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  • 特開-液圧発生装置 図1
  • 特開-液圧発生装置 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024157946
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】液圧発生装置
(51)【国際特許分類】
   B60T 13/138 20060101AFI20241031BHJP
   B60T 17/08 20060101ALI20241031BHJP
   H02K 7/14 20060101ALI20241031BHJP
【FI】
B60T13/138 A
B60T17/08
H02K7/14 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023072630
(22)【出願日】2023-04-26
(71)【出願人】
【識別番号】301065892
【氏名又は名称】株式会社アドヴィックス
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】石川 龍也
【テーマコード(参考)】
3D048
3D049
5H607
【Fターム(参考)】
3D048BB59
3D048CC17
3D048DD02
3D048HH18
3D048HH53
3D048HH66
3D049BB39
3D049CC02
3D049CC07
3D049HH41
3D049HH42
3D049HH47
5H607AA12
5H607BB01
5H607BB14
5H607CC03
5H607CC05
5H607DD03
5H607EE33
5H607EE36
5H607EE52
5H607FF06
(57)【要約】      (修正有)
【課題】電気モータを加圧源にした液圧発生装置において、軸方向の寸法を短縮すること。
【解決手段】液圧発生装置PSは、第1回転動力Tmを出力する電気モータMT、前記第1回転動力Tmを減速して、第2回転動力Tnを出力する遊星歯車機構UH、及び、前記第2回転動力Tnを直線動力Fnに変換する変換機構GHにて構成され、シリンダCCに挿入されたピストンを前記直線動力によって移動することで前記シリンダCCの液圧を調整する。液圧発生装置PSは、前記電気モータMT、及び、前記遊星歯車機構UHを保持するハウジングHGの内部を、前記電気モータMTを収納する第1室Raと前記遊星歯車機構UHを収納する第2室Rbとに分離する仕切り板SUを備える。そして、前記仕切り板SUは前記遊星歯車機構UHの内歯車Guに固定され、前記内歯車Guは前記ハウジングHGに固定される。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1回転動力を出力する電気モータ、前記第1回転動力を減速して、第2回転動力を出力する遊星歯車機構、及び、前記第2回転動力を直線動力に変換する変換機構にて構成され、シリンダに挿入されたピストンを前記直線動力によって移動することで前記シリンダの液圧を調整する液圧発生装置であって、
前記電気モータ、及び、前記遊星歯車機構を保持するハウジングの内部を、前記電気モータを収納する第1室と前記遊星歯車機構を収納する第2室とに分離する仕切り板を備え、
前記仕切り板は前記遊星歯車機構の内歯車に固定され、前記内歯車は前記ハウジングに固定される、液圧発生装置。
【請求項2】
請求項1に記載される液圧発生装置であって、
前記電気モータのシャフトの回転角を、磁界の変化に基づいて検出する回転角センサを備え、
前記仕切り板は非磁性特性を有し、
前記回転角センサは、前記第1室において、前記仕切り板の近傍に配置される、液圧発生装置。
【請求項3】
請求項2に記載される液圧発生装置において、
前記仕切り板、及び、前記内歯車は、樹脂にて一体成形される、液圧発生装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、液圧発生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、自動車のためのブレーキシステム10を動作させる方法であって、第1のブレーキ回路Iはポンプ50によって選択的に供給され、第2のブレーキ回路IIはリニアアクチュエータ40によって選択的に作動されることが記載されている。例えば、上記のリニアアクチュエータ(液圧発生装置)として、特許文献2に記載されるような装置が利用される。該装置では、電気モータの回転動力が遊星歯車機構により減速され、更に、ボールねじ機構により直線動力に変換されることで、液圧が発生される。特許文献2の装置では、電気モータを収納する空間と、遊星歯車機構を収納する空間とが分けられている。このような液圧発生装置では、軸方向の寸法短縮が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2023-0001906号公報
【特許文献2】米国特許出願公開第2022/0234560号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、電気モータを加圧源にした液圧発生装置において、軸方向の寸法が短縮され得るものを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る液圧発生装置(PS)は、第1回転動力(Tm)を出力する電気モータ(MT)、前記第1回転動力(Tm)を減速して、第2回転動力(Tn)を出力する遊星歯車機構(UH)、及び、前記第2回転動力(Tn)を直線動力(Fn)に変換する変換機構(GH)にて構成され、シリンダ(CC)に挿入されたピストン(NC)を前記直線動力(Fn)によって移動することで前記シリンダ(CC)の液圧(Pc)を調整する。
【0006】
本発明に係る液圧発生装置(PS)は、前記電気モータ(MT)、及び、前記遊星歯車機構(UH)を保持するハウジング(HG)の内部を、前記電気モータ(MT)を収納する第1室(Ra)と前記遊星歯車機構(UH)を収納する第2室(Rb)とに分離する仕切り板(SU)を備える。そして、前記仕切り板(SU)は前記遊星歯車機構(UH)の内歯車(Gu)に固定され、前記内歯車(Gu)は前記ハウジング(HG)に固定される。
【0007】
液圧発生装置PSには、潤滑剤が電気モータMT等に付着しないよう、仕切り板SUが設けられる。上記構成によれば、仕切り板SUが、内歯車Guを介して、ハウジングHGに固定されるので、ハウジングHGにおいて、仕切り板SUを固定するスペースが不要になる。このため、軸方向Hjの寸法が短縮される。
【0008】
本発明に係る液圧発生装置(PS)は、前記電気モータ(MT)のシャフト(SM)の回転角(Ka)を、磁界の変化に基づいて検出する回転角センサ(KA)を備える。そして、前記仕切り板(SU)はし、前記回転角センサ(KA)は、前記第1室(Ra)において、前記仕切り板(SU)の近傍に配置される。例えば、前記仕切り板(SU)、及び、前記内歯車(Gu)は、樹脂にて一体成形される。
【0009】
液圧発生装置PSには、電気モータMTを駆動するために、電気モータMTのシャフトSMの回転角Kaを検出するよう、回転角センサKAが設けられる。ここで、回転角センサKAは、磁界の変化に基づいて、回転角Kaを検出する。回転角センサKAは、電気モータMT、及び、回転角センサKAの組付性、及び、配線Lm、Lsの引き回し性が向上されるよう、第1室Raの内部で、仕切り板SUの近傍に配置される。回転角センサKAの検出磁界に影響が及ばないよう、仕切り板SUには、非磁性特性を有する材料が採用される。上記構成によれば、回転角センサKAを仕切り板SUに近付けれるので、軸方向Hjの寸法が短縮される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】制動制御装置SCの全体構成を説明するための概略図である。
図2】液圧発生ユニットPSの実施形態を説明するための部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<構成部材等の記号、及び、記号末尾の添字>
