(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024158007
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】ショベル、およびショベル支援システム
(51)【国際特許分類】
E02F 9/26 20060101AFI20241031BHJP
E02F 3/43 20060101ALI20241031BHJP
【FI】
E02F9/26 B
E02F3/43 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023072780
(22)【出願日】2023-04-26
(71)【出願人】
【識別番号】000002107
【氏名又は名称】住友重機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】佐野 裕介
(72)【発明者】
【氏名】平手 奨二
【テーマコード(参考)】
2D003
2D015
【Fターム(参考)】
2D003AA01
2D003AB04
2D003BA02
2D003CA02
2D003DA04
2D015HA03
(57)【要約】
【課題】掘削作業にかかるコストを抑制しながら、掘削対象の状態およびバケットの状態を容易に検出できる技術を提供する。
【解決手段】ショベル100は、下部走行体1と、上部旋回体2と、アタッチメントATと、バケット6が掘削する掘削対象を検出する外部センサ200の検出情報を受信して、当該検出情報を処理するコントローラ90と、を備える。アタッチメントATは、バケット6の保持状態で、当該バケット6の凹部6CがアタッチメントATの内側の空間Siに向かう第1形態と、当該バケット6の凹部6CがアタッチメントATの外側の空間Soに向かう第2形態と、を選択的にとることが可能である。バケット6は、外部センサ200の検出範囲内において第2形態となっている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下部走行体と、
前記下部走行体に旋回可能に設けられる上部旋回体と、
前記上部旋回体に設けられ、バケットを保持するアタッチメントと、
前記バケットが掘削する掘削対象を検出する外部センサの検出情報を受信して、当該検出情報を処理する制御部と、を備え、
前記アタッチメントは、前記バケットの保持状態で、当該バケットの凹部が前記アタッチメントの内側の空間に向かう第1形態と、当該バケットの凹部が前記アタッチメントの外側の空間に向かう第2形態と、を選択的にとることが可能であり、
前記バケットは、前記外部センサの検出範囲内において前記第2形態となっている、
ショベル。
【請求項2】
前記バケットを回転させることで、前記第1形態と前記第2形態とに切り替え可能な駆動機構を備え、
前記制御部は、前記外部センサの位置および前記バケットの位置に基づき、前記駆動機構を制御して前記第1形態および前記第2形態を切り替える、
請求項1に記載のショベル。
【請求項3】
前記制御部は、前記第1形態の前記バケットが前記外部センサの検出範囲内に位置するか否かを判定し、前記バケットが前記外部センサの検出範囲内に位置する場合に、前記第1形態から前記第2形態に移行させる、
請求項2に記載のショベル。
【請求項4】
前記制御部は、前記第2形態の前記バケットが前記外部センサの検出範囲外に位置するか否かを判定し、前記バケットが前記外部センサの検出範囲外に位置する場合に、前記第2形態から前記第1形態に移行させる、
請求項2に記載のショベル。
【請求項5】
前記制御部は、前記バケットの前記第1形態と前記第2形態との切り替えを出力装置に報知する、
請求項2に記載のショベル。
【請求項6】
前記制御部は、前記外部センサの前記検出情報に基づき前記アタッチメントの動作を支援する、
請求項1乃至5のいずれか1項に記載のショベル。
【請求項7】
下部走行体と、
前記下部走行体に旋回可能に設けられる上部旋回体と、
前記上部旋回体に設けられ、バケットを保持するアタッチメントと、を備えるショベルと、
前記バケットが掘削する掘削対象を検出する外部センサと、
前記外部センサの検出情報を受信して、当該検出情報を処理する制御部と、を含むショベル支援システムであって、
前記アタッチメントは、前記バケットの保持状態で、当該バケットの凹部が前記アタッチメントの内側の空間に向かう第1形態と、当該バケットの凹部が前記アタッチメントの外側の空間に向かう第2形態と、を選択的にとることが可能であり、
前記バケットは、前記外部センサの検出範囲内において前記第2形態となっている、
