(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024157990
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】給湯器
(51)【国際特許分類】
F24H 9/20 20220101AFI20241031BHJP
F24H 15/196 20220101ALN20241031BHJP
F24H 1/54 20220101ALN20241031BHJP
【FI】
F24H9/20 B
F24H15/196 301E
F24H1/54 301H
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023072728
(22)【出願日】2023-04-26
(71)【出願人】
【識別番号】000112015
【氏名又は名称】株式会社パロマ
(74)【代理人】
【識別番号】100104178
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 尚
(74)【代理人】
【識別番号】100174344
【弁理士】
【氏名又は名称】安井 雅俊
(72)【発明者】
【氏名】星崎 心吾
【テーマコード(参考)】
3L024
【Fターム(参考)】
3L024CC19
3L024DD02
3L024DD13
3L024DD22
3L024GG05
(57)【要約】
【課題】電磁弁の開故障を早期に検知できる給湯器を提供する。
【解決手段】給湯器のバルブ装置60は浴槽に通じる第2流路702を備える。第2流路702の周壁部790には、センサ固定部793が設けられる。センサ固定部793には風呂出口サーミスタ47が固定される。風呂出口サーミスタ47の先端部に設けられた検温部471は、第2流路702の中心部よりも周壁部790側に寄った位置に臨むように配置される。例えば高温差湯水電磁弁に軽度の開故障があった場合、高温の少量の湯水が周壁部790の内周面に沿って流れる。矢印P1に沿って流れる高温の少量の湯水は風呂出口サーミスタ47の検温部471付近を通過する。これにより給湯器は早期に高温差湯水電磁弁の開故障を検出できる。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱部により通水を加熱する熱交換器と、前記熱交換器の入口に接続される入水流路と、前記熱交換器の出口に接続される出湯流路と、前記熱交換器をバイパスするように前記入水流路と前記出湯流路とに接続されるバイパス流路と、前記出湯流路に接続され、前記熱交換器で加熱された湯水を浴槽に供給するバルブ装置とを備えた給湯器において、
前記バルブ装置は、
前記出湯流路から分岐し、電磁弁によって開閉される分岐流路と、
前記分岐流路に通じると共に、下流側に向けて下方向に延設され、前記浴槽に通じる出口流路と
を備え、
前記出口流路の周壁部には、サーミスタの固定部が設けられ、
前記サーミスタの先端部に設けられた検温部は、前記出口流路の中心部よりも前記周壁部側に寄った位置に臨むように配置されたこと
を特徴とする給湯器。
【請求項2】
前記出口流路において前記サーミスタの前記固定部よりも上流側の位置には、前記出口流路内の湯水を前記検温部側にガイドするガイド部が設けられたこと
を特徴とする請求項1に記載の給湯器。
【請求項3】
前記ガイド部は、前記固定部に向けて下り傾斜する段部を備えたこと
を特徴とする請求項2に記載の給湯器。
【請求項4】
前記出口流路における前記段部より上側の部分の径よりも、前記段部より下側の部分の径の方が大きいこと
を特徴とする請求項3に記載の給湯器。
【請求項5】
前記分岐流路は、
前記出湯流路の前記バイパス流路との接続部よりも上流側で分岐し、第1電磁弁によって開閉される第1分岐流路と、
前記出湯流路の前記接続部よりも下流側で分岐し、第2電磁弁によって開閉される第2分岐流路と
を備え、
前記出口流路は、前記第1分岐流路及び前記第2分岐流路の双方に通じると共に、下流側に向けて下方向に延設され、前記浴槽に通じること
