(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024157940
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】炭化珪素半導体装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/76 20060101AFI20241031BHJP
H01L 29/78 20060101ALI20241031BHJP
H01L 29/12 20060101ALI20241031BHJP
H01L 29/06 20060101ALI20241031BHJP
H01L 21/336 20060101ALI20241031BHJP
H01L 29/739 20060101ALI20241031BHJP
【FI】
H01L29/78 652R
H01L29/78 657F
H01L29/78 652T
H01L29/78 652F
H01L29/78 652P
H01L29/06 301G
H01L29/06 301V
H01L29/78 652N
H01L29/78 652J
H01L29/78 653C
H01L29/78 652H
H01L29/78 658A
H01L29/78 658G
H01L29/78 655A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023072620
(22)【出願日】2023-04-26
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110001128
【氏名又は名称】弁理士法人ゆうあい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】片野 拓真
(57)【要約】
【課題】素子分離領域での耐圧を確保しつつ、メインセル領域とセンスセル領域の素子分離を的確に行えるSiC半導体装置を提供する。
【解決手段】素子分離領域Inに、メインセル領域Rmとセンスセル領域Rsとの間に配置され、ベース層18よりも深い複数本の分離トレンチ40を形成することでベース層18をメインセル領域Rm側とセンスセル領域Rs側とに分離する。さらに、複数本の分離トレンチ40それぞれの底部に、互いに離れて配置されていると共に該分離トレンチ40の底面と接して形成された第2導電型の分離ディープ層41を備える。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トレンチゲート構造を有する半導体素子がメインセル領域(Rm)およびセンスセル領域(Rs)を含むセル領域(1)に形成され、前記メインセル領域と前記センスセル領域とが素子分離領域(In)によって電気的に分離された炭化珪素半導体装置であって、
炭化珪素からなる第1導電型または第2導電型の基板(11)と、
前記基板の表面上に形成され、前記基板よりも低不純物濃度とされた第1導電型の第1不純物領域(13)と、を有し、
前記メインセル領域および前記センスセル領域は、
前記第1不純物領域の表層部に形成され、前記第1不純物領域よりも高不純物濃度とされた第1導電型の炭化珪素からなるJFET層(14)と、
前記第1不純物領域の表層部に形成され、前記基板の面方向において前記JFET層と交互に配置された第2導電型の炭化珪素からなるディープ層(15)と、
前記JFET層および前記ディープ層上に形成された第2導電型の炭化珪素からなるベース層(18)と、
前記ベース層よりも深く一方向を長手方向として複数本並べられたゲートトレンチ(21)の内壁面に形成されたゲート絶縁膜(22)と、前記ゲートトレンチ内において、前記ゲート絶縁膜の上に形成されたゲート電極(23)と、を有するトレンチゲート構造と、
前記ベース層の表層部において前記トレンチゲート構造と接して形成され、前記第1不純物領域よりも高不純物濃度とされた第1導電型の炭化珪素からなる第2不純物領域(19)と、
前記メインセル領域および前記センスセル領域のそれぞれに分離して備えられ、前記メインセル領域の前記第2不純物領域および前記ベース層に電気的に接続されると共に、前記センスセル領域の前記第2不純物領域および前記ベース層に電気的に接続される第1電極(25)と、
前記基板の裏面側に配置され、前記基板と電気的に接続される第2電極(28)と、を有し、
前記素子分離領域は、
前記メインセル領域と前記センスセル領域との間に配置され、前記ベース層よりも深く複数本の分離トレンチ(40)が形成されることで前記ベース層が前記メインセル領域側と前記センスセル領域側とに分離され、
さらに、複数本の前記分離トレンチそれぞれの底部に、互いに離れて配置されていると共に該分離トレンチの底面と接して形成された第2導電型の分離ディープ層(41)が備えられている、炭化珪素半導体装置。
【請求項2】
前記ディープ層を第1ディープ層(15)として、
複数本の前記ゲートトレンチのそれぞれの底部には、該ゲートトレンチの底面と接して形成された第2導電型の第2ディープ層(30)が備えられている、請求項1に記載の炭化珪素半導体装置。
【請求項3】
前記分離トレンチ同士の間隔(B2)は、前記ゲートトレンチ同士の間隔(B1)よりも小さい、請求項2に記載の炭化珪素半導体装置。
【請求項4】
前記分離トレンチの幅は、前記ゲートトレンチの幅に揃えられている、請求項3に記載の炭化珪素半導体装置。
【請求項5】
複数本の前記分離トレンチによって前記センスセル領域が囲まれている、請求項1ないし4のいずれか1つに記載の炭化珪素半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、セル領域にメインセル領域とセンスセル領域とが備えられたトレンチゲート構造の半導体素子を有する炭化珪素(以下では、SiCともいう)半導体装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1において、セル領域にメインセル領域とセンスセル領域とが備えられ、メインセル領域に流れる電流をセンスセル領域にて検出するようにしたSiC半導体装置が提案されている。このSiC半導体装置では、メインセル領域とセンスセル領域に同じ構造のMOSFET素子が形成されている。また、このSiC半導体装置では、メインセル領域とセンスセル領域との間に素子分離領域が備えられ、メインセル領域とセンスセル領域との素子分離が行われている。
