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特開2024-157926実装装置、実装方法、及び電子デバイスの製造方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024157926
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】実装装置、実装方法、及び電子デバイスの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H05K 13/04 20060101AFI20241031BHJP
   H05K 3/34 20060101ALI20241031BHJP
【FI】
H05K13/04 A
H05K3/34 505B
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023072600
(22)【出願日】2023-04-26
(71)【出願人】
【識別番号】000003399
【氏名又は名称】JUKI株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】仲河 翔平
(72)【発明者】
【氏名】前川 幸毅
(72)【発明者】
【氏名】野寄 喜高
(72)【発明者】
【氏名】大野 勝彦
【テーマコード(参考)】
5E319
5E353
【Fターム(参考)】
5E319AA03
5E319CC46
5E319CD04
5E319CD27
5E319CD35
5E319GG15
5E353BC10
5E353CC01
5E353EE02
5E353EE03
5E353EE63
5E353GG33
5E353GG41
5E353GG50
5E353JJ02
5E353JJ07
5E353KK03
5E353KK11
5E353LL10
5E353MM02
5E353MM08
5E353NN18
5E353QQ12
(57)【要約】
【課題】立体基板の表面の実装位置に部品を実装する場合において、装置に依存しない基板データを用いて、実装位置を水平にすること。
【解決手段】実装装置は、立体基板を支持するステージと、立体基板に部品を実装する実装ヘッドと、立体基板の表面における部品の実装位置及び実装位置における立体基板の表面の法線ベクトルを示す基板データを記憶する基板データ記憶部と、ステージの機構パラメータを記憶するステージデータ記憶部と、基板データと機構パラメータに基づいて、法線ベクトルが所定面に直交するように、ステージを制御するステージ制御部と、実装位置における立体基板の表面の法線ベクトルが所定面に直交した状態で、実装位置に部品が実装されるように、実装ヘッドを制御するヘッド制御部を備える。
【選択図】図28
【特許請求の範囲】
【請求項1】
立体基板を支持するステージと、
前記立体基板に部品を実装する実装ヘッドと、
前記立体基板の表面における前記部品の実装位置及び前記実装位置における前記立体基板の表面の法線ベクトルを示す基板データを記憶する基板データ記憶部と、
前記ステージの機構パラメータを記憶するステージデータ記憶部と、
前記基板データと前記機構パラメータとに基づいて、前記法線ベクトルが水平面に直交するように、前記ステージを制御するステージ制御部と、
前記実装位置における前記立体基板の表面の前記法線ベクトルが前記水平面に直交した状態で、前記実装位置に前記部品が実装されるように、前記実装ヘッドを制御するヘッド制御部と、を備える、
実装装置。
【請求項2】
前記基板データと前記機構パラメータから、NCデータを作成するNCデータ変換部を持つ、
請求項1に記載の実装装置。
【請求項3】
前記NCデータと前記機構パラメータから、基板データを作成する基板データ変換部を持つ、
請求項2に記載の実装装置。
【請求項4】
ステージに支持される立体基板の表面における部品の実装位置及び前記実装位置における前記立体基板の表面の法線ベクトルを示す基板データと、前記ステージの機構パラメータとに基づいて、前記法線ベクトルが水平面に直交するように、前記ステージに制御することと、
前記実装位置における前記立体基板の表面の前記法線ベクトルが前記水平面に直交した状態で、前記実装位置に実装ヘッドで部品を実装することを含む、
実装方法。
【請求項5】
前記実装位置が修正された時のNCデータと、前記ステージの機構パラメータとに基づいて、前記基板データを作り直す、
請求項4に記載の実装方法。
【請求項6】
前記立体基板にクリーム半田を塗布することと、
請求項4に記載の実装方法で前記立体基板に前記部品を実装することを含む、
電子デバイスの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書で開示する技術は、実装装置、実装方法、及び電子デバイスの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
実装装置に係る技術分野において、特許文献1に開示されているような、立体基板に部品を実装する3次元実装装置が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2018/207313号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
立体基板に部品を実装する場合、立体基板の表面における部品の実装位置が水平になるように、立体基板を支持するステージを制御する必要がある。従来の実装装置では、各モータ軸の動作位置を記述したNCデータに基づいて部品の実装が行われる。基板が平面で水平に保たれている従来の実装装置では、実装ヘッドの動作平面と基板平面が平行であるので、実装位置のティーチング、あるいは、アライメントマーク補正によってNCデータを修正することは、単に座標位置を水平にオフセットさせるのみであり容易であった。従来のNCデータは基板の部品実装位置と対応しており、容易に基板データとして他の装置でも使用が可能であった。しかしながら、立体基板に対して、ステージを回転させる事で基板を傾斜させ、実装位置の面を水平にしながら部品を実装する場合、NCデータはステージの機構構成の影響を受ける。その為、他の装置で同じデータを使用する為には、NCデータから基板上の実装位置を示す基板データへの変換、および、基板データからNCデータへの変換が必要とされる。また、実装装置で装着位置のティーチング等でNCデータが修正された時には、NCデータから基板データへの変換が必要とされる。
【0005】
本明細書で開示する技術は、立体基板の表面の実装位置に部品を実装する場合において、複数の装置間で同じデータを使用して、実装位置を水平にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書は、実装装置を開示する。実装装置は、立体基板を支持するステージと、立体基板に部品を実装する実装ヘッドと、立体基板の表面における部品の実装位置及び実装位置における立体基板の表面の法線ベクトルを示す基板データを記憶する基板データ記憶部と、ステージの回転軸の位置等の機構パラメータを記憶するステージデータ記憶部と、機構パラメータに基づいて、法線ベクトルが所定面に直交する(基板面が水平になる)ように、ステージを制御するステージ制御部と、実装位置における立体基板の表面の法線ベクトルが所定面に直交した状態で、実装位置に部品が実装されるように、実装ヘッドを制御するヘッド制御部と、基板データからNCデータを作成するNCデータ変換部と、NCデータから基板データを作成する基板データ変換部を備える。
【発明の効果】
【0007】
本明細書で開示する技術によれば、立体基板の表面の実装位置に部品を実装する場合において、基板データから機構パラメータを使用してNCデータを作成し、実装位置を水平にした状態で部品を実装することができる。逆に、修正したNCデータから基板データを作成して、複数の装置間で共有することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、実施形態に係る基板及び部品を示す斜視図である。
図2図2は、実施形態に係る基板を支持するパレットを示す斜視図である。
図3図3は、実施形態に係る基板及びパレットを示す分解斜視図である。
図4図4は、実施形態に係る電子デバイスの生産システムを模式的に示す図である。
図5図5は、実施形態に係る実装装置、予熱装置、及びレーザ照射装置のそれぞれを模式的に示す図である。
図6図6は、実施形態に係る実装装置を模式的に示す平面図である。
図7図7は、実施形態に係る搬送装置及びステージを示す斜視図である。
図8図8は、実施形態に係る搬送装置及びステージを示す分解斜視図である。
図9図9は、実施形態に係るパレット及びステージを示す斜視図である。
図10図10は、実施形態に係るパレット及びステージを示す分解斜視図である。
図11図11は、実施形態に係る実装ヘッドを模式的に示す図である。
図12図12は、実施形態に係る管理装置の構成を概略的に示す図である。
図13図13は、実施形態に係る基板データを説明するための図である。
図14図14は、実施形態に係る電子デバイスの製造方法を示すフローチャートである。
図15図15は、実施形態に係る表示装置に表示された表示データの一例を示す図である。
図16図16は、実施形態に係る実装ヘッド及びステージの制御方法の一例を示す図である。
図17図17は、実施形態に係る実装ヘッド及びステージの制御方法の一例を示す図である。
図18図18は、実施形態に係る実装ヘッド及びステージの制御方法の一例を示す図である。
図19図19は、実施形態に係る実装ヘッド及びステージの制御方法の一例を示す図である。
