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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024157972
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】ドリップバッグ
(51)【国際特許分類】
   A47J 31/02 20060101AFI20241031BHJP
   B65D 85/804 20060101ALI20241031BHJP
【FI】
A47J31/02
B65D85/804 100
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023072678
(22)【出願日】2023-04-26
(71)【出願人】
【識別番号】390006600
【氏名又は名称】ユーシーシー上島珈琲株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000822
【氏名又は名称】弁理士法人グローバル知財
(72)【発明者】
【氏名】辻 琢也
(72)【発明者】
【氏名】三川 津香沙
【テーマコード(参考)】
4B104
【Fターム(参考)】
4B104AA02
4B104BA02
4B104BA43
4B104EA19
(57)【要約】
【課題】収容物の充填量を確保しつつ、液中から引き上げた際の見栄え及び液切れが良く、かつ廃棄時の利便性が高いドリップバッグを提供する。
【解決手段】袋体3及び台紙4から成る。袋体3は、ポリプロピレン及びポリエチレンテレフタレートを素材とする不織布フィルタから成り、上辺部5a及び下辺部5bにおいて折り返され、左辺部5c及び右辺部5dにおいてヒートシールされる。袋体3にはミシン目状の切り取り部3cが形成され、切り取り部3cに沿って下部3bから上部3aを切り離して袋体3を開口する。袋体3の内部には、粉体のレギュラーコーヒーなどが収容される。袋体3の表面及び裏面には台紙4が貼付けられ、袋体3にシール部2a、2bが設けられる。シール部2aは、左辺部5cから斜め下方向に線状に設けられ、同様にシール部2bは、右辺部5dから斜め下方向に線状に設けられる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
通水性濾過性シートを袋状に形成する袋体形成シール部を有して上端部が開口する袋本体と、
袋本体の外表面に設けられた台紙部材と、
を有するドリップバッグであって、
前記袋本体の対向する2面を接合することで流路が規制される少なくとも1つの流路規制シール部が設けられることを特徴とするドリップバッグ。
【請求項2】
前記流路規制シール部は、前記袋体形成シール部から派生して線状に設けられることを特徴とする請求項1に記載のドリップバッグ。
【請求項3】
前記流路規制シール部は、前記袋本体の左右の各側辺部の前記袋体形成シール部から派生したものであることを特徴とする請求項2に記載のドリップバッグ。
【請求項4】
前記流路規制シール部は、前記袋本体の左右何れか一方の側辺部の前記袋体形成シール部から派生したものであることを特徴とする請求項2に記載のドリップバッグ。
【請求項5】
前記流路規制シール部は、前記側辺部の前記袋体形成シール部から、斜め下方向に設けられることを特徴とする請求項3又は4に記載のドリップバッグ。
【請求項6】
前記流路規制シール部は、前記側辺部の前記袋体形成シール部から、略水平方向に設けられることを特徴とする請求項3又は4に記載のドリップバッグ。
【請求項7】
前記流路規制シール部は、前記袋本体の下辺部の前記袋体形成シール部から派生して斜め上方向に設けられることを特徴とする請求項1又は2に記載のドリップバッグ。
【請求項8】
前記流路規制シール部は、前記袋体形成シール部から派生しない位置に設けられることを特徴とする請求項1に記載のドリップバッグ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドリップバッグの機能性及び利便性を向上する技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、コーヒー、紅茶、緑茶などを簡易に抽出して楽しむことのできるドリップバッグが多く利用されている(例えば、特許文献1を参照)。特許文献1のようなフィルタ形状が矩形の浸漬法のドリップバッグにおいては、上端部を開いてカップ等にセットして使用することから、抽出時には底辺部の中央が上方へ押し上げられ、2箇所に分かれ角状に突出した部位から液が落ちる(図16参照)。
この場合、液の流路が2つに分岐してしまい、ドリップとして見栄えが良くないだけでなく、液切れに時間がかかるという問題がある。液切れに時間がかかると、十分に液切れがなされないまま廃棄されやすくなり、その結果、カップの周囲が汚れやすくなる。
また、2箇所の角部が突出した形状となるため、抽出後のドリップバッグを皿などに置いた際に、ドリップバッグの短手方向に倒れてしまうという問題がある。抽出後のドリップバッグの上端部は開放されているため、抽出後のドリップバッグが容易に倒れると、抽出後のコーヒーなどがドリップバッグからこぼれ出る恐れが高まり、利便性の点でも問題がある。
【0003】
