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特開2024-158003冷凍車両システム及び冷凍車両のブレーキ負圧制御装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024158003
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】冷凍車両システム及び冷凍車両のブレーキ負圧制御装置
(51)【国際特許分類】
   B60T 17/00 20060101AFI20241031BHJP
   B60T 13/52 20060101ALI20241031BHJP
   B60T 17/18 20060101ALI20241031BHJP
【FI】
B60T17/00 C
B60T13/52
B60T17/18
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023072760
(22)【出願日】2023-04-26
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 令和5年2月8日~4月21日 トヨタ自動車株式会社が山口賢二及び藤堂哲が発明した冷凍車両システム及び冷凍車両のブレーキ負圧制御装置が実装された車両をトヨタモビリティサービス株式会社に卸した。
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山口 賢二
(72)【発明者】
【氏名】藤堂 哲
【テーマコード(参考)】
3D048
3D049
【Fターム(参考)】
3D048AA03
3D048BB06
3D048BB08
3D048BB23
3D048CC37
3D048HH11
3D048KK09
3D048QQ07
3D048RR06
3D049AA03
3D049BB04
3D049BB06
3D049CC02
3D049HH08
3D049HH42
3D049HH47
3D049HH52
3D049JJ03
3D049KK09
3D049QQ04
3D049RR04
(57)【要約】
【課題】ブレーキブースタ内のブレーキ負圧の低下を抑制し、かつブレーキブースタ内のブレーキ負圧を回復させることができる冷凍車両及び冷凍車両のブレーキ負圧制御装置を得る。
【解決手段】冷凍車両システム10は、エンジン負圧を利用してブレーキ操作力を低減させる真空式のブレーキブースタ43と、車両12の荷室14Aに設けられた冷凍機20と、ブレーキブースタ43内のブレーキ負圧が所定の閾値以下の場合に、冷凍機20を停止させる制御部30と、を含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジン負圧を利用してブレーキ操作力を低減させる真空式のブレーキブースタと、
車両の荷室に設けられた冷凍機と、
前記ブレーキブースタ内のブレーキ負圧が所定の閾値以下の場合に、前記冷凍機を停止させる制御部と、
を含む冷凍車両システム。
【請求項2】
前記冷凍機が、冷凍運転時に開状態とされる冷凍バルブと、除霜運転時に開状態とされる除霜バルブとを備え、
前記制御部は、前記ブレーキ負圧が前記所定の閾値以下の場合に、前記冷凍機を停止させ、かつ前記冷凍バルブ及び前記除霜バルブを開状態とする請求項1に記載の冷凍車両システム。
【請求項3】
大気圧よりも低圧である負圧の気体を蓄積するバキュームタンクを備え、
前記制御部は、前記ブレーキ負圧が前記所定の閾値以下の場合に、前記バキュームタンク内の前記負圧を利用して前記ブレーキブースタを作動させる請求項1に記載の冷凍車両システム。
【請求項4】
前記ブレーキ負圧が前記所定の閾値以下の場合に、前記ブレーキ操作力が平時よりも必要であることを報知する報知部を備える請求項1に記載の冷凍車両システム。
【請求項5】
前記報知部は、ブレーキ操作がされた際に予め定められた一定時間前記ブレーキ負圧が前記所定の閾値以下の場合に報知する請求項4に記載の冷凍車両システム。
【請求項6】
前記制御部は、ブレーキ操作がされた際に前記ブレーキ負圧が所定の閾値以下の場合に、前記冷凍機を停止させる請求項1に記載の冷凍車両システム。
【請求項7】
前記制御部は、前記ブレーキ負圧が所定の閾値よりも大きい場合に、所定時間経過後に前記冷凍機を再稼動させる請求項1に記載の冷凍車両システム。
【請求項8】
前記制御部は、ブレーキ操作がされた際に前記ブレーキ負圧が所定の閾値以下の場合に、前記冷凍機を停止させ、前記ブレーキ操作が解除された際に前記冷凍機を再稼働させる請求項1に記載の冷凍車両システム。
【請求項9】
エンジン負圧を利用してブレーキ操作力を助勢するブレーキブースタを搭載し、荷室に冷凍機が設けられた冷凍車両において、前記ブレーキブースタ内のブレーキ負圧が所定の閾値以下の場合に、前記冷凍機を停止させる冷凍車両のブレーキ負圧制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷凍車両システム及び冷凍車両のブレーキ負圧制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、エンジンの吸気通路の負圧を供給することにより、運転者のブレーキ操作の操作力を助勢するブレーキブースタが搭載された車両が開示されている。一方、ブレーキブースタが搭載された車両に冷凍機が搭載された冷凍車両も知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-110505号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような冷凍車両においては、冷凍機を作動させる際に、エンジンに冷凍機用の駆動コンプレッサの負荷が加わりエンジン負圧の発生量が少なくなってしまう場合がある。エンジン負圧の発生量が少なくなると、エンジンからブレーキブースタに供給される負圧量が低減してしまい、運転者のブレーキ操作に必要な操作力が冷凍機の作動していない状態と比較して増加してしまう場合がある。
【0005】