図20図20は、実施形態に係る実装ヘッド及びステージの制御方法の一例を示す図である。
図21図21は、実施形態に係るティーチング処理を説明するための図である。
図22図22は、実施形態に係るティーチング処理を説明するための図である。
図23図23は、実施形態に係るティーチング処理を示すフローチャートである。
図24図24は、実施形態に係る法線ベクトルの算出方法の一例を示す図である。
図25図25は、実施形態に係る法線ベクトルの算出方法の一例を示す図である。
図26図26は、実施形態に係る法線ベクトルの算出方法の一例を示す図である。
図27図27は、実施形態に係る実装ヘッドによる実装処理を説明するための図である。
図28図28は、実施形態に係る実装ヘッドによる実装処理を説明するための図である。
図29図29は、ステージの制御方法を説明するための図である。
図30図30は、実施形態に係る実装ヘッドによる実装処理を説明するための図である。
図31図31は、実施形態に係る実装ヘッドによる実装処理を説明するための図である。
図32図32は、実施形態に係る実装処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、実施形態について図面を参照しながら説明する。実施形態においては、XYZ直交座標系を規定し、このXYZ直交座標系を参照しながら各部の位置関係について説明する。所定面のX軸に平行な方向をX軸方向とする。X軸に直交する所定面のY軸に平行な方向をY軸方向とする。所定面に直交するZ軸に平行な方向をZ軸方向とする。X軸方向を中心とする回転方向又は傾斜方向をθX方向とする。Y軸方向を中心とする回転方向又は傾斜方向をθY方向とする。Z軸方向を中心とする回転方向又は傾斜方向をθZ方向とする。実施形態において、所定面と水平面とは平行である。Z軸は鉛直軸に平行であり、Z軸方向は上下方向である。+Z側は上側であり、-Z側は下側である。なお、所定面は、水平面に対して傾斜してもよい。また、実施形態においては、X軸及びY軸を含む所定面を適宜、XY平面、と称する。
【0010】
[基板]
図1は、実施形態に係る基板1及び部品2を示す斜視図である。実施形態において、基板1は、立体基板である。立体基板とは、非平面の表面を有する基板をいう。基板1の表面は、曲面を含む。基板1の表面の少なくとも一部は、曲面状である。基板1の表面は、角部を含んでもよい。基板1の表面に突起部が設けられてもよい。
【0011】
基板1の表面に電気回路が設けられる。実施形態において、基板1は、インモールド成形技術により形成される。基板1は、曲面状の表面を有する基材1Aと、基材1Aの表面に接合されたフィルム1Bとを含む。フィルム1Bは、柔軟性がある。フィルム1Bは、フレキシブルフィルムである。フィルム1Bは、電気回路を含む。基板1の表面は、フィルム1Bの表面を含む。
【0012】
部品2は、電子部品を含む。部品2は、ボディから突出するリードを有するリード型電子部品でもよい。部品2は、リードを有しないチップ型電子部品でもよい。基板1の表面に部品2が実装されることにより、電子デバイスが製造される。
【0013】
[パレット]
図2は、実施形態に係る基板1を支持するパレット3を示す斜視図である。図3は、実施形態に係る基板1及びパレット3を示す分解斜視図である。パレット3は、基板1を支持する。実施形態において、基板1は、パレット3に支持された状態で取り扱われる。パレット3は、基板1を支持する支持部材4と、基板1を固定するクランプ機構5とを有する。
【0014】
支持部材4は、基板1を-Z側から支持するベース部4Aと、ベース部4Aの+Y側及び-Y側のそれぞれに設けられるガード部4Bと、基板1を+Y側及び-Y側のそれぞれから支持する複数のピン部4Cとを含む。
【0015】
ベース部4Aは、複数の開口を有するプレート状である。ベース部4Aに2つの孔4Dが設けられる。孔4Dは、ベース部4Aの上面と下面とを貫通する。
【0016】
ガード部4Bは、X軸方向に長い。ガード部4Bは、一対設けられる。一対のガード部4Bは、Y軸方向に相互に離れている。一方のガード部4Bは、ベース部4Aの上面の+Y側の端部から+Z側に突出する。他方のガード部4Bは、ベース部4Aの上面の-Y側の端部から+Z側に突出する。
【0017】
複数のピン部4Cのそれぞれは、ベース部4Aの上面から+Z側に突出する。一部のピン部4Cは、ベース部4Aの中心よりも+Y側に配置される。一部のピン部4Cは、ベース部4Aの中心よりも-Y側に配置される。ベース部4Aの中心よりも+Y側に配置される複数のピン部4Cは、基板1の+Y側の端部を支持する。ベース部4Aの中心よりも-Y側に配置される複数のピン部4Cは、基板1の-Y側の端部を支持する。
【0018】
クランプ機構5は、支持部材4に設けられる。クランプ機構5は、基板1を支持部材4に固定する。クランプ機構5は、基板1の-X側の端部を支持する一対の支持部5Aと、基板1の+X側の端部を支持する可動部5Bとを含む。可動部5Bは、ベース部4Aの上面においてX軸方向に移動可能である。支持部5Aと可動部5Bとの間に基板1が配置された状態で、可動部5Bが-X方向に移動することにより、基板1が支持部5Aと可動部5Bとに挟まれる。基板1は、支持部5Aと可動部5Bとに挟まれることにより、パレット3に固定される。
【0019】
実施形態において、パレット3は、情報媒体80を有する。情報媒体80は、基板1に係る基板データを保持する。実施形態において、情報媒体80は、2次元コードである。なお、情報媒体80は、1次元バーコードでもよい。情報媒体80は、RFタグでもよい。実施形態において、情報媒体80は、ベース部4Aの上面の一部に取り付けられる。情報媒体80は、基板1に重複しないように配置される。
【0020】
[生産システム]
図4は、実施形態に係る電子デバイスの生産システム10を模式的に示す図である。図4に示すように、生産システム10は、3次元計測装置11と、実装装置12と、予熱装置13と、レーザ照射装置14と、検査装置15と、管理装置16とを備える。3次元計測装置11、実装装置12、予熱装置13、レーザ照射装置14、及び検査装置15により、電子デバイスの生産ライン17が構築される。
【0021】
3次元計測装置11は、基板1の表面の3次元形状を計測する。3次元計測装置11は、例えば位相シフト法に基づいて、基板1の表面の3次元形状を計測する。実施形態において、3次元計測装置11は、パレット3に固定された基板1の表面の3次元形状を計測する。基板1は、パレット3に固定された状態で、3次元計測装置11により計測される。3次元計測装置11により計測された基板1の表面の3次元形状を示す3次元データは、管理装置16に送信される。3次元計測装置11により計測された基板1は、パレット3に固定された状態で、実装装置12に搬送される。
【0022】
実装装置12は、基板1に部品2を実装する。生産ライン17において、実装装置12は、少なくとも1台設けられる。なお、実装装置12は、複数台設けられてもよい。
【0023】
図5は、実施形態に係る実装装置12、予熱装置13、及びレーザ照射装置14のそれぞれを模式的に示す図である。図6は、実施形態に係る実装装置12を模式的に示す平面図である。
【0024】
実装装置12は、ベース部材18と、搬送装置19と、ステージ20と、ステージ移動装置21と、部品供給装置22と、ノズル23を含む実装ヘッド24と、基板カメラ25と、高さセンサ26と、ヘッド移動装置27と、ノズル移動装置28と、チャンバ29と、開閉カバー30と、窓31と、表示装置32と、入力装置33とを備える。
【0025】
ベース部材18は、搬送装置19、ステージ20、ステージ移動装置21、部品供給装置22、実装ヘッド24、ヘッド移動装置27、及びノズル移動装置28のそれぞれを支持する。
【0026】
図7図8は、実施形態に係る搬送装置19及びステージ20を示す斜視図と分解斜視図である。
【0027】
搬送装置19は、基板1を支持したパレット3をX軸方向に搬送する。搬送装置19は、3次元計測装置11から供給されたパレット3を実装装置12の処理位置に搬送する。処理位置は、搬送装置19の搬送経路に規定される。
【0028】
搬送装置19は、パレット3をX軸方向に搬送する搬送ベルト19Aと、パレット3をガイドするガイド部材19Bとを有する。
【0029】
ガイド部材19Bは、X軸方向に長い。ガイド部材19Bは、一対設けられる。一対のガイド部材19Bは、Y軸方向に相互に離れている。一方のガイド部材19Bは、パレット3よりも+Y側に配置される。他方のガイド部材19Bは、パレット3よりも-Y側に配置される。
【0030】
搬送ベルト19Aは、環状である。搬送ベルト19Aは、一対設けられる。搬送ベルト19Aは、駆動プーリ及び従動プーリを介してガイド部材19Bに支持される。搬送ベルト19Aは、駆動プーリ及び従動プーリに掛けられる。一方の搬送ベルト19Aは、一方のガイド部材19Bに支持される。他方の搬送ベルト19Aは、他方のガイド部材19Bに支持される。
【0031】
一対の搬送ベルト19Aのうち、+Y側に配置される搬送ベルト19Aは、パレット3の下面の+Y側の端部を支持する。-Y側に配置される搬送ベルト19Aは、パレット3の下面の-Y側の端部を支持する。不図示のドライブモータにより駆動プーリが回転することにより、パレット3がX軸方向に搬送される。
【0032】
不図示のアクチュエータにより、一方のガイド部材19Bは、他方のガイド部材19Bに対してY軸方向に移動可能である。一方のガイド部材19Bと他方のガイド部材19BとがY軸方向に離れることにより、搬送ベルト19Aによるパレット3の支持が解除される。
【0033】
図9は、実施形態に係るパレット3及びステージ20を示す斜視図である。図10は、実施形態に係るパレット3及びステージ20を示す分解斜視図である。