を特徴とする請求項1から4の何れか一に記載の給湯器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、給湯器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、高温差し湯機能付きの給湯器が知られている(例えば特許文献1参照)。この種の給湯器は、出湯管の途中から分岐し浴槽へ通じる流路を有し、この流路の途中には開閉弁が設けられる。そして開閉弁を開放することで高温の差し湯水を浴槽に供給するようになっている。このような給湯器では開閉弁が完全に閉状態にならない所謂開故障が生じると、高温の差し湯水が意図せずに浴槽に供給し続けることになる。このため、給湯器の浴槽側の出口付近の配管にはサーミスタが自身の検温部が配管の中心に臨むように配置される。このような構成で、開閉弁が閉状態であるにも関わらず、サーミスタにより高温の湯水の流出が検出された場合には、給湯器の作動を停止させる等の対応措置を講じるのが一般的である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、開閉弁から多少の水漏れが出る程度の軽度の開故障の場合、高温の湯水は出口配管の周壁面を伝わるため、検温部との接触が遅れてしまうという問題点があった。
【0005】
本発明の目的は、電磁弁の開故障を早期に検知できる給湯器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1の給湯器は、加熱部により通水を加熱する熱交換器と、前記熱交換器の入口に接続される入水流路と、前記熱交換器の出口に接続される出湯流路と、前記熱交換器をバイパスするように前記入水流路と前記出湯流路とに接続されるバイパス流路と、前記出湯流路に接続され、前記熱交換器で加熱された湯水を浴槽に供給するバルブ装置とを備えた給湯器において、前記バルブ装置は、前記出湯流路から分岐し、電磁弁によって開閉される分岐流路と、前記分岐流路に通じると共に、下流側に向けて下方向に延設され、前記浴槽に通じる出口流路とを備え、前記出口流路の周壁部には、サーミスタの固定部が設けられ、前記サーミスタの先端部に設けられた検温部は、前記出口流路の中心部よりも前記周壁部側に寄った位置に臨むように配置されたことを特徴とする。
【0007】
請求項2の給湯器の前記出口流路において前記サーミスタの前記固定部よりも上流側の位置には、前記出口流路内の湯水を前記検温部側にガイドするガイド部が設けられてもよい。
【0008】
請求項3の給湯器の前記ガイド部は、前記固定部に向けて下り傾斜する段部を備えてもよい。
【0009】
請求項4の給湯器の前記出口流路における前記段部より上側の部分の径よりも、前記段部より下側の部分の径の方が大きくてもよい。
【0010】
請求項5の給湯器の前記分岐流路は、前記出湯管の前記バイパス管との接続部よりも上流側で分岐し、第1電磁弁によって開閉される第1分岐流路と、前記出湯管の前記接続部よりも下流側で分岐し、第2電磁弁によって開閉される第2分岐流路とを備え、前記出口流路は、前記第1分岐流路及び前記第2分岐流路の双方に通じると共に、下流側に向けて下方向に延設され、前記浴槽に通じてもよい。
【発明の効果】
【0011】
請求項1の給湯器によれば、例えば電磁弁に軽度の開故障があった場合、高温の少量の湯水が出口流路の周壁部の内周面に沿って流れる。本願の構成においては、サーミスタの検温部が周壁部側に寄った位置に臨むように配置されているので、早期に開故障を検出できる。
【0012】
請求項2の給湯器によれば、サーミスタの検温部に向けて湯水がより流れ易くなるので、より確実に開故障を検出できる。
【0013】
請求項3の給湯器によれば、段部を伝って湯水がサーミスタ側に流れるので、より確実に開故障を検出できる
【0014】
請求項4の給湯器によれば、単純な金型であっても、成型後、容易に金型を抜くことができるので、製造コストを抑えることができる。なお、この構成では、段部の下面側を湯水が伝わることになるが、湯水の張力により、ある程度の湯水がサーミスタの検温部にまでガイドされるため、開故障が検出できる点で変わりがない。
【0015】