本発明は上記事実を考慮し、ブレーキブースタ内のブレーキ負圧の低下を抑制し、かつブレーキブースタ内のブレーキ負圧を回復させることができる冷凍車両及び冷凍車両のブレーキ負圧制御装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の本発明に係る冷凍車両システムは、エンジン負圧を利用してブレーキ操作力を低減させる真空式のブレーキブースタと、車両の荷室に設けられた冷凍機と、前記ブレーキブースタ内のブレーキ負圧が所定の閾値以下の場合に、前記冷凍機を停止させる制御部と、を含む。
【0007】
請求項1に記載の本発明に係る冷凍車両システムでは、制御部が、エンジン負圧を利用してブレーキ操作力を低減させる真空式のブレーキブースタ内のブレーキ負圧が所定の閾値以下の場合に、車両の荷室に設けられた冷凍機を停止させている。そのため、冷凍機が停止することにより、冷凍機用の駆動コンプレッサによるエンジンへの負荷を低減することができるので、エンジン負圧の発生量の減少を抑止することができる。これにより、エンジンからブレーキブースタに供給される負圧量の低下を防止することができるので、ブレーキブースタ内のブレーキ負圧の低下を抑制することができる。また、冷凍機が停止することで、エンジンへの負荷が低減されるので、エンジン負圧を回復させることができる。
【0008】
請求項2に記載の本発明に係る冷凍車両システムは、請求項1に記載の構成において、前記冷凍機が、冷凍運転時に開状態とされる冷凍バルブと、除霜運転時に開状態とされる除霜バルブとを備え、前記制御部は、前記ブレーキ負圧が前記所定の閾値以下の場合に、前記冷凍機を停止させ、かつ前記冷凍バルブ及び前記除霜バルブを開状態とする。
【0009】
ブレーキ負圧が所定の閾値以下の場合、冷凍機の停止及び再稼働を短時間で繰り返すと、冷凍サイクル内のコンプレッサの出口部と入口部との冷媒圧力差が高い状態でコンプレッサが稼動することとなり、コンプレッサに高負荷がかかり耐久性が低下してしまう虞がある。請求項2に記載の本発明に係る冷凍車両システムによれば、制御部は、ブレーキ負圧が所定の閾値以下の場合に、冷凍機を停止させ、かつ冷凍運転時に開状態とされる冷凍バルブ及び除霜運転時に開状態とされる除霜バルブを開状態としている。これにより、冷凍サイクル内のコンプレッサの出口部と入口部の冷媒圧力差を均一にすることができるのでコンプレッサへの負荷を低減させることができる。
【0010】
請求項3に記載の本発明に係る冷凍車両システムは、請求項1又は請求項2に記載の構成において、大気圧よりも低圧である負圧の気体を蓄積するバキュームタンクを備え、前記制御部は、前記ブレーキ負圧が前記所定の閾値以下の場合に、前記バキュームタンク内の前記負圧を利用して前記ブレーキブースタを作動させる。
【0011】
請求項3に記載の本発明に係る冷凍車両システムでは、制御部は、ブレーキ負圧が所定の閾値以下の場合に、バキュームタンク内の負圧を利用してブレーキブースタを作動させている。そのため、複数回のブレーキ操作に対してブレーキ負圧の低下を防止することができる。これにより、バキュームタンクがない場合と比較して、ブレーキ負圧を確保することができるので、冷凍車両特有のブレーキ操作に必要な操作力の増加を防止することができる。
【0012】
請求項4に記載の本発明に係る冷凍車両システムは、請求項1~請求項3の何れか1項に記載の構成において、前記ブレーキ負圧が前記所定の閾値以下の場合に、前記ブレーキ操作力が平時よりも必要であることを報知する報知部を備える。
【0013】
請求項4に記載の本発明に係る冷凍車両システムでは、報知部が、ブレーキ負圧が所定の閾値以下の場合に、ブレーキ操作力が平時よりも必要であることを報知するので、運転者は、ブレーキ操作力が通常よりも必要なこと、すなわちブレーキ負圧不足を認識することができる。
【0014】
請求項5に記載の本発明に係る冷凍車両システムは、請求項4に記載の構成において、前記報知部は、ブレーキ操作がされた際に予め定められた一定時間前記ブレーキ負圧が前記所定の閾値以下の場合に報知する。
【0015】
請求項5に記載の本発明に係る冷凍車両システムでは、報知部が、ブレーキ操作がされた際に予め定められた一定時間ブレーキ負圧が所定の閾値以下の場合に報知している。そのため、ブレーキ操作以外のブレーキ負圧低下時、及びブレーキ操作中ではあるがブレーキ操作力への影響が小さい短時間のブレーキ負圧低下時等における運転者への不要な報知を防止することができる。
【0016】
請求項6に記載の本発明に係る冷凍車両システムは、請求項1~請求項5の何れか1項に記載の構成において、前記制御部は、ブレーキ操作がされた際に前記ブレーキ負圧が所定の閾値以下の場合に、前記冷凍機を停止させる。
【0017】
請求項6に記載の本発明に係る冷凍車両システムでは、制御部が、ブレーキ操作がされた際にブレーキ負圧が所定の閾値以下の場合に、冷凍機を停止させているので、ブレーキ操作がされていない際には冷凍機が停止されないことにより、冷凍機の停止時間を短くすることができる。これにより、冷凍機の温度上昇を抑制することができる。
【0018】
請求項7に記載の本発明に係る冷凍車両システムは、請求項1~請求項6の何れか1項に記載の構成において、前記制御部は、前記ブレーキ負圧が所定の閾値よりも大きい場合に、所定時間経過後に前記冷凍機を再稼動させる。
【0019】
請求項7に記載の本発明に係る冷凍車両システムでは、制御部が、ブレーキ負圧が所定の閾値よりも大きい場合に、所定時間経過後に冷凍機を再稼働させている。そのため、ブレーキ負圧が回復する時間を確保するとともに、冷凍サイクル内のコンプレッサの出口部と入口部の冷媒圧力の均一化に必要な時間を確保することによりコンプレッサの再稼働時の負荷を低減することができる。
【0020】
請求項8に記載の本発明に係る冷凍車両システムは、請求項1~請求項7の何れか1項に記載の構成において、前記制御部は、ブレーキ操作がされた際に前記ブレーキ負圧が所定の閾値以下の場合に、前記冷凍機を停止させ、前記ブレーキ操作が解除された際に前記冷凍機を再稼働させる。
【0021】
