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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024157953
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】打撃工具
(51)【国際特許分類】
   B25D 17/08 20060101AFI20241031BHJP
【FI】
B25D17/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023072653
(22)【出願日】2023-04-26
(71)【出願人】
【識別番号】000137292
【氏名又は名称】株式会社マキタ
(74)【代理人】
【識別番号】100078721
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 喜樹
(74)【代理人】
【識別番号】100121142
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 恭一
(72)【発明者】
【氏名】西川 貴大
(72)【発明者】
【氏名】ナッタポン・ソムサック
(72)【発明者】
【氏名】モンタナー・チュティマーランサン
【テーマコード(参考)】
2D058
【Fターム(参考)】
2D058AA15
2D058BA08
2D058CB07
(57)【要約】
【課題】ツールホルダを小径化してもチャックスリーブを支障なく組み付けでき、軽量化及びコンパクト化が達成できるようにする。
【解決手段】電動ハンマ1は、ツールホルダ20と打撃機構とを備え、ツールホルダ20の小径部22に、径方向へ移動可能なボール41が保持されてチャックスリーブ42が外装されている。チャックスリーブ42は、ボール41のビット挿入孔33内への突出状態を維持するロック位置と、ボール41への押圧を解除して径方向外側への移動を許容するロック解除位置とにスライド操作可能で、小径部22は、ビット挿入孔33内への突出状態のボール41を外周面から突出させる外径となっている。チャックスリーブ42の内周において、スライド操作時に外周面に対して摺動する第1内径部47には、チャックスリーブ42を小径部22へ組み付ける際にボール41との干渉を回避可能なスプライン溝50が形成されている。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビット挿入孔を有する筒状のツールホルダと、前記ビット挿入孔に挿入されたビットを打撃可能な打撃機構とを備え、前記ツールホルダに、前記ツールホルダの径方向へ移動可能で、前記ビット挿入孔内への突出状態で前記ビットに係止可能な係止部材が保持されていると共に、前記ツールホルダの軸線方向へスライド可能なチャックスリーブが外装されており、
前記チャックスリーブが、前記係止部材を前記径方向内側へ押圧して前記係止部材の前記ビット挿入孔内への突出状態を維持するロック位置と、前記係止部材への押圧を解除して前記係止部材の前記径方向外側への移動を許容するロック解除位置とにスライド操作可能な打撃工具であって、
前記ツールホルダは、前記ビット挿入孔内への突出状態の前記係止部材を外周面から突出させる外径となっている一方、
前記チャックスリーブの内周に、スライド操作時に前記外周面に対して摺動する摺動面が形成されて、前記摺動面に、前記チャックスリーブを前記ツールホルダへ組み付ける際に前記外周面から突出する前記係止部材との干渉を回避可能な逃がし部が形成されていることを特徴とする打撃工具。
【請求項2】
前記係止部材は、前記ツールホルダの周方向へ所定間隔をおいて複数配置されており、前記逃がし部は、各前記係止部材ごとに設けられていることを特徴とする請求項1に記載の打撃工具。
【請求項3】
前記逃がし部は、前記所定間隔ごとに形成された複数のスプライン溝であることを特徴とする請求項2に記載の打撃工具。
【請求項4】
前記係止部材及び前記逃がし部の数は、6つであることを特徴とする請求項2又は3に記載の打撃工具。
【請求項5】
前記ツールホルダは、前後方向に延びて前記チャックスリーブが前後方向へスライド可能で、前記チャックスリーブの前進位置が前記ロック位置、前記チャックスリーブの後退位置が前記ロック解除位置となっており、
前記チャックスリーブの前進位置で前記逃がし部は前記係止部材よりも後方に位置していることを特徴とする請求項1乃至4の何れかに記載の打撃工具。