ショベル支援システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ショベル、およびショベル支援システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、機体に搭載したLiDAR等のセンサにより掘削対象の状態(形状、距離、位置等)を検出し、この検出結果を利用して、掘削作業の自動制御やガイド等の運転支援を行うショベルが知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、センサである二次元走査型距離計測装置を、上部旋回体の前端部またはブームに搭載したショベルが開示されている。また、特許文献2には、レーザ測距装置を運転室の屋根部分に搭載したショベルが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2022-27816号公報
【特許文献2】特許第4671317号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、LiDAR等の高額なセンサを搭載したショベルを、1つの作業現場に複数台用意して掘削作業を行うと、作業全体にかかるコストが高くなる。そこで、ショベルの外部かつ掘削対象の近くに外部センサを設置し、この外部センサにより掘削対象の状態およびバケットの状態を検出するシステムを採ることで、コストの上昇を抑制することが考えられる。
【0006】
しかしながら、このシステムの外部センサは、掘削対象の状態やバケットの状態を捉えられない機会が多く存在する。例えば、掘削対象を掘削しているバケット自体が外部センサのオクルージョンとなることで、外部センサは、掘削されるバケットの周辺の掘削対象の状態、およびバケットの内部の状態を検出することができなくなる。
【0007】
本開示は、掘削作業にかかるコストを抑制しながら、掘削対象の状態およびバケットの状態を容易に検出できる技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の一態様によれば、下部走行体と、前記下部走行体に旋回可能に設けられる上部旋回体と、前記上部旋回体に設けられ、バケットを保持するアタッチメントと、前記バケットが掘削する掘削対象を検出する外部センサの検出情報を受信して、当該検出情報を処理する制御部と、を備え、前記アタッチメントは、前記バケットの保持状態で、当該バケットの凹部が前記アタッチメントの内側の空間に向かう第1形態と、当該バケットの凹部が前記アタッチメントの外側の空間に向かう第2形態と、を選択的にとることが可能であり、前記バケットは、前記外部センサの検出範囲内において前記第2形態となっている、ショベルが提供される。
【発明の効果】
【0009】
一態様によれば、掘削作業にかかるコストを抑制しながら、掘削対象の状態およびバケットの状態を容易に検出できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施形態に係るショベル支援システムの全体構成を概略的に示す側面図である。
【
図2】ショベルのバケットを第2形態とした状態を概略的に示す側面図である。
【
図3】ショベル支援を行う際のコントローラの機能ブロックを示すブロック図である。
【
図4】
図4は、ショベルのバケットの形態と外部センサの検出範囲との関係を示す平面図であり、
図4(A)は第1例を示す図、
図4(B)は第2例を示す図、
図4(C)は第3例を示す図、
図4(D)は第4例を示す図である。
【
図5】ショベルのバケットの動作方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して本開示を実施するための形態について説明する。各図面において、同一構成部分には同一符号を付し、重複した説明を省略する場合がある。
【0012】
図1は、実施形態に係るショベル支援システムSYSの全体構成を概略的に示す側面図である。
図1に示すように、ショベル支援システムSYSは、掘削作業等を行う作業現場に構築される。ショベル支援システムSYSは、作業現場に適用される1以上のショベル100と、1以上の外部センサ200と、を含む。また、ショベル100は、当該ショベル100の動作を制御するコントローラ90を備える。コントローラ90は、外部センサ200との間で情報通信可能に構成され、外部センサ200の検出情報を処理する本開示の制御部として機能する。
【0013】
例えば、ショベル100は、機体として、下部走行体1と、上部旋回体2と、アタッチメントATと、を備える。
【0014】
下部走行体1は、左右一対のクローラ1Cを有する。クローラ1Cは、下部走行体1に搭載されている図示しない走行アクチュエータによって駆動される。下部走行体1には、旋回機構3を介して上部旋回体2が旋回可能に搭載される。旋回機構3は、上部旋回体2に搭載されている図示しない旋回アクチュエータにより駆動される。なお、走行アクチュエータおよび旋回アクチュエータは、油圧アクチュエータ、内燃機関、電動アクチュエータのいずれであってもよい。
【0015】
上部旋回体2は、操作者が搭乗してショベル100を操作するための操作室であるキャビン10を、前方かつ左側(ブーム4の左側)に備える。また、上部旋回体2は、後部にカウンタウェイトを備えると共に、ショベル100を動作させる各種の装置を内部に備える。