【0003】
メインセル領域およびセンスセル領域は、トレンチゲート構造を有しており、トレンチゲート構造におけるトレンチ底部に、p型の保護層が形成されることで保護層からドリフト層へと空乏層を広げ、トレンチ底部にかかる電界を緩和している。
【0004】
素子分離領域には、メインセル領域とセンスセル領域の間においてドリフト層まで達する幅広の1本のトレンチが形成され、このトレンチの底部におけるメインセル領域側とセンスセル側それぞれの両端に電界緩和層を構成するp型の保護層が形成されている。このように、1本の幅広のトレンチの両端に電界緩和層を備えることで耐圧を得つつ、メインセル領域側の電界緩和層とセンスセル側の電界緩和層を分断部によって分断し、メインセル領域とセンスセル領域とが電界緩和層を通して短絡しないようにされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1のSiC半導体装置の製造方法では、MOSFETのトレンチ形成に用いるレジストマスクを幅広のトレンチの中央位置に配置し、レジストマスクで覆われた場所以外のトレンチの底部に一様に電界緩和層を設けている。しかしながら、このように電界緩和層を設ける場合、マスクの加工が不安定になり、電界緩和層が繋がってメインセル領域とセンスセル領域とを素子分離できなくなる。
【0007】
本開示は、素子分離領域での耐圧を確保しつつ、メインセル領域とセンスセル領域の素子分離を的確に行えるSiC半導体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の1つの観点は、トレンチゲート構造を有する半導体素子がメインセル領域(Rm)およびセンスセル領域(Rs)を含むセル領域(1)に形成され、メインセル領域とセンスセル領域とが素子分離領域(In)によって電気的に分離されたSiC半導体装置であって、SiCからなる第1導電型または第2導電型の基板(11)と、基板の表面上に形成され、基板よりも低不純物濃度とされた第1導電型の第1不純物領域(13)と、を有している。メインセル領域およびセンスセル領域は、第1不純物領域の表層部に形成され、第1不純物領域よりも高不純物濃度とされた第1導電型のSiCからなるJFET層(14)と、第1不純物領域の表層部に形成され、基板の面方向においてJFET層と交互に配置された第2導電型のSiCからなるディープ層(15)と、JFET層およびディープ層上に形成された第2導電型のSiCからなるベース層(18)と、ベース層よりも深く一方向を長手方向として複数本並べられたゲートトレンチ(21)の内壁面に形成されたゲート絶縁膜(22)と、ゲートトレンチ内において、ゲート絶縁膜の上に形成されたゲート電極(23)と、を有するトレンチゲート構造と、ベース層の表層部においてトレンチゲート構造と接して形成され、第1不純物領域よりも高不純物濃度とされた第1導電型のSiCからなる第2不純物領域(19)と、メインセル領域およびセンスセル領域のそれぞれに分離して備えられ、メインセル領域の第2不純物領域およびベース層に電気的に接続されると共に、センスセル領域の第2不純物領域およびベース層に電気的に接続される第1電極(25)と、基板の裏面側に配置され、基板と電気的に接続される第2電極(28)と、を有している。そして、素子分離領域は、メインセル領域とセンスセル領域との間に配置され、ベース層よりも深く複数本の分離トレンチ(40)が形成されることでベース層がメインセル領域側とセンスセル領域側とに分離され、さらに、複数本の分離トレンチそれぞれの底部に、互いに離れて配置されていると共に該分離トレンチの底面と接して形成された第2導電型の分離ディープ層(41)が備えられている。
【0009】
このように、素子分離領域に分離トレンチを形成してメインセル領域側とセンスセル領域側のベース層を分離している。これにより、メインセル領域側のベース層と、センスセル領域側のベース層とを電気的に分離することができる。また、分離ディープ層が備えられることにより、メインセル領域とセンスセル領域との間への等電位線のせり上がりを抑制でき、耐圧を確保することができる。そして、分離トレンチを複数本としており、1本のトレンチとする場合のように幅広にする必要がないため、分離トレンチの出来映えやその底部に形成する分離ディープ層の出来映えが良好になり、各分離ディープ層が的確に間隔を空けて離れて形成される。このため、メインセル領域側とセンスセル領域側とで分離ディープ層が繋がって短絡することによるソースリークを抑制できる。よって、素子分離領域での耐圧を確保しつつ、メインセル領域とセンスセル領域の素子分離を的確に行えるSiC半導体装置にできる。
【0010】
なお、各構成要素等に付された括弧付きの参照符号は、その構成要素等と後述する実施形態に記載の具体的な構成要素等との対応関係の一例を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】第1実施形態におけるSiC半導体装置の平面図である。
【
図2】
図1中の領域RAをII方向から見たときの斜視断面図。
【
図3】
図1中のIII-III線に沿った断面図である。
【
図4】
図1中のIV-IV線に沿った断面図である。
【
図6A】第1実施形態のSiC半導体装置の製造工程を示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、同一符号を付して説明を行う。
【0013】
(第1実施形態)
第1実施形態について、図面を参照しつつ説明する。本実施形態のSiC半導体装置は、
図1に示されるように、素子動作するアクティブ領域となるセル領域1と、セル領域1を囲む外周領域2とを有する構成とされている。セル領域1は、メインセルが備えられたメインセル領域Rmとセンスセルが備えられたセンスセル領域Rsと、メインセル領域Rmとセンスセル領域Rsとの間に配置され、メインセル領域Rmとセンスセル領域Rsとを電気的に分離する素子分離領域Inとを有している。そして、本実施形態のSiC半導体装置は、センスセル領域Rsに流れるセンス電流および面積比によってメインセル領域Rmに流れるメイン電流が検出可能とされている。