【0034】
ステージ20は、パレット3を介して基板1を支持する。ステージ20は、処理位置に搬送されたパレット3を-Z側から支持する。ステージ20の上面に2本の位置決め部材20Aが設けられる。位置決め部材20Aは、パレット3の孔4Dに挿入される。位置決め部材20Aがパレット3の-Z側から孔4Dに挿入されることにより、ステージ20とパレット3とが位置決めされる。位置決め部材20Aの上端部にフックが設けられる。フックは、パレット3に掛けられる。フックは、空気圧により移動するボールを含む。位置決め部材20Aがパレット3の-Z側から孔4Dに挿入された後、ボールがパレット3に掛けられることにより、ステージ20とパレット3とが固定される。
【0035】
ステージ移動装置21は、ステージ20を移動する。実施形態において、ステージ移動装置21は、ステージ20をY軸方向、Z軸方向、θX方向、及びθY方向のそれぞれに移動する。ステージ移動装置21は、ステージ20をY軸方向に移動する動力を発生するY軸モータと、Z軸方向に移動する動力を発生するZ軸モータと、ステージ20をθX方向に回転する動力を発生するθXモータと、ステージ20をθY方向に回転する動力を発生するθYモータとを含む。
【0036】
搬送装置19によりパレット3が処理位置に搬送された後、+Y側のガイド部材19Bが他方のガイド部材19Bから離れるように+Y方向に移動するとともに、ステージ移動装置21によりステージ20が+Z方向に移動する。+Y側のガイド部材19Bが他方のガイド部材19Bから離れるようにY軸方向に移動することにより、搬送ベルト19Aによるパレット3の支持が解除される。搬送ベルト19Aによるパレット3の支持が解除され、ステージ20が+Z方向に移動することにより、パレット3が搬送装置19からステージ20に渡される。ステージ移動装置21は、パレット3がステージ20に支持された状態で、ステージ20を2つのガイド部材19Bの中央に来るように+Y方向に移動することで、ステージ20をZ軸方向、θX方向、及びθY方向のそれぞれに移動することが可能となる。
【0037】
ステージ20から搬送装置19にパレット3を渡す場合、ステージ20がパレット3の片側が搬送ベルト19Aの上に来るまで-Y方向に移動し、+Y側のガイド部材19Bがパレット3の反対側が搬送ベルト19Aの上に来るまで-Y側に移動する。位置決め部材20Aの上端部に設けられているフックの固定が解除された後、ステージ移動装置21によりステージ20が-Z方向に移動する。これにより、ステージ20によるパレット3の支持が解除され、パレット3が搬送ベルト19Aに支持される。
【0038】
部品供給装置22は、部品2を供給する。部品供給装置22は、複数のテープフィーダを含む。テープフィーダは、複数の部品2を保持する。部品供給装置22は、複数の部品2のうち少なくとも1つの部品2を供給位置に供給する。部品供給装置22は、搬送装置19の-Y側に配置される。なお、部品供給装置22は、搬送装置19の+Y側及び-Y側のそれぞれに配置されてもよい。
【0039】
実装ヘッド24は、基板1に部品2を実装する。実装ヘッド24は、複数のノズル23を支持する。実装ヘッド24は、部品供給装置22から供給された部品2をノズル23により保持して基板1に実装する。実装ヘッド24は、部品供給装置22から部品2が供給される供給位置と、基板1が配置される処理位置との間を移動可能である。実装ヘッド24は、供給位置に供給された部品2をノズル23により保持して、処理位置に移動した後、処理位置に配置されている基板1の表面に実装する。
【0040】
ヘッド移動装置27は、実装ヘッド24を移動する。実施形態において、ヘッド移動装置27は、実装ヘッド24をX軸方向及びY軸方向のそれぞれに移動する。ヘッド移動装置27は、実装ヘッド24をX軸方向に移動するX軸移動装置27Xと、実装ヘッド24をY軸方向に移動するY軸移動装置27Yとを有する。X軸移動装置27X及びY軸移動装置27Yのそれぞれは、アクチュエータを含む。X軸移動装置27Xは、実装ヘッド24に連結される。X軸移動装置27Xの作動により、実装ヘッド24がX軸方向に移動する。Y軸移動装置27Yは、X軸移動装置27Xを介して実装ヘッド24に連結される。Y軸移動装置27Yの作動によりX軸移動装置27XがY軸方向に移動することによって、実装ヘッド24がY軸方向に移動する。
【0041】
図11は、実施形態に係る実装ヘッド24を模式的に示す図である。図11に示すように、実装ヘッド24は、複数のノズル23を有する。ノズル23は、部品2を着脱可能に保持する。ノズル23は、部品2を吸着保持する吸着ノズルである。ノズル23の下端部に開口が設けられる。ノズル23の開口は、真空システムに接続される。ノズル23の下端部と部品2とが接触した状態で、ノズル23の下端部に設けられた開口からの吸引動作が実施されることにより、ノズル23の下端部に部品2が吸着保持される。開口からの吸引動作が解除されることにより、ノズル23から部品2が解放される。なお、ノズル23は、部品2を挟んで保持するグリッパノズルでもよい。
【0042】
ノズル移動装置28は、ノズル23を移動する。実施形態において、ノズル移動装置28は、ノズル23を、Z軸方向及びθZ方向のそれぞれに移動する。ノズル移動装置28は、実装ヘッド24に支持される。ノズル23は、シャフト23Aの下端部に接続される。シャフト23Aは、複数設けられる。複数のノズル23は、複数のシャフト23Aのそれぞれに接続される。ノズル移動装置28は、複数設けられる。複数のノズル移動装置28は、複数のシャフト23Aのそれぞれに接続される。ノズル23は、シャフト23A及びノズル移動装置28を介して実装ヘッド24に支持される。ノズル移動装置28は、シャフト23AをZ軸方向及びθZ方向に移動させることによって、ノズル23を移動させる。
【0043】
ノズル23は、ヘッド移動装置27及びノズル移動装置28により、X軸方向、Y軸方向、Z軸方向、及びθZ方向のそれぞれに移動可能である。ノズル23が移動することにより、ノズル23に保持されている部品2も、X軸方向、Y軸方向、Z軸方向、及びθZ方向のそれぞれに移動可能である。
【0044】
基板カメラ25は、基板1を撮像する。実施形態において、基板カメラ25は、基板1の表面を基板1の+Z側から撮像する。基板カメラ25は、実装ヘッド24に設けられる。基板カメラ25は、実装ヘッド24と一緒に、X軸方向及びY軸方向に移動する。基板カメラ25は、基板1の表面に設けられているアライメントマークを撮像することができる。
【0045】
高さセンサ26は、基板1の表面のZ軸方向の位置を示す高さを検出する。高さセンサ26は、実装ヘッド24に設けられる。高さセンサ26は、実装ヘッド24と一緒に、X軸方向及びY軸方向に移動する。実施形態において、高さセンサ26は、レーザ測位センサである。高さセンサ26は、基板1の+Z側から基板1の表面にレーザ光を照射して、基板1の表面で反射したレーザ光を受光することにより、実装ヘッド24から基板1までの距離を検出することができる。実装ヘッド24から基板1までの距離が検出されることにより、基板1の表面の高さが検出される。
【0046】
チャンバ29は、ベース部材18、搬送装置19、ステージ20、ステージ移動装置21、部品供給装置22、実装ヘッド24、ヘッド移動装置27、及びノズル移動装置28のそれぞれが収容される内部空間を有する。
【0047】
開閉カバー30は、チャンバ29の上部に設けられた開口を開閉する。開閉カバー30は、ヒンジを介してチャンバ29の少なくとも一部に回動可能に支持される。
【0048】
窓31は、開閉カバー30に設けられる。窓31は、実質的に透明である。作業者は、窓31を介して、チャンバ29の内部空間の状態を視認することができる。
【0049】
表示装置32は、チャンバ29の外面に設けられる。表示装置32は、表示データを表示する。表示装置32として、液晶ディプレイ又は有機ELディスプレイのようなフラットパネルディスプレイが例示される。
【0050】
入力装置33は、作業者に操作されることにより入力データを生成する。入力装置33として、タッチセンサ、コンピュータ用キーボード、又はマウスが例示される。実施形態において、表示装置32は、タッチセンサを含むタッチスクリーンである。入力装置33は、表示装置32のタッチスクリーンを含む。
【0051】
実施形態において、実装装置12は、基板1にクリーム半田を塗布するディスペンサ34を有する。ディスペンサ34は、搬送装置19よりも+Z側において、X軸方向、Y軸方向、及びZ軸方向のそれぞれに移動する。ディスペンサ34と実装ヘッド24とは別々に移動可能である。ディスペンサ34により基板1の表面にクリーム半田が塗布された後、実装ヘッド24により基板1に部品2が実装される。実装装置12により部品2が実装された基板1は、パレット3に固定された状態で、予熱装置13に搬送される。
【0052】
予熱装置13は、基板1に塗布されているクリーム半田の液体成分を減少させる。クリーム半田は、フラックスと、フラックスに分散された金属製の半田ボールとを含む。予熱装置13は、フラックスの活性化とともに液体成分の少なくとも一部を気化させることによって、クリーム半田の液体成分を減少させる。
【0053】
予熱装置13は、ベース部材35と、パレット3を搬送する搬送装置36と、基板1を加熱するヒータ37と、チャンバ38とを備える。
【0054】
ベース部材35は、搬送装置36を支持する。搬送装置36は、基板1を支持したパレット3をX軸方向に搬送する。搬送装置36は、パレット3を搬送する搬送ベルト36Aと、パレット3をガイドするガイド部材36Bとを有する。
【0055】
