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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024157982
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】熱輻射素子モジュール及び熱輻射光源
(51)【国際特許分類】
   H05B 3/10 20060101AFI20241031BHJP
【FI】
H05B3/10 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023072705
(22)【出願日】2023-04-26
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り ・展示会名 光とレーザーの科学技術フェア2022 開催場所 東京都立産業貿易センター 浜松町館(東京都港区海岸1-7-1) 開催日 令和4年11月9日-11日
(71)【出願人】
【識別番号】000133227
【氏名又は名称】株式会社タムロン
(71)【出願人】
【識別番号】523158516
【氏名又は名称】株式会社シナジーテクニカ
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】福井 俊矢
(72)【発明者】
【氏名】中村 浩幸
(72)【発明者】
【氏名】光久 賢吾
(72)【発明者】
【氏名】大橋 正典
【テーマコード(参考)】
3K092
【Fターム(参考)】
3K092PP20
3K092QA06
3K092QB02
3K092QB04
3K092QC02
3K092RF03
3K092VV40
(57)【要約】
【課題】熱輻射素子モジュールと比較して、筐体の表面が高温になりにくい熱輻射素子モジュールを提供する。
【解決手段】熱輻射素子モジュール(1)は、熱輻射素子(10)と、熱輻射素子(10)を収容する筐体(20)と、熱輻射素子(10)と筐体(20)との間に介在し、熱輻射素子(10)を支持する支持部材(30)と、を備え、支持部材(30)の構成材料は、酸化物及び窒化物の少なくとも何れか一方を含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱輻射素子と、
前記熱輻射素子を収容する筐体と、
前記熱輻射素子と前記筐体との間に介在し、前記熱輻射素子を支持する支持部材と、を備え、
前記支持部材を構成する構成材料は、酸化物及び窒化物の少なくとも何れか一方を含む、
熱輻射素子モジュール。
【請求項2】
前記筐体には、前記熱輻射素子及び前記支持部材を収容するキャビティが設けられており、
前記支持部材は、重心を含む領域に設けられた第1領域であって前記熱輻射素子が設置される第1領域と、前記第1領域から離間した領域に設けられた第2領域であって当該支持部材が前記筐体に対して固定される第2領域と、を含み、
前記支持部材のうち前記第2領域以外の領域であって、前記第1領域を含む領域は、前記キャビティの内壁から離間している、
請求項1に記載の熱輻射素子モジュール。
【請求項3】
前記支持部材は、前記第1領域と前記第2領域との間に介在する第3領域を更に含み、
前記第3領域の幅は、前記第1領域と前記第2領域との間に延在する全区間のうち少なくとも一部区間において、前記熱輻射素子の幅よりも狭い、
請求項2に記載の熱輻射素子モジュール。
【請求項4】
前記支持部材は、前記第1領域、前記第2領域、及び前記第3領域が一平面に沿って延在する板状の部材である、
請求項3に記載の熱輻射素子モジュール。
【請求項5】
前記支持部材は、互いに対向する一対の主面を有し、
前記第1領域は、前記支持部材の一方の主面に設けられており、
前記一方の主面には、前記第2領域から前記第3領域を介して前記第1領域まで延在する一対の給電パターンであって、金属膜により構成された一対の給電パターンが設けられており、
前記一対の給電パターンの各々は、前記第1領域において、前記熱輻射素子が有する一対の電極パターンの各々に導通している、
請求項4に記載の熱輻射素子モジュール。
【請求項6】
25℃及び500℃の各々における前記一対の電極パターン間の抵抗値を、それぞれ、R(Ω)及びR1H(Ω)とし、
25℃における前記一対の給電パターンの各々の抵抗値をR(Ω)として、
以下の式(1)、(2)を満たす、
請求項5に記載の熱輻射素子モジュール。
2×R<R<10000×R ・・・(1)
2×R<R1H<10000×R ・・・(2)
【請求項7】
前記一対の給電パターンは、金、銀、及び、銀を主成分とする合金の何れかである、
請求項5又は6に記載の熱輻射素子モジュール。
【請求項8】
前記構成材料の熱伝導率は、0.1W/m・℃以上30W/m・℃以下である、
請求項1~6の何れか1項に記載の熱輻射素子モジュール。
【請求項9】
前記構成材料は、セラミックス材料であり、
前記キャビティは、内部圧力が大気圧よりも低く、且つ、封止されている、
請求項2~6の何れか1項に記載の熱輻射素子モジュール。
【請求項10】
前記セラミックス材料は、ケイ酸カルシウムとリチウムアルミノケイ酸塩との混合物である、
請求項9に記載の熱輻射素子モジュール。
【請求項11】
請求項1~6の何れか1項に記載の熱輻射素子モジュールを備えている、
熱輻射光源。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱輻射素子モジュール及び熱輻射光源に関する。
【背景技術】
【0002】
あらゆる物体は、分子又は原子から構成されている。それらの分子又は原子は、物体の温度に応じて激しく運動している。この運動に伴い、物体は、電磁波を放射している。この電磁波の放射は、熱放射又は熱輻射と呼ばれる。
【0003】
熱放射は、黒体放射と呼ばれる理想面の放射強度と、放射率と呼ばれる無次元数とで表現される。黒体放射は、プランクの法則で示される温度の関数である。また放射率は、材料の物性や表面状態などによって定まる定数であり、実在面と黒体面との放射強度の比を示す。すなわち黒体放射に放射率を乗じることにより、実在面における放射強度が得られる。
【0004】
古くから、物体表面を粗くしたり酸化したりすれば、放射率が上昇することは知られている。また、近年は、メタサーフェスと呼ばれる微細構造を用いた放射率のコントロールに関する研究が盛んに行われている。
【0005】
古くから、熱放射を利用した光源としては、ハロゲンランプなどが知られている。また、近年は、赤外線に特化した赤外線発光装置も知られている(例えば、特許文献1参照)。このような赤外線発光装置は、熱輻射素子モジュールとも呼ばれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2020-98757号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで前述の通り、熱放射の基本は黒体放射であり、放射強度は、温度の関数で表される。そのため、熱輻射素子モジュールにおいては、熱輻射素子を高温に加熱することによって熱輻射を得ている。また、熱輻射素子モジュールにおいて放射強度を強くしたり、より短波長側の光を利用したりしたい場合には、熱輻射素子の温度をより高く設定することになる。
ところで、熱輻射素子を加熱する手段としては、一般的に電気が使われる。導体中を流れる電子は、電気(電荷)のキャリアであると同時に熱のキャリアでもある。したがって、電気を良好に通す材質あるいは構造は、熱を通しやすい材質あるいは構造でもある。
【0008】
