(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024157996
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】画像形成装置
(51)【国際特許分類】
G03G 15/20 20060101AFI20241031BHJP
【FI】
G03G15/20 555
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023072739
(22)【出願日】2023-04-26
(71)【出願人】
【識別番号】000006150
【氏名又は名称】京セラドキュメントソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003443
【氏名又は名称】弁理士法人TNKアジア国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】近藤 晃洋
(72)【発明者】
【氏名】▲徳▼永 良平
(72)【発明者】
【氏名】北林 佑太
(72)【発明者】
【氏名】菊川 里奈
(72)【発明者】
【氏名】川崎 広貴
(72)【発明者】
【氏名】藤井 駿策
(72)【発明者】
【氏名】政岡 宥人
【テーマコード(参考)】
2H033
【Fターム(参考)】
2H033AA24
2H033BA11
2H033BA25
2H033BA26
2H033BA31
2H033BA32
2H033BB01
2H033BB18
2H033BB21
2H033BB22
2H033BB30
2H033BB33
2H033BB34
2H033BE00
2H033CA04
2H033CA30
2H033CA45
(57)【要約】
【課題】定着部材を加熱する加熱部材の温度が目標温度を大きく超えるオーバーシュートの発生を防止すると共に、目標温度への早い収束を実現できるようにする。
【解決手段】画像形成装置1は、加熱部材21の温度が目標温度となるように加熱部材21をPID制御で駆動する制御部100を備える。制御部100は、温度センサーによる検知温度が遮断温度Cまで上昇すると、加熱部材21への電力供給を遮断し、その後、検知温度が遮断温度C未満まで低下すると、加熱部材21への電力供給を再開するが、検知温度が遮断温度C未満になってから一定時間TMが経過するまでの間については、加熱部材21への最大供給電力が上限電力ULに制限されるようにPID制御を行い、更に、PID制御の演算については、加熱部材21への電力供給を遮断している間についても継続して行う。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
定着部材と、
前記定着部材と対向配置され、前記定着部材との間に定着対象となる記録媒体が挿通されるニップ部を形成する加圧部材と、
前記定着部材を加熱する加熱部材と、
前記加熱部材又は前記定着部材の温度を検知する温度センサーと、を有する定着装置と、
前記温度センサーによる検知温度を予め定められた目標温度とするPID制御で前記加熱部材を駆動させる制御部とを備え、
前記制御部は、
前記検知温度が、前記目標温度よりも高い予め定められた遮断温度まで上昇したときに前記加熱部材への電力供給を遮断し、その後、前記検知温度が前記遮断温度未満まで低下したときに前記加熱部材への電力供給を再開し、
前記検知温度が前記遮断温度未満になって前記加熱部材への電力供給を再開した時点から、予め定められた一定時間が経過するまでの間は、前記加熱部材への最大供給電力を、前記検知温度が前記遮断温度まで上昇した時点における前記加熱部材への供給電力である上限電力に制限して、前記PID制御を行う画像形成装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記再開後に前記検知温度が再度前記遮断温度まで上昇したときは、前記加熱部材への電力供給を遮断した後、前記加熱部材への最大供給電力を、前記検知温度が再度前記遮断温度まで上昇した時点における前記加熱部材への供給電力を前記上限電力として、前記PID制御を続行する請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記定着部材は、無端状のベルトであり、
前記加熱部材は、前記定着部材の内側に配置され、前記定着部材の内周面と対向する、面状ヒーターであり、
