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  • 特開-波動減速機用軸受 図1
  • 特開-波動減速機用軸受 図2
  • 特開-波動減速機用軸受 図3
  • 特開-波動減速機用軸受 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024157979
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】波動減速機用軸受
(51)【国際特許分類】
   F16C 33/41 20060101AFI20241031BHJP
   F16C 19/06 20060101ALI20241031BHJP
   F16H 1/32 20060101ALI20241031BHJP
【FI】
F16C33/41
F16C19/06
F16H1/32 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023072700
(22)【出願日】2023-04-26
(71)【出願人】
【識別番号】000005197
【氏名又は名称】株式会社不二越
(74)【代理人】
【識別番号】100120400
【弁理士】
【氏名又は名称】飛田 高介
(74)【代理人】
【識別番号】100124110
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 大介
(72)【発明者】
【氏名】内田 岩海
(72)【発明者】
【氏名】花井 広志
【テーマコード(参考)】
3J027
3J701
【Fターム(参考)】
3J027FA11
3J027FA17
3J027FA37
3J027GB03
3J027GC02
3J027GE25
3J701AA02
3J701AA32
3J701AA42
3J701AA52
3J701AA62
3J701BA25
3J701BA44
3J701CA14
3J701EA01
3J701EA31
3J701FA01
3J701FA15
3J701FA46
3J701GA11
(57)【要約】
【課題】保持器の振動や音を抑制しつつ、保持器と玉の組付け性と組付強度の両立を図ることが可能な波動減速機用軸受を提供する。
【解決手段】本発明にかかる波動減速機用軸受(玉軸受102)の構成は、内歯を有するサーキュラスプライン104と、サーキュラスプラインの内側に配置され内歯と噛み合う外歯を有するフレクスプライン106と、楕円状のカムとを備えた波動減速機に適用される波動減速機用軸受であって、フレクスプラインの内側に配置される外輪118と、カムの外側に配置される内輪120と、外輪と内輪の間を転動する転動体(玉122)と、転動体を収容する複数のポケットを有する保持器130とを備え、複数のポケット140は、爪を有する球形の第1ポケット142と、爪を有さない球形の第2ポケット144を含み、第1ポケットの隣に第2ポケットが配置されていることを特徴とする。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内歯を有するサーキュラスプラインと、該サーキュラスプラインの内側に配置され該内歯と噛み合う外歯を有するフレクスプラインと、楕円状のカムとを備えた波動減速機に適用される波動減速機用軸受であって、
前記フレクスプラインの内側に配置される外輪と、
前記カムの外側に配置される内輪と、
前記外輪と前記内輪の間を転動する転動体と、
前記転動体を収容する複数のポケットを有する保持器とを備え、
前記複数のポケットは、爪を有する球形の第1ポケットと、爪を有さない球形の第2ポケットを含み、該第1ポケットの隣に該第2ポケットが配置されていることを特徴とする波動減速機用軸受。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、波動減速機に適用される波動減速機用軸受に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、金属のたわみを応用した波動減速機が知られている。一例として波動減速機は、サーキュラスプラインと、出力軸が取り付けられるフレクスプラインと、入力軸が取り付けられる楕円形状のカムと、軸受とを備える。サーキュラスプラインは、ケーシングに固定され剛性の高い環状の部材であって内歯を有する。フレクスプラインは、薄肉カップ形状の金属弾性体からなる部材であって、サーキュラスプラインの内側に配置されていて、その外周面にサーキュラスプラインの内歯と部分的に噛み合う外歯を有する。また外歯の歯数は、内歯の歯数よりも少ない(例えば2枚)。
【0003】