そこで、液が落ちる箇所を2箇所ではなく1箇所にする技術として、袋体の角部が底部となるように形成されたドリップバッグが知られている(例えば、特許文献2を参照)。これによれば、コーヒー液の抽出をドリップバッグの中央部の1箇所に集中させることが可能である。しかしながら、新規に袋体や台紙の形状を設計する必要があり、特許文献1のような矩形状のフィルタの製造ラインを利用して製造できず、作製コストが大きくなるという問題がある。
【0004】
既存のドリップバッグに簡易な加工を施すことにより抽出効果を高める技術としては、袋体の左右シールの内側面上方に「ハの字型」の点シールを設けたコーヒー/ティーバッグが知られている(特許文献3を参照)。しかしながら、特許文献3のコーヒー/ティーバッグは、特許文献1のような矩形状のドリップバッグに関するものではない。また、「ハの字型」のシールにより抽出時に両肩の角部が「ハの字」に沿って折れ曲がるとされるが、袋全体が巾着袋のように底が逆ドーム状の円錐形を成すことで、どのように抽出効果が高まるのかについては明らかではない。
【0005】
液体の流れを誘導する点に着目した技術としては、ドリップバッグの袋体の側部と底部に特殊なシール構造を設けたコーヒーパック用抽出フィルタが知られている(特許文献4を参照)。これは、側部の接着部の中段の部位が内側に幅広となっており、また、底面の中央部に山形の接着部を設けたものである。
両側面をアーチ状に接着することにより、フィルタの開口状態を維持でき、注湯が容易となるだけでなく、抽出時に熱湯の流れを誘導できるため、すべての熱湯をコーヒーの中に通過させることができる。また、山形の接着部は、濾過面に対して体積を減らすことで、濾過速度を早める効果がある。
しかしながら、特許文献1のような浸漬法のドリップバッグにおいては、抽出時に袋体がカップ内に浸漬するため、抽出濃度についてはさほど問題とはならず、むしろ袋体をカップから引き上げた際の液切れの良さや、廃棄時の利便性が重要となるが、特許文献4のコーヒーパック用抽出フィルタでは、かかる点については何ら開示されていない。
【0006】
また、袋体の中段部に接合部を設けた濾過袋が知られている(特許文献5を参照)。特許文献5の濾過袋は、水切りを良くすべく袋体の中段辺りで左右からシールされるが、特許文献1のような矩形状のドリップバッグに関するものではなく、皿などに置いた際に倒れにくくなるといった効果を有するものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2022-088870号公報
【特許文献2】特開2018-47069号公報
【特許文献3】特開1993-16967号公報
【特許文献4】実開平5-13330号公報
【特許文献5】特開2002-265001号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述のように、浸漬型の矩形状のドリップバッグにおいては、抽出時の見栄えの良さ、液切れの良さ、廃棄時の利便性が重要である。一方で、レギュラーコーヒーや紅茶、緑茶といった収容物の充填量を確保する必要がある。
かかる状況に鑑みて、本発明は、収容物の充填量を確保しつつ、液中から引き上げた際の見栄え及び液切れが良く、かつ廃棄時の利便性が高いドリップバッグを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のドリップバッグは、通水性濾過性シートを袋状に形成する袋体形成シール部を有して上端部が開口する袋本体と、袋本体の外表面に設けられた台紙部材と、を有するドリップバッグであって、袋本体の対向する2面を接合することで流路が規制される少なくとも1つの流路規制シール部が設けられることを特徴とする。
流路規制シール部が設けられることにより液の流れを効果的に誘導でき、見栄えや液切れが良く、かつ廃棄時の利便性が高いドリップバッグとすることができる。流路規制シール部は、加熱・加圧により溶融接着(ヒートシール)されることが好ましいが、その他の接合方法を用いてもよい。
本発明における袋本体及び台紙部材の形状やサイズについては、フックをカップに係止することで袋本体の上端部を拡げて抽出空間を作り出すワンドリップタイプのドリップバッグを幅広く利用可能であり、例えば、2点フック式、又は3点フック式のドリップバッグを用いることができる。
【0010】
ここで、流路規制シール部は、袋体形成シール部から派生して線状に設けられることが好ましい。ここで、「派生して線状に設けられる」とは、袋状に形成する袋体形成のためのシール部から分かれて線のような形をした別のシール部が設けられるという意味である。ヒートシールにより接合される場合、流路規制シール部が袋体形成シール部から派生して設けられることにより熱伝導が良く安定したシールが可能となり、迅速かつ高品質のドリップバッグを作製できる。また、流路規制シール部が線状に設けられることにより、接合面積を小さくすることができコーヒーなどの収容物の充填量を確保できる。また、線状の意味としては、直線に限らず、弧のような曲線、曲線と直線がつながったもの、また、1本に限らず複数本でも構わない。
袋体形成シール部は、上辺部、下辺部、左辺部又は右辺部に設けられるが、流路規制シール部は、特に、下辺部、左辺部又は右辺部に設けられる袋体形成シール部から派生して設けられる。
【0011】
一般に、2点フック式のドリップバッグの場合は、上辺部及び下辺部において折り返され、左辺部及び右辺部において加熱・加圧により溶融接着(ヒートシール)され、袋体形成シール部が設けられる。例えば、左辺部及び右辺部に袋体形成シール部が設けられる2点フック式のドリップバッグの場合は、左辺部と右辺部の何れか又は双方から派生して流路規制シール部が設けられる。
