(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024157923
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】バックアップ電源装置及び切替制御回路
(51)【国際特許分類】
H02M 3/00 20060101AFI20241031BHJP
【FI】
H02M3/00 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023072596
(22)【出願日】2023-04-26
(71)【出願人】
【識別番号】000002037
【氏名又は名称】新電元工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】林 正明
【テーマコード(参考)】
5H730
【Fターム(参考)】
5H730AA14
5H730AA15
5H730AS04
5H730AS05
5H730AS08
5H730AS17
5H730BB13
5H730BB14
5H730BB57
5H730DD03
5H730DD04
5H730DD16
5H730EE13
5H730FD11
(57)【要約】
【課題】コストを抑制する。
【解決手段】入力端子に入力される電圧が入力閾値電圧より高い場合には、第1レベルの切替制御信号を出力し、入力端子に入力される電圧が入力閾値電圧より低い場合には、第2レベルの切替制御信号を出力する切替制御回路と、切替制御信号が第1レベルの場合には、第1端子に入力される電圧を降圧して第2端子から出力し、切替制御信号が第2レベルの場合には、第2端子に入力される電圧を昇圧して第1端子から出力する双方向コンバータと、一端が第2端子に電気的に接続された第1コンデンサと、一端が基準電位に電気的に接続された第2コンデンサと、切替制御信号が第1レベルの場合には、第1コンデンサの他端を基準電位に電気的に接続するとともに、第2コンデンサの他端を第2端子に電気的に接続し、切替制御信号が第2レベルの場合には、第1コンデンサの他端を第2コンデンサの他端に電気的に接続する切替回路と、を含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力端子と、出力端子と、前記出力端子に電気的に接続されたノードと、アノードが前記入力端子に電気的に接続され、カソードが前記ノードに電気的に接続された入力整流素子と、を有する端子部と、
前記入力端子に入力される電圧が入力閾値電圧より高い場合には、第1レベルの切替制御信号を出力し、前記入力端子に入力される電圧が入力閾値電圧より低い場合には、第2レベルの前記切替制御信号を出力する切替制御回路と、
第1端子及び第2端子を有し、前記第1端子は前記ノードに電気的に接続されており、前記切替制御信号が前記第1レベルの場合には、前記第1端子に入力される電圧を降圧して前記第2端子から出力し、前記切替制御信号が前記第2レベルの場合には、前記第2端子に入力される電圧を昇圧して前記第1端子から出力する双方向コンバータと、
一端が前記第2端子に電気的に接続された第1コンデンサと、
一端が基準電位に電気的に接続された第2コンデンサと、
前記切替制御信号が前記第1レベルの場合には、前記第1コンデンサの他端を基準電位に電気的に接続するとともに、前記第2コンデンサの他端を前記第2端子に電気的に接続し、前記切替制御信号が前記第2レベルの場合には、前記第1コンデンサの他端を前記第2コンデンサの他端に電気的に接続する切替回路と、
を含む、
ことを特徴とする、バックアップ電源装置。
【請求項2】
前記切替制御信号が前記第1レベルの場合に、前記入力端子に入力される電圧は、前記第1コンデンサ及び前記第2コンデンサの電圧より高く、
前記切替制御信号が前記第2レベルの場合に、前記出力端子から出力される電圧は、前記第1コンデンサの電圧と前記第2コンデンサの電圧とを足した電圧より高い、
ことを特徴とする、請求項1に記載のバックアップ電源装置。
【請求項3】
前記切替回路は、
第1端が前記第2端子に電気的に接続され、第2端が前記第2コンデンサの他端に電気的に接続され、第3端に前記切替制御信号が入力される第1スイッチング素子と、
第1端が前記第2コンデンサの他端に電気的に接続され、第2端が前記第1コンデンサの他端に電気的に接続され、第3端に前記切替制御信号を論理反転した反転切替制御信号が入力される第2スイッチング素子と、
第1端が前記第1コンデンサの他端に電気的に接続され、第2端が基準電位に電気的に接続され、第3端に前記切替制御信号が入力される第3スイッチング素子と、
を含む、
ことを特徴とする、請求項1に記載のバックアップ電源装置。
【請求項4】
前記第1スイッチング素子、前記第2スイッチング素子及び前記第3スイッチング素子は、Nチャネルトランジスタである、
ことを特徴とする、請求項3に記載のバックアップ電源装置。
【請求項5】
前記切替制御回路は、
前記切替制御信号を前記第1スイッチング素子の第3端及び前記第3スイッチング素子の第3端に出力するバッファ回路と、
前記反転切替制御信号を前記第2スイッチング素子の第3端に出力する反転バッファ回路と、
を含み、
前記バッファ回路及び前記反転バッファ回路は、前記ノードから電源供給される、
ことを特徴とする、請求項4に記載のバックアップ電源装置。
【請求項6】
前記第1コンデンサ及び前記第2コンデンサの各々は、
1個の電気二重層コンデンサ、並列接続された2個の電気二重層コンデンサ、直列接続された2個の電気二重層コンデンサ、又は、並列接続且つ直列接続された4個の電気二重層コンデンサである、
ことを特徴とする、請求項1に記載のバックアップ電源装置。
【請求項7】
入力端子と、出力端子と、前記出力端子に電気的に接続されたノードと、アノードが前記入力端子に電気的に接続され、カソードが前記ノードに電気的に接続された入力整流素子と、を有する端子部と、第1端子及び第2端子を有し、前記第1端子は前記ノードに電気的に接続されており、切替制御信号が第1レベルの場合には、前記第1端子に入力される電圧を降圧して前記第2端子から出力し、前記切替制御信号が第2レベルの場合には、前記第2端子に入力される電圧を昇圧して前記第1端子から出力する双方向コンバータと、一端が前記第2端子に電気的に接続された第1コンデンサと、一端が基準電位に電気的に接続された第2コンデンサと、前記切替制御信号が前記第1レベルの場合には、前記第1コンデンサの他端を基準電位に電気的に接続するとともに、前記第2コンデンサの他端を前記第2端子に電気的に接続し、前記切替制御信号が前記第2レベルの場合には、前記第1コンデンサの他端を前記第2コンデンサの他端に電気的に接続する切替回路と、を含む、バックアップ電源装置の切替制御回路であって、