請求項5の給湯器によれば、接続部よりも上流側で分岐する第1分岐流路と、接続部よりも下流側で分岐する第2分岐流路とを備えるので、第1分岐流路により高温差し湯を行い、第2分岐流路により浴槽への湯張りを行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について説明する。以下に記載される装置構成などは、特定的な記載がない限り、それのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例である。図面は、本発明が採用しうる技術的特徴を説明する為に用いられるものである。本実施形態では、図中に示す前後、左右、上下の向きを使用して説明する。また、各図の縮尺は必ずしも相互には一致しておらず、図示する対象に応じて適宜拡大又は縮小している。
【0018】
図1を参照し、給湯器1の内部の回路構成について説明する。給湯器1は筐体(図示略)の内部に給湯回路2と風呂回路3を備える。
【0019】
給湯回路2の構成について説明する。給湯回路2は、入水流路5、バーナ6,7、熱交換器8、出湯流路9、バイパス流路10を備える。入水流路5の水入口13は筐体の下部に設けられる。入水流路5における水入口13の近傍には水抜き栓16が設けられる。水抜き栓16にはストレーナ16Aが設けられる。水抜き栓16よりも下流側には、上流側から順に、分岐部31,32が設けられる。分岐部31では入水流路5から給圧流路12へ分岐し、分岐部32では入水流路5からバイパス流路10へ分岐する。分岐部31と32の間には、水量制御モータ17が設けられる。
【0020】
バーナ6,7と熱交換器8は燃焼室200に設けられる。ガス流路11のガス入口15は筐体の下部に設けられる。ガス流路11はガス入口15から燃焼室200に向かって延び、その途中で分岐流路11Aと11Bに分岐する。分岐流路11Aはバーナ6に向かって延び、分岐流路11Bはバーナ7に向かって延びる。ガス流路11におけるガス入口15の近傍には元ガス電磁弁24が設けられ、その下流側で且つ分岐流路11Aと11Bに分岐する位置よりも上流側にはガス比例弁25が設けられる。分岐流路11Aにはガス電磁弁26Aが設けられ、分岐流路11Bにはガス電磁弁26Bが設けられる。バーナ7の燃焼面の近傍には、イグナイタ18の点火プラグ18Aが設けられる。バーナ6の燃焼面とバーナ7の燃焼面との間には、火炎検出用のフレームロッド27が設けられる。
【0021】
熱交換器8はバーナ6,7の上方に設けられる。熱交換器8の入口には入水流路5の下流側一端部が接続される。熱交換器8はバーナ6,7からの燃焼排気中の熱を回収して通水を加熱する。燃焼室200の上部には排出口201が設けられる。排出口201は熱交換器8を通過した燃焼排気を外部に排出する。燃焼室200の下部には燃焼ファン19が設けられる。燃焼ファン19は燃焼室200の外側から燃焼用の空気を取り込む。出湯流路9は熱交換器8の出口に接続され、その下流側一端部は給湯栓14に接続される。
【0022】
出湯流路9には、湯水が流れる上流側から順に、熱交換器サーミスタ20、分岐部33、給湯逆止弁21、合流部34、出湯サーミスタ22、分岐部35、給湯栓水量センサ23が設けられる。熱交換器サーミスタ20は、熱交換器8の出口直後の湯水の温度を検出する。バイパス流路10は、入水流路5の分岐部32と出湯流路9の合流部34との間に接続される。出湯サーミスタ22は、出湯流路9においてバイパス流路10との合流部34の下流側に設けられ、バイパス流路10内の通水と混合後の湯水の温度を検出する。分岐部33では出湯流路9から差し湯流路42に分岐する。差し湯流路42には、過圧逃し弁兼水抜栓57が設けられ、その下流側には高温差し湯水電磁弁58が設けられる。分岐部35では出湯流路9から湯張流路41に分岐する。
【0023】
風呂回路3の構成について説明する。風呂回路3は、湯張流路41、差し湯流路42、水抜き路43を備える。湯張流路41は出湯流路9の分岐部35と浴槽40に設けられた湯出口40Aとの間に接続される。湯張流路41の途中には合流部55が設けられる。湯張流路41は主流路41Aと出口流路41Bを備える。主流路41Aは分岐部35から合流部55までの流路、出口流路41Bは合流部55から湯出口40Aまでの流路である。差し湯流路42の下流側一端部は合流部55に接続される。主流路41Aの分岐部35と合流部55の間には落し込み水電磁弁44が設けられる。合流部55の下流側である出口流路41Bには2つの逆止弁45,46が設けられ、それらの下流側には風呂出口サーミスタ47が設けられる。風呂出口サーミスタ47は、浴槽40に供給される湯水の温度を検出する。風呂出口サーミスタ47の更に下流側には圧力緩衝弁48が設けられる。
