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  • 特開-成形体及び成形体の成形方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024157956
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】成形体及び成形体の成形方法
(51)【国際特許分類】
   B68G 7/05 20060101AFI20241031BHJP
   B29C 39/10 20060101ALI20241031BHJP
   B29C 44/00 20060101ALI20241031BHJP
   B29C 44/12 20060101ALI20241031BHJP
   A47C 27/14 20060101ALI20241031BHJP
   A47C 31/02 20060101ALI20241031BHJP
   B60N 2/58 20060101ALI20241031BHJP
【FI】
B68G7/05 A
B29C39/10
B29C44/00 A
B29C44/12
B68G7/05 B
B68G7/05 C
A47C27/14 A
A47C31/02 A
B60N2/58
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023072659
(22)【出願日】2023-04-26
(71)【出願人】
【識別番号】000219668
【氏名又は名称】東海化成工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078721
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 喜樹
(74)【代理人】
【識別番号】100121142
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 恭一
(74)【代理人】
【識別番号】100124420
【弁理士】
【氏名又は名称】園田 清隆
(72)【発明者】
【氏名】奥村 剛正
(72)【発明者】
【氏名】坂下 幸宏
(72)【発明者】
【氏名】續木 敏晴
(72)【発明者】
【氏名】金 俊
(72)【発明者】
【氏名】兒島 佳甫
【テーマコード(参考)】
3B087
3B096
4F204
4F214
【Fターム(参考)】
3B087DE03
3B096AD07
4F204AA42
4F204AB02
4F204AC05
4F204AD16
4F204AG03
4F204AG20
4F204AH27
4F204AM32
4F204EA01
4F204EB11
4F204EF05
4F204EF27
4F204EK17
4F204EL24
4F214AA42
4F214AB02
4F214AC05
4F214AD16
4F214AG03
4F214AG20
4F214AH27
4F214AM32
4F214UA01
4F214UB01
4F214UB11
4F214UD17
4F214UF05
4F214UF27
4F214UK24
(57)【要約】
【課題】より低コストで品質が良好であり、表皮材の配置精度が良好であり、歩留まりが良好であり、発泡樹脂の漏出が抑制された成形体、及びその成形方法を提供する。
【解決手段】成形体1は、表皮材2と、基材4と、発泡体6と、を備えている。発泡体6は、表皮材2と基材4とで囲まれた部分に配置されている。表皮材2は、基材4の端部である縫製部隣接部30と接触している。又、表皮材2は、縫製線Lと、縫製線Lから外方に突出する第1縫い代21及び第2縫い代22を有している。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表皮材と、基材と、発泡体と、を備えており、
前記発泡体は、前記表皮材と前記基材とで囲まれた部分に配置されており、
前記表皮材は、前記基材の端部と接触していると共に、縫製線と、前記縫製線から外方に突出する縫い代を有している
ことを特徴とする成形体。
【請求項2】
前記基材における1つの端部は、前記縫製線を挟んで対向する前記表皮材の2つの接触箇所で接触している
ことを特徴とする請求項1に記載の成形体。
【請求項3】
前記表皮材は、前記基材における1つの端部に対して押し付けられている
ことを特徴とする請求項1に記載の成形体。
【請求項4】
前記基材における1つの端部は、丸みを帯びている
ことを特徴とする請求項1に記載の成形体。
【請求項5】
