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特開2024-15795ロボット装置およびロボット装置の制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024015795
(43)【公開日】2024-02-06
(54)【発明の名称】ロボット装置およびロボット装置の制御方法
(51)【国際特許分類】
   B25J 15/08 20060101AFI20240130BHJP
   B25J 19/02 20060101ALI20240130BHJP
【FI】
B25J15/08 W
B25J19/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022118100
(22)【出願日】2022-07-25
(71)【出願人】
【識別番号】000002185
【氏名又は名称】ソニーグループ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003339
【氏名又は名称】弁理士法人南青山国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】後藤 哲郎
(72)【発明者】
【氏名】小林 健
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 はやと
(72)【発明者】
【氏名】坂倉 義晃
(72)【発明者】
【氏名】宮脇 真奈美
(72)【発明者】
【氏名】塚本 圭
【テーマコード(参考)】
3C707
【Fターム(参考)】
3C707BS09
3C707DS01
3C707ES03
3C707KS32
3C707KS33
3C707KV04
3C707KX08
3C707LV10
(57)【要約】
【課題】ワークを掴み直すことなく把持向きを変更することができるロボット装置およびその制御方法を提供する。
【解決手段】本技術の一形態に係るロボット装置は、ハンド部と、センサ部と、制御装置とを具備する。前記ハンド部は、ワークを把持可能な把持面をそれぞれ有する複数の指部を含む。前記センサ部は、前記複数の指部の少なくとも1つに設けられ、前記把持面における圧力分布を検出可能である。前記制御装置は、前記センサ部の出力に基づいて前記把持面における前記ワークの滑りを検出し、前記ワークに対する前記ハンド部の相対位置を変化させる制御指令を生成するように構成される。
【選択図】図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークを把持可能な把持面をそれぞれ有する複数の指部を含むハンド部と、
前記複数の指部の少なくとも1つに設けられ、前記把持面における圧力分布を検出可能なセンサ部と、
前記センサ部の出力に基づいて前記把持面における前記ワークの滑りを検出し、前記ワークに対する前記ハンド部の相対位置を変化させる制御指令を生成するように構成された制御装置と
を具備するロボット装置。
【請求項2】
請求項1に記載のロボット装置であって、
前記センサ部は、前記把持面に作用する圧力を検出する複数の容量素子を有する弾性変形可能なセンサシートで構成され、
前記制御装置は、前記複数の容量素子で検出される圧力の時間変化に基づいて前記把持面における前記ワークの滑りを検出する
ロボット装置。
【請求項3】
請求項2に記載のロボット装置であって、
前記制御装置は、圧力検出値が所定時間内に変化した容量素子の数が所定の数以上に達したときに、前記把持面における前記ワークの滑りを検出する
ロボット装置。
【請求項4】
請求項2に記載のロボット装置であって、
前記制御装置は、前記複数の容量素子の圧力検出値に基づいて算出される圧力中心位置または圧力分布が所定時間内に変化したときに、前記把持面における前記ワークの滑りを検出する
ロボット装置。
【請求項5】
請求項1に記載のロボット装置であって、
前記制御装置は、前記制御指令として、前記ワークを第1の把持力で把持した状態から、前記ワークを前記第1の把持力から前記第1の把持力よりも小さい第2の把持力に調整する圧力調整指令と、前記ワークに対する前記ハンド部の相対位置を変化させる移動指令とを生成する
ロボット装置。
【請求項6】
請求項5に記載のロボット装置であって、
前記制御装置は、前記移動指令として、前記ハンド部の先端が重力方向下向きに位置する第1の姿勢から、前記ハンド部の先端が重力方向に直交する方向に位置する第2の姿勢に変更させる制御指令を生成する
ロボット装置。
【請求項7】
請求項5に記載のロボット装置であって、
前記制御装置は、前記移動指令として、前記ワークの長手方向に沿って移動させる制御指令を生成する
ロボット装置。
【請求項8】
請求項2に記載のロボット装置であって、
前記センサシートは、前記複数の容量素子がマトリクス状に配列されたセンサ電極層と、基準電位に接続されるリファレンス電極層と、前記センサ電極層と前記リファレンス電極層との間に配置された変形層とを有する圧力センサで構成される
ロボット装置。
【請求項9】
請求項2に記載のロボット装置であって、
前記センサシートは、
前記複数の容量素子がマトリクス状に配列されたセンサ電極層と、基準電位に接続されるリファレンス電極層と、前記センサ電極層と前記リファレンス電極層との間に配置された変形層とをそれぞれ有する一対の圧力センサと、
前記一対の圧力センサの間に配置された粘弾性材料で構成された離隔層と
を有する
ロボット装置。
【請求項10】
ワークを把持可能なハンド部の把持面における圧力分布を検出可能なセンサ部の出力に基づいて前記把持面におけるワークの滑りを検出し、
前記ワークに対する前記ハンド部の相対位置を変化させる制御指令を生成する
ロボット装置の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術は、ハンド部を備えたロボット装置およびその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、労働人口の減少に伴いロボットによる作業の自動化が様々な場面において検討されている。ロボットハンドの行動を高精度に制御するためには、ロボットハンドの表面に対してどの程度の力が働いているかを検出する必要がある。例えば下記特許文献1には、押圧力だけでなく、ずり応力または滑り摩擦も検出することが可能な触力覚センサを備えたロボットハンドが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-2905号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ロボットハンドの作業の場合、ハンドの中でワークが滑る現象は直ちにワークのドロップ・位置ずれ等の失敗事象(歩留まり低下)につながるので、ワークがハンド内で滑らないようにする制御を行うことが一般的である。このため、ワークの把持向きを変更する必要がある場合は、一旦治具等の中間地点にワークを載置し、一旦手を離してから再度掴み直すという方法をとっていた。
