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特開2024-157991納期管理支援システム、納期管理支援方法及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024157991
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】納期管理支援システム、納期管理支援方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 10/087 20230101AFI20241031BHJP
   G06Q 30/06 20230101ALI20241031BHJP
【FI】
G06Q10/087
G06Q30/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023072729
(22)【出願日】2023-04-26
(71)【出願人】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100131152
【弁理士】
【氏名又は名称】八島 耕司
(74)【代理人】
【識別番号】100147924
【弁理士】
【氏名又は名称】美恵 英樹
(74)【代理人】
【識別番号】100148149
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 幸男
(74)【代理人】
【識別番号】100181618
【弁理士】
【氏名又は名称】宮脇 良平
(74)【代理人】
【識別番号】100174388
【弁理士】
【氏名又は名称】龍竹 史朗
(72)【発明者】
【氏名】堤 俊彦
【テーマコード(参考)】
5L010
5L030
5L049
【Fターム(参考)】
5L010AA16
5L030BB54
5L049AA16
5L049BB54
(57)【要約】
【課題】納期の調整を早期に実施するための支援を行う。
【解決手段】納期の管理を支援するシステムは、受注情報を記憶する受注情報記憶手段と、受注した物品またはサービスについて、顧客との間で合意した約束納期を示す納期情報を記憶する納期情報記憶手段と、受注した物品またはサービスについて、提供のための複数の計画を示す計画情報を記憶する計画情報記憶手段と、約束納期が受注情報に含まれる顧客要求納期よりも遅い受注について、計画情報記憶手段に記憶された計画情報が示す計画が変更されたことにより、物品またはサービスを提供できる時期が約束納期よりも早まる場合に、該当する約束納期を調整することを提案する調整手段と、を備える。
【選択図】図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
物品またはサービスの提供の納期の管理を支援する納期管理支援システムであって、
受注情報を記憶する受注情報記憶手段と、
受注した物品またはサービスについて、顧客との間で合意した約束納期を示す納期情報を記憶する納期情報記憶手段と、
受注した物品またはサービスについて、提供のための複数の計画を示す計画情報を記憶する計画情報記憶手段と、
約束納期が受注情報に含まれる顧客要求納期よりも遅い受注について、前記計画情報記憶手段に記憶された計画情報が示す計画が変更されたことにより、物品またはサービスを提供できる時期が前記約束納期よりも早まる場合に、該当する約束納期を調整することを提案する調整手段と、
を備える納期管理支援システム。
【請求項2】
前記計画情報記憶手段は、前記物品または前記サービスを提供するための複数の計画の計画情報を記憶し、
前記調整手段は、前記計画情報に基づいて、いずれの計画が、前記受注情報に含まれる前記納期を満たさない要因となっているかを特定する、
請求項1に記載の納期管理支援システム。
【請求項3】
前記調整手段は、特定した計画が変更された場合、前記計画情報に含まれる前記顧客への新たな納期を求め、求めた納期を、前記顧客の端末へ送信する、
請求項2に記載の納期管理支援システム。
【請求項4】
前記調整手段は、求めた前記顧客への新たな前記納期に基づいて設定された、前記約束納期が前記受注情報に含まれる前記納期を満たさないと判定された場合、前記要因を更に特定する、
請求項3に記載の納期管理支援システム。
【請求項5】
受注した物品またはサービスの提供時期について、顧客との間で合意した約束納期を示す納期情報を記憶し、
受注した物品またはサービスの提供のための複数の計画を記憶し、
約束納期が受注情報に含まれる顧客要求納期よりも遅い受注について、計画が変更されたことにより、提供できる時期が前記約束納期よりも早まる場合に、該当する約束納期を前記顧客との間で調整することを提案する、
納期管理支援方法。
【請求項6】
コンピュータに、
受注した物品またはサービスの提供時期について、顧客との間で合意した約束納期を示す納期情報を記憶する処理、
受注した物品またはサービスの提供のための複数の計画を記憶する処理、
約束納期が受注情報に含まれる顧客要求納期よりも遅い受注について、計画が変更されたことにより、提供できる時期が前記約束納期よりも早まる場合に、該当する約束納期を前記顧客との間で調整することを提案する処理、
を実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、納期管理支援システム、納期管理支援方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
納期管理の効率化を図る納期管理システムが知られている。例えば、特許文献1は、リスク予測値で表される納期遵守率と、購買品の生産進捗情報とを、納期情報に付加することによって、納期遵守のための事前の方策、例えば、他社に対する生産進捗催促、他社在庫品の引当検討を可能とする納期管理システムを開示している。この納期管理システムは、予定納期期日と実績を比較し、遅れが発生している場合に警告を発する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005-122581号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
顧客との間で納期を設定した後に、顧客に製品を提供可能となる日程が予定よりも早まる場合がある。このような場合に、特に、納期が顧客の要望よりも遅く設定されている場合に、顧客と納期の調整を行い、納期を早めることが望ましい。
【0005】