以下の説明において、「CW」等の如く、同一記号を付された構成部材、演算処理、信号、特性、及び、値は、同一機能のものである。各車輪に係る記号末尾に付された添字「f」、「r」は、それが前後輪の何れの系統に関するものであるかを示す包括記号である。例えば、各車輪に設けられたホイールシリンダCWにおいて、「前輪ホイールシリンダCWf、後輪ホイールシリンダCWr」と表記される。更に、記号末尾の添字「f」、「r」は省略され得る。添字「f」、「r」が省略された場合には、各記号はその総称を表す。例えば、「CW」は、車両の前後車輪に設けられたホイールシリンダの総称である。また、総称としての「CW」は、「CW(=CWf、CWr)」とも表記される。
【0012】
第1制動ユニットSAの第1アクチュエータYA、第2制動ユニットSBの第2アクチュエータYB、及び、ホイールシリンダCWは、流体路(連絡路HS)にて接続される。更に、第1、第2アクチュエータYA、YBでは、各種の構成要素(PS等)が流体路にて接続される。ここで、「流体路」は、制動液BF(作動流体)を移動するための経路であり、配管、アクチュエータ内の流路、ホース等が該当する。以下の説明で、連絡路HS、リザーバ路HR、入力路HN、サーボ路HU、補給路HH等は流体路である。
【0013】
<車両の制動制御装置SC>
図1の概略図を参照して、液圧発生ユニットPSを含む制動制御装置SCの全体構成について説明する。例えば、制動制御装置SCは、走行用の電気モータを備えたハイブリッド車両、又は、電気自動車に適用される。
【0014】
車両には、回生装置KGが備えられる。回生装置KGは、エネルギ回生用のジェネレータGN(「電気モータ/ジェネレータ」、或いは、「回生ジェネレータ」ともいう)、回生装置KG用の制御ユニットEG(「回生コントローラ」ともいう)、及び、回生用蓄電池(非図示)にて構成される。回生ジェネレータGNは、走行用の電気モータでもある。回生制動では、電気モータ/ジェネレータGNが発電機として作動し、発電された電力が、回生コントローラEGを介して、回生用蓄電池に蓄えられる。このとき、車輪には回生制動力Fgが作用する。即ち、回生装置KGは、回生制動力Fgを発生することができる。例えば、回生装置KGは前輪WHfに備えられ、前輪WHfに回生制動力Fgが発生される。
【0015】
車両の前後車輪WHf、WHrには、制動装置SX(=SXf、SXr)が備えられる。制動装置SXは、ブレーキキャリパ、摩擦部材(例えば、ブレーキパッド)、及び、回転部材KT(例えば、ブレーキディスク)にて構成される。ブレーキキャリパ(非図示)には、ホイールシリンダCW(=CWf、CWr)が設けられる。ホイールシリンダCW内の液圧Pw(「ホイール圧」という)によって、摩擦部材(非図示)が、各車輪WHに固定された回転部材KT(=KTf、KTr)に押し付けられることにより、車輪WHには制動トルクTbが付与される。その結果、車輪WHでは液圧制動力Fpが発生される。
【0016】
車両には、制動操作部材BP、及び、各種センサ(SP等)が備えられる。制動操作部材BP(例えば、ブレーキペダル)は、運転者が車両を減速するための操作部材である。車両には、制動操作部材BPの操作変位Spを検出する操作変位センサSPが設けられる。操作変位Spは、制動操作部材BPの操作量を表示する状態量(状態変数)の1つであり、ブレーキバイワイヤ型の制動制御装置SCにおいては、運転者の制動意志を表す信号(即ち、制動指示)である。操作変位センサSPの他に、制動操作量を表す他の状態量として、入力室Rn(後述)の液圧Pn(「入力圧」という)が採用される。入力圧Pnは、入力圧センサPNによって検出される。操作変位Sp、入力圧Pn等が総称して、「制動操作量Ba」と称呼される。また、操作変位センサSP、入力圧センサPN等の制動操作量Baを検出するセンサが、「制動操作量センサBA」と称呼される。
【0017】
車両には、アンチロックブレーキ制御、横滑り防止制御等の各車輪WHのホイール圧Pwを個別に制御する制動制御のために、各種センサが備えられる。具体的には、各車輪WHには、その回転速度Vw(「車輪速度」という)を検出する車輪速度センサVWが備えられる。また、操舵操作部材(例えば、ステアリングホイール)の操舵量Sa(例えば、操作角)を検出する操舵量センサ、車両のヨーレイトYrを検出するヨーレイトセンサ、車両の前後加速度Gx(「減速度」ともいう)を検出する前後加速度センサ、及び、車両の横加速度Gyを検出する横加速度センサが備えられる(以上、非図示)。
【0018】
車両には、制動制御装置SCが備えられる。制動制御装置SCでは、2系統の制動系統として、所謂、前後型(「II型」ともいう)のものが採用される。制動制御装置SCによって、各ホイールシリンダCWの実際のホイール圧Pwが調整される。
【0019】
制動制御装置SCは、2つの制動ユニットSA、SBにて構成される。第1制動ユニットSAは、第1アクチュエータYA、及び、第1コントローラEAにて構成される。第1アクチュエータYAは、第1コントローラEAによって制御される。第2制動ユニットSBは、第2アクチュエータYB、及び、第2コントローラEBにて構成される。第2アクチュエータYBは、第2コントローラEBによって制御される。ここで、第1、第2アクチュエータYA、YBは、「第1、第2流体ユニット」とも称呼され、第1、第2コントローラEA、EBは、「第1、第2制御ユニット」とも称呼される。
【0020】
第1制動ユニットSA(特に、第1コントローラEA)、及び、第2制動ユニットSB(特に、第2コントローラEB)は、通信バスBSに接続される。また、通信バスBSには、回生装置KG(特に、回生コントローラEG)が接続される。通信バスBSによって、複数のコントローラ(EA、EB、EG等)の間で信号伝達が行われる。つまり、複数のコントローラは、通信バスBSに信号(検出値、演算値、制御フラグ等)を送信することができるとともに、通信バスBSから該信号を受信することができる。
【0021】
<第1制動ユニットSA>
制動制御装置SCの第1制動ユニットSAについて説明する。第1制動ユニットSAは、制動操作部材BP(ブレーキペダル)の操作に応じて、前輪、後輪ホイールシリンダCWf、CWrの液圧Pwf、Pwr(前輪、後輪ホイール圧)を調整する。第1制動ユニットSAは、第1アクチュエータYA、及び、第1コントローラEAにて構成される。
【0022】
≪第1アクチュエータYA≫
第1アクチュエータYAは、アプライユニットAP、液圧発生ユニットPS、及び、入力ユニットNRにて構成される。
【0023】
[アプライユニットAP]
制動操作部材BPの操作に応じて、アプライユニットAPから供給圧Pmが出力される。アプライユニットAPは、シングル型のマスタシリンダCM、及び、マスタピストンNMにて構成される。
【0024】
シングル型マスタシリンダCMには、マスタピストンNMが挿入される。マスタシリンダCMの内部は、マスタピストンNMによって、3つの液圧室Rm、Ru、Rsに区画される。マスタ室Rmは、マスタシリンダCMの一方側底部、及び、マスタピストンNMによって区画される。更に、マスタシリンダCMの内部は、マスタピストンNMのつば部Tuによって、サーボ室Ruと反力室Rsとに仕切られる。つまり、マスタ室Rmとサーボ室Ruとは、つば部Tuを挟んで、相対するように配置される。ここで、マスタ室Rmの受圧面積rmとサーボ室Ruの受圧面積ruとは等しく設定される。
【0025】
非制動時には、マスタピストンNMは、最も後退した位置(即ち、マスタ室Rmの体積が最大になる位置)にある。該状態では、マスタシリンダCMのマスタ室Rmは、マスタリザーバRVに連通している。マスタリザーバRV(「大気圧リザーバ」ともいう)の内部に制動液BFが貯蔵される。制動操作部材BPが操作されると、マスタピストンNMが前進方向Da(マスタ室Rmの体積が減少する方向)に移動される。該移動により、マスタ室RmとマスタリザーバRVとの連通は遮断される。そして、マスタピストンNMが、更に、前進方向Daに移動されると、供給圧Pm(マスタ室Rmの内圧であり、「マスタ圧」ともいう)が「0(大気圧)」から増加される。これにより、マスタシリンダCMのマスタ室Rmから、供給圧Pmに加圧された制動液BFが出力(圧送)される。
【0026】
[液圧発生ユニットPS]