しかしながらこの方法では、ワークを中間地点に載置し、掴み直すための余計な時間がかかり、作業スピード・タクトの観点で大きな問題となっていた。
【0005】
以上のような事情に鑑み、本技術の目的は、ワークを掴み直すことなく把持向きを変更することができるロボット装置およびその制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本技術の一形態に係るロボット装置は、ハンド部と、センサ部と、制御装置とを具備する。
前記ハンド部は、ワークを把持可能な把持面をそれぞれ有する複数の指部を含む。
前記センサ部は、前記複数の指部の少なくとも1つに設けられ、前記把持面における圧力分布を検出可能である。
前記制御装置は、前記センサ部の出力に基づいて前記把持面における前記ワークの滑りを検出し、前記ワークに対する前記ハンド部の相対位置を変化させる制御指令を生成するように構成される。
【0007】
上記ロボット装置によれば、把持面における圧力分布を検出可能なセンサ部の出力に基づいて把持面におけるワークの滑りを検出し、ワークに対するハンド部の相対位置を変化させるようにしているため、ワークを掴み直すことなく把持向きを変更することができる。
【0008】
前記センサ部は、前記把持面に作用する圧力を検出する複数の容量素子を有する弾性変形可能なセンサシートで構成され、前記制御装置は、前記複数の容量素子で検出される圧力の時間変化に基づいて前記把持面における前記ワークの滑りを検出するように構成されてもよい。
【0009】
前記制御装置は、圧力検出値が所定時間内に変化した容量素子の数が所定の数以上に達したときに、前記把持面における前記ワークの滑りを検出するように構成されてもよい。
【0010】
前記制御装置は、前記複数の容量素子の圧力検出値に基づいて算出される圧力中心位置または圧力分布が所定時間内に変化したときに、前記把持面における前記ワークの滑りを検出するように構成されてもよい。
【0011】
前記制御装置は、前記制御指令として、前記ワークを第1の把持力で把持した状態から、前記ワークを前記第1の把持力から前記第1の把持力よりも小さい第2の把持力に調整する圧力調整指令と、前記ワークに対する前記ハンド部の相対位置を変化させる移動指令とを生成するように構成されてもよい。
【0012】
前記制御装置は、前記移動指令として、前記ハンド部の先端が重力方向下向きに位置する第1の姿勢から、前記ハンド部の先端が重力方向に直交する方向に位置する第2の姿勢に変更させる制御指令を生成するように構成されてもよい。
【0013】
前記制御装置は、前記移動指令として、前記ワークの長手方向に沿って移動させる制御指令を生成するように構成されてもよい。
【0014】
前記センサシートは、前記複数の容量素子がマトリクス状に配列されたセンサ電極層と、基準電位に接続されるリファレンス電極層と、前記センサ電極層と前記リファレンス電極層との間に配置された変形層とを有する圧力センサで構成されてもよい。
【0015】
前記センサシートは、
前記複数の容量素子がマトリクス状に配列されたセンサ電極層と、基準電位に接続されるリファレンス電極層と、前記センサ電極層と前記リファレンス電極層との間に配置された変形層とをそれぞれ有する一対の圧力センサと、前記一対の圧力センサの間に配置された粘弾性材料で構成された離隔層とを有してもよい。
【0016】
本技術の一形態に係るロボット装置の制御方法は、ワークを把持可能なハンド部の把持面における圧力分布を検出可能なセンサ部の出力に基づいて前記把持面におけるワークの滑りを検出し、
前記ワークに対する前記ハンド部の相対位置を変化させる制御指令を生成する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本技術の一実施形態に係るロボット装置を示す要部の斜視図である。
図2】上記ロボット装置におけるセンサ部の一構成例であるセンサシートの断面構造を示す概略側断面図である。
図3】上記センサシートにおけるセンサ電極層を示す概略平面図である。
図4】上記センサシートにおけるセンシング部の一構成例を示す要部平面図である。
図5】上記センサ部の他の構成例を示す概略側断面図である。
図6】制御ユニット70の構成を示すブロック図である。
図7】上記ロボット装置における制御装置の構成を示すブロック図である。
図8】上記制御装置において実行されるワークの総滑り検出手順の一例を示すフローチャートである。
図9】上記ロボット装置の制御系統の一例を示すブロック図である。
図10】上記ロボット装置の動作例を説明する模式図である。
図11図10に示すロボット装置の動作手順を示すフローチャートである。
図12図10に示すロボット装置の動作手順を示すフローチャートである。
図13】上記ロボット装置の他の動作例を説明する模式図である。
図14図13に示すロボット装置の動作手順を示すフローチャートである。
図15図13に示すロボット装置の動作手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本技術に係る実施形態を、図面を参照しながら説明する。
【0019】
図1は、本技術の一実施形態に係るロボット装置10を示す要部の斜視図である。本実施形態においてロボット装置10は、ロボットハンドを構成する。以下、ロボット装置10の構成について概略的に説明する。
【0020】
[ロボット装置]
図1に示すように、ロボット装置10は、アーム部1、リスト部2及びハンド部3を有している。
【0021】
アーム部1は、複数の関節部1aを有しており、関節部1aの駆動により、ハンド部3を任意の位置に移動可能とされる。リスト部2は、アーム部1に対して回転可能に接続されており、その回転よりハンド部3を回転させることが可能とされている。
【0022】
ハンド部3は、把持対象物(ワーク)を把持可能な複数本の指部を有する。本実施形態においてハンド部3は、互いに対向する2本の指部3a,3bを有しており、2本の指部3a,3bの駆動により2本の指部3a,3bの間にワークを把持することが可能とされている。なお、指部の数については3本あるいは4本以上等、適宜変更可能である。