しかし、特許文献1の技術では、顧客との間で設定した納期が、顧客が要求した納期よりも遅い場合に、各工程が予定よりも早く完了する状態になったとしても、納期の調整を提案することは難しい。また、特許文献1では、予定と実績を比較することによって、遅れの発生を把握しているので、実績が確定するまで遅れを把握することができない。これにより、納期遅延の際の初動が遅くなり、顧客満足度の低下を招き得る。このため、納期の調整を早期に実施するための支援が求められる。
【0006】
本開示は、上記課題に鑑みてなされたものであり、納期の調整を早期に実施するための支援を行う納期管理支援システム、納期管理支援方法及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本開示に係る納期管理支援システムは、受注情報記憶手段と、納期情報記憶手段と、計画情報記憶手段と、調整手段と、を備える。
受注情報記憶手段は、受注情報を記憶する。納期情報記憶手段は、受注した物品またはサービスについて、顧客との間で合意した約束納期を示す納期情報を記憶する。計画情報記憶手段は、受注した物品またはサービスについて、提供のための複数の計画を示す計画情報を記憶する。調整手段は、約束納期が受注情報に含まれる顧客要求納期よりも遅い受注について、計画情報記憶手段に記憶された計画情報が示す計画が変更されたことにより、物品またはサービスを提供できる時期が約束納期よりも早まる場合に、該当する約束納期を調整することを提案する。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、約束納期が受注情報に含まれる顧客要求納期よりも遅い受注について、計画が変更された場合に、該当する約束納期を調整することを提案する。従って、納期の調整を早期に実施するための支援を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施の形態1に係る納期管理支援システムの構成を示す図
図2】実施の形態1に係る第1層から第4層までの各層の納期管理装置の機能構成例を示す図
図3】要求納期と回答納期と約束納期との関係を示す図
図4】各層における納期回答の手順を示す図
図5】実施の形態1に係る納期調整制御処理を示すフローチャート
図6】実施の形態1に係る約束納期設定処理を示すフローチャート
図7】次の層に複数の企業が存在する場合を示す図
図8】実施の形態1に係る再調整制御処理を示すフローチャート
図9】要求納期と回答納期と約束納期の関係性を示す図
図10】実施の形態1に係る第1層納期管理装置のハードウェア構成の一例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本開示の実施の形態に係る納期管理支援システム、納期管理支援方法及びプログラムについて図面を参照して説明する。なお、図中同一または相当する部分には同じ符号を付す。
【0011】
(実施の形態1)
実施の形態1に係る納期管理支援システム100の構成について、図1を用いて説明する。
【0012】
納期管理支援システム100は、i)顧客より発注対象の製品とその数量、要求納期等を含む受注情報を受信し、ii)受注情報、在庫情報、在庫計画情報等とに基づいて、顧客に製品を納品可能な納期である回答納期を求め、iii)回答納期を顧客に提示して、顧客との折衝を経て合意した納期である約束納期を設定し、iv)約束納期が要求納期より遅い期日となった製品について、納品のための各種計画を監視し、計画の変更により、約束納期の前倒しが可能となる条件が満たされた場合に、約束納期の調整を提案するシステムである。納期管理支援システム100は、サプライチェーンにおいて、素材を調達して、部品を製造し、部品から製品を製造して販売に至るまでの各準備工程を担う組織において、在庫情報、生産計画情報などを活用して、納期の管理を支援する。
【0013】
本実施の形態では、製品を顧客に供給するサプライチェーンを構成する組織を4つの層で表す。例えば、第1層は、顧客との接点となる、販売機能を有する企業が位置づけられ、第1層の次の層となる第2層は、製造機能を有する企業が位置づけられ、第2層の次の層となる第3層は、製品の製造のために必要な部品を供給する機能を有する企業が位置づけられ、第3層の次の第4層は、部品の製造のために必要な素材を供給する機能を有する企業が位置づけられる。以後、第1層のことを「販売会社」、第2層のことを「製造会社」、第3層のことを「部品会社」、第4層のことを「素材会社」とも呼ぶ。
【0014】
実施の形態1における納期管理支援システム100は、第1層に設定されている各種納期を管理する装置を表す第1層納期管理装置21と、第2層に設定されている各種納期を管理する装置を表す第2層納期管理装置22と、第3層に設定されている各種納期を管理する装置を表す第3層納期管理装置23と、第4層に設定されている各種納期を管理する装置を表す第4層納期管理装置24と、第1層納期管理装置21と第2層納期管理装置22と第3層納期管理装置23と第4層納期管理装置24とを全体的に管理する全体管理装置10と、納期管理用の種々の情報を記憶する記憶装置30と、ユーザが使用するユーザ端末40と、を備える。納期の詳細については、図3を参照して後述する。
【0015】
記憶装置30は、サーバ装置によって構成され、各種実績を示す実績情報を記憶する実績情報記憶部301と、納期の調整を図るために必要な情報を保持する管理情報記憶部302とを備える。
【0016】
実績情報記憶部301は、顧客より発注対象の製品とその数量、要求納期等を含む受注情報、第1層から第4層までの各層における過去の発注を示す発注実績情報、顧客との間で合意した約束納期を示す納期情報、受注した物品について、提供のための複数の計画を示す計画情報、出荷と在庫の数量を示す数量実績情報などを記憶する。なお、実績情報記憶部301は、本開示に係る受注情報記憶手段、納期情報記憶手段、計画情報記憶手段の一例である。
【0017】
管理情報記憶部302は、各層を連携させ、サプライチェーン全体として納期の調整を図るために、製品番号、注文番号、発注番号、顧客および各層の情報等を保持する機能を有する。
【0018】
記憶装置30はネットワークNWに接続され、業務の進行にあわせてその情報が更新される。記憶装置30は、1台の装置によって構成されても、分散して配置された複数の記憶装置で構成されてもよい。
【0019】
第1層納期管理装置21と、第2層納期管理装置22と、第3層納期管理装置23と、第4層納期管理装置24は、コンピュータ装置によって構成され、同じ機能を有する。詳細は後述するが、第1層納期管理装置21と、第2層納期管理装置22と、第3層納期管理装置23と、第4層納期管理装置24は、各層における納期管理を行い、一つ上の層と、一つ下の層と連携して納期調整を行う。例えば、第2層納期管理装置22は、一つ上の層である第1層納期管理装置21と、一つ下の層である第3層納期管理装置23と連携して、納期調整を行う。