ヒータ37は、クリーム半田のフラックスの液体成分の少なくとも一部が気化するように、基板1を加熱する。
【0056】
チャンバ38は、ベース部材35、搬送装置36、及びヒータ37のそれぞれが収容される内部空間を有する。
【0057】
予熱装置13は、クリーム半田の液体成分が減少するように、パレット3に支持されている基板1を加熱する。予熱装置13は、クリーム半田の融点よりも低い温度で基板1を加熱する。予熱装置13は、基板1を例えば80℃以上100℃以下の温度で10分間加熱する。予熱装置13により予熱された基板1は、パレット3に固定された状態で、レーザ照射装置14に搬送される。
【0058】
レーザ照射装置14は、クリーム半田が溶融するように、クリーム半田にレーザ光を照射する。レーザ照射装置14は、ベース部材39と、パレット3を搬送する搬送装置40と、パレット3を支持するステージ41と、ステージ41を移動するステージ移動装置42と、レーザ光を射出するレーザヘッド43と、チャンバ44と、開閉カバー45と、窓46とを備える。
【0059】
ベース部材39は、搬送装置40、ステージ41、ステージ移動装置42、及びレーザヘッド43のそれぞれを支持する。
【0060】
搬送装置40は、基板1を支持したパレット3をX軸方向に搬送する。搬送装置40は、パレット3を搬送する搬送ベルト40Aと、パレット3をガイドするガイド部材40Bとを有する。搬送装置40の構造及び機能は、搬送装置19の構造及び機能と実質的に等しい。
【0061】
ステージ41は、パレット3を-Z側から支持する。ステージ移動装置42は、ステージ41をY軸方向、Z軸方向、θX方向、及びθY方向のそれぞれに移動する。ステージ41の構造及び機能は、ステージ20の構造及び機能と実質的に等しい。
【0062】
レーザヘッド43は、クリーム半田にレーザ光を照射してクリーム半田を溶融させる。レーザヘッド43は、搬送装置40よりも+Z側においてX軸方向、Y軸方向、及びZ軸方向のそれぞれに移動する。
【0063】
チャンバ44は、ベース部材39、搬送装置40、ステージ41、ステージ移動装置42、及びレーザヘッド43のそれぞれが収容される内部空間を有する。
【0064】
開閉カバー45は、チャンバ44の上部に設けられた開口を開閉する。開閉カバー45は、ヒンジを介してチャンバ44の少なくとも一部に回動可能に支持される。
【0065】
窓46は、開閉カバー45に設けられる。窓46は、透過する光の光量を減らす。作業者は、窓46を介して、チャンバ44の内部空間の状態を視認することができる。窓46が減光機能及び防眩機能を有するので、作業者がレーザ光の反射によって目を損傷することを防ぐ。
【0066】
レーザ照射装置14において、レーザヘッド43から射出されたレーザ光は、クリーム半田に照射される。レーザ光によりクリーム半田が加熱され、クリーム半田が溶融する。溶融したクリーム半田が冷却されることにより、部品2が基板1に半田付けされる。実施形態においては、予熱装置13においてクリーム半田の液体成分が減少された後、クリーム半田にレーザ光が照射される。クリーム半田の液体成分が減少した状態で、クリーム半田にレーザ光が照射されるので、クリーム半田の突沸による半田ボールが抑制される。
【0067】
検査装置15は、部品2が実装された後の基板1の状態を検査する基板外観検査装置(AOI:Automated Optical Inspection)を含む。
【0068】
実装装置12に読取装置101が設けられる。予熱装置13に読取装置102が設けられる。レーザ照射装置14に読取装置103が設けられる。読取装置101は、情報媒体80に保持されている基板データを読み取る。情報媒体80が2次元コードである場合、読取装置101は、2次元コードリーダである。情報媒体80がRFタグである場合、読取装置101は、RFIDリーダである。読取装置101と同様、読取装置102及び読取装置103のそれぞれは、情報媒体80に保持されている基板データを読み取る。不図示ではあるが、検査装置15にも、情報媒体80に保持されている基板データを読み取る読取装置が設けられる。
【0069】
[管理装置]
図12は、実施形態に係る管理装置16の構成を概略的に示す図である。管理装置16は、3次元計測装置11、実装装置12、予熱装置13、レーザ照射装置14、検査装置15それぞれに存在してもいいし、ネットワークを介して別途存在してもいい。管理装置16は、コンピュータシステムを含む。管理装置16は、生産ライン17を制御する。管理装置16は、少なくとも1つのプロセッサ47と、メインメモリ48と、ストレージ49と、インタフェース50とを有する。プロセッサ47は、CPU(Central Processing Unit)である。メインメモリ48は、ROM(Read Only Memory)のような不揮発性メモリ及びRAM(Random Access Memory)のような揮発性メモリを含む。ストレージ49として、ハード・ディスク・ドライブ(HDD:Hard Disk Drive)、ソリッド・ステート・ドライブ(SSD:Solid State Drive)、磁気ディスク、光磁気ディスク、CD-ROM、及びDVD-ROMが例示される。インタフェース50は、入出力回路を含む。プロセッサ47の機能は、プログラムとしてストレージ49に記憶されている。プロセッサ47は、プログラムをストレージ49から読み出してメインメモリ48展開し、プログラムに従って処理を実行する。なお、プログラムは、ネットワークを介して管理装置16に配信されてもよい。
【0070】
プロセッサ47は、少なくとも1つの機能部を有する。実施形態において、プロセッサ47は、基板データ算出部51と、マーク位置算出部52と、実装位置決定部53と、判定部54と、表示制御部55と、ヘッド制御部56と、ステージ制御部57と、NCデータ変換部58と、基板データ変換部59とを有する。ストレージ49は、NCデータ記憶部60と、基板データ記憶部61と、ステージデータ記憶部62とを有する。
【0071】
基板データ算出部51は、3次元計測装置11の計測データに基づいて、基板データを算出する。マーク位置算出部52は、3次元計測装置11の計測データ及び高さセンサ26の検出データに基づいて、基板1の表面に設けられているアライメントマークの位置を示すマーク位置を算出する。
【0072】
実装位置決定部53は、基板1の表面における部品2の実装位置を決定する。判定部54は、実装ヘッド24とステージ20に支持された基板1との相対位置を判定する。表示制御部55は、表示データを表示装置32に表示させる。
【0073】
ヘッド制御部56は、実装ヘッド24を制御する。実施形態において、実装ヘッド24を制御することは、ノズル23を制御すること、ヘッド移動装置27を制御すること、及びノズル移動装置28を制御することを含む。ステージ制御部57は、ステージ20を制御する。ステージ20を制御することは、ステージ移動装置21を制御することを含む。
【0074】
NCデータ変換部58は、基板データと各装置の機構パラメータから各装置の動作座標データであるNCデータを作成する。基板データ変換部59は、NCデータと各装置の機構パラメータから基板データを作成する。
【0075】
NCデータ記憶部60には、実装装置12、予熱装置13、レーザ照射装置14、検査装置15の駆動軸の動作座標データであるそれぞれの装置のNCデータが記憶される。NCデータは基板データと各装置の機構パラメータから生成される。基板データ記憶部61には、基板データを記憶する。基板データ算出部51により算出された基板データは、基板データ記憶部61に記憶される。ステージデータ記憶部62には、ステージ20に係る外形、寸法、及び機械座標系におけるステージ20の回転軸Rmの位置、機械座標系と基板座標系との位置関係を示す機構パラメータが予め求められ、記憶される。
【0076】
[基板データ]
図13は、実施形態に係る基板データを説明するための図である。基板データには、基板1の表面における部品2の実装位置Pp(xp、yp、zp)及び実装位置Ppにおける基板1の表面の法線ベクトル(u,v,w)と、さらに基板1の表面のサーフェスデータ、サーフェスデータ上の回路パターンのテクスチャデータが含まれる。基板データは基板1もしくはパレット3に固定された基板座標基準点Prを原点とした基板座標系(Xp、Yp,Zp)で表される。基板データには、前記以外に、実装する部品番号、クリーム半田を塗布するランド位置、予熱温度、予熱時間、レーザパワー、レーザ照射時間等が含まれ、生産ラインの各装置で使用される。
【0077】
[NCデータ]
ステージ20は、回転軸Rmを中心にθX及びθY方向のそれぞれに回転することができる。ステージ20は、パレット3を介して基板1を支持する。ステージ20が回転軸Rmを中心にθX及びθY方向に回転し基板1が傾斜すると、実装位置Ppは回転軸Rmを中心に回転する。回転軸Rmは図13上では点で表現されているが、θX及びθY方向のそれぞれに回転軸は別々に設定されていても良い。
【0078】
機械座標系(Xm、Ym,Zm)は実装装置12に固定した座標系で、実装ヘッド24が移動するときの基準となる。機械座標系の原点は実装装置12のどこにあってもいい。ステージ20が回転軸Rmを中心にθX及びθY方向に回転し基板1が傾斜すると、実装位置Ppは回転軸Rmを中心に回転する。回転した実装位置Ppの機械座標系での実装位置Pm(xm、ym、zm)が算出され、この実装位置Pm(xm、ym、zm)を使用して実装ヘッド24の基板カメラ25、高さセンサ26、ノズル23が移動する。機械座標系での実装位置Pm(xm、ym、zm)、及び、ステージ20の回転角がNCデータとして記憶され、実装装置12の動作時に、駆動系モータの指令位置として使用される。実装装置12以外の、レーザ照射装置14、検査装置15でも同様にNCデータが作成されて使用される。NCデータは、ステージ20の回転軸Rmの位置等機構パラメータによって算出されるので、各装置でのNCデータは異なるものとなる。