【0024】
出口流路41Bにおいて、逆止弁45と46の間には分岐部56が設けられる。分岐部56には水抜き路43が接続される。水抜き路43の下流側一端部は縁切弁50の風呂側に接続される。入水流路5の分岐部31に接続された給圧流路12の下流側一端部は縁切弁50の給湯側に接続される。縁切弁50には排水管51が設けられる。給湯器1では、通常給湯回路2の方が風呂回路3よりも水圧が高いため、縁切弁50は常時閉じられている。仮に風呂回路3側の水圧が高くなって逆止弁46を逆流したとしても、その逆流水は水抜き路43を通過して縁切弁50を開く方向に作用する。よって、逆流水は縁切弁50から排水管51を介して外部に排出される。
【0025】
そして、本実施形態の給湯器1は、上記構成の風呂回路3において、
図1の二点鎖線で示す領域内の構成をバルブ装置60として備える。バルブ装置60の具体的構造については後述する。
【0026】
図1を参照し、給湯器1の給湯動作について説明する。先ず、給湯栓14を開くと、水入口13から流入した水が入水流路5を流れ、熱交換器8に向かう。入水流路5に設けられたトータル水量センサ(図示略)から周波数の信号が出力され、規定周波数に達したことをコントローラ(図示略)が感知すると、燃焼ファン19が回転する。燃焼ファン19が回転してプリパージ後、元ガス電磁弁24、及びガス電磁弁26A,26Bが同時に開き、ガス比例弁25が緩点動作となり、バーナ6,7にガスが供給される。それと同時にイグナイタ18が駆動し、点火プラグ18Aが連続放電してバーナ6,7に点火する。点火後、フレームロッド27にて火炎を検知し燃焼していることを確認すると、緩点火動作を終了する。
【0027】
次いで、ガスの比例制御を開始する。出湯サーミスタ22で検出された湯温と設定温度とに差があると、コントローラがそれを認識し、ガス電磁弁26A,26Bの開閉及びガス比例弁25によってガス量を連続的に変化させて熱交換器8の出口温度を一定に保持する。また、水量制御モータ17により適切な水量に調節することにより、常時安定した出湯温度を保持する。さらに、ガス比例弁25によるガス量の変化に応じて、コントローラから燃焼ファン19のモータへ信号を送り、常時ガス量と空気量の関係を一定に保持する。
【0028】
そして、給湯栓14を閉じるとトータル水量センサの周波数の信号が無くなるので、元ガス電磁弁24、ガス電磁弁26A,26B、ガス比例弁25を閉じてバーナ6,7を消火し、ポストパージ動作に入る。ポストパージ動作がタイムアップすると燃焼ファン19は停止し、給湯動作が終了する。
【0029】
図1を参照し、ふろ自動運転動作について説明する。図示しない浴室リモコン又は台所リモコンの自動スイッチを押すと、落し込み水電磁弁44が開き、給湯燃焼動作を開始する。給湯燃焼動作とは、バーナ6,7にガスが供給されて燃焼することにより熱交換器8で通水が加熱されて出湯流路9に湯水を供給する動作である。出湯流路9を流れる湯水は分岐部35から湯張流路41に流入する。湯水は湯張流路41の主流路41A及び出口流路41Bに沿って流れ、逆止弁45,46を通過して湯出口40Aから浴槽40内に流入する。
【0030】
ここで、ふろ自動運転動作中に給湯栓14を開くと、コントローラが給湯栓水量センサ23から出力される周波数の信号を検出する。この場合、コントローラはふろ自動運転を中断すると共に給湯動作に切り替える。給湯栓14を閉じると、コントローラはふろ自動運転を再開する。トータル水量センサで検出した水量の積算が落し込み設定湯量に達すると、落し込み水電磁弁44が閉じる。これによりトータル水量センサからの周波数の信号が無くなるので、給湯燃焼動作が停止する。
【0031】
図1を参照し、高温水供給動作(差湯動作)について説明する。図示しない浴室リモコン又は台所リモコンの差湯スイッチを長押しすると、高温差し湯水電磁弁58が開き、給湯燃焼動作を開始する。この場合、約80℃の高温の湯水が出湯流路9の分岐部33から差し湯流路42を流れ、合流部55から湯張流路41に流入する。高温の湯水が湯張流路41の出口流路41Bに沿って流れ、逆止弁45,46を通過して湯出口40Aから浴槽40に流入する。
【0032】