軸受は、フレクスプラインと楕円形状のカムとの間に配置される。軸受は、フレクスプラインに固定された外輪と、カムに固定された内輪と、外輪と内輪の間を転動する転動体と、転動体を保持する保持器とを有する。外輪および内輪は、金属製の環状部材であって薄肉であることから径方向に弾性変形可能となっている。
【0004】
波動減速機に適用される軸受は、内輪に楕円形状のカムを圧入して固定するため、外輪および内輪が楕円形状に変形するのに対し、保持器は楕円変形せずに円形を維持する。このため軸受では、保持器と内外輪の隙間や保持器と転動体の隙間が小さくなり、保持器に局部的な応力が発生して、保持器が早期に破損してしまう可能がある。
【0005】
特許文献1および特許文献2には、波動減速機用の玉軸受が記載されている。特許文献1、2において、保持器は、円環部と、円環部から軸方向に延在している複数の柱部とを有し、周方向で隣り合う柱部の間がポケットとなっている。そして、玉と柱部との間に形成される周方向隙間と、非円形に変形した内外輪と保持器との間に形成される環状空間の径方向隙間とを、内外輪の長軸方向または短軸方向において適宜設定している。これにより特許文献1、2では、保持器に局部的な応力が発生することを防止し、保持器に生じる応力を低減して保持器を安定して回転させることが可能となる、としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第6432337号
【特許文献2】特許第6432338号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1、2では、所定の隙間を広くすることで保持器が玉によって拘束され難くして保持器の自由度を大きくしている。しかし保持器の自由度が大きくなると、玉や保持器が自由に揺動可能となるため、振動や音が発生してしまう。また保持器と玉との所定の隙間を広くすることにより、それらの組付性を高めることができる一方、保持器が玉から抜けやすくなってしまうため組付強度が低下してしまうという課題もあった。
【0008】
本発明は、このような課題に鑑み、保持器の振動や音を抑制しつつ、保持器と玉の組付け性と組付強度の両立を図ることが可能な波動減速機用軸受を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明にかかる波動減速機用軸受の代表的な構成は、内歯を有するサーキュラスプラインと、サーキュラスプラインの内側に配置され内歯と噛み合う外歯を有するフレクスプラインと、楕円状のカムとを備えた波動減速機に適用される波動減速機用軸受であって、フレクスプラインの内側に配置される外輪と、カムの外側に配置される内輪と、外輪と内輪の間を転動する転動体と、転動体を収容する複数のポケットを有する保持器とを備え、複数のポケットは、爪を有する球形の第1ポケットと、爪を有さない球形の第2ポケットを含み、第1ポケットの隣に第2ポケットが配置されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、保持器の振動や音を抑制しつつ、保持器と玉の組付け性と組付強度の両立を図ることが可能な波動減速機用軸受を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施形態における波動減速機用軸受が適用される波動減速機の概略構成を示す図である。
図2図1の波動減速機用軸受の保持器を示す図である。
図3】本実施形態の保持器の側面図である。
図4】比較例としての従来の保持器の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値などは、発明の理解を容易とするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0013】
図1は、本発明の実施形態における波動減速機用軸受が適用される波動減速機100の概略構成を示す図である。図1(a)は、波動減速機100を軸方向から見た状態を模式的に示す図である。図1(b)は、図1(a)の波動減速機100の縦断面図である。
【0014】
波動減速機100は、金属のたわみを応用した減速機である。図1(a)に示すように波動減速機100は、サーキュラスプライン104と、出力軸が取り付けられるフレクスプライン106と、入力軸が取り付けられる楕円形状のカム108と、波動減速機用軸受(以下、玉軸受102)とを備える。なお出力軸および入力軸は図示を省略している。
【0015】
サーキュラスプライン104は、ケーシング(不図示)に固定され剛性の高い環状の部材であって、その内周面に内歯を有する。なおサーキュラスプライン104の内周面(内歯)は、楕円ではなく、軸心Oを中心とする円形となっている。