請求項8に記載の本発明に係る冷凍車両システムでは、制御部が、ブレーキ操作がされた際にブレーキ負圧が所定の閾値以下の場合に、冷凍機を停止させ、ブレーキ操作が解除された際に冷凍機を再稼働させている。そのため、ブレーキ操作が解除された際には、ブレーキ操作力は必要とされないので、冷凍機を再稼働させることにより、冷凍機の停止時間を短縮させることができる。これにより冷凍機の冷却性能を保持することができる。
【0022】
請求項9に記載の本発明に係る冷凍車両のブレーキ負圧制御装置は、エンジン負圧を利用してブレーキ操作力を助勢するブレーキブースタを搭載し、荷室に冷凍機が設けられた冷凍車両において、前記ブレーキブースタ内のブレーキ負圧が所定の閾値以下の場合に、前記冷凍機を停止させる。
【0023】
請求項9に記載の本発明に係る冷凍車両のブレーキ負圧制御装置によれば、エンジン負圧を利用してブレーキ操作力を低減させる真空式のブレーキブースタ内のブレーキ負圧が所定の閾値以下の場合に、車両の荷室に設けられた冷凍機を停止させている。そのため、冷凍機が停止することにより、エンジンに加わっていた冷凍機用の駆動コンプレッサの負荷を低減することができるので、エンジン負圧の発生量の減少を抑止することができる。これにより、エンジンからブレーキブースタに供給される負圧量の低下を防止することができるので、ブレーキブースタ内のブレーキ負圧の低下を抑制することができる。また、冷凍機が停止することで、エンジンへの負荷が低減されるので、エンジン負圧を回復させることができる。
【発明の効果】
【0024】
以上説明したように、本発明に係る冷凍車両及び冷凍車両のブレーキ負圧制御装置は、ブレーキブースタ内のブレーキ負圧の低下を抑制し、かつブレーキブースタ内のブレーキ負圧を回復させることができる、という優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明の第1実施形態に係る冷凍車両システムの構成を模式的に示す概略側面図である。
図2】本発明の第1実施形態に係る制御部を含む制御構成を模式的に示すブロック図である。
図3図1の冷凍車両システムの冷凍サイクルの一例を示す系統的説明図である。
図4】ブレーキ操作時間とブレーキ負圧との関係を示すグラフである。
図5】本発明の第1実施形態に係る制御部の制御処理の一例を示すフローチャートである。
図6】冷凍機の冷凍運転時と除霜運転時における制御部の制御処理の一例を示す図である。
図7】制御部の制御処理のタイミングの一例を示す図である。
図8】本発明の第1実施形態の変形例に係る制御部の制御処理のタイミングの一例を示す図である。
図9】本発明の第1実施形態の変形例に係る制御部の制御処理の一例を示すフローチャートである。
図10】本発明の第2実施形態に係る制御部を含む制御構成を模式的に示すブロック図である。
図11】ブレーキ操作力とブレーキ負圧との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図1図7を用いて、本発明の一実施形態に係る冷凍車両システム10について説明する。図1は本発明の第1実施形態に係る冷凍車両システム10の構成を模式的に示す概略側面図である。
【0027】
図1に示されるように、冷凍車両システム10は、冷凍車両本体12と、冷凍車両本体12の車両方向側に接続されたコンテナ14を備えている。コンテナ14内は荷室14Aとされており、荷室14Aには、冷凍機20が設けられている。冷凍機20は、荷室14Aで構成された冷凍室を備えており、荷室14A(冷凍室)は密閉可能とされている。
【0028】
冷凍車両本体12は、冷凍車両本体12の走行、及び冷凍機20等、冷凍車両システム10全体を制御する制御装置としての制御部30と、ブレーキ装置40と、エンジン16と、報知部18(図2参照)とを備えている。エンジン16は、冷凍車両本体12を走行させる動力源である。本実施形態において、エンジン16は、コンプレッサクラッチ52(図2参照)により冷凍機20のコンプレッサ50にも接続され、エンジン16は冷凍機20のコンプレッサ50も駆動する。なお、コンプレッサクラッチ52は、エンジン16とコンプレッサ50とを接続及び開放する機能を有し、コンプレッサクラッチ52の制御は制御部30により行われる。
【0029】
図2は制御部30を含む制御構成を模式的に示すブロック図である。図2に示されるように、ブレーキ装置40は、ブレーキペダル42、ブレーキブースタ43、マスタシリンダ44、ブレーキ46を備えている。ブレーキペダル42は、運転者によってブレーキ操作をする際に踏み込まれるペダルであり、ブレーキブースタ43と一体的に設けられたマスタシリンダ44を介してブレーキ46に接続されている。ブレーキ46は、ブレーキアクチュエータとしてのブレーキ駆動部47とホイールシリンダ48とを備えており、ブレーキ駆動部47にホイールシリンダ48が接続されている。ブレーキ駆動部47は、図示は省略するが、電磁バルブ、モータ駆動されるポンプ等を備えている。
【0030】
ブレーキブースタ43は、真空式であり、ブレーキペダル42が踏み込まれた際に、その踏力を倍力することにより運転者のブレーキ操作力を低減させる装置である。ブレーキブースタ43は、冷凍車両本体12のエンジン16からエンジン負圧を取り込むための負圧生成パイプ(図示省略)を備えており、この負圧生成パイプがエンジン16の吸気系統に接続されることによりエンジン16からエンジン負圧が供給される。
【0031】
ブレーキブースタ43は、エンジン16の吸気工程において発生したエンジン負圧を負圧生成パイプから取り込み、運転者によりブレーキペダル42が踏み込まれると、踏力がブレーキブースタ43に伝達される。この伝達された踏力がブレーキブースタ43内に取り込まれたエンジン負圧によって倍力されて、マスタシリンダ44においてブレーキ液圧が発生する。ブレーキ液圧は、ブレーキ駆動部47を介してホイールシリンダ48に伝達されて、ブレーキ液圧に応じたブレーキ操作力でブレーキ46が作動される。
【0032】
また、ブレーキブースタ43には、ブレーキブースタ内のブレーキ負圧を検出する負圧検出部45が設けられている。本実施形態においては、一例として負圧検出部45は圧力センサで構成されており、負圧検出部45により検出されたブレーキ負圧は、制御部30に出力される。なお、負圧検出部45は、ブレーキ負圧が所定の閾値以下となった場合にオン状態のブレーキ負圧信号を制御部30に出力する。