【0014】
なお、
図1中のセル領域1の下方には、SiC半導体装置にセル領域1に備えられる素子の制御用や温度検出用などの各種パッド3が形成されている。
【0015】
本実施形態では、センスセル領域Rsがメインセル領域Rmに隣接して配置されている。そして、素子分離領域Inは、センスセル領域Rsを囲むように枠状に配置されている。メインセル領域Rmおよびセンスセル領域Rsには、同様の構造のトレンチゲート構造の半導体素子が形成されている。
【0016】
外周領域2は、
図2に示されるように、外周耐圧構造が構成されたガードリング部2aと、ガードリング部2aよりも内側に配置される繋ぎ部2bとを有する構成とされている。言い換えると、外周領域2は、ガードリング部2aと、セル領域1とガードリング部2aとの間に配置される繋ぎ部2bとを有する構成とされている。
【0017】
以下、セル領域1にトレンチゲート構造の半導体素子としてnチャネルの縦型MOSFETが備えられたSiC半導体装置について、
図2~
図5を参照しつつ説明する。なお、上記のように、メインセル領域Rmおよびセンスセル領域Rsには、同様の構造の縦型MOSFETが形成されている。また、以下では、後述する半導体基板10の面方向における一方向をX軸方向とし、半導体基板の10面方向における一方向と交差する方向をY軸方向とし、X軸方向およびY軸方向と交差する方向をZ軸方向として説明する。ここでは、X軸方向とY軸方向とZ方向を互いに直交した軸としている。また、本実施形態におけるZ軸方向は、後述する半導体基板10の厚さ方向に相当し、後述する基板11と低濃度層13との積層方向にも相当している。Y軸方向は、例えば、<11-20>方向とされる。
【0018】
SiC半導体装置は、縦型MOSFETの素子形成がされた半導体基板10を用いて構成されている。半導体基板10は、SiCからなるn+型の基板11に対してSiCで構成される各種半導体層を形成することで構成される。本実施形態では、基板11として、例えば、(0001)Si面に対して0~8°のオフ角を有し、窒素やリン等のn型不純物濃度が1.0×1019/cm3とされ、厚さが300μm程度とされたものが用いられる。縦型MOSFETの場合、基板11は、ドレイン領域を構成するものとなる。
【0019】
基板11の表面上には、必要に応じて、SiCからなるn型のバッファ層12が形成されている。バッファ層12は、基板11の表面にエピタキシャル成長を行うことによって構成される。そして、バッファ層12は、n型不純物濃度が、基板11と、後述する低濃度層13との間の濃度とされ、厚さが1μm程度とされている。
【0020】
バッファ層12の表面上には、例えば、n型不純物濃度が5.0×1015~2.0×1016/cm3とされ、厚さが7~15μm程度とされたSiCからなるn-型の低濃度層13が形成されている。この低濃度層13は、不純物濃度がZ軸方向において一定とされていてもよいが、濃度分布に傾斜が付けられ、低濃度層13のうちの基板11側の方が基板11から離れる側よりも高濃度となるようにされると好ましい。なお、本実施形態では、低濃度層13が第1不純物領域に相当する。
【0021】
セル領域1における低濃度層13の表層部には、JFET層14および第1ディープ層15が形成されている。本実施形態では、JFET層14および第1ディープ層15は、それぞれX軸方向に沿って延設されると共に、Y軸方向において交互に繰り返し並べて配置された線状部分を有している。つまり、JFET層14および第1ディープ層15は、基板11の表面に対する法線方向(以下では、単に法線方向ともいう)において、それぞれX軸方向に沿って延設されたストライプ状とされ、それらがY軸方向に沿って交互に並べられたレイアウトとなる構成とされている。なお、基板11の表面に対する法線方向においてとは、言い換えると、基板11の表面に対する法線方向から視たときということもできる。また、基板11の表面に対する法線方向とは、後述するドリフト層17とベース層18との積層方向に沿った方向でもあり、Z軸方向に沿った方向である。
【0022】
JFET層14は、低濃度層13よりも高不純物濃度とされたn型とされており、厚さが0.3~1.5μmとされている。本実施形態では、JFET層14は、n型不純物濃度が5.0×1016~1.0×1017/cm3程度とされている。第1ディープ層15は、p型不純物濃度が2.0×1017~2.0×1018/cm3程度とされている。なお、本実施形態では、セル領域1のうちの素子分離領域InにはJFET層14が形成されていない。つまり、JFET層14は、セル領域1においては、メインセル領域Rmおよびセンスセル領域Rsのみに形成されている。そして、本実施形態では、セル領域1のうちのJFET層14が形成されていない領域が素子分離領域Inとされている。
【0023】
また、第1ディープ層15については、JFET層14と同じ深さでも、JFET層14より深くもしくは浅くても良いが、本実施形態では第1ディープ層15をJFET層14より浅く形成している。つまり、第1ディープ層15は、底部がJFET層14内に位置するように形成されている。言い換えると、第1ディープ層15は、低濃度層13との間にJFET層14が位置するように形成されている。これにより、第1ディープ層15の間におけるJFET層14内への空乏層の拡がりを抑制して、オン抵抗低減を図っている。なお、このようなJFET層14および第1ディープ層15は、低濃度層13の表層部に適宜不純物をイオン注入することで形成される。
【0024】
一方、外周領域2のうちのガードリング部2aにおける低濃度層13の表層部には、JFET層14が延設され、このJFET層14内において、セル領域1を囲むように、複数本のp型のガードリング16が備えられている。本実施形態では、ガードリング16の上面レイアウトは、法線方向において、四隅が丸められた四角形状や円形状等とされている。
