(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024157929
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】耐熱材料でエアロゲルを被覆する断熱複合材及びその調製方法
(51)【国際特許分類】
F16L 59/02 20060101AFI20241031BHJP
C01B 33/16 20060101ALI20241031BHJP
H01M 10/658 20140101ALI20241031BHJP
【FI】
F16L59/02
C01B33/16
H01M10/658
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023072606
(22)【出願日】2023-04-26
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2024-10-29
(71)【出願人】
【識別番号】519395466
【氏名又は名称】台湾気凝膠科技材料開発股▲分▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】Taiwan Aerogel Technology Material Co., Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】100146374
【弁理士】
【氏名又は名称】有馬 百子
(72)【発明者】
【氏名】陳 建宏
(72)【発明者】
【氏名】江 承書
(72)【発明者】
【氏名】柯 雅▲其▼
(72)【発明者】
【氏名】羅 吉▲宏▼
(72)【発明者】
【氏名】許 文延
【テーマコード(参考)】
3H036
4G072
5H031
【Fターム(参考)】
3H036AA09
3H036AB03
3H036AB15
3H036AB23
3H036AB24
3H036AE01
3H036AE13
4G072AA25
4G072AA28
4G072BB02
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4G072HH28
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4G072LL11
4G072MM31
4G072PP03
4G072PP17
4G072QQ02
4G072RR05
4G072RR12
4G072RR15
4G072UU30
5H031CC02
5H031EE03
5H031EE04
(57)【要約】 (修正有)
【課題】低い誘電率、高い断熱性、及び高い防火性能を兼ね備える耐熱外層でエアロゲルを被覆した断熱複合材及びその調製方法を提供する。
【解決手段】複合材料の調製方法は、混合加水分解ステップ(1)と、凝縮と分散ステップ(2)と、構造形成ステップ(3)と、常圧乾燥ステップ(4)と、外層被覆ステップ(5)と、硬化成形ステップ(6)と、表面処理ステップ(7)と、を含む。エアロゲルは凝縮分散中、微量の水の添加により分散する耐熱ゲルに溶融する。その後、繊維を含む予備成形構造に注入し、常圧高温乾燥を経た後に耐熱材料を被覆し硬化することによりエアロゲル複合材料を調製する。耐熱外層は、単層、多層、または多層積層を含み、製品は防火及び省エネ、炭素排出量の削減に応用可能になり、特に、クリーンルームまたは電気自動車のリチウムバッテリーモジュールの熱暴走の安全保護に応用できる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エタノール水溶液にシロキサン前駆体を添加して混合溶液を形成する混合加水分解ステップであって、前記シロキサン前駆体として、鎖長の異なる疎水性修飾シロキサン化合物、シロキサン化合物、またはそれらの組み合わせを含み、その後、前記混合溶液に酸触媒を添加して加水分解反応を発生させる混合加水分解ステップと、
前記混合溶液に分散水溶液を添加し、前記分散水溶液はアルカリ触媒を含み、凝縮反応を発生させて分散ゾル溶液を形成した後、前記分散ゾル溶液に微量の水で分散可能な耐熱性ゲル材料を添加して耐熱性ゲル材料を含む分散ゾル溶液を獲得し、前記耐熱性ゲル材料は300℃以上の高温に耐える凝縮と分散ステップと、
前記耐熱性ゲル材料を含む分散ゾル溶液を予備成形型に注入し、前記耐熱性ゲル材料を含む分散ゾル溶液を前記予備成形型中で更に凝縮して固体状になったウェットゲルの予備成形構造を形成する構造形成ステップであって、前記予備成形型として成形型または繊維材料材料を含有する成形型を含み、前記繊維材料として、マイクロメートル級乃至ナノメートル級の金属繊維、無機繊維、液晶繊維、有機繊維で調製される多孔質ばら繊維、蓆、紙、毛布、縄、厚板のうちの1つまたはそれらの組み合わせを含む構造形成ステップと、
常圧及び乾燥温度において、前記固体状になったウェットゲルの予備成形構造を乾燥し、エアロゲル板材またはエアロゲル/繊維複合板を含むエアロゲル予備成形材料を獲得し、前記乾燥温度は60~150℃である常圧乾燥ステップと、
耐熱性ゲル材料溶液を準備し、前記耐熱性ゲル材料溶液の耐熱性ゲル材料は300℃以上の高温に耐え、前記耐熱性ゲル材料溶液は非有機フィルム、非有機薄板、または300℃以上の高温に耐える繊維の表面に含侵するように塗布され、前記耐熱性ゲル材料溶液が前記非有機フィルム、前記非有機薄板、または前記300℃以上の高温に耐える繊維の表面に均一に分布された後、前記耐熱性ゲル材料溶液が含侵塗布された前記非有機フィルム、前記非有機薄板、または前記300℃以上の高温に耐える繊維を更に利用して前記エアロゲル予備成形材料を被覆し、前記非有機フィルム、前記非有機薄板、または前記300℃以上の高温に耐える繊維は前記エアロゲル予備成形材料に対しエアロゲルを単層で被覆または多層で被覆するか、或いはエアロゲルと多層に積層することで被覆し、高強度、低い熱伝導率、低い誘電率、高い防火性能を有する耐熱材料でエアロゲル予備成形材料を被覆する複合材料を形成する外層被覆ステップと、
硬化成形ステップであって、前記耐熱材料でエアロゲル予備成形材料を被覆する複合材料を、前記耐熱性ゲル材料溶液の溶剤乾燥温度において前記溶剤を気化させ、前記溶剤乾燥温度は60~115℃であり、その後、硬化成形温度で前記耐熱性ゲル材料溶液を含侵する硬化成形ステップを実行し、前記硬化成形温度は前記溶剤乾燥温度より高く、高強度、低い熱伝導率、低い誘電率、高い防火性能を有する耐熱フィルムでエアロゲル予備成形を被覆する複合材料を獲得する硬化成形ステップと、
高強度、低い熱伝導率、低い誘電率、高い防火性能を有する前記耐熱フィルムでエアロゲル予備成形を被覆する複合材料の表面は、艶出し、エアロゲル防火断熱塗料の噴射、及び表面スプレー塗装うちの1つまたはそれらの組み合わせを利用し、洗浄及び表面保護プロセスを組み合わることで、高強度、低い熱伝導率、低い誘電率、高い防火性能を兼ね備える耐熱繊維布または耐熱フィルム/耐熱薄板で多層に被覆するエアロゲル成形複合材料を形成する表面処理ステップと、を含むことを特徴とする耐熱材料でエアロゲルを被覆する断熱複合材の調製方法。
【請求項2】
前記耐熱性ゲル材料溶液が常温硬化型である場合、前記耐熱性ゲル材料溶液が含侵される前記非有機フィルム、前記非有機薄板、または前記300℃以上の高温に耐える繊維は、前記溶剤気化過程で硬化し、高強度なクリーンルーム及び電気自動車の安全保護に用いる無粉塵、高断熱エアロゲル複合材料を獲得することを特徴とする請求項1に記載の耐熱材料でエアロゲルを被覆する断熱複合材の調製方法。
【請求項3】
前記硬化成形ステップは、
前記耐熱性ゲル材料溶液が含侵される前記非有機フィルム、前記非有機薄板、または前記300℃以上の高温に耐える繊維で前記エアロゲル予備成形材料を被覆することで形成された前記耐熱フィルムでエアロゲル予備成形材料を被覆する複合材料を、前記耐熱性ゲル材料の溶剤乾燥温度において前記溶剤を気化させる溶剤乾燥ステップと、
特定の架橋硬化高温環境において、前記エアロゲル予備成形材料の外層を被覆している前記耐熱性ゲル材料溶液が含侵される前記非有機フィルム、前記非有機薄板、または前記300℃以上の高温に耐える繊維と、内部の熱硬化樹脂との間で架橋反応を発生させて硬化させることで相互に結合させ、前記架橋硬化温度反応後に高強度、低い熱伝導率、低い誘電率、高い防火性能を有する前記耐熱フィルムでエアロゲル予備成形を被覆する複合材料を獲得し、その外部は高温耐性、高強度、高い緻密性を兼ね備えて、粉塵が落ちないような繊維強化樹脂(LFRP)耐熱被覆層であり、その内部は低い熱伝導率及び低い誘電率を兼ね備えたエアロゲル板材またはエアロゲル/繊維複合材料である架橋硬化ステップと、を含むことを特徴とする請求項1に記載の耐熱材料でエアロゲルを被覆する断熱複合材の調製方法。
【請求項4】
前記常圧乾燥ステップは、
前記固体状になったウェットゲルの予備成形構造を共沸気化温度の環境で放置し、前記固体状になったウェットゲルの予備成形構造の溶剤を共沸気化させて溶剤を蒸留させて乾燥し、前記共沸気化温度は60~90℃である気化ステップと、
前記共沸した水性アルコール溶液の蒸気を熱交換回収設備にガイドし、前記水性アルコールを冷却凝縮すると共に回収する溶剤回収ステップと、
前記乾燥エアロゲルの予備成形構造の温度を突沸温度に調整し、前記乾燥エアロゲルの予備成形構造の内部に含まれる微量の溶剤及び水分子を高速に突沸させ、正圧蒸気を発生させてエアロゲル構造の乾燥収縮を抑制し、大量の微小孔を発生させて前記エアロゲル予備成形材料を獲得し、前記突沸温度は110~150℃である突沸ステップと、を含むことを特徴とする請求項1に記載の耐熱材料でエアロゲルを被覆する断熱複合材の調製方法。
【請求項5】
前記耐熱性ゲル材料溶液が無機ゲル樹脂または熱硬化性樹脂を含む場合、前記硬化成形ステップは、
常温環境において、溶剤を気化させると共に硬化剤を架橋硬化させ、硬化後に高強度、低い熱伝導率、低い誘電率、高い防火性能を有する前記耐熱フィルムでエアロゲル予備成形を被覆する複合材料を獲得する常温架橋硬化ステップ或いは、
架橋硬化温度において、前記熱硬化性樹脂及び前記非有機フィルム、前記非有機薄板、または前記300℃以上の高温に耐える繊維の内部繊維の間で化学反応を発生させて結合するように硬化させ、熱硬化性樹脂がエポキシ樹脂(epoxy)である場合、前記架橋硬化温度は150~180℃であり、熱硬化性樹脂がポリイミド(polyimide)である場合、前記架橋硬化温度は120~325℃であり、硬化架橋後に高強度、低い熱伝導率、低い誘電率、高い防火性能を有する前記耐熱フィルムでエアロゲル予備成形を被覆する複合材料を獲得する高温架橋硬化ステップと、を更に含むことを特徴とする請求項1に記載の耐熱材料でエアロゲルを被覆する断熱複合材の調製方法。
【請求項6】
前記シロキサン化合物として、テトラメトキシシラン(Tetramethoxysilane, TMOS)、テトラエトキシシラン(Tetraethoxysilane, TEOS)、またはそれらの組み合わせを含み、前記疎水性修飾シロキサン化合物として、メチルトリメトキシシラン(Methyltrimethoxysilane、MTMS)、プロピルトリメトキシシラン(Propyltrimethoxysilane、PTMS)、ヘキシルトリメトキシシラン(Hexyltrimethoxysilane、HTMS)、オクチルトリメトキシシラン(Octyltrimethoxysilane、OTMS)、ヘキサメチルジシラン(Hexamethyldisilane、HMDS)の異なるアルキル基鎖長で代替した疎水性修飾シロキサンの1つまたはそれらの組み合わせを含み、シロキサン前駆体において、前記シロキサン化合物及び前記疎水性修飾シロキサン化合物の含有量のモル比は0:100 mol%~40:60 mol%であることを特徴とする請求項1乃至5の何れか1項に記載の耐熱材料でエアロゲルを被覆する断熱複合材の調製方法。
【請求項7】
前記耐熱性ゲル材料として、無機ゲル、熱塑性樹脂、または熱硬化性樹脂の1つまたはそれらの組み合わせを含み、前記無機ゲルとして、水ガラス、無機ケイ素樹脂、酸化銅-リン酸ゲル、ケイ酸塩ゲル、リン酸-ケイ酸塩ゲル、硫酸塩ゲル、または酸化マグネシウム-二酸化ケイ素-ホウ砂無機ゲルを含み、前記熱硬化性樹脂として、エポキシ樹脂、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンスルファイド、ポリエーテルケトン液晶ポリマー、ポリテトラフルオロエチレン、ポリメラミン、ポリフェノールアルデヒド、ポリメラミン-ホルムアルデヒド、ポリアミド、ポリアミドエステル、またはシリカゲルを含むことを特徴とする請求項1乃至5の何れか1項に記載の耐熱材料でエアロゲルを被覆する断熱複合材の調製方法。
【請求項8】
前記繊維材料として、金属繊維、無機繊維、液晶繊維、有機繊維、マイクロメートル級乃至ナノメートル級の金属繊維または金属棒、ガラス繊維、炭素繊維、石英繊維、セラミック繊維、岩綿繊維、Kevlarポリアミド繊維、Nomexポリアミド繊維、ナイロン繊維、ポリエステル繊維、生分解性無機繊維または生分解性有機繊維で調製される多孔質ばら繊維、蓆、紙、毛布、縄、厚板、またはそれらの組み合わせを含むことを特徴とする請求項1乃至5の何れか1項に記載の耐熱材料でエアロゲルを被覆する断熱複合材の調製方法。
【請求項9】