液圧発生ユニットPS(「液圧発生装置」ともいう)は、電気モータMTを動力源にして、前輪、後輪ホイール圧Pwf、Pwrを発生する。具体的には、液圧発生ユニットPSの吐出部AuとアプライユニットAPのサーボ室Ruとは、サーボ路HU(流体路)を介して接続される。また、液圧発生ユニットPSの吐出部Auと後輪ホイールシリンダCWrとは、後輪連絡路HSr(流体路)を介して接続される。更に、制動液BFが不足する場合に制動液BFが補給されるよう、液圧発生ユニットPSは、補給路HH(流体路)を介して、マスタリザーバRVに接続される。
【0027】
液圧発生ユニットPSの作動時(即ち、制動時)には、補給路HHが遮断される。これにより、液圧発生ユニットPSとマスタリザーバRVとは非連通状態にされる。前輪制動系統では、サーボ圧Pcがサーボ室Ruに供給されることにより、供給圧Pm(マスタ圧)が発生される。そして、供給圧Pmにより、前輪ホイールシリンダCWfの液圧Pwf(前輪ホイール圧)が発生される。一方、後輪制動系統では、サーボ圧Pcが、直接後輪ホイールシリンダCWrに供給されることにより、後輪ホイールシリンダCWrの液圧Pwr(後輪ホイール圧)が発生される。液圧発生ユニットPSには、サーボ圧Pcを検出するようサーボ圧センサPCが設けられる。液圧発生ユニットPSの詳細については後述する。
【0028】
[入力ユニットNR]
入力ユニットNRによって、回生協調制御が実現される。「回生協調制御」は、制動時に、車両が有する運動エネルギが効率良く電気エネルギに回収されるよう、液圧制動力Fp(ホイール圧Pwによる制動力)と回生制動力Fg(回生ジェネレータGNによる制動力)とを協働させるものである。回生協調制御では、制動操作部材BPは操作されるが、ホイール圧Pwが発生しない状態が生み出される。入力ユニットNRは、入力シリンダCN、入力ピストンNN、第1制御弁VA、第2制御弁VB、ストロークシミュレータSS、及び、入力圧センサPNにて構成される。
【0029】
入力シリンダCNは、マスタシリンダCMに固定される。入力シリンダCNには、入力ピストンNNが挿入される。入力ピストンNNは、制動操作部材BP(ブレーキペダル)の動きに連動するよう、クレビス(U字リンク)を介して、制動操作部材BPに機械的に接続される。入力ピストンNNの端面とマスタピストンNMの端面とは隙間Ks(「離間変位」ともいう)を有している。離間距離Ksがサーボ圧Pcによって調節されることで、回生協調制御が実現される。
【0030】
入力ユニットNRの入力室Rnは、入力路HN(流体路)を介して、アプライユニットAPの反力室Rsに接続される。入力路HNには、常閉型の第1制御弁VAが設けられる。入力路HNは、第1制御弁VAと反力室Rsとの間にて、リザーバ路HR(流体路)を介して、マスタリザーバRVに接続される。リザーバ路HRには、常開型の第2制御弁VBが設けられる。第1、第2制御弁VA、VBには、オン・オフ型の電磁弁が採用される。第1制御弁VAと反力室Rsとの間で、入力路HNにストロークシミュレータSS(単に、「シミュレータ」ともいう)が接続される。
【0031】
第1、第2制御弁VA、VBに電力供給(給電)が行われない場合には、第1制御弁VAは閉弁され、第2制御弁VBは開弁される。第1制御弁VAの閉弁により、入力室Rnは封止され、流体ロックされる。これにより、マスタピストンNMは、制動操作部材BPと一体で変位する。また、第2制御弁VBの開弁により、シミュレータSS、及び、反力室Rsは、マスタリザーバRVに連通される。
【0032】
第1、第2制御弁VA、VBに電力供給(給電)が行われる場合には、第1制御弁VAは開弁され、第2制御弁VBは閉弁される。これにより、マスタピストンNMは、制動操作部材BPとは別体で変位することが可能になる。このとき、入力室RnはストロークシミュレータSSに接続されるので、制動操作部材BPの操作力はシミュレータSSによって発生される。入力圧Pn(シミュレータSS内の液圧でもある)を検出するよう、入力路HNには、入力室Rnと第1制御弁VAとの間に、入力圧センサPNが設けられる。
【0033】
≪第1コントローラEA≫
第1コントローラEAによって、第1アクチュエータYAが制御される。第1コントローラEAは、マイクロプロセッサMP、及び、駆動回路DRにて構成される。第1コントローラEAは、各種コントローラ(EB、EG等)との間で信号(検出値、演算値、制御フラグ等)を共有できるよう、通信バスBSに接続される。
【0034】
第1コントローラEAには、操作変位Sp(操作変位センサSPの検出値)、入力圧Pn(入力圧センサPNの検出値)、サーボ圧Pc(サーボ圧センサPCの検出値)、モータ回転角Ka(回転角センサKAの検出値)等の各種信号が直接入力される。更に、第1コントローラEAには、供給圧Pm、限界回生制動力Fx等の各種信号が、通信バスBSから入力される。また、第1コントローラEAからは、目標回生制動力Fh(回生制動力Fgの目標値)が、通信バスBSに出力される。なお、回生コントローラEGでは、通信バスBSから取得される目標回生制動力Fh(目標値)に基づいて、回生制動力Fg(実際値)が制御される。
【0035】
第1コントローラEA(特に、マイクロプロセッサMP)には、調圧制御のアルゴリズムがプログラムされている。「調圧制御」は、ホイール圧Pw(=Pwf、Pwr)を調節するための制御であり、回生協調制御を含んでいる。調圧制御は、上記の各種信号(Sp、Pc等)に基づいて実行される。
【0036】
調圧制御のアルゴリズムに基づいて、駆動回路DRによって、電気モータMT、及び、各種電磁弁(VA等)が駆動される。駆動回路DRには、電気モータMTを駆動するよう、スイッチング素子(例えば、MOS-FET)にてHブリッジ回路(「インバータ回路」ともいう)が構成される。また、駆動回路DRには、各種電磁弁を駆動するよう、スイッチング素子が備えられる。加えて、駆動回路DRには、電気モータMTへの供給電流Im(「モータ電流」ともいう)を検出するモータ電流センサ(非図示)が含まれる。電気モータMTには、モータシャフトSMの位置Ka(回転角)を検出するよう、回転角センサKAが設けられる。
【0037】
第1コントローラEAでは、第1、第2制御弁VA、VBの駆動信号Va、Vb、及び、電気モータMTの駆動信号Mtが演算される。そして、各種の駆動信号(Mt等)に応じて、上記スイッチング素子が駆動される。具体的には、電磁弁の制御では、第1、第2制御弁VA、VBに給電されるように、駆動信号Va、Vbが決定される。これにより、第1制御弁VAが開弁され、第2制御弁VBが閉弁される。電気モータMTの制御では、操作変位Sp等に基づいて、目標圧Ptが演算される。「目標圧Pt」は、サーボ圧Pc(実際値)に対応する目標値である。そして、第1コントローラEAでは、目標圧Pt、及び、サーボ圧Pcに基づいて算出される駆動信号Mtに応じて、サーボ圧Pc(実際値)が目標圧Pt(目標値)に近付き、一致するように、電気モータMTが制御される。
【0038】
<第2制動ユニットSB>
第1制動ユニットSAとホイールシリンダCWとの間に、第2制動ユニットSBが設けられる。第2制動ユニットSBによって、アンチロックブレーキ制御、トラクション制御、横滑り防止制御等が実行される。
【0039】
前輪WHfに係る制動系統(即ち、前輪連絡路HSf)では、供給圧Pmが、マスタシリンダCMから第2制動ユニットSBに供給される。一方、後輪WHrに係る制動系統(即ち、後輪連絡路HSr)では、サーボ圧Pcが、液圧発生ユニットPSから第2制動ユニットSBに直接供給される。第2制動ユニットSBにて、供給圧Pm、及び、サーボ圧Pcが調整(増減)され、前輪、後輪ホイールシリンダCWf、CWrの液圧Pwf、Pwr(前輪、後輪ホイール圧)として出力される。第2制動ユニットSBは、第2アクチュエータYB、及び、第2コントローラEBにて構成される。
【0040】
第2アクチュエータYBは、連絡路HSにおいて、第1アクチュエータYAとホイールシリンダCWとの間に配置される。第2アクチュエータYBには、電気モータ、流体ポンプ、電磁弁、及び、供給圧センサが含まれる。供給圧センサ(非図示)によって、供給圧Pmが検出される。供給圧Pmは、第2コントローラEBに入力される。第2アクチュエータYBの構成は公知であるため、その説明は省略する。
【0041】