【0025】
さらに、外周領域2のうちの繋ぎ部2bにおける低濃度層13の表層部には、p型の繋ぎ層15aが備えられている。繋ぎ層15aは、内縁側がセル領域1を囲むように配置され、外縁側がガードリング部2aとの境界位置まで配置されている。繋ぎ層15aは、第1ディープ層15を繋ぎ部2bまで延設することで形成され、第1ディープ層15と同じ深さ、同じp型不純物濃度とされている。
【0026】
また、セル領域1におけるJFET層14および第1ディープ層15上には、ベース層18、ソース領域19、コンタクト領域20等が形成されている。
【0027】
ベース層18は、p型とされ、JFET層14および第1ディープ層15上に形成されている。このため、第1ディープ層15は、ベース層18と接続された状態となっている。ベース層18は、例えば、p型不純物濃度が5.0×1016~2.0×1019/cm3とされ、厚さが2.0μm程度とされている。
【0028】
ソース領域19は、n+型とされており、ベース層18の表層部に形成されている。コンタクト領域20は、p+型とされており、ベース層18の表層部に形成されている。具体的には、ソース領域19は、後述するトレンチ21の側面に接するように形成されており、コンタクト領域20は、ソース領域19を挟んで後述するトレンチ21と反対側に形成されている。本実施形態では、ソース領域19は、表層部におけるn型不純物濃度、すなわち表面濃度が例えば1.0×1018/cm3とされ、厚さが0.3μm程度とされている。コンタクト領域20は、表層部におけるp型不純物濃度、すなわち表面濃度が例えば1.0×1021/cm3とされ、厚さが0.3μm程度とされている。なお、本実施形態では、ソース領域19が第2不純物領域に相当する。
【0029】
外周領域2のうちの繋ぎ部2bにおける低濃度層13、JFET層14、第1ディープ層15、繋ぎ層15a上には、ベース層18、コンタクト領域20および低濃度層13の表層部分等が形成されている。繋ぎ部2bのうちの内縁側では、ベース層18およびコンタクト領域20が繋ぎ層15a上に形成されており、セル領域1から延設されている。また、繋ぎ部2bのうちの外縁側ではベース層18およびコンタクト領域20が形成されておらず、低濃度層13の表層部分が形成されている。つまり、本実施形態では、外周領域2におけるベース層18およびコンタクト領域20は、セル領域1から延設されて繋ぎ部2bのうちの途中まで形成されており、それより外側の繋ぎ部2bおよびガードリング部2aには形成されていない。そして、セル領域1と外周領域2との境界位置から繋ぎ部2bの途中までは、繋ぎ部2bの表層の全面がコンタクト領域20とされ、それより外側では繋ぎ部2bおよびガードリング部2aの表層の全面が低濃度層13とされている。
【0030】
本実施形態では、以上のように、基板11、バッファ層12、低濃度層13、JFET層14、第1ディープ層15、ベース層18、ソース領域19、コンタクト領域20等を含んで半導体基板10が構成されている。そして、半導体基板10を構成する各層がSiCで構成されているため、半導体基板10は、SiCで構成されているといえる。また、本実施形態では、セル領域1や繋ぎ部2bのうちの内縁側において、半導体基板10の一面10aがソース領域19やコンタクト領域20などで構成され、半導体基板10の他面10bが基板11で構成されている。
【0031】
なお、JFET層14、第1ディープ層15、繋ぎ層15a、ガードリング16、ベース層18、ソース領域19、コンタクト領域20は、本実施形態ではイオン注入で形成されたイオン注入層で構成されている。
【0032】
また、セル領域1において、半導体基板10には、ソース領域19やベース層18等を貫通して、一面10a側からJFET層14および第1ディープ層15に達するトレンチ21が形成されている。トレンチ21は、ゲートトレンチに相当し、底面がJFET層14および第1ディープ層15内に位置する深さとされ、幅が例えば0.4~0.8μmとされている。
【0033】
また、トレンチ21は、Y軸方向に沿って延びるように複数本が延設されると共に、
図3に示すようにX軸方向において間隔B1ずつ空けて等間隔で並べられてストライプ状となるように形成されている。つまり、本実施形態では、トレンチ21は、長手方向が第1ディープ層15の長手方向と直交するように形成されている。
【0034】
トレンチ21の底部には、トレンチ21の底面と接するように、電界緩和層となる第2ディープ層30が形成されている。本実施形態では、第2ディープ層30は、第1ディープ層15よりも低不純物濃度のp型層によって構成されている。具体的には、第2ディープ層30は、トレンチ21の長手方向に沿って形成されている。つまり、第2ディープ層30は、第1ディープ層15と交差するY軸方向に沿って延設されている。また、本実施形態の第2ディープ層30は、JFET層14および第1ディープ層15を貫通して底面が低濃度層13に達するように形成されている。
【0035】
第2ディープ層30をトレンチ21の底面に沿って形成することで、トレンチ21の底部に位置するゲート絶縁膜22への電界の侵入を抑制でき、酸化膜破壊を抑制できる。また、第2ディープ層30をトレンチ21の底面と接するように形成することで、ゲート電極23と下部電極28との間の静電容量、すなわち帰還容量を小さくでき、スイッチング速度を向上できる。さらに、第2ディープ層30をJFET層14および第1ディープ層15を貫通して底面が低濃度層13に達するように形成しているため、第2ディープ層30間に配置されるJFET層14への電界の這い上がりが抑制され、耐圧を向上できる。加えて、過電圧が印加された際に下方に突出する第2ディープ層30でブレークダウンが発生し易くなるため、セル領域1でブレークダウンを発生させ易くなり、アバランシェ耐量の向上を図ることができる。
【0036】
なお、第2ディープ層30は、Y軸方向に沿って複数に分断されて形成されていてもよい。但し、第2ディープ層30は、第1ディープ層15を介してベース層18と電気的に接続されるように形成されている。
【0037】
