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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024157916
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】プロジェクター
(51)【国際特許分類】
   H05B 47/10 20200101AFI20241031BHJP
   G03B 21/00 20060101ALI20241031BHJP
   G03B 21/14 20060101ALI20241031BHJP
   H04N 5/74 20060101ALI20241031BHJP
【FI】
H05B47/10
G03B21/00 F
G03B21/14 C
G03B21/14 A
H04N5/74 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023072585
(22)【出願日】2023-04-26
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100132241
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 博史
(74)【代理人】
【識別番号】100183265
【弁理士】
【氏名又は名称】中谷 剣一
(72)【発明者】
【氏名】山本 翔太
(72)【発明者】
【氏名】濃野 和彦
(72)【発明者】
【氏名】瀬古 大造
(72)【発明者】
【氏名】行天 敬明
【テーマコード(参考)】
2K203
3K273
5C058
【Fターム(参考)】
2K203FA03
2K203FA25
2K203FA34
2K203FB03
2K203GA43
2K203GA52
2K203GA59
2K203KA12
2K203KA14
2K203KA49
2K203MA31
3K273AA05
3K273BA11
3K273BA22
3K273BA23
3K273BA24
3K273BA25
3K273CA01
3K273DA08
3K273EA06
3K273EA07
3K273EA08
3K273EA22
3K273EA25
3K273EA35
3K273EA36
3K273FA06
3K273FA07
3K273FA08
3K273FA11
3K273FA14
3K273FA27
3K273FA29
3K273FA40
3K273GA03
3K273GA25
3K273HA18
3K273HA20
5C058BA35
5C058EA02
(57)【要約】
【課題】本来使用可能である電力の利用効率を高めたプロジェクターを提供する。
【解決手段】光源部からの光を変調し、映像光を投写するプロジェクターであって、少なくともプロジェクターの光源部に入力される電流を含む、電源から入力される電流を測定する電流測定部と、電流測定部にて測定された測定電流値と、ユーザーの入力による、または予め記憶されたデータに基づいて決定される制限値情報とを比較し、比較結果に応じて光源部への電力出力を制御する制御部と、を備える。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源部からの光を変調して生成した映像光を投写するプロジェクターであって、
少なくとも前記プロジェクターの光源部に入力される電流を含む、電源から入力される電流を測定する電流測定部と、
前記電流測定部にて測定された測定電流値と、ユーザーの入力による、または予め記憶されたデータに基づいて決定される制限値情報とを比較し、比較結果に応じて光源部への電力出力を制御する制御部と、
を備える、プロジェクター。
【請求項2】
前記制限値情報は電流閾値である、
請求項1に記載のプロジェクター。
【請求項3】
前記電源から前記プロジェクターに入力される電圧を測定する電圧測定部を備え、
前記制限値情報は電力閾値であり、
前記制御部は、前記測定電流値と前記電圧測定部にて測定された測定電圧値とから前記プロジェクターの電力を算出し、算出した前記電力と、前記電力閾値とを比較し、比較結果に応じて光源部への電圧出力を制御する、
請求項1に記載のプロジェクター。
【請求項4】
前記電流測定部が測定する前記電源から入力される電流は、前記プロジェクターの冷却駆動部に入力される電流も含む、
請求項1に記載のプロジェクター。
【請求項5】