前記非有機フィルム及び前記非有機薄板として、金属フィルム板、無機フィルム板及び有機-無機複合耐熱フィルム、薄板、またはそれらの組み合わせを含み、前記金属フィルム板として、アルミニウム、ステンレス、銅箔フィルムの1つまたはそれらの組み合わせを含み、前記無機フィルム板として、雲母シート、グラファイト、グラフェン、ガラスセラミック、金属酸化物、金属窒化ケイ素化合物及び金属炭化ケイ素化合物で調製されたフィルムまたは薄板の1つまたはそれらの組み合わせを含み、前記有機-無機複合耐熱フィルムとして、アルミ箔、ステンレス箔、銅箔、雲母薄板、グラファイト薄板、グラフェン薄板、ガラス薄板、セラミック薄板、金属、及び金属酸化物微粒子とゲルとを複合して製造した耐熱フィルム及び薄板の1つまたはそれらの組み合わせを含み、前記300℃以上の高温に耐える繊維として、石英繊維、ガラス繊維、セラミック繊維、炭素繊維を含み、前記有機繊維として、ナイロン繊維、ポリエステル繊維、ポリフッ化繊維、Kevlarポリアミド繊維、Nomexポリアミド繊維、または生分解性無機、有機繊維を複合して調製した各種多孔質ばら繊維、蓆、紙、毛布、縄、厚板の1つまたはそれらの組み合わせを含むことを特徴とする請求項1乃至5の何れか1項に記載の耐熱材料でエアロゲルを被覆する断熱複合材の調製方法。
【請求項10】
前記耐熱フィルムでエアロゲルを被覆する複合材料において、前記耐熱フィルムの被覆として、単層で被覆、多層で被覆、または多種類の耐熱フィルムを多層に積層させて被覆することを含み、前記耐熱フィルムでエアロゲルを被覆する複合材料は繊維強化プラスチック(like-fiber reinforced plastic, LFRP)無機材料でシリカエアロゲルを被覆する複合材料であり、関連製品は高強度、高い防火性能、及び高い熱伝導率等の性質を有し、クリーンルームでの高温プロセス及び電気自動車のリチウムバッテリーモジュールの放熱の安全保護に応用可能であることを特徴とする請求項1乃至5の何れか1項に記載の耐熱材料でエアロゲルを被覆する断熱複合材の調製方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐熱材料でエアロゲルを被覆する分野に関し、更に詳しくは、無粉塵、高断熱、高い防火性能、及び低い誘電率を兼ね備えたエアロゲル複合材料、及びその調製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
よく知られているように、エアロゲルは立体網状構造を有する多孔質材料であり、空隙率は80%以上に達し(さらには95%以上に達する)、且つ低密度(約0.005~0.2g/cm3)、高い比表面積(500~2000m2/g)、低い熱導率(k=15~40mW/mk)、低い誘電率(Dk=1.3~2.0)、低い誘電損失(Df<0.003以下)等の特性を有し、エアロゲルまたはその複合材料が高断熱、高い防火性能、及び低い誘電率等の優れた特性を獲得する。エアロゲルまたはその複合材料は、高い空隙率を有し、極低密度であるため、高断熱、高い防火性能、低い信号伝送抵抗、及び高い耐電圧性等の応用について、非常に高いポテンシャルを有している。このため、将来的に耐熱防火性能や、エネルギー消費量の多い生産設備や伝送管路のような省エネ及び炭素排出量の削減が求められる応用のような、各種産業において戦略的地位の獲得が見込まれている。現在、一般的な有機発泡材料は、常温または120度以下の環境において低くない断熱効果を有しているが、それらの有機発泡材料は調製過程において既に環境汚染を引き起こしており、且つ製品を120度以上の温度環境で応用する場合、高速に分解されてその断熱効果を喪失し、120度或いは更に高温の環境における有機発泡材料の応用が制限されている。また、一般的な無機繊維断熱製品は高温断熱に応用可能であるが、但し、長時間熱源から隔絶する性質は優れておらず、このため、将来的に省エネ及び炭素排出量の削減に応用する場合、更に優れたエアロゲルまたはそれに関連する複合材料により従来の有機発泡材料や無機繊維断熱製品を代替し、断熱効率及びエネルギー利用率を高め、省エネ及び炭素排出量の削減効果を向上させると共に、製品のプロセスにおける炭素排出量を削減する必要があった。また、将来的に5Gや6G等の高速なデータ伝送設備や電気自動運転車の信号の高速伝送等の高周波の応用においても、低い誘電率(Dk<2.5)、低い誘電損失(Df<0.003)、及び高い耐電圧等を兼ね備えた誘電材料が必要であった。基礎材料理論から分かるように、材料内部の多孔性は熱エネルギー及び正孔の伝送を明確に低下させるため、材料構造の空隙率が高くなるほど、その誘電性質が高くなった。よって、サブミクロン級やナノメートル級の多孔質二酸化ケイ素エアロゲル材料は放熱を防止するほか、5Gや6G等の高速なデータ伝送設備にも応用可能である。多孔質二酸化ケイ素エアロゲルは誘電率及び誘電損失を明確に低下させるため、信号送信端及び受信端においても、信号伝送効率を高め、信号の損失を減らすために応用可能である。将来的には、自動運転車や航空宇宙機における応用価値がある。
【0003】
しかしながら、エアロゲル材料は以上の優れた断熱及び誘電効果を有しているが、材料内部の分子間に微弱なファンデルワールス力を有しているため、エアロゲル関連製品は粉塵を極めて容易に落としやすく、エアロゲル関連製品をクリーンルーム等の厳格な環境に応用するには不適格であった。これに対し、本発明チームは、エアロゲル関連製品をクリーンルームにおけるプロセスの省エネ及び炭素排出量を削減する材料、及び電気自動車の高速伝送やリチウムバッテリーの熱暴走等の高温断熱材料に応用することを目指して開発を進め、エアロゲルのナノ粉塵の拡散や粉塵が落ちる等の危害を防止することを目標としてたゆまぬ努力を続けた。現在、既に国際的に開示されている特許に記載されている各種エアロゲル材料に被覆技術を加えても、ナノメートル級のエアロゲル粉塵が外に漏れるのを完全に抑制することはできず、特に200度以上の高温では、現在開示されている技術に使用されている有機系被覆材料(例えば、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリイミド、及びフルオロポリマー等のフィルム)は高温環境中で長時間受熱すると、関連する有機フィルムが徐々に疲労して劣化し、最終的にはエアロゲル粉塵が外に漏れたり、粉塵が落ちる等の重大な現象を引き起こした。これらの現象はクリーンルームや電気自動車のリチウムバッテリーの高温断熱材料にとって、依然として解決がまたれる重要な問題であった。
【0004】
従来のエアロゲルの調製方法はゾルゲル合成法であり、主にまずアルコキシシラン(alkoxysilane)、テトラメトキシシラン、または水ガラス等の前駆物質と大量の有機混合溶剤とを混合した後、酸触媒を添加して加水分解反応(hydrolysis)を発生させる。加水分解反応を一定時間発生させた後、アルカリ触媒を添加して凝縮反応(condensation)を発生させ、凝縮反応過程においてゾルを徐々に形成する。ゾル内の分子は継続的に反応して結合し、半固体の高分子ゲルを徐々に形成する。次に、一定時間エージング(aging)を行ってゲルに構造が安定した立体網状構造を形成させる。最後に、1-ブタノール、1-ヘキサノール、n-ヘキサン、またはシクロヘキサン等の疎水性修飾溶剤を利用して溶剤の置換を行い、超臨界乾燥技術によりエアロゲル構造中の溶剤を抽出して乾燥する。従来のプロセス技術は、高価な有機溶剤及び超臨界設備を大量に消費する以外、疎水性修飾溶剤を利用して長時間溶剤の置換を行わねばならず、エアロゲルの調製コストが頗る高く、時間もかかった。
【0005】
一方、疎水性修飾エアロゲルの調製方法も同様にゾルゲル合成法を採用し、主にまずメチルトリメトキシシラン(methyltrimethoxysilane、MTMS)やメチルトリエトキシシラン(methyltriethoxysilane、MTES)等のメチルアルコキシシラン前駆物質と有機溶剤とを混合した後、アルカリ触媒を添加して加水分解反応を発生させる。一定時間加水分解反応を発生させた後に凝縮反応を発生させ、凝縮反応過程においてゾルを徐々に形成する。ゾル内の分子は継続的に反応して結合し、半固体の高分子ゲルを徐々に形成する。一定時間エージング(aging)を行った後、イソプロパノール、アセトン、n-ヘキサン、またはシクロヘキサン等の溶剤を利用して溶剤を2日から3日間置換し、疎水性修飾ゲルに構造が安定した立体網状構造を形成させる。最後に、常圧乾燥技術によりエアロゲル構造の溶剤を乾燥し、多孔質の乾燥したエアロゲルブロック材を獲得する。疎水性修飾エアロゲルのプロセスでは高価な有機溶剤を大量に消費し、アルコール類またはアルカン類により長時間溶剤の置換を行う必要があるため、調製に時間がかかり、コストも高くなった。
【0006】
上述のエアロゲル調製方法に採用するプロセス技術はどれも大量の疎水性修飾溶剤を利用している。例えば、アルカン類等の有機溶剤では、2日から3日間複数回に亘って溶剤の置換を行い、超臨界乾燥技術または常圧高温乾燥技術により、エアロゲル構造が常圧乾燥過程において水分子の表面張力の影響を受けて収縮したり亀裂が入る状況を回避する。「超臨界乾燥」は、水と有機溶剤とを高温及び高圧で超臨界状態にし、有機溶剤と水とが同時に気液混合性質を兼ね備え、超臨界状態において溶剤を直接気化して乾燥させる。こうすることで、超臨界条件において、網状構造中の余剰の溶剤を除去し、ウェットゲルを収縮しないようにしている。然しながら、関連するプロセス中に疎水性修飾溶剤の置換技術及び超臨界乾燥技術を複数回使用すると、時間がかかる上にコストも上昇し、エアロゲルの量産及び将来的な応用において競争力を失う恐れがあった。上述の疎水性修飾は、常温常圧多段階溶剤置換技術を用いているが、但し、このような修飾技術は24時間以上行う必要があり、プロセスにかかる時間が長過ぎ、コストパフォーマンスが見合わなかった。
【0007】
従来の特許文献では、例えば、下記特許文献1には「断熱材および加熱部品」が開示されている。上記発明は断熱材及び加熱部品を提供している。断熱材は断熱材料及び第1被覆断熱材料を含み、且つ第1縫い目位置に沿って第1被覆層を縫い付け、断熱材料を密封する。上述の断熱材は断熱材料が発生する粉塵の飛散を防止可能である。また、上述の断熱材を含む加熱部品を更に提供する。但し、エアロゲル粉塵の粒径が極めて小さいため、シリカゲル、銅質アルカン類潤滑油、非石けん基合成潤滑油、リチウム基耐圧油脂、シリコン系油脂、及び二硫化モリブデン類バターのうちの1つの被覆層を利用してエアロゲル材料を被覆し、縫い目を利用して被覆層を縫い付ける。エアロゲル粉塵の放散を減少させることができるが、但し、依然としてクリーンルーム内部が汚染されないようにサブミクロン以下のエアロゲル粉塵の漏出を完全に抑制することはできなかった。
【0008】
また、例えば、下記特許文献2には「フレキシブルな複合エアロゲルとその製造方法」が開示されている。上記発明は親水性エアロゲルの直接分散調製方法に関する。この方法は本発明が可撓性複合物の有機エアロゲルに監視、紡織強化物を含み、上記紡織強化物中に有機エアロゲルを配置する。上記有機エアロゲルは少なくとも一部分がポリフェノール及びホルムアルデヒドにより生成される樹脂を基礎とし、上記有機エアロゲルは少なくとも1種類の水溶性カチオン高分子電解質を含む重合有機ゲルであり、或いは、上記有機エアロゲルは多孔質炭素単ブロック形態を呈する上記ゲルの熱分解物であり、少なくとも1種類の上記水溶性カチオン高分子電解質の熱分解作用生成物を含む。
【0009】
また、例えば、下記特許文献3には「エアロゲル複合物およびそのエアロゲル複合物を調製する方法」が開示されている。上記発明はエアロゲル複合物に関する。上記エアロゲル複合物は上面及び下面を有する少なくとも1層の基底層を含み、上記基底層は増強エアロゲル組成物を含み、且つ上記エアロゲル組成物は増強材料及び単ブロックエアロゲルフレームを含む。第1マスク層は上記基底層の上面に接着する第1マスク材料を含み、第2マスク層は上記基底層の下面に接着する第2マスク材料を含む。上記基底層の上記単ブロックエアロゲルフレームの少なくとも一部分は上記第1マスク層及び上記第2マスク層の一部分に進入するように延伸されている。上記第1マスク材料及び上記第2マスク材料は、スパンデックス、ナイロン、ライクラ、弾力繊維、またはそれらの組み合わせのような弾性繊維を各々含み、或いは、主に弾性繊維で構成されている。但し、調製されるエアロゲル被覆材は弾性繊維または柔軟高分子シートフィルムを含み、且つ使用する接着材料はアクリル酸エステル、カルバミン酸エチル、ホットメルト接着剤等の有機接着剤であり、関連する柔軟性製品はエアロゲルに対する低くない保護性を有している。
【0010】
また、例えば、下記特許文献4には「エアロゲル複合物とその調製方法」が開示されている。上記発明は無機繊維及び有機繊維のうちの少なくとも1つを含む湿潤な繊維材料に関する。巻き取り構造による上記湿潤な繊維材料及びスペーサー、或いは平面形式で積層する上記湿潤な繊維材料及び上記スペーサーである。上記繊維材料を容器内に填入する。前駆物質を上記容器内に注入し、上記前駆物質をゲル化すると同時に真空で残余の気泡を除去し、ゲル-繊維複合物を調製する。上記容器から上記エアロゲル-繊維複合物を取り出し、上記スペーサーを除去する。溶剤を利用して代替し、有機表面により上記ゲル-繊維複合物を修飾した後、上記有機表面により修飾したゲル-繊維複合物を大気圧で乾燥するか、超臨界で乾燥する。
