(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024000158
(43)【公開日】2024-01-05
(54)【発明の名称】取付用金具の固定方法
(51)【国際特許分類】
E04D 13/00 20060101AFI20231225BHJP
E04D 13/18 20180101ALI20231225BHJP
H02S 20/23 20140101ALI20231225BHJP
【FI】
E04D13/00 K
E04D13/18
H02S20/23 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022098763
(22)【出願日】2022-06-20
(71)【出願人】
【識別番号】517181081
【氏名又は名称】ライノジャパン株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】522246658
【氏名又は名称】J・システム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085660
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 均
(74)【代理人】
【識別番号】100149892
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 弥生
(74)【代理人】
【識別番号】100185672
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 雅人
(72)【発明者】
【氏名】緒方 修一
(72)【発明者】
【氏名】沖 紀和
【テーマコード(参考)】
2E108
【Fターム(参考)】
2E108KK01
2E108KS05
2E108LL01
2E108MM05
2E108NN07
(57)【要約】
【課題】長期間に亘って取付用金具を取付対象物に固定し続けられるようにする。
【解決手段】取付対象物の表面に第1のポリウレア樹脂を吹き付けて第1のポリウレア層を形成する防水層形成工程S3と、第1のポリウレア樹脂の溶剤を、第1のポリウレア層の表面における固定片の配置領域、及び配置領域の外周に隣接した周囲領域に塗布して粘着性を付与する溶剤塗布工程S4と、取付用金具の固定片を配置領域に配置する金具配置工程S5と、周囲領域、及び固定片の表面に第2のポリウレア樹脂を吹き付けて被覆し、周囲領域において第1のポリウレア層と結合した第2のポリウレア層を形成する金具固定工程S6とを行う。金具配置工程S5、及び金具固定工程S6を、配置領域、及び周囲領域が粘着性を有している状態で行う。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
取付対象物への機器の取り付けに使用され、且つ前記取付対象物に固定される固定片を有した取付用金具を、前記取付対象物に固定する取付用金具の固定方法であって、
前記取付対象物の表面に第1のポリウレア樹脂を吹き付けて第1層を形成する工程と、
前記第1のポリウレア樹脂の溶剤を、前記第1層の表面における前記固定片の配置領域、及び前記配置領域の外周に隣接した周囲領域に塗布して粘着性を付与する工程と、
前記取付用金具の前記固定片を前記配置領域に配置する工程と、
前記周囲領域、及び前記固定片の表面に第2のポリウレア樹脂を吹き付けて被覆し、前記周囲領域において前記第1層と結合した第2層を形成する工程と、
を備え、
前記固定片を前記配置領域に配置する工程、及び前記第2層を形成する工程は、前記配置領域、及び前記周囲領域が粘着性を有している状態で行うことを特徴とする取付用金具の固定方法。
【請求項2】
前記溶剤は、主成分としてトルエン、及び酢酸エチルを含有していることを特徴とする請求項1に記載の取付用金具の固定方法。
【請求項3】
前記取付対象物は建物の屋根であり、
前記第1のポリウレア樹脂は、光の反射率を向上させるための顔料を含有していることを特徴とする請求項1に記載の取付用金具の固定方法。
【請求項4】
前記顔料は、アルミニウム顔料であることを特徴とする請求項3に記載の取付用金具の固定方法。
【請求項5】
前記第2のポリウレア樹脂の引張強度は、前記第1のポリウレア樹脂の引張強度よりも大きいことを特徴とする請求項1乃至4の何れか一項に記載の取付用金具の固定方法。
【請求項6】
前記固定片は、前記取付対象物の前記表面に沿って延びる板状であって、且つ開口部が設けられており、
前記第2層は、前記開口部を通じて前記第1層と結合することを特徴とする請求項1乃至4の何れか一項に記載の取付用金具の固定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機器の設置に使用される取付用金具を取付対象物に固定する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
太陽光を利用した発電装置や太陽熱を利用した温水生成装置には、太陽光発電パネルや太陽熱温水パネル等の機器を屋根等の上に取り付けるタイプがある。
機器の取り付けは、一般的に、屋根の上に固定した取付用金具によって行われている。取付用金具の屋根への固定方法は、ボルト穴の穿孔やアンカーボルトの埋設等、屋根に対する加工を伴うものが主流であった。しかしながら、屋根にボルト穴を穿孔したり、アンカーボルトを埋設してしまうと、加工箇所から水が浸入してしまう等の不都合が生じ得る。
【0003】
屋根に対する加工を伴わない固定方法として、特許文献1には、取付用金具を接着層と被覆層とによって屋根の上に固定する固定方法が記載されている。
特許文献1において、取付用金具は屋根の突条部分に沿って延びる板状の固定片を備えている。特許文献1では、当該固定片を屋根の表面に対して接着層を介して接着した後、ポリウレタン樹脂或いはポリウレア樹脂を吹き付けて固定片を樹脂内に埋没させることにより、取付用金具を屋根に固定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、取付用金具は、熱伝導性の高い金属で作製されており、太陽熱によって加熱され、気温の低下によって冷却される。取付用金具は熱を高効率で伝達するため、取付用金具が加熱、冷却されると、取付用金具を介して接着層も加熱、冷却される。接着層は、加熱と冷却の繰り返しによって劣化が促進されるため、接着力が低下し、取付用金具による固定力が低下してしまう恐れがあった。