前記制御部は、前記測定電流値及び前記測定電圧値に基づいて力率を決定し、前記力率、前記測定電流値及び前記測定電圧値に基づいて前記プロジェクターの有効電力を算出する、
請求項3に記載のプロジェクター。
【請求項6】
前記制御部は、前記光源部へ電力出力を下げる制御を行った際、一定期間が経過するまで前記光源部への電力出力を上げる制御を行わない、
請求項1または3に記載のプロジェクター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プロジェクターに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、光源からの照明光を光変調素子により画像光に変調し、変調した画像光を投写するプロジェクターがある。光変調素子としてDMD(Digital Micromirror Device)が用いられている。このようなプロジェクターは、屋内屋外を問わず様々な場所において使用されている。
【0003】
このようなプロジェクターとして、特許文献1のプロジェクターが例として挙げられる。このようなプロジェクターは、電源プラグの制約により使用できる電流値が制限されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-15789号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
例えば、プロジェクターを低い入力電圧で使用する場合、電源プラグに流れる電流値は通常に比べて増加する。従来の手法では、プロジェクターの入力電圧に応じて光源の出力制御を行うことで、電流値の制限を行っている。しかしながら、例えば、屋外でプロジェクションマッピングのためにプロジェクターを使用する場合、電源から数十メートルの電源ラインを用いて使用することがある。この場合、室内での使用に比べて電源ラインでの電圧降下が増加し、プロジェクターは必要以上に出力を制限し、本来出力される輝度よりも低い状態で使用される。
【0006】
また、入力電圧に応じた出力制御では入力電流を計算値、または実験値などから求めるため、電流バラつきに対しマージンを確保することが一般的である。確保したマージンに応じて、光源から出射される光のパワーがより小さくなる場合がある。
【0007】
本開示は、本来使用可能である電力の利用効率を高めたプロジェクターを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示に係るプロジェクターは、光源部からの光を変調し、映像光を投写するプロジェクターであって、少なくともプロジェクターの光源部に入力される電流を含む、電源から入力される電流を測定する電流測定部と、電流測定部にて測定された測定電流値と、ユーザーの入力による、または予め記憶されたデータに基づいて決定される制限値情報とを比較し、比較結果に応じて光源部への電力出力を制御する制御部と、を備える。
【発明の効果】
【0009】
本開示は、本来使用可能である電力の利用効率を高めたプロジェクターを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施の形態1に係るプロジェクターの全体構成を示す図
図2】実施の形態1に係るプロジェクターの各構成要素への電力供給ラインを示すブロック図
図3】電源回路の回路構成の一例を示す回路図
図4】電源回路に入力される入力電圧の波形を示す図
図5】PFC回路によって力率が改善された入力電流の波形を示す図
図6】比較例における電力制御を示すグラフ
図7】比較例における光源部からの光出力を示すグラフ
図8】実施の形態1に係る電流制御及び光源部からの光出力を示すグラフ
図9A】実施の形態2に係るプロジェクターの各構成要素への電力供給ラインを示すブロック図
図9B】実施の形態2に係る電源回路の回路構成の一例を示す回路図
図10】実施の形態2に係る電力制御及び光源部からの光出力を示すグラフ
図11】変形例に係る電源回路の回路構成の一例を示す回路図
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、適宜図面を参照しながら、実施の形態を詳細に説明する。但し、必要以上に詳細な説明は省略する場合がある。例えば、既によく知られた事項の詳細説明や実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。これは、以下の説明が不必要に冗長になるのを避け、当業者の理解を容易にするためである。
