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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024157908
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】発泡性エアゾール組成物
(51)【国際特許分類】
   C09K 3/30 20060101AFI20241031BHJP
   C11D 1/66 20060101ALN20241031BHJP
   C11D 3/18 20060101ALN20241031BHJP
   C11D 17/08 20060101ALN20241031BHJP
   C11D 1/72 20060101ALN20241031BHJP
   C11D 1/68 20060101ALN20241031BHJP
【FI】
C09K3/30 D
C11D1/66
C11D3/18
C11D17/08
C11D1/72
C11D1/68
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023072571
(22)【出願日】2023-04-26
(71)【出願人】
【識別番号】391021031
【氏名又は名称】株式会社ダイゾー
(74)【代理人】
【識別番号】110001896
【氏名又は名称】弁理士法人朝日奈特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】菊地 典子
(72)【発明者】
【氏名】岡野 史典
【テーマコード(参考)】
4H003
【Fターム(参考)】
4H003AC03
4H003AC08
4H003BA12
4H003BA20
4H003DA05
4H003EA31
4H003EB02
4H003ED02
4H003FA45
(57)【要約】
【課題】油性成分を配合する効果が得られやすく、起泡性および消泡性を調整することができ、原液に引火点がない発泡性エアゾール組成物を提供する。
【解決手段】原液と、溶解性圧縮ガスを含む噴射剤とからなり、原液は、油性成分と界面活性剤と水とを含み、油性成分は、引火点が100~300℃である炭化水素油を含み、界面活性剤は、HLBが13以下である非イオン性界面活性剤を含み、原液が引火点を有しない、発泡性エアゾール組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
原液と、溶解性圧縮ガスを含む噴射剤とからなり、
前記原液は、油性成分と界面活性剤と水とを含み、
前記油性成分は、引火点が100~300℃である炭化水素油を含み、
前記界面活性剤は、HLBが13以下である非イオン性界面活性剤を含み、
原液が引火点を有しない、発泡性エアゾール組成物。
【請求項2】
前記炭化水素油の含有量は、原液中、60~95質量%である、請求項1記載の発泡性エアゾール組成物。
【請求項3】
前記水の含有量は、原液中、0.01~15質量%である、請求項1または2記載の発泡性エアゾール組成物。
【請求項4】
前記界面活性剤は、ソルビタン脂肪酸エステルまたはポリオキシエチレンアルキルエーテルのうち、少なくともいずれかを含む、請求項1または2記載の発泡性エアゾール組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発泡性エアゾール組成物に関する。より詳細には、本発明は、油性成分を配合する効果が得られやすく、起泡性および消泡性を調整することができ、原液に引火点がなく非危険物である発泡性エアゾール組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、油性原液と炭酸ガスとを含有し、吐出すると発泡する発泡性エアゾール組成物が知られている。特許文献1には、液状油と界面活性剤と二酸化炭素を含む、油性泡沫性エアゾール組成物が開示されている。また、特許文献2には、油性基材とHLBが15~20のポリオキシエチレンアルキルエーテルとHLBが10以下の非イオン性界面活性剤とを含む油性原液と、噴射剤とからなる発泡性エアゾール組成物が開示されている。
【0003】
また、特定範囲の引火点を有する油性溶剤を含む原液が引火点を有しない、エアゾール組成物が知られている。特許文献3には、引火点が30~100℃である油性溶剤と沸点が25~50℃であるハイドロフルオロオレフィンとを含み、原液が引火点を有しないエアゾール組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2018-27907号公報
【特許文献2】特開2022-129038号公報
