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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024157944
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】粉体処理装置
(51)【国際特許分類】
   B02C 17/16 20060101AFI20241031BHJP
   B02C 17/18 20060101ALI20241031BHJP
   B01F 35/71 20220101ALI20241031BHJP
   B01F 35/75 20220101ALI20241031BHJP
   B01F 27/191 20220101ALI20241031BHJP
   B01F 27/50 20220101ALI20241031BHJP
   B01F 27/112 20220101ALI20241031BHJP
   B01J 2/10 20060101ALI20241031BHJP
【FI】
B02C17/16 Z
B02C17/18 E
B02C17/18 Z
B01F35/71
B01F35/75
B01F27/191
B01F27/50
B01F27/112
B01J2/10 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023072626
(22)【出願日】2023-04-26
(71)【出願人】
【識別番号】000174965
【氏名又は名称】日本コークス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】240000327
【弁護士】
【氏名又は名称】弁護士法人クレオ国際法律特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】椎名 啓
(72)【発明者】
【氏名】中野 要介
【テーマコード(参考)】
4D063
4G004
4G037
4G078
【Fターム(参考)】
4D063FF13
4D063GC05
4D063GC14
4D063GD04
4D063GD15
4D063GD16
4G004AA00
4G004BA00
4G004FA02
4G037AA03
4G037AA11
4G037EA03
4G078AA10
4G078AB20
4G078BA01
4G078BA09
4G078DA01
4G078EA05
4G078EA10
(57)【要約】
【課題】高速撹拌運転を行う場合であっても、原料の供給や処理物の排出を安定させることができる粉体処理装置を提供する。
【解決手段】容器内で粉体を処理する粉体処理装置1である。
そして、筒状の固定容器2と、固定容器内に周方向の回転流を形成させる撹拌具3と、固定容器の容器内外を連通させる粉体の供給口4と、固定容器の容器内外を連通させる排気口5と、固定容器の容器内外を連通させる処理物の排出口6とを備えている。
ここで、供給口の端部41は、固定容器の内周面21よりも内空側に突出している。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状の固定容器と、
前記固定容器内に周方向の回転流を形成させる回転流付与手段と、
前記固定容器の容器内外を連通させる粉体の供給口と、
前記固定容器の容器内外を連通させる排気口と、
前記固定容器の容器内外を連通させる処理物の排出口とを備え、
前記供給口の端部は、前記固定容器の内周面よりも内空側に突出していることを特徴とする粉体処理装置。
【請求項2】
前記回転流付与手段は、前記固定容器の中心軸に配置される回転軸と、前記回転軸から張り出される複数の撹拌羽根とを備えていることを特徴とする請求項1に記載の粉体処理装置。
【請求項3】
前記固定容器は、中心軸が横向きとなるように配置される円筒状であって、
前記供給口は、前記固定容器の一方の端部付近に設けられるとともに、
前記排出口は、前記固定容器の他方の端部付近に設けられることを特徴とする請求項1又は2に記載の粉体処理装置。
【請求項4】
前記排気口の端部も、前記固定容器の内周面よりも内空側に突出していることを特徴とする請求項1又は2に記載の粉体処理装置。
【請求項5】
前記供給口の端部の形状は、前記回転流の回転流方向の上流側が下流側以上の突出長さになる形状であることを特徴とする請求項1又は2に記載の粉体処理装置。
【請求項6】