【0012】
なお、添付図面及び以下の説明は、当業者が本開示を十分に理解するために、提供されるのであって、これらにより特許請求の範囲に記載の主題を限定することは意図されていない。
【0013】
(実施の形態1)
[1-1.プロジェクターの構成]
図1を参照して、実施の形態1のプロジェクター1を説明する。図1は、実施の形態1に係るプロジェクター1の全体構成を示す図である。実施の形態1のプロジェクター1は、例えば、DMDを3つ使用するいわゆる3チップ方式のDMDプロジェクターである。なお、以下の説明において、交流をACと記載し、直流をDCと記載する場合がある。
【0014】
実施の形態1のプロジェクター1は、電源部3と、光源部5と、リレー光学系7と、光変調ユニット9と、投写レンズ11とを備える。
【0015】
電源部3は、交流電源から電力を供給し、直流へと変換してプロジェクター1の駆動電力を供給する。
【0016】
光源部5は、例えば、複数のレーザー光源と、蛍光体ホイールとを備える。複数のレーザー光源から出射した青色の波長域のレーザー光が分岐して蛍光体ホイールに入射し、黄色の波長域のレーザー光に変換される。この黄色の波長域のレーザー光と青色の波長域のレーザー光とが、混合されて白色光が生成され光源部5からリレー光学系7へ出射される。
【0017】
リレー光学系7は、複数のレンズ及びミラーを備え、光源部5から出射した白色光を光変調ユニット9へ導く。
【0018】
光変調ユニット9は、入射された白色光を変調して映像光を生成し、この映像光を投写レンズ11へ出射する。光変調ユニット9は、全反射プリズム13と、カラープリズム15と、光変調素子17とを備える。全反射プリズム13は2つのプリズムを有し、リレー光学系7から入射した白色光を2つのプリズムの微小ギャップに全反射角以上の角度で入射し、反射することで白色光の進行方向をカラープリズム15へ進行するように変える。
【0019】
カラープリズム15は、入射した白色光を、赤色、緑色、青色の光にそれぞれ分けられて、それぞれの色の光を変調する3つの光変調素子17へ入射させる。光変調素子17でそれぞれ変調された赤色、緑色、青色の光は、カラープリズム15で統合されて映像光として全反射プリズム13を透過して投写レンズ11へ出射する。
【0020】
光変調素子17は、各色の光に同期した画像信号処理部21からの信号に応じて、光の進行方向を変えて出射する。光変調素子17は、例えば、微小ミラーの角度を変えて光の進行方向を変えるDMDである。
【0021】
投写レンズ11は複数のレンズを備え、光変調ユニット9から入射した映像光を図示しないスクリーンに拡大投写する。
【0022】
プロジェクター1は、さらに、冷却部19、画像信号処理部21、制御部23、光源制御部25、冷却制御部27、操作部29、及び、報知部30を備える。
【0023】
冷却部19は、電源部3、光源部5、光変調素子17、光変調ユニット9、及び各制御部などを冷却する。冷却部19は、例えば、冷却風を光変調ユニット9に送るファン、光変調ユニット9内の熱を外部へ伝える冷媒を循環させる液冷ポンプ、光源部5を冷却するペルチェ素子などを備える。
【0024】
画像信号処理部21は、入力された画像信号に同期して各光変調素子17の微小ミラーの角度を第1の角度と第2の角度とへ駆動制御する。第1の角度で反射された光は映像光としてカラープリズム15へ入射され、第2の角度で反射された光は不要光として吸光される。
【0025】
制御部23は、電源部3から入力される電力情報を基に、光源制御部25及び冷却制御部27を調整する機能を有する。
【0026】
光源制御部25は、制御部23から指示された調整値を基に制御を行い、電源部3から入力される電力を調整して光源部5へ供給する。プロジェクター1に入力される電力のうち約76%の電力が光源部5へ入力される。
【0027】
冷却制御部27は、制御部23から指示された調整値を基に制御を行い、電源部3から入力される電力を調整して冷却部19へ供給する。プロジェクター1に入力される電力のうち約17%の電力が冷却部19へ入力される。
【0028】
画像信号処理部21、制御部23、光源制御部25、及び、冷却制御部27はそれぞれ、半導体素子などで実現可能な集積回路を有し、例えば、マイコン、CPU、MPU、GPU、DSP、FPGA、またはASICで構成することができる。画像信号処理部21、制御部23、光源制御部25、及び、冷却制御部27はそれぞれ、内蔵する記憶部(図示省略)に格納されたデータやプログラムを読み出して種々の演算処理を行うことで、予め定められた機能を実現する。記憶部は、例えば、ハードディスク(HDD)、SSD、RAM、DRAM、強誘電体メモリ、フラッシュメモリ、磁気ディスク、またはこれらの組み合わせによって実現できる。