前記入力端子に入力される電圧が入力閾値電圧より高い場合には、前記第1レベルの前記切替制御信号を出力し、前記入力端子に入力される電圧が前記入力閾値電圧より低い場合には、前記第2レベルの前記切替制御信号を出力する、
ことを特徴とする、切替制御回路。
【請求項8】
前記入力端子に入力される電圧が下降して、第1入力閾値電圧より低くなった場合に、前記第2レベルの前記切替制御信号を出力し、前記入力端子に入力される電圧が上昇して、第2入力閾値電圧より高くなった場合に、前記第1レベルの前記切替制御信号を出力する、
ことを特徴とする、請求項7に記載の切替制御回路。
【請求項9】
前記第1入力閾値電圧は、前記第2入力閾値電圧より低い、
ことを特徴とする、請求項8に記載の切替制御回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バックアップ電源装置及び切替制御回路に関する。
【背景技術】
【0002】
車両は、補機バッテリの電力を利用して動作する種々の機器を搭載している。補機バッテリとして、24Vの補機バッテリと、12Vの補機バッテリと、がある。国内では、12Vの補機バッテリが主流である。12Vの補機バッテリの電圧仕様は、6Vから16Vの範囲が例示される。
【0003】
交通事故等により補機バッテリが電力を出力できなくなった場合であっても上記機器を動作させるために、バックアップ電源装置が車両に搭載される。バックアップ電源装置の電力蓄積素子として、電気二重層コンデンサ(Electric Double-Layer Capacitor:EDLC)が用いられる。電気二重層コンデンサの電圧仕様は5V、容量仕様は50Fが例示される。
【0004】
バックアップ電力を維持する時間(例えば、5秒)を確保するために、バックアップ電源装置は、複数の電気二重層コンデンサを含むことが望ましい。複数の電気二重層コンデンサは、エネルギ効率の観点から、直列接続することが好ましい。
【0005】
特許文献1及び2には、複数のコンデンサを並列接続から直列接続に切り替えることにより、コンデンサの電圧が低下しても出力電圧を一定にする技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平10-174284号公報
【特許文献2】特開平8-168182号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
バックアップ電源装置は、補機バッテリから電気二重層コンデンサを充電する場合に補機バッテリの電圧を降圧し、電気二重層コンデンサから上記機器に電力を給電する場合に電気二重層コンデンサの電圧を昇圧する双方向コンバータを利用することが考えられる。
【0008】
補機バッテリの電圧が12Vの場合、前記双方向コンバータは、補機バッテリの電圧(12V)を降圧することにより、直列接続された2個の電気二重層コンデンサ(5V×2個=10V)を充電することが可能である。
【0009】
しかし、補機バッテリの電圧が仕様下限の6Vの場合、前記双方向コンバータは、補機バッテリから電気二重層コンデンサへ向かう方向には降圧することしかできないので、直列接続された2個の電気二重層コンデンサ(10V)を充電することができない。
【0010】
これを解決するために、SEPICコンバータ、ZETAコンバータ、CUKコンバータ等の昇降圧チョッパを利用することも考えられる。しかし、これらのコンバータは、効率が低く、また、大パワーに向かない。また、Hブリッジ回路を利用することも考えられる。しかし、Hブリッジ回路は、昇降圧の切り替えのために、入出力電圧を監視し、比較的高度な切替制御が必要となる。そのため、Hブリッジ回路は、マイクロコンピュータによる制御が必要であり、制御回路が高価になってしまう。
【0011】
本開示は、コストを抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の一態様のバックアップ電源装置は、
入力端子と、出力端子と、前記出力端子に電気的に接続されたノードと、アノードが前記入力端子に電気的に接続され、カソードが前記ノードに電気的に接続された入力整流素子と、を有する端子部と、
前記入力端子に入力される電圧が入力閾値電圧より高い場合には、第1レベルの切替制御信号を出力し、前記入力端子に入力される電圧が入力閾値電圧より低い場合には、第2レベルの前記切替制御信号を出力する切替制御回路と、
第1端子及び第2端子を有し、前記第1端子は前記ノードに電気的に接続されており、前記切替制御信号が前記第1レベルの場合には、前記第1端子に入力される電圧を降圧して前記第2端子から出力し、前記切替制御信号が前記第2レベルの場合には、前記第2端子に入力される電圧を昇圧して前記第1端子から出力する双方向コンバータと、
一端が前記第2端子に電気的に接続された第1コンデンサと、
一端が基準電位に電気的に接続された第2コンデンサと、
前記切替制御信号が前記第1レベルの場合には、前記第1コンデンサの他端を基準電位に電気的に接続するとともに、前記第2コンデンサの他端を前記第2端子に電気的に接続し、前記切替制御信号が前記第2レベルの場合には、前記第1コンデンサの他端を前記第2コンデンサの他端に電気的に接続する切替回路と、
を含む、
ことを特徴とする。
【0013】
前記バックアップ電源装置において、
前記切替制御信号が前記第1レベルの場合に、前記入力端子に入力される電圧は、前記第1コンデンサ及び前記第2コンデンサの電圧より高く、
前記切替制御信号が前記第2レベルの場合に、前記出力端子から出力される電圧は、前記第1コンデンサの電圧と前記第2コンデンサの電圧とを足した電圧より高い、
ことを特徴とする。
【0014】
前記バックアップ電源装置において、
前記切替回路は、