【0011】
また、例えば、下記特許文献5には「強化エアロゲル複合材料を含む積層体」が開示されている。上記発明はエアロゲル複合材料に関する。上記エアロゲル複合材料は頂部表面及び底部表面を有する少なくとも1つの基底層を含み、上記基底層は強化エアロゲル組成物及び単ブロック強化エアロゲルフレームを含み、上記組成物は強化材料と、上記基底層の上記頂部表面に接着されている第1面材料を含む第1面層と、上記基底層の上記底部表面に接着されている第2面材料を含む第2面層と、を備えている。上記基底層の単ブロックエアロゲルフレームの少なくとも一部分は共に上記第1面層及び上記第2面層の少なくとも一部分まで延伸されている。上記第1面材料及び上記第2面材料は基本的にフルオロポリマー材料で各々構成されている。
【0012】
また、例えば、下記特許文献6には「エアロゲルフェルトの製造方法」が開示されている。上記発明はエアロゲルフェルトの製造方法に関し、まずエアロゲルスラリーをガラス繊維フェルトに注入し、浸漬液を用いてガラス繊維フェルトの表面に1層の封止コーティング層を形成し、エアロゲルフェルトの保管、輸送、及び使用過程で粉塵が落ちる現象を回避している。こうすることで、エアロゲルフェルトのエアロゲル量が減少しないようにし、エアロゲルフェルトの保温性能に影響が出ないようにしている。その表面の封止コーティング層は、アクリル系乳液、タルクパウダー、VAE乳液、及び水性硬化剤混合物である。
【0013】
また、本発明者らは、下記特許文献7には「不織布・エアロゲル複合耐火・断熱材及びその製造方法」が開示されている。上記発明は加水分解ステップ及び凝縮ステップによりエアロゲルを調製した後、成形ステップにおいて前述のエアロゲルを不織布に添加し、前述のエアロゲルを上記不織布に十分に挿入し、乾燥手順を経て不織布/エアロゲル複合耐火/断熱材を形成し、エアロゲルを上記不織布に十分に挿入するために、含侵加工方式または連続ローリング方式により実現する。上記乾燥手順の条件は、常温常圧で無水エアロゲルを乾燥し、或いは摂氏30度乃至80度で有機溶液を高速に気化させて乾燥する。
【0014】
また、本発明者らは、下記特許文献7には「エアロゲル・複合不織布耐火断熱材の作製方法」が開示されている。上記発明は、混合ステップ、加水分解ステップ、及び凝縮ステップを経てゲル化していないシリカゲル-シリカエアロゲル-シランカップリング剤のエアロゲル溶液の凝縮溶液を形成した後、成形ステップにおいて、ゲル化していない上記シリカゲル-シリカエアロゲル-シランカップリング剤のエアロゲル溶液の凝縮溶液を再生複合不織布毛布または一般的な不織布毛布に含侵、スプレー塗装、噴射、または溶液を連続的に吸圧し、上記シリカゲル-シリカエアロゲル-シランカップリング剤のエアロゲルをゲル化すると共に上記不織布毛布に挿入し、且つ乾燥手順を経てエアロゲル/複合不織布耐火断熱材を形成する。上記乾燥手順の条件は、常温常圧でエアロゲルを乾燥し、或いは摂氏30度乃至80度で有機溶液の高速気化乾燥手順を実行する。上記不織布は、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリエステル(Polyester)、ポリアミド(Polyamine)、ガラス繊維(glass fiber)、セラミック繊維(ceramic fibers)、炭素繊維(carbon fiber)のうちの1つ、またはそれらの組み合わせを利用して粉塵が落ちにくいエアロゲル複合材料を製造する。
【0015】
上述の発明特許は全てエアロゲル複合繊維毛布または断熱材の製造技術に関するが、直接調製法を採用するか、異なる有機スラリー浸泡法を利用するか、有機ゲル材接着法を利用するかを問わず、本チームは先行技術の軟性シリカゲル共混合法を利用するが、これにはエアロゲルの微小な粉塵がエアロゲル繊維複合毛布中から落ちやすいという欠点が依然として存在する。エアロゲル複合繊維毛布は粉塵が落ちやすいため、エアロゲルの耐熱効果及び断熱性能が徐々に低下し、特に180度以上の高温では顕著である。以上の発明特許において使用される有機質エアロゲル、有機被覆材料、有機修飾剤、または有機接着剤は180~200度のプロセス条件において高速に疲労すると共に分解するため、被覆効果が低下して大量の有機微粒子やエアロゲル粉塵が漏出した。
【0016】
以上の有機材料は高温による疲労及び分解のためにエアロゲル粉塵が外に漏出し、クリーンルームや電気自動車内部等のハイテク産業の応用において汚染を引き起こした。これはエアロゲル断熱材料の最大の欠点であった。エアロゲルまたはその複合材料の重大な粉塵の外漏れの原因として、内部のエアロゲル分子間に微弱な作用力が存在するため、凝縮して集合し、3次元の網状の多孔質構造を形成することで、シリカエアロゲルまたは有機-無機複合材料が高温での応用過程において、ナノメートル級乃至マイクロメートル級のエアロゲル粉塵を極めて容易に発生させる点が挙げられる。これらのエアロゲル粉塵は、エアロゲルをハイテク産業に早期に応用できなくする主要な原因となっている。特に、ハイテク産業の精密なプロセスは主にクリーンルーム内部で実行されるため、エアロゲル粉塵がハイテク産業やクリーンルームを汚染することが、高断熱エアロゲルの省エネ材料をハイテク産業の生産ラインに応用できない主な原因或いは問題点となっている。
【0017】
上述のエアロゲル粉塵が応用上の若干の欠点となっている点について、本発明者は上記の欠点が改善可能と考え、鋭意検討を重ねた結果、合理的設計で上記の課題を効果的に改善する本発明の提案に至った。本発明は、高強度、高い加工性、高い防火性能、高断熱性能、帯電防止性能を兼ね備えた無機材料でシリカエアロゲルを被覆する複合材料の製造方法を提供することを主目的とする。
【0018】
したがって、現在のポリエステルまたはポリイミド有機フィルムを利用してエアロゲルを被覆する製品では、長時間応用する過程において容易に疲労し分解しやすく、エアロゲル粉塵が漏出するという欠点を改善する。本発明の目的は、高強度、高い防火性能、高断熱、低い誘電率を兼ね備え、粉塵が漏出するのを回避し、繊維強化プラスチック(like-fiber reinforced plastic, LFRP)無機材料によりシリカエアロゲルを被覆する複合材料を提供する。本発明に係る製品は、高強度、高硬度、高断熱、及び高い防火性能等の性質を兼ね備え、クリーンルームにおける高温プロセス及び電気自動車のリチウムバッテリーモジュールの熱暴走の安全保護に応用可能である。本発明の他の目的は、ナノメートル級乃至サブミクロン級の上記ウェットゲル粒子懸濁分散溶液中に極微量の水で分散可能な耐熱性ゲル材料を添加することで、高い断熱効率と高い防火性能を兼ね備え、粉塵が落ちないエアロゲル構造複合材料を調製するためのエアロゲル複合材料の調製技術の改善を提供する。
【0019】
本発明のさらなる他の目的は、エアロゲル製品の外層の両側に高い断熱性能及び高熱伝導率をそれぞれ提供し、または低い誘電率及び高導電特性の表層を提供し、クリーンルームの高温管路の外部を被覆する断熱層または断熱層を有する工作機械のプラットフォームに適用し、パイプライン内或いは工作機械のプラットフォームの境界における熱の流失を低減し、省エネ及び炭素排出量の削減効果を高め、且つ導電技術を利用して高温管路を被覆する断熱層プラットフォームの外部に導電性を提供することで摩擦による静電気の発生を抑制する。本発明のさらにさらなる主目的は、複合構造の外部に高い防火性能を提供し、内部に高い断熱性を提供し、且つ電気自動車のリチウムバッテリーモジュールの放熱の断熱に適用し、電気自動車のリチウムバッテリーモジュールの熱暴走(thermal runaway)を回避し、電気自動車の安全性を高める。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0020】
【特許文献1】中国特許出願公開第113873697A号明細書
【特許文献2】台湾特許出願公開第201542457号明細書
【特許文献3】台湾特許出願公開第655094号明細書
【特許文献4】台湾特許出願公開第663062号明細書
【特許文献5】台湾特許出願公開第743082号明細書
【特許文献6】台湾特許出願公開第765609号明細書
【特許文献7】台湾特許出願公開第535658号明細書
【特許文献8】台湾特許出願公開第643888号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
本発明は、まず、エアロゲルの調製過程において、懸濁分散技術により凝縮溶液を大量の分散溶液中に分散させた後、微量の耐熱ゲル材料を添加して均一に分散させ、この懸濁分散溶液を予備成形した繊維毛布に注入し、且つゲルを成形し、常圧乾燥した後、低い熱伝導率及び高い防火性能を兼ね備えたエアロゲル繊維予備成形複合構造材を調製する。その後、耐熱樹脂を含有する繊維生地または耐熱非有機フィルム等を更に利用してエアロゲル構造材を予備成形して表層を被覆し、その後に高温で硬化し、耐熱樹脂を含有する繊維生地または耐熱非有機フィルム及びゲル材を架橋硬化し、表層が高強度で緻密性が高い繊維強化プラスチック(LFRP)を調製し、高断熱、高い防火性能を兼ね備えたエアロゲル毛布の製品を被覆する。この組み合わせの製品は、粉塵が落ちず、高い断熱効率、高い防火性能、及び低い誘電率または帯電防止を兼ね備えたエアロゲルを被覆する複合材料である。
【課題を解決するための手段】
【0022】
上記課題を解決するために、本発明の一態様の耐熱材料で被覆されたエアロゲルは、特に無粉塵、高断熱、高い防火性能、及び低い誘電率を兼ね備えたエアロゲル複合材料に関する。本発明の実施形態は、エタノール水溶液中にシロキサン前駆体を添加して攪拌混合し、混合溶液を形成し、上記シロキサン前駆体としてシロキサン化合物及び異なるアルキル基鎖長で代替した疎水性修飾シロキサン化合物またはそれらの組み合わせを含み、その後、酸触媒を上記混合溶液に添加して加水分解反応を発生させる混合加水分解ステップ(1)と、上記混合溶液に大量の分散水溶液を添加して高速に攪拌し、上記凝縮溶液を水溶液に懸濁分散し、上記分散溶液はアルカリ触媒を含み、凝縮反応を発生させて懸濁分散サブミクロン級凝縮溶液を形成した後、懸濁分散サブミクロン級凝縮溶液体に微量の水で分散可能な耐熱性ゲル材料を添加する凝縮と分散ステップ(2)と、懸濁分散ゾル溶液を予備成形型に注入し、上記分散ゾル溶液を更に凝縮して固体状になったウェットゲルの予備成形型構造を形成し、上記懸濁分散ゾル溶液を繊維材料を含有する型に注入し、上記懸濁分散ゾル溶液を繊維材料を含有する予備成形型中で更に凝縮して繊維材料を含有する固体状になったウェットゲル予備成形複合構造を形成し、且つ微量の水で分散可能な耐熱性ゲル材料によりエアロゲル構造の表面を被覆する構造形成ステップ(3)と、高温加熱炉にマイクロ波技術を結合し、高温加熱炉により常圧及び高温乾燥気流を提供し、上記固体状になったエアロゲル成形構造の溶剤を高速に気化し、且つ水分子回転周波数のマイクロ波技術を利用し、エアロゲル成形構造内部の水分子を高速回転させて水分子の水素結合を破壊し、乾燥過程において水分子の界面張力に起因するエアロゲル構造の収縮破裂を抑制し、以上の技術を結合して多孔質構造であり、且つ低い熱伝導率及び低い誘電率を兼ね備えた予備成形エアロゲル材料を高速に獲得する常圧乾燥ステップ(4)と、300度以上の高温に耐えるゲル材溶液を準備し、上記ゲル材溶液を耐熱繊維生地または無機型板の表面に含侵またはスプレー塗装した後、ゲル材溶液が含侵された耐熱繊維生地または非有機フィルム板を更に利用してエアロゲル予備成形材料を多層で被覆する外層被覆ステップ(5)と、上記含耐熱性ゲル材料の耐熱繊維生地/非有機フィルム板により多層で被覆するエアロゲル予備成形材料を高温硬化環境において樹脂を硬化して成形し、高い強度及び高い緻密性を兼ね備え、粉塵が落ちない繊維強化プラスチックでエアロゲルを被覆する複合材料を獲得し、以上のプロセス技術により調製した外層は高強度、高い係数、高い緻密性を兼ね備えた繊維強化プラスチック(like-fiber reinforced plastic, LFRP)被覆層であり、内層は高断熱、低い誘電率を兼ね備えた微量の耐熱性ゲル材料を含有するエアロゲル構造複合材料であり、この組み合わせの製品は、粉塵が落ちず、高い断熱効率を有するエアロゲル複合構造材料である硬化成形ステップ(6)と、高強度、高い緻密性の上記LFRPで高断熱エアロゲル毛布を被覆し、高圧噴射、サンドブラスト、ウェットサンドブラスター、またはドライサンドブラスター等を利用した艶出し及び表面の塗装等の表面処理技術によりFRP被覆層の表面処理を行い、このプロセスの組み合わせのエアロゲル複合構造材料は、高強度、高耐熱、粉塵が落ちない、及び高い断熱効率を兼ね備えている表面処理ステップ(7)と、を含む。
【0023】
