(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024158019
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】釣り具品、及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
A01K 87/04 20060101AFI20241031BHJP
【FI】
A01K87/04 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023072801
(22)【出願日】2023-04-26
(71)【出願人】
【識別番号】000236609
【氏名又は名称】フドー株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000002495
【氏名又は名称】グローブライド株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003982
【氏名又は名称】弁理士法人来知国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100154405
【弁理士】
【氏名又は名称】前島 大吾
(74)【代理人】
【識別番号】100079005
【弁理士】
【氏名又は名称】宇高 克己
(72)【発明者】
【氏名】川野 和樹
(72)【発明者】
【氏名】大段 悠介
(72)【発明者】
【氏名】廣岡 伸樹
(72)【発明者】
【氏名】河合 一輝
【テーマコード(参考)】
2B019
【Fターム(参考)】
2B019BA01
2B019BA03
(57)【要約】
【課題】軽量で機械的強度に富む釣具品を提供することである。
【解決手段】釣具品であって、前記釣具品は釣糸ガイドであり、前記釣糸ガイドの本体部は繊維含有樹脂組成物で構成されてなり、前記本体部はリブを具備する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
釣具品であって、
前記釣具品は釣糸ガイドであり、
前記釣糸ガイドの本体部は繊維含有樹脂組成物で構成されてなり、
前記本体部はリブを具備する
釣具品。
【請求項2】
前記本体部は略リング形状部と略Y形状部とを具備してなり、
前記略Y形状部の分岐部の先端部が前記略リング形状部に繋がっており、
前記分岐部にリブが構成されてなる
請求項1の釣具品。
【請求項3】
前記分岐部の内側部分が薄肉状で前記分岐部の外側部分が厚肉状であって、前記厚肉状部分がリブである
請求項2の釣具品。
【請求項4】
前記本体部は略リング形状部と略Y形状部とを具備してなり、
前記略Y形状部の分岐部の先端部が前記略リング形状部に繋がっており、
前記分岐部に挟まれた位置の前記略リング形状部にリブが構成されてなる
請求項1又は請求項2の釣具品。
【請求項5】
前記繊維は炭素繊維が用いられてなる
請求項1の釣具品。
【請求項6】
前記繊維は繊維長さが1cm以上の繊維を有する
請求項1の釣具品。
【請求項7】
前記樹脂は熱硬化性樹脂が用いられてなる
請求項1の釣具品。
【請求項8】
前記樹脂組成物は(前記樹脂の量)/(前記樹脂の量+前記繊維の量)=30/100~60/100である
請求項1の釣具品。
【請求項9】
前記釣具品は吸水率が2.0%以下である
請求項1の釣具品。
【請求項10】
釣具品の製造方法であって、
前記釣具品は釣糸ガイドであり、
前記釣糸ガイドの本体部は繊維含有樹脂組成物で構成されてなり、
3Dプリンターが用いられて繊維を有する樹脂組成物が造形される造形工程と、前記造形工程で得られた造形物が加熱・加圧される加熱・加圧工程とを具備する
方法。
【請求項11】
前記加圧工程には金型が用いられ、
前記金型は金型半体Aと金型半体Bとを具備してなり、
前記金型半体Aおよび前記金型半体Bには、前記金型半体Aと前記金型半体Bとの対向面に、各々、凹面に角が無い凹部が形成されてなり、