第1端が前記第2端子に電気的に接続され、第2端が前記第2コンデンサの他端に電気的に接続され、第3端に前記切替制御信号が入力される第1スイッチング素子と、
第1端が前記第2コンデンサの他端に電気的に接続され、第2端が前記第1コンデンサの他端に電気的に接続され、第3端に前記切替制御信号を論理反転した反転切替制御信号が入力される第2スイッチング素子と、
第1端が前記第1コンデンサの他端に電気的に接続され、第2端が基準電位に電気的に接続され、第3端に前記切替制御信号が入力される第3スイッチング素子と、
を含む、
ことを特徴とする。
【0015】
前記バックアップ電源装置において、
前記第1スイッチング素子、前記第2スイッチング素子及び前記第3スイッチング素子は、Nチャネルトランジスタである、
ことを特徴とする。
【0016】
前記バックアップ電源装置において、
前記切替制御回路は、
前記切替制御信号を前記第1スイッチング素子の第3端及び前記第3スイッチング素子の第3端に出力するバッファ回路と、
前記反転切替制御信号を前記第2スイッチング素子の第3端に出力する反転バッファ回路と、
を含み、
前記バッファ回路及び前記反転バッファ回路は、前記ノードから電源供給される、
ことを特徴とする。
【0017】
前記バックアップ電源装置において、
前記第1コンデンサ及び前記第2コンデンサの各々は、
1個の電気二重層コンデンサ、並列接続された2個の電気二重層コンデンサ、直列接続された2個の電気二重層コンデンサ、又は、並列接続且つ直列接続された4個の電気二重層コンデンサである、
ことを特徴とする。
【0018】
本発明の一態様の切替制御回路は、
入力端子と、出力端子と、前記出力端子に電気的に接続されたノードと、アノードが前記入力端子に電気的に接続され、カソードが前記ノードに電気的に接続された入力整流素子と、を有する端子部と、第1端子及び第2端子を有し、前記第1端子は前記ノードに電気的に接続されており、切替制御信号が第1レベルの場合には、前記第1端子に入力される電圧を降圧して前記第2端子から出力し、前記切替制御信号が第2レベルの場合には、前記第2端子に入力される電圧を昇圧して前記第1端子から出力する双方向コンバータと、一端が前記第2端子に電気的に接続された第1コンデンサと、一端が基準電位に電気的に接続された第2コンデンサと、前記切替制御信号が前記第1レベルの場合には、前記第1コンデンサの他端を基準電位に電気的に接続するとともに、前記第2コンデンサの他端を前記第2端子に電気的に接続し、前記切替制御信号が前記第2レベルの場合には、前記第1コンデンサの他端を前記第2コンデンサの他端に電気的に接続する切替回路と、を含む、バックアップ電源装置の切替制御回路であって、
前記入力端子に入力される電圧が入力閾値電圧より高い場合には、前記第1レベルの前記切替制御信号を出力し、前記入力端子に入力される電圧が前記入力閾値電圧より低い場合には、前記第2レベルの前記切替制御信号を出力する、
ことを特徴とする。
【0019】
前記切替制御回路において、
前記入力端子に入力される電圧が下降して、第1入力閾値電圧より低くなった場合に、前記第2レベルの前記切替制御信号を出力し、前記入力端子に入力される電圧が上昇して、第2入力閾値電圧より高くなった場合に、前記第1レベルの前記切替制御信号を出力する、
ことを特徴とする。
【0020】
前記切替制御回路において、
前記第1入力閾値電圧は、前記第2入力閾値電圧より低い、
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本開示は、コストを抑制することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】
図1は、実施の形態のバックアップ電源装置の構成を示す図である。
【
図2】
図2は、複数個の電気二重層コンデンサを含む第1コンデンサ及び第2コンデンサの構成例を示す図である。
【
図3】
図3は、複数個の電気二重層コンデンサを含む第1コンデンサ及び第2コンデンサの構成例を示す図である。
【
図4】
図4は、複数個の電気二重層コンデンサを含む第1コンデンサ及び第2コンデンサの構成例を示す図である。
【
図5】
図5は、切替回路の等価回路を示す図である。
【
図6】
図6は、等価回路の回路シミュレーション結果を示す図である。
【
図7】
図7は、スイッチング素子Q
12がオンする場合の電流経路を示す図である。
【
図8】
図8は、スイッチング素子Q
12がオフする場合の電流経路を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、添付図面を参照して、本開示に係る実施形態を詳細に説明する。なお、この実施形態により本開示が限定されるものではなく、また、以下の実施形態において、同一の部位には同一の符号を付することにより重複する説明を省略する。
【0024】
<実施の形態>
図1は、実施の形態のバックアップ電源装置の構成を示す図である。
【0025】
バックアップ電源装置1は、バッテリ2の電圧VINが入力閾値電圧より高い場合には、バッテリ2から入力端子1a及び1bを介して供給される電力を使用して、第1コンデンサ13及び第2コンデンサ14を充電する。
【0026】
バックアップ電源装置1は、バッテリ2の電圧VINが入力閾値電圧より低い場合は、第1コンデンサ13及び第2コンデンサ14に充電された電力を放電して、出力端子1cから直流電圧を出力する。出力端子1cから出力される電力は、図示しない電子機器に給電される。
【0027】
バッテリ2は、12Vの補機バッテリが例示されるが、本開示はこれに限定されない。実施の形態では、充電と放電との切替制御にヒステリシスを持たせるために、入力閾値電圧が第1入力閾値電圧VTH1及び第2入力閾値電圧VTH2の2つを含むこととするが、本開示はこれに限定されない。入力閾値電圧は、1つ(例えば、VTH1=VTH2)でも良い。
【0028】
第1コンデンサ13及び第2コンデンサ14の各々は、1個又は複数個の電気二重層コンデンサを含むことが例示されるが、本開示はこれに限定されない。
【0029】
図2から
図4は、複数個の電気二重層コンデンサを含む第1コンデンサ及び第2コンデンサの構成例を示す図である。
【0030】