【0029】
操作部29は、ユーザーからの操作指示を受け付けて操作信号を制御部23へ出力する。操作部29は、タッチパネルディスプレイ、ボタン、リモートコントローラ、携帯端末、及びネットワークを用いた遠隔端末の少なくともいずれか1つで構成される。ユーザーは、操作部29から使用電流の制限値または使用電力の制限値を入力する。
【0030】
報知部30は、ディスプレイによる文字及び画像表示、ネットワークを用いた通知、または、スピーカによる音声によってユーザーにプロジェクター1の動作状況を報知する。操作部29と報知部30とを一体的に構成されてもよく、タッチディスプレイまたは携帯端末によって実現可能である。報知部30は、例えば、プロジェクター1の使用電力をユーザーに報知する。
【0031】
[1-2.電流制御の構成]
次に、図2及び図3を参照して実施の形態1におけるプロジェクター1の電流制御について説明する。図2は、実施の形態1に係るプロジェクターの各構成要素への電力供給ラインを示すブロック図である。図3は、電源回路31の回路構成の一例を示す回路図である。
【0032】
例えば、AC電源である電源32に差し込まれたACプラグを介して交流の入力電圧が電源部3へ入力される。電源部3は、入力された交流電力を所定の直流電力へ変換する電源回路31と、電源回路31に流れる電流実効値を算出するプロセッサ37と、を有する。
【0033】
電源回路31は、電源部3に入力された入力電力の電流値を測定する電流測定部33と、入力された交流電圧を整流する整流部39と、力率改善回路であるPFC(power factor correction)回路41を備える。
【0034】
電流測定部33は、少なくともプロジェクター1の光源部5に入力される電流を含む、電源32から入力される電流を測定する。電流測定部33は、例えば、電源32から入力される交流電流を測定する。電流測定部33は、ホールセンサ35とホールセンサ35が検出した検出値から電流値を算出するプロセッサ37とで構成される。
【0035】
プロセッサ37は、ホールセンサ35の電圧検出値から電流波形のサンプリングを行い、電流実効値を算出する。算出した電流実効値は、制御部23へ出力する。
【0036】
整流部39は、4つの整流ダイオードを有し、入力される正弦波の入力電圧及び入力電流を全波整流する。
【0037】
PFC回路41は、入力電力の力率を1に近づける。PFC回路41は、コイル45とスイッチング素子47と、ダイオード49と、検出抵抗51と、平滑コンデンサ43とを備える。スイッチング素子47は、例えば、MOSFET(metal-oxide-semiconductor field-effect transistor)である。
【0038】
平滑コンデンサ43は、変換された直流電力の変動を緩やかにする働きも有する。
【0039】
図2に示すように、電源回路31から出力された直流電力は、制御部23、光源制御部25、冷却制御部27へそれぞれ供給される。図2において電源回路31を通る実線は電力ラインを示す。
【0040】
制御部23は、プロセッサ53を有する。プロセッサ53は、メモリなどで構成される記憶部を有し、記憶部には設定値が記憶されている。プロセッサ53は、受信した電流実測値と設定値とを比較する。
【0041】
光源制御部25は、光源部5へ供給する電力を制御するプロセッサ55を有する。
【0042】
冷却制御部27は、冷却部19へ供給する電力を制御するプロセッサ57を有する。
【0043】
プロセッサ37、53、55、57は、例えば、マイコン、CPU、MPU、GPU、DSP、FPGA、またはASICで構成してもよい。図2において、各プロセッサ37、53、55、57に接続される破線は、通信ラインを示し、プロセッサ37と53とがそれぞれ互いに通信可能に接続され、プロセッサ53と55と57とがそれぞれ互いに通信可能に接続されている。
【0044】
従来技術で入力電圧を検出する場合、電源32から入力される入力電圧は、例えば、図4に示すような正弦波の交流電圧である。したがって、入力電圧は、ピーク値を検出してもよいし、実効値を検出してもよい。検出されたピーク値、及び実効値のどちらであっても精度良く電力制御することができる。
