(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024157983
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】クランプ装置
(51)【国際特許分類】
B25J 15/08 20060101AFI20241031BHJP
【FI】
B25J15/08 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023072707
(22)【出願日】2023-04-26
(71)【出願人】
【識別番号】000003643
【氏名又は名称】株式会社ダイフク
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】門田 怜士
【テーマコード(参考)】
3C707
【Fターム(参考)】
3C707AS23
3C707DS01
3C707ES03
3C707ET02
3C707EU07
3C707EV02
3C707EV19
3C707HS27
(57)【要約】
【課題】クランプ力が掛かりすぎた場合にアクチュエータを保護する。
【解決手段】クランプ装置(1)は、アクチュエータ(2)の伸縮動作に連動する基部(3)と、第1把持部(51)が基部(3)に対して回動可能に取り付けられた一対の把持部(5)と、第1把持部(51)が対象物(T)から受ける反力が所定値以上となった場合に弾性変形して、基部(3)に対する第1把持部(51)の回動を許容する弾性部材(6)と、を備える。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物を把持する把持状態と前記対象物を解放する解放状態とに切り替え可能なクランプ装置であって、
アクチュエータと、
前記アクチュエータの伸縮動作に連動する基部と、
前記把持状態において前記対象物を把持する一対の把持部であって、該一対の把持部のうちの一方の把持部が前記基部に対して回動可能に取り付けられた一対の把持部と、
前記把持状態において前記一方の把持部が前記対象物から受ける反力が所定値以上となった場合に弾性変形して、前記基部に対する前記一方の把持部の回動を許容する弾性部材と、
を備えるクランプ装置。
【請求項2】
前記弾性部材は、前記基部と前記一方の把持部との間に配置され、前記反力が所定値以上となった場合に収縮するようになっている請求項1に記載のクランプ装置。
【請求項3】
前記アクチュエータは、電動アクチュエータである請求項1または2に記載のクランプ装置。
【請求項4】
前記所定値は、前記把持状態において前記電動アクチュエータに搭載される電動機に加わる負荷が、該電動機の定格トルクを超えないように設定される請求項3に記載のクランプ装置。
【請求項5】
前記弾性部材は、圧縮コイルばねである請求項1または2に記載のクランプ装置。
【請求項6】
前記圧縮コイルばねに貫設される支持軸と、
前記支持軸と前記一方の把持部との接続部分に設けられ、前記支持軸を通す貫通孔を有する座金と、をさらに備え、
前記座金は、球面状の凸面を有する凸状座金と、前記凸面に対応した球面状の凹面を有する凹状座金とを含み、前記凹面に対して前記凸面が摺動可能になっている請求項5に記載のクランプ装置。
【請求項7】
前記基部に接続されたリンクプレートをさらに備え、
前記一対の把持部のうちの他方の把持部は、前記リンクプレートに回動可能に取り付けられ、
前記アクチュエータの伸縮動作に連動して、前記一方の把持部及び前記他方の把持部の各々が互いに逆向きに回動する請求項1または2に記載のクランプ装置。
【請求項8】
前記アクチュエータ及び前記基部が取り付けられるフレームと、