また、トレンチ21には、内壁面にゲート絶縁膜22が形成され、ゲート絶縁膜22上には、ドープドPoly-Si等によって構成されるゲート電極23が形成されている。これにより、トレンチゲート構造が構成されている。特に限定されるものではないが、ゲート絶縁膜22は、トレンチ21の内壁面を熱酸化する、またはCVD(chemical vapor depositionの略)法で絶縁膜を成膜することで形成される。ゲート絶縁膜22は、厚さがトレンチ21の側面側および底面側で共に100nm程度とされている。
【0038】
ゲート絶縁膜22は、トレンチ21の内壁面に加えて半導体基板10の一面10aにも形成されている。そして、セル領域1において、ゲート絶縁膜22には、コンタクトホール22aが形成され、ソース領域19およびコンタクト領域20が露出させられている。
【0039】
半導体基板10の一面10a上には、ゲート電極23やゲート絶縁膜22等を覆うように、層間絶縁膜24が形成されている。層間絶縁膜24は、BPSG(Borophosphosilicate Glassの略)等で構成されている。なお、
図2では、半導体基板10の一面10aより上方に位置する側に位置する層間絶縁膜24等を省略してある。
【0040】
図3に示すように、層間絶縁膜24には、セル領域1において、コンタクトホール22aと連通してソース領域19やコンタクト領域20を露出させるコンタクトホール24aが形成されている。また、
図4に示すように、層間絶縁膜24には、ゲート電極23のうちの繋ぎ部2bまで延設された部分を露出させるコンタクトホール24bが形成されている。
【0041】
層間絶縁膜24上には、コンタクトホール22aおよびコンタクトホール24aを通じてソース領域19およびコンタクト領域20と電気的に接続される上部電極25が形成されている。上部電極25は、メインセル領域Rmおよびセンスセル領域Rsに対して別々に備えられている。そして、それぞれの上部電極25は、別々に外部との電気的な接続が行えるようになっている。本実施形態では、上部電極25が第1電極に相当している。また、層間絶縁膜24上には、コンタクトホール24bを通じてゲート電極23と電気的に接続されるゲート配線26が形成されている。ゲート配線26は、
図1中には示していないが、セル領域1の外縁部分に沿って形成されており、例えば
図1に示した四角形のチップとされたSiC半導体装置のうちの右側と左側および下側の各辺に沿って形成されている。
【0042】
本実施形態の上部電極25は、例えば、Ni/Al等の複数の金属にて構成されている。そして、複数の金属のうちのn型SiC、すなわちソース領域19を構成する部分と接触する部分は、n型SiCとオーミック接触可能な金属で構成されている。また、複数の金属のうちの少なくともp型SiC、すなわちコンタクト領域20と接触する部分は、p型SiCとオーミック接触可能な金属で構成されている。なお、ゲート配線26は、上部電極25と同様の構成とされていてもよいし、Al-Si等で構成されていてもよい。
【0043】
さらに、繋ぎ部2bおよびガードリング部2aを覆うように、ポリイミド等によって構成される保護膜27が形成されている。本実施形態では、保護膜27は、上部電極25と後述する下部電極28との間で沿面放電が発生することを抑制するため、外周領域2からセル領域1の外縁部上まで形成されている。具体的には、保護膜27は、セル領域1において、上部電極25のうちの外周領域2側の部分を覆いつつ、上部電極25のうちの内縁側の部分を露出させるように形成されている。
【0044】
半導体基板10の他面10b側には、基板11と電気的に接続される下部電極28が形成されている。なお、本実施形態では、下部電極28が第2電極に相当している。
【0045】
本実施形態のSiC半導体装置では、このような構造により、nチャネルタイプの反転型であるトレンチゲート構造のMOSFETがメインセル領域Rmおよびセンスセル領域Rsに形成されている。次に、素子分離領域Inの構成について説明する。
【0046】
図1において破線で示すように、素子分離領域Inは、センスセル領域Rsを囲むようにして形成され、メインセル領域Rmとセンスセル領域Rsとの間に配置されている。そして、素子分離領域Inは、
図4に示されるように、セル領域1と同様に、基板11、バッファ層12、低濃度層13を有する構成とされている。
【0047】
素子分離領域Inにおいて、低濃度層13の表層部には、第1ディープ層15が形成されているが、JFET層14は形成されていない。つまり、セル領域1のうち、メインセル領域Rmとセンスセル領域Rsとの間に位置するJFET層14が形成されていない領域が素子分離領域Inになっている。
【0048】
また、第1ディープ層15は、メインセル領域Rm側の部分とセンスセル領域Rs側の部分とが間隔を空けて配置されており、メインセル領域Rmとセンスセル領域Rsとの間において分離されている。そして、この第1ディープ層15上にも、ベース層18、コンタクト領域20が形成されている。ベース層18は、第1ディープ層15と接して配置されている。また、コンタクト領域20は、ベース層18の表層部に形成されている。これらベース層18とコンタクト領域20も、メインセル領域Rm側の部分とセンスセル領域Rs側の部分とが間隔を空けて離れて配置されており、メインセル領域Rmとセンスセル領域Rsとの間において分離されている。
【0049】
なお、素子分離領域Inにおける各構成要素は、セル領域1と同様の不純物濃度とされている。
【0050】
また、素子分離領域Inには、分離構造としての分離トレンチ40が第1ディープ層15に達するように形成されている。分離トレンチ40は、複数本、本実施形態では2本が設けられ、それぞれセンスセル領域Rsを囲むように形成されている。各分離トレンチ40は、同じ深さ、同じ幅で形成されており、それぞれ間隔B2を空けて離れて配置されていて、繋がっていない状態になっている。間隔B2は、セル領域1に形成されたトレンチ21の隣り合うもの同士の間隔B1以下とされている。さらに、この分離トレンチ40の底部に、分離トレンチ40の底面に接するように分離ディープ層41が形成されている。分離ディープ層41は、分離トレンチ40の底部の全域に形成されている。分離ディープ層41は、メインセル領域Rm側とセンスセル領域Rs側とで離れていれば良く、分離トレンチ40の底面から外側にはみ出していても良い。