ここで、高温水供給動作中に給湯栓14を開くと、コントローラが給湯栓水量センサ23から出力される周波数の信号を検出する。この場合、コントローラは高温水供給動作を中断すると共に給湯動作に切り替える。このとき、高温の湯水は、バイパス流路10から出湯流路9を経由して分岐部35から湯張流路41の主流路41Aを流れる水と混合されて、給湯栓14から供給される。給湯栓14を閉じると、高温水供給動作を再開する。
【0033】
そして、トータル水量センサで検出した水量の積算が差湯設定湯量に達すると、給湯燃焼動作が停止し、差し湯流路42及び湯張流路41内に残存する高温の湯水をパージする。さらに、熱交換器サーミスタ20が検出する湯温が所定値以下まで下がったことを確認してから高温差し湯水電磁弁58を閉じる。これにより高温水供給動作が停止する。
【0034】
図2~
図4を参照し、バルブ装置60の構造について説明する。バルブ装置60は湯張流路41の途中に設けられ、浴槽40への湯水の供給を行うとともに、浴槽40側から湯張流路41を介して給湯回路2側への湯水の逆流を防止する装置である。バルブ装置60はバルブボディ70(
図5参照)を備える。バルブボディ70は左右方向に延びる略筒状に形成され、その内部に第1流路701と第2流路702を備える。第1流路701は左右方向に延びる。第2流路702は第1流路701の左端部から下方に延びる。バルブボディ70の内部には後述の逆止弁ユニット80(
図6参照)が左方から挿入される。バルブボディ70の下側部の左端側には流出口791(
図4参照)が設けられる。流出口791は下方に向けて開口し、第2流路702の下端部と連通する。
【0035】
バルブボディ70の右端部の前側部には構造体61が前方から固定される。構造体61は流入口611と第3流路703を備える。流入口611は前方に開口する。第3流路703は流入口611から後方に延び、第1流路701の右端部と連通する。これら第1流路701、第2流路702、第3流路703は、湯張流路41(主流路41A及び出口流路41B)及び差し湯流路42の一部を形成する。バルブボディ70の後側部の右端側には、落し込み水電磁弁44と高温差し湯水電磁弁58が横並びに固定される。
【0036】
バルブボディ70の前側部の左端側には構造体63が前方から固定される。構造体63の内部には水抜き路43(
図1参照)と縁切弁50(
図1,
図7参照)が設けられる。水抜き路43は第1流路701(湯張流路41)と分岐部56にて接続する。縁切弁50は水抜き路43の下流側に設けられる。構造体63の下部には開口部631(
図3,
図4参照)が設けられる。開口部631は下方に向けて開口し、縁切弁50の給湯側と連通する。開口部631には、給圧流路12を内部に備える配管(図示略)が接続される。
【0037】
図5~
図8を参照し、バルブボディ70の具体的形状について説明する。
図5に示すように、バルブボディ70は本体筒部71を備える。本体筒部71は左右方向に延びる略筒状であって、第1円筒部72と第2円筒部73を同軸上に備える。第1円筒部72は本体筒部71の右側部と中央部を構成し、第2円筒部73は本体筒部71の左側部を構成する。
【0038】
第1円筒部72は左右方向に延びる略円筒状に形成され、その内側には第1流路701が設けられる。第1円筒部72は、湯水流入部74、差し湯流入部75、流出部76、弁固定部77,78を備える。湯水流入部74は第1円筒部72の上側部の右端側に設けられ、前後方向に延びる略円筒状に形成される。湯水流入部74の前端部には前方に向けて開口する流入口741が設けられる。流入口741は第1流路701の右端部と連通する。流入口741には湯張流路41を流れる湯水が流入する。湯水流入部74の流入口741には上記の構造体61(
図2参照)が前方から固定される。
【0039】
差し湯流入部75は第1円筒部72の上側部の左右方向の中央部に設けられ、前後方向に延びる略円筒状に形成される。差し湯流入部75の前端部には前方に向けて開口する流入口751が設けられる。流入口751には、差し湯流路42(
図2参照)を流れる高温の差し湯水が流入する。差し湯流入部75の内部には第4流路704が設けられる。第4流路704は差し湯流路42の一部であり、第1流路701と接続する。第4流路704と第1流路701の接続部は、