前記金型半体Aの前記凹部に前記造形物が配置された後で前記金型半体Bが被せられて加熱・加圧される
請求項10の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は釣り具品に関する。
【背景技術】
【0002】
釣糸を案内する為の釣糸ガイドが知られている。
前記釣糸ガイドは、釣竿の外周面に装着されるフレームと、フレームに止着され、実際に釣糸が挿通されるガイドリングとを備えた構成である。前記フレームは、釣糸を挿通させるガイドリングを保持する為のリング保持部と、釣竿の外表面に装着するための固定部とが一体形成されていた。
前記フレームは、例えばステンレスやチタン等の金属製の板材料をプレス加工することで一体形成するのが一般的であった。前記製品が金属材料で構成されていると、重量が重い。撓み性等の性能が悪い。
上記構造の釣糸ガイドを軸長方向に沿って多数装着すると、全体が重く成り、より軽量化が要求される釣竿は所望の性能を発揮できない。
【0003】
斯かる観点から、繊維強化プラスチック製の釣糸ガイドが提案された。
例えば、「リング保持部と、釣竿に装着される固定部とを具備し、繊維強化プリプレグによって構成されるフレームを有する釣糸ガイドを製造する方法であって、マトリックス樹脂が熱可塑性樹脂である繊維強化プリプレグを積層した積層材を金型にセットし、加圧、固定して平面状部を有する前記フレームの外形状を形成する一次加工処理と、前記一次加工処理した積層材を前記金型とは別の金型にセットし、前記マトリックス樹脂が可塑状態となる温度で加熱、加圧してフレーム細部に形状変化を施して前記平面状部の延出方向に対して交差する加工処理面を形成し、常温で硬化させる二次加工処理とを有し、前記積層材からフレームの切り出しを、前記二次加工処理の前又は後に実行する釣糸ガイドの製造方法」が提案されている。
【0004】
「リング保持部と、釣竿に装着される固定部とを具備し、繊維強化プリプレグによって構成されるフレームを有する釣糸ガイドを製造する方法であって、マトリックス樹脂が熱硬化性樹脂である繊維強化プリプレグを積層した積層材を金型にセットし、未硬化状態となるように加熱、加圧、固定して平面状部を有する前記フレームの外形状を形成する一次加工処理と、前記一次加工処理した積層材を前記金型とは別の金型にセットして、前記未硬化状態の加熱温度以上の高い温度で加熱、加圧してフレーム細部に形状変化を施して前記平面状部の延出方向に対して交差する加工処理面を形成し完全硬化させる二次加工処理とを有し、前記積層材からフレームの切り出しを、前記二次加工処理の前又は後に実行する釣糸ガイドの製造方法」が提案(特許第5460441号)されている。
【0005】
「強化繊維と合成樹脂をマトリックス材料とした繊維強化合成樹脂材料を、金型に形成したフレーム成形用の溝の中にその延設方向に沿って配設する工程と、前記繊維強化合成樹脂材料を加熱成形する工程とを有し、前記金型は、ガイドリングを配置する空間を有しており、前記繊維強化合成樹脂材料を、金型に形成したフレーム成形用の溝の中にその延設方向に沿って配設する際に、前記空間にガイドリングを配置すると共にガイドリングを配置した位置にバリ防止部材を配設し、前記ガイドリングを繊維強化合成樹脂材料と共に加圧状態で加熱成形する釣糸ガイドの製造方法」が提案されている。
【0006】
「強化繊維と合成樹脂をマトリックス材料とした繊維強化合成樹脂材料を、金型に形成したフレーム成形用の溝の中にその延設方向に沿って配設する工程と、前記繊維強化合成樹脂材料を加熱成形する工程とを有し、前記繊維強化合成樹脂材料は、多数本の強化繊維が軸方向に沿って束状にされた糸状体にした構成であり、これを前記金型の溝の延設方向に沿わせており、前記フレームを構成するリング保持部と支脚部と固定部の内、少なくとも二つの部分に亘って前記糸状体を連続的に配設した部位を有する釣糸ガイドの製造方法」が提案されている。