上述の通り、熱輻射素子は、動作時に高温に加熱される。ここで、熱輻射素子の熱は、熱輻射素子に給電するための配線や、熱輻射素子を熱輻射素子モジュールの筐体に接合するための接合部材などを介して、熱輻射素子から熱輻射素子モジュールへ伝導される。その結果、熱輻射素子のみならず、熱輻射素子モジュールの表面も高温になりやすい。
【0009】
本発明の一態様は、上述した課題に鑑みなされたものであり、その目的は、特許文献1に記載されている熱輻射素子モジュールと比較して、筐体の表面が高温になりにくい熱輻射素子モジュール、及び、そのような熱輻射素子モジュールを備えた熱輻射光源を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するために、本発明の第1の態様に係る熱輻射素子モジュールは、熱輻射素子と、前記熱輻射素子を収容する筐体と、前記熱輻射素子と前記筐体との間に介在し、前記熱輻射素子を支持する支持部材と、を備えている。本熱輻射素子モジュールにおいて、前記支持部材を構成する構成材料は、酸化物及び窒化物の少なくとも何れか一方を含む。
【0011】
上記の構成によれば、前記熱輻射素子と前記筐体との間に、支持部材が介在する。そのため、前記筐体に直接前記熱輻射素子を固定する場合と比較して、前記熱輻射素子と前記筐体との間における熱伝導パスの長さを長く設計することができる。
【0012】
また、前記構成材料は、酸化物及び窒化物の少なくとも何れか一方を含んでいる。したがって、このように構成された支持部材の熱伝導率は、金属の熱伝導率よりも低いため、熱輻射素子から筐体への熱の伝導を抑制することができる。
【0013】
以上のように、本熱輻射素子モジュールは、特許文献1に記載されている熱輻射素子モジュールと比較して、前記熱輻射素子から前記筐体へ伝導され得る熱エネルギーを抑制することができる。したがって、本熱輻射素子モジュールは、前記筐体の表面が高温になりにくい。
【0014】
また、本発明の第2の態様に係る熱輻射素子モジュールにおいては、上述した第1の態様に係る熱輻射素子モジュールの構成に加えて、前記筐体には、前記熱輻射素子及び前記支持部材を収容するキャビティが設けられており、前記支持部材は、重心を含む領域に設けられた第1領域であって前記熱輻射素子が設置される第1領域と、前記第1領域から離間した領域に設けられた第2領域であって当該支持部材が前記筐体に対して固定される第2領域と、を含み、前記支持部材のうち前記第2領域以外の領域であって、前記第1領域を含む領域は、前記キャビティの内壁から離間している、構成が採用されている。
【0015】
上記の構成によれば、前記第1領域と、前記第2領域とが離間しており、且つ、前記支持部材のうち前記第2領域以外の領域であって、前記第1領域を含む領域は、前記キャビティの内壁から離間している。したがって、本熱輻射素子モジュールは、特許文献1に記載されている熱輻射素子モジュールと比較して、前記筐体の表面の温度を確実に低減することができる。
【0016】
また、本発明の第3の態様に係る熱輻射素子モジュールにおいては、上述した第2の態様に係る熱輻射素子モジュールの構成に加えて、前記支持部材は、前記第1領域と前記第2領域との間に介在する第3領域を更に含み、前記第3領域の幅は、前記第1領域と前記第2領域との間に延在する全区間のうち少なくとも一部区間において、前記熱輻射素子の幅よりも狭い、構成が採用されている。
【0017】
上記の構成によれば、前記第3領域において熱が伝導し得る断面積を限定することができる。したがって、本熱輻射素子モジュールは、特許文献1に記載されている熱輻射素子モジュールと比較して、前記筐体の表面の温度をより確実に低減することができる。
【0018】
また、本発明の第4の態様に係る熱輻射素子モジュールにおいては、上述した第3の態様に係る熱輻射素子モジュールの構成に加えて、前記支持部材は、前記第1領域、前記第2領域、及び前記第3領域が一平面に沿って延在する板状の部材である、構成が採用されている。
【0019】
上記の構成によれば、前記構成材料により構成されている基板を出発材料として当該基板を2次元的にパターニングすることによって、前記支持部材を容易に製造することができる。したがって、本熱輻射素子モジュールは、大量生産する場合における製造コストを抑制することができる。
【0020】
また、本発明の第5の態様に係る熱輻射素子モジュールにおいては、上述した第4の態様に係る熱輻射素子モジュールの構成に加えて、前記支持部材は、互いに対向する一対の主面を有し、前記第1領域は、前記支持部材の一方の主面に設けられており、前記一方の主面には、前記第2領域から前記第3領域を介して前記第1領域まで延在する一対の給電パターンであって、金属膜により構成された一対の給電パターンが設けられており、前記一対の給電パターンの各々は、前記第1領域において、熱輻射素子が有する一対の電極パターンの各々に導通している、構成が採用されている。
【0021】
上記の構成によれば、板状の部材である前記支持部材を2次元的にパターニングする工程の前工程又は後工程において、前記支持部材の一方の主面に給電パターンを形成することができる。この給電パターンを形成する工程においては、フォトリソグラフィーの技術を用いることができる。したがって、前記第1領域と前記第2領域との間、又は、前記熱輻射素子の電極パターンと前記第2領域との間を導線により導通させる場合と比較して、本熱輻射素子モジュールは、大量生産する場合における製造コストを更に抑制することができる。
【0022】
また、本発明の第6の態様に係る熱輻射素子モジュールにおいては、上述した第5の態様に係る熱輻射素子モジュールの構成に加えて、25℃及び500℃の各々における前記一対の電極パターン間の抵抗値を、それぞれ、R(Ω)及びR1H(Ω)とし、25℃における一対の給電パターンの各々の抵抗値をR(Ω)として、以下の式(1)、(2)を満たす、構成が採用されている。
2×R<R<10000×R ・・・(1)
2×R<R1H<10000×R ・・・(2)
金属膜により構成された一対の給電パターンの各々は、前記筐体から前記熱輻射素子へ駆動電力を伝導する機能と、熱輻射素子から筐体へ熱を伝導する機能と、を有する。金属においては、電子が電力及び熱のキャリアを担う。
【0023】
本熱輻射素子モジュールは、前記熱輻射素子が供給された駆動電力をジュール熱に変換することによって、当該熱輻射素子の温度を高温(例えば、500℃や800℃など)に保つことにより、熱輻射を生じる。前記一対の給電パターンの各々における無用なジュール熱の発生を抑制するために、抵抗R2は、抵抗R1と比較して小さいことが好ましい。ただし、抵抗R2は、抵抗R1と比較して小さすぎると、前記一対の給電パターンの各々における発熱を抑制できる反面、前記熱輻射素子と前記筐体との間における熱伝導がよくなりすぎる。その結果、前記熱輻射素子と前記筐体との間における断熱性が低下し、延いては、前記筐体の表面の温度が上昇しやすくなる。
【0024】
以上の点に鑑み、抵抗R、抵抗R1H、及び抵抗Rは、上述した式(1)、(2)を満たすことが好ましい。
【0025】
また、本発明の第7の態様に係る熱輻射素子モジュールにおいては、上述した第5の態様又は第6の態様に係る熱輻射素子モジュールの構成に加えて、前記一対の給電パターンは、金、銀、及び、銀を主成分とする合金の何れかである、構成が採用されている。
【0026】
上述したように前記熱輻射素子と前記筐体との間に前記支持部材が介在しており、且つ、前記支持部材の前記一方の主面に一対の給電パターンが設けられていることによって、前記支持部材を用いて一対の給電パターンを支えることができる。その結果、一対の給電パターンを構成する材料として、融点が1000℃程度であるこれらの金属又は合金を用いることができる。なお、銀を主成分とする合金には、銀ペーストを焼結することによって得られる合金も含まれる。
【0027】