これに対して、3点フック式のドリップバッグの場合は、左辺部と右辺部の何れか一方と、上辺部及び下辺部において溶融接着され、袋体形成シール部が設けられる。したがって例えば、下辺部にも袋体形成シール部が設けられる3点フック式のドリップバッグの場合は、左辺部と右辺部の何れか一方から派生して流路規制シール部が設けられてもよいし、下辺部から派生して流路規制シール部が設けられてもよい。また、左辺部と右辺部の何れか一方と、下辺部の双方から派生して流路規制シール部が設けられてもよい。
袋体形成シール部から派生して設けられる流路規制シール部が他の辺部にまで延設されると、袋本体中の空間が分断されることになり、コーヒーなどの収容物の充填可能量が減少する。したがって、袋体形成シール部から派生して設けられる流路規制シール部の遠位端は、派生元となる辺部以外の他の辺部に当接しないことが好ましい。
【0012】
本発明のドリップバッグにおいて、流路規制シール部は、袋本体の左右の各側辺部の袋体形成シール部から派生したものであることでもよい。これにより、台紙部材を開いて袋本体の上端部を開口した際に、下辺部が上方へ押し上げられ、左右の底部の角部が突出した形状となることを防止でき、流路規制による液切れの良さや、廃棄時の利便性が高いドリップバッグを実現できる。
【0013】
本発明のドリップバッグにおいて、流路規制シール部は、袋本体の左右何れか一方の側辺部の袋体形成シール部から派生したものであることでもよい。流路規制シール部を設ける箇所を1箇所とすることで、より簡易な加工で流路規制効果が得られる。また、抽出後の安定性については、流路規制シール部の長さをより長く設けることで向上できる。
【0014】
本発明のドリップバッグにおいて、流路規制シール部は、袋本体の側辺部の袋体形成シール部から、斜め下方向に設けられることでもよい。側辺の方向と斜め下方向の間の交差角度は、好ましくは30°以上85°未満、更に好ましくは50°以上75°未満である。
流路規制シール部が側辺部から斜め下方向に設けられる交差角度が、30°未満であると流路規制効果が得られにくくなり、また抽出後の安定性も低下する。そこで、流路規制シール部が、側辺部から斜め下方向に30~85°の交差角度を付けて線状に設けられることにより、液の流れを効果的に誘導でき、液切れが良く、かつ廃棄時の利便性が高いドリップバッグとすることができる。
【0015】
本発明のドリップバッグにおいて、流路規制シール部は、袋本体の側辺部の袋体形成シール部から、略水平方向に設けられることでもよい。袋体形成シール部と流路規制シール部が直交することでも、液の流れを効果的に誘導でき、液切れが良く、かつ廃棄時の利便性が高いドリップバッグとすることができる。
本発明のドリップバッグにおいて、流路規制シール部は、袋本体の下辺部の袋体形成シール部から派生して斜め上方向に設けられることでもよい。一般に、3点フック式のドリップバッグの場合は、下辺部に袋体形成シール部が設けられるため、この下辺部の袋体形成シール部から、斜め上方向に流路規制シール部を設け、液の流れを効果的に誘導するのである。
本発明のドリップバッグにおいて、流路規制シール部は、袋体形成シール部から派生しない位置に設けられることでもよい。すなわち、袋本体の上辺部、側辺部、又は下辺部の何れとも接しない位置に設けられることでもよい。流路規制シール部が袋体形成シール部から派生しない位置(各辺部と接しない位置)に設けられる場合でも、見栄えや液切れが良く、かつ廃棄時の利便性が高いドリップバッグとすることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明のドリップバッグによれば、収容物の充填量を確保しつつ、液中から引き上げた際の見栄え及び液切れが良く、かつ廃棄時の利便性が高いといった効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】実施例1のドリップバッグの正面図
図2】実施例1のドリップバッグの引き上げイメージ図
図3】ドリップバッグの載置イメージ図
図4】実施例2のドリップバッグの正面図
図5】実施例3のドリップバッグの正面図
図6】実施例4のドリップバッグの正面図
図7】実施例5のドリップバッグの正面図
図8】検証試験aの説明図
図9】検証試験bの説明図
図10】検証試験cの説明図
図11】検証試験dの説明図
図12】検証試験eの説明図
図13】検証試験fの説明図
図14】比較例Xのドリップバッグの正面図
図15】比較例Yのドリップバッグの正面図
図16】比較例Xのドリップバッグの引き上げイメージ図
図17】比較例のドリップバッグの使用イメージ図
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態の一例を、図面を参照しながら詳細に説明していく。本発明の範囲は、以下の実施例や図示例に限定されるものではなく、幾多の変更及び変形が可能である。
なお、以下の説明においては、流路規制シール部を単に「シール部」と表記するが、袋体形成シール部とは異なるものである。
【0019】
(検証試験の前提条件)
本発明のドリップバッグについて検証試験を行った。