前記フレームに先端部を押し当てて、前記フレームを位置決めするねじ部材と、をさらに備える請求項1または2に記載のクランプ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対象物を把持するクランプ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、シリンダの伸縮動作に応じて、対象物を把持するクランプ装置(把持装置)が知られている。この種の技術に関し、特許文献1には、シリンダ、一対の把持部材本体、リンク部材及びコイルばねを備えた把持装置が開示されている。特許文献1に記載の把持装置では、シリンダと把持部材本体とを連結するリンク部材にコイルばねが接続され、該コイルばねが対象物から受ける反力により弾性変形することにより、対象物に対する把持部材本体の接触圧の微細な調整を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の技術では、何らかの原因でクランプ力が掛かりすぎた場合にシリンダを保護することができないという課題があった。
【0005】
本開示の一態様は、前記従来の課題に鑑みてなされたものであって、クランプ力が掛かりすぎた場合にシリンダ等のアクチュエータを保護し得るクランプ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために、本発明の一態様に係るクランプ装置は、対象物を把持する把持状態と前記対象物を解放する解放状態とに切り替え可能なクランプ装置であって、アクチュエータと、前記アクチュエータの伸縮動作に連動する基部と、前記把持状態において前記対象物を把持する一対の把持部であって、該一対の把持部のうちの一方の把持部が前記基部に対して回動可能に取り付けられた一対の把持部と、前記把持状態において前記一方の把持部が前記対象物から受ける反力が所定値以上となった場合に弾性変形して、前記基部に対する前記一方の把持部の回動を許容する弾性部材と、を備える。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一態様によれば、クランプ力が掛かりすぎた場合にアクチュエータを保護し得るクランプ装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の実施形態に係るクランプ装置の構成を示す概略側面図である。
【
図2】
図1に示されるクランプ装置のA矢視図である。
【
図3】
図1に示されるクランプ装置のB矢視図である。
【
図4】
図1に示されるクランプ装置が備える弾性部材の取り付け構造を示す拡大図である。
【
図5】前記クランプ装置の解放状態を示す概略側面図である。
【
図6】前記クランプ装置の把持状態を示す概略側面図である。
【
図7】前記クランプ装置のクランプ異常状態を示す概略側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の一実施形態について、
図1~
図7に基づいて説明する。なお、以下の説明は本発明に係るクランプ装置の例示であり、本発明の技術的範囲は図示例に限定されるものではない。
【0010】
[クランプ装置1の概要]
まず、
図1から
図3を参照して、本実施形態に係るクランプ装置1の概要を説明する。
図1は、本実施形態に係るクランプ装置1の構成例を示す概略側面図である。
図2は、
図1に示されるクランプ装置1のA矢視図である。
図3は、
図1に示されるクランプ装置1のB矢視図である。
【0011】
クランプ装置1は、対象物Tを把持することで固定する固定装置である。クランプ装置1は、対象物Tを把持する把持状態と対象物Tを解放する解放状態とに切り替え可能になっている。
図1から
図3は、クランプ装置1の把持状態を例示している。このクランプ装置1は、例えば自動車の製造工場等に設置され、自動車の製造ラインで車体を搬送する搬送台車の一部(突起部)を把持することで、該搬送台車の位置を固定するために用いられる。ただし、クランプ装置1の把持対象となる対象物Tの種類は、クランプ装置1によって把持可能なものであれば特に限定されない。
【0012】
図1に示すように、クランプ装置1では、対象物Tを把持する一対の把持部5のうちの第1把持部51(一方の把持部)に弾性部材6が接続される。この弾性部材6は、第1把持部51が対象物Tから受ける反力が所定値以上となった場合に弾性変形(収縮)して該反力を吸収するようになっている。これにより、何らかの原因でクランプ力が掛かりすぎた場合であってもアクチュエータ2が過負荷状態になり難くなるため、アクチュエータ2を保護することができる。
【0013】