このように、特許文献1に記載された技術には、取付用金具を長期間に亘って屋根に固定し続けることが難しいという課題があった。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、長期間に亘って取付用金具を取付対象物に固定し続けることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明は、取付対象物への機器の取り付けに使用され、且つ前記取付対象物に固定される固定片を有した取付用金具を、前記取付対象物に固定する取付用金具の固定方法であって、前記取付対象物の表面に第1のポリウレア樹脂を吹き付けて第1層を形成する工程と、前記第1のポリウレア樹脂の溶剤を、前記第1層の表面における前記固定片の配置領域、及び前記配置領域の外周に隣接した周囲領域に塗布して粘着性を付与する工程と、前記取付用金具の前記固定片を前記配置領域に配置する工程と、前記周囲領域、及び前記固定片の表面に第2のポリウレア樹脂を吹き付けて被覆し、前記周囲領域において前記第1層と結合した第2層を形成する工程と、を備え、前記固定片を前記配置領域に配置する工程、及び前記第2層を形成する工程は、前記配置領域、及び前記周囲領域が粘着性を有している状態で行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、長期間に亘って取付用金具を取付対象物に固定し続けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】太陽光発電パネルの建物の屋根への取り付け作業を説明するフローチャートである。
【
図2】折板屋根の清掃工程を説明する斜視図である。
【
図3】(a)はフックボルトキャップの斜視図、(b)はフックボルトキャップの縦断面図、(c)は充填材を充填したフックボルトキャップをフックボルトの上端部に被せた状態を説明する断面図、(d)はフックボルトキャップをフックボルトの上端部に被せた状態を説明する斜視図である。
【
図4】(a)はプライマー塗布に使用するスプレー装置を説明する斜視図、(b)は折板屋根のプライマー塗布工程を説明する斜視図である。
【
図5】(a)はポリウレアの吹付装置を説明する図、(b)は折板屋根の防水層形成工程を説明する図である。
【
図6】(a)は折板屋根の溶剤塗布工程を説明する断面図、(b)は溶剤の塗布範囲を説明する斜視図である。
【
図7】(a)は取付用金具の斜視図、(b)は取付用金具を折板屋根に配置した状態を説明する斜視図である。
【
図8】(a)は折板屋根の金具固定工程を説明する図、(b)は取付用金具を折板屋根に固定した状態を説明する斜視図である。
【
図9】取付用金具を介してフレームを折板屋根に取り付けた状態を説明する斜視図である。
【
図10】太陽光発電パネルを折板屋根に取り付けた状態を説明する斜視図である。
【
図11】陸屋根の清掃工程を説明する斜視図である。
【
図12】陸屋根のプライマー塗布工程を説明する斜視図である。
【
図13】陸屋根の防水層形成工程を説明する斜視図である。
【
図14】陸屋根の溶剤塗布工程を説明する斜視図である。
【
図15】(a)は取付用金具の斜視図、(b)は取付用金具を陸屋根に配置した状態を説明する斜視図である。
【
図16】(a)は陸屋根の金具固定工程を説明する図、(b)は取付用金具の固定片を陸屋根に固定した状態を説明する断面図である。
【
図17】太陽光発電パネルを陸屋根に取り付けた状態を説明する斜視図である。
【
図18】(a)は折板屋根用の取付用金具の変形例を示す斜視図、(b)は取付用金具の固定片を折半屋根に固定した状態を説明する断面図である。
【
図19】(a)は陸屋根用の取付用金具の変形例を示す斜視図、(b)は取付用金具の固定片を陸屋根に固定した状態を説明する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。但し、この実施形態に記載される構成要素、種類、組み合わせ、形状、その相対配置などは特定的な記載がない限り、この考案の範囲をそれのみに限定する主旨ではなく単なる説明例に過ぎない。
【0010】
<第1実施形態の概略>
図1は、太陽光発電パネル70(
図10を参照)の建物100A(
図2を参照)の折板屋根110Aへの取り付け作業を説明するフローチャートである。
太陽光発電パネル70は本発明に係る機器の一例であり、折板屋根110Aは本発明に係る取付対象物の一例である。第1実施形態において、取付用金具50(
図7(a)を参照)の折板屋根110Aへの固定は、太陽光発電パネル70の取り付け作業の中で実施される。
以下、
図1のフローチャートに基づいて、第1実施形態に係る取付用金具50の固定方法の概略について説明する。
【0011】
図1に示すように、取付用金具50の固定方法では、防水層形成工程S3において、折板屋根110Aの屋根材111の表面に対し、第1のポリウレア層43を形成する(
図5(b)を参照)。
次に、溶剤塗布工程S4において、第1のポリウレア樹脂43’の溶剤44’を、第1のポリウレア層43の表面に対して局所的に塗布する。溶剤44’は、取付用金具50の各固定片52a,52bの配置領域44a(
図6(b)を参照)と、配置領域44aの外周に隣接した周囲領域44b(
図6(b)を参照)とに塗布する。配置領域44a、及び周囲領域44bは、溶剤44’の塗布によって粘着性を有した粘着性領域44になる。
【0012】
次に、金具配置工程S5において配置領域44aに取付用金具50の各固定片52a,52bを配置し(
図7(b)を参照)、その後、金具固定工程S6において周囲領域44b、及び各固定片52a,52bの表面に第2のポリウレア樹脂45’を吹き付けて被覆し、周囲領域44bにおいて第1のポリウレア層43と結合した第2のポリウレア層45を形成する。
これらの金具配置工程S5、及び金具固定工程S6は、粘着性領域44(配置領域44a、周囲領域44b)が粘着性を有している状態で行う。
【0013】
第1のポリウレア層43に対して単に第2のポリウレア層45を重ねて形成しただけでは、第1のポリウレア層43と第2のポリウレア層45との間の結合力が不足してしまう恐れがある。しかしながら、第1実施形態では、第1のポリウレア層43の一部分に溶剤44’を塗布することによって粘着性を有した粘着性領域44とし、粘着性領域44に重ねて第2のポリウレア層45を形成している。
第2のポリウレア層45は、各固定片52a,52bを被覆し、且つ周囲領域44bにおいて第1のポリウレア層43と強固に結合して一体化される。
取付用金具50の各固定片52a,52bは、周囲領域44bにおいて一体化されたポリウレア層43、45の内部に埋設される。ポリウレア層43、45は耐熱性や耐寒性を備えているため、取付用金具50に対する加熱や冷却が繰り返されたとしても、取付用金具50は長期間に亘って折板屋根110Aに固定され続ける。