【特許文献3】特開2021-123658号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の油性泡沫性エアゾール組成物は、液状油として、炭化水素油、エステル油、油脂類、シリコーン油などの幅広い液状油が区別なく例示されている。また、液状油の配合量は、原液中60~95質量%が適当であることが開示されている。このような油性泡沫性エアゾール組成物は、原液が引火点を有する場合があり得る。また、特許文献2に記載の発泡性エアゾール組成物は、水が配合されておらず、使用態様によっては引火点を有する場合があり得る。特許文献3に記載のエアゾール組成物は、不燃性溶剤であるハイドロフルオロオレフィンを特定量含有することで、原液が引火点を有しないように構成されている。しかしながら、ハイドロフルオロオレフィンは油性溶剤に溶解しやすい。そのため、特許文献3に記載のエアゾール組成物は、発泡しにくく、ジェット状やスプレー状に噴射され、発泡させて噴射することができない。
【0006】
本発明は、このような従来の問題に鑑みてなされたものであり、油性成分を配合する効果が得られやすく、起泡性および消泡性を調整することができ、原液に引火点がない発泡性エアゾール組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決する本発明の液状組成物には、以下の構成が主に含まれる。
【0008】
(1)原液と、溶解性圧縮ガスを含む噴射剤とからなり、前記原液は、油性成分と界面活性剤と水とを含み、前記油性成分は、引火点が100~300℃である炭化水素油を含み、前記界面活性剤は、HLBが13以下である非イオン性界面活性剤を含み、原液が引火点を有しない、発泡性エアゾール組成物。
【0009】
このような構成によれば、原液は、油性成分が特定の引火点を有する炭化水素油を含んでいるにもかかわらず、水および界面活性剤が配合されているため、引火点を有しない。また、エアゾール組成物の吐出物は、発泡してフォームを形成し得る。フォームは、裸火に近づけても着火しない。そのため、エアゾール組成物は、安全性が優れる。また、発泡性エアゾール組成物は、特定の引火点を有する炭化水素を含み、溶解性圧縮ガスを配合することにより、吐出物の起泡性および消泡性を調整し得る。
【0010】
(2)前記炭化水素油の含有量は、原液中、60~95質量%である、(1)記載の発泡性エアゾール組成物。
【0011】
このような構成によれば、発泡性エアゾール組成物は、塗布した対象物上で炭化水素油の防錆性や潤滑性などの効果が得られやすい。
【0012】
(3)前記水の含有量は、原液中、0.01~15質量%である、(1)または(2)記載の発泡性エアゾール組成物。
【0013】
このような構成によれば、発泡性エアゾール組成物は、水の量が少ないにもかかわらず、原液に引火点を有しないよう構成することができ、かつ、油性成分の効果を阻害しない。
【0014】
(4)前記界面活性剤は、ソルビタン脂肪酸エステルまたはポリオキシエチレンアルキルエーテルのうち、少なくともいずれかを含む、(1)~(3)のいずれかに記載の発泡性エアゾール組成物。
【0015】
このような構成によれば、発泡性エアゾール組成物は、優れた起泡性が得られる。また、発泡性エアゾール組成物は、塗布した対象物上で防錆効果をより長く発揮し得る。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、油性成分を配合する効果が得られやすく、起泡性および消泡性を調整することができ、原液に引火点がない発泡性エアゾール組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
<発泡性エアゾール組成物>
本発明の一実施形態の発泡性エアゾール組成物は、原液と、溶解性圧縮ガスを含む噴射剤とからなる。原液は、油性成分と界面活性剤と水とを含む。油性成分は、引火点が100~300℃である炭化水素油を含む。界面活性剤は、HLBが13以下である非イオン性界面活性剤を含む。原液は、引火点を有しない。以下、それぞれについて説明する。
【0018】
(原液)
原液は、油性成分と界面活性剤と水とを含む。油性成分は、引火点が100~300℃である炭化水素油を含む。このように、本実施形態の原液は、油性成分が特定の引火点を有する炭化水素油を含んでいるにもかかわらず、引火点を有しないことを特徴とする。
【0019】
・油性成分
油性成分は、発泡性エアゾール組成物の溶剤として配合される。油性成分は、引火点が100~300℃である炭化水素油を含む。引火点が100~300℃である炭化水素油は特に限定されない。一例を挙げると、引火点が100~300℃である炭化水素油は、流動パラフィン、スクワレン、スクワラン、ノルマルパラフィン、イソパラフィン、ナフテン、ワセリン等である。これらの中でも、本実施形態の炭化水素油は、発泡性が優れる点から、引火点が120~280℃である炭化水素油を含むことが好ましい。