なお、各図面では、対象物Tの搬送方向に沿う方向をX方向とし、X方向における対象物Tの搬送方向をX1、その反対方向をX2方向と表記している。また、平面視でX方向に対して直交する方向をY方向とし、Y方向における一方の方向(
図1の紙面手前方向)をY1方向、その反対方向をY2方向と表記している。さらに、X方向及びY方向に直交する方向をZ方向とし、Z方向における一方の方向(
図1の紙面上方向)をZ1方向、その反対方向をZ2方向と表記している。
【0014】
[クランプ装置1の構成]
次に、
図1から
図3に加えて
図4を参照して、本実施形態に係るクランプ装置1の構成を説明する。
図1から
図3に示すように、クランプ装置1は、主な構成要素として、アクチュエータ2と、基部3と、リンクプレート4と、第1把持部51及び第2把持部52を含む一対の把持部5と、弾性部材6と、フレーム7とを備える。
【0015】
(アクチュエータ2)
アクチュエータ2は、動力源からの動力を直線運動へ変換して、伸縮動作を行う伸縮装置である。本実施形態では、アクチュエータ2は、動力源にモータ(電動機)21を用いた電動アクチュエータである。アクチュエータ2は、モータ21と、外筒22と、ロッド(内筒)23と、先端具24とを含む。アクチュエータ2は、モータ21の回転力をボールねじ等を介して直線運動へ変換し、ロッド23を伸縮動作させる。モータ21は、回転方向を正回転と逆回転とに切り替えることができる。例えば、モータ21が正回転することによりロッド23が前進し、クランプ装置1が把持状態になる。一方、モータ21が逆回転することによりロッド23が後退し、クランプ装置1が解放状態になる。ロッド23の先端には先端具24が設けられる。この先端具24には、基部3が回動可能に接続される。
【0016】
なお、アクチュエータ2として、電動アクチュエータに代えて、油圧アクチュエータまたは空圧アクチュエータ等を使用してもよい。
【0017】
(基部3)
基部3は、アクチュエータ2の伸縮動作に連動するプレート部材である。基部3は、第1軸11を介して、アクチュエータ2の先端具24に回動可能に接続される。また、基部3は、第2軸12を介して、フレーム7に回動可能に軸支される。この第2軸12は、フレーム7に対する位置が固定された固定軸である。基部3は、アクチュエータ2の伸縮動作に応じて、固定軸である第2軸12を中心に回動するようになっている。
【0018】
(リンクプレート4)
リンクプレート4は、基部3に回動可能に接続される、長手方向を有するプレート部材である。リンクプレート4は、長手方向の一端側が、第3軸13を介して、基部3に回動可能に接続される。また、リンクプレート4は、長手方向の他端側が、第4軸14を介して、第2把持部52に回動可能に接続される。リンクプレート4は、基部3と第2把持部52とを繋ぎ、後述するように、第1把持部51とは逆向きに第2把持部52を回動させるように作用する。
図1に示す把持状態において、第3軸13は第2軸12に対してZ2方向側に位置し、第4軸14は第2軸12に対してX1方向側に位置するようになっている。
【0019】
(一対の把持部5)
一対の把持部5は、把持状態において対象物Tを把持する把持部材である。一対の把持部5は、第1把持部51及び第2把持部52を含む。第1把持部51及び第2把持部52は、対象物Tと接触する第1突出部51A及び第2突出部52Bを有する。第1把持部51及び第2把持部52は、把持状態において、第1突出部51Aと第2突出部52Bとが対象物Tを挟んでX方向に互いに正対するようになっている。
【0020】
第1把持部51は、長手方向を有するプレート部材である。第1把持部51は、第1突出部51Aとは反対側の端部が、第5軸15を介して、基部3に回動可能に接続される。第1把持部51は、アクチュエータ2の伸縮動作に応じて、第2軸12を中心に回動するようになっている。一方、第2把持部52は、略L字型に屈曲したプレート部材である。第2把持部52は、第2突出部52Aとは反対側の端部が、第4軸14を介して、リンクプレート4に回動可能に接続される。また、第2把持部52は、第6軸16を介して、フレーム7に回動可能に軸支される。この第6軸16は、フレーム7に対する位置が固定された固定軸である。第2把持部52は、アクチュエータ2の伸縮動作に応じて、第6軸16を中心に回動するようになっている。