まず、検証試験に用いたドリップバッグについて説明する。図14は比較例Xのドリップバッグの正面図を示している。また、図15は比較例Yのドリップバッグの正面図を示している。試験に用いたドリップバッグ(100,101)は、浸漬型の略矩形状のドリップバッグであり、袋本体に当たる袋体3のサイズは何れも縦90mm×横74mmである。袋体3は、ポリプロピレン及びポリエチレンテレフタレートを素材とする不織布フィルタから成り、左右の袋体形成シール部(12a,12b)において接合し、左辺部5c又は右辺部5dが形成されている。袋体形成シール部(12a,12b)の幅は、3mm未満となっている。上述の袋体3のサイズには、袋体形成シール部(12a,12b)の幅は含まれていないものとする。図14に示す台紙4のサイズは縦49mm×横48mm、図15に示す台紙40のサイズは縦51.5mm×横49mmである。台紙(4,40)は台紙部材に相当する。なお、台紙シール位置については、中心位置より1.7mm以内のズレを許容した。
検証試験では、図14に示すドリップバッグ100を比較例X、図15に示すドリップバッグ101を比較例Yとし、ドリップバッグ100に各シール部(2a,2b)を設けたものを実施例A~T,V,Wとした。また、ドリップバッグ100に1箇所のシール部2aのみを設けたものを実施例Uとした。なお図8(1)に示すシール部2aの幅Wは2mm未満であり、これは後述する全てのシール部(2a,2b)についても同様である。
【0020】
(検証試験の抽出条件)
抽出条件として、レギュラーコーヒー(ユーシーシー上島珈琲株式会社製、「ゴールドスペシャル スペシャルブレンド」)の充填量は7g、加水量は140gとした。
試験項目は、抽出液性、液切れ時間、液落ち箇所、及び抽出後の安定性の4項目である。抽出液性としてはBrix値を計測した。液切れ時間については、抽出後持ち上げ、5秒間液落ちしなくなるまでの時間を記録した。液落ち箇所については、1箇所から抽出液が落ちているか否か撮影し、目視で確認した。抽出後の安定性については、抽出後のドリップバッグを皿に置き、倒れにくさを撮影し、左側方又は右側方から目視で確認した。具体的には、図3(1)に示すように、左右への倒れが見られないものは安定性が高いとし、図3(2)に示すように、左右何れかへの倒れが見られるものは安定性が低いとした。試験はn=3で検証し、平均値を算出した。
【0021】
(検証試験の抽出方法)
抽出方法は以下の通りである。まず、(1)各条件のドリップバッグを作成する。シール部(2a,2b)はアイロンによるヒートシールである。次に、(2)7gのRC(レギュラーコーヒー)粉を充填する。(3)10g注湯し、20秒間蒸らす。なお、注湯の時点から撮影を開始する。(4)残りの130gを注湯開始50秒後までに注ぐ。注湯速度は4.3g/sである。(5)注湯開始1分半で持ち上げ、5秒間液落ちしなくなるまで、カップ上で保持する。この時点で抽出は完了となる。その後、(6)抽出液のBrix値を測定する。
【0022】
(試験概要)
検証試験a~fを行った。検証試験aはシール部の「向き」、検証試験bはシール部の「高さ」、検証試験cはシール部の「長さ」、検証試験dはシール部の「間隙の要否」、検証試験eは「シール部の数の違い」、また、検証試験fは「台紙の違い」について検証した。
【0023】
(検証試験aについて)
「向き」に関する検証試験aでは、比較例Xと、シール部の向きが異なる実施例A~Cについて比較検証を行った。ここでの「向き」とは左辺部5c側からシール部2aが延びる方向、又は右辺部5d側からシール部2bが延びる方向のことである。
図8は、「向き」に関する検証試験aの説明図であり、(1)は実施例A、(2)は実施例B、(3)は実施例Cを示している。また、下記表1は、検証試験aの結果を表す。図8(1)に示すように、実施例Aではシール部(2a,2b)を斜め下方向に設け、左辺部5cとシール部2a、又は右辺部5dとシール部2bのなす角度θを62°とした。図8(2)に示すように、実施例Bではシール部(2a,2b)を水平方向に設け、左辺部5cとシール部2a、又は右辺部5dとシール部2bのなす角度θを90°とした。また、図8(3)に示すように、実施例Cではシール部(2a,2b)を斜め上方向に設け、左辺部5cとシール部2a、又は右辺部5dとシール部2bのなす角度θを118°とした。なお、実施例A~Cのシール部(2a,2b)の長さL(=10mm)と高さH(=20mm)は同一とした。
【0024】
【表1】
【0025】
上記表1に示すように、比較例Xでは液落ち箇所が2箇所であったのに対して、実施例A~Cでは1箇所であった。抽出後の安定性については、比較例Xでは安定性が低いが、実施例A~Cでは安定性が高いことが確認できた。液切れ時間については、比較例Xは43.0s、実施例Aは30.3s、実施例Bは32.7s、実施例Cは32.7sであり、比較例比は、実施例Aは-29.5%、実施例Bは-24.0%、実施例Cは-24.0%であった。Brix値については、比較例Xは1.03、実施例Aは1.06、実施例Bは1.01、実施例Cは1.04であった。
以上のことから、全てのシール向きで、1箇所からの液落ち、液切れ時間の短縮(比較例比で20~30%減)、抽出後のドリップバッグの安定性の向上が認められた。Brixは比較例Xと同等であった。
【0026】
(検証試験bについて)
「高さ」に関する検証試験bでは、比較例Xと、シール部の高さが異なる実施例D~Hについて比較検証を行った。ここでの「高さ」とは、下辺部5bから、シール部2aの左辺部5c側端部、又はシール部2bの右辺部5d側端部までの高さのことである。