【0020】
全体管理装置10は、コンピュータ装置によって構成される。全体管理装置10は、顧客への回答納期を算出する調整部11と、管理に必要な情報を保持する全体管理装置記憶部18とを備える。
調整部11は、第1層から第4層までの各層間の納期に関する情報を連携させ、顧客への回答納期を算出する機能を有する。全体管理装置記憶部18は、第1層から第4層までの計画情報を含む、第1納期管理装置21~第4納期管理装置24の連携管理に必要な情報を保持する機能を有する。なお、第1層から第4層までの各層間の納期は、例えば、第2層であれば、一つ上の層である第1層との間での納期と、一つ下の層である第3層との間での納期が存在する。各層間での納期についての詳細は後述する。
【0021】
ユーザ端末40は、端末装置によって構成され表示装置を備える。ユーザ端末40は、ネットワークNWを介して全体管理装置10に接続される。ユーザ端末40は、納期調整によって求められた各種納期を示す情報を出力して表示装置に表示する。図1では、説明を分かり易くするため、1台のユーザ端末40を例示するが、ユーザ端末40の数は任意であり、通常、複数である。また、ユーザ端末40は、ユーザに情報が伝達できる端末であればよく、所有者、操作者、設置場所等は限定されない。
【0022】
次に、第1層納期管理装置21~第4納期管理装置24の機能構成について、図2を用いて説明する。
第1層納期管理装置21は、顧客端末50とネットワークNWを介して通信可能に接続されている。顧客が顧客端末50を操作することによって、第1層に相当する販売会社に対して製品を発注する。図2では、開示を分かり易くするため、1台の顧客端末50を例示するが、顧客端末50の数は任意であり、通常、複数である。また、顧客端末50は、顧客に情報が伝達できる端末であればよく、所有者、操作者、設置場所等は限定されない。
【0023】
第2層納期管理装置22は、ネットワークNWを介して、第1層納期管理装置21及び第3層納期管理装置23に、通信可能に接続されている。
第3層納期管理装置23は、ネットワークNWを介して、第2層納期管理装置22及び第4層納期管理装置24に、通信可能に接続されている。
第4層納期管理装置24は、ネットワークNWを介して、第3層納期管理装置23に、通信可能に接続されている。
【0024】
第1層納期管理装置21は、受注を処理する第1層受注部111と、第1層で保有する製品の在庫を確認する第1層在庫確認部112と、第1層の各種計画を立案する第1層計画作成部113と、第1層から第2層へ発注を行う第1層発注部114と、実績を管理する第1層実績管理部115と、第1層において納期を管理するために必要な各種情報を記憶する第1層記憶部116と、を備える。
【0025】
第1層受注部111は、発注元の顧客端末50からの受注情報を受信して処理する。具体的には、第1層受注部111は、顧客端末50から送信された受注情報を受信する。受注情報には、注文された製品と数量、顧客の希望する納期、価格、荷姿等を示す情報が含まれている。第1層受注部111は、受注情報を処理し、発注元の顧客、注文を受けた製品と数量、顧客の希望する納期(以下、区別のため、要求納期)などを処理する機能を有する。顧客は、顧客名、顧客ID(Identification:識別情報)等で特定され、製品は、製品名、型番、製品ID等で特定される。数量は、受注した製品の数又は量を示す。数は、個数、ロット数、パレット数等を意味し、量は、重量、体積等を意味する。要求納期は、顧客が要求または希望する納期を意味する。
【0026】
第1層在庫確認部112は、顧客からの注文に対して、第1層で、言い換えると、販売会社で保有する製品の在庫で全ての受注数量を出荷可能か否かを判別する機能を有する。
【0027】
第1層計画作成部113は、販売計画、仕入れ計画、在庫計画を含む各種計画を立案する。販売計画は、製品別に、顧客への時期と販売予定数量とを示す計画である。仕入れ計画は、製品別に、第2層の製造会社からの時期と仕入れ数量とを示す計画である。在庫計画は、製品別に、時期と在庫予定数量とを示す計画である。販売により在庫量が減少し、仕入れにより在庫量が増加するため、在庫計画は、販売計画と仕入れ計画に連動する。以下、販売計画、仕入れ計画、在庫計画などを総称して単に計画と呼ぶ。具体的には、第1層計画作成部113は、第1層在庫確認部112が、販売会社における現在の製品在庫で、顧客からの注文に出荷対応できないと判別した場合に、不足分の製品をいつ確保できるかを、第2層の製造会社と連携して求め、新たな仕入れ計画と在庫計画を立案する。
【0028】
第1層発注部114は、第1層の計画を第2層に伝達する。具体的には、第1層計画作成部113によって、顧客へ出荷するための製品を必要な時期に必要な数量を仕入れるために立案した仕入れ計画を、第2層納期管理装置22に伝達する。
【0029】
第1層実績管理部115は、各種計画の結果である実績を管理する。具体的には、第1層実績管理部115は、第2層から納入される製品の数量、納入日等を集計および管理する。
【0030】
第1層記憶部116は、第1層納期管理装置21において納期を管理するために必要な情報、例えば、第1層における在庫情報、計画情報を含む、納期を管理するために必要な情報を保持する機能を有する。また、第1層納期管理装置21において求めた情報は、第1層記憶部116に保存されるとともに、記憶装置30に記憶されて共有される。
【0031】
第2層納期管理装置22から第4層納期管理装置24は、基本的には、第1層納期管理装置21と同一の機能と構成を有する。そこで、以下、第2層~第4層の納期管理装置22~24について、要点を説明する。
【0032】
第2層納期管理装置22も、受注を処理する第2層受注部121と、第2層で保有する製品の在庫を確認する第2層在庫確認部122と、第2層の各種計画を立案する第2層計画作成部123と、第2層から第3層へ発注を行う第2層発注部124と、実績を管理する第2層実績管理部125と、第2層において納期を管理するために必要な各種情報を記憶する第2層記憶部126と、を備える。
【0033】
第2層受注部121は、第1層納期管理装置21からの製品の受注を処理する。具体的には、第2層受注部121は、注文を受けた製品と数量、第1層の要求納期などを処理する機能を有する。
第2層在庫確認部122は、第1層からの注文に対して、第2層で、言い換えると、製造会社で保有する製品の在庫で全ての受注数量を出荷可能か否かを判別する機能を有する。