前記基材における丸みを帯びている端部の最大厚さは、前記基材におけるその端部に隣接する部分の厚さより厚い
ことを特徴とする請求項3に記載の成形体。
【請求項6】
前記基材における丸みを帯びている端部の最大厚さは、前記基材におけるその端部に隣接する部分の厚さより薄い
ことを特徴とする請求項3に記載の成形体。
【請求項7】
前記表皮材は、前記発泡体から見て、前記基材より外方に配置されている
ことを特徴とする請求項1に記載の成形体。
【請求項8】
前記表皮材は、前記基材に密着している
ことを特徴とする請求項1に記載の成形体。
【請求項9】
前記基材は、前記表皮材に覆われる貫通孔を有している
ことを特徴とする請求項1に記載の成形体。
【請求項10】
前記表皮材は、第1シートと、第2シートと、を有しており、
前記第1シート及び前記第2シートは、前記縫製線において縫合されている
ことを特徴とする請求項1に記載の成形体。
【請求項11】
前記表皮材は、一連のシートを有しており、
前記シートは、前記縫製線を有している
ことを特徴とする請求項1に記載の成形体。
【請求項12】
請求項1から請求項11の何れかに記載の成形体を、第1の型及び第2の型により成形する成形方法であって、
前記縫い代が、前記第1の型及び前記第2の型により挟み込まれて固定された状態で、前記発泡体が成形される
ことを特徴とする成形体の成形方法。
【請求項13】
請求項1から請求項11の何れかに記載の成形体を、第1の型及び第2の型により成形する成形方法であって、
前記縫い代に固定された補材が、前記第1の型及び前記第2の型の少なくとも一方に固定された状態で、前記発泡体が成形される
ことを特徴とする成形体の成形方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、表皮を有する成形体、及び当該成形体を成形する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
複数のシート同士の縁を縫い合わせて形成された袋状の表皮体の内部に発泡樹脂を注入することで表皮一体発泡成形体を得る手法として、特開2005-34212号公報(特許文献1)、及び特開平5-162148号公報(特許文献2)に開示されたものが知られている。
特開2005-34212号公報の手法では、複数のシート同士の縁を、毛羽立たせた帯状のシール材と共に縫い合わせ、裏返った状態から表に返して縫い代を中に隠した状態として表皮材が形成され、その表皮材の内部空間に液状の発泡樹脂が充填される。
特開平5-162148号公報の手法では、複数のシートの縫合により開口部を有する袋状に形成された表皮体に対し、縫い代を内側とした状態で、開口部から発泡樹脂が注入される。開口部におけるシートの一対の自由端部の一方に隣接して、1つの縫合部が配置される。内方へ突出する縫い代との関係で開口部から離れる方向に生じる復元力により起立する当該自由端部は、発泡樹脂の注入後、割り型により、他方の自由端部に対して押圧される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005-34212号公報
【特許文献2】特開平5-162148号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本願の図5(A)及び図5(B)に示される通り、上記の各手法のように縫い代SSを内側とした表皮材EEと、インサート品としての基材BBとの間に発泡樹脂FFが充填される場合、発泡時において、図5(A)に示されるように、表皮材EEは、2枚のシートの縫い代SSが基材BBの辺縁に接触する状態で、型に固定される。小さいシートにおける縫い代SS以外の部分は、巻き込み部CCとされ、発泡時において、基材BBから離れた状態で型に固定される。そして、発泡後、図5(B)に示されるように、巻き込み部CCが、基材BBの表面に形成された爪NN、あるいはタッカーにより、基材BBに固定される。
この場合、発泡後に巻き込み部CCを固定する工程、及び固定のための爪NNが必要となり、その分、手間、及び基材BBの構成要素が増える。又、特開平5-162148号公報の手法において見受けられた復元力により、巻き込み部CCには基材BBから離れようとする力(矢印RR)が作用する。よって、表皮材EEの型へのセット、及び巻き込み部CCの基材BBに対する固定の維持に、それぞれ配慮が必要となる。
【0005】
他方、図6に示されるように、巻き込み部CCを基材BB’の爪NN’に固定した状態で発泡樹脂FFを充填することが考えられる。