【0016】
フレクスプライン106は、サーキュラスプライン104の内側に配置されている。フレクスプライン106は、薄肉カップ形状の金属弾性体からなる部材であって、径方向に弾性変形可能な円筒部112と、出力軸が取り付けられる底部114(図1(b)参照)とを有する。円筒部112の外周面に外歯を有し、サーキュラスプライン104の内歯と部分的に噛み合う。フレクスプライン106の歯数は、サーキュラスプライン104の歯数よりも少ない(例えば2枚)。なおフレクスプライン106とサーキュラスプライン104の歯数差は任意である。
【0017】
本実施形態の玉軸受102は、フレクスプライン106とカム108との間に配置される。玉軸受102は、外輪118と、内輪120と、転動体としての玉122と、玉122を保持する保持器130とを有する。外輪118は、フレクスプライン106の内側に配置され、これに固定される。
【0018】
外輪118および内輪120は、金属製の環状部材であって薄肉であることから径方向に弾性変形可能となっている。玉122は、外輪118と内輪120の間を転動する。保持器130は、玉122の間隔を保ち、玉122同士がこすれないようにする役割を有している。
【0019】
波動減速機100では、カム108が楕円形状を有しているため、カム108を内輪120の内側に圧入することによって、カム108の外側に位置する玉軸受102およびフレクスプライン106の円筒部112が楕円形にたわむ。これにより、フレクスプライン106の長軸方向をサーキュラスプライン104に部分的に噛み合わせることができる。
【0020】
すなわち波動減速機100では、図1(a)に示すように楕円形にたわんだフレクスプライン106の長軸方向において、フレクスプライン106とサーキュラスプライン104とが噛み合い(矢印A、C参照)、短軸方向においてフレクスプライン106とサーキュラスプライン104が離れた状態となる(矢印B、D参照)。
【0021】
そして波動減速機100において、カム108を、軸心Oを中心として回転させることにより、サーキュラスプライン104に対して、フレクスプライン106の楕円の長軸位置とサーキュラスプライン104とが噛み合う位置を移動させることができる。この移動に伴って、フレクスプライン106は、サーキュラスプライン104に部分的に噛み合った状態で回転する。
【0022】
具体的には、カム108を図示時計回りに180°回転させると、フレクスプライン106は、サーキュラスプライン104との歯数差の半分である1枚分に相当する距離だけ、反時計回りに移動する。カム108をさらに時計回りに180°回転させると(つまり1回転させると)、フレクスプライン106は、歯数差(例えば2枚分)に相当する距離だけ、反時計回りに移動する。
【0023】
したがって波動減速機100は、入力軸が取り付けられたカム108の入力に対して、出力軸が取り付けられたフレクスプライン106の回転が出力として取り出されることによって減速機として機能する。
【0024】
図2は、図1の玉軸受102の保持器130を示す図である。保持器130は、樹脂製の一体成型の部品であって、図示のように冠型である。保持器130は、玉軸受102の軸心を中心とした円環部132と、円環部132から軸方向に突出する基部134・136とを有する。基部134・136は、その周方向片側に突出する爪138a・138bをそれぞれ有する。
【0025】
図3は本実施形態の保持器130および従来の保持器の側面図であって、図3(a)は変形前、図3(b)は変形後である。図2および図3(a)に示すように本実施形態の保持器130は、転動体である玉122(図1参照)を収容する複数のポケット140を有する。
【0026】
特に本実施形態では複数のポケット140は、第1ポケット142および第2ポケット144を含んで構成される。第1ポケット142および第2ポケット144は、基部134・136の間に形成された球形ポケット(内面が球形になっているポケット)であり、軸方向に開口している。
【0027】
第1ポケット142は、基部134・136の爪138a・138bが形成された側に配置された「爪を有する球形ポケット」である。第2ポケット144は、基部134・136の爪138a・138bが形成されていない側に配置された「爪を有さない球形ポケット」である。これらの第1ポケット142および第2ポケット144は、互いに隣接して配置されていて、特に本実施形態では周方向で交互に配置されている。
【0028】
上記構成のように爪を有する第1ポケット142および爪を有さない第2ポケット144を互いに隣接するように配置することにより、組付時に基部134・136において爪を有さない側の撓みが許容される。したがって、保持器130において良好な組付性を確保することができる。