【0033】
また、制御部30には、報知部18が接続されている。報知部18は、負圧検出部45により検出されたブレーキ負圧が所定の閾値以下の場合に、ブレーキ操作力が平時よりも必要であることを運転者に報知する。なお、所定の閾値は、冷凍機20の種類及び冷凍車両本体12の大きさ等により予め設定される。報知部18は、具体的には、一例として、警報ランプにより構成されており、警報ランプが点灯された場合に、ブレーキ操作力が平時よりも必要であることを運転者に報知する。なお、報知部18は、警報ランプに限られず、例えば、テルテール、表示画面、及びスピーカ等により構成されていてもよい。
【0034】
一方、図1に示されるように、冷凍機20は、コンプレッサ50と、コンデンシングユニット22と、クーリングユニット23と、サイトグラス24と、を備えている。クーリングユニット23とサイトグラス24とは荷室14A内に設けられている。図3は冷凍車両システム10の冷凍サイクルの一例を示す系統的説明図である。
【0035】
図3に示されるように、冷凍車両システム10は、コンプレッサ50と、コンデンシングユニット22と、クーリングユニット23と、サイトグラス24と、アキュームレータ25と、各種配管とにより冷凍サイクルを構成している。なお、図3において、白抜きの矢印は冷媒の流れを示し、黒色の矢印はコンプレッサオイルの流れを示している。
【0036】
コンプレッサ50は、冷凍車両本体12を駆動するエンジン16からコンプレッサクラッチ52(図2参照)を介して伝達される駆動力によって、第1配管20Aから流入された冷媒を圧縮することにより高温及び高圧化し第2配管20Bに排出する。なお、冷媒には、コンプレッサ50の圧縮機構を潤滑にするための潤滑油が含まれている。
【0037】
本実施形態においては、第1配管20Aは、コンプレッサ50の入口部として機能し、第2配管20Bは、コンプレッサ50の出口部として機能する。すなわち第1配管20Aを流れる冷媒はコンプレッサ50により圧縮される前の低圧の冷媒であり、第2配管20Bを流れる冷媒はコンプレッサ50により圧縮された後の高圧の冷媒である。
【0038】
コンデンシングユニット22は、一例として、冷凍車両本体12のシャーシ等に固定されるケース(図示省略)を有し、ケース内に、オイルセパレータ22A、コンデンサ22B、コンデンサファンモータ22C、レシーバ22D、圧力スイッチ22E、冷凍バルブ60、及び除霜バルブ70を備えている。
【0039】
オイルセパレータ22Aは、コンプレッサ50から排出される高圧の冷媒のうち潤滑油を分離してコンプレッサ50に返油することにより、コンプレッサ50の焼き付きを防止する。オイルセパレータ22Aは、キャピラリチューブ及びオイル用配管20Cを通して潤滑油を送油する。ここで、オイル用配管20Cは、第1配管20Aと第2配管20Bとを接続する配管である。
【0040】
コンデンサ22Bは、コンプレッサ50から排出された高温及び高圧化された冷媒ガスを冷却し、外気と熱交換させることにより凝縮変化させて液化させる。コンデンサファンモータ22Cは、コンデンサ22Bに外気を流すためのファンであり、コンデンサ22Bに併設される。
【0041】
レシーバ22Dは、コンデンサ22Bを通過した後の冷媒を気相冷媒と液相冷媒とに分離し、液相冷媒をクーリングユニット23側に誘導する。
【0042】
冷凍バルブ60は、レシーバ22Dの冷媒出口と後述するエキスパンションバルブ23Aの冷媒入口の間の流路を開閉する弁体(図示省略)と、この弁体を駆動するアクチュエータ(図示省略)とを備えている。また、レシーバ22Dと冷凍バルブ60との間に位置する配管には、圧力スイッチ22Eが設けられている。この圧力スイッチ22Eは、冷凍サイクル内の圧力を設定範囲内に保持するとともに冷凍サイクル内の圧力に異常が生じた際にシステムを停止させる。
【0043】
サイトグラス24は、荷室14A内のエキスパンションバルブ23Aの冷媒入口に配設されて、配管内部の冷媒の流れや流量変化を目視で確認可能な機器である。
【0044】
除霜バルブ70は、除霜用配管20Dを開閉する弁体(図示省略)と、この弁体を駆動するアクチュエータ(図示省略)とを備えている。除霜用配管20Dは、オイルセパレータ22Aの冷媒出口と後述するエバポレータ23Bの冷媒入口との間を接続する配管である。
【0045】
クーリングユニット23は、一例として、荷室14A内に固定されるケース(図示省略)を有し、ケース内に、エキスパンションバルブ23A、エバポレータ23B、及びクーリングファンモータ23Cを備えている。
【0046】
エキスパンションバルブ23Aは、レシーバ22Dの冷媒出口とエバポレータ23Bの冷媒入口との間の配管に設けられ、この配管内の冷媒流路の開度を調整する減圧弁である。エキスパンションバルブ23Aは、レシーバ22Dから排出された液相冷媒を減圧する。
【0047】
エバポレータ23Bは、エキスパンションバルブ23Aを通過した低圧冷媒を蒸発させて荷室14A内の空気と熱交換させることにより荷室14A内の空気から熱を奪い、荷室14A内の空気を冷却する。クーリングファンモータ23Cは、エバポレータ23Bに外気を流すためのファンであり、エバポレータ23Bに併設される。
【0048】
アキュームレータ25は、エバポレータ23Bを通過した低圧冷媒を気相冷媒と液相冷媒とに分離して、液相冷媒を貯留し、かつ気相冷媒を第1配管20Aへ排出する。
【0049】
本実施形態において、冷凍バルブ60と除霜バルブ70の弁体は、各々制御部30からの指令により各アクチュエータを介して開閉される。
【0050】
次に、本実施形態の冷凍車両システム10の制御部30による冷凍車両本体12及び冷凍機20の制御方法について説明する。本実施形態において、制御部30は、冷凍車両本体12の走行を制御する制御装置に加えて、冷凍車両のブレーキ負圧制御装置としても機能する。本実施形態の冷凍車両システム10は、上述したように、冷凍車両本体12を駆動するエンジン16の駆動力によって作動される冷凍機20と、エンジン16のエンジン負圧を利用するブレーキブースタ43とを備えている。