図2を参照すると、第1コンデンサ13及び第2コンデンサ14の各々は、電気二重層コンデンサ51と電気二重層コンデンサ52とが並列接続されている。
【0031】
図3を参照すると、第1コンデンサ13及び第2コンデンサ14の各々は、電気二重層コンデンサ51と電気二重層コンデンサ52とが直列接続されている。
【0032】
図4を参照すると、第1コンデンサ13及び第2コンデンサ14の各々は、電気二重層コンデンサ51と電気二重層コンデンサ52とが並列接続されている。また、電気二重層コンデンサ53と電気二重層コンデンサ54とが並列接続されている。そして、電気二重層コンデンサ51及び電気二重層コンデンサ52と、電気二重層コンデンサ53及び電気二重層コンデンサ54とが直列接続されている。
【0033】
再び
図1を参照すると、バックアップ電源装置1は、端子部11と、双方向コンバータ12と、第1コンデンサ13と、第2コンデンサ14と、切替回路15と、切替制御回路16と、抵抗R
1から抵抗R
5までと、平滑コンデンサC
1と、を含む。
【0034】
端子部11は、入力端子1aと、入力端子1bと、出力端子1cと、ダイオードD1と、を含む。ダイオードD1については、MOSFETで構成された理想ダイオード等のダイオードと同等機能を持つデバイスへの置き換えも可能である。
【0035】
入力端子1aは、バッテリ2の高電位側端に電気的に接続されている。入力端子1bは、バッテリ2の低電位側端に電気的に接続されている。バッテリ2の低電位側端は、基準電位に電気的に接続されている。基準電位は、接地電位が例示されるが、本開示はこれに限定されない。
【0036】
ダイオードD1のアノードは、入力端子1aに電気的に接続されている。ダイオードD1のカソードは、ノードN1に電気的に接続されている。
【0037】
ダイオードD1は、電圧VINがノードN1の電圧VN1よりも高い場合には、バッテリ2からノードN1へ向かう電流を通過させる。ダイオードD1は、電圧VINが電圧VN1よりも低い場合には、ノードN1からバッテリ2へ向かう電流を遮断する。
【0038】
出力端子1cは、ノードN1に電気的に接続されている。
【0039】
抵抗R1の一端は、高電位側の入力端子1aに電気的に接続されている。抵抗R1の他端は、抵抗R2の一端に電気的に接続されている。抵抗R2の他端は、低電位側の入力端子1bに電気的に接続されている。抵抗R1及び抵抗R2は、電圧VINを抵抗分圧した電圧V1を、切替制御回路16に出力する。つまり、V1=VIN÷(R1+R2)×R2である。
【0040】
平滑コンデンサC1の一端は、ノードN1に電気的に接続されている。平滑コンデンサC1の他端は、入力端子1bに電気的に接続されている。平滑コンデンサC1は、電圧VN1を平滑化する。
【0041】
バックアップ電源装置1が第1コンデンサ13及び第2コンデンサ14を充電する場合には、電圧VN1は、入力電圧、つまり電圧VINである。バックアップ電源装置1が第1コンデンサ13及び第2コンデンサ14を放電させる場合には、電圧VN1は、出力電圧である。
【0042】
双方向コンバータ12は、スイッチング素子Q1及びスイッチング素子Q2と、コイルL1と、スイッチング制御回路21と、を含む昇降圧チョッパである。
【0043】
実施の形態では、双方向コンバータ12の回路例を記したが、本開示はこれに限定されない。
【0044】
実施の形態では、各スイッチング素子がNチャネル型のMOSFETであることとしたが、本開示はこれに限定されない。各スイッチング素子は、Pチャネル型のMOSFET、シリコンパワーデバイス、GaNパワーデバイス、SiCパワーデバイス(例えば、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor))などでも良い。
【0045】
各トランジスタは、積極的に電流を流すことができる寄生ダイオード(ボディダイオード)を有する、又は、逆並列にダイオードが接続されている。寄生ダイオードとは、MOSFETのバックゲートとソース及びドレインとの間のpn接合である。
【0046】
双方向コンバータ12の端子12aは、ノードN1に電気的に接続されている。スイッチング素子Q1のドレインは、端子12aに電気的に接続されている。スイッチング素子Q1のソースは、コイルL1の一端及びスイッチング素子Q2のドレインに電気的に接続されている。スイッチング素子Q1のゲートには、スイッチング制御信号S1がスイッチング制御回路21から入力される。
【0047】
スイッチング素子Q2のソースは、入力端子1bを介して、基準電位に電気的に接続されている。スイッチング素子Q2のゲートには、スイッチング制御信号S2がスイッチング制御回路21から入力される。
【0048】
コイルL1の他端は、双方向コンバータ12の端子12bに電気的に接続されている。
【0049】
後述するように、切替制御回路16は、バッテリ2の電圧VINが入力閾値電圧より高い場合に、ハイレベルの信号S22をスイッチング制御回路21に出力する。また、切替制御回路16は、バッテリ2の電圧VINが入力閾値電圧より低い場合に、ローレベルの信号S22をスイッチング制御回路21に出力する。
【0050】
スイッチング制御回路21は、切替制御回路16から入力される信号S22がハイレベルの場合(バッテリ2の電圧VINが入力閾値電圧より高い場合)に、双方向コンバータ12が降圧コンバータとして動作するように、スイッチング素子Q1及びスイッチング素子Q2を制御する。スイッチング制御回路21は、信号S22がローレベルの場合(バッテリ2の電圧VINが入力閾値電圧より低い場合)に、双方向コンバータ12が昇圧コンバータとして動作するように、スイッチング素子Q1及びスイッチング素子Q2を制御する。
【0051】
双方向コンバータ12は、信号S22がハイレベルの場合(バッテリ2の電圧VINが入力閾値電圧より高い場合)には、端子12aに入力される電圧VN1を降圧し、電圧V2を端子12bから出力する。双方向コンバータ12は、信号S22がローレベルの場合(バッテリ2の電圧VINが入力閾値電圧より低い場合)には、端子12bに入力される電圧V2を昇圧し、電圧VN1を端子12aから出力する。
【0052】
スイッチング制御回路21は、スイッチング素子Q1及びスイッチング素子Q2のスイッチング周波数で変化する(同期する)信号S3を、切替制御回路16に出力する。
