(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024157920
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】液体の貯蔵タンク
(51)【国際特許分類】
F17C 13/00 20060101AFI20241031BHJP
F17C 9/00 20060101ALI20241031BHJP
【FI】
F17C13/00 302A
F17C9/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023072590
(22)【出願日】2023-04-26
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(71)【出願人】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001380
【氏名又は名称】弁理士法人東京国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】稲冨 誉也
(72)【発明者】
【氏名】下之園 勉
(72)【発明者】
【氏名】根塚 隼人
(72)【発明者】
【氏名】中村 英之
(72)【発明者】
【氏名】柳 寛
(72)【発明者】
【氏名】水牧 祥一
【テーマコード(参考)】
3E172
【Fターム(参考)】
3E172AA03
3E172AA06
3E172AB01
3E172AB04
3E172BA04
3E172BB05
3E172BB12
3E172BB17
3E172CA10
3E172DA04
3E172EA03
(57)【要約】
【課題】貫通部品を削減しタンクへの入熱を低減して液化ガスの気化損失を低減させるとともに、省スペース性にも優れ、極低温液体の貯蔵に適したタンクを提供する。
【解決手段】貯蔵タンク10は、移送システム20において、液体15の収容槽16に設けられた第1開口11に挿入される輸送管21と、収容槽16の内部において輸送管21の先端に設けられ収容槽16の外部に向かう流動圧を液体15に付与するポンプ30と、を備えている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体の収容槽に設けられた第1開口に挿入される輸送管と、
前記収容槽の内部において前記輸送管の先端に設けられ、その外部に向かう流動圧を前記液体に付与するポンプと、を備える液体の貯蔵タンク。
【請求項2】
請求項1に記載の液体の貯蔵タンクにおいて、
前記ポンプは、
励磁した電磁石の作用により往復運動し前記流動圧を発生させるピストンと、
前記電磁石の近傍を通過させてから前記輸送管に前記液体を案内する流路と、を有する液体の貯蔵タンク。
【請求項3】
請求項2に記載の液体の貯蔵タンクにおいて、
前記電磁石は、前記ピストンの往復運動対し同軸で多重の円筒構造を持ち、
前記流路として、前記円筒構造の隙間が機能する液体の貯蔵タンク。
【請求項4】
請求項2に記載の液体の貯蔵タンクにおいて、
前記流路は、前記電磁石の外周に螺旋状に形成される液体の貯蔵タンク。
【請求項5】
請求項2に記載の液体の貯蔵タンクにおいて、
前記液体は液化ガスであり、前記電磁石は超電導電磁石である液体の貯蔵タンク。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の液体の貯蔵タンクにおいて、
前記第1開口に対し挿抜自在に構成され、
前記ポンプに駆動電力を供給するケーブルと前記輸送管とを内側に這わせ、
前記ポンプを先端で固定する、スリーブを有する液体の貯蔵タンク。
【請求項7】
請求項6に記載の液体の貯蔵タンクにおいて、
前記収容槽を内部保持し断熱する真空容器と、
前記真空容器に設けられた第2開口を閉止するとともに、前記輸送管を支持する閉止プレートと、を備える液体の貯蔵タンク。
【請求項8】
請求項7に記載の液体の貯蔵タンクにおいて、