第2コントローラEBによって、第2アクチュエータYBが制御される。第2コントローラEBは、通信バスBSに接続される。従って、第1コントローラEAと第2コントローラEBとは、通信バスBSを介して信号を共有することができる。
【0042】
第2コントローラEBには、車輪速度Vw、操舵角Sa、ヨーレイトYr、前後加速度Gx、及び、横加速度Gyの各種信号が入力される。第2コントローラEBにて、車輪速度Vwに基づいて、車体速度Vxが演算される。第2コントローラEBでは、各種信号(Vw、Yr等)に基づいて、車輪ロックを抑制するアンチロックブレーキ制御、駆動車輪の空転を抑制するトラクション制御、及び、アンダステア・オーバステアを抑制して車両の方向安定性を向上する横滑り防止制御(所謂、ESC)等が実行される。これらの制御が実行されていることは、制御フラグ等により、通信バスBSを介して、第2制動ユニットSB(特に、第2コントローラEB)から第1制動ユニットSA(特に、第1コントローラEA)に伝達される。
【0043】
通常、回生協調制御が実行される場合には、第2アクチュエータYB(電気モータ、流体ポンプ、電磁弁等)の作動は停止されている。従って、第2制動ユニットSBからは、供給圧Pmが前輪ホイール圧Pwfとして、サーボ圧Pcが後輪ホイール圧Pwrとして、夫々出力される。
【0044】
<液圧発生ユニットPS>
図2の部分断面図を参照して、液圧発生ユニットPSの実施形態について説明する。液圧発生ユニットPS(「液圧発生装置」に相当)では、電気モータMTが加圧源(「動力源」ともいう)にされて、サーボ圧Pcが発生される。そして、サーボ圧Pcにより、ホイール圧Pw(=Pwf、Pwr)が調整される。
【0045】
≪構成部材の形状、運動に係る方向≫
先ず、液圧発生ユニットPSを構成する要素について、形状、運動等に係る方向について規定する。液圧発生ユニットPSでは、電気モータMT(特に、モータシャフトSM)の回転軸線Jm、回転部材BKの回転軸線Jk、制御ピストンNCの中心軸線Jn、及び、制御シリンダCCの中心軸線Jcは、一直線上に並んでいる。軸線Jm、Jk、Jn、Jcに沿った方向(即ち、平行な方向)が「軸方向Hj」と称呼される。これに対して、軸線Jm、Jk、Jn、Jcに垂直な方向が「径方向Hk」と称呼される。
【0046】
軸方向Hjに沿って運動可能な部材(NC、BD等)において、制御シリンダCCの底面Mbcに近付く方向が「前進方向Ha」と称呼される。これとは逆に、制御シリンダCCの底面Mbcから遠ざかる方向が「後退方向Hb」と称呼される。従って、制御ピストンNCが前進方向Haに移動されると制御室Rcの体積は減少され、その内圧Pc(サーボ圧)は増加される。これに対して、制御ピストンNCが後退方向Hbに移動されると制御室Rcの体積は増加され、サーボ圧Pcは減少される。
【0047】
電気モータMTの回転運動と直動部材BD(結果、制御ピストンNC)の直線運動との関係では、電気モータMTの正転方向Hsが、直動部材BDの前進方向Haに対応する。従って、電気モータMTの逆転方向Hgの回転運動は、直動部材BDの後退方向Hbの直線運動に対応する。つまり、電気モータMTが正転方向Hsに回転すると、直動部材BDは前進方向Haに移動される。これにより、制御室Rcの体積が減少され、サーボ圧Pcは増加される。これとは逆に、電気モータMTが逆転方向Hgに回転すると、直動部材BDは後退方向Hbに移動される。これにより、制御室Rcの体積が増加され、サーボ圧Pcは減少される。
【0048】
電気モータMTを正転方向Hsに回転させようとする電流Ims(「正転電流」ともいう)が供給されている場合の電気モータMTの回転方向は、電気モータMTから出力されるトルク(「正作動トルク」ともいう)と、サーボ圧Pcにより電気モータMTに入力されるトルク(「逆作動トルク」ともいう)との大小関係によって定まる。具体的には、正作動トルクが逆作動トルクよりも大きい場合には、電気モータMTは正転方向Hsに回転し、サーボ圧Pcは増加される。正作動トルクと逆作動トルクとが等しい場合には、電気モータMTは回転せず、サーボ圧Pcは維持される。逆作動トルクが正作動トルクよりも大きい場合には、電気モータMTは逆転方向Hgに回転し、サーボ圧Pcは減少される。なお、電気モータMTを逆転方向Hgに回転させようとする電流Img(「逆転電流」と称呼し、正転電流Imsとは逆向きの電流)が供給される場合には、電気モータMTは逆転方向Hgに回転するように駆動される。
【0049】
≪液圧発生ユニットPSの構成≫
液圧発生ユニットPSは、ハウジングHG、電気モータMT、回転角センサKA、遊星歯車機構UH、変換機構GH、及び、制御ピストンNCにて構成される。
【0050】
ハウジングHGによって、液圧発生ユニットPSを構成する各部材(MT、UH等)が保持される。ハウジングHGは、構成部材が組み付けられるよう、複数に分割されている。例えば、ハウジングHGは、シリンダハウジングHGc、及び、モータハウジングHGmに分割される。モータハウジングHGmが、シリンダハウジングHGcに組付けられ、ハウジングHGとして一体化される。つまり、ハウジングHGは、シリンダハウジングHGc、及び、モータハウジングHGmの総称である。換言すれば、シリンダハウジングHGc、及び、モータハウジングHGmは、ハウジングHGの一部である。
【0051】
更に、ハウジングHGは、第1コントローラEAと一体化されていてもよい。具体的には、第1コントローラEAは、マイクロプロセッサMP、及び、駆動回路DRが実装される制御基板と、それを収納するコントローラハウジング(非図示)とで構成される。そして、コントローラハウジングが、ハウジングHGに組付けられて一体化される。
【0052】
ハウジングHG(特に、シリンダハウジングHGc)には、制御シリンダCC(「シリンダ」に相当)が形成される。制御シリンダCCには、制御ピストンNC(「ピストン」に相当)が挿入される。そして、制御シリンダCCと制御ピストンNCとによって、制御室Rc(液圧室)が形成される。制御シリンダCC(特に、制御室Rc)には、吐出部Auが設けられる。吐出部Auには、サーボ路HU、及び、後輪連絡路HSrが接続される。即ち、制御室Rcは、サーボ室Ru、及び、後輪ホイールシリンダCWrに接続される。
【0053】
ハウジングHGの内部は、仕切り板SUによって、2つの空間に分離されている。2つの空間のうちの一方が第1収納室Ra(単に、「第1室」ともいう)である。第1室Raには、電気モータMTが収納される。2つの空間のうちの他方が第2収納室Rb(単に、「第2室」ともいう)である。第2室Rbには、遊星歯車機構UH、変換機構GH等が収納される。
【0054】
仕切り板SUは円盤形状を有している。その中心部には、モータシャフトSMが貫通できるよう貫通孔があけられている。例えば、仕切り板SUの貫通孔の周辺部は、第2室Rbから第1室Raに向けて折り曲げられている。仕切り板SUは貫通孔を持つ平板でもよい。しかし、貫通孔のまわりが折り曲げられることにより、潤滑剤侵入の防止効果(後述)が向上される。
【0055】
仕切り板SUは、遊星歯車機構UHの内歯車Gu(後述)に固定される。例えば、仕切り板SUは、ボルトによって、内歯車Guに取り付けられる。或いは、仕切り板SUは、リベット等の加締めによって、内歯車Gu取り付けられてもよい。
【0056】
更に、仕切り板SUと内歯車Guとは、一体で成形され得る。具体的には、仕切り板SUと内歯車Guとの一体成形品は、鋳造にて行われる。或いは、一体成形品は、インサート成形にて製造される。インサート成形では、金属製の内歯車Guに、仕切り板SUが射出成形されて、金属と樹脂とで一体成形される。更には、仕切り板SUと内歯車Guとが、樹脂にて一体成形されてもよい。何れにしても、仕切り板SUは、内歯車Guに一体成形にて固定される。
【0057】
遊星歯車機構UHは、内歯車GuがシリンダハウジングHGcに固定されている。従って、仕切り板SUは、内歯車Guを介して、シリンダハウジングHGcに固定される。最終的には、シリンダハウジングHGcは、モータハウジングHGmと組み合わされる。これにより、ハウジングHG(シリンダハウジングHGcとモータハウジングHGmとの組み合わせ)の内部は、仕切り板SUによって、2つの空間Ra、Rb(第1、第2収納室)に分けられる。
【0058】