また、本発明の第8の態様に係る熱輻射素子モジュールにおいては、上述した第1の態様~第7の態様の何れか一態様に係る熱輻射素子モジュールの構成に加えて、前記構成材料の熱伝導率は、0.1W/m・℃以上30W/m・℃以下である、構成が採用されている。
【0028】
前記構成材料の熱伝導率の一例としては、0.1W/m・℃以上30W/m・℃以下が挙げられる。この範囲に含まれる熱伝導率が低い材料を前記構成材料として用いることによって、熱伝導の量を確実に抑制することができる。
【0029】
また、本発明の第9の態様に係る熱輻射素子モジュールにおいては、上述した第1の態様~第8の態様の何れか一態様に係る熱輻射素子モジュールの構成に加えて、前記支持部材を構成する前記構成材料は、セラミックス材料であり、前記キャビティは、内部圧力が大気圧よりも低く、且つ、封止されている、構成が採用されている。
【0030】
前記構成材料としては、高い融点を有するセラミックス材料が好適である。セラミックス材料は、高い融点を有することに加えて、高温時(例えば、500℃や800℃など)においても高い曲げ強度を有し、且つ、高温時においてもアウトガスが少ない。したがって、上記の構成によれば、本熱輻射素子モジュールを高温で動作させる場合であっても、キャビティの内部圧力が上昇することを抑制し、延いては、筐体の表面の温度が上昇することを抑制することができる。また、前記キャビティの内部圧力を低くすることで、気体を介した伝熱の量を抑制することができる。
【0031】
また、本発明の第10の態様に係る熱輻射素子モジュールにおいては、上述した第9の態様に係る熱輻射素子モジュールの構成に加えて、前記セラミックス材料は、ケイ酸カルシウムとリチウムアルミノケイ酸塩との混合物である、構成が採用されている。
【0032】
このようなセラミックス材料の一例としては、アドセラム-CS(登録商標)(Adceram-CS(登録商標))が挙げられる。アドセラム-CS(登録商標)(Adceram-CS(登録商標))は、熱伝導率の低さや線膨張係数の低さ、高温時の機械的強度などの物性から好適である。
【0033】
上記の課題を解決するために、本発明の第11の態様に係る熱輻射光源は、上述した第1の態様~第10の態様の何れか一態様に係る熱輻射素子モジュールを備えている。
熱輻射光源。
【0034】
本発明の一態様に係る熱輻射光源は、本発明の第1の態様に係る熱輻射素子モジュールと同様の効果を奏する。
【発明の効果】
【0035】
本発明の一態様によれば、特許文献1に記載されている熱輻射素子モジュールと比較して、筐体の表面が高温になりにくい熱輻射素子モジュール、及び、そのような熱輻射素子モジュールを備えた熱輻射光源を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図1】(a)は、本発明の一実施形態に係る熱輻射素子モジュールの平面図である。(b)は、(a)に示した熱輻射素子モジュールの断面図である。
図2】(a)は、図1に示した熱輻射素子モジュールが備えている支持部材の平面図である。(b)~(e)は、それぞれ、(a)に示した支持部材の第1の変形例~第4の変形例の平面図である。
図3図1に示した熱輻射素子モジュールが備えている熱輻射素子の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
本発明の一実施形態に係る熱輻射素子モジュール1について、図1図3を参照して説明する。
【0038】
図1の(a)は、熱輻射素子モジュール1の平面図である。図1の(b)は、熱輻射素子モジュール1の断面図である。図1の(a)に示す平面図は、熱輻射素子モジュール1が備えている光学窓23の主面を、当該主面の法線方向(図1の(b)に示す矢印Bの方向)から平面視することによって得られる。図1の(b)に示す断面図は、図1の(a)に示すA-A’線と、光学窓23の主面の法線とを含む断面(以下においてA-A’断面と呼ぶ)を図1の(a)に示す矢印の方向からに見ることによって得られる。
【0039】
以下において、「平面図」は、図1の(b)に示す矢印Bの方向から各部材を見ることにより得られる図面を意味し、「断面図」は、A-A’断面を図1の(a)に示す矢印の方向からに見ることにより得られる図面を意味する。また、「平面視」との表現は、図1の(b)に示す矢印Bの方向から各部材の主面を見ることを意味する。
【0040】
図2の(a)は、熱輻射素子モジュール1が備えている支持部材30の平面図である。図2の(b)~(e)は、それぞれ、図2の(a)に示した支持部材30の第1の変形例~第4の変形例である支持部材30a~30dの平面図である。図2の(a)~(e)に示す平面図は、各支持部材30,30a~30dの主面を、当該主面の法線方向(図1の(b)に示す矢印Bの方向)から平面視することによって得られる。
【0041】
図3は、熱輻射素子モジュール1の断面図である。
【0042】
〔熱輻射素子モジュールの構成〕
図1に示すように、熱輻射素子モジュール1は、熱輻射素子10と、筐体20と、支持部材30と、給電パターン41,42と、を備えている。
熱輻射素子モジュール1は、電力端子25,26を用いてプラズモニック完全吸収体として機能するMIM(metal-insulator-metal)構造(詳しくは図3を参照して後述する)の一部を構成する導体層13、基板14、及び導体層15に通電することによって、熱放射に起因する電磁波(具体的には、可視光、近赤外光、中赤外光、及び遠赤外光のうち少なくとも何れか)を放出する。このように、熱輻射素子モジュール1は、可視光、近赤外光、中赤外光、及び遠赤外光のうち少なくとも何れかの電磁波を出射する熱輻射光源として機能する。すなわち、熱輻射素子モジュール1を用いた熱輻射光源も本発明の範疇に含まれる。なお、熱輻射光源は、熱輻射素子モジュール1に加えて、電力端子25,26を介して熱輻射素子モジュール1に駆動電力を供給する電源モジュールを更に備えていてもよい。
【0043】
<支持部材>
支持部材30は、熱輻射素子10と筐体20との間に介在し、熱輻射素子10を支持するように構成されている。支持部材30を構成する構成材料は、酸化物及び窒化物の少なくとも何れか一方を含んでいる。また、当該構成材料は、酸化物、窒化物、酸化物を主成分とする混合物、及び、窒化物を主成分とする混合物の何れかであることが好ましい。前記構成材料には、酸化物又は窒化物に加えて、(1)酸化物と窒化物の混合物、(2)酸化物と窒化物とその他の物質の混合物、(3)酸化物と窒化物以外の物質の混合物、及び、(4)窒化物と酸化物以外の物質の混合物が含まれる。本願発明において主成分とは、混合物の全体のうちその成分が占める割合が50重量%を上回る成分のことを指す。なお、本実施形態においては、後述するように、支持部材30の構成材料としてアドセラムを用いている。
【0044】
また、前記構成材料の熱伝導率は、タングステンの熱伝導率(198W/m・℃)よりも小さいことが好ましく、モリブデンの熱伝導率(147W/m・℃)よりも小さいことがより好ましい。タングステン及びモリブデンは、融点が高い金属(すなわち耐熱温度が高い金属)として知られている。上記の構成によれば、前記構成材料としてタングステン又はモリブデンのように誘電が高い金属を用いて支持部材30を構成する場合よりも、熱輻射素子10から筐体20へ伝導され得る熱エネルギーを抑制することができる。
【0045】
また、前記構成材料の熱伝導率は、0.1W/m・℃以上30W/m・℃以下であることが好ましい。この範囲に含まれる熱伝導率が低い材料を前記構成材料として用いることによって、熱伝導の量を確実に抑制することができる。
【0046】
また、前記構成材料は、1000℃における曲げ強度が40MPa以上であることが好ましい。そのために、前記構成材料は、セラミックス材料であることが好ましい。ただし、前記構成材料は、セラミックス材料に限定されず、例えば、ガラス材料であってもよい。ガラス材料の中では、融点が高い石英ガラスが支持部材30を構成する材料としては好ましい。