【0079】
[電子デバイスの製造方法]
図14は、実施形態に係る電子デバイスの製造方法を示すフローチャートである。基板1がパレット3に固定される。パレット3に固定された基板1が3次元計測装置11に搬入される。3次元計測装置11は、パレット3に固定された基板1の表面の3次元形状を計測する。3次元計測装置11により計測された基板1の表面の3次元形状を示す3次元データは、3次元計測装置11から管理装置16に送信される(ステップSA1)。
【0080】
基板1の表面に電気回路が設けられている。管理装置16に送信される基板1の表面の3次元データは、基板1のサーフェスデータと基板1の表面に設けられている電気回路のパターンを示すテクスチャデータを含む。
【0081】
基板データ算出部51は、3次元計測装置11により計測された基板1の回路パターンの3次元データと基準基板の回路パターンの3次元データとを照合する。基板データ算出部51は、例えばパターンマッチングの手法を用いて、3次元計測装置11により計測された基板1の回路パターンの3次元データと基準基板の回路パターンの3次元データとを照合する(ステップSA2)。
【0082】
基準基板の回路パターンの3次元データは、例えば電子デバイスの設計データに基づいて予め構築される。また、基準基板の回路パターンに、部品2の実装位置Ppの目標位置が規定される。基板データ算出部51は、3次元計測装置11により計測された基板1の回路パターンの3次元データと基準基板の回路パターンの3次元データとを照合することにより、基板1の表面における部品2の実装位置Ppの座標(xp,yp,zp)及び実装位置Ppにおける基板1の表面の法線ベクトル(u,v,w)を示す基板データを算出することができる。基板データには、実装位置Pp以外に、実装部品、半田付け用ランド位置等も含まれる(ステップSA3)。
【0083】
ステップSA3において算出された基板データは、基板データ記憶部61に記憶される。また、ステップSA3において算出された基板データは、情報媒体80に保持される。情報媒体80が2次元コードである場合、基板データを示す2次元コードが3次元計測装置11において作成され、パレット3に取り付けられる(ステップSA4)。パレット3に保持される情報媒体80には、識別番号のみを記録し、生産システム10を管理しているサーバー上の基板データ記憶部61に記憶されている基板データを参照するようにしてもいい。
【0084】
基板データは、生産システム10に投入される基板毎に作成され記憶される。そのため、インモールド成形技術により形成され、基材1Aと、回路パターンを含むフィルム1Bとの位置合わせが難しい基板1のような立体基板に対して、基板毎に計測された正確な実装位置の基板データで電子デバイスの製造を行うことができる。
【0085】
基材1Aと、回路パターンを含むフィルム1Bとの位置合わせ精度を所定基準以内にできる時には、3次元計測装置11による計測を省略し、同じ基板データを情報媒体80に記録することで効率化を図ることもできる。
【0086】
情報媒体80が取り付けられたパレット3は、基板1を支持した状態で、実装装置12に搬送される。読取装置101は、パレット3に取り付けられている情報媒体80を読み取る。実装装置12のディスペンサ34は、読取装置101が情報媒体80から読み取った基板データと、機構パラメータによりNCデータを作成し、作成されたNCデータに基づいて、基板1にクリーム半田を塗布する。ディスペンサ34は、実装位置Ppに実装される部品用のパッド位置にクリーム半田を塗布する(ステップSA5)。
【0087】
基板1にクリーム半田が塗布された後、基板1に部品2が実装されるように、ステージ制御部57がステージ20を制御し、ヘッド制御部56が実装ヘッド24を制御する。実装ヘッド24は、基板データと機構パラメータにより作成されたNCデータに基づいて制御されたステージ20に支持されている基板1に部品2を実装する。実装ヘッド24は、実装位置Ppに部品2を実装する(ステップSA6)。前記クリーム半田の塗布と部品の実装は基板1に実装される全部品について繰り返し実行される。クリーム半田の塗布と部品の実装は、クリーム半田を全箇所塗布後に部品の実装をまとめて行ってもいいし、一部品ごとにクリーム半田の塗布と部品の実装を繰り返してもいい。
【0088】
基板1に部品2が実装された後、パレット3は、基板1を支持した状態で、予熱装置13に搬送される。読取装置102は、パレット3に取り付けられている情報媒体80を読み取る。予熱装置13は、読取装置102が情報媒体80から読み取った基板データの予熱温度、予熱時間に基づいて、基板1に塗布されているクリーム半田を予熱する(ステップSA7)。
【0089】
クリーム半田が予熱された後、パレット3は、基板1を支持した状態で、レーザ照射装置14に搬送される。読取装置103は、パレット3に取り付けられている情報媒体80を読み取る。レーザヘッド43及びステージ41のそれぞれは、読取装置103が情報媒体80から読み取った基板データとステージデータ記憶部62の機構パラメータによりNCデータを作成し、作成されたNCデータに基づいて制御される。基板1に塗布されているクリーム半田にレーザ光が照射されるようにレーザヘッド43がNCデータに基づいて制御され、ステージ41のZ軸方向、θX方向、及びθY方向の位置が制御される。レーザ光によりクリーム半田が溶融し、冷却されることにより、部品2が基板1に半田付けされる(ステップSA8)。部品実装時のNCデータは、対象部品実装位置の基板1の表面が水平になるように作成されるが、レーザ光照射時の基板1の表面は、部品が重力で位置ずれを起こさない範囲で傾いていてもよい。レーザ光照射時の基板1の表面を故意に傾斜させることにより、半田面でのレーザ反射光の方向を規制して、基板1の焼損を防ぐことができる。傾斜が可能な角度は、部品2の重量とクリーム半田の粘着力によって決定され、予め基板データに記憶されている。
【0090】
部品2が基板1に半田付けされた後、パレット3は、基板1を支持した状態で、検査装置15に搬送される。検査装置15に設けられている読取装置は、パレット3に取り付けられている情報媒体80を読み取る。検査装置15は、検査装置15の読取装置が情報媒体80から読み取った基板データに基づいて、基板1を検査する(ステップSA9)。
【0091】
[実装ヘッド及びステージの制御方法]
次に、実装ヘッド24及びステージ20の制御方法の一例について説明する。図15は、実施形態に係る表示装置32に表示された表示データの一例を示す図である。実施形態において、表示制御部55は、表示データとして、基板1、ステージ20、ノズル23、及び実装ヘッド24のそれぞれを模擬した3Dモデルを表示装置32に表示させる。
【0092】
実施形態において、表示制御部55は、パレット3、基板カメラ25、及び高さセンサ26のそれぞれを模擬した3Dモデルも表示装置32に表示させる。図15に示す例において、表示装置32には、基板1を模擬した基板モデル1V、パレット3を模擬したパレットモデル3V、ステージ20を模擬したステージモデル20V、ノズル23を模擬したノズルモデル23V、実装ヘッド24を模擬したヘッドモデル24V、基板カメラ25を模擬したカメラモデル25V、及び高さセンサ26を模擬したセンサモデル26Vが表示される。
【0093】
図15に示すように、表示は3次元形状で表示され、基板モデル1V上の回路パターンの表示を見ながら実装ヘッド24、ステージ20の移動量と基板1の位置関係を確認することができる。
【0094】
実施形態において、作業者は、入力装置33を操作することにより、表示装置32の表示画面においてヘッドモデル24Vを移動させることができる。ヘッド制御部56は、ヘッドモデル24Vに同期して、実装ヘッド24を移動させる。
【0095】
図15に示すように、表示装置32の表示画面においてヘッドモデル24Vが現在位置Pcに停止している場合、実装ヘッド24も、現在位置Pcにおいて停止する。作業者は、入力装置33を操作して、指定位置Psまでヘッドモデル24Vを移動させることができる。入力装置33がタッチスクリーンである場合、作業者は、表示装置32の表示画面の任意の位置をタッチする。作業者によりタッチされた位置が指定位置Psになる。
【0096】
表示装置32には、ヘッドモデル24Vと基板モデル1Vの位置関係が分かるようなマーカーも表示される。例えば、ノズルモデル23V、カメラモデル25V、センサモデル26Vが基板モデル1V上のどの場所を計測等するのかを示すマーカーを基板モデル1V上に表示することで、作業者の操作を容易とする。
【0097】
指定位置Psは、ヘッドモデル24Vの移動位置でもよいし、カメラモデル25Vで撮像される基板モデル1V上の位置でもよい。マーカー位置を基板モデル1V上で移動させることで、基板カメラ25で撮像させたい位置に容易に基板カメラ25を移動させ、撮像面が水平となるようにステージ20の回転と高さを自動で制御してカメラ画像を表示装置32に表示することができる。
【0098】
タッチスクリーンがタッチされると、表示制御部55は、ヘッドモデル24Vを現在位置Pcから入力装置33により指定された指定位置Psまで移動させる。ヘッド制御部56は、ヘッドモデル24Vに同期して、実装ヘッド24を現在位置Pcから入力装置33により指定された指定位置Psまで移動させる。
【0099】
表示装置32に表示される3Dモデルは、作業者が自由に拡大縮小、見たい位置への移動を行うことができる。表示される3Dモデルは自由に回転することもできる。