【0045】
しかしながら、電源32から入力される入力電流は、PFC回路41において力率を1に近づけたとしても、図5に示すように、完全な正弦波とはならない。そのため、入力電流のピーク値からの実効値算出では精度が低くなる。電流測定部33は、入力電流の波形をサンプリングして算出することで、精度の高い入力電流の実効値を検出することができる。
【0046】
例えば、米国において、ACプラグのプラグ定格に対して80%以下の電流で使用する必要がある。例えば、15Aプラグを使用する場合、入力電流の上限値を12Aに制限しなければならない。入力電圧から入力電流及び入力電力を推定する制御の場合、検出された入力電圧を基に、予め測定しておいた対応する入力電流及び入力電力のテーブルを用いて入力電流及び入力電力を推定する。
【0047】
このように、入力電流及び入力電力を正確に検出できないので、図6に示すように、入力電力の制限値と、この制限値を超えないように実際に設定される閾値とのマージンを大きくとる必要がある。これにより、実際に使用される入力電流の上限値が低く抑えられており、光源部5への入力電力も定格電源の値に対して大きくマージンをとって低く抑えられるので、図7に示すように、光源部5から出力される光出力が低く抑えられる。図7において、光出力が、例えば、60%に抑えられている。
【0048】
これに対して、実施の形態1のプロジェクター1によれば、電源部3において入力電流を直接検出することができるので、図8(a)に示すように、ACプラグのプラグ定格による制限値と、この制限値を超えないように実際に設定される閾値とのマージンを小さくすることができる。これにより、実際に使用される入力電流の上限値を電流制限値に近い値にすることができ、光源部5への入力電力も上限値に近くすることができるので、図8(b)に示すように、光源部5から出力される光出力を、入力電力から入力電流を推定する場合よりも、大きくすることができる。図8(b)において、光出力が、例えば、80%で出力されている。
【0049】
図2を参照して、各制御部における電流制御について説明する。電源部3のプロセッサ37は、ホールセンサ35の検出値を基に電流波形サンプリングを行い、電源部3へ入力される電流実効値を算出する。電源部3のプロセッサ37は、算出した電流実効値を制御部23のプロセッサ53へ送信する。
【0050】
制御部23のプロセッサ53は、電流制限を実施するか否かを判断する電流閾値を記憶している。電流閾値は予め記憶された値でもよいし、ユーザーが操作部29から指示した値でもよい。プロセッサ53は、受信した電流実効値と電流閾値とを比較する。受信した電流実効値が電流閾値よりも小さい場合は、受信した電流実効値と電流閾値との比較を続ける。受信した電流実効値が電流閾値よりも大きい場合は、光源制御部25のプロセッサ55及び冷却制御部27のプロセッサ57へそれぞれ出力する電力を下げるように指示する。
【0051】
光源制御部25は、制御部23から電力出力を下げる指示を受信すると、光源部5の光源電流を制限することで、出力する電力を下げ、光源部5に必要な入力電流を制限する。これにより、光源部5から出射される光の明るさが低下する。
【0052】
また、冷却制御部27は、制御部23から電力出力を下げる指示を受信すると、冷却部19へ出力する電力を下げることで、各冷却デバイスの駆動電流を制限する。例えば、ファンの回転数を低下させ、液例ポンプの出力を落とし、ペルチェ素子の駆動電流を低くすることで、駆動電流を制限する。
【0053】
光源制御部25及び冷却制御部27の電力出力を下げる制御方法として、例えば、電流出力の振幅を下げる、または、PWM制御のデューティ比を小さくすることが挙げられる。
【0054】
また、光源制御部25及び冷却制御部27の両方の電力出力を下げる代わりに、光源制御部25だけの電力出力を下げてもよい。
【0055】
上述した電流制御を図8を参照して説明する。電源部3のプロセッサ37は、図8(a)に示すように、時間T1で実測電流が電流閾値よりも大きくなったことを判定すると、光源制御部25、冷却制御部27は、それぞれからの出力電力を小さくする。この結果、電源部3への入力電流が小さくなるが、再び、プロセッサ53は、受信した電流実効値と電流閾値とを比較して、入力電流が電流閾値よりも小さいか否かを判定する。このようにフィードバック制御を続けることで、常に、電源部3への入力電流が電流閾値を超えないように監視する。また、時間T1で実測電流が電流閾値よりも大きくなり、光源制御部25が一度制御部23から電力出力を下げる指示を受信すると、光出力を電源部3への入力電流が閾値を超えない値に低減した時間T2の後においても、一定時間、光出力を下げ続ける。この一定時間は、例えば、数十秒から数分間である。これにより、フィードバック制御による光出力の上げ下げを低減することができるので、映像光のフリッカの発生を抑制することができる。