【0047】
また、当該セラミックス材料は、ケイ酸カルシウムとリチウムアルミノケイ酸塩との混合物であることが好ましい。このようなセラミックス材料の例としては、アドセラムが挙げられる。具体的な商品としては、アドセラム-CS(登録商標)(Adceram-CS(登録商標))が挙げられる。本実施形態では、アドセラム-CS(登録商標)の基板を出発材料として、当該基板を平面視した場合の形状を、図1の(a)及び図2の(a)に示す形状に2次元的にパターニングすることによって、支持部材30を得ている。
【0048】
支持部材30は、図1の(a)及び図2の(a)示すように、アルファベットの「H」の文字の形状をベースにし、その重心P1を含む領域R1の幅を拡大することによって得られる。領域R1は、第1領域の一例であり、熱輻射素子10が設置される領域である。上述したように、領域R1は、支持部材30の重心P1を含むように設けられている。なお、以下において、「H」の文字の形状のことをH型形状とも称する。
【0049】
支持部材30は、平面視した場合に、H型形状の4隅に位置する領域R2が後述する筐体20に対して固定されるように、その形状が設計されている。領域R2は、第2領域の一例である。図1の(a)及び図2の(a)からも明らかなように、領域R2は、領域R1から離間した領域に設けられている。
また、支持部材30において、領域R1と領域R2との間に介在する領域を、以下では領域R3と称する。領域R3は、第3領域の一例であり、本実施形態においては、領域R1と領域R2との間を結ぶ帯状の領域である。
支持部材30のうち、領域R2以外の領域であって、領域R1を含む領域は、後述するキャビティCの内壁から離間している(図1の(a)及び(b))。より具体的には、本実施形態において、領域R1は、キャビティCの内壁から離間しており、領域R2は、キャビティCの内壁に接しており、領域R3は、一部がキャビティCの内壁に接しており、残りの一部がキャビティCの内壁から離間している。
本発明の一態様において、領域R1と領域R2との間に延在する全区間のうち一部区間において、領域R3の幅は、熱輻射素子10の幅よりも狭いことが好ましい。本実施形態においては、領域R1と領域R2との間に延在する全区間において、領域R3の幅が熱輻射素子10の幅よりも狭い構成を採用している(図1の(a)及び図2の(a))。
本実施形態において、支持部材30は、アドセラム-CS(登録商標)製の1枚の基板を2次元的にパターニングすることによって製造されている。したがって、支持部材30は、領域R1、領域R2、及び領域R3が一平面に沿って延在する板状部材である。
支持部材30は、互いに対向する一対の主面を有する(図1の(b)参照)。熱輻射素子10は、支持部材30の一対の主面のうち一方の主面(図1の(b)においては上側に位置する主面)に固定されている。すなわち、領域R1は、支持部材30の一方の主面に設けられている。そのうえで、支持部材30の一方の主面には、領域R2から領域R3を介して領域R1まで延在する給電パターン41,42が設けられている。給電パターン41,42は、一対の給電パターンの一例である。給電パターン41,42の各々は、それぞれ、後述する熱輻射素子10が有する一対の電極パターン(電極161,162)の各々に導通している。
本実施形態において、給電パターン41,42の各々に、それぞれ、電極161,162を導通した状態で固定する固定手段として、焼結型銀ペーストを用いている。ただし、当該固定手段は、熱輻射素子10の動作温度に耐えられるものであれば適宜選択することができる。
【0050】
給電パターン41,42は、電気抵抗を低減するために、金属膜により構成されていることが好ましい。また、給電パターン41,42は、金、銀、及び、銀を主成分とする合金の何れかにより構成されていることがより好ましい。また、給電パターン41,42は、下地層と導通層とによる積層構造を有していてもよい。この場合、下地層の例としては、チタン/白金の二層膜が挙げられる。また、導通層の例としては、金の単層膜が挙げられる。
【0051】
給電パターン41,42における設計パラメータは、各給電パターン41,42における所望の抵抗値に応じて適宜選択することができる。給電パターン41,42における設計パラメータの例としては、給電パターン41,42を構成する材料、給電パターン41,42を平面視した場合の形状、及び、給電パターン41,42の厚みが挙げられる。
【0052】
また、各給電パターン41,42における所望の抵抗値は、後述する熱輻射素子10の抵抗値、すなわち、熱輻射素子10が備えている一対の電極パターン(電極161,162)間の抵抗値との間で、以下の条件式を満たすことが好ましい。
【0053】
25℃及び500℃の各々における熱輻射素子10の一対の電極パターン間の抵抗値(電極161と電極162との間の抵抗値)を、それぞれ、R(Ω)及びR1H(Ω)とし、25℃における各給電パターン41,42の抵抗値をR(Ω)とする。そのうえで、抵抗R、R1H、及びRは、以下の式(1)、(2)を満たすことが好ましい。
2×R<R<10000×R ・・・(1)
2×R<R1H<10000×R ・・・(2)
なお、熱輻射素子10の詳しい構成については、図2を参照して後述する。
【0054】
(支持部材の変形例)
支持部材30の第1の変形例~第4の変形例である支持部材30a~30dについて、図2の(b)~(e)を参照して説明する。図2の(b)~(e)は、それぞれ、支持部材30a~30dの平面図である。本発明の一態様において、熱輻射素子10は、支持部材30の代わりに支持部材30a~30dの何れかを備えていてもよい。
【0055】
以下においては、支持部材30a~30dと支持部材30とを比較して、支持部材30a~30dの異なっている点について説明する。なお、図2の(b)に示す支持部材30aにおいては、平面視した場合に各給電パターン41a,42aが設けられている領域を斜線のハッチングで図示している。図2の(c)及び(d)に示す支持部材30b,30cにおいても、同様である。なお、図2の(e)に示す支持部材30dにおいては、一対の給電パターンの代わりに一対の金ワイヤを用いて領域R1と領域R2とを導通させる構成を採用している。そのため、支持部材30dにおいては、領域R2の中に小さな導体パターンが設けられているのみである。
【0056】
第1の変形例である支持部材30a(図2の(b)参照)では、支持部材30と比較して、領域R1と領域R2との間に介在する領域R3の形状が異なる。支持部材30aでは、領域R3の経路を蛇行させることによって、領域R3の経路長を支持部材30の場合よりも稼いでいる。そのため、領域R1における温度と領域R2との温度との差分を大きくすることができ、熱輻射素子10から筐体20へ伝導される熱を抑制することができる。
【0057】
第2の変形例である支持部材30b(図2の(c)参照)では、支持部材30と比較して、領域R1において一対の領域R3が分離されている点が異なる。支持部材30においては、領域R1に対応する長方形の部分に環状の板状部材が残されていた。一方、支持部材30bにおいては、領域R1に対応する長方形の部分に熱輻射素子10を支持するための帯状の部分が僅かに突出している。
【0058】
第3の変形例である支持部材30c(図2の(d)参照)では、支持部材30と比較して、平面視した場合の形状が長方形である点が異なる。なお、給電パターン41c,42cを平面視した場合の形状は、支持部材30の場合と同様にH型形状である。
【0059】