【0053】
切替回路15は、スイッチング素子Q11からスイッチング素子Q13までと、抵抗R11から抵抗R13までと、を含む。切替回路15には、信号S23及び信号S24が切替制御回路16から入力される。
【0054】
スイッチング素子Q11が、本開示の「第1スイッチング素子」の一例に相当する。スイッチング素子Q12が、本開示の「第2スイッチング素子」の一例に相当する。スイッチング素子Q13が、本開示の「第3スイッチング素子」の一例に相当する。
【0055】
後述するように、切替制御回路16から切替回路15に入力される信号S23と信号S24とは、論理反転した信号である。ここでは、図示していないが、スイッチング素子Q11、Q12、Q13のスイッチングのタイミングで、瞬間的に同時オンタイミングが発生し貫通電流が流れないように、スイッチング素子Q11、Q12、Q13がすべてオフするデッドタイムを有する。切替制御回路16は、バッテリ2の電圧VINが入力閾値電圧より高い場合に、ハイレベルの信号S23及びローレベルの信号S24を出力する。また、切替制御回路16は、バッテリ2の電圧VINが入力閾値電圧より低い場合に、ローレベルの信号S23及びハイレベルの信号S24を出力する。
【0056】
スイッチング素子Q11のドレインは、端子12bに電気的に接続されている。スイッチング素子Q11のソースは、スイッチング素子Q12のドレインに電気的に接続されている。スイッチング素子Q11のゲートには、信号S23が抵抗R3を介して切替制御回路16から入力される。抵抗R11は、スイッチング素子Q11のゲートとソースとの間に、電気的に接続されている。
【0057】
スイッチング素子Q11の寄生ダイオードD11は、スイッチング素子Q11、Q12及びQ13の全部がオフの期間に、コイルL1のエネルギの吐き出しルートになり得る。また、スイッチング素子Q11の寄生ダイオードD11は、スイッチング素子Q11がオン、オフする際のドライブルートになり得る。
【0058】
スイッチング素子Q12のソースは、スイッチング素子Q13のドレインに電気的に接続されている。スイッチング素子Q12のゲートには、信号S24が抵抗R4を介して切替制御回路16から入力される。抵抗R12は、スイッチング素子Q12のゲートとソースとの間に、電気的に接続されている。
【0059】
スイッチング素子Q12の寄生ダイオードD12は、スイッチング素子Q11、Q12及びQ13の全部がオフの期間に、コイルL1のエネルギの吐き出しルートになり得る。また、スイッチング素子Q12の寄生ダイオードD12は、スイッチング素子Q12がオン、オフする際のドライブルートになり得る。
【0060】
なお、先に触れたように、信号S23と信号S24とは、論理反転しており且つデッドタイムを有する信号である。そのため、スイッチング素子Q12がオン、オフする瞬間は、スイッチング素子Q11及びスイッチング素子Q13がオフ状態である。従って、スイッチング素子Q12のドライブルートについて検討する必要がある。スイッチング素子Q12のドライブルートについては、後で詳細に検討する。
【0061】
スイッチング素子Q13のソースは、入力端子1bを介して基準電位に電気的に接続されている。スイッチング素子Q13のゲートには、信号S23が抵抗R5を介して切替制御回路16から入力される。抵抗R13は、スイッチング素子Q13のゲートとソースとの間に、電気的に接続されている。
【0062】
スイッチング素子Q13の寄生ダイオードD13は、スイッチング素子Q11、Q12及びQ13の全部がオフの期間に、コイルL1のエネルギの吐き出しルートになり得る。また、スイッチング素子Q13の寄生ダイオードD13は、スイッチング素子Q13がオン、オフする際のドライブルートになり得る。
【0063】
スイッチング素子Q11及びスイッチング素子Q13は、信号S23がハイレベルの場合にオン状態になる。スイッチング素子Q11は、オン状態の場合に、第2コンデンサ14の他端と端子12bとの間を電気的に接続する。スイッチング素子Q13は、オン状態の場合に、第1コンデンサ13の他端と基準電位との間を電気的に接続する。つまり、第1コンデンサ13と第2コンデンサ14とは、並列接続されることになる。スイッチング素子Q11及びスイッチング素子Q13は、信号S23がローレベルの場合にオフ状態になる。
【0064】
スイッチング素子Q12は、信号S24がハイレベルの場合にオン状態になる。スイッチング素子Q12は、オン状態の場合に、第1コンデンサ13の他端と第2コンデンサ14の他端との間を電気的に接続する。つまり、第1コンデンサ13と第2コンデンサ14とは、直列接続されることになる。スイッチング素子Q12は、信号S24がローレベルの場合にオフ状態になる。
【0065】
以上を総合すると、切替回路15は、信号S23がハイレベル且つ信号S24がローレベルの場合(バッテリ2の電圧VINが入力閾値電圧より高い場合)に、第1コンデンサ13と第2コンデンサ14とを並列接続する。
【0066】
また、切替回路15は、信号S23がローレベル且つ信号S24がハイレベルの場合(バッテリ2の電圧VINが入力閾値電圧より低い場合)に、第1コンデンサ13と第2コンデンサ14とを直列接続する。
【0067】
切替制御回路16は、比較回路31と、ワンショット回路32と、フリップフロップ33と、バッファ回路34と、反転バッファ回路35と、を含む。
【0068】
比較回路31は、電圧V1に基づいて、ヒステリシスをもって切り替わる信号S11をフリップフロップ33の入力端子(D端子)に出力する。
【0069】
比較回路31は、コンパレータ41と、反転回路42と、双方向スイッチ43及び44と、定電圧源45及び46と、を含む。
【0070】
定電圧源45は、電圧VT1を出力する。定電圧源46は、電圧VT2を出力する。ここで、VT1<VT2である。
【0071】
コンパレータ41は、反転入力端子(-端子)に入力される電圧V1が非反転入力端子(+端子)に入力される電圧より低い場合には、ハイレベルの信号S11を出力する。コンパレータ41は、反転入力端子(-端子)に入力される電圧V1が非反転入力端子(+端子)に入力される電圧より高い場合には、ローレベルの信号S11を出力する。
【0072】