【0051】
そのため、冷凍機20を作動させる際に、エンジン16に冷凍機20のコンプレッサ50の負荷が加わりエンジン負圧の発生量が少なくなってしまう場合がある。エンジン負圧の発生量が少なくなると、エンジン16からブレーキブースタ43に供給されるエンジン負圧の負圧量が低減してしまい、運転者のブレーキ操作に必要な操作力が冷凍機20の作動していない状態と比較して増加してしまう場合がある。図4はブレーキ操作時間とブレーキ負圧との関係を示すグラフである。図4において、横軸はブレーキ46の操作時間、縦軸はブレーキ負圧を示している。
【0052】
そこで、本実施形態においては、図4に示されるように、制御部30は、ブレーキ46が踏み込まれるブレーキ操作がされている状態で、負圧検出部45により検出されたブレーキ負圧が所定の閾値以下の場合に、冷凍機20を停止させる。具体的には、制御部30は、冷凍機20のコンプレッサ50をエンジン16から開放するために、コンプレッサクラッチ52をオフ状態とさせる。本実施形態において、ブレーキ操作がされているか否かの検出は、一例として、マスタシリンダ44の油圧を検出する油圧センサ(図示省略)から出力される信号に基づいて行われる。なお、ブレーキ操作がされているか否かの検出は、油圧センサに限られず、例えば、アンチロックブレーキシステム(ABC)の作動信号を使用してもよいし既存の信号を使用することができる。
【0053】
図5は制御部30の制御処理の一例を示すフローチャート、図6は冷凍機20の冷凍運転時と除霜運転時における制御部30の制御処理の一例を示す図、図7は制御部30の制御処理のタイミングの一例を示す図である。なお、図6の左図(A)は、冷凍機20の冷凍運転時の制御部30による制御を示し、図6の右図(B)は、冷凍機20の除霜運転時の制御部30による制御を示している。また、図7において、便宜上、冷凍バルブ60は除霜運転時の作動状態を、除霜バルブ70は冷凍運転時の作動状態をそれぞれ示しており、図6と同様の制御処理が行われる。
【0054】
図5に示されるように、ステップS11にて、制御部30は、ブレーキ操作が開始されているか否かを判断する。ブレーキ操作がされている場合(ステップS11;YES)、ステップS12にて、制御部30は、ブレーキ負圧が所定の閾値以下であるか否かを判断する。ブレーキ負圧が所定の閾値以下である場合(ステップS12;YES)、ステップS13にて、制御部30は、ブレーキ操作に必要なブレーキ操作力が増加するとして冷凍機20を停止させる。
【0055】
すなわち、図7に示されるように、ブレーキ操作信号がオフ状態からオン状態にされた状態で、ブレーキ負圧信号がオン状態とされた際に、制御部30は、図3で示される冷凍サイクルの制御を開始する。具体的には、制御部30は、コンプレッサクラッチ52をオン状態(接続状態)からオフ状態(開放状態)にすることにより冷凍機20を停止させている。一方、冷凍機20に対して停止及び稼動を繰り返し行うと、コンプレッサ50に過度な負荷が掛かってしまう。そこで、本実施形態においては、制御部30は、図3で示される冷凍バルブ60と除霜バルブ70の各々の弁体の開閉を制御する。
【0056】
図6の左図(A)に示されるように、冷凍機20の冷凍運転時に、制御部30は、ブレーキ負圧信号がオフ状態からオン状態になった際に、コンプレッサクラッチ52をオン状態(接続状態)からオフ状態(開放状態)にさせる。冷凍機20の冷凍運転時には冷凍バルブ60はオン状態とされているので、制御部30は、冷凍バルブ60にオン状態を継続させる。また、冷凍機20の冷凍運転時には除霜バルブ70はオフ状態とされているので、制御部30は、除霜バルブ70をオフ状態からオン状態にさせる。ここで、冷凍バルブ60及び除霜バルブ70は、各々弁体の開状態が上記オン状態、各々弁体の閉状態が上記オフ状態とされる。
【0057】
また、図6の右図(B)に示されるように、冷凍機20の除霜運転時に、制御部30は、ブレーキ負圧信号がオフ状態からオン状態になった際に、コンプレッサクラッチ52をオン状態(接続状態)からオフ状態(開放状態)にさせる。冷凍機20の除霜運転時には冷凍バルブ60はオフ状態とされているので、制御部30は、冷凍バルブ60をオフ状態からオン状態にさせる。また、冷凍機20の除霜運転時には除霜バルブ70はオン状態とされているので、制御部30は、除霜バルブ70にオン状態を継続させる。
【0058】
すなわち、制御部30は、ブレーキ負圧信号がオフ状態からオン状態になった際に、コンプレッサクラッチ52をオン状態(接続状態)からオフ状態(開放状態)し、かつ冷凍バルブ60と除霜バルブ70の各々の弁体をオン状態とする。
【0059】
一方、図5に戻り、ステップS11にて、ブレーキ操作が開始されていない場合(ステップS11;NO)、又はステップS12にて、ブレーキ負圧が所定の閾値よりも大きい場合(ステップS12;NO)、制御部30は、ステップS18へ処理を移行し、ステップS18にて、制御部30はブレーキ操作力に影響がないとして冷凍機20を停止しない。
【0060】
他方、ステップS13にて、制御部30により冷凍機20が停止された後、ステップS14にて、制御部30は、ブレーキ操作が継続されているか否かを判断する。ブレーキ操作が継続されている場合(ステップS14;YES)、ステップS15にて、制御部30は、冷凍機20の停止を継続させ、ステップS14に処理を移行する。
【0061】
すなわち、図6及び図7に示されるように、制御部30は、コンプレッサクラッチ52のオフ状態(開放状態)を継続させ、かつ冷凍バルブ60及び除霜バルブ70のオン状態を継続させる。
【0062】
また、ステップS14にて、ブレーキ操作が継続されていない場合(ステップS14;NO)、ステップS16にて、制御部30は、冷凍機20を再稼働させる。
【0063】
すなわち、図6の左図(A)に示されるように、冷凍機20の冷凍運転時に、制御部30は、ブレーキ操作信号がオン状態からオフ状態になった際に、コンプレッサクラッチ52をオフ状態(開放状態)からオン状態(接続状態)にさせる。ここで、本実施形態において一例として、コンプレッサクラッチ52がオフ状態(開放状態)の際に、ブレーキ操作信号がオフ状態となった場合、制御部30は、ブレーキ操作信号がオフ状態となってから時間T1経過後に、コンプレッサクラッチ52をオン状態(接続状態)とする。