この場合、発泡後の巻き込み部CCの固定に係る後工程は不要となるものの、発泡の圧力を受けても巻き込み部CCが爪NN’から離れないようにするために、爪NN’の形状を鉤状等の複雑な形状にする必要がある。又、かような複雑な形状である爪NN’の付いた基材BB’を型に固定する必要があり、型の形状がより複雑になる。そして、この場合においても、巻き込み部CCには基材BB’から離れようとする力が作用するため、巻き込み部CCの基材BB’に対する配置精度の維持に、配慮が必要となる。
【0006】
そこで、本開示は、基材及び型の形状がよりシンプルであり、基材及び表皮材の型へのセットがより行い易く成形性がより良好である成形体の成形方法を提供し、より低コストで品質の良好な成形体を提供することを第1の主な目的としたものである。
又、本開示は、表皮材の配置精度がより良好である成形体の成形方法を提供し、より配置精度の良好な成形体を得ることを第2の主な目的としたものである。
更に、本開示は、縫い代による発泡の阻害が抑制される成形体の成形方法を提供し、より歩留まりの良い良好な成形体を得ることを第3の主な目的としたものである。
又更に、本開示は、縫製部からの発泡樹脂の漏出が抑制される成形体の成形方法を提供し、発泡樹脂の漏出が抑制された良好な成形体を得ることを第4の主な目的としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本開示の第1の構成は、表皮材と、基材と、発泡体と、を備えており、発泡体は、表皮材と基材とで囲まれた部分に配置されており、表皮材は、基材の端部と接触していると共に、縫製線と、縫製線から外方に突出する縫い代を有していることを特徴とするものである。
第1の構成の別の態様は、上記構成において、基材における1つの端部は、縫製線を挟んで対向する表皮材の2つの接触箇所で接触していることを特徴とするものである。
第1の構成の別の態様は、上記構成において、表皮材は、基材における1つの端部に対して押し付けられていることを特徴とするものである。
第1の構成の別の態様は、上記構成において、基材における1つの端部は、丸みを帯びていることを特徴とするものである。
第1の構成の別の態様は、上記構成において、基材における丸みを帯びている端部の最大厚さは、基材におけるその端部に隣接する部分の厚さより厚いことを特徴とするものである。
第1の構成の別の態様は、上記構成において、基材における丸みを帯びている端部の最大厚さは、基材におけるその端部に隣接する部分の厚さより薄いことを特徴とするものである。
第1の構成の別の態様は、上記構成において、表皮材は、発泡体から見て、基材より外方に配置されていることを特徴とするものである。
第1の構成の別の態様は、上記構成において、表皮材は、基材に密着していることを特徴とするものである。
第1の構成の別の態様は、上記構成において、基材は、表皮材に覆われる貫通孔を有していることを特徴とするものである。
第1の構成の別の態様は、上記構成において、表皮材は、第1シートと、第2シートと、を有しており、第1シート及び第2シートは、縫製線において縫合されていることを特徴とするものである。
第1の構成の別の態様は、上記構成において、表皮材は、一連のシートを有しており、シートは、縫製線を有していることを特徴とするものである。
【0008】
上記目的を達成するために、本開示の第2の構成は、外方に突出する縫い代を有する成形体を、第1の型及び第2の型により成形する成形方法であって、縫い代が、第1の型及び第2の型により挟み込まれて固定された状態で、発泡体が成形されることを特徴とするものである。
上記目的を達成するために、本開示の第3の構成は、外方に突出する縫い代を有する成形体を、第1の型及び第2の型により成形する成形方法であって、縫い代に固定された補材が、第1の型及び第2の型の少なくとも一方に固定された状態で、発泡体が成形されることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、基材及び型の形状がよりシンプルであり、基材及び表皮材の型へのセットがより行い易く成形性がより良好である成形体の成形方法が提供され、より低コストで品質の良好な成形体が提供される。
又、本開示によれば、表皮材の配置精度がより良好である成形体の成形方法が提供され、より配置精度の良好な成形体が得られる。
更に、本開示によれば、縫い代による発泡の阻害が抑制される成形体の成形方法が提供され、より歩留まりの良い良好な成形体が得られる。
又更に、本開示によれば、縫製部からの発泡樹脂の漏出が抑制される成形体の成形方法が提供され、発泡樹脂の漏出が抑制された良好な成形体を得られる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本開示に係る成形体の断面図である。