【0029】
また本実施形態のように第1ポケット142および第2ポケット144をともに球形ポケットとすることにより、保持器130をボールガイドとして機能させることができる。これにより、保持器130のがたつきを抑え、振動や音を抑制することが可能となる。また球形ポケットを採用することにより、ポケット140内の潤滑剤の保持量が円筒穴よりも多くなる。このため、保持器130を円滑に回転させることができる。
【0030】
図3(b)は、保持器130が玉列から外れようとして変形している状態を示す。このとき第1ポケット142の爪138a、138bが大きく開くために、基部134、136が第2ポケット144側に向かってたわむ。ここで第2ポケット144が球形ポケットであることにより、ポケットの開口が狭くなっているので、第2ポケット144の開口の縁が接触し(破線の円の部分)、玉122の抜け出しが規制される。これにより、玉122への保持器130の組付強度を高めることができる。したがって本実施形態の玉軸受100によれば、保持器130の振動や音を抑制しつつ、組付け性と組付強度の両立を図ることが可能となる。
【0031】
なお、本実施形態では第1ポケット142および第2ポケット144が交互に配置されている構成を例示したが、これに限定するものではない。第1ポケット142の隣に第2ポケット144が配置されている構成であれば、爪を有さない第2ポケット144が連続した構成等であっても、上述した効果を得ることが可能である。
【0032】
図4は、従来の保持器130の側面図であって、図4(a)は変形前、図4(b)は変形後である。なお、図4(a)に示す従来の保持器30については、図2に示す本実施形態の保持器130と実質的に同一の構成要素は同一の符号を付すことにより説明を省略する。
【0033】
図4(a)に例示する従来の保持器30は、円環部132から軸方向に突出する基部34・36を有する。基部34・36は、周方向の片側に突出する爪38a・38bをそれぞれ有する。従来の保持器30は、転動体である玉122(図1参照)を収容する複数のポケット40を有する。複数のポケット40は、「爪38a・38bを有する第1ポケット42」および「爪を有さない第2ポケット44」を含んで構成される。
【0034】
ここで、図4(a)に例示する従来の保持器30では、第1ポケット42は球形ポケット(内面が球面)であるが、第2ポケット44は円筒形状であり、円筒部44a(内面が円筒面)および直線部44b(内面が平面)から構成されている。
【0035】
このような従来の構成の場合、第2ポケット44にある玉122は直線部44bの間に移動可能であり、保持器30が玉122をガイドする位置が安定しない。すると保持器30が玉122を拘束しづらくなるため、振動や音が発生しやすくなってしまう。更に複数のポケット40が円筒形状であると、ポケット40内の潤滑剤の保持量が少なくなるため、保持器30の円滑な回転を長期的に維持することが難しい。
【0036】
図4(b)は、保持器30が玉列から外れようとして変形している状態を示す。このとき第1ポケット42の爪38a、38bが大きく開くために、基部34、36が第2ポケット44に向かってたわむ。ここで第2ポケット44の開口近傍が直線部で構成されていることから、基部34、36がたわんでも第2ポケット44の開口に向かう張り出し量が少ないため、玉122の抜け出しを規制することができない。このため、玉122への保持器130の組付強度を高めることは難しく、第1ポケット42の爪の剛性に頼ることになる。
【0037】
これらのことから、本実施形態のように第1ポケット142および第2ポケット144に球状ポケットを採用することにより保持器130ひいては玉軸受102の性能を飛躍的に向上可能であることが理解できる。
【0038】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明は、波動減速機に適用される波動減速機用軸受として利用することができる。
【符号の説明】
【0040】
30…保持器、34…基部、36…基部、38a…爪、38b…爪、40…ポケット、42…第1ポケット、44…第2ポケット、100…波動減速機、102…玉軸受、104…サーキュラスプライン、106…フレクスプライン、108…カム、110…内歯、112…円筒部、114…底部、116…外歯、118…外輪、120…内輪、122…玉、130…保持器、132…円環部、134…基部、136…基部、138a…爪、138b…爪、140…ポケット、142…第1ポケット、144…第2ポケット、O…軸心
図1
図2
図3
図4