【0064】
また、冷凍機20の停止時に冷凍バルブ60はオン状態とされているので、制御部30は、冷凍バルブ60にオン状態を継続させる。また、冷凍機20の停止時には除霜バルブ70はオン状態とされているので、制御部30は、除霜バルブ70をオン状態からオフ状態にさせる。ここで、本実施形態において一例として、制御部30は、コンプレッサクラッチ52がオフ状態(開放状態)となってから時間T2経過後に、除霜バルブ70をオフ状態とする。
【0065】
また、図6の右図(B)に示されるように、冷凍機20の除霜運転時に、制御部30は、冷凍運転時と同様に、コンプレッサクラッチ52がオフ状態(開放状態)の際に、ブレーキ操作信号がオフ状態となった場合、ブレーキ操作信号がオフ状態となってから時間T1経過後に、コンプレッサクラッチ52をオフ状態(開放状態)からオン状態(接続状態)とする。
【0066】
また、冷凍機20の停止時に冷凍バルブ60はオン状態とされているので、制御部30は、コンプレッサクラッチ52がオン状態とされた際に、冷凍バルブ60をオン状態からオフ状態にさせる。また、冷凍機20の停止時には除霜バルブ70はオン状態とされているので、制御部30は、除霜バルブ70にオン状態を継続させる。
【0067】
図5に戻り、ステップS16にて冷凍機20が再稼働された後で、ステップS17にて、制御部30は、ブレーキ負圧が回復したか否かを判断する。具体的には制御部30は、ブレーキ負圧信号がオフ状態になったか否かを判断する。ブレーキ負圧が回復した場合(ステップS17;YES)、ステップS18にて、制御部30はブレーキ操作力に影響がないとして冷凍機20を停止しない。
【0068】
一方、ステップS17にて、ブレーキ負圧が回復していない場合(ステップS17;NO)、ステップS19にて、制御部30は、報知部18によりブレーキ操作力が平時よりも必要であることを運転者に警報する。図7に示されるように、報知部18は、ブレーキ操作がされてから予め定められた時間T3、ブレーキ負圧が所定の閾値以下の場合に警報を行う。具体的には、制御部30は、ブレーキ操作信号がオフ状態からオン状態にされ、かつブレーキ負圧信号がオン状態とされてから、タイマ(図示省略)により時間T3が経過した際に報知部18の警告ランプを点灯させる。
【0069】
次にステップS20にて、制御部30は、冷凍車両本体12が停止したか否かを判断する。制御部30は、一例として、冷凍車両本体12のシフトレンジがパーキングにされた際、又は、冷凍車両本体12のエンジン16が停止された際等に、冷凍車両本体12が停止したと判断する。ステップS20にて、冷凍車両本体12が停止した場合(ステップS20;YES)、制御部30は全ての処理を終了させる。一方、ステップS20にて、冷凍車両本体12が停止していない場合(ステップS20;NO)、制御部30はステップS11へ処理を移行して、ステップS11以降の処理を引き続き行う。
【0070】
本実施形態においては、図7に示されるように、ブレーキ負圧信号がオン状態とされてから、除霜バルブ70がオフ状態とされるまでの時間T4において、制御部30が冷凍機20の冷凍サイクルを制御する。
【0071】
次に、第1実施形態の作用及び効果について説明する。
【0072】
上記第1実施形態に係る冷凍車両システム10では、制御部30が、エンジン負圧を利用してブレーキ操作力を低減させる真空式のブレーキブースタ43内のブレーキ負圧が所定の閾値以下の場合に、車両の荷室14Aに設けられた冷凍機20を停止させている。そのため、冷凍機20が停止することにより、エンジン16に加わっていた冷凍機20用の駆動用のコンプレッサ50の負荷を低減することができるので、エンジン負圧の発生量の減少を抑止することができる。これにより、エンジン16からブレーキブースタ43に供給される負圧量の低下を防止することができるので、ブレーキブースタ43内のブレーキ負圧の低下を抑制することができる。また、冷凍機20が停止することで、エンジン16への負荷が低減されるので、エンジン負圧を回復させることができる。
【0073】
一方、ブレーキ負圧が所定の閾値以下の場合、冷凍機20の停止及び再稼働を短時間で繰り返すと、冷凍サイクル内のコンプレッサ50の出口部(第2配管20B)と入口部(第1配管20A)との冷媒圧力差が高い状態でコンプレッサ50が稼動することとなり、コンプレッサ50に高負荷がかかり耐久性が低下してしまう虞がある。
【0074】
上記第1実施形態に係る冷凍車両システム10では、制御部30は、ブレーキ負圧が所定の閾値以下の場合に、冷凍機20を停止させ、かつ冷凍運転時に開状態(オン状態)とされる冷凍バルブ60及び除霜運転時に開状態(オン状態)とされる除霜バルブ70を開状態(オン状態)としている。冷凍機20の停止時に、除霜バルブ70を開状態(オン状態)とすることにより、冷凍サイクル内のコンプレッサ50の出口部(第2配管20B)と入口部(第1配管20A)の冷媒圧力差を均一にすることができる。また、冷凍機20の停止時に、冷凍バルブ60を開状態(オン状態)とすることにより、冷凍サイクル内のコンプレッサ50の出口部(第2配管20B)の冷媒圧力を逃がし続けることができる。このように、冷凍サイクル内のコンプレッサ50の出口部(第2配管20B)と入口部(第1配管20A)の冷媒圧力差を均一にしたり、コンプレッサ50の出口部(第2配管20B)の冷媒圧力を逃がし続けたりすることにより、コンプレッサ50への負荷を低減させることができる。
【0075】
また、上記第1実施形態に係る冷凍車両システム10では、制御部30が、ブレーキ操作がされた際にブレーキ負圧が所定の閾値以下の場合に、冷凍機20を停止させているので、ブレーキ操作がされていない際には冷凍機20が停止されないことにより、冷凍機20の停止時間を短くすることができる。これにより、冷凍機20の温度上昇を抑制することができる。
【0076】