図2図2(A)は、図1の表皮材であって、基材と一体化する前のものの一部断面図であり、図2(B)は、図2(A)の変更例を示す図である。
図3図3(A)は、図1の仮想円C内に相当する部分において、成形時の成形体と型とを示す断面図であり、図3(B)は、図3(A)の変更例を示す図である。
図4図4(A)は、図1の変更例を示す断面図であり、図4(B)は、図4(A)の部分拡大図であって、図1の仮想円C内に相当する部分の拡大図である。
図5図5(A)は、従来の成形工程を示す成形体の断面図であり、図5(B)は、従来の後工程を示す成形体の断面図である。
図6】別の従来の成形工程を示す成形体の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本開示に係る実施の形態、及びその変更例が、適宜図面に基づいて説明される。尚、当該形態及び変更例は、下記に限定されない。
【0012】
図1は、本開示に係る成形体1の一例を示す断面図である。
成形体1は、自動車のドアに取り付けるアームレストである。尚、成形体1は、自動車のドア用のアームレストに限られない。
成形体1は、表皮材2と、基材4と、発泡体6と、を備えている。
【0013】
表皮材2は、第1シート11と、第2シート12と、を含む。尚、表皮材2を構成するシートは、2枚に限られず、1枚であっても良いし、3枚以上であっても良い。
【0014】
第1シート11は、3層構造であり、図2(A)に示されるように、芯層13と、表層14と、フィルム層15と、を有する。図2(A)は、基材4と一体化する前における表皮材2の一部断面図である。
芯層13は、例えばプラスチックであり、より詳しくはスラブウレタンである。
表層14は、例えばファブリックである。表層14は、芯層13の表面に付着される。
フィルム層15は、例えばウレタンフィルムである。フィルム層15は、芯層13の裏面に付着される。
成形体1において、第1シート11におけるアームレストの延びる方向に交わる断面、即ち第1シート11の横断面は、倒れた“L”字状である。アームレストの延びる方向は、図1の紙面に垂直な方向であり、以下適宜「延伸方向」と呼ばれる。
第1シート11は、重力によりたわむ程度の剛性を有する。
尚、第1シート11は、1層構造であっても良いし、2層構造であっても良いし、4層以上を有する構造であっても良い。又、第1シート11は、重力によりたわまない程度以上の剛性を有していても良い。
【0015】
第2シート12は、3層構造であり、芯層16と、表層17と、フィルム層18と、を有する。
芯層16は、芯層13と同様に成る。
表層17は、表層14と同様に成る。
フィルム層18は、フィルム層15と同様に成る。
横断面において、第2シート12の長さは、第1シート11の長さより短い。
第2シート12は、重力によりたわむ程度の剛性を有する。
尚、第2シート11は、1層構造であっても良いし、2層構造であっても良いし、4層以上を有する構造であっても良い。又、第2シート11の層構造は、第1シート11の層構造と異なっていても良い。更に、第2シート12は、重力によりたわまない程度以上の剛性を有していても良い。
【0016】
第1シート11及び第2シート12は、縫製線Lにより縫合されている。より詳しくは、第1シート11の右端部と、第2シート12の上端部とが、縫製線Lにより縫合されている。尚、成形体1の上下左右は、説明の便宜のため、図1に示された通りとする。
第1シート11における縫製線Lより右側の部分は、第1縫い代21である。第2シート12における縫製線Lより上側の部分は、第2縫い代22である。第2シート12における縫製線Lより下側の部分は、巻き込み部23である。巻き込み部23の横断面の形状は、2つのコーナー部を有するクランク状である。
巻き込み部23には、図1に矢印Rで示されるように、縫製線Lに起因する復元力が作用する。よって、巻き込み部23には、基材4に近づく方向の内在的な力が作用している。
尚、図2(B)に示されるように、巻き込み部23’は、一連の1枚のシートSを折り返すことで形成されても良い。この場合、図2(A)における第1縫い代21及び第2縫い代22は、シートSの折り返し部Tに代わる。折り返し部Tの形状は、縫製線L’により固定される。
【0017】
基材4は、例えばプラスチックである。基材4は、重力ではたわまず形状を保持可能である程度以上の剛性を有する。尚、基材4は、重力によりたわむ程度の剛性を有していても良い。
基材4の横断面における全体的な形状は、2つのコーナー部を有するクランク状である。