【0016】
キャビン10の内部には、操作者が着座するシートの他に、例えば、操作装置11、出力装置12、および上記のコントローラ90等が設けられている。操作装置11は、操作者がショベル100の操作を行うための装置である。一例として、操作装置11は、ショベル100のアクチュエータの駆動を制御するための操作レバーおよび操作ペダルを有する。さらに、操作装置11は、ショベル100の操作者がコントローラ90に対して情報を入力するための情報入力装置(例えば、右側コンソールボックス、左側コンソールボックス)を有する。情報入力装置は、出力装置12の表示装置に近接して設置されるスイッチパネル、または表示装置として適用されるタッチパネルでもよく、あるいは音声入力装置でもよい。
【0017】
出力装置12は、表示装置および音出力装置の少なくとも一方を含む。例えば、表示装置は、キャビン10内に設置された液晶ディスプレイ、スマートフォン等の携帯端末のディスプレイがあげられる。また、音出力装置は、キャビン10内の操作者に向けて音を出力する装置、または携帯端末のスピーカがあげられる。
【0018】
実施形態に係るアタッチメントATは、掘削用アタッチメントであり、上部旋回体2に対して俯仰動可能に取り付けられるブーム4と、ブーム4の先端に回動可能に取り付けられるアーム5と、アーム5の先端に回動可能に取り付けられるバケット6と、を含む。バケット6は、土砂等を収容可能な凹部6Cを有すると共に、アーム5の連結箇所と反対側の縁部に複数の爪部6Nを有するエンドアタッチメントである。なお、バケット6は、法面バケットであってもよい。
【0019】
ブーム4はブームシリンダ7で駆動され、アーム5はアームシリンダ8で駆動され、バケット6はバケットシリンダ9で駆動される。ブームシリンダ7、アームシリンダ8およびバケットシリンダ9は、アタッチメントアクチュエータを構成している。
【0020】
また、実施形態に係るショベル100は、バケット6をアーム5の延在方向に沿った軸回りに回転させるローテータである駆動機構20を、アーム5とバケット6の間の連結箇所に備える。駆動機構20は、例えば、アーム5に取り付けられる基部21と、バケット6が固定されると共に基部21と相対的に回転可能なロータ22と、ロータ22を回転させるモータ(不図示)と、を含む。すなわち、ショベル100は、アームシリンダ8の伸縮動作に伴って駆動機構20の基部21をピッチ方向に回動させることにより、駆動機構20全体およびバケット6のバケット角(ピッチ角)を一体的に変動させる。そして、ショベル100は、駆動機構20のモータの回転動作に伴って基部21に対しロータ22をロール方向に回転させることにより、当該ロータ22およびバケット6のロール角を一体的に変動させる。
【0021】
駆動機構20を介してアーム5に支持されたバケット6の姿勢は、機体である下部走行体1および上部旋回体2に凹部6Cの開口6Coが対向可能な第1形態と、この第1形態に対して反転した向きである第2形態と、に変更できる。より詳細には、第1形態とは、ブーム4、アーム5およびバケット6で囲うアタッチメントATの内側の空間Siをバケット6の凹部6Cが臨む姿勢である。第2形態とは、ブーム4、アーム5およびバケット6で囲うアタッチメントATの内側の空間Siに対してバケット6の凹部6Cが臨まない(外側の空間Soを臨む)姿勢である(
図2も参照)。駆動機構20は、第1形態のロータ22およびバケット6をロール方向に180°回転させることで第2形態に移行させ、逆に第2形態のロータ22およびバケット6をロール方向に180°回転させることで第1形態に移行させる。
【0022】
ショベル支援システムSYSの外部センサ200は、ショベル100の外部から掘削対象の状態およびバケット6の状態を検出する検出器である。外部センサ200としては、例えば、LiDAR、カメラ(単眼、複眼を含む)、超音波センサ、ミリ波レーダ、距離画像センサ、赤外線センサ等があげられ、これらのセンサのうち1つまたは複数を組み合わせて構成される。実施形態では、外部センサ200としてLiDARを適用した例について説明する。
【0023】
外部センサ200は、作業現場に設置される適宜の支持体210に固定される。支持体210に固定された外部センサ200の検出部(例えば、検出光を出射すると共に反射光を受光する光学系素子部)は、対向する掘削対象の状態を検出する。検出部の検出範囲は、掘削対象である法面の略全体に設定され、ショベル100の掘削作業においてバケット6が入り込むように設定される。これにより、LiDARである外部センサ200は、掘削対象である法面の形状および位置(外部センサ200との距離)を検出することが可能となる。なお、作業現場におけるショベル100の掘削対象は、法面に限定されないことは勿論であり、例えば、平面や壁面であってもよい。また、支持体210は、図示しない移動機構を有し、検出部が掘削対象を臨むように外部センサ200の位置や向きを変更可能としてもよい。この場合の移動機構は、ショベル100の操作者や他の作業者により操作されてもよく、図示しないセンサコントローラ(コントローラ90を含む)により、自動的に掘削対象を追跡するように制御されてもよい。