【0007】
「繊維強化合成樹脂製のフレームを有し、釣糸を挿通させるリング保持部と、釣竿表面から釣糸を離間させる支脚部とを具備した釣糸ガイドであって、前記フレームは、多数本の強化繊維が軸方向に沿って束状に構成された糸状体の強化繊維を配設した部位を有する釣糸ガイド」が提案(特許第5514061号)されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第5460441号
【特許文献2】特許第5514061号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
前記特許文献に開示の釣具品は優れたものであった。
しかし、更に軽量で機械的強度に富む釣具品が求められた。
前記特長の釣具品を簡単に製造できる技術が求められた。
【0010】
本発明が解決しようとする課題は、軽量で機械的強度に富む釣具品を提供する事である。前記特長の釣具品を簡単に製造できる技術を提供する事である。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、
釣具品であって、
前記釣具品は釣糸ガイドであり、
前記釣糸ガイドの本体部は繊維含有樹脂組成物で構成されてなり、
前記本体部はリブを具備する
釣具品を提案する。
【0012】
本発明は、前記釣具品であって、好ましくは、前記本体部は略リング形状部と略Y形状部とを具備してなり、前記略Y形状部の分岐部の先端部が前記略リング形状部に繋がっており、前記分岐部にリブが構成されてなる釣具品を提案する。
【0013】
本発明は、前記釣具品であって、好ましくは、前記分岐部の内側部分が薄肉状で前記分岐部の外側部分が厚肉状であって、前記厚肉状部分がリブである釣具品を提案する。
【0014】
本発明は、前記釣具品であって、好ましくは、前記本体部は略リング形状部と略Y形状部とを具備してなり、前記略Y形状部の分岐部の先端部が前記略リング形状部に繋がっており、前記分岐部に挟まれた位置の前記略リング形状部にリブが構成されてなる釣具品を提案する。
【0015】
本発明は、前記釣具品であって、好ましくは、前記分岐部に挟まれた位置の前記略リング形状部のリング外側部分が薄肉状で前記略リング形状部のリング内側部分が厚肉状であって、前記厚肉状部分がリブである釣具品を提案する。
【0016】
本発明は、前記釣具品であって、好ましくは、前記略Y形状部における分岐部の延在方向が前記略リング形状部に対する略接線の方向である釣具品を提案する。
【0017】
本発明は、前記釣具品であって、好ましくは、前記略Y形状部の分岐部の幅が前記略リング形状部の幅よりも広い釣具品を提案する。
【0018】
本発明は、前記釣具品であって、好ましくは、前記略Y形状部の分岐部のリブ部分における厚さが前記略リング形状部の厚さと略同じである釣具品を提案する。
【0019】
本発明は、前記釣具品であって、好ましくは、前記略Y形状部の基部の幅は先端部から基端部に向かってほぼ単調減少である釣具品を提案する。
【0020】
本発明は、前記釣具品であって、好ましくは、前記略Y形状部の基部の厚さは先端部から屈曲位置に向かってほぼ単調増加である釣具品を提案する。
【0021】
本発明は、前記釣具品であって、好ましくは、前記略Y形状部の基部の厚さは屈曲位置を過ぎた位置から基端部に向かって薄くなる釣具品を提案する。
【0022】
本発明は、前記釣具品であって、好ましくは、前記繊維は、前記略リング形状部と前記略Y形状部とに跨って存在している釣具品を提案する。
【0023】
本発明は、前記釣具品であって、好ましくは、前記繊維は炭素繊維が用いられてなる釣具品を提案する。
【0024】
本発明は、前記釣具品であって、好ましくは、前記繊維は繊維長さが1cm以上の繊維を有する釣具品を提案する。
【0025】
本発明は、前記釣具品であって、好ましくは、前記樹脂は熱硬化性樹脂が用いられてなる釣具品を提案する。
【0026】