さらに、混合加水分解ステップ(1)において、上記シロキサン化合物として、テトラメトキシシラン(Tetramethoxysilane,TMOS)、テトラエトキシシラン(Tetraethoxysilane, TEOS)、またはそれらの組み合わせを含む。上記疎水性修飾シロキサン化合物として、メチルトリメトキシシラン(Methyltrimethoxysilane、MTMS)、プロピルトリメトキシシラン(Propyltrimethoxysilane、PTMS)、ヘキシルトリメトキシシラン(Hexyltrimethoxysilane、HTMS)、オクチルトリメトキシシラン(Octyltrimethoxysilane、OTMS)、ヘキサメチルジシラン(Hexamethyldisilane、HMDS)等の異なるアルキル基鎖長で代替した疎水性修飾シロキサンの1つまたはそれらの組み合わせを含む。混合溶液全体において、上記シロキサン化合物及び上記疎水性修飾シロキサン化合物の含有量のモル比は0:100 mol%~95:5 mol%であり、上記疎水性修飾シロキサン化合物を添加する目的は、乾燥過程でエアロゲル構造に亀裂が発生する現象を減少させることである。一方、上記シロキサン化合物を添加する目的は、エアロゲル構造内部の微細構造を調節し、構造中の孔構造及び空隙率を増加させることで、熱伝導率を低下させる或いは断熱性を高めることである。
【0024】
さらに、混合加水分解ステップ(1)において、上記混合溶液における上記酸触媒の含有量比が高くなる程、加水分解速度が速くなり、但し、大量の酸イオンを含むことで電場作用によってイオンの導電性質が発生するため、エアロゲル構造の誘電率及び誘電損失も明らかに高まった。相対的に、酸触媒の含有量比が低くなる程、全体的な加水分解速度が遅くなる。よって、本発明は酸触媒の含有量を減らし、プロセス温度を高めることで微量の酸イオンの加水分解速度を速め、こうすることで、全体的に添加する酸イオン及び凝縮の塩基イオンの含有量を明確に低下させている。一方、シロキサン化合物及び疏水化シロキサン化合物の加水分解過程で大量に発生するアルコール類分子は、加水分解過程において超純水によりアンモニア水及びアルカン類等の有機溶剤を代替し、こうすることでアンモニア水及びアルカン類等の有機溶剤の添加を減らし、アンモニア水等の有機溶剤がエアロゲルの誘電性質に与える影響を低減するほか、プロセス中の有機溶剤処理に伴う危険及び環境汚染をも減らし、全体的なエアロゲルの調製コストも抑制する。
【0025】
さらに、混合加水分解ステップ(1)において、混合溶液全体における上記溶剤の含有量が多くなる程、後続の乾燥するウェットゲル粒子内の空隙率が高くなる。相対的に、混合溶液全体における上記溶剤の含有量が少なくなる程、後続の乾燥するウェットゲル粒子内の空隙率が低くなる。上記溶剤として、エタノール、再利用エタノール水溶液、再利用メタノール水溶液、再利用水、超純水、濾過水、蒸留水、またはそれらの組み合わせを含む。
【0026】
さらに、凝縮分散ステップ(2)において、微量のアルカリ触媒を含有する大量のエタノールを含有する分散水溶液を添加し、上記加水分解溶液中のシロキサン分子または疎水性修飾シロキサン分子の混合溶液を乳化機またはホモジナイザーにより高速に攪拌し、加水分解した上記シロキサン分子または疎水性修飾シロキサン分子を大量の分散水溶液により希釈攪拌し、ナノメートル級乃至サブミクロン級の円形分子懸濁油滴を形成し、大量の分散水溶液中に分散させる。このステップを利用する主な目的は、加水分解する上記シロキサン分子または疎水性修飾シロキサン分子を大量の分散水溶液で希釈攪拌し、ナノメートル級乃至サブミクロン級の円形分子懸濁油滴を形成して反応接触面積を増加し、凝縮反応速度を加速して形成されたナノメートル級乃至サブミクロン級のウェットゲル粒子を高速に疲労させることである。このステップを利用する他の目的は、形成されたナノメートル級乃至サブミクロン級のウェットゲル粒子を後続の乾燥過程において、その比表面積を明確に増加することで乾燥速度を速めることである。
【0027】
さらに、上述の凝縮分散ステップ(2)において、本発明はナノメートル級乃至サブミクロン級の上記ウェットゲル粒子及び分散水中に極微量の水で溶解分散可能な耐熱性ゲル材料を添加し、水で溶解分散可能な上記耐熱性ゲル材料を利用して後続の乾燥過程においてナノメートル級乃至サブミクロン級の上記ウェットゲル粒子の表面を被覆し、且つ被覆するゲル材をウェットゲル粒子構造の安定剤とすることで、本調製方法による製品に亀裂が入らなくなり、大量の疎水性修飾トルエン、n-ヘキサン等の有機溶剤を添加する必要がなくなり、調製中にも界面活性剤等の助剤を添加する必要もなくなり、疎水性修飾有機溶剤の置換ステップを何回も行う必要がなくなる。
【0028】
さらに、構造形成ステップ(3)では予備成形及び成形ステップを含む。予備成形ステップにおいて、形成されたナノメートル級乃至サブミクロン級の加水分解された上記シロキサン分子及び疎水性修飾シロキサン分子の混合懸濁分散溶液を予備成形型に注入し、ナノメートル級乃至サブミクロン級の上記ウェットゲル粒子を更に凝縮集合させて予備成形構造のゲル構造を形成し、各種サイズの管状、板状、或いは特定の外観形態の予備成形ゲル構造を形成する。本発明は、ナノメートル級乃至サブミクロン級の上記ウェットゲル粒子を相互に集合させることで3次元のウェットゲル粒子網状構造を形成し、ゲル化することでナノメートル級乃至サブミクロン級の上記エアロゲルウェットゲルを凝縮集合させて成形型の構造を形成し、且つ微量の水で分散可能な耐熱性ゲル材料を利用してエアロゲル構造の表面を被覆することで有機-無機複合構造を形成する。他の実施例では、凝縮反応を発生させていない上記凝縮懸濁分散ゾル溶液を、繊維材料を含有する予備成形型に注入し、ナノメートル級乃至サブミクロン級の加水分解された上記ウェットゲル粒子を予備成形型に進入させ、且つ繊維構造の間で更に凝縮集合させて3次元のウェットゲル粒子網状構造を形成し、予備成形型中でゲル化することで上記ケイ素基ウェットゲル粒子と繊維材料とを相互に結合した後、上記予備成形型中で更に凝縮することで繊維材料を含有する固体状になったウェットゲルの成形構造を形成し、且つ微量の水で分散可能な耐熱性ゲル材料を利用してエアロゲル構造の表面を被覆することで有機-無機複合構造を形成する。
【0029】
さらに、上述の構造形成ステップ(3)において、含侵技術、吸圧技術、高圧注入、高圧噴射、高圧噴霧、或いは真空吸着等の技術を利用し、繊維を含有する構造に加水分解された上記シロキサン分子及び疎水性修飾シロキサン分子分散溶液を注入し、繊維を含有するエアロゲル薄板の複合加工を行う。
【0030】
さらに、上述の構造形成ステップ(3)において、300度以上の高温に耐える上記ゲル材は無機ゲルまたは熱硬化性樹脂のうちの1つまたはそれらの組み合わせを含み、より具体的な例で言えば、例えば、水ガラス、無機ケイ素樹脂、酸化銅-リン酸ゲル、ケイ酸塩ゲル、リン酸-ケイ酸塩ゲル、硫酸塩ゲル、酸化マグネシウム-二酸化ケイ素-ホウ砂無機ゲル、エポキシ樹脂、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンスルファイド、ポリエーテルケトン液晶ポリマー、ポリテトラフルオロエチレン、ポリメラミン、ポリフェノールアルデヒド、ポリメラミン-ホルムアルデヒド、ポリアミド、ポリアミドエステル、シリカゲル等の各種有機または無機ゲル材のうちの1つまたはそれらの組み合わせを挙げることができる。
【0031】
さらに、上述の構造形成ステップ(3)において、本発明の耐熱繊維として、金属繊維、無機繊維、液晶繊維、有機繊維を含み、具体的な例で言えば、マイクロメートル級乃至ナノメートル級の各種金属繊維または金属棒、ガラス繊維、炭素繊維、石英繊維、セラミック繊維、岩綿繊維、Kevlarポリアミド繊維、Nomexポリアミド繊維、ナイロン繊維、ポリエステル繊維、生分解性無機繊維、或いは生分解性有機繊維で調製される各種多孔質ばら繊維、蓆、紙、毛布、縄、厚板等、またはそれらの組み合わせを含む。
【0032】
さらに、常圧乾燥ステップ(4)において、上記固体状になったエアロゲルの予備成形構造を結合した高温設備及びマイクロ波設備に放置し、高温加熱炉、UV光、或いはIR等の熱源を利用して上記混合溶剤の共沸温度の高温気流を提供し、且つ水分子回転周波数のマイクロ波周波数を結合し、エアロゲル成形構造内部の水分子をマイクロ波周波数に追随させて高速回転させ、エアロゲル構造中の水分子の水素結合を破壊し、製品の乾燥速度を加速させ、以上の技術を結合することで、エアロゲル構造内部の水分子及びアルコール類分子を高速に乾燥し、且つ水分子の界面張力に起因するエアロゲル構造の収縮破裂現象を抑制し、一般的な上記固体状になったエアロゲル成形構造の大量の混合溶剤の高速共沸気化温度は60~90℃の間である溶剤共沸気化ステップ(4-1)と、上記共沸温度環境において、気化した蒸気を熱交換回収設備にガイドし、上記熱交換回収設備中で水性アルコールを冷却凝縮すると共に回収し、上記回収の目的は、コストを低下させ、環境汚染を減らすことである溶剤回収ステップ(4-2)と、エアロゲルの予備成形構造を乾燥する乾燥設備の温度を混合剤の突沸温度以上の高温に調整し、且つマイクロ波周波数の高速回転を結合してエアロゲル構造中の水分子の水素結合を破壊し、且つ溶剤分子の摩擦熱を高速に提供し、乾燥が近い上記エアロゲル内部の余剰の混合溶剤を高速に突沸させて正圧を形成させ、このエアロゲル構造内部の正圧を利用してエアロゲルの乾燥過程において発生する収縮現象を抑制し、且つ、エアロゲル構造内部の正圧を利用し、エアロゲル構造の膨張過程中に発生するナノメートル級乃至サブミクロン級の大量の微小孔により、エアロゲル製品の空隙率及び断熱性質を高め、上記突沸温度は110~180℃である突沸ステップ(4-3)と、を含む。
【0033】
さらに、外層被覆ステップ(5)において、有機、無機樹脂またはそれらの組み合わせを含む300度以上の高温に耐えるゲル材溶液を準備し、上記耐熱性ゲル材料溶液を耐熱繊維生地、耐熱非有機フィルム、或いは耐熱非有機薄板に含侵またはスプレー塗装し、上記耐熱性ゲル材料溶液を上記耐熱繊維生地、上記耐熱非有機フィルム、或いは耐熱非有機薄板の表面に均一にスプレー塗装した後、この耐熱性ゲル材料を含有する耐熱材料等の製品を更に利用してエアロゲル予備成形構造材の表面を被覆する。
【0034】
さらに、上述の外層被覆ステップ(5)において、上記耐熱非有機フィルム、耐熱非有機薄板、または耐熱繊維の1つまたはそれらの組み合わせは、耐熱非有機フィルム、耐熱非有機薄板に関し、金属、無機及び有機-無機複合等の耐熱フィルム、薄板を含む。さらに、金属フィルム板として、アルミニウム、ステンレス、銅等の金属材料で調製されたフィルムまたはそれらの組み合わせを含む。無機フィルム板として、雲母シート、グラファイトシート、グラフェンシート、ガラスシート、及び各種セラミックシート、金属酸化物、金属窒化ケイ素化合物、及び金属炭化ケイ素化合物で調製されたシート、薄板、またはそれらの組み合わせを含む。有機-無機複合フィルムとして、アルミニウム、ステンレス、銅、雲母シート、グラファイト、グラフェン、ガラス、セラミック、金属酸化物、金属窒化ケイ素化合物、及び金属炭化ケイ素化合物と各種有機ゲルまたは各種無機ゲルとを複合して製造した耐熱有機-無機複合フィルム、薄板、または無機-無機複合フィルム、薄板等の組み合わせを含む。さらに、耐熱繊維として、石英繊維、ガラス繊維、セラミック繊維、炭素繊維、及びナイロン繊維、ポリエステル繊維、ポリフッ化繊維等の有機繊維、Kevlarポリアミド繊維、Nomexポリアミド繊維等の液晶繊維、並びに各種セルロース、生分解性無機または有機繊維等を複合することで調製した各種多孔質ばら繊維、蓆、紙、毛布、縄、厚板のうちの1つまたはそれらの組み合わせを含む。
【0035】
さらに、上述の外層被覆ステップ(5)において、上記耐熱性ゲル材料溶液として、無機ゲル、熱可塑性または熱硬化性有機樹脂のうちの1つ、またはそれらの組み合わせを含み、具体的な例で言えば、耐熱性無機ゲルは、水ガラスゲル、無機ケイ素樹脂ゲル、酸化銅-リン酸ゲル、ケイ酸塩ゲル、リン酸-ケイ酸塩ゲル、硫酸塩ゲル、酸化マグネシウム-二酸化ケイ素-ホウ砂無機ゲル等、またはそれらの組み合わせである。耐熱熱硬化性有機ゲルは、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリフェニレンスルファイド樹脂、ポリエーテルケトン液晶ポリマー樹脂、ポリテトラフルオロエチレン樹脂、ポリメラミン樹脂、ポリフェノールアルデヒド樹脂、ポリメラミン-ホルムアルデヒド樹脂、ポリアミドゲル、ポリアミドエステルゲル、ポリプロピレン酸樹脂ゲル、シリカゲル等、またはそれらの組み合わせである。
【0036】
さらに、外層被覆ステップ全体について、上記耐熱性ゲル材料溶液の固形含有量濃度は10.0 ~ 75.0wt%である。上記ゲル材溶液を上記繊維生地、上記耐熱非有機フィルム、または上記耐熱非有機薄板にスプレー塗装または塗布することでエアロゲル予備成形複合材料を多層で被覆する。耐熱性ゲル材料溶液の濃度が低くなる程、ゲル材溶液が繊維生地内部に浸入する効率が高くなり、且つ加工が容易になる。但し、調製されたゲル材溶液を含侵する繊維生地が多層で被覆するエアロゲル成形複合材料の緻密性が低くなり、構造中の孔の含有量が多くなり、エアロゲル粉塵の漏出が発生しやすくなる。相対的に、耐熱性ゲル材料溶液の濃度が高くなる程、ゲル材溶液が繊維生地の表面を被覆する含有量が多くなり、調製されたゲル材溶液を含侵する繊維生地が多層で被覆するエアロゲル成形複合材料の強度が高くなり、緻密性も高くなり、且つエアロゲル粉塵の漏出が発生しにくくなり、但し、加工がより困難になると共に、膜厚を制御しにくくなる。これは、含侵するゲル材溶液の濃度を利用してゲル材溶液を含侵する繊維生地が多層で被覆するエアロゲル成形複合材料の成形加工及び粉塵を落とさない性質を制御し、最も好ましくは、ゲル材溶液の濃度を30~50.0wt%とする。
