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  • 特開-梁構造 図1
  • 特開-梁構造 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024157901
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】梁構造
(51)【国際特許分類】
   E04C 3/20 20060101AFI20241031BHJP
   E04C 5/02 20060101ALI20241031BHJP
【FI】
E04C3/20
E04C5/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023072558
(22)【出願日】2023-04-26
(71)【出願人】
【識別番号】000003621
【氏名又は名称】株式会社竹中工務店
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】橋本 慎太郎
(72)【発明者】
【氏名】山下 真吾
(72)【発明者】
【氏名】黒川 雄太
【テーマコード(参考)】
2E163
2E164
【Fターム(参考)】
2E163FA12
2E163FD48
2E164AA02
2E164AA21
(57)【要約】
【課題】貫通孔による梁の耐力の低下を抑制できる梁構造を提供する。
【解決手段】梁構造は、鉄筋コンクリート製の梁12と、梁12を正面視して、梁12を貫通する円筒状の仮想の貫通領域30を上下又は左右に区画する補強筋50と、貫通領域30内の補強筋50によって区画された場所にそれぞれ配置された、少なくとも2本のシース管20と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄筋コンクリート製の梁と、
前記梁を正面視して、前記梁を貫通する円筒状の仮想の貫通領域を上下又は左右に区画する補強筋と、
前記貫通領域内の前記補強筋によって区画された場所にそれぞれ配置された、少なくとも2本のシース管と、
を備えた梁構造。
【請求項2】
前記補強筋は、前記梁を正面視して、前記貫通領域を上下及び左右に分断する十字状に配筋され、前記シース管は前記補強筋によって区画された4つの場所にそれぞれ配置されている、
請求項1に記載の梁構造。
【請求項3】
前記補強筋及び前記シース管が配置された前記貫通領域が複数設けられ、前記貫通領域の中心間距離は、前記貫通領域の直径の3倍以上である、
請求項1又は2に記載の梁構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、梁構造に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、鉄筋コンクリート造の梁において梁中央部に上下梁主筋を繋ぐウエブプレートを入れ、コンクリートの強度を補強した鉄筋コンクリート造の梁筋補強工法が記載されている。このウエブプレートにはスリーブ貫通孔が設けられているため、梁にダクト用スリーブを通すことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005-163508号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に示されたように、梁に貫通孔を設けると、梁を形成するコンクリートに断面欠損が生じる。このため、貫通孔の大きさや間隔には制約を設けることが一般的である。多くの貫通孔を形成すると、貫通孔の間隔を十分に確保することが難しい。
【0005】
しかし、例えば共同住宅における共用部の廊下など、設備配線や配管を多く配置するために、多くの貫通孔を形成したいという需要がある。多くの貫通孔を形成するためには、貫通孔による梁の耐力の低下を抑制することが好ましい。
【0006】
本発明は、上記事実を考慮し、貫通孔による梁の耐力の低下を抑制できる梁構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1の梁構造は、鉄筋コンクリート製の梁と、前記梁を正面視して、前記梁を貫通する円筒状の仮想の貫通領域を上下又は左右に区画する補強筋と、前記貫通領域内の前記横断筋によって区画された場所にそれぞれ配置された、少なくとも2本のシース管と、を備える。
【0008】
請求項1の梁構造では、少なくとも2本のシース管が、梁を貫通する円筒状の仮想の貫通領域に配置される。この貫通領域には補強筋が配置され、補強筋によって区画された場所にそれぞれシース管が配置されている。
【0009】
このため、補強筋がない場合と比較して、シース管によって形成される貫通孔による貫通領域内の耐力低下が抑制される。また、少なくとも2本のシース管が、貫通領域に配置される。これにより、それぞれのシース管が貫通領域の内外に配置される場合と比較して、貫通領域外の耐力低下が抑制される。
【0010】
さらに、補強筋によって、貫通領域内においてシース管の周囲に充填されたコンクリートのひび割れを抑制できる。これにより、例えば梁を基礎梁としてもシース管周りの止水性を確保することができる。
【0011】
請求項2の梁構造は、請求項1に記載の梁構造において、前記補強筋は、前記梁を正面視して、前記貫通領域を上下及び左右に分断する十字状に配筋され、前記シース管は前記補強筋によって区画された4つの場所にそれぞれ配置されている。