【0034】
第2層計画作成部123は、販売計画、生産計画、製品在庫計画、部品在庫計画、部品仕入れ計画を含む各種計画を立案又は修正する。販売計画は、製品別に、第1層への販売予定時期と販売予定数量とを示す計画である。生産計画は、製品別に、生産時期と生産数量を示す計画である。製品在庫計画は、製品別の第2層、即ち、製造会社での在庫計画である。部品在庫計画は、製品を製造するために使用する部品の在庫の計画である。部品仕入れ計画は、製品を製造するために第3層、即ち、部品会社への部品の仕入れの計画である。具体的には、第2層計画作成部123は、第2層における製品在庫で、第1層からの注文に対応できない場合、不足分の製品の生産計画を策定する。この際、第2層計画作成部123は、生産に必要な部品がたりているか否かを判別し、必要に応じて、部品の仕入れ計画を修正し、部品の在庫計画を修正する。
【0035】
第2層発注部124は、第2層の計画を第3層に伝達する。
【0036】
第2層実績管理部125は、第2層での各種計画の結果である実績を管理する。
第2層記憶部126は、第2層納期管理装置22において納期を管理するために必要な情報、例えば、第2層における在庫情報、計画情報等を記憶する。
第2層納期管理装置22において求めた情報は、第2層記憶部126に保存されるとともに、記憶装置30に記憶されて共有される。
【0037】
第3層納期管理装置23も、受注を処理する第3層受注部131と、第3層で保有する部品の在庫を確認する第3層在庫確認部132と、第3層の各種計画を立案する第3層計画作成部133と、第3層から第4層へ発注を行う第3層発注部134と、実績を管理する第3層実績管理部135と、第3層において納期を管理するために必要な各種情報を記憶する第3層記憶部136と、を備える。
【0038】
第3層受注部131は、第2層納期管理装置22からの部品の受注を処理する。具体的には、第3層の受注部131は、注文を受けた部品と数量、第2層の要求納期などを処理する。
第3層在庫確認部132は、第2層からの注文に対して、第3層で、言い換えると、部品会社で保有する部品の在庫で全ての受注数量を出荷可能か否かを判別する機能を有する。
【0039】
第3層計画作成部133は、販売計画、生産計画、部品在庫計画、素材在庫計画、素材仕入れ計画を含む各種計画を立案又は修正する。販売計画は、部品別に、第2層への販売予定時期と販売予定数量とを示す計画である。生産計画は、部品別に、生産時期と生産数量を示す計画である。部品在庫計画は、部品別の第3層、即ち、部品会社での在庫計画である。素材在庫計画は、部品を製造するために使用する素材の在庫の計画である。素材仕入れ計画は、部品を製造するために第4層、即ち、素材会社への素材の仕入れの計画である。具体的には、第3層計画作成部133は、第3層における部品在庫で、第2層からの注文に対応できない場合、不足分の部品の生産計画を策定又は修正する。この際、第3層計画作成部133は、生産に必要な素材が足りているか否かを判別し、必要に応じて、素材の仕入れ計画を修正し、素材の在庫計画を修正する。
【0040】
第3層発注部134は、第3層の計画を第4層に伝達する。
【0041】
第3層実績管理部135は、第3層での各種計画の結果である実績を管理する。
第3層記憶部136は、第3層納期管理装置23において納期を管理するために必要な情報、例えば、第3層における在庫情報、計画情報等を記憶する。
第3層納期管理装置23において求めた情報は、第3層記憶部136に保存されるとともに、記憶装置30に記憶されて共有される。
【0042】
第4層受注部141は、第3層納期管理装置23からの素材の受注を処理する。具体的には、第4層受注部141は、注文を受けた素材と数量、第3層の要求納期などを処理する。
第4層在庫確認部142は、第3層からの注文に対して、第4層で、言い換えると、素材会社で保有する素材の在庫で全ての受注数量を出荷可能か否かを判別する機能を有する。
【0043】
第4層計画作成部143は、販売計画、生産計画、仕入れ計画、在庫計画を含む各種計画を立案又は修正する。販売計画は、素材別に、第3層への販売予定時期と販売予定数量とを示す計画である。生産計画は、素材別に、生産時期と生産数量を示す計画である。在庫計画は、素材別の第4層、即ち、素材会社での在庫計画である。仕入れ計画は、素材を製造するために他社からの仕入れの計画である。具体的には、第4層計画作成部143は、第4層における素材在庫で、第3層からの注文に対応できない場合、不足分の素材の生産計画を策定又は修正する。また、第4層計画作成部143は、必要に応じて、他社からの素材の仕入れ計画を修正する。また、在庫計画を修正する。
【0044】
第4層発注部144は、第4層の仕入れ計画を他社に伝達する。なお、本実施の形態においては、第4層以下の層は存在しない。従って、第4層発注部144は、実質的に機能しない。
【0045】
第4層実績管理部145は、第4層での各種計画の結果である実績を管理する。
第4層記憶部146は、第4層納期管理装置24において納期を管理するために必要な情報、例えば、第4層における在庫情報、計画情報等を記憶する。
第4層納期管理装置24において求めた情報は、第4層記憶部146に保存されるとともに、記憶装置30に記憶されて共有される。
【0046】
次に、本実施形態における種々の納期について、図3を用いて説明する。
まず、第1層の販売会社が顧客から製品を受注する。その際、顧客から提示される納期を顧客要求納期とする。顧客要求納期に対して、受注した製品の提供時期について、第1層の販売会社から顧客へ提示する納期を回答納期とする。顧客要求納期と回答納期が合致する場合は、合致した納期を約束納期とする。この場合、約束納期を遅延することなく遵守するために、サプライチェーン全体で納期管理を実施する。顧客要求納期と回答納期が合致しない場合、販売会社と顧客とで納期調整を実施し、顧客と合意した納期を約束納期とする。約束納期が顧客要求納期よりも遅い期日となった場合は、サプライチェーン全体で納期管理を実施し、工程の進捗が速く、納品できる日が約束納期よりも早まる可能性が発生し、顧客要求納期との差を少しでも短縮できる場合には、納期短縮のための再調整を実施する。
【0047】