基材4は、縫製部隣接部30と、複数の貫通孔32と、を有する。
縫製部隣接部30は、基材4の上端部に配置されている。縫製部隣接部30は、下側の部分に対して、側方(ここでは右方)に位置するように、一部曲がった形状を有している。縫製部隣接部30の横断面における上部の形状は、半円筒状となっている。縫製部隣接部30の辺縁部は、丸みを帯びている。縫製部隣接部30の丸みを帯びた部分の最大厚さは、下側の部分の厚さより厚い。尚、縫製部隣接部30の丸みを帯びた部分の最大厚さは、下側の部分の厚さより薄くても良い。又、縫製部隣接部30は、丸みを帯びていなくても良い。更に、縫製部隣接部30は、半円筒状以外の形状において丸みを帯びていても良い。例えば、縫製部隣接部30の丸みは、四半円筒状、半楕円筒状、四半楕円筒状、若しくは他の曲面状の形状において付与されても良いし、又は半円筒状を含むこれらの形状のうち少なくとも何れか2種類の形状を複合した形状において付与されても良い。
各貫通孔32は、基材4の上部であって、縫製部隣接部30の下方に配置されている。各貫通孔32は、延伸方向に沿って並んでいる。尚、貫通孔32は、省略されても良いし、1つ設けられても良い。又、貫通孔32の形状は、円筒形状であっても良いし、スリット状であっても良い。更に、複数の貫通孔32の形状は、2種類以上存在していても良い。加えて、複数の貫通孔32は、延伸方向に沿って並ぶ配置に限られずにどのように配置されても良く、例えば格子状に配置されても良い。
【0018】
基材4の下端部に対し、第1シート11の下端部が付着される。第1シート11の下端部に係る横断面の形状は、フック状となっている。第1シート11の下端部は、基材4の下端部の右面と下面とに密着している。第1シート11の下端部は、発泡体6から見て、基材4より外方に配置されている。
他方、基材4の縫製部隣接部30に対し、第1シート11の右端部、及び第2シート12の巻き込み部23の上端部が付着している。縫製部隣接部30は、縫製線Lを挟んで対向する表皮材2の2つの接触箇所で密着している。縫製部隣接部30は、縫製線Lの内方に配置されている。第1シート11の右端部、及び巻き込み部23の上端部は、縫製部隣接部30に対して押し付けられており、それぞれ圧縮している。尚、第1シート11の右端部、及び巻き込み部23の上端部の少なくとも一方は、基材4に対し密着していなくても良いし、圧縮していなくても良い。
又、基材4の上部の右側に対し、巻き込み部23が接している。巻き込み部23、及び第1シート11の右端部は、発泡体6から見て、基材4より外方に配置されている。巻き込み部23は、各貫通孔32を覆っている。
かような基材4への表皮材2の付着により、表皮材2及び基材4が袋状に形成される。
【0019】
縫製部隣接部30の外側には、縫製線L並びに第1縫い代21及び第2縫い代22が配置されている。第1縫い代21及び第2縫い代22は、縫製線Lから、基材4及び発泡体6の外方に突出している。縫製線L並びに第1縫い代21及び第2縫い代22は、自動車のドアへの取り付け時、図1において二点鎖線Nで示されるように、他の部材により隠される。
第1縫い代21及び第2縫い代22の広がりは、表皮材2が裏返されて第1縫い代21及び第2縫い代22が内方に突出する場合に比べて、抑制されている。
【0020】
発泡体6は、発泡樹脂であり、ここではウレタンである。尚、発泡体6は、ウレタン以外であっても良い。
発泡体6は、表皮材2と基材4とで囲まれた部分に配置されている。
発泡体6は、各貫通孔32内にも行き渡っており、各貫通孔32内を通じて、巻き込み部23に接触して巻き込み部23を固定し、あるいは巻き込み部23の固定を強化している。尚、発泡体6は、各貫通孔32内を通じて、表皮材2に含浸しても良い。
【0021】
次いで、成形体1の成形方法の一例が、以下に説明される。
図3(A)には、図1の仮想円C内に相当する部分における、成形時の成形体1と型Mとが示される。
【0022】
型Mは、第1の型としての上型M1と、第2の型としての下型M2と、を有する。
上型M1の内面の一部又は全部は、第1シート11の表面に沿っている。
下型M2の内面の一部又は全部は、第2シート12の表面、及び基材4の表面に沿っている。
尚、型Mは、第1の型としての左型と、第2の型としての右型と、を有していても良い。
【0023】
上型M1の内面における第1縫い代21に沿う部分である第1縫い代当接部分41、及び下型M2の内面における第2縫い代22に沿う部分である第2縫い代当接部分42は、上型M1と下型M2とを合わせた際、平行となる。尚、第1縫い代当接部分41及び第2縫い代当接部分42は、平行とならなくても良い。