【0037】
さらに、硬化成形ステップ(6)において、溶剤乾燥ステップ(6-1)及び架橋硬化ステップ(6-2)を含む。溶剤乾燥ステップにおいて、上記ゲル材溶液を繊維生地や耐熱フィルム/耐熱薄板の表面に含侵または塗布することで多層で被覆するエアロゲル予備成形複合材料を、ゲル材溶液に含侵した溶剤の沸点温度下で放置し、上記ゲル材溶液の溶剤を気化させて欠陥または気泡の形成を減少させる。上記ゲル材は常温硬化樹脂であり、溶剤の乾燥期間に樹脂に伴って硬化するため、常温乾燥硬化ステップと呼ばれ、高強度、高緻密性を兼ね備えた粉塵が落ちないような繊維強化プラスチック(like-fiber reinforced plastic, LFRP)無機材料でシリカエアロゲルを被覆する複合材料を形成する。
【0038】
さらに、高強度、高い防火性能、高断熱、帯電防止を兼ね備え、粉塵が漏れない繊維強化プラスチック(like-fiber reinforced plastic, LFRP)無機材料でシリカエアロゲルを被覆する複合材料を提供し、関連製品は、高強度、高硬度及び高い防火性能等の性質を有し、クリーンルームでの高温プロセス及び電気自動車のリチウムバッテリーモジュールの放熱の安全保護に応用可能である。本発明の目的は、高断熱効率、高い防火性能を兼ね備え、粉塵が落ちない無機材料でエアロゲル構造を被覆する複合材を調製するためのエアロゲル複合材料の調製技術の改善を提供する。本発明の他の目的は、従来の有機フィルムで被覆するシリカエアロゲル或いは有機-無機複合エアロゲルを高温で応用すると疲労または分解するという欠点を改善する。一方、本発明はクリーンルームの高温管路の外部を被覆する断熱層または断熱層を有する工作機械のプラットフォームに適用し、パイプライン内或いは工作機械のプラットフォームの境界における熱の流失を低減し、省エネ及び炭素排出量の削減効果を高める。
【0039】
上述の溶剤乾燥ステップ(6-1)において、繊維生地または耐熱フィルム/耐熱薄板の表面に含侵または塗布した高耐熱性、高強度で粉塵が落ちないゲル材溶液が有機溶剤に伴って気化し、上記ゲル材溶液が徐々に乾燥する。ここでは、溶剤の乾燥温度は上記ゲル材溶液の混合溶剤の沸点に基づいて決定する。いくつかの実施形態では、溶剤はエタノールであり、その溶剤の乾燥温度は60~75℃である。他の実施例では、溶剤はメチルエチルケトンであり、その溶剤の乾燥温度は80~90℃である。他の実施例では、溶剤は水であり、その水溶剤の乾燥温度は80~102℃である。上記乾燥溶剤の危険性を鑑み、上記溶剤の気化は回収装置により溶剤を回収することで、作業環境における気化溶剤の含有量を減少させ、リスクを減らす。
【0040】
他の実施例では、溶剤乾燥ステップ(6-1)において、繊維生地または耐熱フィルム/耐熱薄板内部に含侵または塗布したゲル材溶液が有機溶剤に伴って気化し、上記ゲル材溶液が徐々に乾燥し、上記ゲル材溶液が含侵または塗布されている繊維生地または耐熱フィルム/耐熱薄板が高い耐熱性及び高強度を獲得し、且つ粉塵が落ちないゲル材溶液が含侵した繊維生地または耐熱フィルム/耐熱薄板がエアロゲル複合材料を被覆する。
【0041】
さらに、架橋硬化ステップ(6-2)において、上記ゲル材溶液を含侵または塗布した繊維生地または耐熱フィルム/耐熱薄板により多層で被覆したエアロゲル予備成形複合材料を特定の架橋硬化温度において、無機ゲルまたは熱硬化性ポリマー鎖の間及び無機ゲルまたは熱硬化性分子とエアロゲル分子との間で架橋反応を発生させ、且つ結合させて硬化させる。例えば、、水ガラスゲル、無機ケイ素樹脂ゲル等の無機ゲル及びエポキシ樹脂(epoxy)のような熱硬化性ポリマーは、上記架橋硬化温度が約120~200℃であり、他の実施例では、最も好ましい架橋硬化温度は150~180℃或いは185~190℃である。一方、酸化銅-リン酸ゲル、ケイ酸塩ゲル、リン酸-ケイ酸塩ゲル等の無機ゲル及びポリイミド(polyimide)のような熱硬化性ポリマーは、上記架橋硬化温度が約120~325℃であり、他の実施例では、最高架橋硬化温度が320~325℃である。上記架橋硬化ステップ(6-2)において、特定の架橋温度で上記有機または無機樹脂溶液を含侵または塗布する繊維生地或いは耐熱フィルム/耐熱薄板の分子間で相互に架橋反応を発生させ、高い断熱性、高い防火性能、高い強度を兼ね備え、且つ粉塵が落ちないゲル材溶液が含侵または塗布されている繊維生地或いは耐熱フィルム/耐熱薄板により多層で被覆するエアロゲル成形複合材料を形成する。
【0042】
さらに、表面処理ステップ(7)において、高強度、低い熱伝導率、低い誘電率、高い防火性能を兼ね備えた上記耐熱フィルムでエアロゲル及び材料を被覆し、エアロゲル防火断熱塗料の1つまたはそれらの組み合わせを利用して艶出し、噴射、及び表面スプレー塗装を行い、洗浄及び表面の保護等のプロセスを組み合わせることで、高強度、低い熱伝導率、低い誘電率、高い防火性能を兼ね備えた耐熱フィルムでエアロゲルを被覆する。
【0043】
さらに、上述の調製方法において、低い熱伝導率及び低い誘電率を兼ね備え、多層で被覆するエアロゲル成形複合材料内部のエアロゲル材料は多孔質構造であり、その空隙率は50.0~75.0%であり、その密度は0.20~0.60g/cm3であり、その熱伝導率は0.020~0.045W/mkであり、その誘電率は1.30~1.85であり、耐燃性質はUL94-5VA等級以上であり、最高耐熱温度は1200度に達する。高温のホットスポットの温度が約650度であり、製品の厚さが2mm~3mmである条件において、断熱温度が約200度以下まで低下する。
【0044】
本発明は高強度な耐熱材料でエアロゲルを被覆する複合材料を高速に生成する。まず、改良型ゲル-ゾル技術を利用し、有機溶剤、酸アルカリイオンの濃度が低い条件において、乳化機またはホモジナイザー等の設備により懸濁分散溶液を高速に凝縮した後、上記凝縮懸濁分散溶液を予備成形型または繊維を含有する予備成形型に含侵させることで、高断熱及び低い誘電率をで兼ね備えた特定の成形構造のエアロゲル或いはエアロゲル/繊維複合構造材を調製する。更に、上記エアロゲルまたはエアロゲル/繊維複合構造材をゲル材溶液が含侵または塗布された繊維生地或いは耐熱フィルム/耐熱薄板により単層または多層で被覆した後、架橋硬化及び表面処理を行って高い防火性能、低い熱伝導率を兼ね備え、粉塵が落ちないエアロゲルを多層で被覆した複合構造材料を調製し、関連製品を各種ハイテク産業のクリーンルームに提供し、省エネ及び炭素排出量の削減効果を達成し、将来的に電気自動車や水素自動車の安全保護等に応用する。
【発明の効果】
【0045】
本発明は、以上説明したように構成されているので、以下に記載されるような効果を奏する。
1、本発明に係る調製方法は、従来のエアロゲル断熱材は屑が落ちやすいという欠点を改善し、エアロゲル断熱材料の応用を広く促進する。本発明は、高強度、高い防火性能、粉塵が落ちない、及び高い断熱性を兼ね備えたエアロゲル複合材料を調製する。エアロゲル複合材料は、改良したゾル-ゲル技術を利用しているため、プロセス中に大量の有機溶剤、界面活性剤、及び接着剤等の物質を添加せず、エアロゲル複合材の調製過程において、長時間溶剤を置換する必要がなく、超臨界乾燥技術も不要であり、溶剤を回収する常圧乾燥技術のみを使用する。全体的なプロセスが簡易であり、安全性が高く、経済的であり、製品が完成するまでにかかるプロセスの速度が12~48時間に短縮する。或いは、連続生産方式でエアロゲルまたはエアロゲル/繊維複合材料等を調製することで、生産効率を高めている。
2、本発明に係る調製方法は、シロキサン化合物及び疎水性修飾シロキサン化合物の比率、加水分解溶剤の含有量、分散水溶液の含有量、乳化機またはホモジナイザー等の分散設備の攪拌速度、酸触媒及びアルカリ触媒の含有量及び比率等の要素を利用し、多孔質エアロゲル粒子内部の空隙率、孔径の大きさ、エアロゲル粒子の間の空隙率、及びエアロゲル構造の緻密性を容易に調節できる。
3、本発明に係る調製方法は、親水性-疎水性修飾の斥力及び高速攪拌を利用し、シロキサン化合物及び疎水性修飾シロキサン化合物により微細なウェットゲル粒子を形成し、その乾燥速度を速め、収縮性質を低下させている。こうすることで、アルコール類以外のシクロヘキサン、ベンゼン、イソプロパノール、アンモニア水及び大量の界面活性剤等の他の疎水性修飾有機溶剤を添加せず、酸触媒及びアルカリ触媒を極低濃度に制御することで、エアロゲル材料の熱伝導、防火性能、及びその誘電性質を更に調節し、エアロゲル複合材料の製造コストを削減している。
4、本発明に係る調製方法は、乳化機またはホモジナイザーによる高速凝縮分散溶液技術を提供し、且つ上記凝縮分散水溶液に微量の水で分散可能な耐熱性ゲル材料を添加し、この凝縮分散溶液を予備成形型中または繊維を含有する予備成形型に充填し、ゲル化成形を行う。さらに、後続のゲル化過程において、ウェットゲル粒子を上記予備成形型または上記繊維を含有する予備成形型に相互に集合させることで、網状エアロゲル構造を形成する。その後、更に乾燥することで、異なるサイズの管状、板状、及び特定の外観形態を呈するエアロゲル成形構造を調製する。この技術を利用して調製した製品は、他の技術のものと比較し、大量の有機溶剤を節約すると共に、プロセスが高速化する。
5、エアロゲルの粉塵が落ちる問題を解決するため、本発明は一方では水溶液に懸濁分散する微量の水で分散可能な耐熱性ゲル材料を添加し、エアロゲル構造の表面を被覆することで有機-無機複合構造を形成する。また一方では、繊維強化樹脂(LFRP)被覆技術を提供し、耐熱有機または無機ゲル体を耐熱金属、無機または有機-無機複合フィルム、薄板または耐熱繊維生地に含侵するように塗布した後、エアロゲル予備成形複合材料を単層乃至多層で被覆し、且つ常圧高温環境において架橋硬化した後、繊維強化樹脂(LFRP)がエアロゲルを多層で被覆する複合材料を形成する。この技術により、高強度、高断熱、高い防火性能を兼ね備えた粉塵が落ちないエアロゲル複合材を調製する。
6、本発明に係る調製方法は、この繊維強化樹脂(LFRP)でエアロゲルを被覆する複合材は、樹脂の種類及び被覆材料の材質により外層を被覆する強度、耐用温度、剛性、緻密性、導電性、熱伝導性、または誘電性等の各性質を調節する。本発明に係る調製技術により、繊維強化樹脂(LFRP)が多層で被覆するエアロゲル複合の空隙率を50.0~75.0%とし、その密度を0.20~0.60g/cm3とし、その熱伝導率を0.020~0.045W/mkとし、その誘電率を1.30~1.85とし、耐燃性質をUL94-5VA等級以上とし、最高耐熱温度が1200度に達する。高温のホットスポットの温度が約850度であり、製品の厚さが2mm~3mmである条件において、断熱温度が約200度以下にまで低下する。
【0046】
本発明の他の目的、構成及び効果については、以下の発明の実施の形態の項から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【
図1】本発明の第1実施形態に係るステップを示すフローチャートであり、本発明は高断熱性、高い防火性能、高強度を兼ね備え、粉塵が落ちない耐熱性ゲル材料を繊維生地または耐熱フィルム/耐熱薄板に塗布して多層で被覆するエアロゲル複合材料の調製フローチャートを説明する。
【
図2】本発明の第1実施形態に係る調製方法により調製した高強度、高い防火性能、高断熱性を兼ね備え、粉塵が落ちない管状繊維強化樹脂(LFRP)でエアロゲルを被覆する複合材料の外観の写真を示し、第1実施形態は3種類の異なる耐熱性ゲル材料のガラス繊維を利用してエアロゲルを被覆し、高強度、高硬度を兼ね備えた耐熱性の繊維強化樹脂(LFRP)で外殻を被覆し、被覆する外殻の内部は低い熱伝導率、低い誘電率を兼ね備え、粉塵が落ちないエアロゲル材料である。
【
図3】本発明の第1実施形態に係る調製方法により調製した高強度、高い防火性能、高断熱性質を兼ね備えた粉塵が落ちない繊維強化樹脂でエアロゲルを被覆する複合材料の内部にある低い熱伝導率の純エアロゲルの断面を走査型電子顕微鏡(SEM)で撮影し、倍率300倍で拡大した写真を示す。
【
図4】本発明の第2実施形態で調製した高強度、高い防火性能、高断熱性質を兼ね備えた粉塵が落ちない繊維強化樹脂でエアロゲルを被覆する複合材料の外観の写真を示し、第2実施形態は上下2層が共に耐熱性無機ゲルを雲母シートに塗布し、エアロゲルを被覆する複合材料を強化し、更なる耐熱性、高強度を提供し、高断熱性の雲母により樹脂被覆層を強化し、外殻構造の内部は低い熱伝導率を有するエアロゲル/繊維複合材料である。
【
図5】本発明の第2実施形態に係る高強度、高い防火性能、高断熱性を兼ね備えた粉塵が落ちない繊維強化樹脂でエアロゲルを被覆する複合材料内部の断面を、SEM走査型電子顕微鏡で撮影し、倍率250倍で拡大した写真を示す。
【
図6】本発明の第3実施形態に係る調製方法で調製した高強度、高い防火性能、高断熱性を兼ね備えた粉塵が落ちない繊維強化樹脂でエアロゲルを被覆する複合材料の外観の写真を示し、第3実施形態は上下2層が耐熱性無機ゲルを雲母シート被覆層に塗布した後、グラフェン熱伝導シートを耐熱性無機ゲルが塗布された雲母シートの外層に貼付し、この材料が熱拡散機能を提供し、エアロゲルを被覆する複合材料の熱伝導性能を強化する。
【