【0023】
2本の指部3a,3bにおいて互いに対向する面には、それぞれ、センサ部20a,20bが設けられている。センサ部20a,20bは、圧力検出面を有し、圧力検出面に対して垂直方向に加えられた圧力成分およびその面内分布を検出可能に構成される。また、センサ部20a,20bは、圧力分布だけでなく、圧力検出面に平行なせん断力およびその面内分布を検出可能な3軸センサとされてもよい。センサ部20a,20bはすべての指部3a,3bに設けられているが、センサ部はいずれか1つの指部にのみ設けられてもよい。なお、センサ部20a,20bの構成については、図2などを参照して後述する。
【0024】
ロボット装置10は、コントローラ11の制御により駆動される。コントローラ11は、制御部、記憶部等を含む。制御部は、例えば、CPU(Central Processing Unit)であり、記憶部に記憶されたプログラムに基づき、ロボット装置10における各部の駆動を制御する。コントローラ11は、ロボット装置10において専用の機器であってもよいし、汎用の装置であってもよい。コントローラ11は、例えば、ロボット装置10と有線または無線で接続されたPC(Personal Computer)、ネットワーク上のサーバ装置等であってもよい。コントローラ11は、ロボット装置10の一部として構成されてもよい。
【0025】
[センサ部]
続いて、センサ部20a,20bの詳細について説明する。センサ部20a,20bは互いに同一の構成を有する。センサ部20a,20bは、上述のように圧力検出面における圧力分布を検出することが可能なセンサシートで構成される。
【0026】
(構成例1)
図2は、センサ部20a,20bの一構成例であるセンサシート210の断面構造を示す概略側断面図である。図3は、センサシート210におけるセンサ電極層30を示す概略平面図である。
【0027】
図2および図3において、x軸方向及びy軸方向は、センサシート210における圧力検出面Sに平行な方向(以下、面内方向ともいう)であり、z軸方向は、圧力検出面Sに対して垂直な方向(以下、垂直方向ともいう)である。また図2において、上側は外力が加えられる表側に対応しており、下側はその反対側の裏側に対応している。
【0028】
センサシート210は、全体として平面視で矩形の平板状の形状を有している。なお、センサシート210の平面視での形状については、センサ部20a,20bが配置される箇所の形状に応じて適宜設定されればよく、センサシート210の平面視での形状については特に限定されない。例えば、センサシート210における平面視での形状は、四角形以外の多角形や、円形、楕円形などであってもよい。
【0029】
図2に示すように、センサシート210は、圧力センサ21と、圧力センサ21の上面に配置された表面層22と、圧力センサ21の下面に配置された支持層24とを有する積層体で構成される。
【0030】
圧力センサ21は、センサ電極層30と、リファレンス電極層25と、センサ電極層30とリファレンス電極層25との間に配置された変形層27とを有する。
【0031】
センサ電極層30は、フレキシブルプリント基板等により構成されている。センサ電極層30は、図3に示すように、平面視で矩形の本体部36と、本体部36から外方に向けて延設された引き出し部37とを有する。なお、センサ電極層30の平面視での形状については、矩形に限られず、適宜変更することができる。
【0032】
センサ電極層30は、可撓性を有する基材29と、基材29の表面またはその内部に設けられた複数のセンシング部28とを有している。基材29の材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタラート、ポリイミド、ポリカーボネード、アクリル樹脂等の高分子樹脂が用いられる。センシング部28は、縦横(縦:y軸方向、横:x軸方向)に所定の間隔でマトリクス状に規則的に配列されている。図3に示す例では、センシング部28の数は、9×9(縦×横)で合計81個とされている。なお、センシング部28の数については、適宜変更可能である。
【0033】
センシング部28は、リファレンス電極層25との間の距離の変化を静電容量の変化として検出することが可能な複数の容量素子(検出素子)で構成されている。センシング部28は、例えば図4に示すように、櫛歯状のパルス電極281と、櫛歯状のセンス電極282とを含む。櫛歯状のパルス電極281と櫛歯状のセンス電極282とは、櫛歯が互いに向かいように配置されており、各センシング部28は、一方の櫛歯の間に他方の櫛歯が入り込むように配置された領域(ノードエリア)で構成される。各パルス電極281は、y軸方向に延在する配線部281aに接続され、各センス電極281は、x軸方向に延在する配線部282aに接続される。配線部281aは、基材29の表面にx軸方向に配列され、配線部282aは、基材29の裏面にy軸方向に配列される。各センス電極282は、基材29に設けられたスルーホール283を介して配線部282aに電気的に接続される。センサ電極層30は、グランド線を有してもよい。グランド線は、例えば、センサ電極層30の外周部、あるいは、配線部281a,282aが並走する部分に設けられる。
【0034】
なお、センシング部28の構造については上記の例に限定されず、どのような構造が用いられてもよい。例えば、x軸方向に延在する格子状の第1電極パターンを有する第1電極シートと、y軸方向に延在する格子状の第2電極パターンを有する第2電極シートとの積層体で、センサ電極層30が構成されてもよい。この場合、第1電極パターンと第2電極パターンとの交差部にセンシング部28が形成される。
【0035】
リファレンス電極層25は、基準電位に接続される。本実施形態においてリファレンス電極層25は、いわゆる接地電極であり、グランド電位に接続される。リファレンス電極層25は可撓性を有し、その厚みは、例えば、0.05μm~0.5μm程度とされる。リファレンス電極層25の材料としては、例えば、無機系導電材料や、有機系導電材料、無機系導電材量及び有機系導電材料の両方を含む導電材料等が用いられる。
【0036】
無機系導電材料としては、例えば、アルミニウム、銅、銀などの金属や、ステンレス鋼などの合金、酸化亜鉛、酸化インジウムなどの金属酸化物などが挙げられる。また、有機系導電材料としては、カーボンブラック、炭素繊維などの炭素材料や、置換又は無置換のポリアニリン、ポリピロール等の導電性ポリマーなどが挙げられる。リファレンス電極層25は、ステンレス鋼、アルミニウムなどの金属薄板や、導電繊維、導電不織布などにより構成されてもよい。リファレンス電極層25は、プラスチックフィルム上に、例えば、蒸着や、スパッタリング、接着、塗布等の方法によって形成されてもよい。