第1縫い代当接部分41と第2縫い代当接部分42との間には、第1縫い代21及び第2縫い代22を固定するための空間である縫い代固定空間Fが設けられている。
【0024】
成形体1の成形方法において、まず、型Mに対し、表皮材2及び基材4を、インサート品としてセットして、上型M1と下型M2とを合わせて型締めする。
このとき、第1縫い代21及び第2縫い代22は、第1縫い代当接部分41及び第2縫い代当接部分42に挟み込まれて固定される。第1縫い代21及び第2縫い代22は、第1縫い代当接部分41及び第2縫い代当接部分42により、圧縮される。
尚、表皮材2が付着された基材4が型Mに対しセットされても良い。又、第1縫い代21及び第2縫い代22の少なくとも一方は、圧縮されなくても良い。
【0025】
次いで、表皮材2及び基材4の内部にウレタンの原液が注入され、ウレタン製の発泡体6に係る射出成形が開始され、発泡体6の発泡が開始される。尚、射出成形として、RIM成形が用いられても良いし、他の種類の射出成形が用いられても良い。
続いて、ウレタンが硬化して発泡体6となると、発泡体6、並びにこれと一体化した表皮材2及び基材4が脱型され、成形体1が成形される。
【0026】
尚、図3(B)に示されるように、第1縫い代21及び第2縫い代22は、1以上の補材Jにより、型M’の第2縫い代当接部分42’に固定されても良い。
下型M2’の第2縫い代当接部分42’は、第1縫い代21に接しない、上型M1’の第1縫い代隣接部分41’と向かい合っていて、縫い代固定空間F’が形成されている。
補材Jは、玉Bと、紐Wと、を有する。玉Bは、紐Wと一体である。紐Wは、第1縫い代21及び第2縫い代22の間において固定されている。補材Jは、複数である場合、延伸方向に沿って並んでいる。補材Jの位置は、延伸方向において、貫通孔32の位置と揃っていても良いし、貫通孔32の位置と異なっていても良い。
第2縫い代当接部分42’は、補材Jに対応して設けられる、段部P及び窪みUを有する。段部Pは、第2縫い代22程度の高さを有する。窪みUは、玉Bに対応する形状を有しており、玉Bを係止可能である。
第1縫い代21及び第2縫い代22は、玉Bの窪みUへの係止により、補材Jを介して下型M2に固定される。第1縫い代21及び第2縫い代22は、補材Jにより、圧縮されず、あるいは圧縮量が抑制された状態で、型Mに固定される。
尚、玉Bの形状は、球形以外であっても良い。又、係止部としての玉Bの下型M2への係止は、窪みU以外によってなされても良い。即ち、玉Bは、窪みU以外の被係止部に係止されても良い。更に、段部P及び窪みUは、下型M2に代えて、あるいは下型M2と共に、上型M1に設けられても良い。加えて、補材Jは、ワイヤーであっても良い。又、一部又は全部の補材Jは、射出成形後に取り除かれても良いし、射出成形後においてそのまま成形体1の構成要素として残されても良い。更に、第1縫い代21及び第2縫い代22は、挟み込み及び補材Jの併用により、型Mに固定されても良い。
【0027】
又、図4(A)及び図4(B)に示されるように、成形体1’において、基材4’の上端部は、第2シート12のみに接触し、第1シート11には接触しなくても良い。
この場合、基材4’の上端部である縫製部隣接部30’より下側における基材4’の部分は、図1の基材4における縫製部隣接部30より下側の部分より、上下方向において短くなっている。
尚、巻き込み部23の長さが図1の場合より長くされたり、巻き込み部23の縫製部隣接部30’に対する配置が変更されたりすることで、基材4’の上端部が第2シート12のみに接触するようにしても良い。
【0028】
以上の成形体1は、表皮材2と、基材4と、発泡体6と、を備えている。発泡体6は、表皮材2と基材4とで囲まれた部分に配置されている。表皮材2は、基材4の端部である縫製部隣接部30と接触している。又、表皮材2は、縫製線Lと、縫製線Lから外方に突出する第1縫い代21及び第2縫い代22を有している。
よって、第1縫い代21及び第2縫い代22の復元力が基材4に接近する側となり、基材4及び型Mにつき、従来のように基材4から離れる復元力を有する表皮材2を基材4側に配置するための構造、即ち基材4の爪及び表皮材2の大掛かりな固定構造の少なくとも一方が不要となり、より低コストで品質が良好であり、又表皮材2の配置精度が良好な成形体1が提供される。又、第1縫い代21及び第2縫い代22が外方に突出するため、従来の内方に突出する場合に比べて、発泡体6の成形を阻害し難く、歩留まりが良好である成形体1が提供されるし、基材4の端部に対する内方に突出する縫い代の干渉等についての配慮が不要となって、成形体1の設計の自由度が高まり、基材4に対する表皮材2のずれが抑制される。更に、第1縫い代21及び第2縫い代22の広がりが抑制されるため、発泡体6における発泡樹脂の漏出が抑制された成形体1が提供される。