【0014】
<第1実施形態>
以下、建物100Aの折板屋根110Aに対して太陽光発電パネル70を取り付ける第1実施形態について説明する。
図1に示すように、第1実施形態では、清掃工程S1、プライマー塗布工程S2、防水層形成工程(第1層形成工程)S3、溶剤塗布工程(粘着層形成工程)S4、金具配置工程S5、金具固定工程(第2層形成工程)S6、及びパネル取り付け工程S7を順に行う。
【0015】
以下、各工程について説明する。
<清掃工程S1>
図2は、折板屋根110Aの清掃工程S1を説明する斜視図、
図3(a)はフックボルトキャップ115の斜視図、
図3(b)はフックボルトキャップ115の縦断面図、
図3(c)は充填材を充填したフックボルトキャップ115をフックボルト113の上端部に被せた状態を説明する断面図、
図3(d)はフックボルトキャップ115をフックボルト113の上端部に被せた状態を説明する斜視図である。
【0016】
図2に示す折板屋根110Aは、本発明に係る取付対象物の一種である。折板屋根110Aは、ガルバリウム鋼板(登録商標)やトタン板を波形形状に屈曲した屋根材111と、屋根材111を建物に取り付けるための桁材112とを有している。
屋根材111には、上方に向かって突出し、且つ前後方向に延びる突部111a(凸条、コルゲート部)が、左右方向に沿って複数並んだ状態で設けられている。
図3(c)にも示すように、各突部111aの左側面111bは正面から見て左斜め下方に延びており、右側面111cは正面から見て右斜め下方に延びている。従って、各突部111aは、正面から見ると、下方に向かってテーパー状に漸次拡幅された形状になっている。
本実施形態において、桁材112はC型鋼によって作製されており、屋根材111は桁材112に対してフックボルト113、及びナット114によって締結されている。
【0017】
図2に示すように、清掃工程S1では、屋根材111の表面に付着した汚れを除去する。汚れの除去は、例えば高圧の水WJをノズル11aから噴射する高圧洗浄機11を用いて行うことができる。高圧洗浄機11を用いる場合、ノズル11aから噴射された高圧の水WJを屋根材111の表面に付着した汚れDRに当てて汚れDRを屋根材111の表面から剥がし、水流で洗い流す。
なお、清掃工程S1は、屋根材111の表面に付着した汚れDRを除去できれば、他の方法を用いてもよい。例えば、洗浄用ブラシを用いて屋根材111の表面から汚れDRを剥がした後に、剥がした汚れDRを水で洗い流してもよい。
【0018】
清掃工程S1の終了後、屋根材111の表面から突出しているフックボルト113の上端部、及びナット114にフックボルトキャップ115を被せる。
図3(a)、(b)に示すように、フックボルトキャップ115は、大径部115aと小径部115bとを備えた二段の円筒形状をしており、小径部115bの内部空間と大径部115aの内部空間とは互いに連通している。また、小径部115bにおける大径部115aとは反対側の端部は閉塞されている。
フックボルトキャップ115をフックボルト113の上端部、及びナット114に被せるときには、フックボルトキャップ115の内側空所に予め充填材116が充填される。充填材116は、例えばシーリング材としても用いられるシリコン系の充填材116である。
図3(c)、(d)に示すように、フックボルトキャップ115がフックボルト113の先端部分、及びナット114に被せられると、充填材116はフックボルト113の先端部分、及びナット114の周囲を水密状態に封止し、水や埃のキャップ内部への浸入を抑制する。
【0019】
<プライマー塗布工程S2>
図4(a)はプライマー21’の塗布に使用するスプレー装置12を説明する斜視図、
図4(b)は折板屋根110Aのプライマー塗布工程S2を説明する斜視図である。
プライマー21’は、屋根材111の表面に塗布されることによってプライマー層21を形成し、第1のポリウレア層43の屋根材111への付着性を高める薬材である。プライマー21’としては、エポキシ系、ウレタン系、エポキシウレタン系等の各種のプライマーが使用できる。
プライマー21’は、屋根材111における第1のポリウレア層43の形成範囲に塗布する。本実施形態では、第1のポリウレア層43を屋根材111の表面の全体に亘って形成することから、プライマー21’を屋根材111の表面全体に亘って塗布する。プライマー21’の塗布により、屋根材111の表面全体に亘ってプライマー層21が形成される。
【0020】
プライマー21’の塗布は、例えば
図4(a)に示すスプレー装置12によって行うことができる。例示したスプレー装置12は、レバー12aの操作によって、貯液タンク12b内に貯留された液体状のプライマー21’を、耐圧ホース12cを通じて供給された圧縮空気と共にノズル12dから噴射するものである。
なお、プライマー21’の塗布は、スプレー装置12に限られない。例えば、プライマー21’を塗装用ローラによって塗布してもよいし、刷毛によって塗布してもよい。
【0021】
<防水層形成工程S3>
図5(a)はポリウレアの吹付装置30を説明する図、
図5(b)は折板屋根110Aの防水層形成工程S3を説明する図である。
ポリウレア樹脂は、ポリイソシアネート化合物(主剤)と活性水素を持つアミン化合物(硬化剤)とをスプレーガンで衝突混合させて化学反応させることにより生成される。
図5(a)に示した吹付装置30は、ポリイソシアネート化合物41とアミン化合物42を衝突混合させてミスト状にして対象物(プライマー層21を形成した屋根材111の表面)に吹き付けている。
【0022】
吹付装置30は、ポリイソシアネート化合物41を収容した第1タンク31、アミン化合物42を収容した第2タンク32、第1タンク31から化合物41を送り出す第1ポンプ33、第2タンク32から化合物42を送り出す第2ポンプ34、両化合物41,42に十分な圧力をかけて所定量を送り出す高圧定量ポンプ35、輸送される両化合物41,42を加熱するヒータ36、両化合物41,42の温度を保持するヒータ付ホース37、及び両化合物41,42を衝突混合させてミスト状態で射出するスプレーガン38を備えている。
また、吹付装置30は、高圧定量ポンプ35を制御して両化合物の混合割合を適正割合に調整し、且つヒータを制御して加熱温度等を可変させる反応制御装置等も備えている。
第1タンク31に収容されたポリイソシアネート化合物41、及び第2タンク32に収容されたアミン化合物42は対応するポンプ33,34により吸い上げられ、高圧定量ポンプ35によって所定の圧力に加圧された状態で送出される。両化合物は、ヒータ36により所定の温度に加熱された後にスプレーガン38に送られる。ヒータ付ホース37は、加熱された両化合物の温度をスプレーガン38に供給されるまで保持する。