双方向スイッチ44は、信号S11がハイレベルの場合にオン状態になり、電圧VT2をコンパレータ41の非反転入力端子(+端子)に出力する。
【0073】
反転回路42は、信号S11を論理反転した信号S12を双方向スイッチ43に出力する。双方向スイッチ43は、信号S12がハイレベルの場合にオン状態になり、電圧VT1をコンパレータ41の非反転入力端子(+端子)に出力する。
【0074】
比較回路31の動作について説明する。
【0075】
まず、電圧VINが高電圧(第2入力閾値電圧VTH2より高い電圧)から低電圧(第1入力閾値電圧VTH1より低い電圧)へ下降する場合、即ち電圧V1が高電圧(電圧VT2より高い電圧)から低電圧(電圧VT1より低い電圧)へ下降する場合について説明する。
【0076】
なお、第1入力閾値電圧VTH1は、VTH1=VT1×(R1+R2)÷R2、第2入力閾値電圧VTH2は、VTH2=VT2×(R1+R2)÷R2で表すことができる。
【0077】
電圧V1が電圧VT2より高い場合、コンパレータ41から出力される信号S11はローレベルである。又、反転回路42から出力される信号S12はハイレベルである。よって、双方向スイッチ43はオン状態、双方向スイッチ44はオフ状態であり、コンパレータ41の非反転入力端子(+端子)には、電圧VT1が出力されている。ここから、電圧V1が下降して電圧VT1より低くなると、コンパレータ41は、信号S11をローレベルからハイレベルに変化させる。反転回路42は、信号S12をハイレベルからローレベルに変化させる。これにより、双方向スイッチ43は、オフ状態になる。双方向スイッチ44は、オン状態になり、電圧VT2をコンパレータ41の非反転入力端子(+端子)に出力する。
【0078】
次に、電圧VINが低電圧(第1入力閾値電圧VTH1より低い電圧)から高電圧(第2入力閾値電圧VTH2より高い電圧)へ上昇する場合、即ち電圧V1が低電圧(電圧VT1より低い電圧)から高電圧(電圧VT2より高い電圧)へ上昇する場合について説明する。
【0079】
電圧V1が電圧VT1より低い場合、コンパレータ41から出力される信号S11はハイレベルである。又、反転回路42から出力される信号S12はローレベルである。よって、双方向スイッチ43はオフ状態、双方向スイッチ44はオン状態であり、コンパレータ41の非反転入力端子(+端子)には、電圧VT2が出力されている。ここから、電圧V1が上昇して電圧VT2より高くなると、コンパレータ41は、信号S11をハイレベルからローレベルに変化させる。これにより、双方向スイッチ44は、オフ状態になる。反転回路42は、信号S12をローレベルからハイレベルに変化させる。これにより、双方向スイッチ43は、オン状態になり、電圧VT1をコンパレータ41の非反転入力端子(+端子)に出力する。
【0080】
なお、信号S11にヒステリシスを持たせなくても良い場合には、1つの入力電圧閾値(例えば、VTH1=VTH2)を設定すれば良い。
【0081】
ワンショット回路32は、信号S3が例えばローレベルからハイレベルに変化した場合に、ワンショットの信号S21をフリップフロップ33のトリガ端子(T端子)に出力する。
【0082】
フリップフロップ33のトリガ端子(T端子)には、信号S21が入力される。先に説明したように、信号S3は、スイッチング素子Q1及びスイッチング素子Q2のスイッチング周波数で変化する(同期する)信号である。従って、フリップフロップ33は、スイッチング素子Q1及びスイッチング素子Q2のスイッチングに同期して、入力端子(D端子)に入力される信号S11をラッチする。
【0083】
フリップフロップ33は、入力端子(D端子)に入力される信号S11を、トリガ端子(T端子)に入力される信号S21の変化タイミングでラッチする。そして、フリップフロップ33は、信号S11を論理反転した信号S22を、反転出力端子(Qバー端子)から、スイッチング制御回路21、バッファ回路34及び反転バッファ回路35に出力する。
【0084】
バッファ回路34は、信号S22の電圧レベルを変換した信号S23を、抵抗R3を介してスイッチング素子Q11のゲートに出力する。また、バッファ回路34は、信号S23を、抵抗R5を介してスイッチング素子Q13のゲートに出力する。
【0085】
反転バッファ回路35は、信号S22を論理反転し電圧レベルを変換した信号S24を、抵抗R4を介してスイッチング素子Q12のゲートに出力する。
【0086】
なお、先に触れたように、信号S23と信号S24とは、デッドタイムを有する。これは、例えば、バッファ回路34が信号S23の立ち上がりに遅延を持たせ、且つ、反転バッファ回路35が信号S24の立ち上がりに遅延を持たせることで、実現可能である。
【0087】
信号S22及び信号S23が、本開示の「切替制御信号」の一例に相当する。信号S24が、本開示の「反転切替制御信号」の一例に相当する。
【0088】
バックアップ電源装置1の全体動作について説明する。
【0089】
まず、電圧VINが第2入力閾値電圧VTH2より高い場合(即ち、電圧V1が電圧VT2より高い場合)について、説明する。
【0090】
この場合、コンパレータ41は、ローレベルの信号S11を出力する。フリップフロップ33は、ハイレベルの信号S22を出力する。
【0091】
これにより、双方向コンバータ12は、降圧コンバータとして動作する。
【0092】
バッファ回路34は、ハイレベルの信号S23を、スイッチング素子Q11及びスイッチング素子Q13のゲートに出力する。反転バッファ回路35は、ローレベルの信号S24を、スイッチング素子Q12のゲートに出力する。
【0093】
これにより、切替回路15は、第1コンデンサ13と第2コンデンサ14とを並列接続する。
【0094】
従って、バックアップ電源装置1は、バッテリ2から供給される電力を利用して、並列接続された第1コンデンサ13及び第2コンデンサ14を充電する。
【0095】
例えば、電圧VINを、12Vの補機バッテリの仕様下限の6Vとする。また、第1コンデンサ13及び第2コンデンサ14の各々の電圧仕様を、5Vとする。この場合、バックアップ電源装置1は、電圧VIN(6V)を降圧することにより、並列接続された第1コンデンサ13及び第2コンデンサ14(何れも5V)を充電することが可能である。