本発明は、前記釣具品であって、好ましくは、前記樹脂組成物は(前記樹脂の量)/(前記樹脂の量+前記繊維の量)=30/100~60/100である釣具品を提案する。
【0027】
本発明は、前記釣具品であって、好ましくは、前記釣具品は吸水率が2.0%以下である釣具品を提案する。
【0028】
本発明は、
釣具品の製造方法であって、
前記方法は、
3Dプリンターが用いられて繊維を有する樹脂組成物が造形される造形工程と、
前記造形工程で得られた造形物が加熱・加圧される加熱・加圧工程
とを具備する
釣具品の製造方法を提案する。
【0029】
本発明は、前記釣具品の製造方法であって、好ましくは、前記加熱・加圧工程は、前記造形物が金型内に配置されて加熱・加圧される工程である釣具品の製造方法を提案する。
【0030】
本発明は、前記釣具品の製造方法であって、好ましくは、前記金型は金型半体Aと金型半体Bとを具備してなり、前記金型半体Aおよび前記金型半体Bには、前記金型半体Aと前記金型半体Bとの対向面に、各々、凹面に角が無い凹部が形成されてなり、前記金型半体Aの前記凹部に前記造形物が配置された後で前記金型半体Bが被せられて加熱・加圧される釣具品の製造方法を提案する。
【0031】
本発明は、前記釣具品の製造方法であって、好ましくは、前記繊維が炭素繊維である釣具品の製造方法を提案する。
【0032】
本発明は、前記釣具品の製造方法であって、好ましくは、前記繊維は繊維長さが1cm以上の繊維を含む釣具品の製造方法を提案する。
【0033】
本発明は、前記釣具品の製造方法であって、好ましくは、前記樹脂は熱硬化性樹脂である釣具品の製造方法を提案する。
【0034】
本発明は、前記釣具品の製造方法であって、好ましくは、前記樹脂組成物は(前記繊維の量)/(前記樹脂の量+前記繊維の量)=30/100~60/100である釣具品の製造方法を提案する。
【0035】
本発明は、前記釣具品の製造方法であって、好ましくは、前記樹脂組成物は吸水率が2.0%以下である釣具品の製造方法を提案する。
【発明の効果】
【0036】
本発明になる釣具品は、軽量で、機械的強度に富んでいた。
前記特長の釣具品を簡単に製造できた。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【
図1】本発明になる釣糸ガイドの一面(前面)側からの斜視図
【
図2】本発明になる釣糸ガイドの他面(背面)側からの斜視図
【発明を実施するための形態】
【0038】
本発明の実施形態が説明される。
【0039】
第1の発明は釣具品である。前記釣具品は、例えば釣糸ガイドである。前記釣糸ガイドの本体部は繊維含有樹脂組成物で構成されている。前記本体部はリブを具備する。是までの提案になる釣糸ガイドにはリブ(リブ構造)が無かった。これに対して、本発明にあっては、リブ(リブ構造)が設けられている。是によって、機械的強度が向上した。しかも、リブ(リブ構造)を持たせたが故に、本発明の釣糸ガイドは是までの釣糸ガイドよりも軽量であった。
【0040】
前記本体部は、好ましくは、釣糸が挿通される事になる略リング形状部を具備する。前記本体部は、好ましくは、前記略リング形状部を釣竿に取り付ける為の支持部を具備する。
前記支持部は、好ましくは、釣竿側に位置する基部(幹部)を具備する。前記支持部は、好ましくは、前記基部(幹部)の先端において分かれた枝部(分岐部:斯の枝部(分岐部)の先端が前記リング形状部に繋がる)を具備する。
前記略リング形状部は環状であれば良く、円形、楕円形、三角形や四角形などの多角形の何れであっても良い。前記略リング形状部は、一部が途切れていても(開環状(略C形状)であっても)良く、即ち、必ずしも、クローズな形態でなくても良い。但し、一般的にはクローズな環状である。
前記支持部は、例えば略Y形状である。斯の略Y形状の分岐部(枝部)の先端部が前記略リング形状部に繋がっている。前記略リング形状部を支持するのは略Y形状部である。前記略Y形状部は次のような場合も含まれる。略Y形状部の先端側は略V形状になっている。すなわち、先端側は2本であるが、是は3本以上であっても良い。何本であっても良いが、現実的には2本か3本であろう。是は、数が多くなる程、重くなるからである。