【0024】
外部センサ200は、検出した検出情報をショベル100のコントローラ90に送信する。なお、
図1では、ショベル100と外部センサ200は、無線通信を行う構成を例示しているが、外部センサ200とショベル100は有線通信を行う構成でもよい。また、外部センサ200とコントローラ90の間には、情報通信用の中継器が設けられてもよい。コントローラ90は、受信した外部センサ200の検出情報について、キャビン10内の出力装置12に表示する、または運転支援に用いる等の処理を行う。例えば、コントローラ90は、外部センサ200の位置や姿勢、検出範囲等の情報を予め保有している。そして、コントローラ90は、保有している情報と、外部センサ200の検出情報に基づき、ショベル100が掘削する箇所の掘削対象の位置や形状を算出できる。
【0025】
コントローラ90は、1以上のプロセッサ、メモリ(揮発性メモリ、不揮発性メモリ)等を備えたコンピュータにより構成され、各種の情報に基づきショベル100を制御する。1以上のプロセッサは、ショベル100を制御する各機能のプログラムをメモリから読み出して実行する。例えば、各機能は、操作者によるショベル100の手動操作をガイド(案内)するマシンガイダンス機能、あるいはショベル100を自動的(または自律的)に動作さるマシンコントロール機能を含む。また、コントローラ90は、ショベル100の周囲に存在する物体とショベル100との接触を回避するためにショベル100を自動的に動作させたり、あるいは制動させたりする接触回避機能を含んでもよい。換言すれば、運転支援とは、ショベル100を操作者に代わって自動的に動作させること、ショベル100の操作者の操作を補助すること、およびショベル100の操作者に操作の情報を提供することを含む概念である。
【0026】
ショベル支援システムSYSは、ショベル100内に設けられる複数種類のセンサおよび外部センサ200と、各センサの情報を処理して運転支援の各機能を実行するコントローラ90と、を含んで構成される。例えば、ショベル100内に設けられる複数種類のセンサとしては、LiDAR、カメラ(単眼、複眼を含む)、超音波センサ、ミリ波レーダ、距離画像センサ、赤外線センサ等の空間認識センサ、ブーム角度センサ、アーム角度センサ、バケット角度センサ、機体傾斜センサおよび旋回角速度センサ等の姿勢検出センサ、GNSSセンサ等の測位センサ、各種のアクチュエータの状態を検出する状態検出センサがあげられる。
【0027】
あるいは、ショベル支援システムSYSは、ショベル100のコントローラ90を使用する他にも、ショベル100の外部に設置した管理装置300を使用する構成でもよい。管理装置300は、外部センサ200の検出情報を処理してコントローラ90に制御指令を送信する。管理装置300を適用することで、ショベル支援システムSYSは、複数台のショベル100(または他の作業機械)が連動するように動作を支援することも可能となる。さらにショベル支援システムSYSは、ショベル100を遠隔操作する構成でもよく、ショベル100の外部に当該ショベル100と情報通信可能な図示しない遠隔室を備える構成でもよい。遠隔室は、コントローラ90と同様の機能を有する遠隔コントローラを備え、この遠隔コントローラにより外部センサ200の検出情報を処理することができる。
【0028】
以上のショベル100は、通常、
図1に示すようにバケット6の凹部6Cを内側に向けた第1形態として、掘削対象である法面を掘削する。外部センサ200は、掘削対象を臨む(対向する)位置に配置されていることで、バケット6により掘削対象が遮蔽されたオクルージョンの状態を検出することになる。しかも、外部センサ200は、バケット6の凹部6Cの状態が見えないまま、掘削対象の検出を継続する。換言すれば、外部センサ200を用いて掘削対象を検出するショベル支援システムSYSでは、ショベル100の掘削作業において、バケット6の周辺の掘削対象の状態、およびバケット6自体の状態が認識し難くなる。
【0029】
図2は、ショベル100のバケット6を第2形態とした状態を概略的に示す側面図である。このため
図2に示すように、ショベル支援システムSYSは、外部センサ200の検出範囲において、バケット6の凹部6Cが外側の空間Soを臨む第2形態とする。これにより、外部センサ200は、掘削作業において、バケット6の凹部6Cに対向するようになり、バケット6の凹部6Cに収容された土砂を良好に検出できる。そして、コントローラ90は、外部センサ200のバケット6の土砂の検出情報に基づき、バケット6に収容された土砂の量や形状を推定して、さらにバケット6に遮蔽された箇所の掘削状態を推定することが可能となる。