また、上記第1実施形態に係る冷凍車両システム10では、制御部30が、ブレーキ操作信号がオフ状態とされた場合に、ブレーキ操作信号がオフ状態とされてから時間T1経過後に冷凍機20を再稼働させている。そのため、ブレーキ負圧が回復する時間を確保するとともに、冷凍サイクル内のコンプレッサ50の出口部(第2配管20B)と入口部(第1配管20A)の冷媒圧力の均一化に必要な時間を確保することによりコンプレッサ50の再稼働時の負荷を低減することができる。また、この時間T1を最適化することにより、冷凍機20の停止時間を短くすることができるので、冷凍機20の温度上昇を抑制することができる。
【0077】
また、上記第1実施形態に係る冷凍車両システム10では、制御部30が、ブレーキ操作がされた際にブレーキ負圧が所定の閾値以下の場合に、冷凍機20を停止させ、ブレーキ操作が解除された際に冷凍機20を再稼働させている。そのため、ブレーキ操作が解除された際には、ブレーキ操作力は必要とされないので、冷凍機20を再稼働させることにより、冷凍機20の停止時間を短縮させることができる。これにより冷凍機20の冷却性能を保持することができる。
【0078】
また、上記第1実施形態に係る冷凍車両システム10では、制御部30が、コンプレッサクラッチ52をオフ状態としてから時間T2経過後に、除霜バルブ70をオフ状態としている。そのため、冷凍サイクル内のコンプレッサ50の出口部(第2配管20B)の冷媒圧力が逃がされるので、コンプレッサ50の再稼働時の負荷をより低減することができる。
【0079】
また、上記第1実施形態に係る冷凍車両システム10では、報知部18が、ブレーキ負圧が所定の閾値以下の場合に、ブレーキ操作力が平時よりも必要であることを報知するので、運転者は、ブレーキ操作力が通常よりも必要なこと、すなわちブレーキ負圧不足を認識することができる。
【0080】
また、上記第1実施形態に係る冷凍車両システム10では、報知部18が、ブレーキ操作がされた際に予め定められた時間T3の間ブレーキ負圧が所定の閾値以下の場合にブレーキ操作力が平時よりも必要であることを報知している。そのため、ブレーキ操作以外のブレーキ負圧低下時、及びブレーキ操作中ではあるがブレーキ操作力への影響が小さい短時間のブレーキ負圧低下時等における運転者への不要な報知を防止することができる。
【0081】
次に、上記第1実施形態に係る冷凍車両システム10の変形例における制御部30の制御処理のタイミングについて説明する。図8は上記第1実施形態の変形例に係る制御部30の制御処理のタイミングの一例を示す図である。上記第1実施形態においては、図6にされるように、制御部30はブレーキ操作信号がオフ状態とされてから時間T1経過後にコンプレッサクラッチ52をオン状態にして冷凍機20を再稼働させている。これに対して、変形例では、図8に示されるように、制御部30はブレーキ負圧信号がオフ状態とされてから時間T1経過後にコンプレッサクラッチ52をオン状態にして冷凍機20を再稼働させている。なお、図8に示される変形例においては、時間T1は図6と異なる値であってもよく、最適化された時間を設定することができる。
【0082】
図9は上記第1実施形態に係る冷凍車両システム10の変形例に係る制御部の制御処理の一例を示すフローチャートである。なお、以下の説明において図5のフローチャートと同様の処理については制御部30による具体的な処理の説明は省略する場合がある。
【0083】
図9に示されるように、ステップS21にて、制御部30は、ブレーキ操作が開始されているか否かを判断する。ブレーキ操作がされている場合(ステップS21;YES)、ステップS22にて、制御部30は、ブレーキ負圧が所定の閾値以下であるか否かを判断する。ブレーキ負圧が所定の閾値以下である場合(ステップS22;YES)、ステップS23にて、制御部30は、ブレーキ操作に必要なブレーキ操作力が増加するとして冷凍機20を停止させる。なお、この際に、制御部30は、図8で示されるように、冷凍バルブ60と除霜バルブ70の各々の弁体の開閉を制御する。
【0084】
また、ステップS21にて、ブレーキ操作が開始されていない場合(ステップS21;NO)、制御部30は、ブレーキ操作が開始されるまでステップS21の処理を行う。また、ステップS21にて、ブレーキ操作が開始されていない場合(ステップS21;NO)、制御部30は、ステップS28へ処理を移行し、ステップS28以降の処理を行う。
【0085】
次に、ステップS23にて冷凍機20が停止された後で、ステップS24にて、制御部30は、ブレーキ負圧が回復したか否かを判断する。ブレーキ負圧が回復していない場合(ステップS24;NO)、ステップS25にて、制御部30は冷凍機20の停止を継続させる。また、ステップS26にて、制御部30は、報知部18によりブレーキ操作力が平時よりも必要であることを運転者に警報して、ステップS24へ処理を移行する。
【0086】
一方、ステップS24にて、ブレーキ負圧が回復している場合(ステップS24;YES)、ステップS27にて、制御部30は、冷凍機20を再稼働させる。ステップS27にて冷凍機20が再稼働された後で、ステップS28にて、制御部30は、ブレーキ操作が継続されているか否かを判断する。ブレーキ操作が継続されている場合(ステップS28;YES)、制御部30はステップS22へ処理を移行して、ステップS22以降の処理を行う。
【0087】
また、ステップS28にて、ブレーキ操作が継続されていない場合(ステップS28;NO)、ステップS29にて、制御部30は、冷凍車両本体12が停止したか否かを判断する。ステップS29にて、冷凍車両本体12が停止した場合(ステップS29;YES)、制御部30は全ての処理を終了させる。一方、ステップS29にて、冷凍車両本体12が停止していない場合(ステップS29;NO)、制御部30はステップS21へ処理を移行して、ステップS11以降の処理を引き続き行う。
【0088】
次に、第1実施形態の変形例の作用及び効果について説明する。
【0089】