前記略リング形状部に釣糸からの力が作用すると、この力が前記略リング形状部を支持する支持部(分岐部:枝部)の先端部に作用する。支持部(分岐部:枝部)が、一つでは無くて、複数有るので、即ち、支持部(支持する先端部)が略Y形状である事から、支持部が撓み(捻じれ)難い。
撓み(捻じれ)難いと雖も、支持部(分岐部:枝部)の先端部が、例えば二つに分割されたので、一つ一つの支持部(分岐部:枝部)の機械的強度は低下する。そこで、機械的強度の低下を補う為、前記分岐部(枝部)にリブを構成する事にした。前記分岐部の内側部分が薄肉である。前記分岐部の外側部分が厚肉である。前記厚肉部分がリブである。リブ構造を前記構造とするのが好ましかった理由は次の通りであった。前記分岐部の内側部分を厚肉で外側部分を薄肉としたリブ構造よりも、前記リブ構造(即ち、リブを内側位置より外側位置に設けた構造)とした場合は、捻じれ等の変形圧力に対する耐力が大きかったからである。
リブ構造は前記分岐部(枝部)以外に構成されても良い。例えば、前記分岐部に挟まれた位置の前記略リング形状部にリブが構成される。前記分岐部に挟まれた位置の前記略リング形状部のリング外側部分が薄肉で前記略リング形状部のリング内側部分が厚肉である。前記厚肉部分がリブである。前記分岐部の内側部分を薄肉としたリブ構造としたので、前記リング外側部分を薄肉とした。逆にした場合は構造が複雑になる。
【0041】
前記略Y形状部の分岐部(枝部)の延在方向は、好ましくは、前記略リング形状部に対する略接線の方向であった。その理由は次の通りである。分岐部と略リング形状部との連結方向が前記略リング形状部に対する略接線の方向であると、略リング形状部に加わった力を分岐部がしっかり受け止める事が出来た。
前記略Y形状部の分岐部(枝部)の幅は、好ましくは、前記略リング形状部の幅よりも広いものであった。その理由は次の通りである。分岐部(枝部)の幅を大きくしていると、分岐部の機械的強度が高まり、略リング形状部に加わった力を分岐部が無理なく受け止める事が出来た。
前記略Y形状部の分岐部(枝部)のリブにおける厚さは、好ましくは、前記略リング形状部の厚さと略同じであった。その理由は次の通りである。同じ厚さにする事によって、構造が簡単になった。
前記略Y形状部の基部(幹部:前記分岐部(枝部)が派生した根元側の部分)の幅は、好ましくは、先端部(分岐部同士がつながった個所)から基端部(屈曲位置)に向かってほぼ単調に減少するものであった。前記略Y形状部の基部(幹部)の厚さは、好ましくは、先端部から屈曲位置に向かってほぼ単調に増加するものであった。その理由は次の通りである。幅が狭くなっても厚さを厚くする事によって、基部(幹部)の機械的強度を確保できたからである。すなわち、略リング形状部に加わった力を基部がしっかり受け止める事が出来た。
前記略Y形状部の基部(幹部)の厚さは、好ましくは、屈曲位置を過ぎた位置から基端部に向かって薄くなるものであった。その理由は次の通りである。基部を釣竿に固定し易くする為、屈曲位置と基端部との略中間位置から基端部に掛けての厚さを薄くした。
前記繊維は、前記略リング形状部と前記略Y形状部とに跨って存在しているものであった。
【0042】
前記釣糸ガイドに関する構造は、適宜、前記特許文献1(特許第5460441号公報)や特許文献2(特許第5514061号公報)に開示の内容を採用できる。例えば、前記本体部の構造に、必要に応じて、前記特許文献1や特許文献2に開示の内容を採用できる。例えば、前記略リング形状部に金属(例えば、Ti,Al,Mg,SUS等)或いはセラミック製のリングを設ける事が出来る。前記略Y形状部の基部(幹部)を釣り竿に取り付け易い構造、例えば屈曲形状とする事が出来る。
【0043】