前記収容槽の外側及び前記真空容器の内側に設けられ、冷却機に接続するシールドを備える液体の貯蔵タンク。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、液化ガス等の極低温液体の貯蔵に適したタンクに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球温暖化を助長するCO2ガス等の温室効果ガスの発生を抑制するため、発電、航空機、船舶等の燃料として、水素の活用が推進されている。発電用途として、高圧水素ガスのタンクを搭載した水素ガスタービンが知られている。この高圧水素ガスの貯蔵タンクは、圧縮ガスに対する耐圧性を持つよう高強度化するため、炭素繊維強化プラスチック(CFRP)が巻かれている。このため一般的な圧縮ガスの貯蔵タンクは、大型化が困難で貯蔵容量が少なく、一度の充填による稼働時間が短く、経済性の観点から不利である。
【0003】
そこで、水素ガスを液化した液化水素の貯蔵タンクの開発が検討されている。-253℃の極低温まで冷却し液化させた液化水素は、標準状態で水素ガスの約800分の1の体積になる。このため、液化ガスの貯蔵タンクは、小型でも貯蔵容量が大きくなる。そして、このような液化ガスの貯蔵タンクは、二重構造の容器であり、その間を真空に保持することで、貯蔵される液化ガスの断熱が図られている。
【0004】
発電用途の水素燃料は、例えば20気圧まで加圧してガスタービンの燃焼器に供給される。このため液体水素は、所定圧力で加圧するポンプにより、貯蔵タンクから吸い上げられ移送される。そして、液化ガスの貯蔵タンクに設置するのに適当な小型のポンプとして、往復動式のピストンポンプが採用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
液化ガスの貯蔵タンクに設置された従来のピストンポンプは、ピストンの駆動手段が常温部に、ピストン部はタンク内に設置されている。このため、二重構造のタンクを駆動軸が貫通する構造をとるため、ピストンポンプの稼働/停止に関わらず、タンク外部から内部への熱侵入の増加が避けられない。このような侵入熱を低減するために、スリーブや駆動軸の一部に低熱伝導率の非金属材料を使用する対策がとられているが、その効果は限定的である。
【0007】
ところで、常時稼働している等、稼働率の高い設備では、タンクへの入熱により液化ガスが気化するボイル・オフ・ガス(BOG)が発生しても、そのまま燃料に使用されるため問題とならない。一方において、例えば1週間以上停止する等、稼働率の低い設備では、停止中もタンクへの入熱が継続し、多量のBOGが発生する。
【0008】
その結果、タンクの圧力限界に到達するまで発生したBOGは、安全弁からタンク外に放出されてしまい、燃料損失の原因になる。特に、液体水素は、LNGに比べて蒸発潜熱が約7分の1と蒸発しやすい為、タンクの貫通部の一部を低熱伝導率の材料に置き換えたとしても、BOGの抑制には不十分である。それでは、タンクの貯蔵量を増加させるため液化水素を用いた意味が失われてしまう。
【0009】
本発明の実施形態はこのような事情を考慮してなされたもので、貫通部品を削減しタンクへの入熱を低減して、液化ガスの気化損失を低減させるとともに、省スペース性にも優れ極低温液体の貯蔵に適したタンクを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
実施形態に係る液体の貯蔵タンクにおいて、液体の収容槽に設けられた第1開口に挿入される輸送管と、前記収容槽の内部において前記輸送管の先端に設けられ、その外部に向かう流動圧を前記液体に付与するポンプと、を備える。
【発明の効果】
【0011】
本発明の実施形態により、貫通部品を削減しタンクへの入熱を低減して、液化ガスの気化損失を低減させるとともに、省スペース性にも優れ極低温液体の貯蔵に適したタンクが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る液体の貯蔵タンクを示す縦断面図。
【
図2】液体の移送システムを取り外した貯蔵タンクの実施形態を示す縦断面図。
【
図3】第1実施形態において貯蔵タンクに装着された移送システムを示す縦断面図。
【
図4】(A)
図3に示す移送システムのA-A横断面図、(B)同・B-B横断面図。
【