前記供給口とは別に、端部が前記固定容器の内周面よりも内空側に突出して容器内外を連通させる第2供給口を備えたことを特徴とする請求項1又は2に記載の粉体処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器内で粉体を処理する粉体処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
粉体の混合、分散、粉砕、形状制御、表面改質、コーティングなどを行う場合に、高速撹拌型のミキサや複合化機等が用いられる場合が多い(特許文献1-3参照)。そして近年、粉体の微細化が進み、ナノサイズやミクロンサイズの粉体加工が求められている。
【0003】
ここで、微粒子を加工する場合には、より強いせん断力と衝撃力が必要となるので、上述したミキサ等においても高速撹拌運転が求められるようになる。また、工業生産(大量生産)を見据えた場合、生産性や効率性の観点からバッチ式の処理よりも連続式の処理が求められることになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4669253号公報
【特許文献2】特許第5492500号公報
【特許文献3】特開2022-154846号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、連続式処理において原料の供給や処理物の排出が安定しないと、不均一な処理となってしまい、製品の品質に大きな影響を与えてしまうという問題がある。例えば撹拌羽根による粉体撹拌機器では、遠心力によって粉体が容器内面へ押しつけられながら撹拌されているため、粉体が供給口や排気口を塞いでしまい、原料を安定して投入できなくなることがある。
【0006】
また、排気口も粉体で塞いでしまった場合、安定して処理物を排出させる連続式処理ができなくなる。特に、回転速度を上げた場合には、粉体に働く遠心力が更に強くなるため、粉体が供給口や排気口を逆流してせり上がってしまい、運転不能になることもある。
【0007】
そこで、本発明は、高速撹拌運転を行う場合であっても、原料の供給や処理物の排出を安定させることができる粉体処理装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するために、本発明の粉体処理装置は、容筒状の固定容器と、前記固定容器内に周方向の回転流を形成させる回転流付与手段と、前記固定容器の容器内外を連通させる粉体の供給口と、前記固定容器の容器内外を連通させる排気口と、前記固定容器の容器内外を連通させる処理物の排出口とを備え、前記供給口の端部は、前記固定容器の内周面よりも内空側に突出していることを特徴とする。
【0009】
ここで、前記回転流付与手段は、前記固定容器の中心軸に配置される回転軸と、前記回転軸から張り出される複数の撹拌羽根とを備えている構成とすることができる。また、前記固定容器は、中心軸が横向きとなるように配置される円筒状であって、前記供給口は、前記固定容器の一方の端部付近に設けられるとともに、前記排出口は、前記固定容器の他方の端部付近に設けられる構成とすることができる。
【0010】
さらに、前記排気口の端部も、前記固定容器の内周面よりも内空側に突出している構成とすることができる。また、前記供給口の端部の形状は、前記回転流の回転流方向の上流側が下流側以上の突出長さになる形状であることが好ましい。そして、前記供給口とは別に、端部が前記固定容器の内周面よりも内空側に突出して容器内外を連通させる第2供給口を備えた構成とすることもできる。
【発明の効果】
【0011】
このように構成された本発明の粉体処理装置は、固定容器の容器内外を連通させる粉体の供給口の端部が、固定容器の内周面よりも内空側に突出している。そして、この端部の突出によって、処理中の粉体が供給口を塞いだり、逆流してせり上がったりするのを防ぐことができる。
【0012】
このため、粉体の混合、分散、粉砕、形状制御、表面改質、コーティングなどの処理を行う場合に、粉体処理装置を高速撹拌運転させる場合であっても、原料の供給や処理物の排出を安定して行わせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施の形態の粉体処理装置の概略構成を説明するための縦断面図である。
図2】固定容器に対する供給口の取り付け状態を概略構成によって説明するための横断面図である。
図3】供給口の端部の形状を説明する図であって、(a)は回転流方向に対称な形状を例示した説明図、(b)は回転流方向に非対称な形状を例示した説明図である。