前記釣糸ガイドの本体部を構成する繊維含有樹脂組成物の繊維には強化用繊維が用いられる。前記繊維としては、無機繊維が挙げられる。有機繊維であっても良い。両者の併用であっても良い。前記繊維は次の要件が満たされておれば良い。(前記略リング形状部の一周の1/4以上の長さ)≦(前記繊維の長手方向の長さ)。或いは、(前記略Y形状部の基端から一つの分岐部端までの長さの1/2以上の長さ)≦(前記繊維の長手方向の長さ)。好ましくは、(前記略Y形状部の基端から前記略リング形状部の一部周囲を囲む長さ)≦(前記繊維の長手方向の長さ)。前記本体部の大きさによっても相違するが、具体的な数値としては、例えば1cm以上である。好ましくは2cm以上であった。より好ましくは3cm以上であった。更には6cm以上であった。本発明で使用する連続強化繊維の平均繊維長は特に制限はないが、成形加工性を良好にする観点から、0.05~20000mの範囲のものが好ましかった。より好ましくは100~10000mであった。更に好ましくは1000~7000mであった。3cm(6cm)を超える繊維長と3cm(6cm)以下の繊維長の併用であっても良い。本発明における繊維の長さは、特に述べない限り、重量平均繊維長である。前記繊維の平均繊維径は、好ましくは、3μm以上であった。より好ましくは4μm以上であった。更に好ましくは5μm以上であった。好ましくは50μm以下であった。より好ましくは20μm以下であった。更に好ましくは12μm以下であった。前記平均繊維径は、単糸の直径である。
【0044】
前記無機繊維の例として、例えば炭素繊維、炭化珪素繊維、アルミナ繊維、ボロン繊維、ガラス繊維、金属繊維などが挙げられる。これ等に限られない。一種のみでなく複数種の繊維が併用されても良い。尚、機械的強度や軽量性の観点から、好ましくは、炭素繊維であった。
前記炭素繊維としては、ポリアクリロニトリル(PAN)系炭素繊維、石油・石炭ピッチ系炭素繊維、レーヨン系炭素繊維、セルロース系炭素繊維、リグニン系炭素繊維、フェノール系炭素繊維、気相成長系炭素繊維などが例示される。これ等の中から一種または二種以上が適宜用いられる。用いられる炭素繊維は、好ましくは、引張弾性率が100GPa~1000GPaのものであった。炭素繊維の形態は、特に限定されない。炭素繊維の形態は、連続繊維でも、不連続繊維でもよい。連続繊維としては、例えば炭素繊維を一方向に配置したもの(一方向材)が挙げられる。不連続繊維を用いる場合としては、樹脂中に、例えば炭素繊維が特定の方向に配向するように配置された材料、面内方向にランダムに分散して配置された材料などが挙げられる。炭素繊維は、単糸状のもの、繊維束状のもの、両者の混在物でも良い。炭素繊維は、一般的に、数千~数万本のフィラメントが集合した繊維束状となっている。炭素繊維として炭素繊維束を用いる場合に、炭素繊維束をこのまま使用すると、繊維束の交絡部が局部的に厚くなり、薄肉の端面を有する炭素繊維強化樹脂加工品を得ることが困難になる場合がある。従って、炭素繊維として炭素繊維束を用いる場合は、炭素繊維束を拡幅したり、又は開繊したりして使用するのが好ましい。
前記金属繊維の例として、例えばAl繊維、Au繊維、Ag繊維、Fe繊維、ステンレス繊維などが挙げられる。
有機繊維の例として、例えばアラミド繊維、芳香族ポリアミド繊維、セルロース繊維、ポリエチレン繊維、ポリ(パラフェニレンベンゾビスオキサゾール)繊維(Zylon(東洋紡社製))などが挙げられる。
前記繊維は処理剤で処理されていても良い。前記処理剤としては集束剤が挙げられる。表面処理剤が挙げられる。例えば、特許第4894982号公報に開示の処理剤が挙げられる。前記繊維表面の処理剤と前記樹脂の官能基(反応性基:極性基)とが反応した場合、好都合である。
前記処理剤は、例えばエポキシ樹脂、ウレタン樹脂、シランカップリング剤、水不溶性ポリアミド樹脂、及び水溶性ポリアミド樹脂の群の中から選ばれる。好ましくは、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、水不溶性ポリアミド樹脂、及び水溶性ポリアミド樹脂の群の中から選ばれる。一種であっても、二種以上が用いられても良い。