第4の変形例である支持部材30d(図2の(e)参照)では、支持部材30と比較して、平面視した場合の形状が長方形である点と、領域R2から領域R3を介して領域R2に延在する給電パターン41,42が設けられていない点と、が異なる。本発明の一態様においては、このように、一対の給電パターンの代わりに金属製のワイヤを用いることもできる。
【0060】
<筐体>
図1の(a)及び(b)に示すように、筐体20は、直方体状のブロックである。本実施形態において、筐体20は、後述する支持部材30を支える底板21と、支持部材30の側方を取り囲む枠体22と、底板21及び枠体22とともに後述するキャビティCを封止する光学窓23と、電力端子25,26と、を備えている。
【0061】
底板21及び枠体22を構成する材料は、セラミックの一例であるアルミナである。ただし、底板21及び枠体22を構成するセラミックは、アルミナに限定されるものではなく、適宜選択することができる。また、底板21及び枠体22を構成する材料は、セラミックに限定されるものではなく、金属や合金であってもよいし、樹脂などの有機化合物であってもよい。ただし、底板21及び枠体22を構成する材料は、熱輻射素子10の動作温度を150℃以上に設定する場合、金属、合金、及びセラミックの何れかであることが好ましい。
【0062】
筐体20の一対の主面のうち、図1の(b)に示した状態において上側に位置する主面を主面20aと称し、図1の(b)に示した状態において下側に位置する主面を主面20bと称する。筐体20には、主面20aに開口を有し、且つ、主面20aから主面20bに向かう方向に凹んだキャビティCが形成されている。キャビティCの深さは、筐体20の厚みよりも薄い。したがって、キャビティCは、主面20bまでは貫通していない。
【0063】
本実施形態においては、筐体20の主たるブロックの部分が底板21と枠体22とにより構成されている。そのため、底板21には凹部211が形成されており、枠体22には貫通孔222が形成されている。凹部211の内部空間のことをサブキャビティC1と称し、貫通孔222の内部空間のことをサブキャビティC2と称する。凹部211は、底板21の一対の主面のうち主面20bと逆側の主面に開口を有し、且つ、中間層IL側の主面から主面20bに向かう方向に凹んでいる非貫通孔である。貫通孔222は、枠体22の一対の主面の各々に開口を有する貫通孔である。
【0064】
図1の(b)に示すように底板21と枠体22とを重ねた場合に、サブキャビティC1とサブキャビティC2とは互いに連通することによりキャビティCを構成する。また、底板21と枠体22との界面に形成される層を中間層ILと称する。
【0065】
主面20aを平面視した場合に、凹部211は、支持部材30の大部分を包含するものの、支持部材30の一部を包含しない形状を有する(図1の(a)参照)。したがって、熱輻射素子10が領域R1に固定された支持部材30をサブキャビティC1の上に載置した場合、支持部材30は、領域R2と、領域R3の一部とが底板21の一方の主面により支持されるため、サブキャビティC1の内部に落ち込むことがない(図1の(b)参照)。
【0066】
また、主面20aを平面視した場合に、貫通孔222は、支持部材30を完全に包含する形状を有する。図1の(a)及び(b)からも明らかなように、支持部材30の外縁は、枠体22において貫通孔222を構成する内壁から離間している。
【0067】
以上のように構成された筐体20のキャビティCは、熱輻射素子10及び支持部材30を収容する。
また、キャビティCの開口部である枠体22の貫通孔222は、光学窓23により封止されている。キャビティCは、筐体20の主面20aに対して、貫通孔222を覆うように光学窓23を接合することによりキャビティCを封止している。主面20aに光学窓23を接合する技術は、適宜選択することができる。
【0068】
キャビティCは、内部圧力が大気圧よりも低い状態で封止されていることが好ましい。キャビティCの内部圧力が低ければ低いほど、熱輻射素子10からキャビティC中に存在するガスを介して筐体20に伝導される熱を抑制することができる。すなわち、キャビティCの断熱性を高めることができる。この構成は、例えば、大気圧よりも減圧された減圧環境下においてキャビティCを封止することによって実現できる。キャビティCの内部の圧力は、限定されないが、1×10Pa以下であることが好ましく、1×10Pa以下であることがより好ましい。
【0069】
底板21と枠体22との間に介在する中間層ILには、支持部材30の領域R2に対応する領域に電力端子25,26が設けられている(図1の(a)参照)。電力端子25,26の各々は、キャビティCの内部から筐体20の外部へ引き出されている。
【0070】
支持部材30に形成された給電パターン41は、領域R2において、電力端子25と導通するように電力端子25に対して固定される。同様に、給電パターン42は、領域R2において、電力端子26と導通するように電力端子26に対して固定される。本実施形態では、電力端子25,26の各々に支持部材30及び給電パターン41,42を固定する固定手段として焼結型銀ペーストを用いる。ただし、当該固定手段は、所定の温度に耐えられるものであれば適宜選択することができる。
【0071】
例えば、熱輻射素子モジュール1を備えている熱輻射光源においては、電源モジュールから供給される駆動電力を電力端子25,26に供給することによって、熱輻射素子10を駆動することができる。
【0072】
<熱輻射素子>
熱輻射素子モジュール1が備える熱輻射素子の具体例として、MIM構造を含む熱輻射素子10について説明する。ただし、熱輻射素子モジュール1が備える熱輻射素子は、熱輻射素子10に限定されず、既存の熱輻射素子のなかから適宜選択することができる。熱輻射素子は、例えば、基板上に炭素膜を成膜したものであってもよいし、表面が粗面化されたシリコン基板であってもよい。
【0073】
熱輻射素子10は、導体層11と、絶縁体層12と、導体層13と、を備えているMIM構造と、基板14と、導体層15と、電極対16と、を備えている(図3参照)。
【0074】
熱輻射素子10は、一対の電極である電極161,162から供給される駆動電力を用いて、室温(例えば25℃)近傍の温度領域では、導体層15の面内方向に電流を流すように、また、動作温度(例えば、500℃や800℃など)近傍の温度領域では、導体層13,15の面内方向に電流を流すように構成されている。
【0075】
導体層13,15の面内方向に流れる電流は、ジュール熱を発生させる。したがって、熱輻射素子モジュール1においては、その熱エネルギーを用いて熱輻射素子10を所定の動作温度まで加熱することによって、上述した電磁波を放出する。熱輻射素子10の動作温度は、MIM構造における共晶反応が進まない温度範囲内において適宜定めることができる。熱輻射素子10が放出する光は、動作温度を高めれば高めるほどその強度が高まる。本実施形態で説明する熱輻射素子10においては、動作温度として300℃以上1200℃以下を想定している。
【0076】
(基板)
基板14は、一対の主面14a,14bを有する半導体製の板状部材である。図3に示した状態では、主面14aが上側に位置し、主面14bが下側に位置する。基板14の形状は、適宜定めることができるが、長方形状又は正方形状であることが好ましい。本実施形態においては、基板14の形状として正方形を採用している。
【0077】