【0030】
例えば、コントローラ90は、バケット6の第1形態から第2形態への移行動作について、バケット6により掘削対象の土砂を掘削した後に実行する。すなわち、コントローラ90は、凹部6Cが内側の空間Siを臨んだ第1形態で土砂を掘削して凹部6Cに土砂を収容した後に、駆動機構20によりバケット6を反転させる。これにより、ショベル支援システムSYSは、第1形態で掘削したバケット6の凹部6Cの土砂を、第2形態において外部センサ200に検出させることができる。以下、第1形態での掘削後にバケット6を第2形態に移行させるパターンを、掘削後回転パターンともいう。
【0031】
掘削後回転パターンでは、第1形態で掘削した土砂をこぼさないようにバケット6を回転させる。一例として、ショベル100は、アーム5を鉛直方向に略平行な姿勢としつつ、バケット6の開口6Coが略水平となるバケット角とした後に、駆動機構20によりバケット6を回転させる。なお、ショベル支援システムSYSは、外部センサ200により第2形態のバケット6の土砂を検出した後、バケット6を第1形態に戻して堆積場所(トラックの荷台等)に土砂を搬送してもよく、または第2形態のまま堆積場所に土砂を搬送してもよい。あるいは、ショベル支援システムSYSは、土砂の搬送中にバケット6を第2形態から第1形態に戻してもよい。これにより、堆積場所において第1形態のバケット6から土砂をスムーズに排出することができる。
【0032】
また例えば、コントローラ90は、バケット6の第1形態から第2形態への移行動作について、外部センサ200が検出している掘削対象の土砂を掘削する前に実行してもよい。以下、第1形態のバケット6を掘削前に第2形態に移行するパターンを掘削前回転パターンという。
【0033】
掘削前回転パターンの一例として、コントローラ90は、外部センサ200の検出範囲内にバケット6が入ったか否かを判定し、検出範囲内にバケット6が入った場合に第1形態から第2形態へ移行することがあげられる。これにより、ショベル100は、第2形態のバケット6を用いて掘削対象の土砂を掘削する一方で、外部センサ200は、バケット6の周辺の掘削対象およびバケット6の凹部6C内の土砂を安定的に検出することが可能となる。よって、ショベル支援システムSYSは、外部センサ200により適切に検出を行いながら、運転支援(ショベル100の掘削作業の支援)を継続できる。
【0034】
また掘削前回転パターンを実施した場合に、例えば、コントローラ90は、外部センサ200の検出範囲外にバケット6が移動すると、第2形態から第1形態に戻す動作を行ってもよい。これにより、堆積場所において第1形態のバケット6から土砂をスムーズに排出することができる。
【0035】
図3は、運転支援を行う際のコントローラ90の機能ブロックを示すブロック図である。上記の動作を実行するために、コントローラ90の内部には、検出情報取得部91、掘削状態認識部92、バケット形態認識部93、支援制御部94等が構築される。さらに、支援制御部94の内部には、機体動作制御部95、バケット切替判定部96、バケット形態制御部97、報知部98が形成される。
【0036】
検出情報取得部91は、外部センサ200から検出情報を取得して、この検出情報をメモリに記憶すると共に、掘削状態認識部92に出力する。
【0037】
掘削状態認識部92は、取得した外部センサ200の検出情報を処理して、掘削対象の状態、および/またはバケット6の凹部6Cの状態を認識する。掘削対象の状態としては、掘削対象の形状、位置(外部センサ200からの距離、あるいはショベル100からの距離)等があげられる。バケット6の凹部6Cの状態としては、凹部6Cに収容された土砂の量、形状等があげられる。また例えば、掘削前回転パターンを実行する場合に、掘削状態認識部92は、外部センサ200の検出範囲内にバケット6が入り込んだか否かを識別(判定)する機能を有してもよい。
【0038】
バケット形態認識部93は、ショベル100の適宜のセンサの情報を取得して、バケット6の形態(第1形態、第2形態、または他のロール角)を認識する。なお、バケット形態認識部93は、バケット6の形態について外部センサ200が検出する検出情報を利用してもよい。
【0039】
支援制御部94は、掘削状態認識部92やバケット形態認識部93が認識した情報に基づき、ショベル100における運転支援を実行する。運転支援において、支援制御部94は、バケット6の第1形態から第2形態への移行動作、またはバケット6の第2形態から第1形態への移行動作を制御または案内する。
【0040】
機体動作制御部95は、運転支援における下部走行体1、上部旋回体2およびアタッチメントAT等の動作内容を設定し、設定した動作内容について出力装置12に表示する、あるいは動作内容に基づき各種のアクチュエータを制御する等の処理を行う。なお、ショベル100の運転支援では、種々のセンサの情報を利用して動作内容を設定し得ることは勿論である。
【0041】