【0023】
図5(b)に示すように、スプレーガン38は、両化合物41,42を衝突混合させると共に、ミスト状にして射出する。射出された両化合物41,42は化学反応によってポリウレア樹脂43’を生成する。ポリウレア樹脂43’は、プライマー層21が形成された屋根材111の表面において固化し、防水層として機能する第1のポリウレア層43(第1層)を形成する。
本実施形態では、第1のポリウレア層43を屋根材111の表面全体に形成する。第1のポリウレア層43の厚さは、例えば0.3mm乃至2mm程度である。第1のポリウレア層43の厚さの調整は、第1のポリウレア層43の吹き付け回数によって行うことができる。例えば、1回の吹き付け作業によって形成されるポリウレア層の厚さは0.3mm程度であるため、吹き付け作業を2回繰り返すことによって0.6mm程度の厚さのポリウレア層を形成でき、吹き付け作業を3回繰り返すことによって0.9mm程度の厚さのポリウレア層を形成できる。
【0024】
第1のポリウレア層43を構成する第1のポリウレア樹脂43’には特に制限はないが、光の反射率を向上させるための顔料を含有していることが好ましい。第1のポリウレア層43について光の反射率を向上させると、太陽熱に起因する折板屋根110A(屋根材111)の温度上昇を抑制でき、ひいては建物100Aの室内温度の上昇を抑制できる。
光の反射率を向上させるための顔料としては、例えばアルミニウム顔料が挙げられる。そして、アルミニウム顔料を含有したポリウレア樹脂43’としては、例えばライノライニング社製の製品名「Rhino ECO-COAT 11-85」が使用できる。なお、第1のポリウレア樹脂43’が含有する顔料は、光の反射率を向上させるものであればアルミニウム顔料に限定されない。例えば、無機系の白色顔料であってもよい。
【0025】
<溶剤塗布工程S4>
図6(a)は折板屋根110Aの溶剤塗布工程S4を説明する断面図、
図6(b)は溶剤44’の塗布範囲を説明する斜視図である。
溶剤44’は、硬化後の第1のポリウレア層43の表面に塗布されることにより、第1のポリウレア層43の表面を溶解して粘着性を付与する液体状の薬材である。
【0026】
図6(a)に示すように、溶剤44’は、塗装用ローラ13等によって第1のポリウレア層43の表面に対して局所的に塗布される。溶剤44’の塗布は、例えば溶剤44’をスポンジ状のローラ本体13aに含浸させ、ローラ本体13aを第1のポリウレア層43の表面に押し当てて転動させることによって行われる。
なお、溶剤44’の塗布は、塗装用ローラ13によらなくてもよい。例えば、溶剤44’を刷毛によって塗布してもよいし、スプレー装置によって塗布してもよい。
図6(b)に示すように、本実施形態において、溶剤44’は、後述する取付用金具50の各固定片52a,52b(
図7(a)を参照)が配置(載置、定置、静置)される配置領域44aと、配置領域44aの外周に隣接する周囲領域44bとに塗布される。周囲領域44bは配置領域44aを囲み、且つ後述する第2のポリウレア層45(
図8(b)を参照)と結合する領域である。周囲領域44bの面積は、第2のポリウレア層45との間で十分な結合強度(取付用金具50を固定し続けるために十分な結合強度)が得られる大きさに定められる。
【0027】
本実施形態において、配置領域44a、及び周囲領域44bは、屋根材111の突部111aの左右両側面111b、111cに定められている。これらの配置領域44a、及び周囲領域44bは、溶剤44’が塗布されることによって粘着性を備える。言い換えれば、各領域は溶剤44’の塗布によって粘着性領域44になる。
各領域44a、44bの粘着性は時間の経過に伴って弱まる。そして、周囲領域44bの粘着性が弱くなりすぎると、第2のポリウレア層45との間の結合性が損なわれる。例えば、溶剤44’の塗布から40分間を超えてしまうと、周囲領域44bと第2のポリウレア層45との間の結合性が損なわれる。
便宜上、以下の説明では、周囲領域44bが第2のポリウレア層45との結合性が損なわれない程度の粘着性を備えている時間(溶剤44’の塗布からの経過時間)のことを作業可能時間という。
【0028】
<溶剤44’について>
溶剤44’は、第1のポリウレア層43の表面を溶解し、作業可能時間に亘って必要な粘着性を付与する薬材であれば特に制限はないが、例えばAGCポリマー建材株式会社製の製品名「P-60プライマー」を使用することができる。
P-60プライマーはウレタン系プライマーとして市販されているが、第1のポリウレア層43の表面を溶解し、40分間程度の時間に亘って粘着性を付与することが確認されているので、溶剤44’として使用可能である。
【0029】
P-60プライマーの組成を表1に示す。表1に示すように、P-60プライマーは、主成分としてトルエン(含有量43%)、及び酢酸エチル(含有量20乃至30%)を含有している。
また、P-60プライマーは、その他の成分として、キシレン(1%未満)、エチルベンゼン(1%未満)、1,2,4-トリメチルベンゼン(6.3%)、1,3,5-トリメチルベンゼン(1.5%)、酢酸n-ブチル(1%未満)、低沸点芳香族ソルベントナフサ(1-10%)、クメン(1%未満)を含有している。
【0030】
【0031】
<金具配置工程S5>
図7(a)は取付用金具50の斜視図、
図7(b)は取付用金具50を折板屋根110Aに配置した状態を説明する斜視図である。
最初に取付用金具50について説明する。
図7(a)に示すように、取付用金具50は、上側半部がフレーム60(
図9を参照)を保持するフレーム保持部51であり、下側半部が屋根材111に固定される固定部52である。取付用金具50は、例えば鉄鋼やアルミニウムによって作製される。
【0032】
フレーム保持部51は、前後方向、及び上下方向に延び、且つ前後方向に長い長方形状の金属板によって作製された左側片51aと、左側片51aと同様の金属板によって作製され、且つ左側片51aの右側に左側片51aと間隔を空けて平行に配置された右側片51bと、前後方向、及び左右方向に延び、且つ左側片51aの内側表面と右側片51bの内側表面とを左側片51aと右側片51bの下部で連結する連結片51cと、を備えている。
左側片51aの内側表面における高さ方向の中間位置には前後方向に延びる左突条51dが設けられ、右側片51bの内側表面における高さ方向の中間位置には前後方向に延びる右突条51eが設けられている。左突条51dは角柱形状のフレーム60の左側面61に形成された左側溝61aに嵌合し、右突条51eはフレーム60の右側面62に形成された右側溝62aに嵌合する(