【0021】
第2軸12及び第6軸16は、X方向に沿って配置される。第1把持部51及び第2把持部52は、アクチュエータ2の伸縮動作に応じて、固定軸である第2軸12及び第6軸16を中心に、互いに逆方向へ回動するようになっている。例えば、クランプ装置1を解放状態から把持状態へ切り替えた場合、第1把持部51及び第2把持部52は、互いに近づく方向へ回動して対象物Tを把持する。一方、クランプ装置1を把持状態から解放状態へ切り替えた場合、第1把持部51及び第2把持部52は、互いに遠ざかる方向へ回動して対象物Tを解放する。
【0022】
(弾性部材6)
弾性部材6は、第1把持部51に接続され、第1把持部51が対象物Tから受ける反力が所定値以上となった場合に該反力を吸収する弾性体である。弾性部材6は、第1把持部51が対象物Tから受ける反力が所定値以上となった場合、つまり何らかの原因でクランプ力が掛かりすぎるクランプ異常が発生した場合に弾性変形して、基部3に対する第1把持部51の回動を許容するようになっている。一方、弾性部材6は、第1把持部51が対象物Tから受ける反力が所定値未満の場合、つまりクランプ異常が発生していない通常動作の場合には弾性変形せず、基部3に対する第1把持部51の回動を抑制するようになっている。
【0023】
本実施形態では、弾性部材6は、圧縮コイルばねである。弾性部材6は、基部3と第1把持部51との間に配置され、第1把持部51が対象物Tから受ける反力が所定値以上となった場合に収縮するようになっている。例えば、弾性部材6は、基部3から突出した第1支持部81と、第1把持部51から突出した第2支持部82との間に配置される。
図1に示す把持状態において、第1支持部81及び第2支持部82は、X2方向へ互いに平行に突出し、これらの間に弾性部材6が架設される。このため、第5軸15に対してX2方向側に、弾性部材6が並列に配置される。このように弾性部材6を配置することにより、把持状態において第1把持部51が対象物Tから受ける反力が所定値以上となった場合に弾性部材6が収縮することで、第1把持部51を第5軸15の左回りに回動させることができる(
図7参照)。
【0024】
図4は、
図1に示されるクランプ装置1が備える弾性部材6の取り付け構造を示す拡大図である。
図4に示すように、弾性部材6は、一端6Aが基部3の第1支持部81に接続され、他端6Bが第1把持部51の第2支持部82に接続される。
【0025】
弾性部材6は、該弾性部材6に貫設されるボルト(支持軸)83によって、第1支持部81及び第2支持部82に締結される。このボルト83と第1把持部51との接続部分には、ボルト83を通す貫通孔を有する球面座金(座金)84が設けられる。球面座金84は、球面状の凸面を有する凸状座金84Aと、該凸面に対応した球面状の凹面を有する凹状座金84Bとを含み、凹面に対して凸面が摺動可能になっている。このため、弾性部材6が弾性変形した際のボルト83の傾きを球面座金84によって吸収することができる。従って、ボルト83の傾きに起因する動作不良を低減することができる。
【0026】
また、第1支持部81は、弾性部材6の一端6Aを収容可能な第1凹部81Aを有する。同様に、第2支持部82は、弾性部材6の他端6Bを収容可能な第2凹部82Aを有する。このように、第1支持部81及び第2支持部82に弾性部材6の一部を収容した状態で弾性部材6を取り付けることにより、弾性変形した際の弾性部材6の位置ずれを低減することができる。
【0027】
なお、弾性部材6の種類は、圧縮コイルばねに限定されない。弾性部材6は、第1把持部51が対象物Tから受ける反力が所定値以上となった場合に弾性変形して該反力を吸収可能なものであればよい。また、弾性部材6は、第1把持部51が対象物Tから受ける反力が所定値以上となった場合に該反力を吸収可能なように取り付けられていればよい。従って、弾性部材6を取り付ける位置及び弾性部材6を取り付ける構造は、図示例に限定されない。
【0028】
(フレーム7)