【請求項6】
前記チャックスリーブの後退位置で前記係止部材は、前記チャックスリーブの前端よりも後方に位置していることを特徴とする請求項5に記載の打撃工具。
【請求項7】
前記外周面からの前記係止部材の突出量は、0.5mm以上であることを特徴とする請求項1乃至6の何れかに記載の打撃工具。
【請求項8】
前記ビット挿入孔は、前記ツールホルダの軸線と直交する横断面形状が六角形であることを特徴とする請求項1乃至7の何れかに記載の打撃工具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電動ハンマやハンマドリル等の打撃工具に関する。
【背景技術】
【0002】
電動ハンマ等の打撃工具は、モータと打撃機構とを備えている。モータの回転は、クランク機構等によってピストンの往復運動に変換される。打撃機構は、ストライカと、インパクトボルトとを備えている。ストライカは、シリンダ内でピストンに連動して往復動し、インパクトボルトを打撃する。ストライカによる打撃軸線上で打撃工具の先端には、ビットが差し込み装着される筒状のツールホルダが設けられている。ツールホルダに差し込まれたビットは、インパクトボルトに受け止められて、ストライカによるインパクトボルトの打撃がビットに伝わることになる。
ツールホルダへのビットの装着構造としては、特許文献1に開示されるように、ツールホルダに保持されるボールをビットの外面に係止させて抜け止めする構造が知られている。係止部材となるボールは、ツールホルダの径方向へ移動可能となっており、ツールホルダには、ボールをビット側へ押圧するロック位置と、押圧を解除するロック解除位置との間でスライド可能なチャックスリーブが外装されている。チャックスリーブは、ツールホルダに外装されたコイルバネにより、ロック位置へ付勢されている。チャックスリーブを作業者がロック解除位置へスライドさせると、ビットの抜き差しを行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005-138195号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような打撃工具においては、従来より軽量化及びコンパクト化の要請がある。よって、例えばツールホルダの外径を小さくすれば、軽量化及びコンパクト化に繋がる。
しかし、ビットが規格品で、これに合わせてツールホルダの内径及びボールの径が設計されるため、軽量化等を達成するには、ツールホルダの内径及びボールの径を変えずにツールホルダの外径のみを小さくすることが考えられる。このようにツールホルダの外経のみを小さくすると、ボールがツールホルダの外周面から突出することになる。
ところが、チャックスリーブは、スライド操作の安定とビットの確実なロックとを可能とするために、ツールホルダの外周面に沿って摺動する摺動面を内周に設ける必要がある。従って、ボールがツールホルダの外周面から突出するまでツールホルダを小径化すると、ツールホルダの軸線方向で摺動面とボールとが干渉し、チャックスリーブの組み付けができなくなってしまう。
【0005】
そこで、本開示は、外周面から係止部材が突出するまでツールホルダを小径化しても、チャックスリーブを支障なく組み付けでき、軽量化及びコンパクト化が達成できる打撃工具を提供することを目的としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本開示は、ビット挿入孔を有する筒状のツールホルダと、ビット挿入孔に挿入されたビットを打撃可能な打撃機構とを備え、ツールホルダに、ツールホルダの径方向へ移動可能で、ビット挿入孔内への突出状態でビットに係止可能な係止部材が保持されていると共に、ツールホルダの軸線方向へスライド可能なチャックスリーブが外装されており、
チャックスリーブが、係止部材を径方向内側へ押圧して係止部材のビット挿入孔内への突出状態を維持するロック位置と、係止部材への押圧を解除して係止部材の径方向外側への移動を許容するロック解除位置とにスライド操作可能な打撃工具であって、
ツールホルダは、ビット挿入孔内への突出状態の係止部材を外周面から突出させる外径となっている一方、