【0051】
これら素子分離領域Inに形成された分離トレンチ40と分離ディープ層41は、セル領域1に形成されたトレンチ21および第2ディープ層30と同様の構成とされている。すなわち、分離トレンチ40はトレンチ21と同じ深さ、同じ幅で形成されている。分離ディープ層41は、第2ディープ層30とp型不純物濃度が同じで、深さも同じにされている。また、分離トレンチ40についてはトレンチ21と同時に形成することができ、分離ディープ層41については第2ディープ層30と同時に形成することができる。分離トレンチ40や分離ディープ層41の形成工程をトレンチ21や第2ディープ層30の形成工程と共通化させれば、製造工程の簡略化が図れる。
【0052】
それぞれの分離トレンチ40の幅や深さが全て同じである必要はなく、トレンチ21の幅や深さと同じでなくても良い。ただし、分離トレンチ40をトレンチ21と同時に形成する場合、分離トレンチ40の幅を大きくし、例えばトレンチ21を二つ繋げた幅よりも大きくすると、トレンチ21および分離トレンチ40を形成する際の出来映えにバラツキが生じる。また、その表面に形成されるゲート絶縁膜22の形状や出来映えもセル領域1のトレンチ21の表面に形成されるものとバラツキが生じ、歩留まりに影響し得る。このため、それぞれの分離トレンチ40の幅をトレンチ21の幅に揃えると好ましい。また、それぞれの分離トレンチ40の幅をトレンチ21の幅に揃えると、セル領域1と素子分離領域Inとの耐圧や耐量バランスの調整も行いやすくすることができる。なお、ここでいう幅を揃えるとは、同じであることが好ましいが、同じ幅になることを狙って製造されていることを意味し、製造誤差が含まれていても構わない。
【0053】
さらに、分離トレンチ40の内部を含めて素子分離領域Inにおける半導体基板10の表面には、ゲート絶縁膜22が形成されている。また、ゲート絶縁膜22の上には分離ゲート電極42が形成されている。ここでは、分離ゲート電極42は、ゲート電極23と電気的に接続された状態とされているが、分離されていても良い。分離ゲート電極42がゲート電極23から電気的に分離されている方が、素子動作時に分離ゲート電極42にゲート電圧が印加されない分、耐圧向上が図れる。そして、分離ゲート電極42を覆うように層間絶縁膜24および保護膜27が形成されている。このような構造により、素子分離領域Inが構成されている。
【0054】
このように、分離トレンチ40および分離ディープ層41が備えられることにより、メインセル領域Rm側のベース層18およびコンタクト領域20と、センスセル領域Rs側のベース層18およびコンタクト領域20とが電気的に分離されている。また、分離ディープ層41が備えられることにより、メインセル領域Rmとセンスセル領域Rsとの間への等電位線のせり上がりを抑制でき、耐圧が確保されている。
【0055】
以上が本実施形態におけるSiC半導体装置の構成である。なお、本実施形態では、n-型、n型、n+型が第1導電型に相当しており、p型、p+型が第2導電型に相当している。次に、上記SiC半導体装置の作動について説明する。
【0056】
まず、上記SiC半導体装置は、ゲート電極23にゲート電圧が印加される前のオフ状態では、ベース層18に反転層が形成されない。このため、下部電極28に正の電圧、例えば1600Vが印加されたとしても、ソース領域19からベース層18内に電子が流れず、上部電極25と下部電極28との間には電流が流れない。
【0057】
また、ゲート電極23にゲート電圧が印加される前の状態では、ドレイン-ゲート間に電界がかかり、ゲート絶縁膜22の底部に電界集中が発生し得る。しかしながら、上記SiC半導体装置では、トレンチ21よりも深い位置に、第1ディープ層15およびJFET層14が備えられている。このため、第1ディープ層15およびJFET層14との間に構成される空乏層により、ドレイン電圧の影響による等電位線のせり上がりが抑制され、高電界がゲート絶縁膜22に入り込み難くなる。さらに、トレンチ21の底部に電界緩和層となる第2ディープ層30が備えられているため、より高電界がゲート絶縁膜22に入り込み難くなる。したがって、本実施形態では、ゲート絶縁膜22が破壊されることを抑制できる。
【0058】
また、ゲート電極23に所定のゲート電圧が印加されると、ベース層18のうちのトレンチ21に接している表面にチャネルが形成される。このため、上部電極25から注入された電子は、ソース領域19からベース層18に形成されたチャネルを通った後、JFET層14を通過して低濃度層13に流れ、その後にドレイン層としての基板11を通過して下部電極28へ流れる。これにより、上部電極25と下部電極28との間に電流が流れ、SiC半導体装置がオン状態となる。なお、本実施形態では、チャネルを通過した電子がJFET層14および低濃度層13を通過して基板11へ流れるため、JFET層14および低濃度層13を有するドリフト層17が構成されているといえる。
【0059】
そして、素子分離領域Inにおいて、分離トレンチ40によりメインセル領域Rm側とセンスセル側のベース層18およびコンタクト領域20を電気的に分離しつつ、分離トレンチ40の底部に分離ディープ層41を形成している。このため、素子分離領域Inでもドレイン電圧の影響による等電位線のせり上がりが抑制される。
【0060】
さらに、分離トレンチ40の間隔B2をセル領域1に形成されたトレンチ21同士の間隔B1以下としているため、素子分離領域Inの方がセル領域1よりも耐圧を高くできる。これにより、面積が小さくなり易い素子分離領域Inが先にブレークダウンすることを抑制できる。したがって、SiC半導体装置としての耐圧がセル領域1の耐圧に律速させられ、セル領域1での耐圧設計に基づいてSiC半導体装置の耐圧を設計できる。
【0061】