前記温度センサーは、前記加熱部材の温度を検知するものである請求項1又は請求項2に記載の画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録媒体に形成された画像を熱圧着して定着させる定着装置を備える画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式の画像形成装置は、記録媒体に形成された画像を定着させる定着装置を備える。また、定着装置には、定着部材と、当該定着部材と対向配置され、定着部材との間に定着対象となる記録媒体が挿通されるニップ部を形成する加圧部材と、定着部材を加熱する加熱部材と、を備え、ニップ部において、記録媒体に形成された画像を加熱及び加圧(熱圧着)により記録媒体上に定着させるものがある。
【0003】
また、定着装置は、一般的に、加熱部材の温度を検知する温度センサーを備え、温度センサーによる検知温度が予め定められた目標温度となるように、加熱部材がフィードバック制御の一つであるPID制御で駆動される。
【0004】
ところで、画像形成装置においては、加熱部材の温度を上げるときに、加熱部材の温度が目標温度を大きく超えるオーバーシュート(過昇温)が発生してしまい、定着装置の部品が破損することがある。オーバーシュートによる部品の破損を防止するには、温度センサーによる検知温度が予め定められた遮断温度(目標温度よりも高い異常温度)まで上昇すると、加熱部材への電力供給を遮断する(又は供給電力を減少させる)のが一般的である。
【0005】
図6は、従来のPID制御時の加熱部材及び定着部材の温度挙動と、加熱部材への供給電力の変化とを示すグラフである。
図7は、
図6に示したグラフを部分的に拡大したグラフである。
【0006】
下記特許文献1には、定着部材の温度のオーバーシュートに起因するアンダーシュートの発生を防止するために、加熱部材の下限点灯率を設定することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
図6及び
図7に示すように、加熱部材の温度が遮断温度まで上昇すると、加熱部材への電力供給が遮断されるので、加熱部材への供給電力は低下し、加熱部材の温度が下がる。その後、加熱部材の温度が遮断温度未満まで低下すると、加熱部材への電力供給が再開され、暫くすると、加熱部材の温度が再び上昇する。
【0009】
ところが、加熱部材に対する従来の電力制御では、
図6及び
図7に例を示したように、電力供給の遮断及び再開が繰り返し行われるので、温度リップルが大きく、加熱部材の温度制御が安定しない。温度制御が不安定な状態では、加熱部材において目標温度よりも高温な状態が長く続き、ホットオフセットによる画質不良が発生することがある。また、高温な状態が長く続くと、部品寿命の低下や安全性の低下を招く。特に、目標温度と遮断温度との差が小さい場合、加熱部材への電力供給の再開時、オーバーシュートが発生する可能性が高くなる。また、温度制御が不安定な状態では、アンダーシュートも発生しやすく、定着不良が生じる可能性もある。
【0010】
上記特許文献1には、定着部材の温度のオーバーシュートに起因するアンダーシュートの発生を防止するために、加熱部材の下限点灯率を設定することが記載されているが、加熱部材の下限点灯率を設定すると、温度低下が不十分となり、加熱部材の温度が目標温度に収束せず、目標温度よりも高い温度で安定してしまう可能性がある。
【0011】
本発明は、上記の事情に鑑みなされたものであり、加熱部材の温度が目標温度を大きく超えるオーバーシュートの発生を防止すると共に、目標温度への早い収束を実現させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の一局面に係る画像形成装置は、定着部材と、前記定着部材と対向配置され、前記定着部材との間に定着対象となる記録媒体が挿通されるニップ部を形成する加圧部材と、前記定着部材を加熱する加熱部材と、前記加熱部材又は前記定着部材の温度を検知する温度センサーと、を有する定着装置と、前記温度センサーによる検知温度を予め定められた目標温度とするPID制御で前記加熱部材を駆動させる制御部とを備え、前記制御部は、前記検知温度が、前記目標温度よりも高い予め定められた遮断温度まで上昇したときに前記加熱部材への電力供給を遮断し、その後、前記検知温度が前記遮断温度未満まで低下したときに前記加熱部材への電力供給を再開し、前記検知温度が前記遮断温度未満になって前記加熱部材への電力供給を再開した時点から、予め定められた一定時間が経過するまでの間は、前記加熱部材への最大供給電力を、前記検知温度が前記遮断温度まで上昇した時点における前記加熱部材への供給電力である上限電力 