図9を参照)。
左側片51aの左突条51dよりも上部には、前後方向に沿って間隔を空けて一対の左長孔51fが形成され、右側片51bの右突条51eよりも上部には、前後方向に沿って間隔を空けて一対の右長孔51gが形成されている。左長孔51f、及び右長孔51gは、上下方向に沿って長い長円形状であり、フレーム60を取付用金具50に固定するための固定ネジ64(
図9を参照)が挿通される。
【0033】
固定部52は、左側片51aの下端から左斜め下方、及び前後方向に延び、且つ前後方向に長い長方形状の金属板によって作製された左固定片52aと、右側片51bの下端から右斜め下方、及び前後方向に延び、且つ前後方向に長い長方形状の金属板によって作製された右固定片52bと、を備えている。
本実施形態において、左固定片52aの傾斜角度は、屋根材111の突部111aの左側面111bの傾斜角度に整合されており、右固定片52bの傾斜角度は、突部111aの右側面111cの傾斜角度に整合されている。すなわち、各固定片52a,52bは、突部111a(取付対象物)の各側面111b、111cに沿って延びる板状である。
【0034】
図7(b)に示すように、金具配置工程S5では、取付用金具50の固定部52(左固定片52a、右固定片52b)を配置領域44aに配置する。固定部52の配置は、配置領域44aが粘着性を備えている状態において行われる。言い換えれば、固定部52の配置は、上述した作業可能時間内に行われる。
前述したように、各固定片52a,52bの傾斜角度が突部111aの左右両側面111b、111cの傾斜角度に整合されているため、固定部52を配置すると、各固定片52a,52bの内表面は配置領域44aに対して全面で接触する。
従って、粘着性を有する配置領域44aに固定部52が配置されることにより、取付用金具50は屋根材111に仮固定される。
【0035】
<金具固定工程S6>
図8(a)は折板屋根110Aの金具固定工程S6を説明する図、
図8(b)は取付用金具50を折板屋根110Aに固定した状態を説明する斜視図である。
図8(a)に示すように、金具固定工程S6では、取付用金具50のフレーム保持部51をマスキングテープMT等で覆い、その後、吹付装置30が備えるスプレーガン38から第2のポリウレア樹脂45’を周囲領域44b、及び各固定片52a,52bの表面に対して吹き付ける。
第2のポリウレア樹脂45’の吹き付けも、上述した作業可能時間内に行われる。言い換えれば、第2のポリウレア樹脂45’は、周囲領域44bが粘着性を有している状態で吹き付けられる。
【0036】
図8(a)、(b)に示すように、第2のポリウレア樹脂45’が吹き付けられることにより、周囲領域44b、及び各固定片52a,52bの表面を被覆する第2のポリウレア層45(第2層)が形成される。
上述したように、周囲領域44bは第2のポリウレア樹脂45’の吹き付け時において粘着性を有しているため、第2のポリウレア層45は周囲領域44bにおいて第1のポリウレア層43と強固に結合され、一体化される。
本実施形態において、第2のポリウレア層45の厚さは、例えば0.3mm乃至2mm程度である。第2のポリウレア層45の厚さも、第1のポリウレア層43と同様に、吹き付け回数によって調整することができる。
取付用金具50の各固定片52a,52bは、第2のポリウレア層45と第1のポリウレア層43とが結合することにより、一体化されたポリウレア層43,45の内部に埋設された状態で固定される。各ポリウレア層43,45は耐熱性や耐寒性を備えているため、取付用金具50は長期間に亘って折板屋根110Aに固定され続ける。
【0037】
第2のポリウレア層45を構成する第2のポリウレア樹脂45’は特に制限はない。第2のポリウレア樹脂45’としては、例えばライノライニング社製の製品名「Rhino eXtreme HP 11-50」を使用できる。
なお、第2のポリウレア樹脂45’の引張強度は、第1のポリウレア樹脂43’の引張強度よりも大きいことが好ましい。これは、折板屋根110Aに設置された太陽光発電パネル70が風で煽られて取付用金具50に対して引き抜き方向の外力が作用しても、第2のポリウレア樹脂45’の引張強度を第1のポリウレア樹脂43’の引張強度よりも大きくしておくことにより、第2のポリウレア層45が破損してしまう不都合が抑制されるためである。
【0038】
<パネル取り付け工程S7>
図9は取付用金具50を介してフレーム60を折板屋根110Aに取り付けた状態を説明する斜視図、
図10は太陽光発電パネル70を折板屋根110Aに取り付けた状態を説明する斜視図である。
図9に示すように、パネル取り付け工程S7では、取付用金具50を介してフレーム60を折板屋根110Aに取り付ける。例示したフレーム60は、角柱形状であって、左側面61には左側溝61aが設けられており、右側面62には右側溝62aが設けられている。また、フレーム60の上面63にはT溝63aが設けられている。前述したように、左側溝61aには取付用金具50の左突条51dが嵌合し、右側溝62aには取付用金具50の右突条51eが嵌合する。そして、フレーム60は、例えばタッピングネジで構成された固定ネジ64により、取付用金具50に固定される。
次に、
図10に示すように、太陽光発電パネル70を取り付ける。太陽光発電パネル70は、フレーム60を介して取り付けられる。例えば、フレーム60の上面63に設けたT溝63aにパネル用取付金具(不図示)の一部分を挿入し、パネル用取付金具を介して太陽光発電パネル70を取り付ける。
【0039】
<第1実施形態のまとめ>
このように、第1実施形態の取付用金具50の固定方法では、第1のポリウレア層43の配置領域44a、及び周囲領域44bに溶剤44’を塗布して粘着性を付与している。そして、各領域44a、44bが粘着性を有している状態で、配置領域44aには取付用金具50の各固定片52a,52bを配置(載置、定置、静置)する。次に、周囲領域44b、及び各固定片52a,52bの表面に第2のポリウレア樹脂45’を吹き付けて被覆し、周囲領域44bにおいて第1のポリウレア層43と結合した第2のポリウレア層45を形成している。
第2のポリウレア樹脂45’は周囲領域44bが粘着性を有している状態で吹き付けられるため、第2のポリウレア層45は周囲領域44bにおいて第1のポリウレア層43と強固に結合する。その結果、各固定片52a,52bは、結合後のポリウレア層43,45の内部に埋設された状態になる。ポリウレア層43,45は耐熱性や耐寒性を備えているため、取付用金具50は長期間に亘って折板屋根110Aに固定され続ける。