チャックスリーブの内周に、スライド操作時に外周面に対して摺動する摺動面が形成されて、摺動面に、チャックスリーブをツールホルダへ組み付ける際に外周面から突出する係止部材との干渉を回避可能な逃がし部が形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、ツールホルダの外周面から係止部材が突出するまでツールホルダを小径化しても、チャックスリーブを支障なく組み付けることができる。よって、ツールホルダの軽量化及びコンパクト化、ひいては打撃工具全体の軽量化及びコンパクト化が達成可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】電動ハンマの中央縦断面図である(チャックスリーブは前進位置)。
図2】チャック機構部分の拡大図である。
図3図2のA-A線断面図である。
図4図4Aは、チャックスリーブを前方から見た斜視図、図4Bは、チャックスリーブを後方から見た斜視図である。
図5図2のB-B線断面図である。
図6】チャックスリーブを前方から組み付ける状態を示す斜視図である。
図7】チャックスリーブを前方から組み付ける状態を示す正面図である。
図8】チャックスリーブを後退位置としたチャック機構部分の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本開示の一実施形態において、係止部材は、ツールホルダの周方向へ所定間隔をおいて複数配置されており、逃がし部は、各係止部材ごとに設けられるものであってもよい。
この構成によれば、係止部材が複数であっても対応する逃がし部によって組み付け時の干渉を回避できる。
本開示の一実施形態において、逃がし部は、所定間隔ごとに形成された複数のスプライン溝であってもよい。
この構成によれば、複数の逃がし部を形成しても摺動面によるチャックスリーブの安定した摺動が可能となる。
本開示の一実施形態において、係止部材及び逃がし部の数は、6つであってもよい。
この構成によれば、組み付け時にツールホルダの周方向で生じる係止部材と逃がし部とのずれ量が小さくなり、係止部材と逃がし部との位置を合わせやすくなる。
【0010】
本開示の一実施形態において、ツールホルダは、前後方向に延びてチャックスリーブが前後方向へスライド可能で、チャックスリーブの前進位置がロック位置、チャックスリーブの後退位置がロック解除位置となっており、チャックスリーブの前進位置で逃がし部は係止部材よりも後方に位置しているものであってもよい。
この構成によれば、ロック位置で係止部材が不意に逃がし部に嵌まってロックが解除されるおそれがなくなる。
本開示の一実施形態において、チャックスリーブの後退位置で係止部材は、チャックスリーブの前端よりも後方に位置しているものであってもよい。
この構成によれば、チャックスリーブの後退位置で係止部材が係止部材の保持孔から脱落するおそれがなくなる。
本開示の一実施形態において、外周面からの係止部材の突出量は、0.5mm以上であってもよい。
この構成によれば、ツールホルダの軽量化及びコンパクト化に効果的となる。
本開示の一実施形態において、ビット挿入孔は、ツールホルダの軸線と直交する横断面形状が六角形であってもよい。
この構成によれば、横断面が同形状となる部分を有するビットをがたつきなく保持できる。
【実施例0011】
以下、本開示の実施例を図面に基づいて説明する。
図1は、打撃工具の一例である電動ハンマを示している。電動ハンマ1は、本体ハウジング2と、モータハウジング3とを備えている。
本体ハウジング2は、打撃機構4を収容して、打撃軸線方向となる前後方向に延びる。モータハウジング3は、本体ハウジング2の下側へ一体に結合され、出力軸6を上向きとしたブラシレスのモータ5を収容している。出力軸6は、本体ハウジング2内に突出している。
電動ハンマ1は、外側ハウジング7と、ハンドルハウジング8とをさらに備えている。外側ハウジング7は、前後方向に延びて本体ハウジング2の外側を覆っている。ハンドルハウジング8は、外側ハウジング7の後側へ一体に結合され、外側ハウジング7の後方からモータハウジング3の下方にかけて設けられている。外側ハウジング7の前部には、サイドハンドル35が着脱可能に装着されている。
【0012】
ハンドルハウジング8は、ハンドル部9と、バッテリ装着部10と、コントローラ収容部11とを備えている。ハンドル部9は、上下方向に延び、前側に連結部12を備えている。連結部12は、外側ハウジング7の後端に連結されて本体ハウジング2の後部を後方から覆う。ハンドル部9は、スイッチ13及びスイッチレバー14を備えている。バッテリ装着部10は、ハンドル部9の下端に形成されている。コントローラ収容部11は、バッテリ装着部10の前側に連続し、モータハウジング3の下側に形成されている。コントローラ収容部11の前面上端には、係止部15が後ろ向きに形成されている。モータハウジング3の前面下端には、係止部15が前方から係止する係止凹部16が形成されている。