【0100】
このように、実施形態において、作業者は、表示装置32に表示された実装装置12を模擬する3Dモデルを確認しながら、入力装置33を操作するだけで、実際の実装装置12を駆動することができる。実施形態においては、作業者は、3Dモデルが表示されたタッチスクリーンをタッチするだけで、実装ヘッド24を指定位置Psまで移動させることができる。
【0101】
表示装置32上の3Dモデルは、実際の実装ヘッド24、ステージ20の動きと連動して動き、実際の動きよりも先行して動くことにより判定部54の干渉チェック用のデータとして使用される。
【0102】
図16及び図17のそれぞれは、実施形態に係る実装ヘッド24及びステージ20の制御方法の一例を示す図である。図16は、実装ヘッド24が現在位置Pcに配置され、基板カメラ25の視野に基板1の表面の第1位置P1が配置されている状態を示す。図17は、基板カメラ25の視野に基板1の表面の第2位置P2が配置されるように、実装ヘッド24が入力装置33により指定された指定位置Psまで移動した後の状態を示す。
【0103】
図16に示す現在位置Pcから図17に示す指定位置Psに実装ヘッド24を移動させる場合、判定部54は、現在位置Pcと指定位置Psと基板1の3次元データとパレット3の3次元データとステージ20の3次元データとに基づいて、現在位置Pcから指定位置Psまで移動する実装ヘッド24と基板1、パレット3、及びステージ20との距離を算出し、少なくとも一つに干渉するか否かを、3Dモデルを使用して判定する。
【0104】
基板1の3次元データは、3次元計測装置11により計測され、基板データ記憶部61に記憶されている。パレット3の3次元データも、3次元計測装置11により計測され、基板データ記憶部61に記憶されている。ステージ20の3次元データは、3次元計測装置11により計測されてもよいし、3次元計測装置11とは別の計測装置により計測されてもよい。ステージ20の表面の3次元形状を示す3次元データは、ステージデータ記憶部62に記憶されている。
【0105】
基板1の3次元データは、基板座標系における基板1の表面の位置を表現するサーフェスデータとその表面の色情報を持つテクスチャデータを含む。パレット3の3次元データ及びステージ20の3次元データも同様である。
【0106】
ヘッド制御部56は、現在位置Pcと指定位置Psとの間を実装ヘッド24が最短距離で移動するように、現在位置Pcから指定位置Psまでの実装ヘッド24の移動経路を決定する。すなわち、ヘッド制御部56は、現在位置Pcと指定位置Psとの間を実装ヘッド24が直線状に移動するように、現在位置Pcから指定位置Psまでの実装ヘッド24の移動経路を決定する。
【0107】
基板カメラ25の視野の基板1の表面が常に水平になるようにステージ20の回転角も算出され、実装ヘッド24の位置と対として算出される。
【0108】
判定部54は、基板1の3次元データとパレット3の3次元データとステージ20の3次元データとに基づいた3Dモデルを使用して、現在位置Pcから指定位置Psまで実装ヘッド24が直線状に移動した場合、実装ヘッド24と、同時に回転する基板1、パレット3、及びステージ20の距離を算出し、少なくとも一つに干渉するか否かを判定する。すなわち、判定部54は、機械座標系において、現在位置Pcから指定位置Psまでの実装ヘッド24の移動経路に、基板1、パレット3、及びステージ20の少なくとも一つが存在するか否かを、3Dモデル間の距離を基に判定する。基板1、パレット3、及びステージ20の3次元データは、ステージ20のθX及びθY方向の回転に合わせて機械座標系に座標変換され、実装ヘッド24の3次元データはその移動に合わせて座標変換され、それぞれ干渉チェックのためのデータとして使用される。
【0109】
現在位置Pcから指定位置Psまでの実装ヘッド24の移動において、実装ヘッド24が基板1、パレット3、及びステージ20の少なくとも一つに干渉すると判定部54により判定された場合、ステージ制御部57は、実装ヘッド24が基板1、パレット3、及びステージ20に干渉しないように、ステージ20を制御する。例えば、図16及び図17に示すように、ステージ制御部57は、実装ヘッド24の移動に同期して、回転軸Rmを中心にステージ20を傾斜させることができる。これにより、実装ヘッド24と、基板1、パレット3、及びステージ20との干渉が抑制される。
【0110】
図18は、実施形態に係る実装ヘッド24及びステージ20の制御方法の一例を示す図である。図18は、基板カメラ25の視野に基板1の表面の第2位置P2が配置されるように、実装ヘッド24が入力装置33により指定された指定位置Psまで移動する途中の状態を示す。移動は、実装ヘッド24、ステージ20が単独で動作してもいいし、終点位置を提示するのみではなく、移動経路をドラッグで指定してもいい。
【0111】
図18に示すように、現在位置Pcから指定位置Psまでの実装ヘッド24の移動において、実装ヘッド24と、基板1、パレット3、及びステージ20の少なくとも一つとの距離が予め定められている閾値以下になった場合、ヘッド制御部56は、実装ヘッド24が指定位置Psに到達する前に、実装ヘッド24の移動を停止してもよい。図18に示すように、基板1の3次元データ、パレット3の3次元データ、及びステージ20の3次元データに基づいて、基板1の表面、パレット3の表面、及びステージ20の表面のそれぞれから閾値だけ離れた仮想ラインSLaが規定される。ヘッド制御部56は、ノズル23を含む実装ヘッド24が仮想ラインSLaを超えないように、実装ヘッド24を制御する。同様にステージ制御部57によりステージ20も制御される。これにより、実装ヘッド24と、基板1、パレット3、及びステージ20との干渉が抑制される。
【0112】
図19及び図20のそれぞれは、実施形態に係る実装ヘッド24及びステージ20の制御方法の一例を示す図である。図19は、実装ヘッド24が現在位置Pcに配置され、基板カメラ25の視野に基板1の表面の第1位置P1が配置されている状態を示す。図20は、実装ヘッド24が入力装置33により指定された指定位置Psまで移動する途中の状態を示す。図19及び図20に示す例は、実装ヘッド24のみが移動する場合であり、基板1に部品2が実装されている。
【0113】
図19に示す現在位置Pcから図20に示す指定位置Psに実装ヘッド24を移動させる場合、判定部54は、現在位置Pcと指定位置Psと基板1の3次元データと部品2の3次元データとパレット3の3次元データとステージ20の3次元データとに基づいて、現在位置Pcから指定位置Psまで移動する実装ヘッド24が基板1、部品2、パレット3、及びステージ20の少なくとも一つに干渉するか否かを判定する。部品2の3次元データ及び基板1の表面における部品2の実装位置Ppは、既知データであり、基板データ記憶部61に記憶されている。
【0114】
ヘッド制御部56は、現在位置Pcと指定位置Psとの間を実装ヘッド24が最短距離で移動するように、現在位置Pcから指定位置Psまでの実装ヘッド24の移動経路を決定する。すなわち、ヘッド制御部56は、現在位置Pcと指定位置Psとの間を実装ヘッド24が直線状に移動するように、現在位置Pcから指定位置Psまでの実装ヘッド24の移動経路を決定する。判定部54は、基板1の3次元データと部品2の3次元データとパレット3の3次元データとステージ20の3次元データとに基づいて、現在位置Pcから指定位置Psまで実装ヘッド24が直線状に移動した場合、実装ヘッド24が基板1、部品2、パレット3、及びステージ20の少なくとも一つに干渉するか否かを判定する。
【0115】
現在位置Pcから指定位置Psまでの実装ヘッド24の移動において、実装ヘッド24が基板1、部品2、パレット3、及びステージ20の少なくとも一つに干渉すると判定部54により判定された場合、ヘッド制御部56は、実装ヘッド24が基板1、部品2、パレット3、及びステージ20に干渉しないように、実装ヘッド24の移動経路を変更する。ヘッド制御部56は、実装ヘッド24の直線状の移動経路を例えば曲線状の移動経路に変更する。
【0116】
例えば、現在位置Pcから指定位置Psまでの実装ヘッド24が直線状に移動するとノズル23が部品2と干渉すると判定部54により判定された場合、図20に示すように、ヘッド制御部56は、部品2の近傍において、仮想ラインSLbで示すように、実装ヘッド24の移動経路を屈曲させる。
【0117】
実施形態において、ヘッド制御部56は、実装ヘッド24と基板1の表面及び部品2の表面とが所定距離以上離れないように、現在位置Pcから指定位置Psまで実装ヘッド24を移動させる。すなわち、ヘッド制御部56は、実装ヘッド24が基板1及び部品2に干渉せず、且つ、実装ヘッド24が基板1の表面及び部品2の表面から離れ過ぎないように、実装ヘッド24の移動経路を決定する。これにより、実装ヘッド24と基板1及び部品2との干渉を抑制しつつ、実装ヘッド24を移動させることができる。
【0118】
実装ヘッド24の移動時について述べたが、ステージ20の回転時にも同様の干渉チェックが行われ、実装ヘッド24との衝突が回避される。
【0119】
[ティーチング処理]
次に、ティーチング処理について説明する。ティーチング処理とは、基板1の表面における部品2の実装位置Ppを指定する処理をいう。ティーチングは事前の基板データが存在しないときや、修正したいときに作業者によって実行され、新しい基板データが作成される。
【0120】
ティーチング処理は、表示装置32に表示された実装ヘッド24に固定されている基板カメラ25で撮像された基板1のカメラ画像を見ながら行われる。作業者は、表示装置32に表示された基板1のカメラ画像を見ながら、基板カメラ25の視野の規定位置と基板1の表面における実装位置Ppの目標位置とが一致するように、実装ヘッド24を少しずつXY方向に移動させるジョグ操作を実施し、その位置を実装位置Ppとして教示する。