液圧発生ユニットPSでは、電気モータMTの回転動力Tmが、遊星歯車機構UH、及び、変換機構GHによって、制御ピストンNCに伝達される。動力伝達部材である遊星歯車機構UH、変換機構GHには、潤滑により作動を円滑化し、摩耗を低減するよう、潤滑剤(例えば、グリス)が用いられる。該潤滑剤が飛散して、電気モータMT、及び、回転角センサKAを構成する部材に影響を及ぼさないよう、ハウジングHGの内部には、潤滑剤の飛散防止用に仕切り板SUが設けられる。
【0059】
潤滑剤が、電気モータMTの構成部材(コイルCL等)に付着すると短絡の可能性が生じ得る。また、回転角センサKAの構成部材(センサ基板Kb、センサディスクDs、センサ磁石Ms等)に付着すると、短絡だけでなく、潤滑剤に含まれる化学物質による劣化、検出精度の低下等が懸念される。液圧発生ユニットPSでは、仕切り板SUにより、第2室Rbから第1室Raへの潤滑剤の侵入が妨げられるので、電気モータMT、及び、回転角センサKAの構成部材が保護される。
【0060】
仕切り板SUが、ハウジングHGに対して、直接固定される構成では、その取付スペースが必要になる。しかしながら、液圧発生ユニットPSでは、仕切り板SUが内歯車Guに固定されることで、結果として、仕切り板SUがハウジングHGに固定される。これにより、ハウジングHGには、仕切り板SUの固定スペースが不要となるため、液圧発生ユニットPSの軸方向Hjの寸法が短縮され得る。
【0061】
電気モータMTは、サーボ圧Pc(制御シリンダCC内の液圧)を発生するための動力源(加圧源)である。ここで、「動力」は、液圧発生ユニットPSにおける可動部材(BK、BD等)を動かすために必要なエネルギのことである。例えば、動力は、物理量として、単位時間当りのエネルギ(「仕事率」ともいう)として規定される。電気モータMTから、回転動力Tm(「第1回転動力」ともいう)が出力される。電気モータMTの回転動力Tmは、電気モータMTの軸トルクに、電気モータMT(特に、モータシャフトSM)の回転速度を乗じたものである。なお、直動部材BD(後述)の直線動力Fnは、直動部材BDの推力(軸方向Hjに作用する力)に直動部材BDの直線速度(軸方向Hjの速度)を乗じたものである。
【0062】
電気モータMTとして、3相ブラシレスモータが採用される。電気モータMTは、モータハウジングHGm内(特に、第1室Ra内)に、回転可能な状態で、取り付けられる。電気モータMTには、モータコイルCL、モータシャフトSM、及び、回転角センサKAが含まれる。モータコイルCL(単に、「コイル(巻線)ともいう)は、モータハウジングHGm内に固定される。モータコイルCLは「固定子」とも称呼される。モータコイルCLには、モータ線Lmが接続される。モータ線Lmを介して、第1コントローラEA(特に、駆動回路DR)から電力が供給される。
【0063】
モータシャフトSM(単に、「シャフト」ともいう)は、モータハウジングHGm内に固定されたベアリングBBにより、モータハウジングHGm(つまり、モータコイルCL)に対して回転可能に固定される。電気モータMTのシャフトSMの外周には、モータ磁石Mm(永久磁石)が固定されている。例えば、モータ磁石Mmは、接着等によってモータシャフトSMに貼り付けられている。モータシャフトSMは「回転子」とも称呼される。
【0064】
3相ブラシレスモータMTでは、回転子SMの磁極位置(即ち、固定子CLに対する回転角)が検出されて、モータコイルCLに流される電流Im(モータ電流)が切り替えられる。ここで、モータ電流Imは、U相、V相、W相に流される電流の総称である。U相、V相、W相に係る3相のモータ電流Imは、モータシャフトSMの回転位置Ka(「回転角」ともいう)に基づいて切り替えられる。第1コントローラEAでは、回転角Kaに応じて、駆動回路DRのスイッチング素子が駆動される。これにより、モータコイルCLに流されるモータ電流Imが切り替えられ、電気モータMTが回転駆動される。そして、回転動力Tmが、電気モータMTから遊星歯車機構UHに出力される。
【0065】
3相の電流切替のために回転角Kaを検出するよう、電気モータMT(ブラシレスモータ)には回転角センサKAが設けられる。回転角センサKAの詳細については後述する。
【0066】
遊星歯車機構UHが減速機として採用される。遊星歯車機構UHにより、電気モータMTから出力された第1回転動力Tmが減速され、第2回転動力Tnが出力される。具体的には、遊星歯車機構UHでは、電気モータMTから入力される速度が減少されるとともに、電気モータMTから入力されるトルクが増加される。そして、第2回転動力Tnが、遊星歯車機構UHから変換機構GHに出力される(以上、吹出し部XUHを参照)。
【0067】
遊星歯車機構UHでは、太陽歯車Gtを中心として、複数の遊星歯車Gpが自転しながら公転する歯車機構である。遊星歯車機構UHは、太陽歯車Gt、遊星歯車Sp、内歯車Gu、及び、遊星キャリヤCaにて構成される。遊星歯車機構UHでは、遊星キャリヤCaにより、遊星歯車Gpが支持され、公転運動が取り出される。
【0068】
遊星歯車機構UHでは、太陽歯車Gt(「サンギヤ」ともいう)がモータシャフトSMに固定される。例えば、太陽歯車Gtは、モータシャフトSMと一体で成形される。或いは、圧入、スプライン嵌合等によって、太陽歯車GtとモータシャフトSMとが固定されてもよい。何れにしても、太陽歯車Gtは、モータシャフトSMと一体となって回転できるように、モータシャフトSMに接続される。
【0069】
内歯車Gu(「インナギヤ」ともいう)がシリンダハウジングHGcに固定される。例えば、内歯車GuはシリンダハウジングHGcに圧入されて固定される。或いは、内歯車Guは、ピンを介して、シリンダハウジングHGcに固定される。何れにしても、内歯車Guは、回転軸線Jkまわりに回転しないようにハウジングHGに取付けられる。
【0070】
遊星キャリヤCaが、ベアリングBBを介して、シリンダハウジングHGcに、回転可能な状態で支持される。ここで、遊星キャリヤCaは、ベアリングBBと一体化されている。詳細には、遊星キャリヤCaの外周部に溝が形成されて、ベアリングBBの内輪にされる。そして、ベアリングBBの外輪が、シリンダハウジングHGcに圧入されて固定される。
【0071】
遊星キャリヤCaは、変換機構GHの回転部材BKに固定される。遊星歯車機構UHでは、太陽歯車Gtに、電気モータMT(特に、モータシャフトSM)から第1回転動力Tmが入力される。そして、遊星キャリヤCaから、変換機構GH(特に、回転部材BK)に第2回転動力Tnが出力される。ここで、内歯車Guには、仕切り板SUが固定される。即ち、仕切り板SUは、内歯車Guを介して、シリンダハウジングHGcに固定されている。
【0072】
変換機構GHは、回転運動をする回転部材BK、及び、直線運動をする直動部材BDにて構成される。変換機構GHでは、回転部材BKが遊星歯車機構UH(特に、遊星キャリヤCa)に固定される。即ち、遊星キャリヤCaから出力される第2回転動力Tnが、回転部材BKに入力される。そして、回転部材BKに入力された第2回転動力Tnが、直動部材BDの直線動力Fnに変換される。変換機構GHは、「回転・直動変換機構」とも称呼される。
【0073】
変換機構GHでは、回転運動から直線運動への変換と、直線運動から回転運動への変換との両方が可能である。変換機構GHの作動において、前者が「正作動」と称呼され、後者が「逆作動」と称呼される。即ち、正作動では、回転部材BKの回転動力が、直動部材BDの直線動力に変換される。つまり、正作動では、動力は、回転部材BKから直動部材BDに伝達される。これに対して、逆作動では、直動部材BDの直線動力が、回転部材BKの回転動力に変換される。つまり、逆作動では、動力は、直動部材BDから回転部材BKに伝達される。なお、正作動における効率(入力である回転動力に対する出力である直線動力の比率)が「正効率」と称呼され、逆作動における効率(入力である直線動力に対する出力である回転動力の比率)が「逆効率」と称呼される。双方向に動力伝達が可能な変換機構GHは、正効率だけでなく、逆効率を有している。
【0074】
例えば、変換機構GHとして、「ボールねじ」が採用される。具体的には、変換機構GHでは、シャフト部材である回転部材BKが、遊星歯車機構UHの遊星キャリヤCaに固定される。回転部材BKは、円筒形状を有する直動部材BDに挿入される。回転部材BKの外周面Mokにはボールねじ溝Mzkが形成される。同様に、直動部材BDの内周面Midにもボールねじ溝Mzdが形成される。ボールねじ溝Mzk、Mzdには、複数のボールBL(鋼球)がはめ込まれている(以上、吹出し部XGHを参照)。