フレーム7は、クランプ装置1の骨格をなす支持構造体である。フレーム7には、アクチュエータ2が取り付けられる。また、フレーム7には、基部3及び第2把持部52が第2軸12及び第6軸16を介して回動可能に取り付けられる。フレームは、クランプ装置1が設置される設置空間の壁部W等に固定されたベース91にボルト等によって取り付けられる。
【0029】
フレーム7は、該フレーム7のX方向の両端側に配置されたボルト(ねじ部材)92によって位置決めされている。ボルト92は、ベース91に突設された突設部93に貫設され、X方向の両側からフレーム7へ向けて先端部を押し当てて配置される。このため、ボルト92の各々の締め付け量を変更することにより、クランプ装置1の設置後であっても、X方向におけるクランプ装置1(フレーム7)の位置を調整することができる。
【0030】
〔クランプ装置1の動作〕
次に、
図5から
図7を参照して、本実施形態に係るクランプ装置1の動作例を説明する。クランプ装置1の動作は、図示しない制御部によって、対象物Tの搬送装置と連携して制御される。
【0031】
図5は、クランプ装置1の解放状態を示す概略側面図である。
図6は、クランプ装置1の把持状態を示す概略側面図である。
図7は、クランプ装置1のクランプ異常状態を示す概略側面図である。なお、
図5から
図7では、フレーム7を省略して図示している。
【0032】
図5に示すように、搬送装置によって対象物TがX1方向へ搬送され、クランプ装置1の上方で停止する。対象物Tの搬送中、クランプ装置1は解放状態になっている。これにより、一対の把持部5が開状態となり、搬送中の対象物Tに一対の把持部5が干渉しないようになっている。
【0033】
図5に示す解放状態から
図6に示す把持状態へ切り換える場合、クランプ装置1は、アクチュエータ2のロッド23を前進させる。これにより、第2軸12を中心に右回りに基部3が回動する。この基部3の回動に伴って、基部3に接続された第1把持部51は、基部3に付随して、第2軸12を中心に右回りに回動する。一方、リンクプレート4を介して基部3に接続された第2把持部52は、リンクプレート4によって第6軸16を中心に左回りに回動する。このため、第1把持部51及び第2把持部52は、互いに近づく方向へ回動する。これにより、
図6に示すように、一対の把持部5によって対象物TをX方向側から挟持することで、対象物Tが固定される。
【0034】
また、
図6に示す把持状態から
図5に示す解放状態へ切り換える場合、クランプ装置1は、アクチュエータ2のロッド23を後退させる。これにより、第2軸12を中心に左回りに基部3が回動する。この基部3の回動に伴って、基部3に接続された第1把持部51は、基部3に付随して、第2軸12を中心に左回りに回動する。一方、リンクプレート4を介して基部3に接続された第2把持部52は、リンクプレート4によって第6軸16を中心に右回りに回動する。このため、第1把持部51及び第2把持部52は、互いに遠ざかる方向へ回動する。これにより、
図5に示すように、対象物Tが解放され、対象物Tが搬送可能な状態になる。
【0035】
このように、クランプ装置1は、基部3に接続されたリンクプレート4を備え、第2把持部52が、リンクプレート4に回動可能に取り付けられる。このため、アクチュエータ2の伸縮動作に連動して、第1把持部51及び第2把持部52の各々が互いに逆向きに回動するようになっている。このため、単一のアクチュエータ2の伸縮動作に応じて、第1把持部51及び第2把持部52の各々を逆向きに回動させて、把持状態と解放状態とに切り替えることができる。
【0036】
ここで、例えば対象物Tの変形等が生じた場合、把持状態においてクランプ力が掛かりすぎることがある。このようなクランプ異常が発生した場合、対象物Tから受ける反力が通常動作時よりも大きくなり、アクチュエータ2のモータ21が過負荷状態になり得る。
【0037】
そこで、クランプ装置1では、
図7に示すように、把持状態において第1把持部51が対象物Tから受ける反力が所定値以上となった場合、弾性部材6が弾性変形することにより、基部3に対する第1把持部51の回動を許容するようになっている。
図7では、弾性部材6が収縮することによって、第1把持部51が第5軸15を左回り回動した結果、基部3に対して第1把持部51が角度θだけX2方向側へ傾いた状態を例示している。