図9は、「高さ」に関する検証試験bの説明図であり、(1)は実施例D、(2)は実施例F、(3)は実施例Hを例として示している。また、下記表2は、検証試験bの結果を表す。図9(1)に示すように、実施例Dではシール部(2a,2b)を高さH(=5mm)の位置に設けた。実施例Eではシール部(2a,2b)を高さ10mmの位置に設けた。図9(2)に示すように、実施例Fではシール部(2a,2b)を高さH(=15mm)の位置に設けた。実施例Gではシール部(2a,2b)を高さ20mmの位置に設けた。図9(3)に示すように、実施例Hではシール部(2a,2b)を高さH(=25mm)の位置に設けた。なお、実施例D~Hのシール部(2a,2b)の長さL(=10mm)と角度θ(=62°)は同一とした。
【0027】
【表2】
【0028】
上記表2に示すように、比較例X,実施例D~Fでは液落ち箇所が2箇所であったのに対して、実施例G,Hでは1箇所であった。抽出後の安定性については、比較例X,実施例D~Fでは安定性が低いが、実施例G,Hでは安定性が高いことが確認できた。液切れ時間については、比較例Xは43.0s、実施例Dは32.3s、実施例Eは31.0s、実施例Fは28.7s、実施例Gは30.3s、実施例Hは34.0sであり、比較例比は、実施例Dは-24.9%、実施例Eは-27.9%、実施例Fは-33.3%、実施例Gは-29.5%、実施例Hは-20.9%であった。Brix値については、比較例Xは1.03、実施例Dは1.06、実施例Eは1.07、実施例Fは1.05、実施例Gは1.06、実施例Hは1.04であった。
以上のことから、全てのシール高さにおいて、液切れ時間の短縮(比較例比で20~30%減)が認められたが、高さ20mm以上で、1箇所からの液落ち、抽出後のドリップバッグの安定性が向上した。Brixは比較例Xと同等であった。
【0029】
(検証試験cについて)
「長さ」に関する検証試験cでは、比較例Xと、シール部の長さが異なる実施例I~Pについて比較検証を行った。ここでの「長さ」とは、シール部2a又はシール部2bの長手方向の長さのことである。
図10は、「長さ」に関する検証試験cの説明図であり、(1)は実施例I、(2)は実施例J、(3)は実施例Pを例として示している。また、下記表3は、検証試験cの結果を表す。図10(1)に示すように、実施例Iではシール部(2a,2b)を長さL(=5mm)とした。図10(2)に示すように、実施例Jではシール部(2a,2b)を長さL(=10mm)とした。同様に5mm単位でシール部(2a,2b)の長さを変化させ、実施例Kでは15mm、実施例Lでは20mm、実施例Mでは25mm、実施例Nでは30mm、実施例Oでは35mmとした。また、図10(3)に示すように、実施例Pではシール部(2a,2b)を長さL(42mm)とし、延伸した部位を下辺部5bに当接させた。
このように、実施例I~Oについては、実施例Lを中央値の20mmと設定し、長短5mm単位で実施した。さらに、下辺部5bまで延伸させた例を実施例Pとした。なお、実施例I~Pのシール部(2a,2b)の高さH(=20mm)と角度θ(=62°)は同一とした。
【0030】
【表3】
【0031】
上記表3に示すように、比較例Xでは液落ち箇所が2箇所であったのに対して、実施例I~Pでは1箇所であった。抽出後の安定性については、比較例X,実施例N~Pでは安定性が低いが、実施例I~Mでは安定性が高いことが確認できた。液切れ時間については、比較例Xは43.0s、実施例Iは31.7s、実施例Jは31.7s、実施例Kは30.3s、実施例Lは27.3s、実施例Mは28.7s、実施例Nは31.7s、実施例Oは31.7s、実施例Pは32.2sであった。比較例比については、実施例Iは-26.3%、実施例Jは-26.3%、実施例Kは-29.5%、実施例Lは-36.5%、実施例Mは-33.3%、実施例Nは-26.3%、実施例Oは-26.3%、実施例Pは-25.1%であった。Brix値については、比較例Xは1.03、実施例Iは1.05、実施例Jは1.05、実施例Kは1.03、実施例Lは0.99、実施例Mは1.02、実施例Nは1.03、実施例Oは1.10、実施例Pは1.13であった。
以上のことから、全てのシール長さにおいて、1箇所からの液落ち、液切れ時間の短縮(比較例比で25~35%減)が認められた。抽出後のドリップバッグの安定性は、長さ5~25mmで向上することが分かった。Brixは比較例Xと同等であった。
【0032】
(検証試験dについて)
「間隙の有無」に関する検証試験dでは、比較例Xと、シール部の間隙の有無が異なる実施例Q~Sについて比較検証を行った。ここでの「間隙」とは、左辺部5cとシール部2aの左端部の間、又は右辺部5dとシール部2bの右端部の間の水平方向の隙間のことである。
図11は、「間隙の有無」に関する検証試験dの説明図であり、(1)は実施例Q、(2)は実施例R、(3)は実施例Sを示している。また、下記表4は、検証試験dの結果を表す。図11(1)に示すように実施例Qでは間隙を0mmとした。図11(2)に示すように実施例Rでは間隙Pを5mmとした。また、図11(3)に示すように実施例Sでは間隙Pを10mmとした。なお、間隙が15mm以上では、フック部分をカップに掛けることが非常に困難となるため、抽出検証は実施していない。
また、実施例Q~Sのシール部(2a,2b)の長さL(=10mm)、高さH(=20mm)及び向き(斜め下)の角度θ(=62°)は同一とした。
【0033】
【表4】
【0034】