図5】(A)(B)貯蔵タンクに装着された移送システムの動作説明図。
【
図6】(A)第2実施形態において貯蔵タンクに装着された移送システムの部分縦断面図、(B)その横断面図、(C)横断面の部分拡大図。
【
図7】第3実施形態において貯蔵タンクに装着された移送システムの部分縦断面図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(第1実施形態)
以下、本発明の実施形態を添付図面に基づいて説明する。
図1は本発明の第1実施形態に係る液体15の貯蔵タンク10を示す縦断面図である。
図2は液体15の移送システム20を取り外した貯蔵タンク10の実施形態を示す縦断面図である。
【0014】
貯蔵タンク10の移送システム20は、液体15の収容槽16に設けられた第1開口11に挿入される輸送管21と、収容槽16の内部において輸送管21の先端に設けられ収容槽16の外部に向かう流動圧を液体15に付与するポンプ30と、を備えている。このように移送システム20が構成されることで、ポンプ30の駆動軸37(
図3参照)が貯蔵タンク10を貫通していないため、外部から内部への熱侵入が抑制される。
【0015】
液体15が、液体水素やLNGのような液化ガスである場合、貯蔵タンク10の外部に設置された気化器(図示略)で加熱気化した後、燃焼器等に供給される。稼働するポンプ30の発熱を吸熱するので、液化ガスのエンタルピーは上昇している。この上昇分だけ気化器(図示略)の加熱量を低減することができ、気化器の小型化やシステムの効率向上にも貢献する。
【0016】
さらに移送システム20は、第1開口11に対し挿抜自在に構成され、ポンプ30を先端で固定するスリーブ26が設けられている。このスリーブ26は、ポンプ30に駆動電力を供給するケーブル25と輸送管21とを内側に這わせている。
【0017】
このように移送システム20がスリーブ26を構成に持つことで、液体15による輸送管21やケーブル25の浸食を回避できる。さらに、ポンプ30を含め輸送管21及びケーブル25の熱が収容槽16に内部伝播することを抑制し、収容されている液体15の気化による内圧上昇を防止できる。
【0018】
そして貯蔵タンク10は、収容槽16を内部保持し断熱する真空容器17と、真空容器17に設けられた第2開口12を閉止するとともに輸送管21を支持する閉止プレート22と、を備えている。そして、真空容器17は、垂直サポート48及び水平サポート49により、収容槽16を少なくとも二方向から支持している。これにより収容槽16は、使用中に経験するあらゆる方向の加速度に対して十分な強度を有し、損傷による液体15の漏出を防止する。
【0019】
このように貯蔵タンク10が真空容器17を構成に持つことで、収容槽16を真空環境で保持でき、外部から液体15への熱侵入を抑制できる。さらにスリーブ26の内側も真空にすることができるため、ポンプ30を含め輸送管21及びケーブル25の熱が収容槽16に内部伝播することの抑制効果が向上する。そして、収容されている液体15の気化による内圧の上昇防止を強化できる。
【0020】
さらに貯蔵タンク10には、純アルミニウム等の高熱伝導体で形成されたシールド18が、収容槽16の外側及び真空容器17の内側に設けられ、冷却機40のコールドヘッド41がシールド18に接続されている。また冷却機40の本体部45は、収容槽16の冷却時の熱収縮を吸収する伸縮継手42を介して真空容器17に固定されている。
【0021】
このように貯蔵タンク10がシールド18を構成に持つことで、常温の真空容器17から内部に放出される輻射熱を遮断し、冷却機40から伝導される冷熱を収容槽16に供給することができる。なお、垂直サポート48及び水平サポート49の材質は、真空容器17からの入熱を防ぐため、熱伝導率が低く強度が高い材料として、例えば一般にGFRPと呼ばれるガラス繊維・炭素繊維強化プラスチックが使用される。
【0022】