に制限して、前記PID制御を行うものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、検知温度が目標温度よりも高い遮断温度まで上昇したときに加熱部材への電力供給を遮断した後、検知温度が遮断温度未満になって加熱部材への電力供給を再開してから一定時間が経過するまでの間、加熱部材への供給電力が、検知温度が遮断温度まで上昇した時点における加熱部材への供給電力までに制限されるため、電力供給過多による加熱部材の過度な温度上昇を抑制することができる。これにより、オーバーシュートの発生を防止すると共に、加熱部材の目標温度への早い収束を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の一実施形態に係る画像形成装置の主要内部構成を概略的に示す機能ブロック図である。
【
図2】画像形成装置が備える定着装置の一例を模式的に示す断面図である。
【
図3】定着装置に備えられる加熱部材の駆動制御時の処理の流れを示すフローチャートである。
【
図4】本発明におけるPID制御時の加熱部材及び定着部材の温度挙動と、加熱部材への供給電力の変化とを示すグラフである。
【
図5】
図4に示したグラフを部分的に拡大したグラフである。
【
図6】従来におけるPID制御時の加熱部材及び定着部材の温度挙動と、加熱部材への供給電力の変化とを示すグラフである。
【
図7】
図6に示したグラフを部分的に拡大したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の一実施形態に係る画像形成装置について図面を参照して説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る画像形成装置の主要内部構成を概略的に示す機能ブロック図である。画像形成装置1は、例えば、コピー機能、プリンター機能、スキャナー機能、及びファクシミリ機能のような複数の機能を兼ね備えた複合機である。
【0016】
画像形成装置1は、制御ユニット10、原稿給送部6、原稿読取部5、画像形成部12、定着装置13、給紙部14、操作部47、及び記憶部8を含んで構成されている。
【0017】
原稿給送部6は、原稿読取部5の上面に図略のヒンジ等によって開閉可能に構成され、原稿給送部6は、図略のプラテンガラス上に載置された原稿を読み取る場合に原稿押さえカバーとして機能する。また、原稿給送部6は、ADF(Auto Document Feeder)であり、図略の原稿載置トレイを備え、原稿載置トレイに載置されている原稿を原稿読取部5へ供給する。
【0018】
画像形成装置1で原稿読取動作が行われる場合について説明する。原稿給送部6により原稿読取部5へ供給された原稿、又は上記プラテンガラス上に載置されている原稿の画像を、原稿読取部5が光学的に読み取り、そして画像データを生成する。原稿読取部5により生成された画像データは、図略の画像メモリー等に保存される。
【0019】
画像形成装置1で画像形成動作が行われる場合について説明する。原稿読取動作により生成された画像データや、画像メモリー等に記憶されている画像データ、ネットワーク接続されたコンピューターから受信した画像データ等に基づいて、画像形成部12が、給紙部14から給紙される記録媒体としての記録紙にトナー像を形成する。
【0020】
定着装置13は、画像形成部12によりトナー像が形成された記録紙を加熱及び加圧して、トナー像を記録紙に定着させるものであり、定着処理が施された記録紙は図略の排出トレイに排出される。給紙部14は、給紙カセットを備える。
【0021】
操作部47は、画像形成装置1が実行可能な各種動作及び処理について、操作者から、画像形成動作実行指示等の指示を受け付ける。操作部47は、操作者への操作案内等を表示する表示部473を備えている。また、操作部47は、表示部473が有するタッチパネルを介して、表示部473に表示されている操作画面に対するユーザーによる操作(タッチ操作)に基づく、ユーザーからの指示の入力を受け付ける。
【0022】
表示部473は、LCD(Liquid Crystal Display)等からなる。表示部473は、タッチパネルを備えている。操作者は画面表示されるボタンやキーに触れる操作を行うと、タッチパネルにより、タッチ操作された位置に対応付けられた指示が受け付けられる。