【0096】
次に、電圧VINが下降して第1入力閾値電圧VTH1より低くなった場合(即ち、電圧V1が電圧VT1より低くなった場合)について説明する。
【0097】
この場合、コンパレータ41は、ハイレベルの信号S11を出力する。フリップフロップ33は、ローレベルの信号S22を出力する。
【0098】
これにより、双方向コンバータ12は、昇圧コンバータとして動作する。
【0099】
バッファ回路34は、ローレベルの信号S23を、スイッチング素子Q11及びスイッチング素子Q13のゲートに出力する。反転バッファ回路35は、ハイレベルの信号S24を、スイッチング素子Q12のゲートに出力する。
【0100】
これにより、切替回路15は、第1コンデンサ13と第2コンデンサ14とを直列接続する。
【0101】
従って、バックアップ電源装置1は、直列接続された第1コンデンサ13及び第2コンデンサ14から供給される電力を放電して、出力電圧(電圧VN1)を出力端子1cから外部機器に出力する。
【0102】
例えば、電圧VINを、12Vの補機バッテリの仕様下限より低い4Vとする。また、第1コンデンサ13及び第2コンデンサ14の各々の電圧を、5Vとする。この場合、バックアップ電源装置1は、直列接続された第1コンデンサ13及び第2コンデンサ14の電圧(5V+5V=10V)を昇圧することにより、電圧VN1(12V)を出力することが可能である。
【0103】
(スイッチング素子Q12のドライブルートの検討)
スイッチング素子Q12のドライブルートについて検討する。
【0104】
先に説明したように、信号S
23と信号S
24とは、論理反転しており且つデッドタイムを有する信号である。そのため、スイッチング素子Q
12がオン、オフする瞬間は、スイッチング素子Q
11及びスイッチング素子Q
13がオフ状態である。従って、スイッチング素子Q
12のドライブルートを検討する場合に、切替回路15は、
図5の等価回路61で表すことができる。
【0105】
【0106】
スイッチング素子Q11はオフ状態であるので、等価回路61は、第1コンデンサ13及びスイッチング素子Q11を含まないものとして考えることができる。また、スイッチング素子Q13はオフ状態であるので、等価回路61は、抵抗値が非常に高い抵抗R21と寄生ダイオードD13との並列接続回路を含むものとして考えることができる。反転バッファ回路35は、パルス信号出力回路62に置き換えて考えることができる。
【0107】
この等価回路61において、信号S24がハイレベル時の電圧を12V、抵抗R4の抵抗値を50Ω(オーム)、抵抗R12の抵抗値を30kΩ、抵抗R21の抵抗値を100MΩ、第2コンデンサ14の電圧を5Vとして、回路シミュレーションを実施した。
【0108】
図6は、等価回路の回路シミュレーション結果を示す図である。
【0109】
線101は、スイッチング素子Q
12のドレイン電流I
D(
図5参照)を示す。線102は、スイッチング素子Q
12のゲートドライブ電流I
G(
図5参照)を示す。線103は、スイッチング素子Q
12のゲート-ソース間電圧V
GSを示す。線104は、信号S
24を示す。
【0110】
まず、スイッチング素子Q
12がオンする場合(
図6のタイミングt
0参照)について説明する。
【0111】
ゲートドライブ電流IG(線102参照)とドレイン電流ID(線101参照)とは、同じ波形となっている。このとき、ドレイン電流IDは、ゲートドライブ電流IG以外に流れる経路がない。つまり、ゲートドライブ電流IGは、スイッチング素子Q12のドレインを介して流れていることになる。
【0112】
信号S24が閾値に達するまで、即ち、スイッチング素子Q12がオフの場合は、ゲートドライブ電流IGは、パルス信号出力回路62→抵抗R4→スイッチング素子Q12のゲート-ソース間→寄生ダイオードD12→第2コンデンサ14→パルス信号出力回路62の経路に流れる。
【0113】
信号S24が閾値に達した後、即ち、スイッチング素子Q12がオンした後は、ゲートドライブ電流IGは、パルス信号出力回路62→抵抗R4→スイッチング素子Q12のゲート-ソース間→スイッチング素子Q12のチャネル→第2コンデンサ14→パルス信号出力回路62の経路に流れる。
【0114】
図7は、スイッチング素子Q
12がオンする場合の電流経路を示す図である。
【0115】
信号S24が閾値に達するまで、及び、信号S24が閾値に達した後の何れの場合も、ゲートドライブ電流IGは、パルス信号出力回路62→抵抗R4→スイッチング素子Q12→第2コンデンサ14→パルス信号出力回路62の経路111に流れる。
【0116】
次に、スイッチング素子Q
12がオフする場合(
図6のタイミングt
1参照)について説明する。
【0117】
ゲートドライブ電流IG(線102参照)とドレイン電流ID(線101参照)とは、同じ波形となっている。
【0118】
信号S24が閾値以上、即ち、スイッチング素子Q12がオンの場合は、ゲートドライブ電流IGは、スイッチング素子Q12のゲート→抵抗R4→パルス信号出力回路62→第2コンデンサ14→スイッチング素子Q12のチャネル→スイッチング素子Q12のソースの経路に流れる。
【0119】
信号S24が閾値未満になった後、即ち、スイッチング素子Q12がオフした後は、ゲートドライブ電流IGは、スイッチング素子Q12のゲート→抵抗R4→パルス信号出力回路62→第2コンデンサ14→スイッチング素子Q12のドレイン-ソース間容量→スイッチング素子Q12のソースの経路に流れる。
【0120】
スイッチング素子Q12がオフすると、スイッチング素子Q12のチャネル経路は閉ざされる。しかし、スイッチング素子Q12には、スイッチング素子Q12のドレイン-ソース間容量を介して、第2コンデンサ14の電圧によって逆バイアスが掛かっている。従って、スイッチング素子Q12のゲート-ソース間は、スイッチング素子Q12のドレイン-ソース間容量とゲート-ソース間容量との分圧で決まる電圧まで逆バイアスされ、ゲートドライブ電流IGは、引き抜かれる。
【0121】
図8は、スイッチング素子Q
12がオフする場合の電流経路を示す図である。
【0122】
