した可視光画像を取得し、前記熱画像及び前記可視光画像を表示する。
【0056】
上記の構成によれば、管理装置の表示部に熱画像、可視光画像、及び熱画像と可視光画像を重畳した検出画像を表示することができる。これにより、ユーザは、配管の内部の状況を確認することができる。
【0057】
本発明の態様6に係る管理装置は、上記態様1~5の何れか1項において、前記プロセッサは、前記配管に沿って飛行するように指示する信号を前記無人飛行装置に送信し、当該無人飛行装置の飛行を制御する。
【0058】
上記の構成によれば、管理装置が検査対象である配管が設置されている工場等施設内にない場合でも遠隔から無人飛行装置を制御することができる。
【0059】
本発明の態様7に係る管理装置は、上記態様1~6の何れか1項において、前記プロセッサは、前記配管のメインテナンスを促すために、前記履歴情報を含む検査結果を前記配管のユーザが管理する端末に表示させる。
【0060】
上記の構成によれば、管理装置は、配管の内部に堆積物が存在しているか否かを示す検査結果をユーザに示すことができる。これによりユーザに配管の清掃や交換を提案する等の他の用途に供することができる。
【0061】
本発明の態様8に係る管理方法は、少なくとも1つのプロセッサが、赤外線カメラを備える無人飛行装置から配管が被写体として含まれる熱画像を取得する取得処理と、前記プロセッサが前記熱画像に被写体として含まれる配管の所定区間ごとの温度情報を特定する特定処理と、前記プロセッサが、前記特定処理において特定した前記温度情報の履歴を示す履歴情報を生成する生成処理と、を含んでいる。
【0062】
上記の構成によれば、態様1と同様の効果を奏する。
【符号の説明】
【0063】
1 管理装置
2 無人飛行装置
3 ユーザ端末
11 プロセッサ
12 一次メモリ
13 二次メモリ
14 通信インタフェース
15 バス
16 表示部
21 コントローラ
図1
図2
図3
図4
図5