【0023】
記憶部8は、HDD(Hard Disk Drive)又はSSD(Solid State Drive)等の大容量記憶装置であり、各種の制御プログラム等を記憶する。
【0024】
制御ユニット10は、プロセッサー、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、及び専用のハードウェア回路を含んで構成される。プロセッサーは、例えばCPU(Central Processing Unit)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、又はMPU(Micro Processing Unit)等である。制御ユニット10は、制御部100を備えている。
【0025】
制御ユニット10は、記憶部8に記憶されている制御プログラムに従った上記プロセッサーによる動作により、制御部100として機能するものである。但し、制御部100は、制御ユニット10による制御プログラムに従った動作によらず、それぞれハードウェア回路により構成することも可能である。以下、特に触れない限り、各実施形態について同様である。
【0026】
制御部100は、画像形成装置1の全体的な動作制御を司る。制御部100は、原稿給送部6、原稿読取部5、画像形成部12、定着装置13、給紙部14、操作部47、及び記憶部8と接続され、これら各部の駆動制御等を行う。例えば、制御部100は、画像形成装置1による画像形成に必要な各種の処理などを実行する。
【0027】
図2は、画像形成装置1が備える定着装置13の一例を模式的に示す断面図である。定着装置13は、定着部材20と、加圧部材30と、加熱部材21と、保持部材22と、温度センサー23と、補強部材24と、付勢部材25と、搬送ガイド40と、を備える。
【0028】
定着部材20は、無端状のベルトであって、トナー像が形成された記録媒体(記録紙P)を加熱する。定着部材20は、第1回転軸L1を軸心として回転可能で、第1回転軸L1方向に延びている。
【0029】
加圧部材30は、
図2では紙面奥行き方向に延びる第1回転軸L1と平行な第2回転軸L2を軸心として回転可能なローラーで、第2回転軸L2方向に延びている。加圧部材30は、定着部材20との間に記録媒体としての記録紙Pが挟持搬送されるニップ部Nを形成し、定着部材20を従動回転させる。トナー像が形成された記録紙Pは、搬送ガイド40によって案内され、ニップ部Nで搬送挟持される。矢印Aは、記録紙Pの搬送方向を示している。
【0030】
定着部材20は、加圧部材30が第2回転軸L2を軸心として、第2回転方向R2(
図2中の反時計回り方向)に回転するのに従動して、第1回転軸L1を軸心として、第1回転方向R1(
図2中の時計回り方向)に回転する。
【0031】
加熱部材21は、定着部材20を加熱する。加熱部材21は、第1回転軸L1方向に沿って延びる面状ヒーターであり、定着部材20の内側に配置され、定着部材20の内周面201と対向する。加熱部材21は、例えば、熱容量が比較的低いセラミックヒーターであり、セラミック基板と、抵抗発熱体と、を備える。
【0032】
保持部材22は、加熱部材21を保持する。保持部材22は、第1回転軸L1方向に沿って延びる断面U字状の耐熱樹脂部材である。
【0033】
温度センサー23は、加熱部材21と対向し、加熱部材21の温度を検知する。温度センサー23は、保持部材22に形成された貫通孔に挿入され、加熱部材21に当接する。温度センサー23は、例えば、サーミスターである。
【0034】
補強部材24は、第1回転軸L1方向に沿って延びる断面逆U字状の金属製ステイである。補強部材24は、保持部材22を補強するように、保持部材22に固定されている。
【0035】
付勢部材25は、温度センサー23と補強部材24との間に配置され、温度センサー23から加熱部材21に向かう方向に、温度センサー23を付勢する。付勢部材25は、例えば、コイルバネである。
【0036】
制御部100は、温度センサー23による検知温度Dが予め定められた目標温度Tとなるように、加熱部材21をPID(Proportional-Integral-Differential Controller)制御で駆動させる。
【0037】