バケット切替判定部96は、認識したショベル100の形態や外部センサ200の検出情報に基づき、バケット6の姿勢について判定する。そして、バケット切替判定部96は、第1形態において第1切替条件の成立を判定すると、第1形態から第2形態への移行を決定する。例えば、掘削後回転パターンを実施する場合の第1切替条件としては、第1形態のバケット6をアームイン側に移動させて掘削対象を掘削する動作を1回以上行う、重量センサによりバケット6の土砂の重量変化を検出する等があげられる。一方、掘削前回転パターンを実施する場合の第1切替条件としては、第1形態のバケット6を外部センサ200により検出する(外部センサ200の検出範囲内にバケット6が進入する)ことがあげられる。
【0042】
掘削前回転パターンの上記の判定を行うため、バケット切替判定部96は、例えば、バケット6と外部センサ200との相対的な位置を監視する位置監視部96aを備える。位置監視部96aは、予め保有する外部センサ200の位置、ショベル100の測位センサによるショベル100の位置、ショベル100の姿勢検出センサの検出情報に基づき、外部センサ200とバケット6の相対位置を監視する。
【0043】
図4は、ショベル100のバケット6の形態と外部センサ200の検出範囲との関係を示す平面図であり、
図4(A)は第1例を示す図、
図4(B)は第2例を示す図、
図4(C)は第3例を示す図、
図4(D)は第4例を示す図である。例えば
図4(A)に示すように、ショベル100が外部センサ200の検出部に対向する位置にあり、また外部センサ200の検出範囲内にバケット6がある場合、第1形態のバケット6では掘削対象の状態およびバケット6の凹部6Cの状態が分からなくなる。このため、ショベル100は、バケット6を第2形態とすることで、外部センサ200の検出を良好に実施させることができる
【0044】
一方、
図4(B)に示すように、ショベル100が外部センサ200の検出部に対向する位置にある一方で、アタッチメントATが掘削対象から離れた角度になった場合、外部センサ200は、掘削対象を良好に検出できる。したがって、ショベル100は、バケット6を第1形態とすることで、掘削作業を効率的に進めることができる。なお、
図4(B)の状態で、仮に外部センサ200の検出範囲にバケット6が入ったとしても、ショベル100は、バケット6の第1形態を継続する。したがって、バケット6の第1切替条件の判定では、ショベル100と外部センサ200の相対位置を判定すると共に、平面視における外部センサ200の検出軸(光軸)に対するアタッチメントATの角度を判定することが好ましい。
【0045】
これにより、
図4(C)に示すように、ショベル100が外部センサ200の検出部に対向する位置にある一方で、外部センサの検出軸に対してアタッチメントATの角度が傾斜した場合でも、バケット6を第2形態として掘削を行うことができる。また、
図4(D)に示すように、ショベル100の上部旋回体2が外部センサ200の検出範囲外にある一方で、バケット6が検出範囲内にある場合でも、バケット6を第2形態として掘削を行うことができる。
【0046】
図3に戻り、バケット切替判定部96は、第2形態において第2切替条件の成立を判定すると、第2形態から第1形態への移行を決定する。例えば、掘削後回転パターンを実施する場合の第2切替条件としては、第2形態のバケット6の凹部6Cの土砂について外部センサ200の検出が終了する、バケット6の土砂を排出する移動を開始する(または移動中となる)等があげられる。一方、掘削前回転パターンを実施する場合の第2切替条件としては、外部センサ200において第2形態のバケット6が非検出となる(外部センサ200の検出範囲外にバケット6が移動する)ことがあげられる。なお、第1切替条件や第2切替条件としては、この他にも操作者による切替操作を採用してよい。
【0047】
バケット形態制御部97は、バケット切替判定部96の判定結果に基づき駆動機構20の動作を制御することで、バケット6の姿勢(第1形態、第2形態)を設定する。バケット形態制御部97は、バケット6の凹部6C内に土砂がある場合に、機体動作制御部95による上部旋回体2の旋回やアタッチメントATの動作と連動することで、バケット6を回転させて第1姿勢および第2姿勢を切り替える。これにより、バケット6に収容された土砂がこぼれることを防止できる。
【0048】
報知部98は、バケット6の第1形態および第2形態を切り替える場合に、その旨の情報を出力装置12に送信することで、操作者にバケット6の姿勢の切り替えを報知する。これにより、操作者は、バケット6の姿勢の切り替えを迅速に認識できる。例えば、第1形態から第2形態への移行が報知された場合に、操作者は、バケット6の姿勢の切替停止操作(あるいは、第1形態に戻す操作)を行うことで、第1形態のまま掘削を継続することができる。
【0049】
実施形態に係るショベル支援システムSYSおよびショベル100は、基本的には以上のように構成され、以下その動作方法について