【0056】
[1-3.効果等]
以上のように、実施の形態1のプロジェクター1は、光源部5からの光を変調して生成した映像光を投写するプロジェクター1であって、少なくともプロジェクター1の光源部5に入力される電流を含む、電源32から入力される電流を測定する電流測定部33と、電流測定部33にて測定された測定電流値と、ユーザーの入力による、または予め記憶されたデータに基づいて決定される制限値情報とを比較し、比較結果に応じて光源部5への電力出力を制御する制御部23と、を備える。
【0057】
プロジェクター1の入力側の電流を測定することで、定格電流と駆動電流とのマージンを小さくすることができるので、光源部5の駆動電流をできるだけ大きくすることができ、プロジェクター1に入力される電力の利用効率を高めることができる。
【0058】
また、制限値情報は電流閾値であるので、ACプラグの定格電流に対するマージンを小さくすることができ、光源部5の駆動電流を大きくすることができる。
【0059】
また、光源制御部25は、光源部5へ電力出力を下げる制御を行った後、一定期間が経過するまで光源部5への電力出力を上げる制御を行わない。これにより、光源部5から出射される光にフリッカが発生するのを抑制することができるので、プロジェクター1から投写される映像光にフリッカが発生するのを抑制することができる。
【0060】
(実施の形態2)
次に、図9A及び図9Bを参照して、実施の形態2のプロジェクター1Aを説明する。図9Aは、実施の形態2に係るプロジェクター1Aの各構成要素への電力供給ラインを示すブロック図である。図9Bは、実施の形態2に係る電源回路の回路構成の一例を示す回路図である。
【0061】
実施の形態1の電源部3は入力電流を検出していたが、実施の形態2の電源部3Aは入力電流に加えて入力電圧も検出する。この点及び以下に説明する点以外の構成について、実施の形態1のプロジェクター1と実施の形態2のプロジェクター1Aとは共通であるので共通の構成についての説明を省略する。
【0062】
実施の形態2の電源部3Aの電源回路31Aは電圧測定部61を備え、検出した電圧値が電流測定部33で検出した電流値とともに、プロセッサ37Aに送られる。電圧測定部61は、入力電圧の電圧波形のピークホールド、または、サンプリングを行い電圧実効値を算出する。電圧測定部61は、例えば、電流測定部33と2つの整流素子63、65とで構成され、プロセッサ37Aが電圧実効値を算出する。
【0063】
プロセッサ37Aは、実施の形態1と同様に電流の波形サンプリングも行い実効電流値を算出する。したがって、プロセッサ37Aが入力電流、及び、入力電圧共にサンプリングで波形取得する場合は、瞬時電力の1周期を平均した電力である有効電力[W]を算出することができるため、力率を算出することができる。
【0064】
電源部3Aのプロセッサ37Aが算出した有効電力は、制御部23のプロセッサ53へ送信される。制御部23のプロセッサ53は、実施の形態1の電流制御の代わりに電力を制限値情報としての電力閾値と比較することで光源制御部25及び冷却制御部27から出力する電力を制御する。
【0065】
実施の形態2のプロジェクター1Aによれば、電源部3において入力電力を直接検出することができるので、図10(a)に示すように、プロジェクター1Aの使用電力制限値と、この制限値を超えないように実際に設定される電力閾値とのマージンを小さくすることができる。これにより、実際に使用される入力電力の上限値を電力制限値に近い値にすることができ、光源部5への入力電力も上限値に近くすることができるので、図10(b)に示すように、光源部5から出力される光出力を、入力電力を推定する場合よりも大きくすることができる。図10(b)において、光出力が、例えば、80%で出力されている。
【0066】
図9Aを参照して、各制御部における電力制御について説明する。電源部3Aのプロセッサ37Aは、ホールセンサ35の検出値を基に電流波形サンプリングを行い、電源部3Aへ入力される電流実効値を算出する。また、電源部3Aのプロセッサ37Aは、電圧測定部の測定結果を基に電圧波形サンプリングを行い、電源部3Aへ入力される電圧実効値を算出する。電源部3Aのプロセッサ37Aは、算出した電流実行値及び電圧実効値を基に有効電力を算出し、制御部23のプロセッサ53へ算出した有効電力を送信する。