信号S24が閾値以上、及び、信号S24が閾値未満に達した後の何れの場合も、ゲートドライブ電流IGは、スイッチング素子Q12のゲート→抵抗R4→パルス信号出力回路62→第2コンデンサ14→スイッチング素子Q12の経路121に流れる。
【0123】
なお、
図6では、殆どのゲートドライブ電流I
G(線102参照)は、スイッチング素子Q
12のドレインに流れている(線101参照)。しかし、スイッチング素子Q
12のオフ時のゲートドライブ電流I
Gの引き抜き経路として、寄生ダイオードD
13の経路も存在する。
【0124】
図8を参照すると、ゲートドライブ電流I
Gは、スイッチング素子Q
12のゲート→抵抗R
4→パルス信号出力回路62→寄生ダイオードD
13→スイッチング素子Q
12の経路122に流れる。
【0125】
以上のように、スイッチング素子Q12のドライブルートが確認できた。従って、スイッチング素子Q12は、信号S24に応じて、スイッチング動作を行うことが可能である。
【0126】
(効果)
[1]
バックアップ電源装置1は、バッテリ2から入力される電力を利用して第1コンデンサ13及び第2コンデンサ14を充電する場合に、第1コンデンサ13と第2コンデンサ14とを並列接続することができる。従って、バックアップ電源装置1は、電圧VINが12V補機バッテリの仕様下限の6Vの場合であっても、第1コンデンサ13及び第2コンデンサ14を充電することが可能である。
【0127】
[2]
バックアップ電源装置1は、第1コンデンサ13及び第2コンデンサ14を放電して外部機器へ電力を供給する場合、第1コンデンサ13と第2コンデンサ14とを直列接続することができる。
【0128】
次の通り、複数の電気二重層コンデンサは、放電する場合、直列接続の方が並列接続よりもエネルギ効率が良い。
【0129】
例えば、第1コンデンサ13及び第2コンデンサ14の各々を、1個のEDLCとする。各々のEDLCの仕様は、5V、50Fとする。
【0130】
第1コンデンサ13と第2コンデンサ14とが直列接続された場合、直列接続された第1コンデンサ13及び第2コンデンサ14(以下、「直列コンデンサ」と称する。)は、10V、25Fのコンデンサと等価である。第1コンデンサ13と第2コンデンサ14とが並列接続された場合、並列接続された第1コンデンサ13及び第2コンデンサ14(以下、「並列コンデンサ」と称する。)は、5V、100Fのコンデンサと等価である。直列コンデンサ及び並列コンデンサの各々が蓄えることができるエネルギは、1/2×C×V2で計算でき、1250J(ジュール)である。
【0131】
バックアップ電源装置1が、直列コンデンサ及び並列コンデンサの何れの場合も、残り何ボルトまで放電できるかは、過電流リミット値、バックアップ電流値(外部機器への出力電流値)、コイルL1のインダクタンス値、スイッチング素子Q1及びQ2のスイッチング周波数等によって、制約される。
【0132】
例えば、バックアップ電源装置1は、直列コンデンサ及び並列コンデンサの何れの場合も、残り3ボルトまで放電できることとする。
【0133】
直列コンデンサに放電されずに残るエネルギは、1/2×C×V2で計算でき、112.5Jである。従って、直列コンデンサは、1137.5Jのエネルギを放電できる。つまり、直列コンデンサは、蓄えたエネルギ(1250J)の91%を放電できる。
【0134】
並列コンデンサに放電されずに残るエネルギは、1/2×C×V2で計算でき、450Jである。従って、直列コンデンサは、800Jのエネルギを放電できる。つまり、並列コンデンサは、蓄えたエネルギ(1250J)の64%しか放電できない。
【0135】
従って、バックアップ電源装置1は、第1コンデンサ13と第2コンデンサ14とを直列接続して放電するので、エネルギ効率良く、電力を外部機器へ供給することができる。
【0136】
[3]
先に説明したように、Hブリッジ回路は、マイクロコンピュータとソフトウェアによるディジタル制御(ソフトウェア制御)が必要であり、コストが高い。一方、切替制御回路16は、ハードウェア回路(コンパレータと論理回路)で実現できるので、コストを抑制できる。
【0137】
[4]
スイッチング素子Q11、スイッチング素子Q12及びスイッチング素子Q13のゲートは、接地電位基準の信号S23及び信号S24で駆動可能である。
【0138】
スイッチング素子Q11のソースは、第2コンデンサ14の他端に電気的に接続されているので、ゲート電位は、(第2コンデンサ14の電圧(例えば、5V)と、スイッチング素子Q11のゲート-ソース間閾値電圧と、の和)だけあれば良い。
【0139】
スイッチング素子Q12のソースは、第1コンデンサ13の他端に接続されており、ドレインは、第2コンデンサ14の他端に電気的に接続されている。従って、スイッチング素子Q12のゲート電位は、(第1コンデンサ13の他端の電位(例えば、10V-5V=5V)と、スイッチング素子Q12のゲート-ソース間閾値電圧と、の和)だけあれば良い。
【0140】
従って、バッファ回路34及び反転バッファ回路35は、ノードN1から電源供給されれば、チャージポンプ等で昇圧しなくても、スイッチング素子Q11、スイッチング素子Q12及びスイッチング素子Q13を駆動できる。
【0141】
本発明のいくつかの実施の形態を説明したが、これらの実施の形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施の形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施の形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0142】
1 バックアップ電源装置
2 バッテリ
11 端子部
12 双方向コンバータ
13 第1コンデンサ
14 第2コンデンサ
15 切替回路
16 切替制御回路
21 スイッチング制御回路
31 比較回路
32 ワンショット回路
33 フリップフロップ
34 バッファ回路
35 反転バッファ回路
41 コンパレータ
42 反転回路
43、44 双方向スイッチ
45、46 定電圧源
61 等価回路
62 パルス信号出力回路
C1 平滑コンデンサ
D11、D12、D13 寄生ダイオード
L1 コイル
Q1、Q2、Q11、Q12、Q13 スイッチング素子
R1、R2、R3、R4、R5、R11、R12、R13 抵抗