上記表4に示すように、比較例Xでは液落ち箇所が2箇所であったのに対して、実施例Q~Sでは1箇所であった。抽出後の安定性については、比較例Xでは安定性が低いが、実施例Q~Sでは安定性が高いことが確認できた。液切れ時間については、比較例Xは43.0s、実施例Qは32.3s、実施例Rは31.3s、実施例Sは28.0sであり、比較例比については、実施例Qは-24.9%、実施例Rは-27.2%、実施例Sは-34.9%であった。Brix値については、比較例Xは1.03、実施例Qは1.08、実施例Rは1.09、実施例Sは1.10であった。なお、比較例X,実施例Q,Rでは、フック部分をカップに掛けることは容易であったが、実施例Sではやや困難であった。
以上のことから、間隙の有無に関わらず、1箇所からの液落ち、液切れ時間の短縮(比較例比で20~35%減)、抽出後のドリップバッグの安定性の向上が認められ、Brixは比較例Xと同等であった。
【0035】
(検証試験eについて)
「シール部の数の違い」に関する検証試験eでは、比較例Xと、シール部の数が異なる実施例T,Uについて比較検証を行った。
図12は、「間隙の有無」に関する検証試験eの説明図であり、(1)は実施例T、(2)は実施例Uを示している。また、下記表5は、検証試験eの結果を表す。図12(1)に示すように実施例Tでは、シール部(2a,2b)を設けダブルシールとした。また、図12(2)に示すように実施例Uでは、シール部2aのみを設けシングルシールとした。
また、実施例T,Uのシール部(2a,2b)の長さL(=15mm)、高さH(=20mm)、向き(斜め下)の角度θ(=62°)及び間隙(=0mm)は同一とした。
【0036】
【表5】
【0037】
上記表5に示すように、比較例Xでは液落ち箇所が2箇所であったのに対して、実施例T,Uでは1箇所であった。抽出後の安定性については、比較例Xでは安定性が低いが、実施例T,Uでは安定性が高いことが確認できた。液切れ時間については、比較例Xは43.0s、実施例Tは27.3s、実施例Uは32.3sであり、比較例比は、実施例Tは-36.5%、実施例Uは-24.9%であった。Brix値については、比較例Xは1.03、実施例Tは0.99、実施例Uは1.06であった。
以上のことから、シングルシールで1箇所からの液落ち、液切れ時間の短縮(比較例比で25~35%減)は認められ、Brixも比較例Xと同等であった。抽出後のドリップバッグの安定性もダブルシールと同等であった。
【0038】
(検証試験fについて)
「台紙の違い」に関する検証試験fでは、図14に示すように、台紙4を有するドリップバッグ100と、図15に示すように、台紙40を有するドリップバッグ101につき比較検証を行った。
図17は比較例のドリップバッグの使用イメージ図を示している。図17(2)に示すように台紙40を有するドリップバッグ101の場合は、台紙40を外側に広げカップ50に取り付けると、袋体3の平面形状が略矩形状となる。これに対して、図17(1)に示すように台紙4を有するドリップバッグ100の場合は、台紙4を外側に広げカップ50に取り付けると、袋体3の平面形状が略円形状となる。このような台紙形状の違いにより抽出時に生じる袋体3の形状変化が、本発明にどのような変化をもたらすかを比較検証した。
【0039】
図13は、「台紙の違い」に関する検証試験fの説明図であり、(1)は実施例V、(2)は実施例Wを示している。また、下記表6は、検証試験fの結果を表す。図13(1)に示すように実施例Vでは、台紙4を有するドリップバッグ100にシール部(2a,2b)を設けた。実施例Vのシール部(2a,2b)は、長さL(=10mm)、高さH(=20mm)とした。一方、図13(2)に示すように実施例Wでは、台紙40を有するドリップバッグ101にシール部(2a,2b)を設けた。実施例Vのシール部(2a,2b)は、長さL(=9mm)、高さH(=18mm)とした。かかる長さや高さの違いは、台紙(4,40)から下辺部5bまでの長さ比を考慮して、同条件になるようにシールしたものである。
なお、実施例V,Wのシール部(2a,2b)の向き(斜め下)の角度θ(=62°)及び間隙(=0mm)は同一とした。
【0040】
【表6】
【0041】
上記表6に示すように、比較例X,Yでは液落ち箇所が2箇所であったのに対して、実施例V,Wでは1箇所であった。抽出後の安定性については、比較例Xでは安定性が低いが、比較例Y,実施例V,Wでは安定性が高いことが確認できた。液切れ時間については、比較例Xは43.0s、実施例Vは31.0s、比較例Yは41.3s、実施例Wは37.0sであり、台紙形状毎の比較例比は、実施例Vは-27.9%、実施例Wは-14.0%であった。Brix値については、比較例Xは1.03、実施例Vは1.05、比較例Yは1.09、実施例Wは1.14であった。
以上のことから、ドリップバッグの形状に関わらず、1箇所からの液落ち、液切れ時間の短縮(比較例比で10~25%減)、抽出後のドリップバッグの安定性は認められ、Brixは比較例X,Yと同等であった。比較例Yは、シール無の状態でも抽出後の安定性は高かったが、液切れ時間が長いことが分かった。
【0042】
検証試験a~fの結果から、少なくとも1箇所のシールを追加することで流路が規制され、1箇所からの液落ちおよび液切れ時間の短縮、さらに抽出後のドリップバッグを皿などに置いた際の安定性という効果が認められた。また、その効果はシールの位置やサイズによって差が生じることも分かった。一方で、Brixはシール無のドリップバッグと同様の値を示した。これは、本試験に用いたドリップバッグがコーヒー粉をお湯に浸け込んで成分を抽出する「浸漬式」のコーヒー抽出に用いられるフィルタであり、フィルタ内外の抽出液の濃度が平衡状態になると濃度上昇は生じないことから、どの検体においても比較例と同程度の濃度を示したことによる。