このように貯蔵タンク10が真空容器17、シールド18及び収容槽16の三層構造を持つことで、収容槽16への入熱を制限し常温の真空容器17との温度差を大きく維持できる。これにより、液化ガスの液体15を低圧で安定して収容できる。液体15が例えば液体水素(沸点:-253℃)である場合は、冷却機40によりシールド18を-173℃(100K)程度に冷却・保持することで、安定的に収容できる。一方において、液体15が例えばLNGのように液化温度が比較的高く、蒸発潜熱が大きい液化ガスである場合には、シールド18および冷却機40を除いても安定的に収容できる。
【0023】
さらに貯蔵タンク10は、図示を省略するが、収容槽16とシールド18の間、及びシールド18と真空容器17の間に断熱層が設けられている。この断熱層は、例えばアルミ蒸着ポリイミドフィルム等を多層に重ねたもので、極低温や宇宙用途に真空中で一般的に使用されるものである。また、輸送管21及びシールド18並びに輸送管21及びケーブル25を熱アンカー19で接続することもできる。その場合、輸送管21を通過する液体15の昇温とシールド18の冷却を同時に実行できる。
【0024】
図3は第1実施形態において貯蔵タンク10に装着された移送システム20A(20)を示す縦断面図である。
図4(A)は
図3に示す移送システム20のA-A横断面図である。
図4(B)は
図3に示す移送システム20のB-B横断面図である。
【0025】
ポンプ30は、励磁した電磁石31(31a,31b)の作用により往復運動し液体15に流動圧を発生させるピストン32と、電磁石31の近傍を通過させてから輸送管21の先端に液体15を案内する流路56と、を有している。
【0026】
永久磁石36は、
図4(B)に示すように、駆動軸37の周囲に放射状に配置されている。
図4(B)では一例として3個の場合を示しているが、磁場に対する要求仕様に応じた個数が配置される。そして永久磁石36は、チャンバ35の内部を上下方向に変位し往復するように収容されている。また電磁石31(31a,31b)は、チャンバ35の外周に同心筒状に形成されたケーシング59に収容されている。さらに電磁石31を収容するケーシング59は、液体15の流路56としても機能し、輸送管21に連通するとともに、後記する出口室52とも連通している。
【0027】
ここで電磁石31(31a,31b)は、それぞれ背反的に励磁されるコイルで、電磁石31aが励磁すると永久磁石36はピストン32を伴って上方に変位し、電磁石31bが励磁すると永久磁石36はピストン32を伴って下方に変位する。なお、図示される電磁石31及び永久磁石36の態様は、一例であって、往復変位する公知のリニア駆動機器を適宜採用できる。
【0028】
そしてピストン32は、永久磁石36に同期して上下方向に変位するようシリンダ38の内部に収容されている。またシリンダ38の外側には入口室51及び出口室52が形成されている。この入口室51は、ノズル57を介して収容槽16の内部に連通し、さらに逆止弁39a,39cを介してシリンダ38の内部に連通している。そして出口室52は、逆止弁39b,39dを介してシリンダ38の内部に連通し、さらに孔部55を介してケーシング59に連通している。このように入口室51、シリンダ38の内部及び出口室52は、液体15の流路56として機能する。
【0029】
駆動軸37は、ピストン32と永久磁石36を直列に固定している。この駆動軸37の主要部はステンレス鋼で形成され、チャンバ35に設けられた2箇所の軸受け23(23a,23b)で支持されている。ピストン32側の軸受け23aの近傍にはシール部24が設けられ、シリンダ38の内部の液体15が永久磁石36側に漏出することを防止している。
【0030】
また駆動軸37の一部は、中空構造又は同じ長さで構造が同等のステンレス鋼よりも熱伝導率が低い非金属部分を含むように構成される。これにより、永久磁石36側からピストン32側への熱移動を防止し、シリンダ38内の液体15の温度上昇が抑制される。このような低熱伝導率の非金属部分として、例えば一般にGFRPと呼ばれる、ガラス繊維・炭素繊維強化プラスチックの棒材を使用できる。このGFRPは、ステンレス鋼には及ばないが、極低温において十分な機械的強度を有する。またGFRPは、強度を上げるため中実とした場合でも、中空で断面積を減らしたステンレス鋼よりも熱伝導率を下げることが可能である。
【0031】