バッテリ装着部10には、電源となるバッテリパック17が後方からスライド装着可能となっている。バッテリ装着部10には、バッテリパック17が電気的に接続される端子台18が設けられている。
コントローラ収容部11には、制御回路基板を備えたコントローラ19が、上下方向及び左右方向に延びる縦向き姿勢で収容されている。
【0013】
打撃機構4は、筒状のツールホルダ20及びシリンダ23を備えている。ツールホルダ20は、後側の大径部21と、前側の小径部22とを同軸で備えている。大径部21は、本体ハウジング2の前部に形成した筒部に同軸で保持されている。小径部22は、本体ハウジング2から前方へ突出している。シリンダ23は、ツールホルダ20の後方で本体ハウジング2の筒部に同軸で保持されて前後方向に延びている。
本体ハウジング2内でシリンダ23の後側には、クランク軸24が上下方向に支持されている。クランク軸24の上部には、偏心ピン25が上向きに設けられ、クランク軸24には、ギヤ26が設けられている。ギヤ26は、出力軸6の上端に設けたピニオン27と噛合している。
シリンダ23には、ピストン28が前後移動可能に収容されている。ピストン28は、コネクティングロッド29を介して偏心ピン25と連結されている。シリンダ23内でピストン28の前方には、空気室30を介してストライカ31が前後移動可能に収容されている。ストライカ31の前方でツールホルダ20の大径部21内には、インパクトボルト32が設けられている。
【0014】
ツールホルダ20の小径部22の前部内周には、図2及び図3に示すように、正面視が正六角形のビット挿入孔33が形成されている。小径部22には、ビット挿入孔33に挿入されたビットを抜け止めするチャック機構40が設けられている。以下、チャック機構40について詳述する。
チャック機構40は、6つのボール41,41・・と、チャックスリーブ42と、ストッパリング43と、操作スリーブ44と、受けスリーブ45と、コイルバネ46とを含んでいる。これらは何れも金属製である。
6つのボール41は、小径部22に形成された6つのボール保持孔34,34・・にそれぞれ保持されている。ボール41は、本開示の係止部材の一例である。
各ボール保持孔34は、小径部22の軸心を中心とした同心円上で、且つビット挿入孔33の正六角形の各頂点に配置されている。各ボール保持孔34は、それぞれ小径部22を径方向に貫通している。各ボール保持孔34は、ボール41の直径よりやや大きい径で形成されている。但し、各ボール保持孔34におけるビット挿入孔33への開口部分は先細り状に形成されて、ビット挿入孔33内へボール41の直径よりも小さく開口している。
【0015】
よって、各ボール41は、各ボール保持孔34内で径方向へ移動可能に保持される。各ボール41は、径方向内側では、各ボール保持孔34の開口から部分的に突出する突出位置で抜け止めされる。
ここで、図2に示す小径部22の外径D1は、突出位置で抜け止めされる各ボール41の径方向最外位置を結ぶ仮想円の外径D2よりも小さくなっている。よって、突出位置の各ボール41は、小径部22の外周面から径方向外側へも突出することになる。この径方向外側への突出量、すなわち(D2-D1)/2は、0.5mmとなっている。
こうして小径部22の外径D1が小さく形成されることで、ツールホルダ20の軽量化及びコンパクト化が達成できる。
【0016】
チャックスリーブ42は、小径部22の前部に外装されている。チャックスリーブは、図4にも示すように、各ボール41の径方向外側で前後方向に移動可能なスリーブ形状となっている。チャックスリーブ42は、第1内径部47、第2内径部48、第3内径部49を有している。
第1内径部47は、チャックスリーブ42の後端に形成されて、小径部22の外周面に沿って摺動する。第1内径部47は、本開示の摺動面の一例である。
第2内径部48は、第1内径部47よりも大径で、且つ仮想円の外径D2よりも僅かに大径で、突出位置の各ボール41に当接又は近接可能となっている。
第3内径部49は、第2内径部48よりも大径となっている。よって、第3内径部49が径方向外側に位置する場合、各ボール41は、突出位置から径方向外側へ移動してビット挿入孔33から突出しない退避位置へ移動可能となる。