図5を参照しながら説明する。
図5は、ショベル100のバケット6の動作方法を示すフローチャートである。なお、以下では、ショベル100により掘削前回転パターンを行い、かつ掘削作業を自動制御する場合について説明する。
【0050】
ショベル100は、掘削作業において、第1形態に設定したバケット6により掘削対象を掘削しようとしている。ショベル支援システムSYSは、この掘削作業時において、
図5に示すようなバケット6の動作方法を行う。バケット6の動作方法のステップS101~S108は、コントローラ90の制御下に実行される。
【0051】
具体的には、コントローラ90は、掘削作業時に、位置監視部96aによりショベル100と外部センサ200との相対位置を監視している(ステップS101)。
【0052】
そして、バケット切替判定部96は、第1切替条件が成立したか否か、例えば外部センサ200の検出範囲内にバケット6が入ったか否かを判定する(ステップS102)。バケット6が外部センサ200の検出範囲外にある場合(ステップS102:NO)、コントローラ90は、バケット6の第1形態を継続する(ステップS103)。そしてステップS101に戻り、位置監視部96aによりショベル100と外部センサ200との相対位置の監視を継続する。一方、外部センサ200の検出範囲内にバケット6が配置された場合(ステップS102:YES)には、ステップS104に進む。
【0053】
ステップS104において、コントローラ90のバケット形態制御部97は、駆動機構20の動作を制御してバケット6を回転させて、第1形態から第2形態に移行させる。これにより、バケット6の凹部6Cが外部センサ200を臨むような姿勢となる。
【0054】
コントローラ90の機体動作制御部95は、第2形態のバケット6により掘削対象の掘削を制御する(ステップS105)。この際、コントローラ90は、検出情報取得部91によりバケット6の周辺の掘削対象の地形、およびバケット6の凹部6C内の土砂を検出した外部センサ200の検出情報を取得することで、この検出情報に基づきバケット6の動作を適切に制御できる。
【0055】
コントローラ90の位置監視部96aは、第2形態のバケット6による掘削時も、バケット6と外部センサ200との相対位置を監視する(ステップS106)。そして、バケット切替判定部96は、第2切替条件が成立したか否か、すなわち第2形態のバケット6を第1形態に移行するか否かを判定する(ステップS107)。例えば、外部センサ200の検出範囲内にバケット6がある場合、バケット切替判定部96は、第2形態の継続を判定し(ステップS107:NO)、ステップS105に戻る。
【0056】
一方、バケット6が外部センサ200の検出範囲外の掘削を行う等の場合、バケット切替判定部96は、第2形態から第1形態に戻すことを判定する(ステップS107:YES)。これにより、コントローラ90のバケット形態制御部97は、駆動機構20の動作を制御してバケット6を回転させて、第2形態から第2形態に移行させる(ステップS108)。その結果、外部センサ200の検出範囲外では、第1形態のバケット6により掘削をスムーズに進めることができる。
【0057】
以上のように、実施形態に係るショベル100、およびショベル支援システムSYSは、外部センサ200の検出範囲内においてバケット6を第2形態として、外部センサ200の検出情報に基づきショベル100を適切に制御できる。これにより、作業現場のショベル100の各々に高額なセンサを適用する必要がなくなり、掘削作業全体にかかるコストを抑制できる。しかも、外部センサ200がバケット6の周辺の掘削対象の状態およびバケット6の凹部6Cの状態を検出することで、ショベル100による掘削対象の掘削を効率的に行うことができる。
【0058】
なお、ショベル100、およびショベル支援システムSYSは、上記の実施形態に限定されず、種々の変形例をとり得る。例えば、ショベル100は、駆動機構20を備えずに、作業者によるアーム5へのバケット6の取り付けにおいて、当該バケット6の第1形態および第2形態を切り替えてもよい(ローテータに代えてクイックカプラを搭載した構成でもよい)。この場合でも、外部センサ200の検出範囲内においてバケット6が第2形態となっていることで、外部センサ200は、バケット6の周辺の掘削対象の状態およびバケット6の凹部6Cの状態を良好に検出できる。コントローラ90は、この外部センサ200の検出情報を処理することで、ショベル100の運転支援を適切に実行することが可能となる。
【0059】
また例えば、ショベル100、およびショベル支援システムSYSは、掘削作業時のバケット6の姿勢について180°反転させる構成に限定されない。例えば、外部センサ200の検出軸に対してアタッチメントATの角度が傾斜している場合に、コントローラ90および駆動機構20は、第2形態において外部センサ200の検出部に対向するようにバケット6のロール角を調整してもよい。