図1に示す合流部55に相当する。流出部76は第1円筒部72の前側部の左端側に設けられ、前後方向に延びる略円筒状に形成される。流出部76の前端部には前方に向けて開口する流出口761が設けられる。流出口761からは湯張流路41の分岐部56(
図1参照)から流れる逆流水が流出する。流入口751には上記の構造体63(
図2参照)が前方から固定される。
【0040】
弁固定部77は、第1円筒部72の右端側の後部に設けられる。弁固定部77には落し込み水電磁弁44(
図2参照)が後方から固定される。弁固定部78は、第1円筒部72の左右方向の中央側の後部に設けられる。弁固定部78には高温差し湯水電磁弁58(
図2参照)が後方から固定される。
【0041】
第2円筒部73は第1円筒部72よりも短軸且つ大径で左右方向に延びる略円筒状に形成され、その内側には第1流路701の下流側が設けられる。第2円筒部73の左端部には円形状の入口部731(
図6参照)が設けられる。入口部731は左方に向けて開口する。その入口部731の内側には、逆止弁ユニット80が左方から第2円筒部73の奥側に向けて挿入される。
【0042】
図6に示すように、第2円筒部73の内周面732は円筒状に形成される。内周面732には、接続開口73Aと開口73B等が設けられる。接続開口73Aは内周面732における下側で且つ右端寄りの位置に設けられる。接続開口73Aは略円形状の穴であって上下方向に貫通する。それ故、第2円筒部73の内部空間は、接続開口73Aを介して湯水流出部79の内部に設けられた後述の周壁部790(
図7参照)内の第2流路702に分岐する。開口73Bは内周面732における後ろ側で且つ右端寄りの位置に設けられる。開口73Bは略円形状の小穴であって前後方向に貫通する。それ故、第2円筒部73の内部空間は、開口73Bを介して円筒部730の内部空間に分岐する。
【0043】
第2円筒部73には円筒部730と湯水流出部79が設けられる。円筒部730は第2円筒部73の後側部から後方に突出する。円筒部730の内側には圧力緩衝弁48(
図1,
図7参照)が収納される。湯水流出部79は第2円筒部73の下部に設けられ、下部が開放されたケース状に形成される。
図7に示すように、湯水流出部79の内部には周壁部790が設けられる。周壁部790は上下方向に延びる略円筒状に形成される。周壁部790の内部には第2流路702が設けられ、出口流路41Bの一部を形成する。周壁部790の下端部には底面視円形状の流出口791が設けられる。
【0044】
図7,
図8に示すように、周壁部790は上から下に向かって順に、上側円筒部91、中央円筒部92、下側円筒部93を同軸上に連結して備える。周壁部790の中で上側円筒部91の径が最も小さく、中央円筒部92、下側円筒部93の順に径が大きくなっている。上側円筒部91と中央円筒部92の境界部には段部96が形成され、中央円筒部92と下側円筒部93の境界部には段部97が形成される。上側の段部96は前方に位置する後述のセンサ固定部793側、具体的には差込穴794の出口側に向かって下り傾斜する。下側の段部97は略水平である。
【0045】
湯水流出部79の前面には正面視横長矩形状のセンサ固定部793が設けられる。上下方向において、センサ固定部793は周壁部790の中央円筒部92に対応する位置に設けられる。センサ固定部793の前面の左右方向の略中央には正面視円形状の差込穴794(
図5参照)が設けられる。差込穴794の左側には固定穴795が設けられる。
【0046】
差込穴794は後方に向けて延び、湯水流出部79内に設けられた周壁部790の中央円筒部92の内側と連通する。差込穴794は周壁部790側において径が細くなる段付き穴であり、その径が細くなる部分には段部796が設けられる。差込穴794には長軸状の風呂出口サーミスタ47(
図7,
図8参照)が前方から差し込まれる。
【0047】
図8に示すように、風呂出口サーミスタ47の長さ方向略中央部にはフランジ部472が設けられる。フランジ部472は段部796に対してリング状のパッキン475を介して前側から係止する。風呂出口サーミスタ47の先端部に設けられた検温部471は、差込穴794の出口から中央円筒部92の内側に突出する。風呂出口サーミスタ47の後端側には支持板64が固定される。支持板64は風呂出口サーミスタ47の長さ方向に直交する方向に延びる。風呂出口サーミスタ47を差込穴794に差し込むことにより、支持板64はセンサ固定部793の前面に当接する。支持板64に設けられた固定穴(図示略)は、センサ固定部793の固定穴795の前側に重なる。支持板64に設けられた固定穴にネジ95を差し込んで固定穴795に締結することにより、支持板64がセンサ固定部793の前面に固定され、風呂出口サーミスタ47がセンサ固定部793に固定される