【0037】
変形層27は、センサ電極層30と、リファレンス電極層25との間に配置されている。変形層27は、厚さが、例えば、100μm~1000μm程度とされる。変形層27は、外力に応じて弾性変形可能に構成されている。センサシート210に対して垂直方向に外力が加えられたとき、外力に応じて、変形層27が弾性変形しつつ、リファレンス電極層25がセンサ電極層30に近づく。このとき、センシング部28において、パルス電極281と、センス電極282間の静電容量が変化するので、センシング部28は、この静電容量の変化を圧力値として検出することができる。
【0038】
変形層27の厚さは、例えば、100μmよりも大きく、かつ、1000μm以下とされており、変形層27における目付量は、例えば、50mg/cm以下とされている。変形層27の厚さ及び目付量がこの範囲内に設定されることで、垂直方向における圧力センサ22の検出感度を向上させることがきる。
【0039】
変形層27の厚さの下限値は、100μmよりも大きければ特に限定されないが、この下限値は、例えば、150μm以上、200μm以上、250μm以上、300μm以上等とされてもよい。また、変形層27の厚さの上限値は、1000μm以下であれば特に限定されないが、この上限値は、例えば、950μm以上、900μm以下、850μm以下、800以下等とされてもよい。
【0040】
変形層27は、z軸方向の変形を容易にするため、例えば、柱構造を含むパターニング構造により構成されていてもよい。このパターニング構造は、行列状、ストライプ状、メッシュ状、放射状、幾何学様状、螺旋状など、様々な構造を採用することができる。
【0041】
表面層22は可撓性を有するプラスチックフィルム、織布、不織布、ゴム、皮革等の任意の素材で構成される。表面層22は、ロボット装置10が指部3a,3bでワークを把持する際に、ワークと接触する接触面として構成されてもよい。この場合、表面層22は把持動作中にワークから受ける荷重(把持力の反力)を受ける圧力検出面として機能するため、表面層22は、ワークを安定に把持するために、ワークとの間に所定以上の摩擦力が得られる表面性状を有するものが好ましい。
【0042】
支持層24は、圧力センサ21を支持するものであり、例えば、指部3a,3bの表面へ固定する接合層として機能する。支持層24は、例えば両面テープ等の粘着層で構成される。
【0043】
センサ電極層30の引き出し部37には、圧力センサ21によって検出された圧力の情報に基づいて面内方向の力を算出する制御ユニット70が搭載されている。制御ユニット70は、典型的には、CPU(Central Processing Unit)を含むコンピュータであり、ICチップ等の集積回路で構成される。制御ユニット70は、センサ電極層30(引き出し部37)に搭載され、圧力センサ21を駆動するとともに、圧力センサ21からの出力信号が入力されるように構成される。なお、制御ユニット70は、センサ電極層30に搭載される例に限られない。
【0044】
(構成例2)
図5は、センサ部20a,20bの他の構成例であるセンサシート220の断面構造を示す概略側断面図である。なお、構成例1と対応する部分については同一の符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0045】
センサシート220は、表側(ワーク側)の第1の圧力センサ21a及び裏側(指部3a,3b側)の第2の圧力センサ21bと、第1の圧力センサ21aおよび第2の圧力センサ21bの間に配置された離隔層23とを備えている。つまり、センサシート220は、垂直方向で下層側から順番に、第2の圧力センサ21b、離隔層23、第1の圧力センサ21aが積層された構造とされている。第1の圧力センサ21aおよび第2の圧力センサ21bは、上述の圧力センサ21と同様またはほぼ同様の構成を有するため、それらの説明は省略する。
【0046】
センサシート220は、第1の圧力センサ21aの上側(表面側)に配置された粘弾性体層81をさらに備える。粘弾性体層81は、外力に応じて変形可能な材料、例えば、シリコンゲル、ウレタンゲル、合成ゴム、発泡体などで構成される。なお、粘弾性体層81は、必要に応じて省略されてもよい。
【0047】
センサシート220は、第1の圧力センサ21aによる面内方向での圧力中心位置(圧力検出位置)及び第2の圧力センサ21bによる面内方向での圧力中心位置(圧力検出位置)に基づいて、センサシート220に対して面内方向に加えられた力(せん断力Fs)を検出する。また、センサシート220は、第1の圧力センサ21aによって検出された圧力の値に基づいて、センサシート220に対して垂直方向の上側から加えられた力(荷重Fz)を検出する。
【0048】
離隔層23は、接着層(不図示)を介して、第1の圧力センサ21aおよび第2の圧力センサ21bの間に固定されている。離隔層23は、表面層22および粘弾性体層81を介して第1の圧力センサ21aに加わる荷重により変形する粘弾性材料で構成される。この種の粘弾性材料としては、例えば、シリコンゲル、ウレタンゲル、合成ゴム、発泡体などが挙げられる。離隔層23の厚みは特に限定されず、例えば、1000μm以上5000μm以下とされ、粘弾性体層81の厚み等に応じて設定される。離隔層23の平面形状は特に限定されず、典型的には矩形あるいは円形である。
【0049】
[制御装置]
制御ユニット70は、制御部、記憶部等を含む。制御部は、例えば、CPU(Central Processing Unit)であり、コントローラ11からの制御指令に基づき、記憶部に記憶されたプログラムを実行することで、ハンド部3における各部の駆動を制御する。典型的には、制御ユニット70は、センサ部20a,20bにおいて検出された3軸方向の力の情報を取得し、この力の情報に基づいて、適切な把持力で安定して対象物を把持するようにハンド部3の駆動を制御する。
【0050】
本実施形態において制御ユニット70は、センサ部20a,20bの出力に基づいて把持面(圧力検出面S)におけるワークの滑りを検出し、ワークに対するハンド部3の相対位置を変化させる制御指令を生成する制御装置として構成される。
【0051】