【0040】
<第2実施形態>
次に、建物100Bの陸屋根110B(取付対象物)に本発明を適用した第2実施形態の取付用金具80の固定方法について説明する。第2実施形態でも、
図1で説明したように、清掃工程S1、プライマー塗布工程S2、防水層形成工程(第1層形成工程)S3、溶剤塗布工程(粘着層形成工程)S4、金具配置工程S5、金具固定工程(第2層形成工程)S6、及びパネル取り付け工程S7を順に行う。
以下、各工程について説明するが、第1実施形態の固定方法と同じ内容については、要点を説明することにする。
【0041】
<清掃工程S1>
図11は陸屋根110Bの清掃工程S1を説明する斜視図である。
図11に示すように、陸屋根110Bの清掃も高圧洗浄機11を用いて行うことができる。
例えば、高圧洗浄機11のノズル11aから高圧の水WJを噴射させて陸屋根110Bの表面に付着した汚れDRに当て、汚れDRを陸屋根110Bの表面から剥がす。
なお、陸屋根110Bの清掃に関しても、表面に付着した汚れDRを除去できれば、他の方法を用いてもよい。例えば、デッキブラシを用いて陸屋根110Bの表面から汚れDRを剥がした後に、剥がした汚れDRを水で流してもよい。
【0042】
<プライマー塗布工程S2>
図12は陸屋根110Bのプライマー塗布工程S2を説明する斜視図である。
プライマー21’は、陸屋根110Bの表面と第1のポリウレア層43(
図13を参照)との間に介在して、第1のポリウレア層43の陸屋根110Bへの付着性を高める液体状の薬材である。
本実施形態では、プライマー21’を陸屋根110Bの表面の全体に亘って塗布している。陸屋根110Bの表面は平坦であることから、プライマー21’の塗布には塗装用ローラ14が好適に用いられる。例示した塗装用ローラ14は、柄14bの先端にスポンジ状のローラ本体14aを備えている。この場合、プライマー21’をローラ本体14aに含浸させ、ローラ本体14aを陸屋根110Bの表面に押し当てて転動させることにより、プライマー21’が陸屋根110Bの表面に塗布される。塗布されたプライマー21’は、溶剤が乾燥する等によって陸屋根110Bの表面にプライマー層21を形成する。
なお、プライマー21’の塗布は、塗装用ローラ14以外の道具を使用して行ってもよい。例えば、プライマー21’をスプレー装置によって塗布してもよいし、刷毛によって塗布してもよい。
【0043】
<防水層形成工程S3>
図13は陸屋根110Bの防水層形成工程S3を説明する斜視図である。防水層形成工程S3では、
図5(a)で説明した吹付装置30を使用する。便宜上、
図13には、吹付装置30が備えるスプレーガン38を記載している。
図13に示すように、防水層形成工程S3では、スプレーガン38から第1のポリウレア樹脂43’を射出し、プライマー層21が形成された陸屋根110Bの表面全体を被覆する。これにより、陸屋根110Bの表面全体には、プライマー層21に重ねて、防水層として機能する第1のポリウレア層43(第1層)が形成される。
第1のポリウレア樹脂43’に関し、特に制限はないが、第1実施形態と同様に光の反射率を向上させるための顔料を含有していることが好ましい。
【0044】
<溶剤塗布工程S4>
図14は陸屋根110Bの溶剤塗布工程S4を説明する斜視図である。
図14に示すように、溶剤塗布工程S4では、塗装用ローラ15を用いて第1のポリウレア層43の表面に溶剤44’を塗布する。例示した塗装用ローラ15も、柄15bの先端にスポンジ状のローラ本体15aを備えている。この場合、溶剤44’をローラ本体15aに含浸させ、ローラ本体15aを第1のポリウレア層43の表面に押し当てて転動させることにより、溶剤44’が第1のポリウレア層43の表面に塗布される。
図14において、溶剤44’は長方形状の領域に塗布されているが、これは、陸屋根110Bに使用する取付用金具80の各固定片81b、81cが、平面視で略長方形状であるからである(
図15(a)を参照)。
【0045】
すなわち、溶剤44’は、第1のポリウレア層43の表面であって、各固定片81b、81cが配置される配置領域44a、及び配置領域44aの外周に隣接する周囲領域44bによって構成される四角形状の領域に塗布される。第1のポリウレア層43の溶剤44’が塗布された各領域44a,44bは、作業可能時間に亘って粘着性を備えた粘着性領域44になる。
なお、溶剤44’の塗布は、塗装用ローラ15以外の道具を使用して行ってもよい。例えば、溶剤44’をスプレー装置によって塗布してもよいし、刷毛によって塗布してもよい。
【0046】
<金具配置工程S5>
図15(a)は取付用金具80の斜視図、
図15(b)は取付用金具80を陸屋根110Bに配置した状態を説明する斜視図である。金具配置工程S5の説明に先立ち取付用金具80について説明する。
図15(a)に示すように、取付用金具80は、陸屋根110Bに固定される固定部81と、太陽光発電パネル70を支持し、且つ固定部81に止着される支持部82とを備えている。取付用金具80は、例えば鉄鋼やアルミニウムによって作製される。
【0047】
固定部81は平面視で長方形状の金属板によって作製されており、左右方向に沿った中間の位置には前後方向に沿って延びる縦材保持部81aを設けている。
縦材保持部81aは、支持部82が備える縦材を保持する部分であり、上向きに突出し、且つ前後方向に延びる略矩形状の突部111aによって構成されている。従って、縦材保持部81aは、上方に向けて立ち上げられた左右一対の側壁と、両側壁の上端同士を連結する天板とを備えている。
また、固定部81における縦材保持部81aよりも左側の部分は左固定片81bであり、縦材保持部81aよりも右側の部分は右固定片81cである。各固定片81b,81cは平面視で四角形状の板であり、配置領域44aに配置される。本実施形態において、左固定片81bの左縁部、及び右固定片81cの右縁部は、それぞれ斜め上方に向かって浅い角度で屈曲されている。
【0048】
支持部82は、陸屋根110Bの表面に設置される縦材82aと、太陽光発電パネル70が取り付けられるレール部材82bと、レール部材82bの後端と縦材82aの後端部との間に介在し、レール部材82bの後端を持ち上げてレール部材82bを傾斜させる柱材82cとを備えている。
縦材82aは、アルミニウムや鉄鋼製のC型チャンネルであり、背面部を陸屋根110B側(下側)に向けて第1のポリウレア層43の上に載置される。縦材82aの長さは縦材保持部81aの前後方向の長さよりも長い。このため、縦材82aを縦材保持部81aに保持させた状態では、縦材82aの前側部分が縦材保持部81aの前端よりも前方に突出し、縦材82aの後側部分が縦材保持部81aの後端よりも後方に突出する。