第1層である販売会社の製品在庫で顧客からの受注に対応できない場合は、第1層は、第2層である製造会社に対して、製品を発注し、その納入期日について確認する。その際に、顧客要求納期を満たすべく、第1層から第2層への納期が設定される。これを要求納期1とする。要求納期1に対して、第2層である製造会社は対応可能か否かを判別する。第2層の製品在庫で対応できない場合、第2層である製造会社から第3層である部品会社に対して、製品の生産に必要な部品を発注し、納入を依頼する。その際に設定される期日を要求納期2とする。要求納期1と同様に、第3層である部品会社は、要求納期2に対して対応可能か否かを判別する。第3層の部品在庫で対応できない場合、第3層である部品会社から第4層である素材会社に対して、部品の生産に必要な素材を発注し、納入を依頼する。その際に設定される納期を要求納期3とする。
【0048】
第4層である素材会社は、要求納期3に対して対応可能か否かを判別する。この納期の確認は、サプライチェーンがN層で構成される場合には、最大で第N層まで実施される。本実施の形態では、サプライチェーンが4層で構成されるので、第4層で確認した納期は回答納期3として、第4層である素材会社から第3層である部品会社へ伝達される。回答納期3について、第4層と第3層とで納期調整を実施し、納期調整した結果の納期を約束納期3とする。この際の納期調整を、納期調整3とする。第3層から第1層までも同様に、各層間で納期調整を行い、約束納期を設定し、第1層の約束納期1が決定する。これを受けて、第1層から顧客へ回答納期を提示し、顧客との納期調整の結果、約束納期が決定する。
【0049】
次に図4および図5を参照しながら、納期調整制御処理の流れを説明する。納期調整制御処理とは、顧客要求納期に対する約束納期を求めるために行う制御処理を意味する。
まず、図4に示すように、顧客が顧客端末50から第1層の販売会社の第1層納期管理装置21に、製品と数量と要求納期を含む発注情報を送信して製品を発注する(ステップT11)。すると、第1層納期管理装置21は、図5に示す納期調整制御処理を開始する。なお、図4では、納期回答の手順は、多層で構成されていても同様であることから、第3層の途中以後の手順を略している。
【0050】
第1層納期管理装置21における第1層受注部111は、顧客から提示された要求納期を取得する(ステップS101)。取得した要求納期は、図3に示す顧客要求納期に対応する。第1層在庫確認部112は、販売会社に、顧客の要求納期に対応できる製品在庫があるか否かを判定する(ステップS102)。顧客の要求納期に対応できる製品在庫がないと判定された場合(ステップS102:No)、第1層計画作成部113は、販売会社の在庫計画で顧客の要求納期に対応できるか否かを判定する(ステップS103)。
【0051】
販売会社の在庫計画で顧客の要求納期に対応できないと判定された場合(ステップS103:No)、第1層計画作成部113は、新たな計画を立案する(ステップS104)。具体的には、第1層計画作成部113は、顧客要求納期を満たすため、顧客要求納期を回答納期とし、この回答納期を満たすための製品の販売計画を、検査を含めた必要な日程を加味して求める。第1層計画作成部113は、例えば、製品Aについて、顧客要求納期が2023年4月27日に10個の場合、回答納期を同日の2023年4月27日に製品10個とする。この回答納期を満たすための販売計画として、第1層計画作成部113は、必要な製品を現在の製品在庫、製品仕入れ後の検査必要期間などから、その数量と納期を求める。求めた結果、製品が2023年4月24日に10個必要の場合、第1計画作成部103は、要求納期1を2023年4月24日に10個とする。これらの求めた計画は、全体管理装置10および記憶装置30へ送られて保存される。なお、図4では、ステップS104に相当する新たな計画の立案の表記が略されている。
【0052】
第1層発注部114は、第1層である販売会社の次の層、言い換えると、第2層である製造会社に対して、要求納期1を送信する(ステップS105)。第2層納期管理装置22における第2層受注部121は、要求納期1を取得し、受注する(ステップS106)。ステップS106の後、処理はステップS102に戻る。
【0053】
ステップS102において、在庫有りと判定された場合(ステップS102:Yes)、または、ステップS103において、在庫計画で対応可能と判定された場合(ステップS103:Yes)、約束納期設定処理が実行される(ステップS107)。
【0054】
約束納期設定処理(ステップS107)は、各層間、または、第1層と顧客との間での約束納期を設定する処理を意味する。約束納期設定処理を開始すると、図6に示す処理を実行する。各層における計画作成部113,123,133,143は、回答納期を求める(ステップS107a)。具体的には、各層における計画作成部113,123,133,143は、各層の在庫状況または計画に基づいて、一つ前の層または顧客からの要求納期に対する回答納期を求める。各層における計画作成部113,123,133,143は、求めた回答納期を一つ前の層の納期管理装置21,22,23または顧客の顧客端末50へ送る。図4に示すように、例えば、第2層において、在庫有りと判定された場合、または、在庫計画で対応可能と判定された場合、回答納期を求め、求めた回答納期が回答納期1とされる。
【0055】
各層の計画作成部113,123,133,143は、回答納期を、一つ前の層の納期管理装置21,22,23または顧客の顧客端末50へ送る(ステップS107b)。一つ前の層または顧客との間での納期調整に基づいて、各層の計画作成部113,123,133,143は、約束納期を設定する(ステップS107c)。各層の計画作成部113,123,133,143は、求めた約束納期を各層における記憶部116,126,136,146に保存するとともに、全体管理装置10および記憶装置30へ送信して共有する。全体管理装置10へ送信された約束納期は、全体管理装置記憶部18に保存される。ステップS107cの後、処理はステップS108へ移る。
【0056】
全体管理装置10における調整部11は、顧客との約束納期を設定済みか否か判定する(ステップS108)。具体的には、調整部11は、全体管理装置記憶部18に保存された約束納期に基づいて、顧客との約束納期を設定済みか否か判定する。
【0057】
顧客との約束納期を設定済みでないと判定された場合(ステップS108:No)、各層の計画作成部113,123,133,143は、下層からの納期確認を行う(ステップS109)。ステップS109の処理に至るまでの処理として、例えば、第1層からの要求納期1を満たすべく、第2層では、第2層在庫確認部122が、手持ち製品在庫で対応可能かを判断する(ステップS102)。手持ち製品在庫で対応不可の場合(ステップS102:No)、製品在庫計画を確認し対応可能かを判断する(ステップS103)。製品在庫計画で対応不可の場合(ステップS103:No)、第2層計画作成部123が、新たな製造日を立案し(ステップS104)、不足する部品があれば第3層の部品会社の第3層納品管理装置23へ不足分の部品を新たな製造日を満たす要求納期2にて発注する(ステップS105)。その後、第2層計画作成部123は、第3層の部品会社の第3層納品管理装置23からの回答納期2に基づいて、第3層との間で協議して約束納期2を設定する。この例の場合、ステップS109における納期確認の処理として、第2層計画作成部123は、回答納期2を確認し、回答納期2を参考に、第3層と協議して約束納期2を設定し、設定した約束納期2から実施可能な製造日を設定し、さらに設定した製造日から第1層への回答納期1を設定する。