記憶部は、制御部の処理に必要な各種のプログラムやデータが記憶される不揮発性のメモリと、制御部の作業領域として用いられる揮発性のメモリとを含む。各種プログラムは、半導体メモリ等の可搬性の記録媒体から読み取られてもよいし、ネットワーク上のサーバ装置からダウンロードされてもよい。
【0052】
図6は、制御ユニット70の構成を示すブロック図である。
【0053】
制御ユニット70は、センサ部20a,20bと電気的に接続されており、センサ部20a,20bの出力に基づいて、各指部3a,3bに作用する圧力およびその面内分布を算出するように構成される。制御ユニット70はさらに、コントローラ11と電気的に接続されており、コントローラ11からの制御指令に基づき、ハンド部3の指部3a,3bを駆動する駆動ユニット12aへ把持指令を出力する。
【0054】
コントローラ11および制御ユニット70は、ハンド部3の動作を制御する制御装置として構成される。本実施形態では、指部3a,3bを駆動する駆動ユニット12aに対して供給される把持指令が制御ユニット70で生成されるが、これに代えて、ロボット装置10の全体の動作を制御するコントローラ11が把持指令を生成するようにしてもよい。この場合、コントローラ11が上記制御装置として構成される。
【0055】
図6に示すように、制御ユニット70は、取得部71と、演算部72と、信号生成部73と、記憶部74とを有する。
【0056】
取得部71は、各センサ部20a,20bから出力される圧力検出位置およびその圧力値、並びにコントローラ11から出力される制御指令を受信する。各センサ部20a,20bから出力される圧力検出位置およびその圧力値を含む圧力情報は、ハンド部3(指部3a,3b)とワークとの接触時に検出される応力、さらには、ハンド部3(指部3a,30b)がワークを把持しているときにセンサ部20a,20bに作用する応力に関する情報である。取得部71は上記圧力情報を所定のフレームレート(サンプリングレート)で周期的に取得する。
【0057】
演算部72は、センサ部20a,20bによる面内方向での圧力検出位置及びそれらの圧力値に基づいて、把持面である圧力検出面Sに作用する圧力の面内分布を算出する。圧力検出面Sに垂直な荷重は、例えば、センサ部20a,20bの各センシング部28において取得される垂直荷重の総和により算出される。なお、センサ部20a,20bが図5に示したようなセンサシート220で構成される場合には、さらに、圧力検出面Sの面内方向におけるせん断力の分布を算出する。
【0058】
信号生成部73は、コントローラ11からの制御指令に基づいてハンド部3へワークを把持させるための把持指令のほか、ワークに対するハンド部3の相対位置を変化させる移動指令を含む制御指令を生成する。この把持指令には、ワークに対するハンド部3の把持力に関する情報を含む。信号生成部73は、生成した把持指令あるいは移動指令を、ハンド部3の駆動ユニット12aへ出力する。
【0059】
上記把持指令としては、ワークの搬送時に適用される高把持指令(高把持指令値)、ワークを把持した状態でハンド部3をワークに対して相対移動させる低把持指令(低把持指令値)、最低圧力把持指令(最低把持力)、把持解除指令などを含む。高把持指令は、ワークの滑りを生じさせることなくワークを安定に把持するのに十分な把持力(第1の把持力)であり、低把持指令は、高把持指令値より小さく、ワークの自重等によりハンド部3に対してワークを滑らせることが可能な把持力(第2の把持力)をいう。最低圧力把持指令とは、低把持指令値よりも小さく、ワークを落下させない程度に把持できる最低の圧力値である。ワークの滑りには、局所的な滑りと全体的な滑りが含まれるが、以下の説明では、ハンド部3に対するワークの全体的な滑りを「総滑り」ともいう。
【0060】
上記移動指令としては、ワークの把持位置や把持姿勢を変更する目的で、ワークに対するハンド部3の相対位置を変化させる指令(回動、直線移動など)をいう。
【0061】
駆動ユニット12aは、指部3a,3bを把持位置から非把持位置との間で移動させるアクチュエータであり、本実施形態では、微細送り制御が可能なパルスモータなどで構成される。
【0062】
記憶部74は、典型的には、半導体メモリで構成される。記憶部74は、第1の圧力センサ22a及び第2の圧力センサ22bによる面内方向での圧力検出位置に基づいて、面内方向におけるせん断力の分布を算出する処理手順を実行するためのプログラムや各種パラメータを記憶する。
【0063】
制御ユニット70は、複数のセンシング部28で検出される圧力の時間変化に基づいて把持面におけるワークの滑りを検出する。本実施形態において制御ユニット70は、後述するように、圧力検出値が所定時間内に変化したセンシング部28の数が所定の数以上に達したときに、把持面におけるワークの滑りを検出する。
【0064】
例えば図7A,Bは、把持面(圧力検出面S)におけるワークWの滑りを説明するセンサシート210の模式図である。図7A,Bにおいて網掛け部分のノードエリアは、ワークWに対する把持力の反作用を受けることで所定の閾値以上の圧力検出値を出力するON状態のセンシング部28を示しており、それ以外(白抜き部分)のノードエリアは、上記閾値未満の圧力検出値を出力するOFF状態のセンシング部28を示している。
【0065】
所定の把持力で把持されたワークWが図7Aに示す状態から図7Bに示すように重力方向(図中下方向)に滑りが生じたとき、ワークWの滑り方向に対応するようにON状態からOFF状態に、あるいは、OFF状態からON状態にセンシング部28の出力が変化する。制御ユニット70は、所定時間内にON/OFFの状態変化が生じたセンシング部28が所定の数以上に達したか否かを判定し、所定の数以上に達したときは把持面におけるワークWの滑りを検出する。ON/OFF状態変化の判定には、例えば排他的論理和(XOR)回路によって実現することができる。上記所定時間としては、フレームレートによって任意に設定可能であり、例えば数フレーム~数十フレームとすることができる。
【0066】
他の方法として、演算部72は、複数のセンシング部28の圧力検出値に基づいて算出される圧力中心位置または圧力分布が所定時間内に変化したときに、把持面におけるワークWの滑りを検出するように構成されてもよい。圧力中心位置は、例えば各センシング部28の検出値を定量的に検出することで、加重平均などの算術処理を用いて算出することができる。圧力分布については、例えば、ON状態のセンシング部28で構成される圧力分布の位置や形状が所定以上変化した場合にワークの滑りを検出するようにしてもよい。この場合、画像処理技術や機械学習技術が用いられてもよい。
【0067】