【0067】
制御部23のプロセッサ53は、電力制限を実施するか否かを判断する電力閾値を記憶している。プロセッサ53は、受信した有効電力と電力閾値とを比較する。受信した有効電力が電力閾値よりも小さい場合は、受信した有効電力と電力閾値との比較を続ける。受信した有効電力が電力閾値よりも大きい場合は、光源制御部25のプロセッサ55及び冷却制御部27のプロセッサ57へ電力出力を下げるように指示する。
【0068】
光源制御部25は、制御部23から電力出力を下げる指示を受信すると、光源部5へ出力する電力を下げることで、光源電力を制限する。これにより、光源部5から出射される光の明るさが低下する。また、冷却制御部27は、制御部23から電力出力を下げる指示を受信すると、冷却部19へ出力する電力を下げることで、各冷却デバイスの駆動電力を制限する。また、光源制御部25及び冷却制御部27の両方の電力出力を下げる代わりに、光源制御部25だけの電力出力を下げてもよい。
【0069】
また、電源部3Aのプロセッサ37Aは、図8(a)に示すように、時間T1で有効電力が閾値よりも大きくなったことを判定すると、光源制御部25、冷却制御部27は、それぞれからの出力電力を小さくする。この結果、電源部3Aへの入力電力が小さくなるが、再び、プロセッサ53は、受信した有効電力と電力閾値とを比較して、入力電力が電力閾値よりも小さいか否かを判定する。このようにフィードバック制御を続けることで、常に、電源部3への入力電力が電力閾値を超えないように監視する。
【0070】
また、時間T1で有効電力が電力閾値よりも大きくなり、光源制御部25が一度制御部23から電力出力を下げる指示を受信すると、光出力を電源部3Aへの入力電流が閾値を超えない値に低減した時間T2の後においても、一定時間、光出力を下げ続ける。この一定時間は、例えば、数分間である。これにより、フィードバック制御による光出力の上げ下げを低減することができるので、映像光のフリッカの発生を抑制することができる。
【0071】
また、プロセッサ53は、有効電力、すなわち、消費電力を報知部30からユーザーに報知することで、ユーザーがプロジェクター1Aの消費電力を知ることができ、プロジェクター1Aの使用による電気代を推定することができる。
【0072】
このように、実施の形態2において、プロジェクター1Aは、電源からプロジェクター1Aに入力される電圧を測定する電圧測定部61を備える。制限値情報は電力閾値であり、プロセッサ37Aは、測定電流値と電圧測定部61にて測定された測定電圧値とからプロジェクター1Aの電力を算出し、制御部23は算出した電力と、電力閾値とを比較し、比較結果に応じて光源制御部25は光源部5への電圧出力を制御する。
【0073】
これにより、プロジェクター1Aの入力側の電流及び電圧を測定することで、定格電力と駆動電力とのマージンを小さくすることができるので、光源部5の駆動電力をできるだけ大きくすることができ、プロジェクター1Aに入力される電力の利用効率を高めることができる。
【0074】
また、プロセッサ37Aは、測定電流値及び測定電圧値に基づいて力率を決定し、力率、測定電流値及び測定電圧値に基づいてプロジェクター1Aの有効電力を算出する。プロジェクター1Aの有効電力を算出することで、例えば、ユーザーにプロジェクター1Aの消費電力を報知することができる。
【0075】
なお、プロセッサ37Aは、有効電力を算出する代わりに皮相電力を算出して、算出した皮相電力と、電力閾値とを比較し、比較結果に応じて光源部5への電圧出力を制御してもよい。
【0076】
(他の実施の形態)
以上のように、本開示における技術の例示として、実施の形態を説明した。そのために、添付図面及び詳細な説明を提供した。したがって、添付図面及び詳細な説明に記載された構成要素の中には、課題解決のために必須な構成要素だけでなく、上記技術を例示するために、課題解決のためには必須でない構成要素も含まれ得る。したがって、それらの必須ではない構成要素が添付図面や詳細な説明に記載されていることをもって、直ちに、それらの必須ではない構成要素が必須であるとの認定をするべきではない。
【0077】