ここで、本発明者らは、ドレイン-ソース間耐圧について検討した。具体的には、25℃の温度下において、メインセル領域Rmとセンスセル領域Rsのソース電圧を共に0Vとし、ゲート電圧を-3.5Vとして、間隔B2を変化させてSim解析に基づいて耐圧を調べた。その結果、間隔B2がセル領域1のトレンチ21の間隔B1以下である場合、いずれの場合も1400V以上の高い耐圧を得ることができていた。また、同様の解析を175℃の温度下として行った場合にも、1400V以上の高い耐圧を得ることができていた。また、Sim解析によってメインセル領域Rmとセンスセル領域Rsとの間のソースリークを調べたが、分離ディープ層41がメインセル領域Rm側とセンスセル領域Rs側とで離されているため、短絡によるソースリークを抑制できていた。
【0062】
なお、素子分離領域Inの幅については、耐圧を確保でき、かつ、ソースリークを抑制できる範囲であれば問わない。ただし、素子分離領域Inは、電流が流れ難い無効領域となる。したがって、素子分離領域Inの幅は、耐圧とソースリークを考慮しつつ、可能な限り狭くすることが好ましい。これに基づき、分離トレンチ40の間隔B1や幅、本数を設定すれば良い。
【0063】
続いて、本実施形態のSiC半導体装置の製造方法について、
図6A~
図6Eを参照して説明する。なお、
図6A~
図6Eでは、左側にメインセル領域Rmやセンスセル領域Rsでの断面、右側に素子分離領域Inでの断面を示してある。メインセル領域Rmやセンスセル領域Rsについては同様の断面となるため、纏めて記載してある。
【0064】
まず、
図6Aに示すように、基板11を用意したのち、基板11の一面側にバッファ層12および低濃度層13をエピタキシャル成長させる。そして、低濃度層13の表面にJFET層14と対応する部分が開口した図示しないマスクを配置したのちn型不純物をイオン注入してJFET層14を形成する。
【0065】
続いて、再び第1ディープ層15と対応する部分が開口した図示しないマスクを形成したのちp型不純物をイオン注入して、
図6Bに示すように第1ディープ層15を形成する。また、ベース層18と対応する部分が開口した図示しないマスクを形成したのち、p型不純物をイオン注入してベース層18を形成する。さらに、コンタクト領域20と対応する部分が開口したマスクを用いてp型不純物を更にイオン注入してベース層18の上にコンタクト領域20を形成する。
【0066】
この後、ソース領域19と対応する部分が開口した図示しないマスクを形成したのちn型不純物をイオン注入して、
図6Cに示すようにソース領域19を形成する。このとき、ソース領域19となる部分までコンタクト領域20が形成されているが、n型不純物のドーズ量を多くすることでn型に打ち返してソース領域19を形成できる。
【0067】
次に、
図6Dに示すようにトレンチ21および分離トレンチ40と対応する部分が開口するマスク50を配置したのち、ドライエッチングによりトレンチ21および分離トレンチ40を同時に形成する。また、
図6Eに示すように同じマスク50を用いてp型不純物をイオン注入し、トレンチ21の底部に第2ディープ層30を形成すると同時に、分離トレンチ40の底部に分離ディープ層41を形成する。
【0068】
この後、熱酸化もしくはCVDによってゲート絶縁膜22を形成したのち、ドープドポリシリコンの成膜およびパターニングによってゲート電極23および分離ゲート電極42を同時に形成する。そして、層間絶縁膜24の形成工程、上部電極25やゲート配線26の形成工程、保護膜27の形成工程、基板11の裏面側への下部電極28の形成工程を従来から行われている工程で実施する。これにより、本実施形態にかかるSiC半導体装置が完成する。
【0069】
以上説明した本実施形態のSiC半導体装置によれば、素子分離領域Inに分離トレンチ40を形成してメインセル領域Rm側とセンスセル領域Rs側のベース層18およびコンタクト領域20を分離している。これにより、メインセル領域Rm側のベース層18およびコンタクト領域20と、センスセル領域Rs側のベース層18およびコンタクト領域20との電気的分離を的確に行える。
【0070】
また、分離ディープ層41が備えられることにより、メインセル領域Rmとセンスセル領域Rsとの間への等電位線のせり上がりを抑制でき、耐圧を確保することができる。そして、分離トレンチ40を複数本形成しているため、幅広の1つの分離トレンチ40の両端に分離ディープ層41を形成する場合のように、各分離トレンチ40の幅を広くしなくても良いため、隣り合う分離ディープ層41が繋がらないようにできる。
【0071】
すなわち、セル領域に形成されるトレンチ21と分離トレンチ40を同時に形成する際に、幅が異なっていると出来映えにバラツキが生じ、幅広の1つの分離トレンチ40の両端に分離ディープ層41を形成する場合にはトレンチ形状が安定しない。また、第2ディープ層30や分離ディープ層41を形成する際のイオン注入マスクが半導体基板10の一面10a上に配置されることになるが、分離トレンチ40内では分離ディープ層41を分離するためのマスクが分離トレンチ40の底面から配置される。このため、分離トレンチ40内ではマスク高さが異なることになり、分離ディープ層41の出来映えにもバラツキが生じる。このため、幅広の1つの分離トレンチ40の両端に分離ディープ層41を形成する場合には、分離ディープ層41が繋がってメインセル領域Rmとセンスセル領域Rsが素子分離できなくなる。
【0072】
これに対して、本実施形態のように、分離トレンチ40を複数本にすれば、各分離トレンチ40の幅を広くしなくても良いため、分離トレンチ40の出来映えを良好にできる。そして、各分離トレンチ40がメインセル領域Rm側とセンスセル領域Rs側とで間隔B2を空けて離れるようにしているため、その底部に配置される各分離ディープ層41も互いに離れて配置される。これにより、メインセル領域Rm側とセンスセル領域Rs側との短絡によるソースリークを抑制できる。
【0073】
また、本実施形態のSiC半導体装置の製造方法によれば、以下の効果を得ることもできる。
【0074】