【0058】
次に、各層の計画作成部113,123,133,143は、納期回答を行う(ステップS110)。具体的には、各層の計画作成部113,123,133,143は、ステップS109で設定した回答納期を顧客端末50又は上層の納期管理装置21、22,23に伝達する。上記例の場合、第2層計画作成部123は、ステップS109で設定した回答納期1を、第1層の第1層納期管理装置21へ伝達する。ステップS110の後、処理はステップS107へ戻る。
【0059】
ステップS108において、顧客との約束納期を設定済みであると判定された場合(ステップS108:Yes)、全体管理装置10における調整部11は、各層で求めた要求納期、回答納期、約束納期を含む納期関連情報を、ユーザ端末40に送信する。ユーザ端末40は、全体管理装置10から受信した納期関連情報を画面表示、音声出力などで出力する(ステップS111)。なお、各層の実績管理部115,125,135,145は、次の層から供給される製品、部品などの数量、納期等を集計および管理する。例えば、第1層実績管理部115は、第2層である製造会社から供給される製品の数量、納期等を集計および管理する。
【0060】
次に、N層に対して、次の層(N+1)に複数の会社が存在する場合について、図7を参照しながら説明する。図7の例では、第2層である製造会社が顧客から受注した製品の生産に必要な部品が複数あり、第3層である部品会社が複数存在する場合の例である。製造会社は、顧客からの受注を満たすべく製造会社における製品の生産日程に合わせて、例えば、検査期間を踏まえた部品の納品日となる要求納期2を設定する。この要求納期2は、第3層に存在する全ての部品会社に部品毎に伝達される。図7では、第3層に2社存在する場合として、要求納期2-1、要求納期2-2、として示す。第3層である部品会社における受注後の納期回答手順は、図4および図5において述べた通りであり、回答納期2-1、回答納期2-2、約束納期2-1、約束納期2-2が存在する。第2層である製造会社は、第3層に存在する全ての部品会社から回答納期を受け取り、約束納期を設定する。
【0061】
次に、図8を参照しながら、再調整制御処理について説明する。再調整制御処理とは、設定された約束納期が顧客要求納期よりも遅い場合に、納期の再調整を実施する制御処理を意味する。納期の再調整は、例えば、第1層である販売会社の回答納期が遅く、結果として顧客との約束納期が顧客要求納期よりも遅い場合に、納期の前倒しが可能であれば、実行される。また、顧客が販売会社に提示した顧客要求納期通りに回答納期と約束納期が設定された場合に、顧客が顧客要求納期をさらに早める依頼を行うと、設定された回答納期、約束納期が新たな顧客要求納期よりも遅い日付となる。このような場合にも、納期の前倒しの再調整を実施することとなる。
【0062】
再調整制御処理は、顧客約束納期が設定され、設定された約束納期が顧客要求納期よりも遅い場合、開始される。なお、各層における計画の変更が発生すると、当該各層における納期管理装置は、全体管理装置10と記憶装置30に対して、計画の変更に関する情報を送る。
【0063】
全体管理装置10における調整部11は、顧客との約束納期が顧客要求納期よりも遅い要因を特定する(ステップS201)。ここで、図9を参照しながら、顧客との約束納期が顧客要求納期よりも遅れている要因を特定する手法の一例を説明する。図9に示す例では、顧客要求納期は、2023年1月29日:10台に対して、回答納期および約束納期は2023年1月31日:10台となっている。このため、調整部11は、前倒しが可能か否かを監視する。なお、図9は、同一層に複数の会社が存在している例であり、第3層は2社で構成され、第4層は3社で構成される。
【0064】
図9の例では、第4層である素材会社のうち、第4-3層にあたる素材会社4-3で、第3層からの要求納期3-2-3である2023年1月18日に60個を満たすため、在庫計画4-3を2023年1月15日に60個とする必要があるが、実現できず、在庫計画4-3が2023年1月17日に60個となり、回答納期3-2-3が2023年1月20日に60個、約束納期3-2-3が2023年1月20日に60個となったことを示している。この差が第3-2層である部品会社3-2、第2層である製造会社、さらには第1層である販売会社へと影響し、顧客への回答納期が2023年1月31日に10台となり、顧客要求納期2023年1月29日10台を満たせていない。従って、素材会社4-3における、在庫計画4-3が顧客要求納期を満たせていない要因と特定できる。このため、顧客との約束納期を前倒し、顧客要求納期を満たすために、素材会社4-3の在庫計画4-3に着目する。
【0065】
調整部11は、ステップS201で特定した、遅延の要因とされた計画について、変更前の計画と比較して、計画の前倒しが有るか否かを判定する(ステップS202)。調整部11は、例えば、図9の場合、素材会社4-3に対応する第4-3層納期管理装置から、在庫計画4-3が早まる、即ち、早めに必要な在庫数が確保できる情報が送られてきたか否かを判定する。
【0066】
ステップS202において、前倒し有りと判定された場合(ステップS202:Yes)、調整部11は、顧客への新たな回答納期を求め、これを顧客に送付することを提案する(ステップS203)。図9の例の場合、調整部11は、計画4-3が2023年1月17日60個よりも前倒しされる場合は、その前倒しされた計画4-3に基づいて、顧客への新たな回答納期を求める。前倒しされた計画4-3が2023年1月15日60個であれば、顧客への新たな回答納期は2023年1月29日10台となり、顧客要求納期を満たすことができる。
【0067】
第1層納期管理装置21は、新たな回答納期を顧客へ送る(ステップS204)。その後、顧客と第1層との納期調整に基づいて、顧客への新たな約束納期が決められる。調整部11は、顧客への新たな約束納期を設定し(ステップS205)、顧客への新たな回答納期を求めた際に算出した各層の回答納期は、新たな回答納期と約束納期として取り扱う。