図4】供給口の端部を内空側に突出させる作用を説明する図であって、(a)は逆流が起きる場合の説明図、(b)は本実施の形態の粉体処理装置の効果を示す説明図である。
図5】本実施の形態の粉体処理装置の効果を確認するために行った実験の実験装置の概要を示した説明図である。
図6】本実施の形態の粉体処理装置の効果を確認するために行った実験結果を示した説明図である。
図7】実施例1の粉体処理装置の概略構成を説明するための縦断面図である。
図8】実施例2の供給口の取付位置を説明する図であって、(a)は3例を例示した説明図、(b)は別の3例を例示した説明図である。
図9】実施例2の供給口の端部形状を説明する図であって、(a)は取付位置が頂点位置の2例を例示した説明図、(b)は頂点位置から回転流方向に移動させた2例を例示した説明図である。
図10】実施例2の供給口の端部形状の条件を示した説明図である。
図11】実施例2の供給口の端部形状の別の条件を示した説明図である。
図12】実施例2の供給口の端部形状の別の形態を示した説明図である。
図13】実施例3の粉体処理装置の概略構成を説明するための縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
図1は、本発明の実施の形態の粉体処理装置1の概略構成を説明するための縦断面図である。また、図2は、粉体処理装置1の固定容器2に対する供給口4の取り付け状態を概略構成によって説明するための横断面図である。
【0015】
本実施の形態の粉体処理装置1は、筒状の固定容器2と、固定容器2内に周方向の回転流を形成させる回転流付与手段(3)と、固定容器2の容器内外を連通させる粉体の供給口4と、固定容器2の容器内外を連通させる排気口5と、固定容器2の容器内外を連通させる処理物の排出口6とを備えている。
【0016】
粉体処理装置1は、容器内で粉体を周方向に回転させて処理する装置であるため、固定容器としては、円筒形や円錐形などの断面が円形の容器が使用される。本実施の形態では、円筒形の固定容器2を例に説明する。この固定容器2は、中心軸が水平など横向きとなるように配置される、いわゆる横型の筒状容器である。
【0017】
そして、本実施の形態の粉体処理装置1の回転流付与手段は、撹拌羽根32を有する撹拌具3である。撹拌具3は、固定容器2の中心軸の位置に回転自在に設けられる回転軸31と、回転軸から張り出される複数の撹拌羽根32と、回転軸31を回転駆動させる電動機33と、回転軸31の軸受34とを備えている。電動機33による回転軸31の回転数は可変であり、自由に設定することができる。
【0018】
図1では、電動機33は固定容器2の左側の端部の容器外に配置されており、回転軸31は、固定容器2の右側の端部の容器外に配置された軸受34と電動機33とによって両端支持される構造になっている。回転自在に支持される回転軸31と固定容器2の端部との間は、軸シールガス(エアシール)などによってシールされている。
【0019】
撹拌羽根32は、図2に示すように、回転軸31の軸周りに複数枚が設けられるとともに、図1に示すように、回転軸31の延伸方向(水平方向)に間隔を置いて複数箇所に設けられる。そして、撹拌具3を回転駆動させると、固定容器2内に投入された粉体は周方向に回転するとともに、電動機33側から軸受34側に向けて(図1では固定容器2の左端から右端に向けて)、横方向に移動をすることになる。
【0020】
要するに図1の固定容器2内では、左端が横方向移動の上流側となり、右端が横方向移動の下流側となる。そこで、横方向移動の上流側の固定容器2の端部付近には供給口4が設けられ、横方向移動の下流側の固定容器2の端部付近には排出口6が設けられる。これにより、供給口4から排出口6に向かって粉体を流しながら、回転する撹拌羽根32によって撹拌混合などを行う連続式の処理がおこなえるようになる。
【0021】
本実施の形態の粉体処理装置1では、図2に示すように、供給口4となる円筒状部材は、固定容器2の周方向の頂点位置に取り付けられる。一方、排出口6は、例えば固定容器2の周方向の底辺位置に取り付けられる。
【0022】
さらに、横方向移動の下流側の固定容器2の端部付近には、排気口5が設けられる。排気口5は、例えば排出口6と対峙する固定容器2の周方向の頂点位置に取り付けられる。排気口5の容器外側の端部には、フィルタ部52を設け、排出ガスに同伴する粉を捕集させる。
【0023】