【0049】
レール部材82bは、前端部が縦材82aの前端部にネジ止め固定され、後端部が柱材82cによって縦材82aの上方に固定されている。すなわち、レール部材82bは、縦材82aと柱材82cとによって前方に下り傾斜した状態に取り付けられている。また、レール部材82bの上面82dにはT溝82eが設けられている。
柱材82cは、レール部材82bの後端部の高さを調整するための棒材であり、レール部材82bの後端部と縦材82aの後端部とを連結している。柱材82cの下端部、及び上端部は、それぞれ縦材82aの後端部、及びレール部材82bの後端部にネジ止め固定されている。
【0050】
図15(b)に示すように、金具配置工程S5では、取付用金具80の固定部81(左固定片81b、右固定片81c)を配置領域44aに配置する。固定部81の配置は、配置領域44aが粘着性を備えている状態で行われる。言い換えれば、固定部81の配置は、上述した作業可能時間内に行われる。従って、取付用金具80は、配置領域44aの粘着性によって仮固定される。
【0051】
<金具固定工程S6>
図16(a)は陸屋根110Bの金具固定工程S6を説明する図、
図16(b)は取付用金具80の各固定片81b,81cを陸屋根110Bに固定した状態を説明する断面図である。
図16(a)に示すように、金具固定工程S6では、支持部82、及び固定部81の縦材保持部81aをビニール袋PBやマスキングテープ等によって養生し、その後、吹付装置30が備えるスプレーガン38から第2のポリウレア樹脂45’を周囲領域44b、及び各固定片81b,81cの表面に吹き付ける。
第2のポリウレア樹脂45’の吹き付けも、上述した作業可能時間内に行われる。言い換えれば、第2のポリウレア樹脂45’は、周囲領域44bが粘着性を有している状態で吹き付けられる。
【0052】
図16(a)、(b)に示すように、第2のポリウレア樹脂45’が吹き付けられることにより、周囲領域44b、及び各固定片81b,81cの表面を被覆する第2のポリウレア層45(第2層)が形成される。
上述したように、周囲領域44bは第2のポリウレア樹脂45’の吹き付け時において粘着性を有しているため、第2のポリウレア層45は周囲領域44bにおいて第1のポリウレア層43と強固に結合され、一体化される。取付用金具80の各固定片81b,81cは、第2のポリウレア層45と第1のポリウレア層43とが結合して一体化することにより、一体化されたポリウレア層43,45の内部に埋設された状態で固定される。
ポリウレア層43、45は耐熱性や耐寒性を備えているため、取付用金具80は長期間に亘って屋根に固定され続ける。
第2のポリウレア層45を構成する第2のポリウレア樹脂45’は特に制限はないが、第1実施形態において説明したように、第2のポリウレア樹脂45’の引張強度は、第1のポリウレア樹脂43’の引張強度よりも大きいことが好ましい。
【0053】
<パネル取り付け工程S7>
図17は太陽光発電パネル70を陸屋根110Bに取り付けた状態を説明する斜視図である。
図17に示すように、パネル取り付け工程S7では、陸屋根110Bに固定された取付用金具80に対して太陽光発電パネル70を取り付ける。例えば、レール部材82bの上面に設けたT溝82eにパネル用取付金具(不図示)の一部分を挿入し、パネル用取付金具を介して太陽光発電パネル70を取り付ける。
【0054】
<第2実施形態のまとめ>
このように、第2実施形態の取付用金具80の固定方法でも、第2のポリウレア層45は周囲領域44bにおいて第1のポリウレア層43と強固に結合する。その結果、各固定片81b,81cは、結合後のポリウレア層43,45の内部に埋設された状態になる。
ポリウレア層43,45は耐熱性や耐寒性を備えているため、取付用金具80は長期間に亘って屋根に固定され続ける。
【0055】
<固定片に開口部を設けた変形例について>
前述した各実施形態において、各固定片52a,52b,81b,81cは開口部が設けられていない金属板片によって構成されていたが、この構成に限定されない。各固定片52a,52b,81b,81cに開口部を設けてもよい。
図18(a)は第1変形例の取付用金具50Aを示す斜視図、
図18(b)は取付用金具50Aの各固定片52a,52bを折板屋根110Aに固定した状態を説明する断面図、
図19(a)は第2変形例の取付用金具80Aを示す斜視図、
図19(b)は取付用金具80Aの各固定片81b,81cを陸屋根110Bに固定した状態を説明する断面図である。
【0056】
図18(a)に示す第1変形例の取付用金具50Aでは、左固定片52a、及び右固定片52cのそれぞれに、円形状の開口部53を複数設けている。なお、変形例の取付用金具50Aにおける他の構成は、第1実施形態の取付用金具50と同じであるため、同じ符号を付して説明は省略する。
例示した取付用金具50Aでは、各固定片52a,52bに5つの開口部53を分散させて設けているが、開口部53の形状や個数はこの例に限定されない。
第1変形例の取付用金具50Aでは、金具配置工程S5において各固定片52a,52bを配置領域44aに配置すると、配置領域44aにおける各開口部53に対応する部分は、各開口部53を通じて露出する。従って、
図18(b)に示すように、金具固定工程S6を行うと、第2のポリウレア層45は各開口部53を通じて第1のポリウレア層43と強固に結合される。
従って、第1変形例の取付用金具50Aは、第1実施形態の取付用金具50よりも、折板屋根110Aに対して強固に固定することができる。
【0057】
図19(a)に示す第2変形例の取付用金具80Aでも、第1変形例の取付用金具50Aと同様に、左固定片81b、及び右固定片81cのそれぞれに、円形状の開口部83を複数設けている。なお、第2変形例の取付用金具80Aにおける他の構成は、第2実施形態の取付用金具80と同じであるため、同じ符号を付して説明は省略する。
例示した取付用金具80Aでは、各固定片81b,81cの隅角部に合計4つの開口部83を設けているが、開口部83の形状や個数はこの例に限定されない。
第2変形例の取付用金具80Aでも、金具配置工程S5において各固定片81b,81cを配置領域44aに配置すると、配置領域44aにおける各開口部83に対応する部分が露出する。従って、
図19(b)に示すように、金具固定工程S6を行うと、第2のポリウレア層45は各開口部83を通じて第1のポリウレア層43と強固に結合される。
従って、第2変形例の取付用金具80Aは、第2実施形態の取付用金具80よりも、折板屋根110Aに対して強固に固定することができる。
【0058】
<その他の変形例について>