図8は、制御ユニット70において実行されるワークWの総滑り検出手順の一例を示すフローチャートである。ここでは、ワークWを上記低把持指令での圧力値で把持した状態でのワークWの総滑り検出手順について説明する。
【0068】
制御ユニット70は、まず、ON/OFFの状態変化が起こったセンシング部28(ノードエリア)が存在するか否かを判定する(ステップ101)。この処理は、図7A,Bを参照して説明した判定方法を用いることができる。
【0069】
続いて、制御ユニット70は、前フレームからON/OFFの状態変化が起こったセンシング部28の数を加算し、その数が所定の閾値以上であるか否かを判定する(ステップ103)。閾値未満のときは(ステップ103においてNo)、記憶部74などのメモリに設定された総滑り検知猶予フレーム数カウンタをインクリメントし、総滑り検知猶予フレーム数カウンタが閾値以上か否かを判定する(ステップ104、105)。総滑り検知猶予フレーム数カウンタが閾値未満の場合は上述の処理を繰り返し実行する。
【0070】
一方、ON/OFFの状態変化が起こったセンシング部28の総和が上記所定の閾値に達したときは、ワークWの総滑りが生じと判定し、ワークWの総滑りを検出する(ステップ106)。ワークWの総滑りを検出したとき、または、総滑り検知猶予フレーム数カウンタが閾値に達したときは、ON/OFFの状態変化が起こったセンシング部28の総和値および総滑り検知猶予フレーム数カウンタをゼロにリセットする(ステップ107)。
【0071】
[ロボット装置の制御]
図9は、ロボット装置10の制御系統の一例を示すブロック図である。ロボット装置10は、コントローラ11と、アーム部1、ハンド部3等を駆動する駆動部12とを有する。駆動部12は、指部3a,3bを駆動する駆動ユニット12aを含む。コントローラ11は、各種センサからの入力信号に基づき、ロボット装置10を動作させるための制御プログラムを実行することが可能に構成される。
【0072】
センサ部20a,20bは、上記各種センサの1つを構成し、ハンド部3におけるワークの把持面に取り付けられる。センサ部20a,20bは、コントローラ11からの制御指令に基づき、ハンド部3の指部3a,3bを駆動する駆動ユニット12aへワークを把持させるための把持指令を出力する。センサ部20a,20bは、圧力検出面Sに作用する押圧力(圧力分布、把持力(垂直荷重)あるいはせん断力)を検出し、制御ユニット70において上記押圧力の値を算出し、コントローラ11へ入力する。コントローラ11は、アーム部1およびハンド部3(指部3a,3b)の位置や姿勢を制御するための駆動信号を生成し、駆動部12へ出力する。駆動部12は、典型的には、電動モータや流体圧シリンダなどのアクチュエータであり、コントローラ11からの駆動信号に基づき、アーム部1やハンド部3等を駆動する。
【0073】
上述のように本実施形態では、ハンド部3の把持制御を、制御ユニット70において実行するように構成される。これに限られず、コントローラ11が直接、駆動ユニット12aへ把持指令を出力してハンド部3の把持制御を実行するようにしてもよい。この場合、制御ユニット70は、センサ部20a,20bに作用する圧力を演算し、コントローラ11へ出力する機能のみを実行する。
【0074】
続いて、コントローラ11および制御ユニット70の詳細について、本実施形態のロボット装置10の動作について説明する。
【0075】
(動作例1)
図10A~Cは、棚R上にワークとしてのボトルBを1つずつ載置する動作例を説明する模式図である。図11,12は、このときのロボット装置10の動作手順を示すフローチャートである。
【0076】
工場、店舗等で箱に詰まった飲料ボトルをピックアップし棚に陳列するような作業の際、人間の場合は鉛直下向きに把持したボトルを、手の中で横向きに持ち替えて棚の上下の板に干渉しないように置く、という動作を無意識に行っている。しかしながら、この方法ではワークを中間地点に配置・掴み直す余計な時間がかかり、作業スピード・タクトの観点で大きな問題となっていた。
【0077】
そこで本実施形態におれば、ハンド部3の中でボトルBを持ち替えるインハンドマニピュレーションを可能とし、これにより棚Rの所定位置にダイレクトにボトルBを搬送することで、作業スピード・タクトの改善を図れるようにしている。以下、その詳細について説明する。
【0078】
図10Aに示すように、ロボット装置10は、ハンド部3によりボトルBのキャップ部分Bcを高把持力指令値で把持した状態で、アーム部1を棚R上の所定位置(以下、ワーク回転位置(ワークに対してハンド部を回転させる位置)ともいう)へ移動させる(ステップ201)。このときハンド部3は、その先端部が重力方向下向き(図中下方)に位置する姿勢(第1の姿勢)でキャップ部分Bcを把持している。ハンド部3の当該姿勢は、ボトルBをピックアップするときの姿勢に相当する。
【0079】
続いてロボット装置10は、アーム部1をワーク回転位置で停止させ、ハンド部3の把持力を低把持指令値に設定する(ステップ202)。そして図10Bに示すように、ハンド部3の先端部が重力方向に直交する方向である水平方向(図中右方)に位置する姿勢(第2の姿勢)に変更するようにハンド部3を回動させ、ワーク(ボトルB)をその自重を利用してハンド部3の中で回転させる(ステップ203)。
【0080】
このとき制御ユニット70は、図8を参照して説明したワークの総滑り検出処理を実行する(ステップ204)。総滑りが検出されると(ステップ204においてYes)、制御ユニット70は、記憶部74などのメモリに設定された安定フレーム数カウンタをリセットする(ステップ205)。安定フレーム数カウンタは、ワークの総滑りが終了して姿勢が安定したか否かを判定するために参照される。
【0081】
安定フレーム数カウンタをリセットした後、制御ユニット70は、ワークの総滑りを再度検出する(ステップ206)。ワーク総滑りが検出されたときは(ステップ206においてYes)、安定フレーム数カウンタをリセットして再度ワーク総滑り検出処理を実行し(ステップ207、206)、ワーク総滑りが検出されなかったときは(ステップ206においてNo)、安定フレーム数カウンタをインクリメントして、安定フレーム数カウンタが所定の閾値以上であるか否かを判定する(ステップ208,209)。安定フレーム数カウンタが上記閾値未満のときは(ステップ209においてNo)、ステップ206~208の処理を繰り返し実行する。
【0082】