但し、第1内径部47には、図5にも示すように、8つのスプライン溝50,50・・が形成されている。スプライン溝50は、ボール41と同じ周方向の間隔で、最深部が第2内径部48の内径と略同じ内径となっている。スプライン溝50は、本開示の逃がし部の一例である。
チャックスリーブ42の前部外周には、後部よりも大径となる係止段部51が形成されている。
【0017】
ストッパリング43は、小径部22の前端に外装されている。ストッパリング43は、チャックスリーブ42の第3内径部49が摺接する外径を有している。ストッパリング43は、小径部22の前端外周に係止するCリング52により、各ボール41よりも前方で位置決めされている。チャックスリーブ42が前後移動する際には、第3内径部49がストッパリング43の外周面に沿って摺動することで前後移動がガイドされる。チャックスリーブ42は、第2内径部48と第3内径部49との間の段部がストッパリング43に当接することで前進が規制される。この前進位置では、第2内径部48が各ボール41の径方向外側に位置して各ボール41を突出位置へ押圧する。
【0018】
操作スリーブ44は、チャックスリーブ42に外装されている。操作スリーブ44は、内筒部53と、外筒部54とを備えている。内筒部53は、チャックスリーブ42に外装される。外筒部54は、内筒部53の前端から拡径して後方へ同軸で延びている。内筒部53の前端は、チャックスリーブ42の係止段部51に当接している。内筒部53の後端は、チャックスリーブ42の後端外周に係止される係止リング55に当接している。よって、操作スリーブ44とチャックスリーブ42とは、一体に前後移動可能に結合される
受けスリーブ45は、操作スリーブ44の後方に同軸で設けられている。受けスリーブ45の前部は、操作スリーブ44の外筒部54の内径よりも小さい外径を有している。受けスリーブ45の内周には、本体ハウジング2の前端に係止するリング状のバネ受け部56が形成されている。
【0019】
コイルバネ46は、操作スリーブ44と受けスリーブ45との間で小径部22に外装されている。コイルバネ46の前部は、操作スリーブ44の内筒部53に外装されている。コイルバネ46の前端は、内筒部53と外筒部54との間に当接している。コイルバネ46の後端は、受けスリーブ45のバネ受け部56に当接している。
よって、受けスリーブ45は、コイルバネ46により、バネ受け部56が本体ハウジング2の前端に係止する位置に付勢される。操作スリーブ44は、コイルバネ46により、チャックスリーブ42がストッパリング43に当接する前進位置に付勢される。この状態で操作スリーブ44の外筒部54の後端は、受けスリーブ45の前端に径方向外側から重なっている。
【0020】
このチャック機構40の組み付けは、図6に示すように、先に受けスリーブ45を小径部22に外装して本体ハウジング2の前端に係止させた状態で、コイルバネ46を小径部22に外装する。小径部22の各ボール保持孔34には、それぞれボール41を径方向外側から保持させる。そして、操作スリーブ44を組み付けたチャックスリーブ42を小径部22に前方から外装することになる。
このとき、図7に示すように、チャックスリーブ42の第1内径部47の各スプライン溝50と、小径部22の外周面から突出する各ボール41との位相を合わせれば、前後方向で第1内径部47と各ボール41との干渉を回避できる。よって、そのままチャックスリーブ42を小径部22に外装させて第1内径部47がボール41の後方に位置するまで押し込むことができる。最後に小径部22にストッパリング43を係止させてチャックスリーブ42を抜け止めすれば、チャック機構40の組み付けは完了する。
【0021】
図1において、外側ハウジング7及びハンドルハウジング8は、本体ハウジング2及びモータハウジング3に対して前後へ相対移動可能に設けられている。
本体ハウジング2とハンドル部9との間には、第1コイルバネ60が前後方向に設けられている。第1コイルバネ60は、連結部12内で、本体ハウジング2の後面と連結部12の前面とにそれぞれ設けられた前ボス61と後ボス62とに跨がって両端が外装されている。第1コイルバネ60は、1つ又は複数を左右方向に並べて配置されている。
モータハウジング3とコントローラ収容部11との間にも第2コイルバネ63が設けられている。モータハウジング3の下面には、コントローラ収容部11内へ下向きに突出する突出片64が設けられている。コントローラ収容部11内には、突出片64の後方に位置する受けリブ65が設けられている。第2コイルバネ63は、突出片64と受けリブ65との間で前後方向に保持されている。