図7】本発明の第4実施形態に係る調製方法で調製した高強度、高い防火性能、高断熱性を兼ね備えた粉塵が落ちない繊維強化樹脂でエアロゲルを被覆する複合材料の外観の写真を示し、第4実施形態は上下2層が耐熱性無機ゲルを雲母シートに塗布し、耐熱性雲母シートによりエアロゲルを被覆する複合材料を強化した後、熱伝導金属箔を貼付することでこの材料が熱拡散機能を提供し、エアロゲルを被覆する複合材料の熱伝導性能を強化する。
【
図8】本発明の第5実施形態に係る前述の第2乃至第4実施形態で調製した高強度、高い防火性能、高断熱性を兼ね備えた繊維強化樹脂でエアロゲルを被覆する複合材料の表面にエアロゲル防火断熱塗料をスプレー塗装した後の外観の写真を示し、第5実施形態はエアロゲル防火断熱塗料を表面にスプレー塗装し、この材料が更に優れた防火断熱機能を提供する。
【
図9】本発明の第5実施形態に係る製品を高温の火炎で防火断熱試験を行う概略図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0048】
次に、図面を参照しながら本発明の耐熱材料でエアロゲルを被覆する断熱複合材の実施形態を説明するが、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではなく、以下に説明する部材、材料等は、本発明の趣旨の範囲内で種々改変することができるものである。
【0049】
図1は本発明に係るクリーンルーム及び電気自動車の安全保護用の無粉塵、高断熱、高い防火性能を兼ね備えたエアロゲル複合材料及びその調製方法並びにその調製方法の実施形態を示し、そのステップとして、混合加水分解ステップ(S1)と、凝縮と分散ステップ(S2)と、構造形成ステップ(S3)と、常圧乾燥ステップ(S4)と、外層被覆ステップ(S5)と、硬化成形ステップ(S6)と、表面処理ステップ(S7)と、を含む。以下、それぞれについて説明する。
【0050】
<混合加水分解ステップ(S1)>
エタノール水溶液にシロキサン前駆体を添加して混合溶液を形成する。上記シロキサン前駆体として、疎水性修飾シロキサン化合物、シロキサン化合物、またはそれらの組み合わせを含み、上記疎水性修飾シロキサン化合物として鎖長の異なる疎水性修飾シロキサン化合物を含む。その後、酸触媒を上記混合溶液に添加して加水分解反応を発生させる。いくつかの実施形態では、上記シロキサン化合物として、テトラメトキシシラン(Tetramethoxysilane, TMOS)、テトラエトキシシラン(Tetraethoxysilane, TEOS)、またはそれらの組み合わせを含む。上記疎水性修飾シロキサン化合物として、メチルトリメトキシシラン(Methyltrimethoxysilane、MTMS)、プロピルトリメトキシシラン(Propyltrimethoxysilane、PTMS)、ヘキシルトリメトキシシラン(Hexyltrimethoxysilane、HTMS)、オクチルトリメトキシシラン(Octyltrimethoxysilane、OTMS)、ヘキサメチルジシラン(Hexamethyldisilane、HMDS)等の異なるアルキル基鎖長で代替した疎水性修飾シロキサンのうちの1つまたはそれらの組み合わせを含む。上記疎水性修飾シロキサンを添加する目的は、乾燥過程でエアロゲル構造に発生する亀裂現象を減少させることである。上記シロキサンを添加する目的は、エアロゲル構造内部の微細構造を調節することで構造中の孔の含有量を増加させるである。いくつかの実施形態では、混合溶液全体について、上記シロキサン化合物及び疎水性修飾シロキサンの総含有量のモル比は0.5mol%~40mol%の間であり、上記エタノール水溶液の含有量のモル比は99.5mol%~60mol%の間である。
【0051】
本実施例では、上記シロキサン化合物及び上記疎水性修飾シロキサン化合物のモル比は0:100~95:5である。本発明の好ましい実施形態では、シロキサン化合物及び疎水性修飾シロキサン化合物のモル比は5:95である。本発明の他の好ましい実施形態では、シロキサン化合物及び疎水性修飾シロキサン化合物のモル比は0:100 mol%~40:60 mol%である。上記エタノール水溶液において、エタノール及び水モル比は0:100~50:50である。いくつかの好ましい実施形態では、エタノール及び水のモル比は15:85である。
【0052】
混合加水分解ステップ(S1)において、シロキサン化合物または疎水性修飾シロキサン化合物と大量の微量の酸触媒を含有するエタノール水溶液とを十分に混合する混合過程では、同時に加水分解反応(hydrolysis)を発生させる。上記酸触媒エタノール水溶液の溶剤として、エタノール、超純水、処理水、二次処理水等のうちの1種類または異なる組成の混合を含み、上記シロキサン及び疎水性修飾シロキサン混合物の総含有量と酸触媒の含有量とのモル比は1:0.01~1:0.00005である。上記シロキサン及び疎水性修飾シロキサン混合溶液において、上記酸触媒の含有量比が高くなる程、加水分解速度が速まる。換言すれば、酸触媒の含有量比が高くなる程、エアロゲル構造全体におけるイオン含有量が多くなり、エアロゲルの誘電損失も多くなる。本発明の好ましい実施形態では、シロキサン及び疎水性修飾シロキサン混合物の総含有量と酸触媒の含有量とのモル比は1:0.00014である。
【0053】
<凝縮と分散ステップ(S2)>
上記混合溶液に分散水溶液を添加し、上記分散水溶液はアルカリ触媒を含み、且つ乳化機またはホモジナイザー等の高速攪拌設備を利用して高速攪拌を行って凝縮反応を発生させ、分散ゾル溶液を形成する。更に詳しくは、凝縮反応中に、上記凝縮反応温度、添加する超純水の含有量、及び攪拌速度を制御することで凝縮反応速度を調節し、獲得する上記分散ゾル溶液内部のエアロゲル微細構造を制御する。上記分散水溶液と上記エタノール水溶液との体積比は75:25~30:70である。本発明の好ましい実施形態では、上記分散水溶液と上記エタノール水溶液との体積比は50:50である。
【0054】
凝縮と分散ステップにおいて、温度が上昇することで凝縮反応時間が明確に短縮し、即ち、エアロゲルのゲル化時間が上記分散凝縮ステップ(S2)において効果的に短縮される。アルカリ触媒と酸触媒の含有量の当量比が1.0:1.0である場合、上記凝縮反応温度は20~55℃であり、凝縮反応時間は20~250分間である。いくつかの実施形態では、上記凝縮反応温度は25℃であり、凝縮反応時間は約220分間である。上記凝縮反応温度が50℃である場合、凝縮反応時間は約15分間である。
【0055】
凝縮と分散ステップにおいて、加水分解された上記シロキサン分子及び疎水性修飾シロキサン分子混合物が懸濁分散水溶液中でナノメートル級乃至サブミクロン級の加水分解されたウェットゲル粒子を形成し、微量の水で分散可能な耐熱性ゲル材料をこの懸濁分散水溶液に添加することで、ゲル化過程でナノメートル級乃至サブミクロン級のエアロゲルウェットゲルを凝縮集合させて網状構造を形成した後、微量の水で分散可能な上記耐熱性ゲル材料がエアロゲルの3次元網状構造の表面を被覆して有機-無機複合ナノメートル構造材を形成する。添加する微量の水で分散可能な耐熱性ゲル材料と分散水溶液との体積比は0.01%~5%であり、且つ上記耐熱性ゲル材料は300℃以上の高温に耐え得る。
【0056】
他の実施形態では、アルカリ触媒の含有量が増加すると、凝縮反応時間が明らかに短縮する。1.0Mのアルカリ触媒と1.0Mの酸触媒の含有量の当量比は0.8:1.0~2.0:1.0であり、凝縮反応時間は360~約3分間である。いくつかの実施形態では、上記含有量の当量比は0.8:1.0であり、凝縮反応時間は360分間である。さらなる他の実施形態では、上記含有量の当量比は1.6:1.0であり、凝縮反応時間は約10分間である。更に詳しくは、上記含有量の当量比が1.0:1.0より小さい場合、凝縮反応時間が徐々に増加し、調製されるエアロゲルの誘電損失が明らかに低下する。上記含有量の当量比が1.0:1.0より大きい場合、凝縮反応時間が徐々に減少し、イオンの含有量の上昇伴って調製されるエアロゲルの誘電損失が明確に増加する。本発明の好ましい実施形態では、上記含有量の体積比は1.2:1.0である。
【0057】
<構造形成ステップ(S3)>
上記懸濁分散ゾル溶液を予備成形型に注入し、微量の耐熱性ゲル材料を含有する上記懸濁分散ゾル溶液を予備成形型中で更に凝縮して固体状になったウェットゲルの予備成形構造を形成する。この成形ステップにおいて、シロキサンエアロゲル分子が凝縮反応により集合してシロキサンエアロゲル分子集合体を形成し、シロキサンエアロゲル分子の初期構造のサイズを5~10nmに制御し、初期構造を蓄積して約50~100nmのエアロゲルウェットゲル分子を形成し、50~100nmのエアロゲルウェットゲル分子を更に蓄積して更に大きな集合体を形成し、且つ相互に連結して3次元網状構造を形成し、安定した大量の溶剤を含有する耐熱性ゲル材料でエアロゲルの3次元網状構造の表面を被覆する有機-無機複合ゲル構造材料を形成する。
【0058】
他の実施形態では、微量の耐熱性ゲル材料を含有する懸濁分散ゾル溶液を大量の繊維を含有する予備成形型に注入する。この条件において、シロキサンエアロゲル分子が繊維の表面に吸着し、且つ繊維の表面で凝縮し蓄積して50~100nmのエアロゲルウェットゲル分子を形成し、50~100nmのエアロゲルウェットゲル分子が繊維と繊維構造との間に更に蓄積して3次元エアロゲル網状構造を形成し、安定した大量の繊維を含有する耐熱性ゲル材料でエアロゲル3次元網状構造の表面を被覆する有機-無機複合ゲル構造材料を更に形成する。上記成形ステップにおいて、分子級のエアロゲル溶液を含侵技術、吸圧、噴射、灌流、或いは真空吸着等の技術を利用して繊維材料に複合加工する。よって、上記予備成形型は成形型または繊維材料材料を含む成形型である。
【0059】
いくつかの実施形態では、上記繊維材料として、金属繊維、無機繊維、液晶繊維、有機繊維を含み、より具体的な例で言えば、例えば、マイクロメートル級乃至ナノメートル級の各種金属繊維または金属棒、ガラス繊維、炭素繊維、石英繊維、セラミック繊維、岩綿繊維、Kevlarポリアミド繊維、Nomexポリアミド繊維、ナイロン繊維、ポリエステル繊維、各種セルロース、生分解性無機繊維、或いは生分解性有機繊維で調製される各種多孔質ばら繊維、蓆、紙、毛布、縄、厚板等、またはそれらの組み合わせを挙げることができる。
【0060】
<常圧乾燥ステップ(S4)>
常圧において、成形乾燥温度で上記固体状になったウェットゲル構造を常圧条件で高温で乾燥し、構造が均一な低い熱伝導率を有するエアロゲル予備成形複合材料を獲得する、これはエアロゲル板材またはエアロゲル/繊維複合板を含む。いくつかの実施形態では、上記乾燥温度は60~150℃である。
【0061】
さらに、上記乾燥ステップは、溶剤気化ステップ(S4-1)と、溶剤回収ステップ(S4-2)と、溶剤突沸ステップ(S4-3)と、を含む。
【0062】
・気化ステップ(S4-1)
上記固体状になった予備成形ウェットゲル体を常圧且つ混合溶剤の共沸気化温度で放置し、温度を利用して大量のアルコール類水分子を高速に共沸気化させ、ウェットゲル体のアルコール類水分子を共沸させ、蒸留し乾燥する。いくつかの実施形態では、上記溶剤の共沸温度は60~90℃である。
【0063】
・溶剤回収ステップ(S4-2)
上記共沸気化温度環境において、予備成形構造の大量のアルコールを含む水溶液を高速に共沸させて気化させ、気化した蒸気を熱交換回収設備にガイドする。上記熱交換回収設備中で水性アルコールを冷却凝縮すると共に回収する。本発明のいくつかの実施形態では、冷却凝縮した上記水性アルコールは本プロセスの付加回収製品となり、上記回収の目的は、一方では価値があるアルコール副産物を回収して製造コストを低下させ、もう一方では、アルコールを含む蒸気を回収することで環境及び空気に対する汚染を減らすことである。
【0064】
・突沸ステップ(S4-3)
上記気化が完了した微量の溶剤を含有する予備成形エアロゲルの環境温度を溶剤の突沸温度まで調整し、その内部に含まれている微量の溶剤を高速に気化する突沸現象を発生させる。いくつかの実施形態では、上記突沸温度は110~150℃である。更に詳しくは、上記突沸温度が創造する高温環境において、上記エアロゲル内部の微量のアルコール類水分子が発生させる突沸現象により、エアロゲル内部に正圧の蒸気を発生させ、上記正圧の蒸気によりエアロゲル構造の乾燥過程で発生する収縮または崩壊現象を抑制する。一方、上記正圧によりエアロゲル網状構造を膨張させ、大量の微小孔を発生させて多孔質にすることで、上記エアロゲル予備成形材料を獲得する。そこで、上記調製方法は低密度且つ高空隙率のエアロゲルまたはエアロゲル/繊維複合材料を調製するために用い、その熱伝導性質kは約0.013~0.018W/mkである。エアロゲル/繊維複合材料の熱伝導性質kは約0.022~0.032W/mkであり、耐燃性質はUL94-V0等級以上である。
【0065】
また、アルカン類、芳香ベンゼン類、アミン類等の大量の有機溶剤及び界面活性剤を添加していないため、乾燥過程が安全であり、且つより高純度なエアロゲル製品を調製できる。よって、調製された高空隙率のエアロゲル板材またはエアロゲル/繊維複合板には不純物が含まれず、製品の熱伝導性、誘電率、及び誘電損失等の性質が更に高まっている。
【0066】
<外層被覆ステップ(S5)>