【0075】
変換機構GHでは、外周面にねじ溝を有する部材が「内側部材」と称呼される。また、内周面にねじ溝を有する部材が「外側部材」と称呼される。そして、外側部材が内側部材を覆うように配置され、内側部材のねじ溝と外側部材のねじ溝とがかみ合わされる。詳細には、ボールねじ機構では、複数のボールBLを介して、2つのねじ溝がかみ合わされる。
【0076】
変換機構GHとして採用されるボールねじ機構では、ボールねじシャフト(内側部材であり、「シャフト部材」ともいう)が回転部材BKにされ、ボールねじナット(外側部材であり、「ナット部材」ともいう)が直動部材BDにされる。該構成では、回転部材BK(内側部材)の外周面Mokにねじ溝Mzkが形成され、直動部材BD(外側部材)の内周面Midにねじ溝Mzdが形成される。そして、ボールBLを介して、外周溝Mzkと内周溝Mzdとがかみ合わされる。これとは逆に、ボールねじ機構では、ナット部材(外側部材)が回転部材BKにされ、シャフト部材(内側部材)が直動部材BDにされてもよい。
【0077】
シリンダハウジングHGcには、回り止め部材MDが固定されている。例えば、回り止め部材MDには、細長い棒形状の部材(例えば、ピン部材)が用いられる。直動部材BDはフランジ部Fdを有している。直動部材BDのフランジ部Fdには切り欠きが形成され、該切り欠きに回り止め部材MDがかみ合わされる。直動部材BDでは、回り止め部材MDにより、回転軸線Jkまわりの回転運動が阻止される。このため、回転部材BKが回転駆動されると、直動部材BDは、軸方向Hjに沿って移動する。
【0078】
制御ピストンNCが、直動部材BDに固定される。制御ピストンNCは、シリンダハウジングHGcに形成された制御シリンダCCに挿入される。詳細には、制御ピストンNCは、底部Btnを持つ円筒形状を有し、制御ピストンNCの外周面Monが、制御シリンダCCの内周面Micに対して挿入される。制御シリンダCCの内部には、制御ピストンNC(特に、底部Btn)によって、制御室Rc(液圧室)が形成される。制御ピストンNCは、直動部材BDに固定されているので、直動部材BDに連動して移動する。
【0079】
制御ピストンNCの外周面Monと制御シリンダCCの内周面Micとは、2つのシール部材SLにて封止される。2つのシール部材SLは、制御シリンダCCの内周面Micに形成されたシール溝にはめ込まれる。2つのシール溝の間にて、シリンダハウジングHGcには、制御シリンダCCに貫通するハウジング孔(非図示)が設けられる。ハウジング孔は、補給路HHを介して、マスタリザーバRVに接続される。制御ピストンNCには、ハウジング孔と制御室Rcとを接続するよう、外周部Monから底部Btnに貫通するピストン孔(非図示)が設けられる。
【0080】
≪サーボ圧Pcの調整≫
制動制御装置SCでは、液圧発生ユニットPSの出力であるサーボ圧Pcにより、ホイール圧Pwが調整される。液圧発生ユニットPSでは、電気モータMTの回転動力Tm(即ち、軸トルク)が、変換機構GHにより、直動部材BD(結果、制御ピストンNC)の直線動力Fn(即ち、推力)に変換される。これにより、制御ピストンNCが軸方向Hjに移動することで、サーボ圧Pcが発生され、調整される。具体的には、制御ピストンNCが前進方向Haに移動されることで、サーボ圧Pcが増加され、制御ピストンNCが後退方向Hbに移動されることで、サーボ圧Pcが減少される。以下、サーボ圧Pcの調整(増減)について説明する。なお、液圧発生ユニットPSには、サーボ圧Pcを検出するために、サーボ圧センサPCが設けられる。
【0081】
≪サーボ圧Pcの増加≫
図2において、回転軸線Jkの上部には、液圧発生ユニットPSがサーボ圧Pcを発生していない状態が図示されている。該状態では、制御室Rcは、ハウジング孔、ピストン孔、及び、補給路HHを介して、マスタリザーバRVに接続されていて、サーボ圧Pcは「0(大気圧)」である。該状態における直動部材BDの位置が「初期位置」と称呼される。また、初期位置に対応する電気モータMTの回転角Kaが「初期角」と称呼される。即ち、初期位置は、直動部材BDに係るゼロ点に相当し、初期角は、回転角Kaに係るゼロ点に相当する。
【0082】
制動要求値(制動力に係る要求を表示する状態量であり、例えば、制動操作部材BPの操作変位Sp)が増加されると、目標圧Ptが「0」から増加される。目標圧Ptは、サーボ圧Pc(実際値)に対応する目標値である。目標圧Ptは、制動要求値の増加に伴って増加される。目標圧Ptの増加に伴い、電気モータMTは、正転方向Hsに駆動され、回転動力Tmを発生する。回転動力Tmは、遊星歯車機構UHを介して、変換機構GHに伝達され、直動部材BDの直線動力Fnとして出力される。そして、直動部材BDにより、制御ピストンNCが前進方向Ha(制御室Rcの体積が減少する方向)に移動される。該移動により、制御ピストンNCにあけられたピストン孔は制御室Rc内に移動するので、制御室RcとマスタリザーバRVとの連通が遮断される。制御ピストンNCが、更に、前進方向Haに移動されると、サーボ圧Pc(制御室Rcの内圧)が「0(大気圧)」から増加される。これにより、制御シリンダCCの制御室Rcから、サーボ圧Pcに加圧された制動液BFが、サーボ路HUを介してサーボ室Ruに出力されるとともに、後輪連絡路HSrを介して後輪ホイールシリンダCWrに出力される。
【0083】
≪サーボ圧Pcの保持≫
制動要求値が一定になる、目標圧Ptは保持され、サーボ圧Pcは一定にされる。例えば、直動部材BDが初期位置から変位した位置で維持される(図2の回転軸線Jkの下部を参照)。このとき、サーボ圧Pcによる逆作動で電気モータMTに入力される回転力(即ち、逆作動トルク)と、正作動で電気モータMTから出力される回転力(即ち、正作動トルク)とは均衡している。
【0084】
≪サーボ圧Pcの減少≫
制動要求値が減少されると、目標圧Ptが減少される。これにより、電気モータMTの回転動力Tmは減少される。サーボ圧Pcによる逆作動トルクが、電気モータMTによる正作動トルクよりも大きくなり、電気モータMTは逆転方向Hgに回転する。直動部材BDは、後退方向Hbに移動され、制御室Rcの体積は増加される。サーボ室Ru、及び、後輪ホイールシリンダCWrに移動されていた制動液BFは、制御室Rcに向けて戻されるため、サーボ圧Pcは減少される。そして、目標圧Ptが「0」にされると、直動部材BDは初期位置にまで戻されて、サーボ圧Pcは「0」にされる。以上で説明したように、液圧発生ユニットPSでは、制御ピストンNCが、直線動力Fnによって、回転軸線Jkに沿って移動することで、制御シリンダCCのサーボ圧Pcが調整(増加、保持、減少)される。
【0085】
≪回転角センサKAの構成≫
回転角センサKAの詳細について説明する。回転角センサKAには、光を感知する光学式センサ、電磁誘導式センサ、磁界の変化に基づく磁気式センサ等が採用される。具体的には、光学式の回転角センサKAでは、複数の放射状のスリットが設けられた回転円盤(コードホイール)が、モータシャフトSMに固定される。そして、モータシャフトSMが回転する際の該スリットを通過する光に基づいて回転角Kaが検出される。
【0086】
電磁誘導式の回転角センサKAでは、磁束の変化に伴い電位差が生じる現象(即ち、電磁誘導)が利用される。該センサは、「レゾルバ」とも称呼される。具体的には、モータシャフトSMに固定された誘導コイル(励磁コイル)と固定コイル(検出コイル)との間で発生する磁界の変化に基づいて、出力電圧の振幅変化が計測される。そして、該振幅変化に基づいて回転角Kaが検出される。
【0087】
磁気式の回転角センサKAでは、磁界(磁気力の及ぶ空間であり、「磁場」ともいう)の大きさ・方向の計測に基づいて回転角Kaが検出される。例えば、磁気式の回転角センサKAには、ホール効果(電流に垂直に磁場をかけると、電流と磁場の両方に直交する方向に起電力が現れる現象)を利用する磁界検出素子(「ホール素子」という)が用いられる。また、磁気式の回転角センサKAには、磁気抵抗効果(固体の電気抵抗が磁界によって変化する現象)を利用する磁界検出素子(「磁気抵抗効果素子」或いは「MR素子」という)が採用される。磁気抵抗効果を利用する代表例は、トンネル磁気抵抗効果(TMR効果)を応用したTMRセンサである。