(1)本実施形態では、分離構造が分離トレンチ40で形成されている。このため、トレンチ21を形成する工程と分離トレンチ40を形成する工程とを共通化でき、製造工程の簡略化を図ることができて、素子製造コストを軽減できる。また、素子分離領域Inでは、メインセル領域Rm側のベース層18およびコンタクト領域20と、センスセル領域Rs側のベース層18およびコンタクト領域20を貫通するように分離トレンチ40を形成する。このため、ベース層18およびコンタクト領域20を詳細にパターニングして形成しなくてもよい。この点においても、製造工程の簡略化を図ることができる。
【0075】
(2)また、分離トレンチ40の形成時に用いたマスクを用いて、分離トレンチ40の底部にp型不純物をイオン注入して分離ディープ層41を形成しており、マスクずれなく分離ディープ層41を形成できる。このため、分離トレンチ40と分離ディープ層41とを位置ずれなく形成でき、出来映えのバラツキを無くして歩留まりを向上させることが可能となる。また、分離ディープ層41の形成工程についても、第2ディープ層30の形成工程と共通化できるため、製造工程の簡略化を図ることができ、素子製造コストを低減できる。
【0076】
(他の実施形態)
本開示は、実施形態に準拠して記述されたが、本開示は当該実施形態や構造に限定されるものではないと理解される。本開示は、様々な変形例や均等範囲内の変形をも包含する。加えて、様々な組み合わせや形態、さらには、それらに一要素のみ、それ以上、あるいはそれ以下、を含む他の組み合わせや形態をも、本開示の範疇や思想範囲に入るものである。
【0077】
例えば、上記実施形態では、第1ディープ層15がメインセル領域Rmとセンスセル領域Rsの境界位置まで形成されていて、素子分離領域Inに形成された分離ディープ層41と接する構造とされている。これに対して、第1ディープ層15が分離トレンチ40の底部まで入り込んでいて分離ディープ層41と部分的に重なった構造とされていても良いし、第1ディープ層15が分離ディープ層41から離れていても良い。ただし、第1ディープ層15と分離ディープ層41との間が離れすぎると等電位線のせり上がりによる耐圧低下が懸念されるため、メインセル領域Rmのトレンチ21の間隔B1以下となるようにすると良い。
【0078】
また、上記実施形態では、複数の分離トレンチ40を2本形成する場合を例に挙げたが、3本以上としても良い。ただし、分離トレンチ40の本数が増える程、素子分離領域Inの面積が大型化することになり、チップ面積の増大に繋がるため、面積効率を考えると2本が良い。
【0079】
また、上記実施形態において、第2ディープ層30の底面を浅くし、JFET層14および第1ディープ層15内に位置するようにしてもよい。つまり、第2ディープ層30は、低濃度層13に達しないように形成されていてもよい。これによれば、第2ディープ層30から空乏層が伸び難くなるため、オン抵抗の低減を図ることができる。第2ディープ層30と分離ディープ層41を同時に形成する場合、分離ディープ層41の底面も浅く形成されることになるが、耐圧設計に基づいて第2ディープ層30および分離ディープ層41の底面の位置を調整すれば良い。
【0080】
また、上記実施形態において、JFET層14、第1ディープ層15、ベース層18やコンタクト領域20もしくはソース領域19についてイオン注入で形成した。これらのうちの一部もしくは全部がエピタキシャル成長によって形成したエピタキシャル層で構成されていてもよい。
【0081】
また、素子分離領域Inにおいて、ベース層18の表層部にソース領域19が形成されるようにしてもよいし、コンタクト領域20やソース領域19が形成されておらず、ベース層18の表面にゲート絶縁膜22が形成されるようにしても良い。
【0082】
また、上記実施形態では、JFET層14および第1ディープ層15の表面にベース層18を形成したが、これらの間に低濃度層13よりもn型不純物濃度が高くされたn型の電流分散層を形成しても良い。その場合、電流分散層に加えて、トレンチ21の両側にp型の連結層を形成し、これら電流分散層や連結層の上にベース層18が形成されるようにしても良い。この場合、連結層を通じて第1ディープ層15とベース層18とが連結される構造になる。また、低濃度層13、JFET層14、および電流分散層が繋がり、これらによってドリフト層17が構成されることになる。このような構造とする場合も、第2ディープ層30や分離ディープ層41の深さについては、第1ディープ層15より深くまで形成されていても良いし、第1ディープ層15の厚み内となる深さで形成されていても良い。さらに、外周領域2にもJFET層14を形成したが、JFET層14を形成せずに低濃度層13だけとされていても良い。
【0083】
さらに、上記実施形態において、分離トレンチ40の深さは、トレンチ21と異なっていてもよい。また、分離トレンチ40について、トレンチ21を形成する工程と別の工程で形成してもよい。分離ディープ層41についても、第2ディープ層30を形成する工程と別の工程で形成しても良い。
【0084】
また、上記実施形態では、セル領域1に備える半導体素子として、第1導電型をn型、第2導電型をp型としたnチャネルタイプのトレンチゲート構造の縦型MOSFETを例に挙げた。しかしながら、これは一例を挙げたに過ぎず、例えばnチャネルタイプに対して各構成要素の導電型を反転させたpチャネルタイプのトレンチゲート構造の縦型MOSFETとしてもよい。さらに、縦型MOSFETではなく、同様の構造の縦型IGBTとしてもよい。IGBTの場合、上記各実施形態における基板11の導電型をn型からp型に変更する以外は、上記実施形態で説明した縦型MOSFETと同様である。
【0085】
なお、結晶の方位を示す場合、本来ならば所望の数字の上にバー(-)を付すべきであるが、電子出願に基づく表現上の制限が存在するため、本明細書においては、所望の数字の前にバーを付してある。
【符号の説明】
【0086】
1…セル領域、2…外周領域、2a…ガードリング部、2b…繋ぎ部、11…基板
13…低濃度層(第1不純物領域)、14…JFET層、15…第1ディープ層
16…ガードリング、17…ドリフト層、18…ベース層、19…ソース領域
20…コンタクト領域、21…トレンチ、22…ゲート絶縁膜、23…ゲート電極
24…層間絶縁膜、25…上部電極(第1電極)、26…ゲート配線
27…保護膜、28…下部電極(第2電極)、30…第2ディープ層
40…分離トレンチ、41…分離ディープ層