制御部100は、温度センサー23による検知温度Dが、目標温度Tよりも高い、予め定められた遮断温度Cまで上昇すると、加熱部材21への電力供給を遮断し、その後、検知温度Dが遮断温度C未満まで低下すると、加熱部材21への電力供給を再開する。但し、制御部100は、PID制御の演算については、加熱部材21への電力供給を遮断している間についても継続して行う。つまり、制御部100は、加熱部材21への電力供給を遮断している間も、バックグラウンドで並行して、PID制御の演算を継続実施する。遮断温度Cは、加熱部材21の上限温度であり、予め設定されて、制御ユニット10内蔵の不揮発性メモリー又は上記制御プログラムに記憶されている。遮断温度Cは、例えば、目標温度Tよりも20%高い温度とされる。
【0038】
制御部100は、検知温度Dが遮断温度C未満になって加熱部材21への電力供給を再開してから予め定められた一定時間TMが経過するまでの間は、加熱部材21への最大供給電力を、検知温度Dが遮断温度Cまで上昇した時点における加熱部材21への供給電力(供給指示電力)である上限電力ULに制限して、PID制御を行う。
【0039】
例えば、温度センサー23による検知温度Dが、目標温度Tよりも高い、予め定められた遮断温度Cまで上昇したときに加熱部材21への電力供給を遮断し、その後に検知温度Dが遮断温度C未満まで低下したときに加熱部材21への電力供給を再開するという制御(加熱部材21への最大供給電力を上限電力ULに制限した制御は行わない)を行う場合、目標温度と遮断温度との差が小さいと、加熱部材21への投入電力が過多となって加熱部材への電力供給の再開時にオーバーシュートが発生する環境下となって温度リップルが大きく温度制御が不安定な状態になり、加熱部材21が目標温度に安定するまでに時間を要する。本実施形態では、検知温度Dが遮断温度C未満まで低下したときに加熱部材21への電力供給を再開した時点から、当該オーバーシュートが発生するおそれがなくなるまでの期間として予め実験等により検出されて特定された期間が、上記一定時間TMとされる。
【0040】
次に、定着装置13に備えられる加熱部材の駆動制御時の処理の一例を、
図3に示すフローチャートを参照して説明する。なお、この処理が行われるのは、例えば、操作部47がユーザーからの印刷ジョブの実行指示を受け付けたときに行われる処理である。
【0041】
制御部100は、操作部47が印刷ジョブの実行指示を受け付けると、温度センサー23から当該温度センサー23による検知温度Dを示す信号を取得し(S1)、温度センサー23による検知温度Dが目標温度Tとなるように、加熱部材21をPID制御で電力供給を行って駆動する(S2)。
【0042】
そして、制御部100は、検知温度Dが遮断温度Cまで上昇したか否かを判断する(S3)。ここで、制御部100は、検知温度Dが遮断温度Cまで上昇したと判断した場合(S3でYES)、加熱部材21への電力供給を遮断し(S4)、その遮断時点でのPID制御による加熱部材21への供給電力APを記憶する(S5)。なお、加熱部材21への電力供給を遮断する手段は、ソフト遮断及びハード遮断である。
【0043】
続いて、制御部100は、温度センサー23による検知温度Dを示す信号を随時に取得する(S6)。制御部100は、温度センサー23による検知温度Dに基づいて、加熱部材21を目標温度TとするためのPID制御による指示電力の演算は継続する。制御部100は、検知温度Dが遮断温度C未満になるまで低下したかを判断し(S8)、検知温度Dが遮断温度C未満になるまで低下したと判断した場合(S8でYES)、温度センサー23による検知温度Dが目標温度Tとなるように、加熱部材21をPID制御で電力供給を行って再度駆動する(S10)。つまり、加熱部材21への電力供給を再開する。
【0044】
このS10においては、制御部100は、加熱部材21への最大供給電力が上限電力ULまでに制限してPID制御を行う。なお、制御部100は、上限電力ULを、S5で記憶した供給電力APに設定する。一方、制御部100が、検知温度Dが遮断温度C未満になるまで低下していないと判断した場合(S8でNO)、処理はS6に戻る。
【0045】
続いて、制御部100は、検知温度Dが遮断温度C未満になるまで低下したと判断してから一定時間TMが経過したか否かを判断する(S11)。制御部100が、一定時間TMが経過したと判断した場合(S11でYES)、処理はS1に戻る。これにより、加熱部材21への電力供給の制限が解除される。一方、制御部100が、一定時間TMが経過していないと判断した場合(S11でNO)、S10の処理が繰り返される。
【0046】