【0088】
磁気式センサを例に、回転角センサKAの構成について説明する。回転角センサKAは、センサディスクDs、センサ磁石Ms、センサ基板Kb、及び、センサ線Lsにて構成される。センサディスクDsは、モータシャフトSMと一体となって回転するよう、モータシャフトSMに固定される。センサディスクDsには、センサ磁石Msが設けられる。例えば、センサ磁石Msは、接着等によってセンサディスクDsに貼り付けられている。
【0089】
センサ基板Kbは、モータハウジングHGmに固定される。センサ基板Kbには、モータシャフトSMが貫通するように孔があけられている。孔の周辺部には、モータシャフトSM(即ち、センサ磁石Ms)が回転する際に生じる磁界の変化を検出するよう、磁界検出素子を用いた検出部が設けられる。磁界検出素子により検出された信号が、センサ線Lsによって第1コントローラEA(特に、マイクロプロセッサMP)に伝達される。
【0090】
≪回転角センサKAの配置≫
液圧発生ユニットPSでは、回転角センサKAは第1室Raに配置される。仕切り板SUにより潤滑剤の飛散が回避されるので、回転角センサKAの検出精度が確保されるとともに、潤滑剤による劣化、及び、短絡の発生が防止される。更に、回転角センサKAは、仕切り板SUと電気モータMTのコイルCLとの間に配置される。回転角センサKAが第1室Raにて仕切り板SUの近傍に配置される構成が、液圧発生ユニットPSに採用された回転角センサKAの配置であるため、「採用配置」と称呼される。
【0091】
採用配置により、電気モータMTに係る部材(特に、回転角センサKA)の組付が容易に行われ得る。電気モータMTに係る部材の組付では、ハウジングHG(特に、モータハウジングHGm)にモータコイルCLが固定された後に、センサディスクDsが固定されたモータシャフトSMが、取り付けられ、ベアリングBBに支持される。そして、モータハウジングHGmに、センサ基板Kbが固定される。
【0092】
更に、採用配置は、センサ線Lsの取り回しの点でも有利である。電気モータMT(特に、コイルCL)には、第1コントローラEA(特に、駆動回路DR)から、モータ線Lmを介して、モータ電流Imが供給される。液圧発生ユニットPSにおいて、相対的に重量が大きい部材は、モータコイルCL、及び、動力伝達部材(遊星歯車機構UHと変換機構GH)である。重量バランスを考慮して、第1コントローラEAは、液圧発生ユニットPSの重心近傍に配置される。また、電気モータMTへの給電効率を考慮して、モータ線Lmの長さはできる限り短くされる。
【0093】
液圧発生ユニットPSでは、コントローラハウジング内の制御基板にモータ線Lmを接続できるよう、モータハウジングHGmに隙間(例えば、貫通孔)が設けられる。そして、モータ線Lmが、モータ回転軸線Jmの方向Hjにおいて、モータコイルCLと仕切り板SUとの間から、第1コントローラEA(特に、制御基板)に引き込まれる。即ち、モータ線Lmは、第1室Raにおいて、仕切り板SUとモータコイルCLとの間から、モータ回転軸線Jmから離れる方向に延ばされて第1室Raから取り出される。例えば、モータ線Lmは、モータコイルCLと制御基板との間で、チューブ状の保護部材に囲われて、配線される。
【0094】
液圧発生ユニットPSでは、回転角センサKAが、モータコイルCLに対して仕切り板SUに近い側に設けられる。このため、回転角センサKA(特に、センサ基板Kb)に接続されるセンサ線Lsは、モータ線Lmと同様に、第1室Raから引き出すことが可能になる。即ち、センサ線Lsは、モータシャフトSMの回転軸線Jmから離れる方向(例えば、軸方向Hjに垂直な径方向Hk)に延ばされて、第1室Raから引き出される。これにより、センサ線Lsとモータ線Lmとは、同じ空間(共通の保護部材の内部)を通り、ひとまとめで第1室Raの外部に引き出すことができる。即ち、モータ線Lm、及び、センサ線Lsの取り出しが共通化される。
【0095】
回転角センサKAは、第1室Raにおいて、モータコイルCLに対して、仕切り板SUから離れた側に設けることも可能ではある。該配置は、液圧発生ユニットPSには採用されていないので、「不採用配置」と称呼される。不採用配置では、採用配置(即ち、回転角センサKAが仕切り板SUに近接する配置)に比較して、回転角センサKAの組付性、及び、センサ線Lsの取り回しの点で不利になる。具体的には、不採用配置では、モータハウジングHGmにモータコイルCLを固定する前に、回転角センサKA(特に、センサディスクDs)の組付が必要になるため、組付が困難になる。また、センサ線Lsは、モータハウジングHGmの端部から引き出す必要があり、センサ線Lsは、モータ線Lmとは別で配線されなければならない。このため、回転角センサKAの配線の引き回しが複雑になる。
【0096】
仕切り板SUに貫通孔を設けて、第1室Raから、モータ線Lm、センサ線Lsを取り出すことも可能ではある。しかしながら、仕切り板SUに貫通孔があけられると、回転角センサKAの構成部材に対する潤滑剤の付着確率が高まる。このため、液圧発生ユニットPSでは、モータ線Lm、及び、センサ線Lsは、仕切り板SUを避けて配線できるよう、モータシャフトSMの回転軸線Jmから遠ざかる方向に延ばされる。例えば、モータ線Lm、及び、センサ線Lsは、仕切り板SUに対して平行方向に延ばされ、共通の保護部材に囲まれて、第1コントローラEA(特に、制御基板)に接続される。
【0097】
≪軸方向Hjの小型化≫
液圧発生ユニットPSでは、減速機に遊星歯車機構UHが用いられる。遊星歯車機構UHでは、太陽歯車GtとモータシャフトSMとが接続されるので、太陽歯車Gtに第1回転動力Tmが入力される。また、遊星歯車機構UHでは、遊星キャリヤCaと回転部材BKとが接続されるので、遊星キャリヤCaから第2回転動力Tnが出力される。ここで、内歯車Guは、ハウジングHGに固定される。
【0098】
液圧発生ユニットPSでは、第1室Raと第2室Rbとを分離する仕切り板SUが、内歯車Guを介して、ハウジングHGに取付けられる。仕切り板SUがハウジングHGに直接固定される構成に比較して、仕切り板SUの取付スペースが節約できるので、軸方向Hjの寸法が短縮される。
【0099】
更に、回転角センサKAに係る採用配置では、モータ回転軸線Jmの方向において、回転角センサKAがモータコイルCLと仕切り板SUとの間に設けられる。これにより、回転角センサKAに係る組付性、及び、配線の取り回し性が向上される。しかしながら、磁界変化に基づく回転角センサKA(例えば、TMRセンサ)が採用され、且つ、仕切り板SUに強磁性体の材料が用いられる場合には、強磁性体が磁界に影響を及ぼさないように、回転角センサKAは、仕切り板SUから離れたところに配置する必要ある。つまり、磁界変化に基づく回転角センサKAが採用されると、軸方向Hjの寸法短縮が困難になる。換言すれば、軸方向Hjに小型化すると、回転角センサKAの検出精度の低下が生じ得る。即ち、磁界変化に基づく回転角センサKAが採用される場合には、検出精度と軸方向寸法とはトレードオフの関係にある。
【0100】
液圧発生ユニットPSでは、仕切り板SUに、非磁性特性を有する材料が採用される。例えば、仕切り板SUには、アルミニウム、オーステナイト系ステンレス等の金属材料が用いられる。また、非磁性特性を持つ樹脂、セラミック等が採用されてもよい。更には、仕切り板SUに、非磁性特性を持つ表面処理(例えば、めっき)が施されてもよい。何れにしても、液圧発生ユニットPSでは、非磁性体で形成される仕切り板SUが用いられる。これにより、磁界変化に応じた回転角センサKAが採用されても、回転角センサKAの検出磁界に影響が及ばない。液圧発生ユニットPSでは、上記トレードオフが両立され、検出精度が確保された上で、小型化が図られる。
【0101】
<制動制御装置SCの他の構成例>
以下、制動制御装置SCに係る他の構成例について説明する。他の構成例においても、液圧発生ユニットPSは、上記同様の効果(装置の小型化等)を奏する。
【0102】