【実施例0043】
図1は、実施例1のドリップバッグの正面図を示している。また、図14は、比較例Xのドリップバッグの正面図を示している。
図1に示すように、ドリップバッグ1は、袋体3及び台紙4から成る。袋体3及び台紙4の基本的構成は、図14に示すドリップバッグ100と同様である。袋体3は、ポリプロピレン及びポリエチレンテレフタレートを素材とする不織布フィルタで構成され、上辺部5a及び下辺部5bにおいて折り返され、左辺部5c及び右辺部5dにおいて加熱・加圧により溶融接着(ヒートシール)されている。袋体3にはミシン目状の切り取り部3cが形成され、切り取り部3cに沿って下部3bから上部3aを切り離して袋体3を開口する。
袋体3の内部には、粉体のレギュラーコーヒー(図2,3等参照)や、紅茶、緑茶などが収容される。本実施例では粉体のレギュラーコーヒーが充填される。粉体のレギュラーコーヒーの場合、7~15gを充填可能である。
袋体3の表面及び裏面には台紙4が貼付けられている。図14に示す下辺部5bから台紙4の付け根部4aまでの高さHは、23mmである。
【0044】
実施例1のドリップバッグ1は、比較例Xのドリップバッグ100と異なり、袋体3の左辺部5cと右辺部5dに設けられる袋体形成シール部(12a,12b)以外に、シール部(2a,2b)が設けられる。シール部2aは、左辺部5cから斜め下方向に線状に、ヒートシールにより接着されたものである。同様に、シール部2bは、右辺部5dから斜め下方向に線状にシールされたものである。シール部(2a,2b)が線状に設けられることにより、接合面積を小さくすることができレギュラーコーヒー(粉体)の充填量を確保できる。なお、比較例Xのドリップバッグ100と実施例1のドリップバッグ1の充填可能量を比較したところ、何れも7~15gのレギュラーコーヒーを充填可能であることが確認できた。
【0045】
下辺部5bからシール部(2a,2b)までの最大高さHは何れも20mmであり、シール部(2a,2b)の長さLは何れも10mmである。また、左辺部5cとシール部2a、若しくは右辺部5dとシール部2bのなす角度θは何れも62°である。
下辺部5bからシール部(2a,2b)までの最大高さHについては、必ずしも20mmである必要はないが、下辺部5bから台紙4の付け根部4aまでの高さHが23mmであるため、最大高さHが27mmを超えると、台紙4を開いて袋体3を開口した際に、角部(6a,6b)が十分に上方へ反り返らず、1箇所からの液落ちや、液切れの良さ、又は抽出後の安定性が損なわれる恐れがある。そこで、液落ち箇所が1箇所であることや、液切れの良さ、抽出後の安定性の点から、下辺部5bからシール部(2a,2b)までの最大高さHは、18~27mmであることが好ましく、より好ましくは20~25mmである。
【0046】
レギュラーコーヒーが充填されたドリップバッグ1を用いてコーヒー液を抽出する場合は、切り取り部3cに沿って下部3bから上部3aを切り離して袋体3を開口した後、カップ50(図17参照)に台紙4を係止して上方から注湯する。ドリップバッグ1は、浸漬型のドリップバッグであるため、注湯を進めるに従って、次第にカップ中に袋体が浸漬する。
必要な量の注湯が完了すると、ドリップバッグ1はカップ50から引き上げられる。図2は実施例1のドリップバッグの引き上げイメージ図を示している。また、図16は、比較例Xのドリップバッグの引き上げイメージ図を示している。
上述のようにドリップバッグ1は浸漬型のドリップバッグであるため、図2に示すように、カップ50からの引き上げ直後は、ドリップバッグ1から数十秒に亘って抽出液9が滴り落ちる。図16に示すように、一般的な矩形状のドリップバッグである比較例Xのドリップバッグ100の場合は、ドリップバッグ1のようなシール部(2a,2b)が設けられていないため、袋体3を開くと下辺部5bの中央部が上方へ押し上げられ、左右の角部(6a,6b)が突出した形状となる。その結果、ドリップバッグ100をカップ50から引き上げた際に、2箇所の角部(6a,6b)から抽出液9が滴り落ちることとなる。左右の角部(6a,6b)から抽出液9が落ちると、特に径の小さいカップの場合はドリップバッグ100を引き上げた際に周囲が汚れるといった問題がある。また、液落ちの箇所が多くなると、液切れの速度が遅くなり、利便性が低下するという問題もある。
【0047】
これに対して、ドリップバッグ1では、図2に示すようにシール部(2a,2b)が設けられているため、袋体3を開くと角部(6a,6b)が上方へ反り返った形状となる。その結果、ドリップバッグ1をカップ50から引き上げると、下辺部5bの略中央1箇所から抽出液9が滴り落ちることとなる。中央1箇所から液落ちすることにより、廃棄時に周囲が汚れるといった問題が発生せず、また液落ちが良くなり利便性が向上する。さらに中央1箇所からの液落ちは、見栄えが良くコーヒーの美味しさを引き立てるといった効果も有する。
【0048】