上記第1実施形態の変形例に係る冷凍車両システム10では、制御部30が、ブレーキ負圧が所定の閾値よりも大きい場合、すなわちブレーキ負圧が回復した場合、時間T1経過後に冷凍機20を再稼働させている。そのため、ブレーキ負圧が回復する時間を確保するとともに、冷凍サイクル内のコンプレッサ50の出口部(第2配管20B)と入口部(第1配管20A)の冷媒圧力の均一化に必要な時間を確保することによりコンプレッサ50の再稼働時の負荷を低減することができる。
【0090】
次に、本発明の第2実施形態に係る冷凍車両システム10Aについて説明する。なお、本実施形態の冷凍車両システム10Aは、上記第1実施形態の冷凍車両システム10と同じ構成については同符号で示して説明を省略し、異なる箇所についてのみ詳細に説明する。図10は第2実施形態に係る冷凍車両システム10Aの制御部30を含む制御構成を模式的に示すブロック図である。
【0091】
図10に示されるように、本実施形態の冷凍車両システム10Aは、上記第1実施形態の冷凍車両システム10の構成に対して、さらにバキュームタンク19が設けられている。バキュームタンク19は、大気圧よりも低圧である負圧の気体を蓄積するタンクであり、一例として、ブレーキブースタ43がエンジン16からエンジン負圧を取り込むための負圧生成パイプ(図示省略)に接続されている。制御部30は、ブレーキブースタ43とバキュームタンク19との間に配設された電磁弁(図示省略)を操作することにより、バキュームタンク19内に蓄積された負圧をブレーキブースタ43に供給する。なお、バキュームタンク19からブレーキブースタ43への負圧の供給は、一例として、エンジン16からエンジン負圧が供給されるタイミングで行われる。
【0092】
次に、第2実施形態の作用及び効果について説明する。
【0093】
第2施形態に係る冷凍車両システム10Aでは、制御部30は、ブレーキ負圧が所定の閾値以下の場合に、バキュームタンク19内の負圧を利用してブレーキブースタ43を作動させている。そのため、複数回のブレーキ操作に対してブレーキ負圧の低下を防止することができる。これにより、バキュームタンク19がない場合と比較して、ブレーキ負圧を確保することができるので、冷凍車両特有のブレーキ操作に必要な操作力の増加を防止することができる。
【0094】
[実施形態の補足説明]
なお、上述した実施形態においては、制御部30は、ブレーキ負圧が所定の閾値以下となった場合に冷凍機20と停止させているが本発明はこれに限られない。図11はブレーキ操作力とブレーキ負圧との関係を示すグラフである。図11に示されるように、制御部30は、ブレーキ負圧が所定の閾値以下となり、さらにブレーキ操作力が所定の閾値以下となった場合に冷凍機20を停止させる。なお、所定の閾値は、運転者がブレーキペダル42を踏む際に重いと感じる値の統計に基づいて予め設定される。
【0095】
また、ブレーキ操作力の検出は、一例として、マスタシリンダ44の油圧を検出する油圧センサ(図示省略)から出力される信号に基づいて行われる。なお、ブレーキ操作力の検出は、油圧センサに限られず、例えば、アンチロックブレーキシステム(ABC)の作動信号を使用してもよいし既存の信号を使用することができる。
【0096】
このように、ブレーキ負圧が所定の閾値以下となり、さらにブレーキ操作力が所定の閾値以下となった場合に冷凍機20を停止させることにより、ブレーキ負圧が所定の閾値以下となった場合に冷凍機20と停止させる場合と比較して冷凍機20の停止時間を短縮することができるので、冷凍機20の冷凍性能を確保することができる。
【0097】
また、上述した実施形態においては、制御部30は、ブレーキ操作が開始された状態で、かつブレーキ負圧が所定の閾値以下の場合に、冷凍機20を停止しているが、本発明はこれに限られない。制御部30は、ブレーキ操作が開始されていない状態であっても、ブレーキ負圧が所定の閾値以下の場合に冷凍機20を停止させてもよい。
【0098】
また、上記第1実施形態では、制御部30は、ブレーキ操作信号がオン状態とされてから時間T1経過後にコンプレッサクラッチ52をオン状態にして冷凍機20を再稼働させているが、本発明はこれに限られない。制御部30は、ブレーキ操作信号がオン状態とされてから時間T1経過せずに冷凍機20を再稼働させてもよい。
【0099】
また、上記第2実施形態では、制御部30は、ブレーキ負圧信号がオン状態とされてから時間T1経過後にコンプレッサクラッチ52をオン状態にして冷凍機20を再稼働させているが、本発明はこれに限られない。制御部30は、ブレーキ負圧信号がオン状態とされてから時間T1経過せずに冷凍機20を再稼働させてもよい。
【0100】
また、上述した実施形態においては、制御部30は、コンプレッサクラッチ52をオン状態としてから時間T2経過後に除霜バルブ70をオン状態としているが、本発明はこれに限られない。制御部30は、コンプレッサクラッチ52をオン状態としてから時間T2経過せずに除霜バルブ70をオン状態としてもよい。
【0101】
また、上述した実施形態においては、報知部18を備えているが、本発明はこれに限られず、報知部18を備えていなくてもよい。この場合、図5において、ステップS17でブレーキ負圧が回復していない場合(ステップS17;NO)、制御部30は、ステップS19の処理は行わずに、ステップS11へ処理を移行して、ステップS11以降の処理を行う。また、図9において、制御部30は、ステップS26の処理を行わず、ステップS24へ処理を移行する。
【0102】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明はこうした実施形態に限定されるものでなく、一実施形態と各種の変形例を適宜組み合わせて用いても良いし、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施し得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0103】
10 冷凍車両システム
12 冷凍車両本体(車両)
14A 荷室
16 エンジン
18 報知部
19 バキュームタンク
20 冷凍機
30 制御部(冷凍車両のブレーキ負圧制御装置)
43 ブレーキブースタ
60 冷凍バルブ
70 除霜バルブ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11