上述した液圧発生ユニットPSの実施形態では、変換機構GHとしてボールねじが採用された。これに代えて、変換機構GHには、滑りねじ(例えば、台形ねじ)が採用されてもよい。滑りねじ機構が採用される構成では、内側部材には、ねじ溝として、おねじが形成される。また、外側部材には、ねじ溝として、めねじが形成される。そして、おねじとめねじとが直接かみ合わされる。滑りねじが採用される変換機構GHでも逆作動は生じる。
【0103】
上述した制動制御装置SCは、前輪WHfに回生装置KGが備えられ、回生協調制御が実行される車両に適用された。回生協調制御が実行される車両では、回生装置KGは、前輪WHf、及び、後輪WHrのうちの少なくとも1つに備えられていればよい。また、制動制御装置SCは、回生装置KGが省略され、回生協調制御が実行されない車両にも適用され得る。つまり、制動制御装置SCは、回生協調制御の有無とは無関係に、各種車両に適用され得る。
【0104】
上述した制動制御装置SCの構成例では、シングル型のマスタシリンダCMが採用された。制動制御装置SCでは、タンデム型のマスタシリンダCMが採用されてもよい。該構成では、CMの内部に、2つのマスタ室Rmが形成される。そして、液圧発生ユニットPSからサーボ圧Pcがサーボ室Ruに供給され、マスタ室RmからホイールシリンダCWに、ホイール圧Pwが供給される。該構成では、制動制御装置SCには、2系統の制動系統として、前後型だけでなく、ダイアゴナル型(「X型」ともいう)のものが採用されてもよい。ダイアゴナル型の制動制御装置SCでは、2つのマスタ室Rmうちの一方が、右前輪ホイールシリンダ、及び、左後輪ホイールシリンダに接続される。また、2つのマスタ室Rmうちの他方が、左前輪ホイールシリンダ、及び、右後輪ホイールシリンダに接続される。
【0105】
上述した制動制御装置SCの構成例では、第1制動ユニットSAにおいて、供給圧PmがマスタシリンダCMを介して出力された。即ち、液圧の伝達経路においてアプライユニットAPと液圧発生ユニットPSとが直列に配置され、液圧発生ユニットPSから供給されたサーボ圧Pcが、マスタピストンNMを介して、供給圧Pmとして伝達された。これに代えて、アプライユニットAPと液圧発生ユニットPSとが並列に配置されてもよい。具体的には、アプライユニットAP(特に、マスタシリンダCM)、及び、液圧発生ユニットPSの夫々は、第2アクチュエータYBに直に接続される。そして、オン・オフ電磁弁(「切替弁」という)によって、「液圧発生ユニットPSと第2アクチュエータYBとの接続」、及び、「アプライユニットAPと第2アクチュエータYBとの接続」のうちの何れか一方が選択される。前者が選択される場合には、液圧発生ユニットPSにて発生されたサーボ圧Pcが、アプライユニットAPを介さずに、供給圧Pmとして直接出力される。このとき、アプライユニットAPはストロークシミュレータSSに接続され、制動操作部材BPの操作力はストロークシミュレータSSによって発生される。一方、後者が選択される場合には、制動操作部材BPの操作によって発生されたマスタ室Rmの液圧が、供給圧Pmとして出力される。このとき、アプライユニットAPはシミュレータSSから切り離される。
【0106】
上述した制動制御装置SCの構成例では、アプライユニットAPにおいて、マスタ室Rmの受圧面積rm(マスタ面積)とサーボ室Ruの受圧面積ru(サーボ面積)とが等しく設定された。マスタ面積rmとサーボ面積ruとは等しくなくてもよい。マスタ面積rmとサーボ面積ruとが異なる構成では、サーボ面積ruとマスタ面積rmとの比率に基づいて、供給圧Pm(マスタ圧)とサーボ圧Pcとの変換演算が可能である(即ち、「Pm・rm=Pc・ru」に基づく換算)。
【0107】
<実施形態のまとめ>
液圧発生ユニットPS(液圧発生装置)の実施形態についてまとめる。液圧発生ユニットPSは、ホイールシリンダCWのホイール圧Pwを調整して、車輪WHの制動力を制御する制動制御装置SCに適用される。
【0108】
液圧発生ユニットPSは、第1回転動力Tmを出力する電気モータMT、第1回転動力Tmを減速して、第2回転動力Tnを出力する遊星歯車機構UH、及び、第2回転動力Tnを直線動力Fnに変換する変換機構GHにて構成され、シリンダCCに挿入されたピストンNCを直線動力Fnによって移動することでシリンダCC内の液圧Pc(液圧室Rcの内圧であり、サーボ圧)を調整する。詳細には、遊星歯車機構UHでは、太陽歯車Gtに第1回転動力Tmが入力され、遊星キャリヤCaから第2回転動力Tnが出力される。
【0109】
液圧発生ユニットPSには、電気モータMT、及び、遊星歯車機構UHを保持するハウジングHGの内部を、電気モータMTを収納する第1室Raと遊星歯車機構UHを収納する第2室Rbとに分離する仕切り板SUが備えられる。遊星歯車機構UH、変換機構GHの動力伝達部材には、潤滑剤(グリス等)が塗布される。潤滑剤の影響が、電気モータMT、回転角センサKA等に及ばないように、仕切り板SUによって、第1室Raへの潤滑剤の侵入(飛散等)が防止される。
【0110】
液圧発生ユニットPSでは、遊星歯車機構UHの内歯車Guは、ハウジングHGに固定される。そして、仕切り板SUは、内歯車Guに固定される。即ち、仕切り板SUは、内歯車Guを介して、ハウジングHGに固定される。ハウジングHGにおいて、仕切り板SUを固定するスペースが不要になるため、軸方向Hjの寸法が短縮される。結果、液圧発生ユニットPSの小型化が図られる。
【0111】
液圧発生ユニットPSでは、電気モータMTのシャフトSMの回転角Kaを検出する回転角センサKAが備えられる。回転角センサKAは、第1室Raの内部に、仕切り板SUの近傍に配置される。該配置により、電気モータMT、及び、回転角センサKAの組付性、及び、配線Lm、Lsの引き回し性が向上される。
【0112】
回転角センサKAでは、磁界の変化に基づいて、回転角Kaが検出される。加えて、仕切り板SUには、非磁性特性を有する材料が採用される。例えば、仕切り板SUは、樹脂にて、内歯車Guと一体成形される。仕切り板SUが非磁性特性を有するので、回転角センサKAが仕切り板SUに近接していても、回転角センサKAの検出磁界には影響が及ばない。このため、軸方向Hjの寸法が短縮される。結果、液圧発生ユニットPSの小型化が図られる。
【符号の説明】
【0113】
SC…制動制御装置、SX…制動装置、BP…制動操作部材(ブレーキペダル)、BF…制動液(作動液)、SA、SB…第1、第2制動ユニット、YA、YB…第1、第2アクチュエータ、EA、EB…第1、第2コントローラ、BS…通信バス、CM…マスタシリンダ、CW…ホイールシリンダ、AP…アプライユニット、NR…入力ユニット、PS…液圧発生ユニット(液圧発生装置)、MT…電気モータ(ブラシレスモータ)、VA、VB…第1、第2制御弁、SP…操作変位センサ、Sp…操作変位(SPの検出値)、PC…サーボ圧センサ、Pc…サーボ圧(Rcの内圧であり、PCの検出値)、Pm…供給圧(Rmの内圧)、KA…回転角センサ、Ka…回転角(SMの回転位置であり、KAの検出値)、Pwf、Pwr…前輪、後輪ホイール圧、HG…ハウジング(HGm、HGcの総称)、HGm…モータハウジング(HGの一部)、HGc…シリンダハウジング(HGの一部)、SU…仕切り板、CL…モータコイル、SM…モータシャフト、KA…回転角センサ、Kb…センサ基板、Ds…センサディスク、Ms…センサ磁石、UH…遊星歯車機構(減速機)、Gt…太陽歯車、Gp…遊星歯車、Gu…内歯車、Ca…遊星キャリヤ、GH…変換機構(回転・直動変換機構)、BK…回転部材、BD…直動部材、NC…制御ピストン、CC…制御シリンダ、MD…回り止め部材、Ra…第1室(MTを収納する空間)、Rb…第2室(UH、GHを収納する空間)、Rc…制御室(CCの液圧室)、Tm…第1回転動力(MTからの出力であり、UHへの入力)、Tn…第2回転動力(UHからの出力であり、BKへの入力)、Fn…直線動力(BDの出力)、Jm…MT(SM)の回転軸線、Jk…BKの回転軸線、Jn…NCの中心軸線、Jc…CCの中心軸線、Hj…軸方向(Jk等に平行な方向)、Hk…径方向(Jk等に垂直な方向)、Ha…前進方向(Pcが増加する方向)、Hb…後退方向(Pcが減少する方向)、Hs…正転方向(Haに対応する回転方向)、Hg…逆転方向(Hbに対応する回転方向)、Lm…モータ線(CLに電流を供給する電力線)、Ls…センサ線(KAからの信号を伝達する信号線)。


図1
図2