【0020】
本実施形態の発泡性エアゾール組成物は、このように、炭化水素油の引火点が100~300℃であることを特徴とする。また、後述するとおり、発泡性エアゾール組成物は、界面活性剤と水とを含む。これにより、原液は、高温に曝された場合であっても、引火点が100~300℃である炭化水素油が引火する前に、水の蒸気を発生し、引火を防ぐことができる。
【0021】
引火点が100~300℃である炭化水素油の含有量は特に限定されない。一例を挙げると、引火点が100~300℃である炭化水素油の含有量は、原液中、60質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましい。また、引火点が100~300℃である炭化水素油の含有量は、原液中、95質量%以下であることが好ましく、90質量%以下であることがより好ましい。引火点が100~300℃である炭化水素の含有量が上記範囲内であることにより、発泡性エアゾール組成物は、溶解性圧縮ガスにより発泡しやすく、塗布した対象物上で防錆性や潤滑性などの炭化水素油の効果が得られやすい。
【0022】
油性成分は、上記炭化水素油のほかに、シリコーン、エステル油、高級脂肪酸、油脂、ロウ、高級アルコール等が併用されてもよい。
【0023】
シリコーンは特に限定されない。一例を挙げると、シリコーンは、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサン、デカメチルポリシロキサン、テトラメチルテトラハイドロジェンポリシロキサン等である。
【0024】
エステル油は特に限定されない。一例を挙げると、エステル油は、ミリスチン酸イソプロピル、オクタン酸セチル、ミリスチン酸オクチルドデシル、パルミチン酸イソプロピル、ステアリン酸ブチル、ミリスチン酸ミリスチル、オレイン酸デシル、乳酸セチル、乳酸ミリスチル、ステアリン酸イソセチル、イソステアリン酸イソセチル、酢酸ラノリン、酢酸エチル、酢酸ブチル、オレイン酸オレイル、アジピン酸ジイソブチル、セバシン酸ジイソプロピル、セバシン酸ジオクチル、ミリスチン酸ヘキシルデシル、パルミチン酸イソセチル、アジピン酸-2-ヘキシルデシル等である。
【0025】
高級脂肪酸は特に限定されない。一例を挙げると、高級脂肪酸は、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘニン酸、オレイン酸、イソステアリン酸、リノール酸、リノレイン酸、エイコサペンタエン酸(EPA)、ドコサヘキサエン酸(DHA)等である。
【0026】
油脂は特に限定されない。一例を挙げると、油脂は、アボガド油、ツバキ油、タートル油、マカデミアナッツ油、トウモロコシ油、ミンク油、オリーブ油、ナタネ油、ゴマ油、ヒマシ油、アマニ油、サフラワー油、ホホバ油、麦芽油、ヤシ油、パーム油、硬化ヒマシ油等である。
【0027】
ロウは特に限定されない。一例を挙げると、ロウは、ミツロウ、ラノリン、酢酸ラノリン、カンデリラロウ、カルナウバロウ、鯨ロウ、モンタンロウ等である。
【0028】
高級アルコールは特に限定されない。一例を挙げると、高級アルコールは、ラウリルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、ミリスチルアルコール、オレイルアルコールなどの直鎖アルコール、ラノリンアルコール、ヘキシルドデカノール、イソステアリルアルコール、オクチルドデカノールなどの分岐鎖アルコール等である。
【0029】
油性成分の含有量は特に限定されない。一例を挙げると、油性成分の含有量は、原液中、60質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましい。また、油性成分の含有量は、原液中、97質量%以下であることが好ましく、92質量%以下であることがより好ましい。油性成分の含有量が上記範囲内であることにより、発泡性エアゾール組成物は、油性成分の効果が得られやすい。
【0030】
・界面活性剤
界面活性剤は、油性成分と水とを乳化するために配合される。本実施形態の発泡性エアゾール組成物は、HLBが13以下の非イオン性界面活性剤を含む。
【0031】
HLBが13以下の非イオン性界面活性剤は特に限定されない。一例を挙げると、HLBが13以下の非イオン性界面活性剤は、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンステロール、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステルなどのHLBが13以下の非イオン性界面活性剤であることが好ましく、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテルであることがより好ましい。界面活性剤としてソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテルが含まれることにより、発泡性エアゾール組成物は、優れた起泡性が得られる。また、発泡性エアゾール組成物は、水を含んでいるにもかかわらず、錆を生じにくくなり、防錆効果を発揮し得る。