また、固定容器2の内空には、内周面21よりも内空側(中心軸側)に突出させた堰板7を設けることができる。固定容器2の内空を堰板7で仕切り、横方向に複数の区画を設けることで、処理物のショートパスを防止したり、処理物の滞留時間をコントロールしたりすることができるようになる。
【0024】
さらに、横方向に隣接する撹拌羽根32間に堰板7が介在されることによって、処理物に付与されるせん断力を増加させることができる。例えば、粒子の球形化や複合化を行う場合、より強いせん断力が求められる。せん断力は回転速度に比例し、距離に反比例することから、より強いせん断力を与えるために、撹拌羽根32間に堰板7を介在させて隙間を狭くすることで、せん断力を増加させることができる。さらに、撹拌羽根32と堰板7との間隔を自由に調整できる構造にすることで、処理物(粉体)に与えるせん断力の調整幅がより広くなり、きめ細やかなコントロールができるようになる。
【0025】
一方、高速撹拌運転の処理を続けると、処理物の発熱に冷却が追いつかず、処理物が高温になりやすい。このよう課題が想定される場合は、固定容器2の壁内部や外周に冷媒を流すことが可能な構造にしておき、固定容器2の内周面21という広い伝熱面積を利用して、処理物の昇温を抑制することができる。
【0026】
さらに、固定容器2の周壁に沿って流した冷媒を堰板7にも流したり、周壁の冷熱を堰板7に伝達させたりすることで、より効率的に容器内部の処理物を冷却することができるようになる。
【0027】
そして、本実施の形態の粉体処理装置1では、図1,2に示すように、少なくとも供給口4の固定容器2の内空側の端部41が、固定容器2の内周面21よりも内空側(中心軸側)に突出していることに特徴がある。すなわち、特許文献1-3などに開示されている従来の供給口の取り付け方法では、容器の内周面より突出する箇所がないようにして、内周面を面一に形成することが一般的であった。
【0028】
供給口4の端部41の突出長さや突出形状については、様々な選択が可能であり、後で詳細な説明を行う。また、排気口5の端部51についても、固定容器2の内周面21よりも内空側に突出させることができる。この場合は、処理する粉体の性質に合わせて、それぞれの端部41,51の突出長さを設定することになるが、詳細については後述する。
【0029】
図3は、供給口4の端部41の形状を説明する図である。固定容器2の内空側に突出させる供給口4の端部41の形状については、様々な断面形状を選択することができる。図3(a)は、固定容器2内の周方向の回転流の流れる方向を示す回転流方向R(撹拌方向)に対称な形状を例示した説明図である。
【0030】
図3(a)には、上から円形、楕円形、菱形、正方形、正六角形の断面を例示した。ここに例示した端部41の断面形状に限らず、長方形など回転流方向Rに対称な様々な断面形状を選択することができる。
【0031】
一方、図3(b)は、回転流方向Rに非対称な形状を例示した説明図である。上から回転流方向Rの上流側が頂点となる正三角形、回転流方向Rの上流側が底辺となる正三角形、回転流方向Rの下流側が底辺となる馬蹄形、回転流方向Rの上流側が底辺となる馬蹄形の断面を例示した。ここに例示した端部41の断面形状は、回転流方向Rには非対称な形状であるが、回転軸31の延伸方向(図3の上下方向)には対称な形状となっている。
【0032】
固定容器2の内空側に突出させる端部41の形状は、粉体を高速で撹拌することを勘案すると、粉体の撹拌対流状態をむやみに乱すような形状は処理に影響を及ぼす可能性が高く、好ましくないと考えられる。そこで、端部41の形状については、回転軸31の延伸方向では対称となる形状が好ましいとし、更には丸や楕円などの曲面、菱形などの流れを乱さない形状がより好ましいものとする。
【0033】
次に、本実施の形態の粉体処理装置1の作用について説明する。
図4は、供給口4の端部41を内空側に突出させる作用を説明する図である。まず、図4(a)の模式図を参照しながら、従来の端部を突出させていない供給口の状況について説明する。
【0034】
高速撹拌による遠心力によって、処理物となる粉体は、容器内の外周部に粉体層を形成し、中心部に向かうほど粉体密度が希薄になるという状況が発生する。ここで、供給口が容器の内周面と面一になっていると、撹拌による遠心力によって、供給口の端部開口が粉体層によって塞がれ、供給口からの原料となる粉体の供給がしにくくなるという状況が発生する。さらには、粉体が供給口内を押し上げられ、逆流が起きることもある(図4(a)の一点鎖線箇所参照)。