【0048】
図8を参照し、逆止弁ユニット80の構造について説明する。逆止弁ユニット80は、ケース81、二個の逆止弁45,46、蓋部82を備える。ケース81は左右方向に延びる略円筒状に形成され、大径部83と小径部84を同軸上に備える。大径部83はケース81の左側、小径部84はケース81の右側に位置する。小径部84は大径部83の径よりも小さい。逆止弁46はケース81の内側に収納される。逆止弁45は逆止弁46の右側で且つ直列に配置され、その軸方向の先端側が小径部84の内側に収納される。それ故、逆止弁45の軸方向の後端側は小径部84の内側から右方に突出する。大径部83の右側の開口端には蓋部82が左方から固定される。
【0049】
大径部83には、第1開口部831、第2開口部832、第3開口部(図示略)が設けられる。第1開口部831は大径部83の下側部に設けられる。第1開口部831は、逆止弁ユニット80がバルブボディ70の第2円筒部73の内側に挿入されたときに、第2円筒部73の内周面732に設けられた接続開口73Aに対向配置される。第2開口部832は周壁部の上側部に設けられる。第3開口部は大径部83の後側部に設けられる。第3開口部は、逆止弁ユニット80がバルブボディ70の第2円筒部73の内側に挿入されたときに、第2円筒部73の内周面732に設けられた開口73Bに対向配置される。
【0050】
図8を参照し、風呂出口サーミスタ47の検温部471の位置について説明する。上記の通り、周壁部790の内側には第2流路702(出口流路41Bの一部)が設けられる。風呂出口サーミスタ47の検温部471は、周壁部790の内側であって、第2流路702の径の中心部よりも周壁部790の内周面側に寄った位置に臨むように支持される。
【0051】
例えば差し湯流路42に設けられた高温差し湯水電磁弁58に軽度の開故障が起きた場合、差し湯流路42から高温の少量の湯水が合流部55から出口流路41Bの周壁部790の内周面に沿って流れる(
図8中に示す二点鎖線の矢印P1参照)。上記のように、風呂出口サーミスタ47の検温部471は周壁部790の内周面側に寄った位置に支持されている。これにより、矢印P1に沿って流れる高温の少量の湯水は風呂出口サーミスタ47の検温部471付近を通過する。従って、風呂出口サーミスタ47は周壁部790の内面に沿って流れる高温の湯水を早期に検出できる。
【0052】
また、周壁部970の上側の段部96は、風呂出口サーミスタ47側に向かって下り傾斜している。これにより、周壁部970の内周面に沿って流れる高温の少量の湯水は段部96を伝って風呂出口サーミスタ47側に流れ易くなる(
図8中に示す二点鎖線の矢印P2参照)。つまり、段部96は周壁部970の内周面を伝う高温の湯水を風呂出口サーミスタ47の検温部471側にガイドする機能を有する。従って、風呂出口サーミスタ47は周壁部790の内面に沿って流れる高温の湯水をより確実に検出できるので、高温の湯水をより早期に検出できる。
【0053】
ところで、周壁部790において、上側円筒部91の径よりも中央円筒部92の径の方が大きく、その中央円筒部92の径よりも下側円筒部93の径の方が大きい。これにより、バルブボディ70を金型で成型する場合、容易に金型を抜くことができるので、製造コストを抑えることができる。なお、この構成では、段部96の下面側を湯水が伝わることになるが、湯水の張力により、ある程度の湯水が風呂出口サーミスタ47の検温部471にまでガイドされるため、開故障を確実に検出できる。
【0054】