【0060】
以上の実施形態で説明した本開示の技術的思想および効果について以下に記載する。
【0061】
本開示の第1の態様に係るショベル100は、下部走行体1と、下部走行体1に旋回可能に設けられる上部旋回体2と、上部旋回体2に設けられ、バケット6を保持するアタッチメントATと、バケット6が掘削する掘削対象を検出する外部センサ200の検出情報を受信して、当該検出情報を処理する制御部(コントローラ90)と、を備え、アタッチメントATは、バケット6の保持状態で、当該バケット6の凹部6CがアタッチメントATの内側の空間Siに向かう第1形態と、当該バケット6の凹部6CがアタッチメントATの外側の空間Soに向かう第2形態と、を選択的にとることが可能であり、バケット6は、外部センサ200の検出範囲内において第2形態となっている。
【0062】
上記によれば、ショベル100は、外部センサ200の検出範囲において第2形態となっていることで、掘削作業にかかるコストを抑制しながら、掘削対象の状態およびバケット6の状態を容易に検出できる。すなわち、外部センサ200を適用することで、作業現場の複数のショベル100毎に高額なセンサを搭載しなくてもよくなり、コストを低減できる。また、外部センサ200を用いた場合に生じるバケット6によるオクルージョンは、バケット6を第2形態とすることで解消できる。これにより、ショベル100は、外部センサ200の正確な検出情報を用いて、掘削作業を進める(例えば、運転支援を行う)ことができる。
【0063】
また、バケット6を回転させることで、第1形態と第2形態とに切り替え可能な駆動機構20を備え、制御部(コントローラ90)は、外部センサ200の位置およびバケット6の位置に基づき、駆動機構20を制御して第1形態および第2形態を切り替える。これにより、ショベル100は、バケット6の姿勢を容易に切り替えることが可能となる。
【0064】
また、制御部(コントローラ90)は、第1形態のバケット6が外部センサ200の検出範囲内に位置するか否かを判定し、バケット6が外部センサ200の検出範囲内に位置する場合に、第1形態から第2形態に移行させる。これにより、ショベル100は、外部センサ200の検出範囲内においてバケット6を確実に第2形態とすることができ、外部センサ200による検出を良好に行うことができる。
【0065】
また、制御部(コントローラ90)は、第2形態のバケット6が外部センサ200の検出範囲外に位置するか否かを判定し、バケット6が外部センサ200の検出範囲外に位置する場合に、第2形態から第1形態に移行させる。これにより、ショベル100は、外部センサ200の検出範囲外においてバケット6を第1形態に円滑に戻すことができる。
【0066】
また、制御部(コントローラ90)は、バケット6の第1形態と第2形態との切り替えを出力装置12に報知する。これにより、ショベル100の操作者は、バケット6の姿勢の切り替えを迅速に認識できる。
【0067】
また、制御部(コントローラ90)は、外部センサ200の検出情報に基づきアタッチメントATの動作を支援する。これにより制御部の運転支援において、ショベル100は、第2形態のバケット6に対する外部センサ200の検出情報を利用でき、掘削作業を精度よく実行することができる。
【0068】
また、本開示の第2の態様は、下部走行体1と、下部走行体1に旋回可能に設けられる上部旋回体2と、上部旋回体2に設けられ、バケット6を保持するアタッチメントATと、を備えるショベル100と、バケット6が掘削する掘削対象を検出する外部センサ200と、外部センサ200の検出情報を受信して、当該検出情報を処理する制御部(コントローラ90)と、を含むショベル支援システムSYSであって、アタッチメントATは、バケット6の保持状態で、当該バケット6の凹部6CがアタッチメントATの内側の空間Siに向かう第1形態と、当該バケット6の凹部6CがアタッチメントATの外側の空間Soに向かう第2形態と、を選択的にとることが可能であり、バケット6は、外部センサ200の検出範囲内において第2形態となっている。この場合でもショベル支援システムSYSは、掘削作業にかかるコストを抑制しながら、掘削対象の状態およびバケット6の状態を容易に検出できる。
【0069】
今回開示された実施形態に係るショベル100、およびショベル支援システムSYSは、すべての点において例示であって制限的なものではない。実施形態は、添付の請求の範囲およびその主旨を逸脱することなく、様々な形態で変形および改良が可能である。上記複数の実施形態に記載された事項は、矛盾しない範囲で他の構成も取り得ることができ、また、矛盾しない範囲で組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0070】
1 下部走行体
2 上部旋回体
6 バケット
6C 凹部
12 出力装置
20 駆動機構
90 コントローラ
100 ショベル
200 外部センサ
AT アタッチメント