300℃以上の高温に耐えるゲル材溶液を準備し、上記耐熱性ゲル材料溶液を300℃以上の高温に耐える材料の表面に含侵するように塗布し、高温のゲル材溶液を耐熱繊維生地のような上記耐熱材料の内部に均一に浸入させる。その後、耐熱性ゲル材料溶液が含侵した耐熱材料を更に利用してエアロゲル予備成形複合材料を単層または多層で被覆する。上記耐熱材料は非有機フィルム、非有機薄板、または耐熱繊維のうちの1つまたはそれらの組み合わせを含み、例えば、耐熱フィルムである。上記耐熱性ゲル材料溶液は耐熱性無機ゲル材または熱硬化性樹脂溶液であり、上記耐熱性ゲル材料溶液の耐熱性ゲル材料は300℃以上の高温に耐え得る。他の耐熱材料、耐熱フィルム、及び耐熱繊維が耐え得る温度も300℃以上であり、具体的な例で言えば、上記耐熱性ゲル材料溶液として、無機ゲル、熱可塑性樹脂、または熱硬化性樹脂のうちの1つまたはそれらの組み合わせを含む。上記無機ゲル材として、例えば、水ガラスゲル、無機ケイ素樹脂ゲル、酸化銅-リン酸ゲル、ケイ酸塩ゲル、リン酸-ケイ酸塩ゲル、硫酸塩ゲル、酸化マグネシウム-二酸化ケイ素-ホウ砂無機ゲルを含む。上記熱硬化性樹脂として、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリフェニレンスルファイド樹脂、ポリエーテルケトン液晶ポリマー樹脂、ポリテトラフルオロエチレン樹脂、ポリメラミン樹脂、ポリフェノールアルデヒド樹脂、ポリメラミン-ホルムアルデヒド樹脂、ポリエステルゲル、ポリアミドゲル、ポリアミドエステルゲル、シリカゲル等のゲル材のうちの1つまたはそれらの組み合わせを含む。上記ゲル材を繊維生地に含侵し被覆するステップ全体について、上記ゲル材溶液の濃度は10 ~ 75.0wt%である。ゲル材溶液の濃度が低くなる程、ゲル材溶液が繊維生地内部に浸入する効率が高くなり、且つ加工も容易になる。但し、調製されるゲル材溶液が含侵された繊維生地が多層で被覆するエアロゲル成形複合材料の緻密性が低くなり、構造中の孔の含有量が多くなり、エアロゲル粉塵が漏出しやすくなる。相対的に、ゲル材溶液の濃度が高くなる程、ゲル材溶液が繊維生地の表面を被覆する含有量が多くなり、調製されるゲル材溶液が含侵された繊維生地が多層で被覆するエアロゲル成形複合材料の強度が高くなり、緻密性も高まり、エアロゲル粉塵が漏出しにくくなる。但し、加工が難しくなり、且つ膜厚の制御も難しくなる。以上のことから、ゲル材溶液を含侵する濃度を制御することで、ゲル材溶液が含侵される繊維生地が多層で被覆するエアロゲル成形複合材料の成形加工及び粉塵が落ちない性質を最適化するためのゲル材溶液の濃度は30~50.0wt%となる。
【0067】
上記外層被覆ステップ(S5)において、上記耐熱非有機フィルム、耐熱非有機薄板、または耐熱繊維のうちの1つまたはそれらの組み合わせは、耐熱非有機フィルム及び耐熱非有機薄板として、金属、無機及び有機-無機複合等の耐熱フィルムを含み、薄板でエアロゲルを単層で被覆するか、多層で被覆するか、エアロゲルと多層に積層することで被覆する。ちなみに、多層で被覆とは、同じ耐熱フィルムを多層に積層して被覆することを指し、多層に積層することで被覆するとは、複数種の耐熱フィルムを多層に積層して被覆することを指す。換言すれば、本発明はエアロゲル予備成形複合材料を被覆する耐熱フィルムの種類を金属フィルム板、無機フィルム板、または有機-無機複合耐熱フィルム板、及び単層または多層に限定しない。さらに、金属フィルム板として、アルミニウム、ステンレス、銅等の金属材料で調製されたフィルムまたはそれらの組み合わせを含む。無機フィルム板として、雲母シート、グラファイトシート、グラフェンシート、ガラスシート、及び各種セラミックシート、金属酸化物、金属窒化ケイ素化合物、及び金属炭化ケイ素化合物で調製されたシート、薄板、またはそれらの組み合わせを含む。有機-無機複合フィルムとして、例えば、アルミニウム、ステンレス、銅、雲母シート、グラファイト、グラフェン、ガラス、及びセラミック等の金属、金属酸化物、金属窒化ケイ素化合物、及び金属炭化ケイ素化合物の微粒子を各種有機ゲルまたは各種無機ゲルに結合し複合して製造した耐熱有機-無機複合フィルム、薄板、或いは無機-無機複合フィルム、薄板等の組み合わせを含む。さらに、300度以上の高温に耐える繊維として、例えば、石英繊維、ガラス繊維、セラミック繊維、炭素繊維を含み、有機繊維として、ナイロン繊維、ポリエステル繊維、ポリフッ化繊維を含み、液晶繊維として、Kevlarポリアミド繊維、Nomexポリアミド繊維、及び各種セルロース、生分解性無機、または有機繊維等を複合して調製した各種多孔質ばら繊維、蓆、紙、毛布、縄、厚板のうちの1つまたはそれらの組み合わせを含む。
【0068】
<硬化成形ステップ(S6)>
300度以上の高温に耐えるゲル材溶液に含侵した上記繊維生地の単層または多層の耐熱フィルム等の耐熱材料で被覆するエアロゲル予備成形複合材料を、耐熱性ゲル材料溶液を含侵した溶剤を乾燥する沸点温度で放置し、上記ゲル材溶液の溶剤を気化させて欠陥または気泡孔の形成を減少させ、上記ゲル材溶液を徐々に乾燥させる。ここでは、溶剤の乾燥温度は上記ゲル材溶液の混合溶剤の沸点に基づいて決定する。いくつかの実施形態では、混合溶剤はエタノールであり、その溶剤の乾燥温度は60~75℃である。他の実施形態では、混合溶剤はメチルエチルケトンであり、その溶剤の乾燥温度は80~90℃である。さらなる他の実施形態では、溶剤は水であり、その水の溶剤の乾燥温度は80~102℃である。よって、実施形態の上記溶剤の乾燥温度は60~115℃であり、乾燥後に得られるゲル材溶液を含侵した繊維生地は乾燥温度が高過ぎて大量の気泡が発生して孔が形成され、後続の応用においてエアロゲル粉塵が漏出することがない。その後、更に高い硬化成形温度で上記耐熱性ゲル材料溶液を含侵する硬化成形ステップを実行する。上記硬化成形温度は上記溶剤の乾燥温度より高く、よって、高強度、低い熱伝導率、低い誘電率、高い防火性能を兼ね備えた耐熱フィルムでエアロゲル予備成形を被覆する複合材料を獲得する。
【0069】
他の実施形態では、溶剤乾燥ステップにおいて、ゲル材溶液を含侵する繊維生地内部の有機溶剤が共に気化し、例えば、上記耐熱性ゲル材料溶液が含侵される上記非有機フィルム、上記非有機薄板、または上記300℃以上の高温に耐える繊維が上記エアロゲル予備成形材料を被覆して形成する上記耐熱フィルムがエアロゲル予備成形材料を被覆する複合材料は、上記耐熱性ゲル材料の溶剤の乾燥温度において上記溶剤が気化する。常温硬化型樹脂ゲル材である場合、上記ゲル材溶液が含侵する繊維生地は溶剤の気化過程に伴って硬化し、高強度なクリーンルーム及び電気自動車の安全保護用の無粉塵、高断熱のエアロゲル複合材料を獲得する。換言すれば、このステップにおいて、溶剤の乾燥以外にゲル材樹脂の硬化ステップを更に含み、よって、このステップも常温乾燥硬化ステップと呼ぶ。
【0070】
硬化成形ステップ(S6)において、上記耐熱性ゲル材料溶液が含侵または塗布された耐熱繊維生地または耐熱フィルム/耐熱薄板により多層で被覆するエアロゲル予備成形複合材料は、特定の架橋硬化温度において、無機ゲルまたは熱硬化性ポリマー鎖の間及び無機ゲルまたは熱硬化性分子とエアロゲル分子との間で架橋反応を発生させると共に結合して硬化し、例えば、水ガラスゲル、無機ケイ素樹脂ゲル等の無機ゲルと、熱硬化性ポリマーとしてエポキシ樹脂(epoxy)との間である。上記架橋硬化温度は約120~200℃である。いくつかの実施形態では、最も好ましい架橋硬化温度は150~180℃或いは185~190℃である。一方、酸化銅-リン酸ゲル、ケイ酸塩ゲル、リン酸-ケイ酸塩ゲル等の無機ゲルと、熱硬化性ポリマーとしてポリイミド(polyimide)との間の場合、上記架橋硬化温度は約120~325℃であり、いくつかの実施形態では、最高架橋硬化温度は320~325℃である。上記(S6)架橋硬化ステップにおいて、特定の架橋温度で上記有機または無機ゲル材溶液が含侵または塗布される耐熱繊維生地または耐熱フィルム/耐熱薄板の分子間で相互に架橋反応が発生し、高断熱性、高い防火性能、高強度を兼ね備え、粉塵が落ちない耐熱性ゲル材料溶液が含侵または塗布される耐熱繊維生地或いは耐熱フィルム/耐熱薄板が多層で被覆するエアロゲル成形複合材料が形成される。
【0071】
(第1実施形態)
図2は第1実施形態の前述の調製方法で調製した高強度、高い防火性能、高断熱性を兼ね備えた粉塵が落ちない管状の繊維強化樹脂(LFRP)でエアロゲルを被覆する複合材料の外観の写真を示し、
図2には、上から下にかけてそれぞれ3種類の異なる耐熱性ゲル材料が管状に多層で被覆すると共に架橋硬化し、高強度、高い防火性能、高断熱性を兼ね備え、粉塵が落ちないエアロゲルを被覆する複合材料を示す。図に示す如く、最上面は白色シリカゲル系のガラス繊維強化樹脂が被覆する管状エアロゲル複合材料である。相対的に、中間の濃色はポリイミド系のガラス繊維強化樹脂が被覆する管状エアロゲル複合材料である。最下面の浅黄色はエポキシ樹脂系のガラス繊維強化樹脂が被覆する管状エアロゲル複合材料である。
【0072】
図3は第1実施形態の前述の調製方法で調製した高強度、高い防火性能、高断熱性を兼ね備えた粉塵が落ちない繊維強化樹脂でエアロゲルを被覆する複合材料の内部の熱伝導率が低い純エアロゲルの断面を走査型電子顕微鏡(SEM)で撮影し、倍率300倍で拡大した写真を示す。電子顯微鏡で観察すると、その微小構造は明らかに、エアロゲル/繊維複合材料は大量の繊維の間にサブミクロン乃至マイクロメートル級の円球状エアロゲルが集合した3次元網状集合体を呈していることが分かる。また、
図3から分かるように、低い熱伝導率を有するエアロゲル材料中には、エアロゲル集合構造以外、微量の耐熱性ゲル材料が数マイクロメートル級乃至サブミクロン級のエアロゲル粒子の間に被覆する連結構造、及び繊維とエアロゲル粒子との間に依然として大量のマイクロメートル級の孔が連結して形成されている孔構造を更に含み、低い熱伝導率を与えている。
【0073】
(第2実施形態)
図4は第2実施形態の前述の調製方法で調製した高強度、高い防火性能、高断熱性を兼ね備えた粉塵が落ちない繊維強化樹脂でエアロゲルを被覆する複合材料の外観の写真を示す。第2実施形態は上下2層が耐熱性無機ゲルを雲母シートに塗布してエアロゲルを被覆する複合材料を強化し、更なる耐熱性、高強度を提供し、高断熱性の雲母で樹脂被覆層を強化している。ここでは、外殻構造内部は低い熱伝導率のエアロゲル/繊維複合材料である。以上の構造も多層で積層する構造により、エアロゲルの応用分野を広げている。
【0074】
図5は第2実施形態に係る高強度、高い防火性能、高断熱性を兼ね備えた粉塵が落ちない繊維強化樹脂でエアロゲルを被覆する複合材料の内部の断面を走査型電子顕微鏡(SEM)で撮影し、倍率250倍で拡大した写真を示す。
図5に示す如く、本実施形態に係るエアロゲル複合材料の内部はエアロゲル/繊維複合材料であり、上記製品は大量のサブミクロン級エアロゲル分子が繊維の表面に吸着すると共に、繊維の間の孔が相互に集合して3次元のエアロゲル網状構造が形成され、且つ全体的な集合構造には依然として大量の孔が含まれ、関連する孔がエアロゲル/繊維複合毛布に低い熱伝導率の特性を与え、且つ大量の繊維がエアロゲル/繊維複合板の適切な強度等の性質を高めている。
【0075】
表面処理ステップでは、高強度、低い熱伝導率、低い誘電率、高い防火性能を有する上記耐熱フィルムでエアロゲルを被覆する複合材料の表面に、エアロゲル防火断熱塗料の1つまたはそれらの組み合わせを利用して艶出し、噴射、及び表面スプレー塗装を行うと共に、洗浄及び表面保護等のプロセスの組み合わせを実行し、高強度、低い熱伝導率、低い誘電率、高い防火性能を兼ね備えた耐熱繊維生地または耐熱フィルム/耐熱薄板により多層で被覆するエアロゲル成形複合材料を形成する。
【0076】
(第3実施形態)
図6は第3実施形態の前述の調製方法で調製した高強度、高い防火性能、高断熱性を兼ね備えた粉塵が落ちない繊維強化樹脂でエアロゲルを被覆する複合材料の外観の写真を示す。第3実施形態は上下2層が耐熱性無機ゲルを雲母シート被覆層に塗布した後、グラフェン熱伝導シートを耐熱性無機ゲルが塗布された雲母シートの外層に貼付し、この材料が熱拡散機能を提供する。第3実施形態の目的は、一方では更なる耐熱性、高強度を提供し、高断熱の雲母により樹脂被覆層を強化する。もう一方では、耐熱性、高強度を提供し、高い熱伝導性(高い導電性)のグラフェンシートにより樹脂被覆層を強化する。以上の被覆構造も片面が耐熱性雲母シートであり、もう一方の面が耐熱グラフェン熱伝導シートまたは多層積層構造であり、エアロゲルの応用分野を広げている。
【0077】
(第4実施形態)
図7は第4実施形態の前述の調製方法で調製した高強度、高い防火性能、高断熱性を兼ね備えた粉塵が落ちない繊維強化樹脂でエアロゲルを被覆する複合材料の外観の写真を示す。第4実施形態は上下2層が耐熱性無機ゲルを雲母シート被覆層に塗布した後、金属フィルム熱伝導シートを耐熱性無機ゲルが塗布された雲母シートの外層に貼付し、この材料が熱拡散及び高い導電機能を提供する。第4実施形態の目的は、一方では耐熱性、高強度を提供し、高断熱の雲母により樹脂被覆層を強化する。もう一方では、耐熱性、高強度を提供し、高い熱伝導性(高い導電性)の金属フィルムにより樹脂被覆層を強化する。以上の構造も片面が耐熱性雲母シートであり、もう一方の面は耐熱金属熱伝導シートまたは多層積層構造であり、エアロゲルの応用分野を広げている。
【0078】
(第5実施形態)