【0012】
請求項2の梁構造では、4つのシース管を近接して配置できる。このため、間隔を確保しつつ4つのシース管を配置する場合と比較して、シース管が分散されず、梁の配筋が容易である。
【0013】
請求項3の梁構造は、請求項1又は2に記載の梁構造において、前記補強筋及び前記シース管が配置された前記貫通領域が複数設けられ、前記貫通領域の中心間距離は、前記貫通領域の直径の3倍以上である。
【0014】
請求項3の梁構造では、シース管がまとめて配置される貫通領域が複数ある場合でも、それぞれの領域が間隔を空けて配置され、かつ、補強筋によって補強されているため、梁の耐力が低下し難い。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、貫通孔による梁の耐力の低下を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】(A)は本発明の実施形態に係る梁構造を示す立面図であり、(B)は梁内部における貫通領域の補強構造を示す立面図である。
図2】(A)は補強筋の配置の変形例を示す立面図であり、(B)は別の変形例を示す立面図である。
図3】比較例に係る梁構造を示す立面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態に係る梁構造について、図面を参照しながら説明する。各図面において同一の符号を用いて示される構成要素は、同一の構成要素であることを意味する。但し、明細書中に特段の断りが無い限り、各構成要素は一つに限定されず、複数存在してもよい。
【0018】
また、各図面において重複する構成及び符号については、説明を省略する場合がある。なお、本開示は以下の実施形態に限定されるものではなく、本開示の目的の範囲内において構成を省略する、異なる構成と入れ替える、一実施形態及び各種の変形例を組み合わせて用いる等、適宜変更を加えて実施することができる。
【0019】
各図面において矢印X、Yで示す方向は水平面に沿う方向であり、互いに直交している。また、矢印Zで示す方向は鉛直方向(上下方向)に沿う方向である。各図において矢印X、Y、Zで示される各方向は、互いに一致するものとする。
【0020】
<梁構造>
(シース管、貫通領域)
図1(A)には、本発明の実施形態に係る梁構造が示されている。この梁構造においては、鉄筋コンクリート製の梁12を、複数のシース管20が貫通している。シース管20は、設備配線や配管などを通すための金属製のチューブである。
【0021】
この梁構造が適用される梁12が建物のどの位置の梁かは特に限定されるものではないが、例えば、梁12は共同住宅の共用廊下部分の基礎梁とすることができる。
【0022】
シース管20は、貫通領域30に複数本まとめて配置されている。貫通領域30は、梁12を、梁12の延設方向(X方向)と直交する方向(Y方向)に貫通する、円筒状の仮想領域である。
【0023】
「仮想領域」とは、梁12に便宜的に設けた境界(図1(A)、(B)に2点鎖線で示した境界線)によって策定される領域であることを示している。梁12には、貫通領域30の内外を分断する管体などは配置されていない。
【0024】
梁12の側面を正面視して、貫通領域30は複数箇所設けられている。また、それぞれの貫通領域30には、複数のシース管20がまとめて配置されている。より具体的には、それぞれの貫通領域30には、3本または4本のシース管20が配置されている。なお、本発明において、貫通領域30には、少なくとも2本のシース管20が配置されるものとする。
【0025】
図1(B)に示す貫通領域30の直径D1は特に限定されるものではないが、配置されるシース管20の大きさに応じて適宜決定される。但し、貫通領域30には、少なくとも2本のシース管20が配置されるので、貫通領域30の直径D1は、シース管20の直径の2倍より大きい。
【0026】
また、複数のシース管20を集約して配置する観点から、貫通領域30の直径D1は、シース管20の直径の4倍以下とすることが好ましい。また、直径D1は、シース管20の直径の3倍以下とすることがさらに好ましい。複数のシース管20の直径が異なる場合は、直径D1は、これらの直径の平均値の4倍以下、3倍以下とする。
【0027】
直径D1を小さくすることにより、図1(A)に示すように貫通領域30の間隔(中心点の間隔)D2と直径D1との割合(D2/D1)を大きくすることができる。本実施形態においては、この割合(D2/D1)は、3以上とされている。すなわち、貫通領域30の間隔D2は、貫通領域30の直径D1の3倍以上である。複数の貫通領域30の直径が異なる場合は、直径D1として平均値を用いる。
【0028】
(開口補強筋)
図1(B)に示すように、貫通領域30の周囲には補強筋40が配筋されている。補強筋40は、複数のシース管20をまとめて取り囲む開口補強鉄筋である。補強筋40の配置は特に限定されるものではないが、仮に貫通領域30にコンクリートが打設されていない場合でも、梁12が構造上必要な耐力を確保できるように配筋される。
【0029】
なお、耐力確保の観点から、補強筋40を鋼板に代えてもよい。補強筋40を鋼板とする場合、当該鋼板には、直径D1以上の貫通孔を形成する。あるいは、補強筋40に代えて又は加えて、梁12を形成するコンクリートを繊維補強コンクリートとしてもよい。