以上説明したように、本実施形態の給湯器1は熱交換器8、入水流路5、出湯流路9、バイパス流路10、バルブ装置60を備える。熱交換器8はバーナ6,7により通水を加熱する。入水流路5は熱交換器8の入口に接続される。出湯流路9は熱交換器8の出口に接続される。バイパス流路10は熱交換器8をバイパスするように入水流路5と出湯流路9とに接続される。バルブ装置60は出湯流路9に接続され、熱交換器8で加熱された湯水を浴槽40に供給する。バルブ装置60は、湯張流路41と差し湯流路42を備える。湯張流路41と差し湯流路42は出湯流路9から分岐する。湯張流路41の主流路41Aは落し込み水電磁弁44によって開閉され、差し湯流路42は高温差し湯水電磁弁58によって開閉される。湯張流路41の出口流路41Bは、主流路41Aと差し湯流路42の双方に通じると共に、下流側に向けて下方向に延設されて浴槽40に通じる。
【0055】
バルブ装置60周壁部790を備える。周壁部790の内側には第2流路702が設けられる。第2流路702は出口流路41Bの一部を形成する。周壁部790には、風呂出口サーミスタ47を固定するセンサ固定部793が設けられる。風呂出口サーミスタ47の先端部に設けられた検温部471は、第2流路702の中心部よりも周壁部790側に寄った位置に臨むように配置される。例えば高温差し湯水電磁弁58に軽度の開故障があった場合、高温の少量の湯水が出口流路41Bの周壁部790の内周面に沿って流れ、風呂出口サーミスタ47の検温部471付近を通過する。風呂出口サーミスタ47の検温部471が周壁部790側に寄った位置に臨むように配置されているので、早期に開故障を検出できる。
【0056】
なお、本実施形態では、高温差し湯水電磁弁58に開故障が起きた場合を例に説明したが、落し込み水電磁弁44に開故障が起きた場合においても、同様の効果を得ることができる。
【0057】
また、本実施形態では、湯張流路41と差し湯流路42を備える。差し湯流路42は、出湯流路9のバイパス流路10との合流部34よりも上流側で分岐し、高温差し湯水電磁弁58によって開閉される。湯張流路41の主流路41Aは、出湯流路9のバイパス流路10との合流部34よりも下流側で分岐し、落し込み水電磁弁44によって開閉される。出口流路41Bは湯張流路41と差し湯流路42の双方に通じると共に、下流側に向けて下方向に延設され、浴槽40に通じる。これにより、給湯器1は、差し湯流路42により高温差し湯を行い、湯張流路41により浴槽40への湯張りを行うことができる。
【0058】
上記説明において、差し湯流路42は本発明の「第1分岐流路」の一例であり、高温差し湯水電磁弁58は本発明の「第1電磁弁」の一例である。合流部34は「バイパス流路との接続部」の一例である。湯張流路41は本発明の「第2分岐経路」の一例であり、落し込み水電磁弁44は本発明の「第2電磁弁」の一例である。
【0059】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、種々の変更が可能である。上記実施形態の給湯器1は熱交換器が一つである顕熱回収型であるが、熱交換器を2つ備えた潜熱回収型であってもよい。また給湯器1は高温差湯が可能なものであるが、必須な構成ではなく、それ以外の給湯器にも適用可能である。例えば浴槽40内の湯を追い炊き可能な循環加熱回路を備えた給湯器であってもよい。また、配管構成、電磁弁等の各種部品の数、配置等についても適時変更可能である。
【0060】
給湯器1の風呂回路3は差し湯流路42と高温差し湯水電磁弁58を備え、高温の差し湯水を浴槽40に供給可能であるが、差し湯流路42及び高温差し湯水電磁弁58を省略してもよい。
【0061】
バルブ装置60の周壁部790は、上側円筒部91、中央円筒部92、下側円筒部93の3段形状であるが、2段でも1段でもよく、3段以上でもよい。上側円筒部91と中央円筒部92の間の段部96はセンサ固定部793側に下り傾斜しているが、略水平であってもよい。また上記実施形態では、段部96の形状によって高温の少量の湯水をガイドするが、ガイド形状はこれ以外でもよく、例えば周壁部790の内周面にリブのようなガイドを設けてもよい。
【0062】
バルブ装置60は逆止弁ユニット80、縁切弁50、及び圧力緩衝弁48を備えなくてもよい。
【符号の説明】
【0063】
1 給湯器
6,7 バーナ
8 熱交換器
9 出湯流路
10 バイパス流路
40 浴槽
41 湯張流路
41A 主流路
41B 出口流路
42 差し湯流路
44 落し込み水電磁弁
47 風呂出口サーミスタ
58 高温差し湯水電磁弁
60 バルブ装置
701 第1流路
702 第2流路
703 第3流路
793 センサ固定部
796 段部
970 周壁部