【0045】
前記釣糸ガイドの本体部を構成する繊維含有樹脂組成物の樹脂としては各種の樹脂を用いる事が出来る。前記本体部は、例えば後述する付加製造技術で作製される。従って、好ましくは、付加製造技術で用いることが出来る樹脂(マトリックス樹脂)である。斯かる樹脂として熱可塑性樹脂が挙げられる。熱硬化性樹脂が挙げられる。どちらか一方が用いられるのみでも良い。併用されても良い。樹脂は、一種類であっても、二種類以上であっても良い。前記樹脂の形態はフィルム状(又はシート状)であっても良い。前記樹脂の形態は繊維(糸、又はフィラメント)状であっても良い。前記樹脂が繊維状の場合は、本発明にあっては、所謂、混繊糸(例えば、WO2016/167136A1参照)である。混繊糸の場合、WO2016/167136A1に開示の技術を採用できる。前記樹脂は官能基(反応性基:極性基)を持つものが好ましい。官能基(反応性基:極性基)を持たない樹脂を用いることも出来る。
熱可塑性樹脂には、熱可塑性樹脂のみからなる場合と、熱可塑性樹脂を主成分とする場合とがある。本発明にあっては、何れの場合でも良い。本発明(本明細書)において、熱可塑性樹脂の言葉には、特に、断らない限り、熱可塑性樹脂のみからなる場合、熱可塑性樹脂を主成分とする場合の双方が含まれる。熱可塑性樹脂が主成分とは、熱可塑性樹脂が50質量%以上の場合である。好ましくは、80質量%以上である。更に好ましくは90質量%以上である。
熱硬化性樹脂には、熱硬化性樹脂のみからなる場合と、熱硬化性樹脂を主成分とする場合とがある。本発明にあっては、何れの場合でも良い。本発明(本明細書)において、熱硬化性樹脂の言葉には、特に、断らない限り、熱硬化性樹脂のみからなる場合、熱硬化性樹脂を主成分とする場合の双方が含まれる。熱硬化性樹脂が主成分とは、熱硬化性樹脂が50質量%以上の場合である。好ましくは、80質量%以上である。更に好ましくは90質量%以上である。
熱硬化性樹脂としては、例えばエポキシ樹脂、ビニルエステル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ジアリルフタレート樹脂、フェノール樹脂、マレイミド樹脂、シアネート樹脂、ベンゾオキサジン樹脂、ジシクロペンタジエン樹脂などが例示される。
熱可塑性樹脂としては、例えばポリオレフィン樹脂、ポリスチレン樹脂、熱可塑性ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアセタール樹脂(ポリオキシメチレン樹脂)、ポリカーボネート樹脂、(メタ)アクリル樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエーテルニトリル樹脂、フェノキシ樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリケトン樹脂、ポリエーテルケトン樹脂、熱可塑性ウレタン樹脂、フッ素系樹脂、熱可塑性ポリベンゾイミダゾール樹脂などが例示される。
前記ポリオレフィン樹脂としては、例えばポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリブタジエン樹脂、ポリメチルペンテン樹脂、塩化ビニル樹脂、塩化ビニリデン樹脂、酢酸ビニル樹脂、ポリビニルアルコール樹脂などが例示される。
前記ポリスチレン樹脂としては、例えばポリスチレン樹脂、アクリロニトリル-スチレン樹脂(AS樹脂)、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン樹脂(ABS樹脂)などが例示される。