発熱した電磁石31(31a,31b)をすり抜けた液体15は、顕熱により温度上昇し潜熱により気化する。また液体15が沸騰し二相流状態になったとしても冷却は可能である。このため、液体15の流量、圧力、温度、電磁石31のコイル抵抗、発熱量、温度などの条件を適切に調整することで、ボイル・オフ・ガス(BOG)を所定の要求値に充足できる。
【0032】
スリーブ26の下端にはポンプ30が固定され、その上端は、収容槽16の第1開口11に締結されている。真空容器17の第2開口12を閉止する閉止プレート22には、気密状態を保つ機能を持つ、ケーブル25のコネクタ27aと輸送管21を貫通させる軸封シール28とが設けられている。そしてケーブル25は、上端において閉止プレート22のコネクタ27aに接続し、下端において高温超電導材料を用いた電流リード34を介してチャンバ35のコネクタ27bに接続する。電流リード34に酸化物系の高温超電導材料(熱伝導率は銅の100分の1程度)を用いることによって外部からの熱侵入を大幅に低減できる。またケーブル25は、熱収縮時に張力が作用しないよう、撓みをもたせて接続されている。
【0033】
そして輸送管21は、上端において外部配管の継手29と接続し、下端においてチャンバ35の流路56に接続する。また熱アンカー19がシールド18に接続されていることで、輸送管21及びケーブル25を媒介した、閉止プレート22からポンプ30への入熱が、抑制される。なお、ポンプ30として、リニア駆動式により作動する複動式往復ポンプを例示したが、単動式往復ポンプや回転式ポンプなど他の公知手段を用いてもよい。
【0034】
図5(A)(B)は移送システム20の動作説明図である。
図5(A)に示すように、ピストン32が上昇すると、入口逆止弁39aが開いて液体15が入口室51からシリンダ38の内部下側に流入する。そしてこれと同時に、シリンダ38の内部上側の液体15がピストン32で圧縮され、出口逆止弁39bが開いて出口室52に流出しさらにケーシング59の内部に流入する。このとき、入口逆止弁39c及び出口逆止弁39dは、閉止した状態となる。
【0035】
次に
図5(B)に示すように、ピストン32が下降すると、入口逆止弁39cが開いて液体15が入口室51からシリンダ38の内部上側に流入する。そしてこれと同時に、シリンダ38の内部下側の液体15がピストン32で圧縮され、出口逆止弁39dが開いて出口室52に流出しさらにケーシング59の内部に流入する。このとき、入口逆止弁39a及び出口逆止弁39bは、閉止した状態となる。
【0036】
ケーシング59の内部に流入した液体15は、電磁石31の内径側と外径側の流路56を通過し、ケーシング59に接続された輸送管21に流出する。輸送管21を流動する液体15は、閉止プレート22(
図3)を通過してタンク10の外に供給される。このとき、電磁石31が一般的な銅やアルミニウムを主成分とした線材から構成される常電導コイルの場合、コイル巻線の電気抵抗による損失(銅損)、磁界とその変化による損失(鉄損)、電磁石31内の摩擦や空気抵抗などによる損失(機械損)で、発熱が生じる。ケーシング59を流れる液体15は、対流熱伝達により発熱した電磁石31のコイルを除熱する。加温された液体15は輸送管21に導かれ、タンク10の外に運ばれる。
【0037】
(第2実施形態)
次に
図6を参照して本発明における第2実施形態について説明する。
図6(A)は第2実施形態における移送システム20B(20)の部分縦断面図である。
図6(B)はその横断面図である。
図6(C)は横断面の部分拡大図である。第2実施形態では、上述した第1実施形態の構成と対比して、次のように異なる構成を持つ。すなわち、電磁石31が、ピストン32の往復運動に対し同軸で多重(図示は、二重)の円筒構造を持ち、流路56として、この円筒構造の隙間が機能している。なお、
図6において
図3と共通の構成又は機能を有する部分は、同一符号で示し、重複する説明を省略する。
【0038】
図6(C)に示すように第2実施形態の移送システム20Bでは、電磁石31の厚さ方向の一部にも、流路56が設けられている。ここで一例としてコイル間の流路56が1つの場合の構成を示しているが、複数設けてもよい。このコイル間の流路56は、スペーサ33が設けられている。スペーサ33は、絶縁性を持つGFRPなどを、円周方向のコイル巻線方向に沿って流路56が形成されるように設けてもよい。