【0035】
これに対して図4(b)は、本実施の形態の粉体処理装置1の固定容器2の内部状況を模式的に示している。この図に示すように、供給口4の端部41は、固定容器2の内周面21よりも内空側(中心軸側)に突出している。
【0036】
固定容器2の内周面21に沿って形成される粉体層よりも、供給口4の端部41を内空側へ突出させることで、供給口4への粉体の押し上げ作用が起きにくくなり、粉体を供給口4から安定して供給することができるようになる。
【0037】
また、こうした状況は、排気口側においても発生する。すなわち、排気口が容器の内周面と面一になっていると、粉体が排気口内に押し上げられて閉塞や逆流が起き、安定して連続した処理物の排出に支障をきたしたり、排気フィルタの粉詰まりになる周期が短くなったりという問題が生じる。
【0038】
これに対して排気口5の端部51を、固定容器2の内周面21に沿って形成される粉体層よりも内空側へ突出させることで、排気口5への粉体の押し上げ作用が起きにくくなり、安定して処理物を排出口6から排出させる連続式処理ができるようになる。また、フィルタ部52の粉詰まりになる周期も長期化されて、メンテナンスの負担が低減できるようになる。
【0039】
ところで固定容器2内では、粉体と気体が撹拌されているので、遠心力によって外周部の方が圧力が高く、中心軸側に向かうほど圧力が低くなるという状況になりやすいのではないかと考えられる。
【0040】
このため、供給口4の端部41を中心軸側へ突出させると、供給口4内の圧力が低下することになる。この結果、供給口4から固定容器2内へ気体や粉体を流し込みやすくなって、安定した原料の供給が行えるようになる。
【0041】
また、排気口5の端部51についても、固定容器2内へ突出させることで、排気口5内の圧力が下がり、容器外の大気圧と排気口5内の圧力との圧力差が小さくなるため、排気が弱まり、風量をコントロールすることができる。
【0042】
粉体処理装置1が連続式混合機の場合、粉体を連続的に固定容器2外へ押し出す必要があるため、撹拌羽根32の送り効果と戻し効果との組み合せによって、供給口4側から排出口6側に向かって、圧力が低くなるように設定されている。
【0043】
このため、排出口6側にある排気口5の端部51を、極端に固定容器2の中心軸側へ突出させると、供給側と排出側の圧力バランスが崩れ、粉体の供給に影響を及ぼすおそれがある。逆に、供給口4の端部41を極端に中心軸側へ突出させると、供給される粉体の量が大幅に増加するとともに、排気も強力になって、粉体のショートパスなどの不具合が発生するおそれがある。
【0044】
そこで、供給口4の端部41と排気口5の端部51の突出長さは、粉体の種類や処理量や撹拌具3の回転速度などに応じて、自在に調整できるような機構としておくことが好ましい。
【0045】
なお、排出口6については、端部を固定容器2の内空側へ突出させると、処理物の排出性に影響を与えるおそれがあるため、突出はさせずに固定容器2の内周面21と面一になるようにする。
【0046】
図5は、本実施の形態の粉体処理装置1の効果を確認するために行った実験の実験装置の概要を示した説明図である。
【0047】
図5は、供給口4(または排気口5)の形状及び取付位置と、端部41(51)の突出長さdを説明する図である。供給口4(排気口5)の端部41(51)の底面は、平坦に形成されている。また、供給口4及び排気口5は、内径40mmの円筒形で、固定容器2の周方向の頂点位置に配置されている。
【0048】
実験条件は、撹拌具3の回転速度を60m/sに設定し、粉体の供給量は12.6kg/hrとし、軸シールガスの供給量は6L/minとした。また、実験に使用した原料は、ゆるみ見掛比重が約0.6g/mL、固め見掛比重が約1.1g/mL、動的見掛比重が約0.9g/mL、粒度分布(メジアン)が約3ミクロンの粉体である。
【0049】
また、実験に使用した粉体処理装置1には、図7に示したように、供給口4の容器外の端部にもフィルタ部42を設けるとともに、定量供給機43によって、原料となる粉体を供給口4の途中から投入するようにした。
【0050】
そして、実験中は、供給口4の原料投入口より上方の風速(下向き)を計測するとともに、実験ケースによっては、供給口4や排気口5の閉塞状況を確認した。図6に、実験結果を示した。実験は、供給口4の端部41の突出長さdを0mm、10mm、20mm、30mmと変更するとともに、排気口5の端部51の突出長さdを0mm、10mm、20mmと変更した場合の組み合わせの各ケースについて行った。