取付対象物に関し、第1実施形態では折板屋根110Aを例示し、第2実施形態では陸屋根110Bを例示したが、取付対象物は折板屋根110Aや陸屋根110Bに限定されない。例えば、建物の壁面であってもよい。
取付用金具80によって取り付けられる機器に関し、太陽光発電パネル70を例示したが、機器は太陽光発電パネル70に限定されない。例えば、太陽からの熱を集めて水等の熱媒体を加熱する太陽熱集熱器でもよいし、空気調和機(エアコン)の室外機であってもよい。
各固定片52a,52b,81b,81cは、各屋根110A、110Bの表面に沿って延びる板状であったが、当該形状に限定されない。第1のポリウレア層43と第2のポリウレア層45の間に埋設され得る形状であればよい。例えば、角柱形状であってもよいし、丸棒形状であってもよい。
【0059】
[本発明の実施態様例と作用、効果のまとめ]
<第一の実施態様>
本態様は、取付対象物(折板屋根110A、陸屋根110B)への機器(太陽光発電パネル70等)の取り付けに使用され、且つ取付対象物に固定される固定片52a,52b,81b,81cを有した取付用金具50、50A、80、80Aを、取付対象物に固定する取付用金具の固定方法であって、取付対象物の表面に第1のポリウレア樹脂43’を吹き付けて第1層(第1のポリウレア層43)を形成する工程(防水層形成工程S3)と、第1のポリウレア樹脂43’の溶剤44’を、第1層の表面における固定片の配置領域44a、及び配置領域44aの外周に隣接した周囲領域44bに塗布して粘着性を付与する工程(溶剤塗布工程S4)と、取付用金具の固定片を配置領域44aに配置する工程(金具配置工程S5)と、周囲領域44b、及び固定片の表面に第2のポリウレア樹脂45’を吹き付けて被覆し、周囲領域44bにおいて第1層と結合した第2層(第2のポリウレア層45)を形成する工程(金具固定工程S6)と、を備え、固定片を配置領域44aに配置する工程、及び第2層を形成する工程は、配置領域44a、及び周囲領域44bが粘着性を有している状態で行うことを特徴とする。
【0060】
本態様に係る取付用金具の固定方法によれば、固定片52a,52b,81b,81cを配置領域44aに配置する工程、及び第2層を形成する工程を、配置領域44a、及び周囲領域44bが粘着性を有している状態で行うため、固定片52a,52b,81b,81cを被覆した第2層は、周囲領域44bにおいて第1層と強固に結合して一体化される。第1層、及び第2層はは耐熱性や耐寒性を備えているため、取付用金具を長期間に亘って取付対象物に固定し続けることができる。
【0061】
<第二の実施態様>
本態様において、溶剤44’は、主成分としてトルエン、及び酢酸エチルを含有していることを特徴とする。
本態様に係る取付用金具80の固定方法によれば、溶剤44’が主成分としてトルエン、及び酢酸エチルを含有しているので、第1層が硬化した後であっても、第1層の配置領域44a、及び周囲領域44bに対して必要な粘着性を付与できる。
【0062】
<第三の実施態様>
本態様において、取付対象物は建物100A,100Bの屋根110A、110Bであり、第1のポリウレア樹脂43’は、光の反射率を向上させるための顔料を含有していることを特徴とする。
本態様に係る取付用金具の固定方法によれば、第1のポリウレア樹脂43’が形成する第1層について光の反射率が向上するため、屋根110A、110Bの温度上昇、ひいては建物100A,100Bの室内温度の上昇を抑制できる。
【0063】
<第四の実施態様>
本態様において、顔料は、アルミニウム顔料であることを特徴とする。
本態様に係る取付用金具の固定方法によれば、アルミニウム顔料によって第1層について光の反射率が向上するため、屋根110A、110Bの温度上昇、ひいては建物100A,100Bの室内温度の上昇を抑制できる。
【0064】
<第五の実施態様>
本態様において、第2のポリウレア樹脂45’の引張強度は、第1のポリウレア樹脂43’の引張強度よりも大きいことを特徴とする。
本態様に係る取付用金具の固定方法によれば、第2層が破損してしまう不都合を抑制できる。
【0065】
<第六の実施態様>
本態様において、固定片は、取付対象物の表面に沿って延びる板状であって、且つ開口部53、83が設けられており、第2層は、開口部53、83を通じて第1層と結合することを特徴とする。
本態様に係る取付用金具の固定方法によれば、第2層は、開口部53、83を通じて第1層と結合するので、取付用金具50A,80Aを強固に固定できる。
【符号の説明】
【0066】
11…高圧洗浄機,11a…ノズル,12…スプレー装置,12a…レバー,12b…貯液タンク,12c…耐圧ホース,12d…ノズル,13…塗装用ローラ,13a…ローラ本体,14…塗装用ローラ,14a…ローラ本体,14b…柄,15…塗装用ローラ,15a…ローラ本体,15b…柄,21’…液体状のプライマー,21…プライマー層,30…ポリウレアの吹付装置,31…第1タンク,32…第2タンク,33…第1ポンプ,34…第2ポンプ,35…高圧定量ポンプ,36…ヒータ,37…ヒータ付ホース,38…スプレーガン,41…ポリイソシアネート化合物,42…アミン化合物,43’…第1のポリウレア樹脂,43…第1のポリウレア層,44’…溶剤,44…粘着性領域,44a…配置領域,44b…周囲領域,45’…第2のポリウレア樹脂,45…第2のポリウレア層,50、50A…折板屋根用の取付用金具,51…フレーム保持部,51a…左側片,51b…右側片,51c…連結片,51d…左突条,51e…右突条,51f…左長孔,51g…右長孔,52…固定部,52a…左固定片,52b…右固定片,53…開口部,60…フレーム,61…フレームの左側面,61a…左側溝,62…フレームの右側面,62a…右側溝,63…フレームの上面,63a…T溝,64…固定ネジ,70…太陽光発電パネル,80、80A…陸屋根用の取付用金具,81…固定部,81a…縦材保持部,81b…左固定片,81c…右固定片,82…支持部,82a…縦材,82b…レール部材,82c…柱材,82d…レール部材の上面,82e…T溝,83…開口部,100A…建物,110A…折板屋根,111…屋根材,111a…突部,111b…突部の左側面,111c…突部の右側面,112…桁材,113…フックボルト,114…ナット,115…フックボルトキャップ,115a…フックボルトキャップの大径部,115b…フックボルトキャップの小径部,116…充填材,100B…建物,110B…陸屋根,WJ…高圧の水,DR…汚れ,MT…マスキングテープ,PB…ビニール袋,S1…清掃工程,S2…プライマー塗布工程,S3…防水層形成工程,S4…溶剤塗布工程,S5…金具配置工程,S6…金具固定工程,S7…パネル取り付け工程