外側ハウジング7及びハンドルハウジング8は、常態では第1、第2コイルバネ60,63の付勢により、コントローラ収容部11の係止部15がモータハウジング3の係止凹部16に当接する図1の後退位置へ弾性的に付勢される。
【0022】
以上の如く構成された電動ハンマ1は、小径部22にビットを装着する場合、操作スリーブ44を把持して、図8に示すように、コイルバネ46の付勢に抗してチャックスリーブ42を、第2内径部48が各ボール41より後方に位置する後退位置までスライドさせる。すると、第2内径部48による各ボール41の押圧が解除されるため、二点鎖線で示すようにビット70を後端からビット挿入孔33内に挿入することができる。チャックスリーブ42の後退位置は、本開示のロック解除位置の一例である。
チャックスリーブ42の後退位置で各ボール41は、チャックスリーブ42の前端よりも後方に位置している。このとき第3内径部49が各ボール41の径方向外側に位置するため、各ボール41が不意にボール保持孔34から脱落するおそれはない。
【0023】
その後、操作スリーブ44の把持を解除すれば、コイルバネ46の付勢により、操作スリーブ44と共にチャックスリーブ42が前進位置へ復帰し、第2内径部48が各ボール41を突出位置へ押圧する。この突出位置で各ボール41がビット70の外面で前後方向に設けた凹部71に係止してビット70を抜け止めすることになる。チャックスリーブ42の前進位置は、本開示のロック位置の一例である。
チャックスリーブ42の前進位置で第1内径部47は、各ボール41よりも後方に位置している。よって、ビット70を抜け止めしている状態でボール41が偶発的にスプライン溝50へ嵌まり込んでロックが解除されるおそれはない。
なお、ビット70を抜き取る場合も同様に、操作スリーブ44を介してチャックスリーブ42を後退位置へスライドさせる。すると、第2内径部48による各ボール41の押圧が解除されるため、ビット70をビット挿入孔33から抜き取ることができる。
【0024】
こうしてビット70を装着した状態で、ハンドル部9を把持する手で電動ハンマ1を前方の被加工材側へ押し込む。すると、ビット70が後退してインパクトボルト32に当接する。続いて外側ハウジング7及びハンドルハウジング8が、第1、第2コイルバネ60,63の付勢力に抗して前進する。
そして、スイッチレバー14を押し込んでスイッチ13をONさせると、コントローラ19は、モータ5を駆動させる。
なお、ハンドル部9には、スイッチレバー14を押し込み位置で保持するロックオンボタン66(図1)が設けられている。よって、スイッチレバー14を押し込んだ状態でロックオンボタン66を押し込み操作すれば、その後はスイッチレバー14の押し込みを維持しなくてもモータ5の駆動は継続する。
【0025】
モータ5が駆動して出力軸6が回転すると、ピニオン27及びギヤ26を介してクランク軸24が回転する。よって、偏心ピン25が偏心運動し、コネクティングロッド29を介してピストン28が往復動する。これにより、空気室30を介してストライカ31が連動して往復動する。ストライカ31が往復動してインパクトボルト32を介してビット70を打撃することで、ビット70による破砕作業等が可能となる。
このとき、外側ハウジング7及びハンドルハウジング8が、第1、第2コイルバネ60,63の付勢力に抗して前進して本体ハウジング2及びモータハウジング3と接触していない。よって、作業時に外側ハウジング7及びハンドルハウジング8に伝わる振動が抑制され、ハンドル部9を把持する手に伝わる振動が小さくなる。
【0026】
このように、電動ハンマ1は、ビット挿入孔33を有する筒状のツールホルダ20と、ビット挿入孔33に挿入されたビット70を打撃可能な打撃機構4とを備え、ツールホルダ20の小径部22に、小径部22の径方向へ移動可能で、ビット挿入孔33内への突出状態でビット70に係止可能なボール41が保持されていると共に、ツールホルダ20の軸線方向へスライド可能なチャックスリーブ42が外装されている。また、チャックスリーブ42は、ボール41を径方向内側へ押圧してボール41のビット挿入孔33内への突出状態を維持するロック位置と、ボール41への押圧を解除してボール41の径方向外側への移動を許容するロック解除位置とにスライド操作可能である。
そして、ツールホルダ20の小径部22は、ビット挿入孔33内への突出状態のボール41を外周面から突出させる外径となっている一方、チャックスリーブ42の内周に、スライド操作時に外周面に対して摺動する第1内径部47が形成されて、第1内径部47に、チャックスリーブ42を小径部22へ組み付ける際に外周面から突出するボール41との干渉を回避可能なスプライン溝50が形成されている。