【0051】
供給口4の風速については、実験した12ケースのすべてで計測を行ったが、供給口4の閉塞状況については、排気口5の突出長さdが0mmの全ケース、排気口5の突出長さdが10mmで供給口4の突出長さdを10mmと20mmにした2ケース、排気口5の突出長さdが20mmで供給口4の突出長さdを10mmにした1ケースについて、観察を行った。
【0052】
実験結果から、供給口4及び排気口5の両方の端部41,51を突出させないケースでは、供給口4において、粉体による閉塞が発生した。一方、供給口4の端部41のみを10mm以上突出させた3ケースでは、供給口4における粉体の閉塞は起きなかった。これにより、供給口4の端部41を突出させる効果は確認できた。
【0053】
さらに、供給口4の端部41を10mm以上突出させたケースであっても、排気口5の突出長さdが供給口4の突出長さdと同等以上になると、供給口4において粉体の閉塞が起きた。この結果から、実験に用いた物性値の原料(粉体)については、排気口5の端部51も突出させる場合は、供給口4の端部41の突出長さd未満にする必要があることがわかる。
【0054】
また、供給口4の突出長さdを排気口5の突出長さdよりも長くした場合、供給口4の風速が上昇していることから、気体が固定容器2内に吸い込まれる力が強くなると言える。すなわち、供給口4からの供給量を増やす方向の調整ができると言える。
【0055】
一方で、例えばかさ密度の小さい粉体やフラッシング(噴流性)を起こすような粉体を処理するような場合には、固定容器2内に吸い込まれる力が強くなりすぎると、ショートパス等を起こして充分な処理がされないまま排出されてしまうため、供給口4の突出長さdを排気口5の突出長さdよりも短く設定する場合もある。
【0056】
さらに、排気口5を突出させたすべてのケースにおいて、排気口5内及びフィルタ部52に侵入する粉の量が、明らかに少なくなっていることが観察できた。この結果から、排気口5の端部51を内空側に突出させることで、フィルタ部52の粉詰まりになる周期も長期化できるようになると言える。
【0057】
ここで、実験における固定容器2の内部の粉体滞留分について考察する。撹拌運転時に粉体層(図4(a)参照)の厚みが円筒状に均一に分布していると仮定して、実験中に計量した固定容器2内部の粉体の滞留質量から計算すると、粉体層の厚みは次のように算定できる。処理物を動的見掛比重で計算した場合は粉体層の厚みは約2.1mmとなり、ゆるみ見掛比重で計算した場合は粉体層の厚みは約3.1mmとなり、固め見掛比重で計算した場合は粉体層の厚みは約1.6mmとなった。
【0058】
実際の撹拌時は、撹拌羽根32の位置や送り効果と戻し効果の組み合せなどによって、固定容器2の横方向で粉体層の厚みに偏り(分布)が発生している。また、固定容器2の周方向においても、粉体層の明確な境界が現れるわけではない。これらの点を考慮しても、今回の実験においては10mm以上の突出長さdになれば、高濃度の粉体層を端部41,51が充分に突き抜けている可能性が高いと言える。そして、図6に示した実験結果からも、端部41,51を固定容器2の内周面21よりも内空側に突出させた効果が、風速ならびに供給口4の閉塞解消という結果に現れていると考えられる。
【0059】
このように構成された本実施の形態の粉体処理装置1は、固定容器2の容器内外を連通させる粉体の供給口4の端部41や排気口5の端部51が、固定容器2の内周面21よりも内空側に突出している。そして、この端部41,51の突出によって、処理中の粉体が供給口4や排気口5を塞いだり、逆流してせり上がったりするのを防ぐことができる。
【0060】
このため、粉体の混合、分散、粉砕、形状制御、表面改質、コーティングなどを行う場合に、粉体処理装置1を高速撹拌運転させる場合であっても、原料の供給や処理物の排出を安定かつ連続して行わせることができる。
【実施例0061】
以下、前記した実施の形態の粉体処理装置1とは別の形態の粉体処理装置1Aについて、図7を参照しながら説明する。なお、前記実施の形態で説明した内容と同一乃至均等な部分の説明については、同一用語又は同一符号を付して説明する。
【0062】
本実施例1で説明する粉体処理装置1Aは、定量供給機43から連続して供給される粉体などの原料の他に、添加剤などを固定容器2の内部に供給するための第2供給口8を備えている。
【0063】