(1)上述した各実施の形態において、電流測定部33は、整流ダイオードで構成される整流部39よりも上流側に配置されていたがこれに限らない。図11に示すように、電源回路31Bの電流測定部33Bは、整流部39と平滑コンデンサ43との間に配置されてもよい。例えば、電流測定部33Bは、整流部39と平滑コンデンサ43との間に配置された抵抗51と、抵抗51の両端の電圧値を検出するプロセッサ37とで構成されてもよい。
【0078】
(2)上述した各実施の形態において、入力電流または入力電力を電源部3、3A、3Bにおいて検出していたがこれに限らない。光源部5で使用される電力はプロジェクター1全体で使用される電力の約76%であるので、光源制御部25に入力される入力電流または入力電力を検出して、制御部23は、この検出量を基に光源制御部25及び冷却制御部27から出力される出力電流または出力電力を調整してもよい。また、光源制御部25に入力される入力電流または入力電力に加えて、冷却制御部27に入力される入力電流または入力電力を検出してもよい。光源部5及び冷却部19で使用される電力は、プロジェクター1全体で使用される電力の約93%であるので、より精度よく光源部5及び冷却部19を駆動する電流または電力の利用効率を高めることができる。
【0079】
(3)上述した各実施の形態において、電源部3、3A、3Bは、AC電源から電力を供給されていたがこれに限らない。電源部3、3A、3Bは、バッテリーなどのDC電源から電力を供給されてもよい。
【0080】
また、上述の実施の形態は、本開示における技術を例示するためのものであるから、特許請求の範囲またはその均等の範囲において種々の変更、置き換え、付加、省略などを行うことができる。また、上記実施の形態で説明した各構成要素を組み合わせて、新たな実施の形態とすることも可能である。
【0081】
(実施の形態の概要)
(1)本開示のプロジェクターは、光源からの光を変調して生成した映像光を投写するプロジェクターであって、少なくともプロジェクターの光源駆動部に入力される電流を含む、電源から入力される電流を測定する電流測定部と、電流測定部にて測定された測定電流値と、ユーザーの入力による、または予め記憶されたデータに基づいて決定される制限値情報とを比較し、比較結果に応じて光源への電力出力を制御する制御部と、を備える。
【0082】
プロジェクターの入力側の電流を測定することで、定格電流と駆動電流とのマージンを小さくすることができるので、光源部の駆動電流をできるだけ大きくすることができ、プロジェクターに入力される電力の利用効率を高めることができる。
【0083】
(2)(1)のプロジェクターにおいて、制限値情報は電流閾値である。
【0084】
(3)(1)または(2)のプロジェクターにおいて、電源からプロジェクターに入力される電圧を測定する電圧測定部を備え、制限値情報は電力閾値である。制御部は、測定電流値と電圧測定部にて測定された測定電圧値とからプロジェクターの電力を算出し、算出した電力と、電力閾値とを比較し、比較結果に応じて光源部への電圧出力を制御する、
【0085】
(4)(1)のプロジェクターにおいて、電流測定部が測定する電源から入力される電流は、プロジェクターの冷却駆動部に入力される電流も含む。
【0086】
(5)(3)のプロジェクターにおいて、制御部は、測定電流値及び測定電圧値に基づいて力率を決定し、力率、測定電流値及び測定電圧値に基づいてプロジェクターの有効電力を算出する。
【0087】
(6)(1)または(3)のプロジェクターにおいて、制御部は、光源部へ電力出力を下げる制御を行った際、一定期間が経過するまで光源部への電力出力を上げる制御を行わない。
【産業上の利用可能性】
【0088】
本開示は、光源部からの光を変調して生成した映像光を投写するプロジェクターに利用可能である。
【符号の説明】
【0089】
1、1A プロジェクター
3、3A 電源部
5 光源部
7 リレー光学系
9 光変調ユニット
11 投写レンズ
13 全反射プリズム
15 カラープリズム
17 光変調素子
19 冷却部
21 画像信号処理部
23 制御部
25 光源制御部
27 冷却制御部
29 操作部
30 報知部
31 電源回路
32 電源
33 電流測定部
35 ホールセンサ
37 プロセッサ
39 整流部
41 PFC回路
43 平滑コンデンサ
45 コイル
47 スイッチング素子
49 整流ダイオード
51 抵抗
53 プロセッサ
55 プロセッサ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9A
図9B
図10
図11