図8は第5実施形態の前述の第2実施形態乃至第4実施形態で調製した高強度、高い防火性能、高断熱性を兼ね備えた繊維強化樹脂でエアロゲルを被覆する複合材料に、エアロゲル防火断熱塗料を表面にスプレー塗装した後の外観の写真を示す。第5実施形態は、エアロゲル防火断熱塗料により表面スプレー塗装を行い、この材料が更に優れた防火断熱機能を提供する。第5実施形態の目的は、一方では1200℃の高温に耐え得る断熱被覆層を提供し、このプロセスによる製品の耐燃性はUL94-V0等級以上となり、最高耐熱温度は1200℃に達する。高温のホットスポットの温度が約650度であり、製品の厚さが2.78mmである条件において、断熱温度は約200℃以下まで低下する。
【0079】
図9は高温の火炎で防火断熱試験を行った第5実施形態に係る製品を示す。試験の火炎のホットスポットの温度は約650℃であり、第5実施形態に係る製品の厚さが2.78mmである条件において、高温の火炎で3分間試験を行った。製品は燃焼過程において、一般的な有機物が高温で発生させるような燃焼分解を発生させず、炭化物による濃煙等の現象も発生しなかった。製品を断熱した後には、製品の背面の温度が200℃以下まで低下し、開発した製品が優れた防火断熱効果を有し、電気自動車のリチウムバッテリーモジュールの熱暴走の予防に応用可能であることが示された。
【0080】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【符号の説明】
【0081】
S1 混合加水分解ステップ
S2 凝縮と分散ステップ
S3 構造形成ステップ
S4 常圧乾燥ステップ
S5 外層被覆ステップ
S6 硬化成形ステップ
S7 表面処理ステップ
【手続補正書】
【提出日】2024-09-25
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エタノール水溶液にシロキサン前駆体を添加して混合溶液を形成する混合加水分解ステップであって、前記シロキサン前駆体として、鎖長の異なる疎水性修飾シロキサン化合物、シロキサン化合物、またはそれらの組み合わせを含み、その後、前記混合溶液に酸触媒を添加して加水分解反応を発生させる混合加水分解ステップと、
前記混合溶液に分散水溶液を添加し、前記分散水溶液はアルカリ触媒を含み、凝縮反応を発生させて分散ゾル溶液を形成した後、前記分散ゾル溶液に微量の水で分散可能な耐熱性ゲル材料を添加して耐熱性ゲル材料を含む分散ゾル溶液を獲得し、前記耐熱性ゲル材料は300℃以上の高温に耐える凝縮と分散ステップと、
前記耐熱性ゲル材料を含む分散ゾル溶液を予備成形型に注入し、前記耐熱性ゲル材料を含む分散ゾル溶液を前記予備成形型中で更に凝縮して固体状になったウェットゲルの予備成形構造を形成する構造形成ステップであって、前記予備成形型として成形型または繊維材料を含有する成形型を含み、前記繊維材料として、金属繊維、無機繊維、液晶繊維、有機繊維で調製される多孔質ばら繊維、蓆、紙、毛布、縄、厚板のうちの1つまたはそれらの組み合わせを含む構造形成ステップと、
常圧及び乾燥温度において、前記固体状になったウェットゲルの予備成形構造を乾燥し、エアロゲル板材またはエアロゲル/繊維複合板を含むエアロゲル予備成形材料を獲得し、前記乾燥温度は60~150℃である常圧乾燥ステップと、
耐熱性ゲル材料溶液を準備し、前記耐熱性ゲル材料溶液の耐熱性ゲル材料は300℃以上の高温に耐え、前記耐熱性ゲル材料溶液は非有機フィルム、非有機薄板、または300℃以上の高温に耐える繊維の表面に含侵するように塗布され、前記耐熱性ゲル材料溶液が前記非有機フィルム、前記非有機薄板、または前記300℃以上の高温に耐える繊維の表面に均一に分布された後、前記耐熱性ゲル材料溶液が含侵塗布された前記非有機フィルム、前記非有機薄板、または前記300℃以上の高温に耐える繊維を更に利用して前記エアロゲル予備成形材料を被覆し、前記非有機フィルム、前記非有機薄板、または前記300℃以上の高温に耐える繊維は前記エアロゲル予備成形材料に対しエアロゲルを単層で被覆または多層で被覆するか、或いはエアロゲルと多層に積層することで被覆し、高強度、低い熱伝導率、低い誘電率、高い防火性能を有する耐熱材料でエアロゲル予備成形材料を被覆する複合材料を形成する外層被覆ステップと、
硬化成形ステップであって、前記耐熱材料でエアロゲル予備成形材料を被覆する複合材料を、前記耐熱性ゲル材料溶液の溶剤乾燥温度において溶剤を気化させ、前記溶剤乾燥温度は60~115℃であり、その後、硬化成形温度で前記耐熱性ゲル材料溶液を含侵する硬化成形ステップを実行し、前記硬化成形温度は前記溶剤乾燥温度より高く、高強度、低い熱伝導率、低い誘電率、高い防火性能を有する耐熱フィルムでエアロゲル予備成形を被覆する複合材料を獲得する硬化成形ステップと、
高強度、低い熱伝導率、低い誘電率、高い防火性能を有する前記耐熱フィルムでエアロゲル予備成形を被覆する複合材料の表面は、艶出し、エアロゲル防火断熱塗料の噴射、及び表面スプレー塗装うちの1つまたはそれらの組み合わせを利用し、洗浄及び表面保護プロセスを組み合わることで、高強度、低い熱伝導率、低い誘電率、高い防火性能を兼ね備える耐熱繊維布または耐熱フィルム/耐熱薄板で多層に被覆するエアロゲル成形複合材料を形成する表面処理ステップと、を含むことを特徴とする耐熱材料でエアロゲルを被覆する断熱複合材の調製方法。
【請求項2】
前記耐熱性ゲル材料溶液が常温硬化型である場合、前記耐熱性ゲル材料溶液が含侵される前記非有機フィルム、前記非有機薄板、または前記300℃以上の高温に耐える繊維は、溶剤を気化させる過程で硬化し、高強度なクリーンルーム及び電気自動車の安全保護に用いる無粉塵、高断熱エアロゲル複合材料を獲得することを特徴とする請求項1に記載の耐熱材料でエアロゲルを被覆する断熱複合材の調製方法。
【請求項3】
前記硬化成形ステップは、
前記耐熱性ゲル材料溶液が含侵される前記非有機フィルム、前記非有機薄板、または前記300℃以上の高温に耐える繊維で前記エアロゲル予備成形材料を被覆することで形成された前記耐熱フィルムでエアロゲル予備成形材料を被覆する複合材料を、前記耐熱性ゲル材料の溶剤乾燥温度において溶剤を気化させる溶剤乾燥ステップと、
特定の架橋硬化高温環境において、前記エアロゲル予備成形材料の外層を被覆している前記耐熱性ゲル材料溶液が含侵される前記非有機フィルム、前記非有機薄板、または前記300℃以上の高温に耐える繊維と、内部の熱硬化樹脂との間で架橋反応を発生させて硬化させることで相互に結合させ、架橋硬化反応後に高強度、低い熱伝導率、低い誘電率、高い防火性能を有する前記耐熱フィルムでエアロゲル予備成形を被覆する複合材料を獲得し、その外部は高温耐性、高強度、高い緻密性を兼ね備えて、粉塵が落ちないような繊維強化樹脂(LFRP)耐熱被覆層であり、その内部は低い熱伝導率及び低い誘電率を兼ね備えたエアロゲル板材またはエアロゲル/繊維複合材料である架橋硬化ステップと、を含むことを特徴とする請求項1に記載の耐熱材料でエアロゲルを被覆する断熱複合材の調製方法。
【請求項4】
前記常圧乾燥ステップは、
前記固体状になったウェットゲルの予備成形構造を共沸気化温度の環境で放置し、前記固体状になったウェットゲルの予備成形構造の溶剤を共沸気化させて溶剤を蒸留させて乾燥し、前記共沸気化温度は60~90℃である気化ステップと、
共沸した水性アルコール溶液の蒸気を熱交換回収設備にガイドし、前記水性アルコール溶液を冷却凝縮すると共に回収する溶剤回収ステップと、
乾燥エアロゲルの予備成形構造の温度を突沸温度に調整し、前記乾燥エアロゲルの予備成形構造の内部に含まれる微量の溶剤及び水分子を高速に突沸させ、正圧蒸気を発生させてエアロゲル構造の乾燥収縮を抑制し、大量の微小孔を発生させて前記エアロゲル予備成形材料を獲得し、前記突沸温度は110~150℃である突沸ステップと、を含むことを特徴とする請求項1に記載の耐熱材料でエアロゲルを被覆する断熱複合材の調製方法。
【請求項5】
前記耐熱性ゲル材料溶液が無機ゲル樹脂または熱硬化性樹脂を含む場合、前記硬化成形ステップは、
常温環境において、溶剤を気化させると共に硬化剤を架橋硬化させ、硬化後に高強度、低い熱伝導率、低い誘電率、高い防火性能を有する前記耐熱フィルムでエアロゲル予備成形を被覆する複合材料を獲得する常温架橋硬化ステップ或いは、
架橋硬化温度において、前記熱硬化性樹脂及び前記非有機フィルム、前記非有機薄板、または前記300℃以上の高温に耐える繊維の内部繊維の間で化学反応を発生させて結合するように硬化させ、熱硬化性樹脂がエポキシ樹脂(epoxy)である場合、前記架橋硬化温度は150~180℃であり、熱硬化性樹脂がポリイミド(polyimide)である場合、前記架橋硬化温度は120~325℃であり、硬化架橋後に高強度、低い熱伝導率、低い誘電率、高い防火性能を有する前記耐熱フィルムでエアロゲル予備成形を被覆する複合材料を獲得する高温架橋硬化ステップと、を更に含むことを特徴とする請求項1に記載の耐熱材料でエアロゲルを被覆する断熱複合材の調製方法。
【請求項6】
前記シロキサン化合物として、テトラメトキシシラン(Tetramethoxysilane, TMOS)、テトラエトキシシラン(Tetraethoxysilane, TEOS)、またはそれらの組み合わせを含み、前記疎水性修飾シロキサン化合物として、メチルトリメトキシシラン(Methyltrimethoxysilane、MTMS)、プロピルトリメトキシシラン(Propyltrimethoxysilane、PTMS)、ヘキシルトリメトキシシラン(Hexyltrimethoxysilane、HTMS)、オクチルトリメトキシシラン(Octyltrimethoxysilane、OTMS)、ヘキサメチルジシラン(Hexamethyldisilane、HMDS)の異なるアルキル基鎖長で代替した疎水性修飾シロキサンの1つまたはそれらの組み合わせを含み、シロキサン前駆体において、前記シロキサン化合物及び前記疎水性修飾シロキサン化合物の含有量のモル比は0:100 mol%~40:60 mol%であることを特徴とする請求項1乃至5の何れか1項に記載の耐熱材料でエアロゲルを被覆する断熱複合材の調製方法。
【請求項7】
前記耐熱性ゲル材料として、無機ゲル、熱塑性樹脂、または熱硬化性樹脂の1つまたはそれらの組み合わせを含み、前記無機ゲルとして、水ガラス、無機ケイ素樹脂、酸化銅-リン酸ゲル、ケイ酸塩ゲル、リン酸-ケイ酸塩ゲル、硫酸塩ゲル、または酸化マグネシウム-二酸化ケイ素-ホウ砂無機ゲルを含み、前記熱硬化性樹脂として、エポキシ樹脂、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンスルファイド、ポリエーテルケトン液晶ポリマー、ポリテトラフルオロエチレン、ポリメラミン、ポリフェノールアルデヒド、ポリメラミン-ホルムアルデヒド、ポリアミド、ポリアミドエステル、またはシリカゲルを含むことを特徴とする請求項1乃至5の何れか1項に記載の耐熱材料でエアロゲルを被覆する断熱複合材の調製方法。
【請求項8】
前記繊維材料として、金属繊維、無機繊維、液晶繊維、有機繊維、ガラス繊維、炭素繊維、石英繊維、セラミック繊維、岩綿繊維、Kevlarポリアミド繊維、Nomexポリアミド繊維、ナイロン繊維、ポリエステル繊維、生分解性無機繊維または生分解性有機繊維で調製される多孔質ばら繊維、蓆、紙、毛布、縄、厚板、またはそれらの組み合わせを含むことを特徴とする請求項1乃至5の何れか1項に記載の耐熱材料でエアロゲルを被覆する断熱複合材の調製方法。
【請求項9】
前記非有機フィルム及び前記非有機薄板として、金属フィルム板、無機フィルム板及び有機-無機複合耐熱フィルム、薄板、またはそれらの組み合わせを含み、前記金属フィルム板として、アルミニウム、ステンレス、銅箔フィルムの1つまたはそれらの組み合わせを含み、前記無機フィルム板として、雲母シート、グラファイト、グラフェン、ガラスセラミック、金属酸化物、金属窒化ケイ素化合物及び金属炭化ケイ素化合物で調製されたフィルムまたは薄板の1つまたはそれらの組み合わせを含み、前記有機-無機複合耐熱フィルムとして、アルミ箔、ステンレス箔、銅箔、雲母薄板、グラファイト薄板、グラフェン薄板、ガラス薄板、セラミック薄板、金属、及び金属酸化物微粒子とゲルとを複合して製造した耐熱フィルム及び薄板の1つまたはそれらの組み合わせを含み、前記300℃以上の高温に耐える繊維として、石英繊維、ガラス繊維、セラミック繊維、炭素繊維を含み、前記有機繊維として、ナイロン繊維、ポリエステル繊維、ポリフッ化繊維、Kevlarポリアミド繊維、Nomexポリアミド繊維、または生分解性無機、有機繊維を複合して調製した各種多孔質ばら繊維、蓆、紙、毛布、縄、厚板の1つまたはそれらの組み合わせを含むことを特徴とする請求項1乃至5の何れか1項に記載の耐熱材料でエアロゲルを被覆する断熱複合材の調製方法。
【請求項10】
前記耐熱フィルムでエアロゲルを被覆する複合材料において、前記耐熱フィルムの被覆として、単層で被覆、多層で被覆、または多種類の耐熱フィルムを多層に積層させて被覆することを含み、前記耐熱フィルムでエアロゲルを被覆する複合材料は繊維強化プラスチック(like-fiber reinforced plastic, LFRP)無機材料でシリカエアロゲルを被覆する複合材料であり、関連製品は高強度、高い防火性能、及び高い熱伝導率の性質を有し、クリーンルームでの高温プロセス及び電気自動車のリチウムバッテリーモジュールの放熱の安全保護に応用可能であることを特徴とする請求項1乃至5の何れか1項に記載の耐熱材料でエアロゲルを被覆する断熱複合材の調製方法。