【0038】
このように、第1把持部51が対象物Tから受ける反力が所定値以上となった場合に弾性部材6が収縮して、対象物Tから第1把持部51への反力を弾性部材6によって吸収することにより、アクチュエータ2への負荷が低減される。従って、クランプ力が掛かりすぎた場合であってもモータ21が過負荷状態になり難くなるため、アクチュエータ2を保護することができる。
【0039】
特に近年、工場内ではエアレス化が求められており、従来の空圧アクチュエータに代えて電動アクチュエータの実用化が進められている。しかしながら、電動アクチュエータは、クランプ力が掛かりすぎた場合、過負荷によって動力源である電動機(モータ21)が損傷し易い。
【0040】
クランプ装置1では、クランプ力が掛かりすぎた場合にアクチュエータ2への負荷、即ちモータ21への負荷が低減されるため、モータ21を保護することができる。このように、本発明の一態様は、特にモータ21を有するアクチュエータ2を備えたクランプ装置1に適用することにより、過負荷によるモータ21の損傷を効果的に低減することができる。
【0041】
弾性部材6が弾性変形する反力の所定値は、モータ21が過負荷状態にならないように設定される。例えば、前記所定値は、把持状態においてアクチュエータ2に搭載されるモータ21に加わる負荷が、該モータ21の定格トルクを超えないように設定されてもよい。これにより、クランプ力が掛かりすぎた場合であってもモータ21に加わる負荷が定格トルクを超えないため、モータ21が過負荷状態にならず、モータ21を保護することができる。
【0042】
〔クランプ装置1の効果〕
以上のように、本実施形態に係るクランプ装置1は、対象物Tを把持する把持状態と対象物Tを解放する解放状態とに切り替え可能なクランプ装置1である。クランプ装置1は、アクチュエータ2と、アクチュエータ2の伸縮動作に連動する基部3と、把持状態において対象物Tを把持する一対の把持部5であって、該一対の把持部のうちの第1把持部51が基部3に対して回動可能に取り付けられた一対の把持部5と、把持状態において第1把持部51が対象物Tから受ける反力が所定値以上となった場合に弾性変形して、基部3に対する第1把持部51の回動を許容する弾性部材6と、を備える。
【0043】
クランプ装置1では、第1把持部51が対象物Tから受ける反力が所定値以上となった場合に弾性部材6が弾性変形して反力を吸収することにより、アクチュエータ2への負荷が低減される。このため、クランプ力が掛かりすぎた場合であってもアクチュエータ2が過負荷状態になり難くなる。
【0044】
従って、本実施形態によれば、クランプ力が掛かりすぎた場合にアクチュエータ2を保護し得るクランプ装置1を実現することができる。
【0045】
〔まとめ〕
本発明の態様1に係るクランプ装置は、対象物を把持する把持状態と前記対象物を解放する解放状態とに切り替え可能なクランプ装置であって、アクチュエータと、前記アクチュエータの伸縮動作に連動する基部と、前記把持状態において前記対象物を把持する一対の把持部であって、該一対の把持部のうちの一方の把持部(第1把持部51)が前記基部に対して回動可能に取り付けられた一対の把持部と、前記把持状態において前記一方の把持部が前記対象物から受ける反力が所定値以上となった場合に弾性変形して、前記基部に対する前記一方の把持部の回動を許容する弾性部材と、を備える。
【0046】
前記構成では、一方の把持部が対象物から受ける反力が所定値以上となった場合に弾性部材が弾性変形して反力を吸収することにより、アクチュエータへの負荷が低減される。従って、クランプ力が掛かりすぎた場合であってもアクチュエータが過負荷状態になり難くなるため、アクチュエータを保護することができる。
【0047】
本発明の態様2に係るクランプ装置では、前記態様1において、前記弾性部材は、前記基部と前記一方の把持部との間に配置され、前記反力が所定値以上となった場合に収縮するようになっていてもよい。
【0048】
前記構成では、反力が所定値以上となった場合に基部と一方の把持部との間に配置された弾性部材が収縮することにより、基部に対して一方の把持部が回動可能になる。