【0121】
図21及び図22のそれぞれは、実施形態に係るティーチング処理を説明するための図である。図23は、実施形態に係るティーチング処理を示すフローチャートである。
【0122】
図21に示す状態において、ステージ制御部57により、基板カメラ25の視野の規定位置に第1位置P1が一致した状態にある。ステージ制御部57により、基板カメラ25の撮像位置における基板1の表面の3次元データに基づいて、基板1の表面の法線ベクトルがXY平面に直交するように、ステージ20は制御されている。また、ステージ制御部57により、基板1の表面の3次元データに基づいて、基板カメラ25のピント位置が基板1の表面のZ軸方向の位置(高さ)と一致するように、ステージ20は制御されている。このステージ20の制御は基板カメラ25の位置と基板1の3次元データに基づいて自動で行われる。
【0123】
基板カメラ25により撮像されたカメラ画像は表示装置32に表示される。(ステップSB1)
【0124】
図21に示すように、例えば基板カメラ25の視野の規定位置と基板1の表面の第1位置P1とが一致している場合、作業者は、次のティーチング位置である第2位置P2を教示するために、表示装置32に表示されている基板1のカメラ画像を確認しながら、基板カメラ25の視野の規定位置と基板1の表面における目標位置である第2位置P2とが一致するように、入力装置33を操作して、基板カメラ25が固定された実装ヘッド24を少しずつXY方向に移動させるジョグ操作を実施する(ステップSB2)。
【0125】
図15を参照して説明したように、表示装置32には、基板1、ステージ20、ノズル23、及び実装ヘッド24のそれぞれを模擬した3Dモデルが表示される。作業者は、入力装置33であるタッチスクリーンをタッチ、又は、ドラッグ操作することにより、実装ヘッド24を少しずつ移動させることができる。タッチ、又は、ドラッグ操作は、3Dモデル上でもよいし、表示されているカメラ画像上でもよい。
【0126】
基板1の3次元データが存在するときには、実装ヘッド24の移動中に前述の干渉チェックが行われ衝突事故を防ぐ。
【0127】
ヘッド制御部56は、入力装置33からのジョグ操作に基づいて、基板カメラ25の視野を第2位置P2の方向に、基板カメラ25が固定された実装ヘッド24をXY方向に移動させる。XY位置が変化する都度、基板1の3次元データに基づいて基板1の表面の法線ベクトルがXY平面に直交するように(ステップSB3)、また、基板カメラ25のピントが合うように(ステップSB4)、ステージ20が自動で制御される。ジョグ操作により、表示装置32に表示される基板1のカメラ画像は、基板1の表面が水平のまま、ピントがあった状態で移動する。
【0128】
基板カメラ25のピント合わせはステージ20の上下移動で行われるが、実装ヘッド24又は基板カメラ25の上下動作で行われてもよい。
【0129】
実施形態において、基板1は、立体基板である。そのため、基板カメラ25が固定された実装ヘッド24を単にXY方向に移動しただけでは、第2位置P2における基板1の表面の法線ベクトルが鉛直軸に対して傾斜する可能性がある。また、基板カメラ25のピント位置と第2位置P2における基板1の表面の位置(高さ)とが一致しなくなる可能性がある。そのため、従来のように基板カメラ25をXYに移動しただけでは取得されるカメラ画像はピントがボケたものになってしまいティーチングを行うことができない。ステージの回転による基板1の表面を水平に保ち、ステージの高さ調節を基板1の3次元データに基づいて自動で行うことで実装位置のティーチングを容易に行うことができる。
【0130】
図22に示すように、実施形態において、ステージ制御部57により、基板1の表面の3次元データと基板カメラ25の移動位置とに基づいて、基板カメラ25の視野の規定位置に第2位置P2が一致したときは、第2位置P2における基板1の表面の法線ベクトルがXY平面に直交する。また、ステージ制御部57により、基板1の表面の3次元データと基板カメラ25の移動位置とに基づいて、基板カメラ25の視野の規定位置に第2位置P2が一致したときは、基板カメラ25のピント位置と第2位置P2における基板1の表面の位置(高さ)とが一致する(ステップSB5)。
【0131】
基板カメラ25の移動位置とは、基板カメラ25(実装ヘッド24)の移動した位置である。基板1の3次元データは、3次元計測装置11により計測され、基板データ記憶部61に予め記憶されている。ステージ制御部57は、基板データ記憶部61に記憶されている基板1の表面の3次元データと基板カメラ25の移動位置とステージ20の回転角θX、θY、及びステージ20の高さZに基づいて、第2位置P2における基板1の表面の法線ベクトルがXY平面に直交するように、ステージ20を制御することができる。
【0132】
作業者は、表示装置32に表示されたカメラ画像をチェックし、ティーチングにより設定したい位置にあることを確認し、その位置を教示する為の決定ボタンを押す。
【0133】
決定ボタンが押されると、XY方向における第2位置P2から変換された実装位置、第2位置P2における基板1の表面の法線ベクトルがXY平面に直交したときのZ軸方向におけるステージ20の位置、θX方向の回転角、及びθY方向の回転角は、NCデータ記憶部60に記憶される(ステップSB6)。
【0134】
以上の作業が基板1でティーチングが必要な実装位置で繰り返されるとNCデータが完成する。完成したNCデータから、ステージ20の回転中心位置等の機構パラメータを基に基板データが作成され基板データ記憶部61に記憶される(ステップSB7)。
【0135】
部品実装動作時には、ヘッド制御部56及びステージ制御部57は、実装ヘッド24とステージ20をNCデータ記憶部60に記憶されているNCデータを使用して実装ヘッド24を移動させ、指定された実装位置に部品2を実装する。
【0136】
NCデータは、実装装置12固有のデータであり、他の実装装置ではステージの機構パラメータが異なるため使用できない。NCデータから、機構パラメータを基に基板データを作成することで、基板データを他の実装装置で使用して、その実装装置を動作させるためのNCデータを作成することができる。従来、NCデータのみでは他の装置では使用できなかったティーチングによるデータを、基板データに変換することで他の装置でも使用することができる。
【0137】
図24図25、及び図26のそれぞれは、実施形態に係る法線ベクトルの算出方法の一例を示す図である。基板1の3次元データが存在しない状態でティーチングによりNCデータを作成するときには、基板1上のティーチング位置の高さ及び法線ベクトル(面の傾き)を検出する必要がある。法線ベクトルは、高さセンサ26の検出データに基づいて算出される。
【0138】
図24図25、及び図26に示すように、高さセンサ26により第2位置P2及びその周囲の少なくとも3箇所の検出点71の基板1の表面の高さが検出される。基板データ算出部51は、高さセンサ26により検出された第2位置P2の周囲の少なくとも3箇所の検出点71の基板1の表面の高さに基づいて、第2位置P2における基板1の表面の3次元データ及び第2位置P2における基板1の表面の法線ベクトルを算出することができる。少なくとも3箇所の検出点71の高さにより、第2位置P2を含む平面が規定される。第2位置P2を含む平面が規定されることにより、第2位置P2における基板1の表面の法線ベクトルが算出される。
【0139】
基板カメラ25によって基板1の撮像されている第2位置P2に高さセンサ26が移動する。高さセンサ26によって前述のように基板高さと法線ベクトルが求められる。求められた基板高さと法線ベクトルから、法線ベクトルがXY平面に直交する(基板1の表面が水平になる)ようにステージ20が制御される。ステージ20の傾きの変化によって、第2位置P2は、高さとXY位置が変化する。その変化量と高さセンサ26によって検出された基板高さを考慮してステージ20の高さと実装ヘッド24の位置が制御される。基板カメラ25には第2位置P2が撮像される。第2位置P2の面は基板カメラ25のピント位置であり水平となる。
【0140】
基板1の3次元データが存在する時のティーチングと同様に、XY方向における第2位置P2から変換された実装位置、Z軸方向におけるステージ20の位置、θX方向の回転角、及びθY方向の回転角は、NCデータ記憶部60に記憶される。以上の作業を基板1でティーチングが必要な実装位置で繰り返すとNCデータが完成する。完成したNCデータから、ステージの回転中心位置等の機構パラメータを基に基板データが作成され基板データ記憶部61に記憶される。
【0141】
[実装処理]
図27及び図28のそれぞれは、実施形態に係る実装ヘッド24による実装処理を説明するための図である。部品2の基板1上の実装位置Pp及び実装位置Ppにおける基板1の表面の法線ベクトルを示す基板データが算出される。また、実施形態においては、ステージ20の外形、寸法、及び機械座標系におけるステージ20の回転軸Rmの位置、機械座標系と基板座標系との位置関係を示すステージデータが予め求められ、ステージデータ記憶部62に記憶されている。
【0142】
基板座標上の実装位置Pp及び実装位置Pp上での法線ベクトルを含む基板データが基板データ記憶部61から読み出される。読み出された基板データとステージデータから、実装位置毎に法線ベクトルをXY平面に直交するように垂直に向けるためのステージ20の回転角θX、θYが算出される。ステージ20をθX、θYだけ回転させたとき、実装位置は水平になる。ステージ20をθX、θYだけ回転させた時に、機械座標上での実装位置PpがXYに移動する位置と、同時にZ方向高さも算出され、部品実装時に実装ヘッド24が移動すべきXY座標とステージ20の回転角θX、θY、ステージ20のZ方向高さがNCデータとして記憶される。