本実施形態においては、基板14を構成する材料として、半導体の一例であるシリコンであって、抵抗率が1Ωmであるシリコンを採用している。ただし、基板14を構成する材料は、温度の上昇とともに抵抗率が低下する半導体であればよく、シリコンに限定されない。また、半導体の抵抗率は、熱輻射素子10の構成(例えば、導体層13、基板14、及び導体層15の厚み)や想定されている動作温度などに応じて適宜定めることができる。本実施形態において、基板14を構成する半導体の抵抗率は、1×10-2Ωm以上2Ωm以下であることが好ましい。また、基板14を構成する半導体の抵抗率は、規格(日本工業規格や米国材料試験協会により定められた規格など)に準拠した抵抗測定方法を用いて測定されていることが好ましい。このように、抵抗率が保証されている半導体製の基板14を用いることにより、製造された熱輻射素子10において生じ得る温度特性のばらつきを抑制することができる。また、基板14を構成する半導体にドープされているドーパントは、n型及びp型の何れであってもよい。
【0078】
基板14は、室温においては、大きな抵抗率を有している。シリコンの一例である真性シリコンの場合、室温における抵抗率は、1×10Ωm程度である。したがって、後述する導体層15に通電し始めた時点では、基板14には電流が流れず、導体層15のみを電流が流れる。
【0079】
基板14の抵抗率は、上述したように、温度の上昇とともに低下する。真性シリコンの場合、300℃における抵抗率は、1×10-1Ωmを下回り、400℃における抵抗率は、1×10-2Ωmを下回り、500℃における抵抗率は、1×10-3Ωm程度になる。したがって、基板14の温度が上昇すればするほど基板14の抵抗率は低下するため、電流は、導体層15のみならず導体層13も流れるようになる。
【0080】
このように、後述する電極161と電極162との間には、導体層13及び導体層15からなる並列の電流路が形成されるため、電極161と電極162との間に生じる抵抗値は、導体層13の面内抵抗値と、導体層15の面内抵抗値と、基板14の面直抵抗値(導体層13と導体層15との間の抵抗値)と、を合成することにより定められる。熱輻射素子10においては、導体層13、基板14、及び導体層15の厚みを適宜調整することにより、熱輻射素子10の動作温度における電極161と電極162との間に生じる抵抗値における変化を抑制することができる。したがって、熱輻射素子10においては、電極161と電極162との間に生じる抵抗値をモニターしやすい任意の抵抗値に調整することができる。
【0081】
また、熱輻射素子10においては、電極161と電極162との間に生じ得る抵抗値をモニターすることにより、MIM構造の温度を把握することができる。MIM構造が放射する電磁波のスペクトルは、MIM構造の温度に依存しているので、熱輻射素子10においては、電極161と電極162との間に生じ得る抵抗値が所定の値になるように電極対16間に供給する電流を制御することによって、所定のスペクトルを得ることができる。
【0082】
以上のように、熱輻射素子10においては、電極161と電極162との間に生じる抵抗値を精度よくモニターできるので、MIM構造の温度制御を容易にできる。また、熱輻射素子10においては、MIM構造の温度をモニターするための温度計を別個に設ける必要がないため、熱輻射素子10を小型化及び低コスト化することができる。
【0083】
なお、基板14の厚みは、100μm以上1mm以下であることが好ましい。本実施形態では、基板14の厚みとして200μmを採用している。
【0084】
主面14aには、導体層13、絶縁体層12、及び導体層11がこの順番で積層されたMIM構造が設けられている。MIM構造については、後述する。一方、主面14bには、導体層15及び電極対16がこの順番で積層されている。導体層15及び電極対16については、後述する。主面14b及び主面14aは、それぞれ、第1主面及び第2主面の一例である。
【0085】
(導体層及び電極対)
導体層15は、主面14bの全域を覆うように設けられている。導体層15は、後述する電極対16を用いて電流を面内方向に流されることによって、後述するMIM構造及び基板14を加熱するヒーターとして機能する。したがって、導体層15を構成する導体は、銅やアルミニウムや金などと比較して高い抵抗率を有するものが好ましい。また、半導体は様々な金属と共晶合金化しやすい特性を持つ。例えば、融点が3422℃のタングステンは650℃以下でシリコンと共晶反応を示し、抵抗率が変化する。したがって、導体層15を構成する導体は、半導体と共晶反応する温度の高いものが好ましい。導体層15を構成する好ましい導体の例としては、窒化ハフニウム(HfN)、窒化チタン(TiN)、及びモリブデン(Mo)が挙げられる。
【0086】
電極対16を構成する電極161,162は、導体層15の主面のうち基板14と逆側の主面(図3においては下側の主面)である主面15aに設けられている。
【0087】
導体層15の全域に電流を流すために、電極161,162は、導体層15の外縁領域に設けられている。導体層15の外縁領域とは、導体層15を形成する4辺に沿った環状の領域である。より具体的には、電極161,162は、基板14と同様に正方形である導体層15の一対の対辺(図1の(a)においては左側及び右側に位置する一対の対辺)に沿って設けられている。電極161,162は、帯状あるいは長方形の導体パターンである。電極161は、図1の(a)において左側に位置する辺に沿って設けられており、電極162は、図1の(a)において右側に位置する辺に沿って設けられている。
【0088】
本実施形態では、電極161,162として、主面15aの上に、チタン(Ti)、プラチナ(Pt)、及び金(Au)をこの順番で積層したTi/Pt/Auの3層膜を用いている。各層の厚みは、適宜定めることができるが、本実施形態では、Ti及びPtの厚みを30nmとし、Auの厚みを500nmとしている。
【0089】
電極161,162の各々に、それぞれ極性が異なる配線を接続し電力を供給することによって、電極161,162の何れか一方から他方に向かって電流が流れる。すなわち、導体層15には、主面15aの面内方向に電流が流れる。したがって、導体層15の主面15aに設けられた電極161,162は、導体層15の主面の面内方向に電流を流す電極の一例である。
【0090】
なお、本実施形態においては、電極161,162として、上述したように多層膜の一例であるTi/Pt/Auの3層膜を用いている。ここで、Ti/Ptの各層は、下地層として機能し、Auの層は、主たる導電層として機能する。下地層のTi層は、導体層15に対する電極161,162の密着性を高め、導体層15と電極161,162との間に生じ得る接触抵抗を低減する。また、下地層のPt層は、Au層とTi層との間で生じ得る拡散を防止あるいは抑制し、電極の抵抗変化を抑制する。ただし、下地層の構成は、Ti/Ptに限定されない。下地層の構成は、単層膜であってもよし、3層以上の多層膜であってもよい。また、主たる導体層として機能するAuの代わりに異なる金属を用いることもでき、例えばAgや、Agを主成分とした合金などを用いることができる。また、電極161,162においては、Ti/Ptの下地層を省略し、Auの単層膜を採用することもできる。電極161,162の各々の構成は、上述した例に限定されず、導電率の高さや、反応性の低さや、融点の高さなどを考慮して適宜定めることができる。
【0091】
なお、本実施形態では、電極161,162を導体層15の主面15aに設けている。これは、後述するMIM構造に電流を流す電流経路中に基板14を介在させるためである。ただし、当該電流計路中に基板14を介在させない場合には、MIM構造の一部を構成する導体層13の表面に電極161,162を設けることもできる。
【0092】
(MIM構造)
熱輻射素子10が備えているMIM構造は、図3に示すように、導体層11と、絶縁体層12と、導体層13とを備えている。導体層11は、第3の導体層の一例であり、導体層13は、第2導体層の一例である。基板14の主面14a上には、導体層13、絶縁体層12、及び導体層11がこの順番で積層されている。
【0093】