【0039】
このように流路56が構成されることにより、電磁石31の発熱量が大きい場合であってもコイル冷却を効率良くできる。特に後述するように電磁石31が超電導コイルの場合は、コイル内部の温度が臨界温度以上に高くなると超電導状態を維持できなくなるため、このような冷却が有効となる。
【0040】
(第3実施形態)
次に
図7を参照して本発明における第3実施形態について説明する。
図7は第3実施形態における移送システム20C(20)の部分縦断面図である。第3実施形態では、上述した第1実施形態の構成と対比して、次のように異なる構成を持つ。すなわち、流路56は、電磁石31の外周に螺旋状に形成されている。なお、
図7において
図1と共通の構成又は機能を有する部分は、同一符号で示し、重複する説明を省略する。
【0041】
図7に示すように第3実施形態の移送システム20Cでは、電磁石31の周囲にヒートシンク54を介して伝熱管58が螺旋状に設置されている。ピストン32により押し出された液体15は出口室52に接続された伝熱管58に流入し、熱交換しながら電磁石31を冷却し、輸送管21を通ってタンク外に供給される。なお伝熱管58およびヒートシンク54には、アルミニウム合金や銅合金など高熱伝導の材料を使用することが望ましい。
このような冷却構成にすることにより、電磁石31のコイルを液体15で濡らすことがなくなり、電流ショートのリスクを低減し、構造も簡素化できる。
【0042】
(第4実施形態)
次に
図3、
図6及び
図7を参照して本発明における第4実施形態について説明する。第4実施形態では、上述した第1実施形態から第3実施形態の構成と対比して、電磁石31が超電導電磁石である点で異なる構成を持つ。種類によって液体15の沸点が異なるため、超電導状態であってもコイル線材に流せる最大電流(臨界電流)は温度によって変化する。このため、液体15の種類によって適切な超電導コイル線材の種類も変化する。
【0043】
20K未満の温度域では、例えば、二ホウ化マグネシウム(MgB2)やニオブチタン(NbTi)のような金属系の低温超電導線材が使用される。一方、20K以上では、一般的にREBCOと呼ばれる銅酸化物系の高温超電導線材が使用される。超電導電磁石を使用した場合、上述した常電導電磁石と比較して、電流密度を10倍以上高くできるため、電磁石31の体積を10分の1以下にすることができる。このため、小型の収容槽16に設置するポンプ30の電磁石31の小型化・軽量化が図れ、超電導状態で電気抵抗がゼロになるため銅損なしで作動させることができる。
【0044】
以上述べた少なくともひとつの実施形態の液体の貯蔵タンクによれば、液体に流動圧を付与するポンプを、収容槽の内部において輸送管の先端に設けることにより、貫通部品を削減しタンクへの入熱を低減して、液体の気化損失を低減させることができる。これにより、省スペース性にも優れ、極低温液体の貯蔵に適したタンクの提供が可能となる。
【0045】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更、組み合わせを行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0046】
10…貯蔵タンク、11…第1開口、12…第2開口、15…液体、16…収容槽、17…真空容器、18…シールド、19…熱アンカー、20(20A,20B,20C)…移送システム、21…輸送管、22…閉止プレート、24…シール部、25…ケーブル、26…スリーブ、27(27a,27b)…コネクタ、28…軸封シール、29…継手、30…ポンプ、31(31a,31b)…電磁石、32…ピストン、33…スペーサ、34…電流リード、35…チャンバ、36…永久磁石、37…駆動軸、38…シリンダ、39(39a,39b,39c,39d)…逆止弁、40…冷却機、41…コールドヘッド、42…伸縮継手、45…本体部、48…垂直サポート、49…水平サポート、51…入口室、52…出口室、54…ヒートシンク、55…孔部、56…流路、57…ノズル、58…伝熱管、59…ケーシング。