【0029】
又、基材4における1つの端部(縫製部隣接部30)は、縫製線Lを挟んで対向する表皮材2の2つの接触箇所(第1シート11の右端部及び第2シート12の上端部)で接触している。よって、基材4に対する表皮材2の固定がより確実になされる。
他方、図4(A)及び図4(B)に示されるように、表皮材2は、基材4の縫製部隣接部30に対して押し付けられる場合、基材4の端部と表皮材2との間に入り込む発泡体6の量が増加し、表皮材2と基材4の端部との固定が、発泡体6を介するものとなって、より確実になされる。
【0030】
更に、基材4の縫製部隣接部30は、丸みを帯びている。よって、縫製部隣接部30に対して接触しあるいは押し付けられる表皮材2における損傷の発生が、より抑制される。
又更に、基材4における丸みを帯びている縫製部隣接部30の最大厚さは、基材4における縫製部隣接部30に隣接する下側の部分の厚さより厚い。よって、縫製部隣接部30がより丈夫になり、縫製部隣接部30による表皮材2の圧縮の範囲が比較的に大きくなる。
他方、基材4における丸みを帯びている縫製部隣接部30の最大厚さが、基材4におけるその端部に隣接する部分の厚さより薄い場合、縫製部隣接部30による表皮材2の圧縮の範囲が比較的に小さくなる。
【0031】
加えて、表皮材2は、発泡体6から見て、基材4より外方に配置されている。よって、表皮材2と基材4とが重なる部分において、発泡体6により近い側に基材4が配置されて、多くの場合表皮材2より硬い基材4の、発泡体6との接触範囲が、より大きくなり、成形体1がより強固になる。
又、表皮材2は、基材4に密着している。よって、表皮材2及び基材4の外部への発泡体6の漏出が抑制される。
更に、基材4は、表皮材2に覆われる貫通孔32を有している。よって、貫通孔32に入り込んだ発泡体6が表皮材2に接着し、表皮材2の基材4に対する固定が成形に伴って行われる。又、発泡体6の表皮材2への接着により、表皮材2のめくれが抑制される。
【0032】
又更に、表皮材2は、第1シート11と、第2シート12と、を有している。第1シート11及び第2シート12は、縫製線Lにおいて縫合されている。よって、表皮材2がより形成し易い。
他方、図2(B)に示されるように、表皮材2が一連のシートSを有しており、シートSが縫製線L’を有している場合、表皮材2を構成するシートSの種類がより少なくて済み、その分表皮材2がシンプルになるし、この場合においても、縫製線L’及び外方に突出する縫い代としての折り返し部Tが形成される。
【0033】
一方、以上の成形体1の成形方法は、成形体1を上型M1及び下型M2により成形する成形方法であって、第1縫い代21及び第2縫い代22が、上型M1及び下型M2により挟み込まれて固定された状態で、発泡体6が成形される。よって、表皮材2がよりシンプルで確実にインサートされて成形体1の仕上がりがより良好である成形体1の成形方法が提供される。
他方、図3(B)に係る成形体1の成形方法は、成形体1を上型M1’及び下型M2’により成形する成形方法であって、第1縫い代21及び第2縫い代22に固定された補材Jが、下型M2’に固定された状態で、発泡体6が成形される。よって、同様に、表皮材2がよりシンプルで確実にインサートされて成形体1の仕上がりがより良好である成形体1の成形方法が提供される。
【0034】
上記の形態及び変更例に係る、更なる変更例が、以下説明される。
表皮材2及び基材4の少なくとも一方における、形状、構成要素の数、及び大きさの少なくとも何れかは、上述のものに限られない。例えば、基材4は、複数の層を有していても良いし、2つ以上に分割されていても良い。又、表皮材2及び基材4は、自動車のドアのアームレストを上回る大きさを有していても良い。
成形体1は、1以上の外方へ突出する縫い代を有しているのであれば、合わせて内方に突出する縫い代を有していても良い。この場合であっても、外方へ突出する縫い代による上述の作用効果が得られる。
【符号の説明】
【0035】
1・・成形体、2・・表皮材、4・・基材、6・・発泡体、11・・第1シート、12・・第2シート、21・・第1縫い代(縫い代)、22・・第2縫い代(縫い代)、30・・縫製部隣接部(基材の端部)、32・・貫通孔、J・・補材、L,L’・・縫製線、M・・型、M1,M1’・・第1の型、M2,M2’・・第2の型、S・・シート、T・・折り返し部(縫い代)。
図1
図2
図3
図4
図5
図6