【0030】
(ひび割れ補強筋)
貫通領域30には補強筋50が配筋されている。補強筋50は、梁12を正面視して、貫通領域30を上下及び左右に分断する鉄筋であり、十字状に配筋されたひび割れ補強筋である。貫通領域30を上下に分断する補強筋50Aは、左右の端部がそれぞれ貫通領域の外側に配置されている。また、貫通領域30を左右に分断する補強筋50Bは、上下の端部がそれぞれ貫通領域の外側に配置されている。
【0031】
補強筋50A、50Bは、貫通領域30の中心Oを通るように配置されている。シース管20は、補強筋50A及び50Bによって区画された4つの場所にそれぞれ配置されている。なお、シース管20と補強筋50A、50Bのそれぞれとは、間隔を開けて配置することが好ましい。これにより、補強筋50A、50Bはコンクリートによって被覆される。
【0032】
つまり、貫通領域30の直径D1は、上述したようにシース管20の直径の4倍以下又は3倍以下としつつ、補強筋50A、50Bのかぶり厚を確保できる大きさとすることが好ましい。かぶり厚としては、補強筋50A、50Bのそれぞれの周囲において所定の厚さ確保することが好ましい。「所定の厚さ」は梁12が設けられる場所に応じて適宜設定される。
【0033】
<作用及び効果>
本発明の実施形態に係る梁構造では、図1(A)に示すように、少なくとも2本のシース管20が、梁12を貫通する円筒状の仮想の貫通領域30に配置される。図1(B)に示すように、この貫通領域30にはひび割れ補強筋である補強筋50が配置され、補強筋50によって区画された場所にそれぞれシース管20が配置されている。
【0034】
このため、補強筋50がない場合と比較して、貫通領域30内の耐力が低下し難い。また、少なくとも2本のシース管20が、貫通領域30に配置される。このため、それぞれのシース管20が貫通領域30の内外に配置される場合と比較して、貫通領域外の耐力が低下し難い。
【0035】
さらに、補強筋50によって、貫通領域30内においてシース管20の周囲に充填されたコンクリートのひび割れを抑制できる。これにより、梁12を基礎梁としてもシース管20周りの止水性を確保することができる。
【0036】
また、補強筋50は、梁12を正面視して、貫通領域30を上下及び左右に分断する十字状に配筋され、シース管20は補強筋50によって区画された4つの場所の全て、又は、3つの場所にそれぞれ配置されている。このため、4つ又は3つのシース管20を、貫通領域30の内側に近接して配置できる。これにより、4つ又は3つのシース管20を、それぞれ間隔を確保して配置する場合と比較して、シース管20が分散されず、梁12の配筋が容易である。
【0037】
また、この梁構造では、貫通領域30が、周囲に配筋された開口補強筋である補強筋40により補強されている。このため、貫通領域30内に複数のシース管20を配置しても、梁12の耐力が低下し難い。また、貫通領域30を複数形成しても、梁12の耐力が低下し難い。
【0038】
また、この梁構造では、補強筋40、50及びシース管20が配置された貫通領域30が複数設けられ、貫通領域30の間隔D2は、貫通領域30の直径D1の3倍以上である。このように、貫通領域30が複数ある場合でも、それぞれの領域が間隔を空けて配置され、かつ、補強筋40及び50によって補強されているため、梁12の耐力が低下し難い。
【0039】
なお、例えば図3に示す「比較例」に係る梁構造では、シース管200が上述した貫通領域30にまとめられず、離散的に配置されている。このような配置では、シース管200の間隔D20として、シース管200の直径D10の3倍以上を確保することが難しい場合がある。また、シース管200を上下方向に離間して並べて配置する場合、梁12の断面欠損部分が上下方向に離間して複数配置されるため、梁12のせん断力設計も難しくなる。さらに、各シース管200が貫通する開口部を補強する補強筋を設ける場合は、この補強筋もシース管毎に設ける必要があり、施工の手間がかかる。
【0040】
<その他の実施形態>
上記実施形態においては、補強筋50を、貫通領域30を上下及び左右に分断する十字状に配筋し、シース管20を、補強筋50によって区画された4つ又は3つの場所にそれぞれ配置しているが、本発明の実施形態はこれに限らない。
【0041】
例えば補強筋50を十字状に配筋した場合において区画される4つの領域のうち、2つの場所のみにシース管20を配置する構成としてもよい。あるいは、シース管20が2本の場合は、図2(A)に示すように、1本の補強筋50Bを、貫通領域30を左右に分断するように配筋してもよい。同様に、1本の補強筋50A(図1(B)参照)を、貫通領域30を上下に分断するように配筋してもよい。
【0042】
また、ひび割れ補強強度を高める観点から、貫通領域30を左右に分断する補強筋50B及び貫通領域30を上下に分断する補強筋50Aの一方を2本設けてもよい。
【0043】
また、上記実施形態においては、補強筋40、50及びシース管20が配置された貫通領域30が複数設けられているが、本発明の実施形態はこれに限らない。このような貫通領域30は、梁12において1箇所のみ設けてもよい。このように、本発明は様々な態様で実施できる。
【符号の説明】
【0044】
12 梁
20 シース管
30 貫通領域
40 補強筋
50 補強筋
50A 補強筋
50B 補強筋
図1
図2
図3