導体層13は、基板14の一方の主面(図3においては上側の主面)である主面14a上に、主面14aの全域を覆うように形成された導体製の膜である。導体層13は、第2導体層の一例である。
【0094】
本実施形態においては、導体層13を構成する導体として窒化ハフニウム(HfN)を採用している。ただし、導体層13を構成する導体は、HfNに限定されるものではなく、金属的な導電特性を有する材料であればよい。使用時に高温になることが想定される基材の表面上にMIM構造を形成する場合、導体層13を構成する材料は、HfNのように融点が高い材料であることが好ましい。HfNの典型的な融点は、3330℃である。加えて、導体層13を構成する材料は、HfNのように半導体と共晶反応する温度の高いものが好ましい。HfNは、1200℃以下の温度領域では、シリコンと共晶反応を示さない。
【0095】
なお、主面14aのうち導体層13を形成する領域は、主面14aの全部であってもよく、主面14aの一部であってもよく、適宜定めることができる。本実施形態では、主面14aの全面に導体層13を形成している。
【0096】
本実施形態においては、導体層13の厚みとして140nmを採用している。ただし、導体層13の厚みは、140nmに限定されるものではなく、例えば、10nm以上10μm以下の範囲内において適宜定めることができる。
【0097】
絶縁体層12は、導体層13の主面のうち基板14と逆側の主面(図3においては上側の主面)である主面13aに、少なくとも主面13aの一部を覆うように形成された絶縁体製の膜である。本実施形態において、絶縁体層12は、図3に示すように、主面13aの全域を覆うように設けられている。ただし、主面13aのうち絶縁体層12を設ける領域は、主面13aの全域であってもよく、主面13aの一部であってもよく、適宜定めることができる。
【0098】
なお、本実施形態においては、厚みが均一なベタ膜である絶縁体層12が形成されている。ただし、絶縁体層12は、複数の導体パターン111が形成される領域にのみ形成されていてもよい。すなわち、絶縁体層12は、導体層11と同様に、周期的に配置された複数の導体パターンであって、各々が円形状又は正多角形状である複数の導体パターンにより構成されていてもよい。
【0099】
本実施形態においては、絶縁体層12を構成する材料としてSiOを採用している。ただし、絶縁体層12を構成する材料は、絶縁体であればよく、SiOに限定されるものではない。このような材料の例としては、絶縁性の酸化物が挙げられる。なお、使用時に高温になることが想定される基板14の主面14a上にMIM構造を形成する場合、絶縁体層12を構成する材料は、SiO、酸化アルミニウム(Al)、窒化アルミニウム(AlN)、及び、SiOとAlとの混合物の何れかであることが好ましい。
【0100】
本実施形態においては、絶縁体層12の厚みとして180nmを採用している。ただし、絶縁体層12の厚みは、180nmに限定されるものではなく、例えば、10nm以上10μm以下の範囲内において適宜定めることができる。
【0101】
導体層11は、絶縁体層12の主面のうち絶縁体層12と逆側の主面(図3においては上側の主面)である主面12aの全域に亘って形成されている。ただし、主面12aのうち導体層11を設ける領域は、主面12aの全域であってもよく、主面12aの一部であってもよく、適宜定めることができる。導体層11は、第3導体層の一例である。このように、上述した絶縁体層12と、導体層11とは、第2導体層の一例である導体層13の主面13aに、この順番で積層されている。
【0102】
導体層11は、各々が円形状である複数(図2においては1列に7個)の導体パターン111からなる。ただし、各導体パターン111の形状は、円形状に限定されるものではなく、正多角形状であってもよい。当該正多角形状の好ましい例としては、正六角形状が挙げられる。
【0103】
なお、符号111は、複数の導体パターン111のうち1つの導体パターン111のみに付している。複数の導体パターン111は、主面12a上に、2次元的に、且つ、周期的に配置されている。本実施形態においては、導体パターン111の周期的な2次元配置として正方配置を採用している。ただし、この周期的な2次元配置は、正方配置に限定されるものではなく、例えば、六方配置であってもよい。
【0104】
本実施形態においては、導体層11の各導体パターン111を構成する導体として窒化ハフニウム(HfN)を採用している。ただし、各導体パターン111を構成する導体は、HfNに限定されるものではなく、金属的な導電特性を有する材料であればよい。この点について、各導体パターン111を構成する導体は、導体層13を構成する導体と同じである。
【0105】
また、本実施形態においては、導体層11の厚み(すなわち各導体パターン111の厚み)として40nmを採用している。ただし、導体層11の厚みは、40nmに限定されるものではなく、例えば、10nm以上10μm以下の範囲内において適宜定めることができる。
【0106】
支持部材30の項で上述したように、25℃及び500℃の各々における熱輻射素子10の一対の電極パターン間の抵抗値(電極161と電極162との間の抵抗値)を、それぞれ、R(Ω)及びR1H(Ω)とし、25℃における各給電パターン41,42の抵抗値をR(Ω)とする。そのうえで、抵抗R、R1H、及びRは、以下の式(1)、(2)を満たすことが好ましい。
2×R<R<10000×R ・・・(1)
2×R<R1H<10000×R ・・・(2)
ここで、抵抗R及び抵抗R1Hは、熱輻射素子10の抵抗値であり、主に上述した導体層13、基板14、及び導体層15の各々における厚みや材質などの設計パラメータに依存する。
【0107】
したがって、抵抗R及び抵抗R1Hを左右する導体層13、基板14、及び導体層15の設計パラメータと、抵抗Rを左右する給電パターン41,42における設計パラメータと、を適切に定めることによって、式(1)、(2)を満たす範囲内において各抵抗値を設定することができる。
【0108】
<本発明の一態様の別の表現>
本発明の一態様において、支持部材30は、少なくとも一部分が板状の形状を有し、板状の部分の厚さが50μm以上10mm以上であることが好ましい。
支持部材30の厚さが薄ければ薄いほど熱輻射素子10から筐体20への熱の伝導は、抑制される。ただし、支持部材30がセラミックス製であるとしても厚さが50μm未満となると、機械的強度が低下しすぎる。一方で、支持部材30の厚さを厚くしすぎると、機械的強度を容易に高めることができるものの、熱輻射素子10から筐体20への熱の伝導も増えてしまう。したがって、支持部材30の厚さは、上述した範囲内において適宜選択することが好ましい。
【0109】
また、給電パターン41,42は、支持部材30の一方の主面に形成された金属製又は合金製の薄膜であることが好ましい。さらに、給電パターン41,42、導通層のみにより構成されていてもよいし、下地層と導通層とにより構成されていてもよい。下地層は、支持部材30の一方の主面に対する導通層の密着性を高めるための層である。給電パターン41,42の厚さは、30nm以上10μm以下であることが好ましい。
給電パターン41,42の厚さが10μmを超える場合、膜の内部応力が高まりやすいため給電パターン41,42が支持部材30から剥がれやすくなる。また、給電パターン41,42の厚さが30nm未満の場合、給電パターン41,42の抵抗に起因してジュール熱が発生し易くなる。したがって、給電パターン41,42の厚さは、上述した範囲内において適宜選択することが好ましい。
【0110】
また、筐体20を構成する材質の線膨張係数をαとし、支持部材30を構成する材料の線膨張係数をαとして、線膨張係数α,αは、α>αの関係を満たす、ことが好ましい。