【0068】
調整部11は、顧客への新たな約束納期について、顧客要求納期を満たすか否かを判定する(ステップS206)。顧客要求納期を満たさないと判定された場合(ステップS206:No)、処理はステップS201に戻り、調整部11は新たな約束納期を決定づける要因の特定を行う(ステップS201)。
【0069】
ステップS202において、前倒しがないと判定された場合(ステップS202:No)、または、ステップS206において顧客要求納期を満たすと判定された場合(ステプS206:Yes)、処理はステップS207へ移る。
【0070】
調整部11は、各層の約束納期に対して遅延が有るか否かを判定する(ステップS207)。具体的には、調整部11は、各層の納期管理装置21~24によって、各層における計画が遅れる情報が送られてきたか否かを判定する。
【0071】
例えば、図9において約束納期である2023年1月31日に10台の要因となっている第4-3層である素材会社4-3の計画4-3に着目する。この計画4-3に遅延が発生すると、約束納期3-2-3に遅延が発生し、この遅延が、第3-2層である部品会社3-2の計画3-2の2023年1月21日:30個に遅延が発生する。最終的に、第1層である販売会社と顧客で合意された約束納期2023年1月31日:10台に遅延が発生することとなる。そのため、生産計画4-3に遅延が発生した段階で、第4-3層納期管理装置から調整部11へ情報を伝達し、調整部11にて新たな回答納期を求める。そして、第1層納期管理装置21から顧客端末50へ新たな回答納期を送信することで、顧客と約束納期の調整を図る。
【0072】
各層の約束納期に対して遅延が有ると判定された場合(ステップS207:Yes)、処理はステップS203に戻る。
【0073】
ステップS207において、各層の約束納期に対して遅延なしと判定された場合(ステップS207:No)、処理はステップS201に戻る。なお、調整部11は、本開示に係る調整手段の一例である。
【0074】
第1層納期管理装置21のハードウェア構成について図10を用いて説明する。第1層納期管理装置以外の他の層の納期管理装置、および、全体管理装置10についても同様のハードウェア構成のため、第1層納期管理装置21を代表して説明する。図10に示すように、第1層納期管理装置21は、一時記憶部171、記憶部172、計算部173、入力部174、送受信部175および表示部176を備える。一時記憶部171、記憶部172、入力部174、送受信部175および表示部176はいずれもBUSを介して計算部173に接続されている。
【0075】
計算部173は、例えばCPU(Central Processing Unit)を備える。計算部173は、記憶部172に記憶されている制御プログラムに従って、第1層納期管理装置21の第1層計画作成部113の処理を実行する。
【0076】
一時記憶部171は、例えばRAM(Random-Access Memory)を備える。一時記憶部171は、記憶部172に記憶されている制御プログラムをロードし、計算部173の作業領域として用いられる。
【0077】
記憶部172は、フラッシュメモリ、ハードディスク、DVD-RAM(Digital Versatile Disc - Random Access Memory)、DVD-RW(Digital Versatile Disc - ReWritable)などの不揮発性メモリを備える。記憶部112は、第1層納期管理装置21の処理を計算部173に行わせるためのプログラムを予め記憶し、また、計算部173の指示に従って、このプログラムが記憶するデータを計算部173に供給し、計算部173から供給されたデータを記憶する。
【0078】
入力部174は、キーボード、ポインティングデバイス、音声入力機器などの入力装置と、入力装置をBUSに接続するインタフェース装置である。入力部174を介して、ユーザが入力した情報が計算部173に供給される。ユーザが第1層納期管理装置21に実績情報を直接入力する構成では、入力部174は、第1層受注部111として機能する。
【0079】
送受信部175は、ネットワークに接続する網終端装置または無線通信装置、およびそれらと接続するシリアルインタフェースまたはLAN(Local Area Network)インタフェースである。送受信部175は、第1層受注部111および第1層発注部114として機能する。
【0080】
表示部176は、LCD(Liquid Crystal Display)、有機EL(electroluminescence)ディスプレイなどの表示装置である。
【0081】
図2に示す第1層納期管理装置21の第1層受注部111、第1層在庫確認部112、第1層計画作成部113、第1層発注部114、第1層実績管理部115、および、第1層記憶部116の処理は、制御プログラムが、一時記憶部171、記憶部172、計算部173、入力部174、送受信部175および表示部176などを資源として用いて処理することによって実行する。
【0082】
以上説明したように、実施の形態1に係る納期管理支援システム100によれば、製品を製造し販売する上で、関連する会社全てと連携して、顧客要求納期に対する回答納期を求める。また、顧客要求納期と回答納期とに基づいて決められた約束納期が、顧客要求納期よりも遅い場合、再調整制御処理を行うことによって、納期の再調整を支援する。再調整制御処理では、各層の工程状況において前倒しが可能な場合、顧客への新たな回答納期を求めて顧客へ提示し、新たな約束納期を設定する。このため、顧客満足度の向上が図られる。
【0083】
また、再調整制御処理を繰り返し、各層の約束納期に遅延があるか否かを判定し続け、遅延が有る場合には、遅延に影響を及ぼす要因を特定する。特定した要因を有する会社と、遅延した計画に基づいて、顧客への新たな回答納期を求め、顧客へ提示する。このため、早期に遅延を察知し、新たな回答納期を顧客に提示することによって、顧客の納期遅延に対するトラブルクレームを回避する支援ができる。
【0084】
(変形例)
本実施の形態では、第1層から第4層まで会社で構成されていたが、会社に限定されず、任意の種類の組織であってもよい。例えば、団体であってもよい。
【0085】
本実施の形態では、全体管理装置10と、第1納期管理装置21と、第2納期管理装置22と、第3納期管理装置23と、第4納期管理装置24とが、ネットワークを介して接続されていたが、本開示はこれに限られない。全体管理装置10が、第1納期管理装置21と、第2納期管理装置22と、第3納期管理装置23と、第4納期管理装置24とを備えていてもよい。また、これに加えて、全体管理装置10は、記憶装置30を備えていてもよい。