【0032】
HLBが13以下の非イオン性界面活性剤の含有量は特に限定されない。一例を挙げると、HLBが13以下の非イオン性界面活性剤の含有量は、原液中、1質量%以上であることが好ましく、3質量%以上であることがより好ましい。また、HLBが13以下の非イオン性界面活性剤の含有量は、原液中、25質量%以下であることが好ましく、20質量%以下であることがより好ましい。HLBが13以下の非イオン性界面活性剤の含有量が上記範囲内であることにより、得られる発泡性エアゾール組成物は、塗布した対象物上での残留が少ない。
【0033】
HLBが13以下の非イオン性界面活性剤以外の界面活性剤が併用されても良い。HLBが13以下の非イオン性界面活性剤以外の界面活性剤は特に限定されない。一例を挙げると、HLBが13以下の非イオン性界面活性剤以外の界面活性剤は、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンアルキルエーテル脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステルなどのHLBが13を超える親水性の非イオン性界面活性剤、脂肪酸石鹸、アルキル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、アルキルリン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸塩などの陰イオン性界面活性剤、アルキルアンモニウム塩、ポリオキシエチレンアルキルアミンなどの陽イオン型界面活性剤;アルキルベタイン、脂肪酸アミドプロピルベタインなどの両性界面活性剤;シリコーン系界面活性剤;N-アシルグルタミン酸塩、N-アシルグルタミン酸、N-アシルグリシン塩、N-アシルアラニン塩などのアミノ酸系界面活性剤等である。
【0034】
界面活性剤の含有量は特に限定されない。一例を挙げると、界面活性剤の含有量は、原液中、1質量%以上であることが好ましく、3質量%以上であることがより好ましい。また、界面活性剤の含有量は、原液中、30質量%以下であることが好ましく、25質量%以下であることがより好ましい。界面活性剤の含有量が上記範囲内であることにより、発泡性エアゾール組成物は、発泡性や消泡性を調整しやすい。
【0035】
・水
水は特に限定されない。一例を挙げると、水は、精製水、イオン交換水、生理食塩水、海洋深層水等である。
【0036】
水の含有量は特に限定されない。一例を挙げると、水は、原液中、0.01質量%以上であることが好ましく、0.05質量%以上であることがより好ましい。また、水は、原液中、15質量%以下であることが好ましく、10質量%以下であることがより好ましい。水の含有量が上記範囲内であることにより、原液は、高温に曝された場合であっても、引火点が100~300℃である炭化水素油が引火する前に、充分な量の水の蒸気を発生し、引火を防ぐことができる。さらに、原液は、油性成分の効果を阻害しない。また、本実施形態の発泡性エアゾール組成物は、油性成分と乳化されやすい。さらに、発泡性エアゾール組成物は、吐出物の消泡性を調整しやすい。
【0037】
・任意成分
原液は、上記した油性成分、界面活性剤、水以外に、用途に応じてアルコール類、非水増粘剤、粉体、有効成分などの任意成分を含んでもよい。
【0038】
アルコール類は、発泡性や乾燥性を調整する等の目的で好適に配合される。
【0039】
アルコール類は特に限定されない。一例を挙げると、アルコール類は、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、イソブチルアルコール、t-ブチルアルコールなどの1価アルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコールなどの2価アルコール、グリセリン、トリメチロールプロパンなどの3価アルコール、ペンタエリスリトリールなどの4価アルコール、キシリトールなどの5価アルコール、ソルビトール、マンニトールなどの6価アルコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ジグリセリン、ポリエチレングリコール、トリグリセリンなどの多価アルコールの重合体等である。
【0040】