S3において、制御部100は、検知温度Dが遮断温度Cまで上昇していないと判断した場合(S3でNO)、印刷ジョブが終了したか否かを判断し(S12)、印刷ジョブが終了していないと判断した場合(S12でNO)、処理はS1に戻り、印刷ジョブが終了するまで、S1~S10の処理が続けられる。一方、制御部100が、印刷ジョブが終了したと判断した場合(S12でYES)、この処理は終了する。
【0047】
図4は、本実施形態におけるPID制御時の加熱部材21及び定着部材20の温度挙動と、加熱部材21への供給電力の変化とを示すグラフである。
図5は、
図4に示したグラフを部分的に拡大したグラフである。また、
図5には、
図7に示した従来における加熱部材の温度挙動と、加熱部材への供給電力の変化とを破線で示している。
図5に示す「加熱部材OFF」は加熱部材21への電力供給の遮断タイミングを示し、「加熱部材ON」は加熱部材21への電力供給の再開タイミングを示している。
【0048】
上記実施形態によれば、検知温度Dが遮断温度C未満になってから(すなわち、加熱部材21への電力供給を再開してから)一定時間TMが経過するまでの間、加熱部材21への供給電力に対して上限が設けられるので、電力供給過多による加熱部材21の過度な温度上昇を抑制することができる。これにより、上記実施形態では、
図5に示すように、従来例(
図7)とは異なって、温度リップルが小さく、温度制御が安定し、オーバーシュートの発生を防止すると共に、加熱部材21の目標温度Tへの早い収束を実現できる。
【0049】
上限電力ULは、上述のように、検知温度Dが遮断温度Cまで上昇した時点(すなわち、加熱部材21への電力供給を遮断する時点)でのPID制御による加熱部材21への供給電力APに設定して変動値とされる。
【0050】
それは、加熱部材21の温度挙動が、供給電力だけでなく、定着装置13の温まり具合や、画像形成装置1の使用環境、搬送される記録媒体の種類などの影響を受け、その時々で変わり、一定ではないからである。
【0051】
上限電力ULを固定値にすると、異なる温度挙動に適正に追従できず、温度上昇を抑制する効果が不足したり、加熱部材21の温度が目標温度Tよりも大きく低下したりする可能性がある。これに対し、上記実施形態のように、上限電力ULをその時々の状況に応じて設定した方が、異なる温度挙動により適正に対応することができる。
【0052】
上記実施形態では、制御部100は、一度検知温度Dが遮断温度Cまで上昇して加熱部材21への電力供給を遮断した後、検知温度Dが遮断温度C未満になって加熱部材21への電力供給を再開し、その後に検知温度Dが再度遮断温度Cまで上昇する場合がある。この場合、制御部100は、検知温度Dが再度遮断温度Cまで上昇した時点における加熱部材21への供給電力を上限電力ULとしてPID制御を続行する。すなわち、制御部100は、新たに上限電力ULを設定する。制御部100は、既に先の上限電力ULを用いて加熱部材21への電力供給を再開しているため、次に検知温度Dが再度遮断温度Cまで上昇した時点での加熱部材21への供給電力は、先の上限電力ULを用いずに加熱部材21電力を供給していたときよりも低い値になる。このため、新たに設定される上限電力ULは、先の上限電力ULよりも低い値となる。この点からも、本実施形態によれば、加熱部材21の目標温度Tへの早い収束を実現できる。
【0053】
また、上記実施形態では、加熱部材21の温度を検知する温度センサー23を備え、制御部100が、温度センサー23による検知温度D(加熱部材21の温度)が目標温度Tとなるように、加熱部材21をPID制御で駆動させる場合について説明しているが、別の実施形態として、定着部材20の温度を検知する温度センサーを備え、制御部100が、定着部材20の温度が予め定められた目標温度となるように、加熱部材21をPID制御で駆動させるようにしてもよい。
【0054】
また、本実施形態では、加熱部材21は上記面状ヒーターに限定されないが、本発明は、加熱部材21に熱容量の大きいヒーターを採用する場合よりも、上記面状ヒーターのような、熱容量の小さいヒーター(温度上昇や低下の変化が生じやすいヒーター)を採用する場合により有効である。
【0055】
本発明は上記実施の形態の構成に限られず種々の変形が可能である。また、上記実施形態では、
図1乃至
図5を用いて上記実施形態により示した構成及び処理は、本発明の一実施形態に過ぎず、本発明を当該構成及び処理に限定する趣旨ではない。
【符号の説明】
【0056】
1 画像形成装置
13 定着装置
20 定着部材
21 加熱部材
23 温度センサー
30 加圧部材
100 制御部