この構成によれば、小径部22の外周面からボール41が突出するまでツールホルダ20を小径化しても、チャックスリーブ42を支障なく組み付けることができる。よって、ツールホルダ20の軽量化及びコンパクト化、ひいては電動ハンマ1全体の軽量化及びコンパクト化が達成可能となる。
【0027】
ボール41は、ツールホルダ20の周方向へ所定間隔をおいて複数配置されており、スプライン溝50は、各ボール41ごとに設けられている。
よって、ボール41が複数であっても対応するスプライン溝50によって組み付け時の干渉を回避できる。
逃がし部は、所定間隔ごとに形成されたスプライン溝50である。
よって、複数の逃がし部を形成しても第1内径部47によるチャックスリーブ42の安定した摺動が可能となる。
ボール41及びスプライン溝50の数は、6つである。
よって、組み付け時にツールホルダ20の周方向でのボール41とスプライン溝50とのずれ量が小さくなり、ボール41とスプライン溝50との位置を合わせやすくなる。
【0028】
ツールホルダ20は、前後方向に延びてチャックスリーブ42が前後方向へスライド可能で、チャックスリーブ42の前進位置がロック位置、チャックスリーブ42の後退位置がロック解除位置となっており、チャックスリーブ42の前進位置でスプライン溝50はボール41よりも後方に位置している。
よって、ロック位置でボール41が不意にスプライン溝50に嵌まってロックが解除されるおそれがなくなる。
チャックスリーブ42の後退位置でボール41は、チャックスリーブ42の前端よりも後方に位置している。
よって、チャックスリーブ42の後退位置でボール41がボール保持孔34から脱落するおそれがなくなる。
小径部22からのボール41の突出量は、0.5mmである。
よって、ツールホルダ20の軽量化及びコンパクト化に効果的となる。
ビット挿入孔33は、ツールホルダ20の軸線と直交する横断面形状が正六角形である。
よって、横断面が同形状となる部分を有するビット70をがたつきなく保持できる。
【0029】
以下、本開示の変更例について説明する。
スプライン溝の数は、ボールの数に合わせて増減可能である。溝の形状も、例えば半円形とする等適宜変更可能である。
逃がし部は、上記実施例のようにボールと一対一で設ける場合に限らない。例えば逃がし部は、複数のボールに跨がって周方向に延びる溝としてもよい。
チャックスリーブの第1内径部は、上記実施例よりも軸方向に長く形成してもよい。操作スリーブとの結合構造も適宜変更できる。但し、操作スリーブをなくして操作部分をチャックスリーブへ一体に形成してもよい。
ツールホルダの外周面からのボールの突出量は、0.5mmに限らず、0.5mmを越える突出量であってもよい。このように突出量が大きくなるようにツールホルダを小径化すれば、一層の軽量化及びコンパクト化が可能となる。
ツールホルダのビット挿入孔は、正面視正六角形でなくてもよい。他の多角形や円形であってもよい。
係止部材は、ボールに限らない。例えば前後方向へ延びるローラであってもよい。
電動ハンマは、第1、第2コイルバネによる防振機構がないものであってもよい。電動ハンマは、バッテリパックを使用しないAC機であってもよい。
本開示の打撃工具は、電動ハンマに限らない。打撃工具は、チャックスリーブを含むチャック機構を備えたものであれば、ハンマモードで使用できるハンマドリルも含まれる。打撃工具は、当該チャック機構を備えたものであれば、電動でなくエア駆動であってもよい。
【符号の説明】
【0030】
1・・電動ハンマ、2・・本体ハウジング、3・・モータハウジング、4・・打撃機構、5・・モータ、6・・出力軸、7・・外側ハウジング、8・・ハンドルハウジング、9・・ハンドル部、13・・スイッチ、14・・スイッチレバー、19・・コントローラ、20・・ツールホルダ、21・・大径部、22・・小径部、23・・シリンダ、31・・ストライカ、32・・インパクトボルト、33・・ビット挿入孔、34・・ボール保持孔、40・・チャック機構、41・・ボール、42・・チャックスリーブ、43・・ストッパリング、44・・操作スリーブ、45・・受けスリーブ、46・・コイルバネ、47・・第1内径部、48・・第2内径部、49・・第3内径部、50・・スプライン溝、70・・ビット。
図1
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