アルコール類が配合される場合、アルコール類の含有量は特に限定されない。一例を挙げると、アルコール類の含有量は、原液中、0.1質量%以上であることが好ましく、0.3質量%以上であることがより好ましい。また、アルコール類の含有量は、原液中、10質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましい。アルコール類の含有量が上記範囲内であることにより、発泡性エアゾール組成物は、原液が引火点を有さず、アルコールの効果が得られやすい。
【0041】
非水増粘剤は、原液の粘度を調節する等の目的で好適に配合される。
【0042】
非水増粘剤は特に限定されない。一例を挙げると、非水増粘剤は、スチレン、ビニルトルエン、α-メチルスチレンおよびメトキシスチレンなどの芳香族ビニルモノマーを含む芳香族炭化水素;エチレン、プロピレン、ブテン、デセン、イソプレン、ブチレン、ブタジエン、ペンタジエンなどの脂肪族アルケンを含む脂肪族炭化水素;アルキルジメチコン、ポリシリコーン、高級脂肪酸のエステル等である。
【0043】
非水増粘剤が配合される場合、非水増粘剤の含有量は特に限定されない。一例を挙げると、非水増粘剤の含有量は、原液中、0.1質量%以上であることが好ましく、0.5質量%以上であることがより好ましい。また、非水増粘剤の含有量は、原液中、5質量%以下であることが好ましく、3質量%以下であることがより好ましい。非水増粘剤の含有量が前記範囲内であることにより、発泡性エアゾール組成物は、原液の粘度が適切に調節されやすい。
【0044】
粉体は、滑りを良くするなど使用感を向上させるなどの目的で用いられる。
【0045】
粉体は特に限定されない。一例を挙げると、粉体は、タルク、酸化亜鉛、酸化チタン、カオリン、雲母、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、ケイ酸亜鉛、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸カルシウム、シリカ、ゼオライト、セラミックパウダー、炭粉末、ナイロンパウダー、シルクパウダー、ウレタンパウダー、シリコーンパウダー、ポリエチレンパウダーなどである。
【0046】
粉体を含有する場合、粉体の含有量は特に限定されない。一例を挙げると、粉体の含有量は、原液中、0.1質量%以上であることが好ましく、0.3質量%以上であることがより好ましい。また、粉体の含有量は、5質量%以下であることが好ましく、3質量%以下であることがより好ましい。粉体の含有量が上記範囲内であることにより、発泡性エアゾール組成物は、粉体を含有することによる効果が得られやすい。
【0047】
本実施形態の原液は、さらに、発泡性エアゾール組成物の目的に応じて各種有効成分が配合されてもよい。有効成分は特に限定されない。一例を挙げると、有効成分は、防錆剤、天然香料、合成香料などの各種香料、窒化ホウ素、黒鉛、二硫化モリブデン、滑石などの固体潤滑剤等である。
【0048】
有効成分が配合される場合、有効成分の含有量は特に限定されない。一例を挙げると、有効成分の含有量は、原液中、0.01質量%以上であることが好ましく、0.1質量%以上であることが好ましい。また、有効成分の含有量は、原液中、20質量%以下であることが好ましく、15質量%以下であることがより好ましい。
【0049】
原液の調製方法は特に限定されない。原液は、従来公知の方法により調製することができる。たとえば、原液は、油性成分、界面活性剤、水および任意成分を添加し、混合することにより調製し得る。
【0050】
(噴射剤)
噴射剤は、発泡性エアゾール組成物を容器内から吐出するために配合される。圧縮ガスは、溶解性圧縮ガスを含む。溶解性圧縮ガスは、原液と溶解する性質を有する圧縮ガスであり、亜酸化窒素ガス、炭酸ガス等である。
【0051】
溶解性圧縮ガスの平衡圧力は特に限定されない。一例を挙げると、溶解性圧縮ガスは、原液を充填した容器本体に充填され、容器本体内の25℃での平衡圧力が、0.4MPa以上であることが好ましく、0.5MPa以上であることがより好ましい。また、溶解性圧縮ガスの容器本体内の25℃での平衡圧力は、0.8MPa以下であることが好ましく、0.7MPa以下であることがより好ましい。溶解性圧縮ガスの平行圧力が上記範囲内であることにより、発泡性エアゾール組成物は、立体的な吐出物を形成しやすい。
【0052】
溶解性圧縮ガスの含有量は特に限定されない。一例を挙げると、溶解性圧縮ガスの含有量は、発泡性エアゾール組成物中、1質量%以上であることが好ましく、2質量%以上であることがより好ましい。また、溶解性圧縮ガスの含有量は、エアゾール組成物中、10質量%以下であることが好ましく、8質量%以下であることがより好ましい。溶解性圧縮ガスの含有量が上記範囲内であることにより、発泡性エアゾール組成物は、立体的な吐出物を形成しやすい。