第2供給口8は、例えば供給口4よりも固定容器2の横方向移動の下流側に設けられる。図7では、供給口4と排気口5とのほぼ中間に、第2供給口8が設けられた構成を例示しているが、これに限定されるものではない。第2供給口8を設ける固定容器2の横方向位置については、図7よりも供給口4側(横方向移動の上流側)又は排気口5側(横方向移動の下流側)であってもよい。また、供給口4と排気口5との間に、複数の第2供給口8を設けることもできる。
【0064】
第2供給口8からは、粉体以外にも、例えば添加剤の様な液体を供給することもできる。また、第2供給口8から供給する材料の種類に応じて、第2供給口8の横方向の取付位置を決めたり、第2供給口8の取付数を決めたりすることもできる。
【0065】
そして、本実施例1の粉体処理装置1Aでは、第2供給口8の固定容器2の内空側の端部81が、固定容器2の内周面21よりも内空側に突出していることに特徴がある。供給口4と同様に第2供給口8の端部81を突出させることで、粉体を供給する場合には、上述したのと同様の効果が得られる。また、第2供給口8から液体を供給する場合においても、第2供給口8の内部で粉体の滞留が起きにくくなっているため、液体の添加であっても安定して行えるようになる。
【0066】
なお、他の構成及び作用効果については、前記実施の形態又は他の実施例と略同様であるので説明を省略する。
【実施例0067】
以下、前記した実施の形態又は実施例1の粉体処理装置1,1Aにおける、供給口4(排気口5、第2供給口8)の取付位置及び端部形状について、図8図12を参照しながら説明する。なお、前記実施の形態又は実施例1で説明した内容と同一乃至均等な部分の説明については、同一用語又は同一符号を付して説明する。
【0068】
前記実施の形態及び実施例1では、主に供給口4を固定容器2の周方向の頂点位置に取り付ける形態を例に説明してきた。しかしながらこの供給口4(排気口5、第2供給口8)の取付位置は、これに限定されるものではなく、原料の供給方法や排気方法に合わせて様々な位置に設定することができる。
【0069】
図8は、供給口4(排気口5、第2供給口8)の取付位置を説明する図である。図8(a)に例示した3例は、左端のAパターンが固定容器2の周方向の頂点位置で、中央のBパターンが頂点位置から回転流方向Rに45°程度ずらした取付位置で、右端のCパターンが固定容器2の接点位置まで回転流方向Rにずらした取付位置を示している。
【0070】
一方、図8(b)に示した別の3例は、左端のDパターンが頂点位置から回転流方向Rと反対側に45°程度ずらした取付位置で、中央のEパターンが固定容器2の下半側に供給を行う場合の取付位置で、右端のFパターンが複数の供給口4を設けた場合の取付位置を示している。
【0071】
Fパターンで示したように、処理方法に応じて、周方向に対して複数の供給口4(排気口5、第2供給口8)を設置することができる。なお、複数の供給口4(排気口5、第2供給口8)を設置する場合は、粉体の撹拌状態に過大な影響を与えないように、横方向(固定容器2の中心軸の延伸方向)において重複しない位置にずらして配置するのが、より好ましい。
【0072】
パターンCやパターンEのように接線方向に供給する方法であれば、供給を容易にすることができる。特にフラッシング(噴流性)を起こす材料に対しては、これらのパターンが有効であるが、かさ密度が大きい材料では供給量が制限されることがあるため、例えばパターンCの位置の方が好ましい。例えば、供給口4(排気口5、第2供給口8)の固定容器2の周方向の取付位置は、頂点位置から回転流方向Rに90°の範囲内に設定することができる。
【0073】
図9は、実施例2の供給口4(排気口5、第2供給口8)の端部41の形状を説明する図である。図9(a)は、取付位置が頂点位置の供給口4の2例を例示した説明図である。
【0074】
供給口4の端部41の底面の形状は、左側のAパターンのように平坦であってもよいし、右側のBパターンのように円弧状などの形状で切り欠いたものであってもよい。図9(b)は、頂点位置から回転流方向Rに45°程度移動させた供給口4Aの2例を例示した説明図であり、左側のAパターンは底面形状が平坦であり、右側のBパターンは円弧状などの形状で切り欠いたものである。
【0075】
固定容器2の周方向の取付位置がいずれの供給口4,4Aであっても、端部41の底面形状を平坦にも切り欠いた形状にもできるが、切り欠く場合は、以下で説明する条件を満たす形態にすることが好ましい。
【0076】