【0143】
図28に示すように、ステージ制御部57は、NCデータに基づいてステージ20を制御する。ヘッド制御部56はNCデータに基づいて実装ヘッド24を制御し、これにより、実装ヘッド24は、XY平面に平行な基板1の表面の実装位置Ppに部品2を実装することができる。
【0144】
図29はステージ20の制御方法を説明するための図である。実装位置Ppは、基板1に固定された基板座標系で定義される。例えば基板座標基準点Prを原点として、X軸方向、Y軸方向、Z軸方向が基板1に固定された座標系となる。実装位置は、基板座標系上においてPp(xp、yp、zp)で表される。同時に、実装位置は、実装装置12に固定された機械座標系でも表現される。機械座標系において、実装位置は、Pm(xm、ym、zm)で表現される。機械座標系の原点は機械内に固定されたどこでもいい。通常は実装ヘッド24のXYZ可動軸の可動端に設けられることが多い。基板座標系から機械座標系への変換はNCデータ変換部58によって実行される。
【0145】
ステージ20が回転軸Rmを中心に回転すると、基板1と基板座標系も回転する。ステージ20がZ軸方向に上下動すると、基板1と基板座標系も上下する。したがってステージ20の回転角と上下移動量、ステージ20の回転軸の位置、ステージ20の回転軸と基板座標系原点の位置のデータによって、実装位置Pp(xp、yp、zp)は機械座標系での実装位置Pm(xm、ym、zm)に変換される。実装位置での法線ベクトルもまた、基板座標系から機械座標系に変換される。機械座標系に変換された法線ベクトルがXY平面に直交、すなわち垂直を向くようにステージ20の制御量を設定することができる。また、ステージ20の制御量から、機械座標系の位置を基板座標系の位置に変換することもできる。この機能は、基板上の実装位置のティーチングから基板データを作成する時に使用される。機械座標系から基板座標系への変換は基板データ変換部59によって実行される。
【0146】
[マーク検出]
図30及び図31のそれぞれは、実施形態に係る実装ヘッド24による実装処理を説明するための図である。
【0147】
基板1の表面にマーク72が設けられる。マーク72はアライメントマークである。X軸方向、Y軸方向、及びZ軸方向のそれぞれのマーク72の3次元位置が検出される。マーク72は、基板1の表面に少なくとも2つ設けられる。
【0148】
実施形態において、マーク72は、基板カメラ25及び高さセンサ26によって検出される。すなわち、実施形態において、基板1の表面に設けられているマーク72を検出するマーク検出装置は、基板カメラ25及び高さセンサ26を含む。マーク位置算出部52は、基板カメラ25により撮像されたマーク72のカメラ画像データに基づいて、X軸方向及びY軸方向におけるマーク72の位置を算出することができる。マーク位置算出部52は、高さセンサ26により検出されたマーク72の高さに基づいて、Z軸方向におけるマーク72の位置を算出することができる。マーク位置算出部52は、基板カメラ25及び高さセンサ26のそれぞれの検出データに基づいて、機械座標系においてマーク72の3次元位置を算出する。
【0149】
前述のように、基板1は、インモールド成形技術により形成される。基板1は、曲面状の表面を有する基材1Aと、基材1Aの表面に接合されたフィルム1Bとを含む。マーク72は、フィルム1Bに設けられる。基板カメラ25及び高さセンサ26は、フィルム1Bに設けられたマーク72を検出する。
【0150】
例えば、基材1Aとフィルム1Bとに接合誤差が生じる可能性がある。すなわち、基材1Aとフィルム1Bとが目標相対位置からずれた状態で接合される可能性がある。基材1Aとフィルム1Bとが目標相対位置からずれた状態で接合されると、フィルム1Bの電気回路とマーク72が所期位置からずれた位置に配置される。その場合事前に用意された基板データに基づいた実装位置Ppに部品2を実装すると、電子回路のランド位置と実装位置がずれることにより実装不良を招く。この不良を回避するため、マーク72の検出位置からフィルム1Bのずれ量を検出し、基板データの実装位置Ppに修正を加える必要がある。
【0151】
実施形態において、実装位置決定部53は、マーク位置算出部52により算出されたマーク位置と基板データ記憶部61に記憶されている基板1の基板データのマーク位置と表面の3次元データとに基づいて、基板1の表面における部品2の実装位置Ppを補正する。ヘッド制御部56は、補正された実装位置Ppに部品2が実装されるように、実装ヘッド24を制御する。
【0152】
図30に示すように、基板データ記憶部61には、マーク72の位置が記憶されている。
【0153】
図31は、基材1Aとフィルム1Bとの接合誤差により、マーク72が所期位置からずれている状態を示す。基材1Aとフィルム1Bとの接合誤差により、マーク72が所期位置からずれた位置に配置されると、マーク72の検出位置が変化する。マーク72の検出位置は機械座標系上の位置であるから、ステージ20の制御情報を用いて基板座標系の位置データに変換される。実装位置決定部53は、マーク72の基板データ上の位置と、マーク72の検出位置のずれ量に基づいて、実装位置Ppを基板1の表面に沿って移動させる。
【0154】
図32は、実施形態に係る実装処理を示すフローチャートである。実装位置決定部53は、基板カメラ25及び高さセンサ26によりマーク72を検出させる(ステップSC1)。
【0155】
マーク位置算出部52は、基板カメラ25及び高さセンサ26の検出データに基づいて、X軸方向、Y軸方向、及びZ軸方向のそれぞれのマーク72の3次元位置を算出し基板座標系に変換する(ステップSC2)。
【0156】
実装位置決定部53は、ステップSC2において算出されたマーク72の位置と、基板データ記憶部61に記憶されたマーク72の位置と、基板データ記憶部61に記憶されている基板1の表面の3次元データとに基づいて、基板1の表面における部品2の実装位置Ppを補正する(ステップSC3)。
【0157】
例えば基材1Aとフィルム1Bとの接合誤差に起因して、マーク72の位置が所期位置からずれている場合、実装位置決定部53は、マーク72の所期位置からのずれ量に基づいて、実装位置Pp(Pp1,Pp2)を基板1の表面に沿って移動させる。
【0158】
例えば、基板1の表面の曲面形状が球面の一部を切り取った形状の場合、そのまま球面上で実装位置Pp(Pp1,Pp2)を球面の中心に対して回転させればよい。基板1の表面の曲面形状が非球面のような複雑形状の場合、例えば元の実装位置Ppを平面に射影したデータを作り、マーク位置のずれに基づいて補正し位置を再度曲面に投影してもよい。
【0159】
実装位置Pp(Pp1,Pp2)が補正された後、ヘッド制御部56は、補正された実装位置Ppに部品2が実装されるように、実装ヘッド24を制御する(ステップSC4)。これにより、部品2が電子回路上の正しい実装位置Ppに実装される。
【0160】
マーク72による実装位置Ppの補正は、3次元計測装置11による基板毎の計測を省略した場合に使用される。
【0161】
マーク72は位置補正専用のアライメントマークではなく、電気回路の一部であるランド、パッドをアライメントマークの代用として使用してもよい。
【符号の説明】
【0162】
1…基板、1A…基材、1B…フィルム、1V…基板モデル、2…部品、3…パレット、3V…パレットモデル、4…支持部材、4A…ベース部、4B…ガード部、4C…ピン部、4D…孔、5…クランプ機構、5A…支持部、5B…可動部、10…生産システム、11…3次元計測装置、12…実装装置、13…予熱装置、14…レーザ照射装置、15…検査装置、16…管理装置、17…生産ライン、18…ベース部材、19…搬送装置、19A…搬送ベルト、19B…ガイド部材、20…ステージ、20A…位置決め部材、20V…ステージモデル、21…ステージ移動装置、22…部品供給装置、23…ノズル、23A…シャフト、23V…ノズルモデル、24…実装ヘッド、24V…ヘッドモデル、25…基板カメラ、25V…カメラモデル、26…高さセンサ、26V…センサモデル、27…ヘッド移動装置、27X…X軸移動装置、27Y…Y軸移動装置、28…ノズル移動装置、29…チャンバ、30…開閉カバー、31…窓、32…表示装置、33…入力装置、34…ディスペンサ、35…ベース部材、36…搬送装置、36A…搬送ベルト、36B…ガイド部材、37…ヒータ、38…チャンバ、39…ベース部材、40…搬送装置、40A…搬送ベルト、40B…ガイド部材、41…ステージ、42…ステージ移動装置、43…レーザヘッド、44…チャンバ、45…開閉カバー、46…窓、47…プロセッサ、48…メインメモリ、49…ストレージ、50…インタフェース、51…基板データ算出部、52…マーク位置算出部、53…実装位置決定部、54…判定部、55…表示制御部、56…ヘッド制御部、57…ステージ制御部、58…NCデータ変換部、59…基板データ変換部、60…NCデータ記憶部、61…基板データ記憶部、62…ステージデータ記憶部、71…検出点、72…マーク、80…情報媒体、101…読取装置、102…読取装置、103…読取装置、P1…第1位置、P2…第2位置、Pc…現在位置、Pp…実装位置(基板座標)、Pm…実装位置(機械座標)、Pr…基板座標基準点、Rm…回転軸、Ps…指定位置、SLa…仮想ライン、SLb…仮想ライン。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
図29
図30
図31
図32