【0086】
実施の形態では、全ての処理をシステムが実行することを説明したが、ユーザの承認、設定などの手続が介在してもよい。例えば、回答納期を上位層又は顧客に提示する前に、担当者の承認或いは編集のステップを設けてもよい。また、回答納期に基づいて約束納期を交渉する際に、担当者同士で折衝し、折衝の結果を約束納期として設定してもよい。
【0087】
実施の形態では、製品を提供する際の納期について、説明したが、本開示は、製品以外の物品またはサービスを提供する際の納期に広く適用可能である。
【0088】
その他、前記のハードウェア構成およびフローチャートは一例であり、任意に変更および修正が可能である。
【0089】
計算部173、一時記憶部171、記憶部172、入力部174、送受信部175、表示部176などの第1層納期管理装置21の処理を行う中心となる部分は、専用のシステムによらず、通常のコンピュータシステムを用いて実現可能である。例えば、前記の動作を実行するためのコンピュータプログラムを、フレキシブルディスク、CD-ROM(Compact Disc - Read Only Memory)、DVD-ROM(Digital Versatile Disc - Read Only Memory)などのコンピュータが読み取り可能な記録媒体に格納して配布し、当該コンピュータプログラムをコンピュータにインストールすることにより、前記の処理を実行する第1層納期管理装置21を構成してもよい。また、インターネットに代表される通信ネットワーク上のサーバ装置が有する記憶装置に当該コンピュータプログラムを格納しておき、通常のコンピュータシステムがダウンロードすることで第1層納期管理装置21を構成してもよい。
【0090】
また、第1層納期管理装置21の機能を、OS(Operating System)とアプリケーションプログラムの分担、またはOSとアプリケーションプログラムとの協働により実現する場合などには、アプリケーションプログラム部分のみを記録媒体、記憶装置に格納してもよい。
【0091】
また、輸送波にコンピュータプログラムを重畳し、通信ネットワークを介して提供することも可能である。例えば、通信ネットワーク上の掲示板(BBS, Bulletin Board System)に前記コンピュータプログラムを掲示し、通信ネットワークを介して前記コンピュータプログラムを提供してもよい。そして、このコンピュータプログラムを起動し、OSの制御下で、他のアプリケーションプログラムと同様に実行することにより、前記の処理を実行できる構成にしてもよい。
【0092】
以上、好ましい実施の形態について詳説したが、上述した実施の形態に制限されることはなく、特許請求の範囲に記載された範囲を逸脱することなく、上述した実施の形態に種々の変形及び置換を加えることができる。
【0093】
以下、本開示の諸態様を付記としてまとめて記載する。
【0094】
(付記1)
物品またはサービスの提供の納期の管理を支援するシステムであって、
受注情報を記憶する受注情報記憶手段と、
受注した物品またはサービスについて、顧客との間で合意した約束納期を示す納期情報を記憶する納期情報記憶手段と、
受注した物品またはサービスについて、提供のための複数の計画を示す計画情報を記憶する計画情報記憶手段と、
約束納期が受注情報に含まれる顧客要求納期よりも遅い受注について、前記計画情報記憶手段に記憶された計画情報が示す計画が変更されたことにより、物品またはサービスを提供できる時期が前記約束納期よりも早まる場合に、該当する約束納期を調整することを提案する調整手段と、
を備えるシステム。
(付記2)
前記計画情報記憶手段は、前記物品または前記サービスを提供するための複数の計画の計画情報を記憶し、
前記調整手段は、前記計画情報に基づいて、いずれの計画が、前記受注情報に含まれる前記納期を満たさない要因となっているかを特定する、
付記1に記載の納期管理支援システム。
(付記3)
前記調整手段は、特定した計画が変更された場合、前記計画情報に含まれる前記顧客への新たな納期を求め、求めた納期を、前記顧客の端末へ送信する、
付記2に記載の納期管理支援システム。
(付記4)
前記調整手段は、求めた前記顧客への新たな前記納期に基づいて設定された、前記約束納期が前記受注情報に含まれる前記納期を満たさないと判定された場合、前記要因を更に特定する、
付記3に記載の納期管理支援システム。
(付記5)
受注した物品またはサービスの提供時期について、顧客との間で合意した約束納期を示す納期情報を記憶し、
受注した物品またはサービスの提供のための複数の計画を記憶し、
約束納期が受注情報に含まれる顧客要求納期よりも遅い受注について、計画が変更されたことにより、提供できる時期が前記約束納期よりも早まる場合に、該当する約束納期を前記顧客との間で調整することを提案する、
納期管理支援方法。
(付記6)
コンピュータに、
受注した物品またはサービスの提供時期について、顧客との間で合意した約束納期を示す納期情報を記憶する処理、
受注した物品またはサービスの提供のための複数の計画を記憶する処理、
約束納期が受注情報に含まれる顧客要求納期よりも遅い受注について、計画が変更されたことにより、提供できる時期が前記約束納期よりも早まる場合に、該当する約束納期を前記顧客との間で調整することを提案する処理、
を実行させるプログラム。
【符号の説明】
【0095】
10 全体管理装置、11 調整部、18 全体管理装置記憶部、21 第1層納期管理装置、22 第2層納期管理装置、23 第3層納期管理装置、24 第4層納期管理装置、30 記憶装置、40 ユーザ端末、50 顧客端末、100 納期管理支援システム、111 第1層受注部、112 第1層在庫確認部、113 第1層計画作成部、114 第1層発注部、115 第1層実績管理部、116 第1層記憶部、121 第2層受注部、122 第2層在庫確認部、123 第2層計画作成部、124 第2層発注部、125 第2層実績管理部、126 第2層記憶部、131 第3層受注部、132 第3層在庫確認部、133 第3層計画作成部、134 第3層発注部、135 第3層実績管理部、136 第3層記憶部、141 第4層受注部、142 第4層在庫確認部、143 第4層計画作成部、144 第4層発注部、145 第4層実績管理部、146 第4層記憶部、171 一時記憶部、172 記憶部、173 計算部、174 入力部、175 送受信部、176 表示部、301 実績情報記憶部、302 管理情報記憶部。

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10