【0053】
本実施形態の発泡性エアゾール組成物は、発泡性を調整するために、液化ガスが配合されてもよい。液化ガスは特に限定されない。一例を挙げると、液化ガスは、ノルマルブタン、イソブタン、プロパンおよびこれらの混合物である液化石油ガス、ジメチルエーテル、ハイドロフルオロオレフィン等である。これらの中でも、液化ガスは、より安定な発泡性エアゾール組成物を形成しやすい点から、ノルマルブタン、イソブタン、プロパンおよびこれらの混合物である液化石油ガスであることが好ましい。
【0054】
液化ガスが配合される場合、液化ガスの含有量は特に限定されない。一例を挙げると、液化ガスの含有量は、発泡性エアゾール組成物中、1質量%以上であることが好ましく、3質量%以上であることがより好ましい。また、液化ガスの含有量は、発泡性エアゾール組成物中、20質量%以下であることが好ましく、15質量%以下であることがより好ましい。液化ガスの含有量が上記範囲内であることにより、発泡性エアゾール組成物は、原液を発泡させて泡体を形成しやすい。
【0055】
発泡性エアゾール組成物全体の説明に戻り、発泡性エアゾール組成物の調製方法は特に限定されない。一例を挙げると、発泡性エアゾール組成物は、耐圧性の容器本体に原液を充填し、容器本体にバルブを固着し、バルブから噴射剤を充填し、原液と噴射剤を混合することにより調製し得る。
【0056】
以上、本実施形態の発泡性エアゾール組成物において、原液は、油性成分が特定の引火点を有する炭化水素油を含んでいるにもかかわらず、引火点を有しない。また、エアゾール組成物の吐出物は、裸火に近づけても火炎を生じないため、安全性が優れる。また、発泡性エアゾール組成物は、水および界面活性剤を配合していることにより、吐出物の起泡性および発泡性を調整し得る。
【実施例0057】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明する。本発明は、これら実施例に何ら限定されない。
【0058】
<原液の調製>
以下の表1に記載の処方に従って、それぞれの成分を混合し、原液1~6を調製した。
【0059】
【表1】
【0060】
原液1~6について、以下の評価方法により引火点を測定した。結果を表2に示す。
【0061】
(引火点の測定方法)
原液の引火点は、25℃から250℃までをタグ密閉式引火点測定器にて測定した。さらに、密閉式で引火しなかった原液については、原液が沸騰するまでをクリーブランド開放式引火点測定装置にて測定した。なお、原液に引火する前に沸騰した場合を「なし」と評価した。
【0062】
【表2】
【0063】
(実施例1)
耐圧容器に原液1を30g充填し、バルブを開口部に固着して密閉した。さらに、ステムから炭酸ガス0.6MPa(25℃)になるように充填し、吐出部材を取り付けて、発泡性エアゾール組成物を充填した発泡性エアゾール製品を作製した。
【0064】
(実施例2~4、比較例1~3)
使用した原液、圧縮ガスの種類を、表3に記載のものに変更した以外は、実施例1と同様の方法により、発泡性エアゾール組成物を充填した発泡性エアゾール製品を作製した。
【0065】
得られた発泡性エアゾール製品について、以下の評価方法により、原液の状態(目視観察)、吐出状態および消泡性を試験した。結果を表3に示す。
【0066】
<吐出状態>
耐圧容器を25℃の恒温水槽に1時間浸漬し、エアゾール組成物を、自転車のペダルの軸部(ボトムブラケット)に吐出した。得られた吐出物の状態を、以下の評価基準にしたがって評価した。
(評価基準)
◎:きめ細かな立体的な泡の吐出物が形成された。
○:立体的な泡の吐出物が形成された。
×:液状に吐出され、泡を形成できなかった。
-:固形の原液のため吐出できなかった。
【0067】
(消泡性)
耐圧容器を25℃の恒温水槽に1時間浸漬し、エアゾール組成物を、自転車のペダルの軸部(ボトムブラケット)に吐出した。吐出物が消泡するまでの時間を測定し、以下の評価基準にしたがって評価した。
(評価基準)
○:吐出物は15秒以内に消泡した。
△:吐出物は15~30秒で消泡した。
×:吐出物は30秒経過しても消泡しなかった。
-:吐出物は泡を形成しなかったため消泡時間を測定できなかった。
【0068】
【表3】
【0069】
表3に示されるように、実施例1~4の発泡性エアゾール組成物は、液状の原液(原液1、3~5)であり、吐出すると立体的な泡を形成することができ、かつ、30秒以内に消泡した。一方、溶解性圧縮ガスを使わずに窒素ガスで加圧した比較例1の発泡性エアゾール組成物と、水を含有していない比較例2の発泡性エアゾール組成物は、液状で吐出され、泡を形成できなかった。HLBが13を超える界面活性剤を使用した比較例3のエアゾール組成物は、原液が固形状になり、吐出できなかった。