図10は、実施例2の供給口4の端部形状の条件を示した説明図である。供給口4の端部41の底面形状は、回転流方向Rに対して上流側の突出長さの方が下流側の突出長さよりも垂直方向において同等(図10(a))もしくは長く(図10(b)、差d1)なるように切り欠くことが好ましい。供給口4の端部41の底面形状が、回転流方向Rに対して上流側の突出長さの方が下流側の突出長さよりも垂直方向において短く(図10(c)、差d2)なるように切り欠くと、端部41を突出させた効果が充分に得られないおそれがある。
【0077】
図11は、実施例2の供給口4Aの端部形状の条件を示した説明図である。頂点位置から回転流方向Rに45°程度移動させた供給口4Aの端部41の底面形状は、回転流方向Rに対して上流側の突出長さの方が下流側の突出長さよりも同等もしくは長くなるように切り欠くことが好ましい。図11(a)に示した供給口4Aは、回転流方向Rの上流側よりも下流側の方が垂直方向の突出長さは短くなっているが、法線方向で見れば内周面21からの寸法が同等(両方10mm)なので、所定の効果を発揮することができる。また、図11(b)に示した供給口4Aは、垂直方向と法線方向の両方において、回転流方向Rの上流側の突出長さの方が下流側の突出長さより長くなるため、所定の効果を発揮することができる。
【0078】
これらに対して、図11(c)に示した供給口4Aは、供給口4Aの端部41の底面形状が、垂直方向と法線方向の両方において、回転流方向Rに対して上流側の突出長さの方が下流側の突出長さよりも短くなるように切り欠かれているので、充分な閉塞抑制効果を発揮できない可能性がある。
【0079】
図12は、実施例2の供給口4Bの端部形状の別の形態を示した説明図である。供給口4Bの端部は、図示したような端部ノズル44のように、回転流方向Rに対して先端が接線方向に延伸されるように、曲げた形状とすることもできる。
【0080】
なお、他の構成及び作用効果については、前記実施の形態又は他の実施例と略同様であるので説明を省略する。
【実施例0081】
以下、前記した実施の形態及び実施例1,2の粉体処理装置1,1Aとは別の形態の実施例3の粉体処理装置1Bについて、図13を参照しながら説明する。なお、前記実施の形態又は実施例1,2で説明した内容と同一乃至均等な部分の説明については、同一用語又は同一符号を付して説明する。
【0082】
前記実施の形態及び実施例1で説明した粉体処理装置1,1Aは、固定容器2の周壁に対して排気口5が取り付けられていた。これに対して本実施例3で説明する粉体処理装置1Bは、排気口9が、固定容器2Bの後端壁22に設けられている。
【0083】
すなわち、排気口詰まりの対策として、固定容器2Bの後端壁22の中心軸付近から排気する構成にしてもよい。後端壁22の中央から延伸された排気口9の容器外の端部には、フィルタ部91が設けられる。
【0084】
このような排気口9の取付位置であれば、粉体層による閉塞やフィルタ部91の粉詰まりの短周期化は起きないので、端部を突出させる必要はない。ただし、この場合は、回転軸31が片持ち支持構造となる。
【0085】
なお、他の構成及び作用効果については、前記実施の形態又は他の実施例と略同様であるので説明を省略する。
【0086】
以上、図面を参照して、本発明の実施の形態及び実施例を詳述してきたが、具体的な構成は、この実施の形態又は実施例1-3に限らず、本発明の要旨を逸脱しない程度の設計的変更は、本発明に含まれる。
【0087】
例えば、前記実施の形態又は実施例1-3では、円筒形で横型の固定容器2,2Bに対して回転流付与手段として撹拌具3が配置された粉体処理装置1,1A,1Bについて説明したが、これに限定されるものではない。
【0088】
固定容器は、横型の円錐形であってもよいし、中心軸が鉛直など縦向きになる縦型の円筒形又は円錐形であってもよい。また、回転流付与手段としては、気流式や遠心刃によって容器内に回転流を起こさせる機器などであってもよい。
【符号の説明】
【0089】
1,1A :粉体処理装置
2 :固定容器
21 :内周面
3 :撹拌具(回転流付与手段)
31 :回転軸
32 :撹拌羽根
4,4A,4B:供給口
41 :端部
5 :排気口
51 :端部
6 :排出口
8 :第2供給口
81 :端部
1B :粉体処理装置
2B :固定容器
9 :排気口
R :回転流方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
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図10
図11
図12
図13