【0049】
本発明の態様3に係るクランプ装置では、前記態様1または2において、前記アクチュエータは、電動アクチュエータであってもよい。
【0050】
近年、工場内ではエアレス化が求められており、従来の空圧アクチュエータ(エアシリンダ)に代えて電動アクチュエータを備えたクランプ装置の実用化が進められている。しかしながら、電動アクチュエータは、クランプ力が掛かりすぎた場合、過負荷によって動力源である電動機(モータ等)が損傷し易い。
【0051】
前記構成では、クランプ力が掛かりすぎた場合に電動アクチュエータへの負荷、即ち電動機への負荷が低減されるため、電動機を保護することができる。従って、本発明の一態様は、特に電動アクチュエータを備えたクランプ装置に適用することにより、過負荷による電動機の損傷を効果的に低減することができる。
【0052】
本発明の態様4に係るクランプ装置では、前記態様3において、前記所定値は、前記把持状態において前記電動アクチュエータに搭載される電動機(モータ21)に加わる負荷が、該電動機の定格トルクを超えないように設定されもよい。
【0053】
前記構成によれば、クランプ力が掛かりすぎた場合であっても電動機に加わる負荷が定格トルクを超えないため、電動機が過負荷状態にならず、電動機を保護することができる。
【0054】
本発明の態様5に係るクランプ装置では、前記態様1から4において、前記弾性部材は、圧縮コイルばねであってもよい。
【0055】
前記構成によれば、一方の把持部が対象物から受ける反力が所定値以上となった場合に圧縮コイルばねが弾性変形することにより反力を吸収し、アクチュエータへの負荷を低減することができる。
【0056】
本発明の態様6に係るクランプ装置では、前記態様5において、前記圧縮コイルばねに貫設される支持軸(ボルト83)と、前記支持軸と前記一方の把持部との接続部分に設けられ、前記支持軸を通す貫通孔を有する座金と、をさらに備え、前記座金は、球面状の凸面を有する凸状座金と、前記凸面に対応した球面状の凹面を有する凹状座金とを含み、前記凹面に対して前記凸面が摺動可能になっていてもよい。
【0057】
前記構成では、圧縮コイルばねに貫設される支持軸と一方の把持部との接続部分に、いわゆる球面座金が設けられる。このため、前記構成によれば、圧縮コイルばねが弾性変形した際の支持軸の傾きを球面座金によって吸収することができ、支持軸の傾きに起因する動作不良を低減することができる。
【0058】
本発明の態様7に係るクランプ装置では、前記態様1から6において、前記基部に接続されたリンクプレートをさらに備え、前記一対の把持部のうちの他方の把持部は、前記リンクプレートに回動可能に取り付けられ、前記アクチュエータの伸縮動作に連動して、前記一方の把持部及び前記他方の把持部の各々が互いに逆向きに回動してもよい。
【0059】
前記構成によれば、単一のアクチュエータの伸縮動作に応じて、一方の把持部及び前記他方の把持部の各々を逆向きに回動させて、把持状態と解放状態とに切り替えることができる。
【0060】
本発明の態様8に係るクランプ装置では、前記態様1から7において、前記アクチュエータ及び前記基部が取り付けられるフレームと、前記フレームに先端部を押し当てて、前記フレームを位置決めするねじ部材(ボルト92)と、をさらに備えてもよい。
【0061】
前記構成によれば、ねじ部材によってフレームが位置決めされるため、クランプ装置の設置後であってもクランプ装置の位置調整が可能となる。
【0062】
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、実施形態に開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0063】
1:クランプ装置
2:アクチュエータ
3:基部
4:リンクプレート
5:一対の把持部
6:弾性部材(圧縮コイルばね)
6A:一端
6B:他端
7:フレーム
21:モータ(電動機)
51:第1把持部(一方の把持部)
52:第2把持部(他方の把持部)
83:ボルト(支持軸)
84:球面座金(座金)
84A:凸状座金
84B:凹状座金
92:ボルト(ねじ部材)
T 対象物