図2に示すようにシール部(2a,2b)が設けられることにより、袋体3を開いた際に角部(6a,6b)が上方へ反り返った形状となることの利点はそれだけではない。図3は、ドリップバッグの載置イメージ図であり、(1)はドリップバッグの左側面図、(2)は比較例Xのドリップバッグの左側面図を示している。図3(2)に示すように、比較例Xのドリップバッグ100の場合は、図16に示すように、抽出時に左右の角部(6a,6b)が突出した形状となるため、抽出後に皿20などにドリップバッグ100を置いた際に、ドリップバッグ100が倒れてしまい、ドリップバッグ100中のレギュラーコーヒー8がこぼれ出てしまうという問題がある。これに対して、実施例1のドリップバッグ1の場合は、図2に示すように、抽出時に角部(6a,6b)が上方へ反り返った形状となると同時に、下辺部5bが略平坦な形状となるため、抽出後に皿20などにドリップバッグ1を置いた際に、ドリップバッグ1を安定的に載置できる構造となっている。
【実施例0049】
図4は、実施例2のドリップバッグの正面図を示している。図4に示すように、ドリップバッグ1aは、実施例1のドリップバッグ1と異なり、シール部(2a,2b)の長さLがより長く20mmとされる。その他の構成や使用方法はドリップバッグ1と同様である。長さLは必ずしも20mmである必要はないが、液落ち箇所が1箇所であることや、液切れの良さ、抽出後の安定性の点から、3~27mmであることが好ましく、より好ましくは5~25mm、更に好ましくは15~25mmである。
シール部(2a,2b)の長さを20mmとすることにより、液切れ時間を短縮できる。「長さ」に関する検証試験cにおいて、シール部(2a,2b)の長さを20mmとした実施例Lでは、液切れ時間が27.3sと最も短いことから、ドリップバッグ1aは、液切れ時間を短縮する効果が高いことが分かる。また検証試験cの結果(実施例L)から、ドリップバッグ1aは、液落ち箇所が1箇所であり、抽出後の安定性も高いことがわかる。
【実施例0050】
図5は、実施例3のドリップバッグの正面図を示している。図5に示すように、ドリップバッグ1bは、実施例1のドリップバッグ1と異なり、左辺部5cとシール部2aの左端部の間、又は右辺部5dとシール部2bの右端部の間に間隙が設けられている。当該間隙の水平方向の間隔Pは5mmである。その他の構成や使用方法はドリップバッグ1と同様である。間隔Pは、必ずしも5mmである必要はないが、液落ちの良さと開口部の開き易さを両立すべく、3~7mmであることが好ましい。
左右5mmの間隙を設けることにより、開口部の開き易さを維持しつつ、液切れ時間を短縮できる。「間隙」に関する検証試験dにおいて、シール部(2a,2b)と、左辺部5c又は右辺部5dとの間の間隔を5mmとした実施例Rでは、液切れ時間が31.3sと短いことから、ドリップバッグ1bは、液切れ時間を短縮する効果が高いことが分かる。また検証試験dの結果(実施例R)から、ドリップバッグ1bは、液落ち箇所が1箇所であり、抽出後の安定性も高いことがわかる。
【実施例0051】
図6は、実施例4のドリップバッグの正面図を示している。図6に示すように、ドリップバッグ1cは、実施例1のドリップバッグ1と異なり、シール部2aの長さLが15mmとされる。また、シール部2bは設けられていない。その他の構成や使用方法はドリップバッグ1と同様である。
シール箇所をシール部2aの1箇所とすることで、よりシンプルな加工で流路規制効果が得られ、作製コストを低減できる。また、シール部2aの長さを実施例1のドリップバッグ1よりも長く設けることで、抽出時に角部6aがしっかりと反り上がり、抽出後の安定性が高められる。
「シール部の数の違い」に関する検証試験eにおいて、シール部2aのみを設けシングルシールとした実施例Uでは、液切れ時間が32.3sと、比較例Xよりも短いことから、ドリップバッグ1cは、液切れ時間を短縮する効果を有することが分かる。また検証試験eの結果(実施例U)から、ドリップバッグ1cは、液落ち箇所が1箇所であり、抽出後の安定性も高いことがわかる。
【実施例0052】
図7は、実施例5のドリップバッグの正面図を示している。図7に示すように、ドリップバッグ1dは、実施例1のドリップバッグ1と異なり、袋体3に台紙4ではなく台紙40が設けられている。ドリップバッグ1dにおいて、シール部(2a,2b)の長さLは9mm、高さHは18mmである。実施例1のドリップバッグ1との長さ・高さの違いは、台紙(4,40)から下辺部5bまでの長さ比を考慮して、同条件になるようにシール部を設けたものである。その他の構成や使用方法はドリップバッグ1と同様である。
「台紙の違い」に関する検証試験fにおいて、台紙40を有するドリップバッグ101にシール部(2a,2b)を設けた実施例Wでは、液切れ時間が37.0sと、比較例Yよりも短いことから、ドリップバッグ1dは、液切れ時間を短縮する効果を有することが分かる。また検証試験fの結果(実施例W)から、ドリップバッグ1dは、液落ち箇所が1箇所であり、抽出後の安定性も高いことがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明は、ドリップバッグの機能性及び利便性を向上する技術として有用である。
【符号の説明】
【0054】
1,1a~1d,100,101 ドリップバッグ
2a,2b シール部
3 袋体
3a 上部
3b 下部
3c 切り取り部
4,40 台紙
4a 付け根部
5a 上辺部
5b 下辺部
5c 左辺部
5d 右辺部
6a,6b 角部
8 レギュラーコーヒー
9 抽出液
12a,12b 袋体形成シール部
20 皿
50 カップ
H,H~H 高さ
L,L~L 長さ
P,P,P 間隔
,W
θ,θ~θ 角度
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17