以上の一連の処理(ステップ204~209)は、典型的には、ワークの回転開始直後に行われる処理フローである。ワーク(ボトルB)は、ハンド部3の回動中も図10に示す直立姿勢を維持することが目的とされるため、これら一連の処理を実行することにより、ハンド部3の回動直後にワークが目的どおりにハンド部3の中で回転(総滑り)を開始するかどうかを監視することができる。
【0083】
一方、安定フレーム数カウンタが上記閾値以上のときは(ステップ209においてYes)、安定フレーム数カウンタをリセットして再度ワーク総滑り検出処理を実行する(ステップ210,211)。ワーク総滑りが検出されたときは(ステップ211においてYes)、制御ユニット70は安定フレーム数カウンタをリセットして再度ワーク総滑り検出処理を実行し(ステップ212,211)、ワーク総滑りが検出されなかったときは(ステップ211においてNo)、安定フレーム数カウンタをインクリメントして、安定フレーム数カウンタが所定の閾値以上であるか否かを判定する(ステップ213,214)。
【0084】
これら一連の処理(ステップ210~214)は、典型的には、ワークの回転終了間際に行われる処理フローである。ハンド部3の先端が図10Bに示す横向きの姿勢に回転し終わったとき、ワーク(ボトルB)は図10Bに示すように直立姿勢を維持することが目的とされるが、ハンド部3の回転中にワークがハンド部3と一体となって多少でも回転する場合が生じ得る。この場合は、ワークの直立姿勢に維持されていないため、棚Rへ安定にワークを載置できないおそれがある。これを回避するため、以下に説明するようにハンド部3の把持力をワークが落下しない程度にさらに低下させて、ワークの直立姿勢への復帰を促進する処理を実行する。
【0085】
安定フレーム数カウンタが所定の閾値未満のとき(ステップ214においてNo)、制御ユニット70は、ハンド部3の現在の把持力が最低把持力より高いか否かを判定し(ステップ215)、最低把持力より高いときは(ステップ215においてYes)、把持力を一定値減少させてワーク総滑り検出処理を再度実行する(ステップ216,211)。一方、現在の把持力が最低把持力のときは(ステップ215においてNo)、把持力を減少させることなく再度ワーク総滑り検出処理を実行する(ステップ211)。これらの処理を安定フレーム数カウンタが閾値以上(ステップ214においてYes)になるまで繰り返し実行することで、ハンド部3の回転動作終了後においてワーク(ボトルB)を直立姿勢に確実に維持することが可能となる。なお、ワークを安定して直立姿勢に維持できる場合は、これら一連の処理(ステップ210~216)を省略することも可能である。
【0086】
安定フレーム数カウンタが所定の閾値以上のとき(ステップ214においてYes)、制御ユニット70は、ハンド部3の把持力を高把持指令値に設定し、次の作業位置(図10Cの例では棚Rの上面)にワーク(ボトルB)を載置する高さへアーム部1を移動させる(ステップ217,218)。その後、ハンド部3の把持力を解除することで、棚R上へのボトルBの載置作業が完了する。
【0087】
以上のように本実施形態によれば、ワークを掴み直すことなく把持向きを変更することができるため、作業スピード・タクトの改善を図ることができる。
【0088】
(動作例2)
図13A,Bは、ケーブルCを把持するハンド部3をケーブルCの先端部Caへ手繰り寄せる動作例を説明する模式図である。図14,15は、このときのロボット装置10の動作手順を示すフローチャートである。
【0089】
工場等でケーブルの先に取り付けたコネクタをピックアップするような作業の際、各ケーブルの反りクセや束ね方によってコネクタの位置が大きくばらつきカメラによる把持位置決めが困難になるという問題があった。このような場合は、ばらついたコネクタ位置全てを認識可能な高画角なカメラを用いることもできるが、そのようなカメラは高価であるためコストの増大を招いていた。さらに、カメラによる画像認識は一般的に時間がかかり作業タクトの低下を招き、システム計算コストも大きくなるため問題となっていた。
【0090】
そこで本実施形態におれば、ハンド部3がケーブルCを把持した状態でケーブルCの先端部Caへハンド部3を手繰り寄せることで、ケーブルCの態様に依存せず、また高画角なカメラや高精度な画像処理を必要とすることなく、作業タクトおよびシステム計算コストの改善を図れるようにしている。以下、その詳細について説明する。
【0091】
図13Aに示すように、ロボット装置10は、アーム部1をケーブルCの任意の部位(例えば根本位置)へ移動させた後、ハンド部3の把持力を低把持指令値に設定して当該ケーブルCの部位を把持する(ステップ301,302)。ケーブルCの把持に関しては、例えば、あらかじめ設定された把持位置へ任意の形態で配置されたケーブルCの任意の部位を一定の把持シーケンスの実行によりケーブルCを把持してもよいし、アーム部等の任意の部位に設置されたカメラを用いてケーブルCの任意の部位を把持するようにしてもよい。
【0092】
続いて制御ユニット70は、ケーブルCを把持するハンド部3のセンサ部20a,20bの出力に基づいて所定の圧力分布プロファイルが存在するか否かを判定する(ステップ303)。所定の圧力分布プロファイルとしては、例えば、圧力検出値が所定の閾値以上のセンシング部28が把持面を一軸方向に横切るような圧力分布が挙げられる。このような圧力分布プロファイルの存在が検出されたとき(ステップ303においてYes)、制御ユニット70は、ケーブルCの先端に向けて、ケーブルCの長手方向に沿ってアーム部1を移動させる(ステップ304)。一方、上記圧力分布プロファイルが存在しないときは、所望とする把持状態にないと判定してハンド部3の把持力を開放し、把持動作を再度実行する(ステップ305)。
【0093】
制御ユニット70は、ケーブルCの先端に向けてアーム部1を移動させているとき、ハンド部3のセンサ部20a,20bで検出される圧力分布プロファイルが進行方向に関して一定距離以上右側に移動したか否かを判定する(ステップ306)。圧力分布プロファイルが上記右側に移動したと判定したときは(ステップ306においてYes)、制御ユニット70は、アーム部1の移動方向を進行方向に関して一定の角度右側に修正する(ステップ307)。
【0094】
一方、圧力分布プロファイルが上記右側に移動していないと判定したときは(ステップ306においてNo)、制御ユニット70は、上記圧力分布プロファイルが進行方向に関して一定距離以上左側に移動したか否かを判定する(ステップ308)。圧力分布プロファイルが上記左側に移動したと判定したときは(ステップ308においてYes)、制御ユニット70は、アーム部1の移動方向を進行方向に関して一定の角度左側に修正する(ステップ309)。