熱輻射素子モジュール1において、熱輻射素子10が動作温度に達しているとき、熱輻射素子10の近くに位置する支持部材30は、熱輻射素子10の遠くに位置する筐体20によりも高温となる。したがって、線膨張係数α,αを上述した範囲内において適宜選択することによって、支持部材30における線膨張量と、筐体20における線膨張量との差を小さくすることができる。
【0111】
また、熱輻射素子10の500℃における放射率は、波長500nm以上10μm以下のうちの少なくとも一部の帯域において、0.5以上1.0以下であることが好ましい。
例えば、図3に図示した熱輻射素子10は、波長1000nm以上2000nm以下の帯域において放射率が0.9となる。このような熱輻射素子10は、従来からフィラメントとしてよく使われているタングステンの放射率(0.43)を上回ることができる。
【0112】
また、熱輻射素子10の駆動時における温度であって、熱輻射素子10の少なくとも一部分の温度は、500℃以上2000℃以下であることが好ましい。すなわち、熱輻射素子10の動作温度は、500℃以上2000℃以下であることが好ましい。
熱輻射素子モジュール1によれば、熱輻射素子10の動作温度と、筐体20の表面における温度との差分を大きくすることができる。そのため、熱輻射素子10の動作温度が高温になればなるほど、熱輻射素子モジュール1は、その効果を発揮しやすい。したがって、熱輻射素子モジュール1において、熱輻射素子10の動作温度は、上述した範囲内であることが好ましい。
【0113】
〔付記事項〕
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【実施例0114】
本発明の実施例1について、以下に説明する。実施例1は、図1に示した熱輻射素子モジュール1の実施例である。本実施例では、熱輻射素子モジュール1において以下の構成を採用した。
熱輻射素子10(図3参照):R=10Ω、R1H=5Ω
筐体20:セラミックパッケージ(京セラ製、KD-S92459)
筐体20の光学窓23:ガラス(日本電気硝子製、BDA-E)
枠体22と光学窓23との接合:金錫はんだプリフォーム
キャビティCの内部の圧力:1Pa
支持部材30:アドセラム-CS(登録商標)D3、厚さ0.3mm
給電パターン41,42:R=0.6Ω、下地層としてチタン/白金の二層膜、導通層として厚さ500nmの金膜
なお、電極161,162と給電パターン41,42との接合、及び、給電パターン41,42と電力端子25,26との接合の各々には、焼結型銀ペーストであるニホンハンダ製のMAX302を用いた。
【0115】
電力端子25,26に駆動電力を供給することにより、熱輻射素子10の動作温度を500℃に保ったところ、ファンなどの強制冷却手段を用いない状態で、筐体20の表面の温度は、85℃であった。したがって、実施例1は、筐体20の表面における温度を抑制できることが分かった。
【実施例0116】
本発明の実施例2について、以下に説明する。実施例2は、図1に示した熱輻射素子モジュール1において、支持部材30(図2の(a)参照)の代わりに支持部材30a(図2の(b)参照)を採用した実施例である。実施例1と異なる構成について以下に説明する。
給電パターン41a,42a:R=0.2Ω、下地層としてチタン/白金の二層膜、導通層として厚さ5000nmのAPC-TR(登録商標)膜
なお、APC-TR(登録商標)は、銀を主成分とした鉛と銅との合金である。
【0117】
熱輻射素子10の動作温度を500℃に保ったところ、ファンなどの強制冷却手段を用いない状態で、筐体20の表面の温度は、40℃であった。したがって、実施例2は、筐体20の表面における温度を抑制できることが分かった。
【実施例0118】
本発明の実施例3について、以下に説明する。実施例3は、図1に示した熱輻射素子モジュール1において、支持部材30(図2の(a)参照)の代わりに支持部材30b(図2の(c)参照)を採用した実施例である。実施例1と異なる構成について以下に説明する。
筐体20の光学窓23:ガラス(SCHOTT製、TEMPAX Float(登録商標))
熱輻射素子10(図3参照):基板上に成膜した炭素膜、R=6Ω、R1H=8Ω
支持部材30b:セラフレックスA(登録商標)、厚さ0.32mm
給電パターン41,42:R=2Ω、下地層としてチタン/白金の二層膜、導通層として厚さ200nmの金膜
電力端子25,26に駆動電力を供給することにより、熱輻射素子10の動作温度を500℃に保ったところ、ファンなどの強制冷却手段を用いない状態で、筐体20の表面の温度は、125℃であった。したがって、実施例3は、筐体20の表面における温度を抑制できることが分かった。
【実施例0119】
本発明の実施例4について、以下に説明する。実施例4は、図1に示した熱輻射素子モジュール1において、支持部材30(図2の(a)参照)の代わりに支持部材30c(図2の(d)参照)を採用した実施例である。実施例1と異なる構成について以下に説明する。
筐体20の光学窓23:ガラス(SCHOTT製、TEMPAX Float(登録商標))
熱輻射素子10(図3参照):表面を粗面化したシリコン基板、R=20Ω、R1H=10Ω
支持部材30c:石英ガラス、厚さ0.28mm
電力端子25,26に駆動電力を供給することにより、熱輻射素子10の動作温度を500℃に保ったところ、ファンなどの強制冷却手段を用いない状態で、筐体20の表面の温度は、150℃であった。したがって、実施例4は、筐体20の表面における温度を抑制できることが分かった。
【実施例0120】
本発明の実施例5について、以下に説明する。実施例5は、図1に示した熱輻射素子モジュール1において、支持部材30(図2の(a)参照)の代わりに支持部材30d(図2の(e)参照)を採用した実施例である。実施例1と異なる構成について以下に説明する。
熱輻射素子10(図3参照):表面を粗面化したシリコン基板、R=20Ω、R1H=10Ω
支持部材30d:石英ガラス、厚さ0.28mm
なお、熱輻射素子10の一対の電極と支持部材30の給電パターンとの接合、及び、給電パターンと電力端子25,26との接合の各々には、金ワイヤを用いた。金ワイヤは、ワイヤボンディング法により接合した。
【0121】
電力端子25,26に駆動電力を供給することにより、熱輻射素子10の動作温度を500℃に保ったところ、ファンなどの強制冷却手段を用いない状態で、筐体20の表面の温度は、110℃であった。したがって、実施例4は、筐体20の表面における温度を抑制できることが分かった。
【0122】
〔比較例〕
本発明の比較例について、以下に説明する。比較例は、本発明の一態様が備えている支持部材(例えば支持部材30)を備えておらず、熱輻射素子10の電極161,162が筐体20の電力端子25,26に直接固定されている。実施例1と異なる構成について以下に説明する。
筐体20:セラミックパッケージ(京セラ製、KD-S89702)
なお、電極161,162と電力端子25,26との接合の各々には、焼結型銀ペーストであるニホンハンダ製のMAX302を用いた。
【0123】
電力端子25,26に駆動電力を供給することにより、熱輻射素子10の動作温度を500℃に保ったところ、ファンなどの強制冷却手段を用いない状態で、筐体20の表面の温度は、280℃であった。
【0124】
比較例では、熱輻射素子10と筐体20との間に支持部材30を介在させず、熱輻射素子10を筐体20に直接固定している。したがって、比較例は、特許文献1に記載の熱輻射素子モジュールに対応する。
【符号の説明】
【0125】
1 熱輻射素子モジュール
10 熱輻射素子
20 筐体
21 底板
22 枠体
23 光学窓
25、26 電力端子
30、30a、30b、30c、30c、30d 支持部材
41、42、41a、42a、41b、42b、41c,42c 給電パターン
図1
図2
図3