【0095】
これら一連の処理(ステップ306~309)により、アーム部1を移動させながらケーブルCの把持位置を把持面の中央領域に維持することができる。
【0096】
続いて制御ユニット70は、センサ部20a,20bの出力に基づいて所定の圧力分布プロファイルが存在するか否かを再度判定する(ステップ310)。この処理は、ケーブルCの手繰り動作過程においてハンド部3からのケーブルCの落下あるいは把持位置の大幅な逸脱の有無を確認するためのものであり、仮にケーブルCがハンド部3から落下したときは(ステップ310においてYes)、把持力を開放して上述した把持動作手順を繰り返し実行する(ステップ312,301~305)。
【0097】
制御ユニット70は、上記所定の圧力分布プロファイルの存在が確認されたときは、ケーブルCの先端部の圧力分布プロファイルを検出した否かを判定する(ステップ311)。ケーブル先端部の圧力分布プロファイルは、ケーブルCの先端部分Ca近傍の形状に対応する圧力分布プロファイルであり、あらかじめ記憶部74に格納される。制御ユニット70は、ケーブルCの先端部の圧力分布プロファイルを検出するまで、ステップ306~310の処理を繰り返し実行する(ステップ311においてNo)。
【0098】
一方、制御ユニット70は、ケーブルCの先端部の圧力分布プロファイルを検出したとき(ステップ311においてYes)、ハンド部3の把持力を高把持指令値に設定してケーブルCの先端部Caを把持する(ステップ313)。これによりハンド部3によるケーブルCの手繰り寄せ動作が終了する。その後、アーム部1を次の作業位置まで移動させることで、ケーブルCを上記作業位置へ搬送する(ステップ314)。
【0099】
以上のように本実施形態によれば、ケーブルCのような可撓性を有する線状部材を任意の位置から所望の位置へハンド部3を手繰り寄せることができるため、ケーブルCを目的とする姿勢で次工程へ搬送することができる。ケーブルCとしては、コネクタやハーネス等の接続プラグを有する配線部材のほか、ワイヤやホース等の各種線状部材に適用可能である。
【0100】
<変形例>
以上の実施形態では、ON/OFFの状態変化が起きたセンシング部28の個数が所定の閾値に達したか否かでハンド部3に対するワークWの総滑りを検出するようにしたが、これに限られない。例えば図5に示すセンサ構造を有するセンサ部においては、上記圧力検出値のほかせん断力の大きさ・方向をも考慮に加えてワークの総滑りを検出するようにしてもよい。これにより、ワークの滑り方向を検出することができるので、ワークの滑り方向が適正かどうかを判定することができる。
【0101】
また以上の実施形態では、圧力分布の検出に容量変化型の検出素子が用いられたが、これに限られず、例えば圧力の大きさに応じて抵抗値が変化する抵抗変化型の検出素子などが用いられてもよい。
【0102】
なお、本技術は以下のような構成もとることができる。
(1) ワークを把持可能な把持面をそれぞれ有する複数の指部を含むハンド部と、
前記複数の指部の少なくとも1つに設けられ、前記把持面における圧力分布を検出可能なセンサ部と、
前記センサ部の出力に基づいて前記把持面における前記ワークの滑りを検出し、前記ワークに対する前記ハンド部の相対位置を変化させる制御指令を生成するように構成された制御装置と
を具備するロボット装置。
(2)上記(1)に記載のロボット装置であって、
前記センサ部は、前記把持面に作用する圧力を検出する複数の容量素子を有する弾性変形可能なセンサシートで構成され、
前記制御装置は、前記複数の容量素子で検出される圧力の時間変化に基づいて前記把持面における前記ワークの滑りを検出する
ロボット装置。
(3)上記(2)に記載のロボット装置であって、
前記制御装置は、圧力検出値が所定時間内に変化した容量素子の数が所定の数以上に達したときに、前記把持面における前記ワークの滑りを検出する
ロボット装置。
(4)上記(2)に記載のロボット装置であって、
前記制御装置は、前記複数の容量素子の圧力検出値に基づいて算出される圧力中心位置または圧力分布が所定時間内に変化したときに、前記把持面における前記ワークの滑りを検出する
ロボット装置。
(5)上記(1)~(4)のいずれか1つに記載のロボット装置であって、
前記制御装置は、前記制御指令として、前記ワークを第1の把持力で把持した状態から、前記ワークを前記第1の把持力から前記第1の把持力よりも小さい第2の把持力に調整する圧力調整指令と、前記ワークに対する前記ハンド部の相対位置を変化させる移動指令とを生成する
ロボット装置。
(6)上記(5)に記載のロボット装置であって、
前記制御装置は、前記移動指令として、前記ハンド部の先端が重力方向下向きに位置する第1の姿勢から、前記ハンド部の先端が重力方向に直交する方向に位置する第2の姿勢に変更させる制御指令を生成する
ロボット装置。
(7)上記(5)または(6)に記載のロボット装置であって、
前記制御装置は、前記移動指令として、前記ワークの長手方向に沿って移動させる制御指令を生成する
ロボット装置。
(8)上記(2)に記載のロボット装置であって、
前記センサシートは、前記複数の容量素子がマトリクス状に配列されたセンサ電極層と、基準電位に接続されるリファレンス電極層と、前記センサ電極層と前記リファレンス電極層との間に配置された変形層とを有する圧力センサで構成される
ロボット装置。
(9)上記(2)に記載のロボット装置であって、
前記センサシートは、
前記複数の容量素子がマトリクス状に配列されたセンサ電極層と、基準電位に接続されるリファレンス電極層と、前記センサ電極層と前記リファレンス電極層との間に配置された変形層とをそれぞれ有する一対の圧力センサと、
前記一対の圧力センサの間に配置された粘弾性材料で構成された離隔層と
を有する
ロボット装置。
(10) ワークを把持可能なハンド部の把持面における圧力分布を検出可能なセンサ部の出力に基づいて前記把持面におけるワークの滑りを検出し、
前記ワークに対する前記ハンド部の相対位置を変化させる制御指令を生成する
ロボット装置の制御方法。
【符号の説明】
【0103】
3a,3b…指部
10…ロボット装置
11…コントローラ
12…駆動部
12a…駆動ユニット
20a,20b…センサ部
21…センサ部
23…離隔層
25…リファレンス電極層
27…変形層
28…センシング部
30…センサ電極層
70…制御ユニット
210,220…センサシート
W,C…ワーク
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15