前記ポリアミド樹脂としては、例えばポリアミド6樹脂(ナイロン6)、ポリアミド11樹脂(ナイロン11)、ポリアミド12樹脂(ナイロン12)、ポリアミド46樹脂(ナイロン46)、ポリアミド66樹脂(ナイロン66)、ポリアミド610樹脂(ナイロン610)などが例示される。前記ポリアミド系樹脂の一つであるナイロン(以下「PA」と略記することがある)としては、PA6(ポリカプロアミド、ポリカプロラクタム、ポリε-カプロラクタムとも称される)、PA26(ポリエチレンアジパミド)、PA46(ポリテトラメチレンアジパミド)、PA66(ポリヘキサメチレンアジパミド)、PA69(ポリヘキサメチレンアゼパミド)、PA610(ポリヘキサメチレンセバカミド)、PA611(ポリヘキサメチレンウンデカミド)、PA612(ポリヘキサメチレンドデカミド)、PA11(ポリウンデカンアミド)、PA12(ポリドデカンアミド)、PA1212(ポリドデカメチレンドデカミド)、PA6T(ポリヘキサメチレンテレフタルアミド)、PA6I(ポリヘキサメチレンイソフタルアミド)、PA912(ポリノナメチレンドデカミド)、PA1012(ポリデカメチレンドデカミド)、PA9T(ポリノナメチレンテレフタラミド)、PA9I(ポリノナメチレンイソフタルアミド)、PA10T(ポリデカメチレンテレフタラミド)、PA10I(ポリデカメチレンイソフタルアミド)、PA11T(ポリウンデカメチレンテレフタルアミド)、PA11I(ポリウンデカメチレンイソフタルアミド)、PA12T(ポリドデカメチレンテレフタラミド)、PA12I(ポリドデカメチレンイソフタルアミド)、ポリアミドXD6(ポリメタキシリレンアジパミド)、ポリアミドXD10(ポリキシリレンセバカミド)等が例示される。
前記ポリエステル樹脂としては、例えばポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂、ボリブチレンテレフタレート樹脂、ポリトリメチレンテレフタレート樹脂、液晶ポリエステル等が例示される。
前記(メタ)アクリル樹脂としては、例えばポリメチルメタクリレートが例示される。
前記変性ポリフェニレンエーテル樹脂としては、例えば変性ポリフェニレンエーテル等が例示される。
前記熱可塑性ポリイミド樹脂としては、例えば熱可塑性ポリイミド、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂などが例示される。
前記ポリスルホン樹脂としては、例えば変性ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂などが例示される。
前記ポリエーテルケトン樹脂としては、例えばポリエーテルケトン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリエーテルケトンケトン樹脂などが例示される。
前記フッ素系樹脂としては、例えばポリテトラフルオロエチレン等などが例示される。
前記釣糸ガイドの本体部を構成する繊維含有樹脂組成物の樹脂として好ましくは熱硬化性樹脂であった。特に好ましくは吸水率が2.0%以下の熱硬化性樹脂であった。
【0046】
前記釣糸ガイドの本体部を構成する繊維含有樹脂組成物の樹脂と繊維との含有割合(配合割合)は、軽量性と機械的強度の観点から、好ましくは、次の通りであった。例えば、炭素繊維の量が多いと、機械的強度は増した。しかし、軽量性が失われる事になった。逆に、炭素繊維の量が少ないと、機械的強度が低かった。斯かる観点から、両者の好ましい割合は次の通りであった。好ましくは、20/100≦(前記樹脂の体積)/(前記繊維の体積+前記樹脂の体積)であった。より好ましくは、25/100≦(前記樹脂の体積)/(前記繊維の体積+前記樹脂の体積)であった。更に好ましくは、30/100≦(前記樹脂の体積)/(前記繊維の体積+前記樹脂の体積)であった。もっと好ましくは、35/100≦(前記樹脂の体積)/(前記繊維の体積+前記樹脂の体積)であった。好ましくは、(前記樹脂の体積)/(前記繊維の体積+前記樹脂の体積)≦55/100であった。より好ましくは、(前記樹脂の体積)/(前記繊維の体積+前記樹脂の体積)≦50/100であった。更に好ましくは、(前記樹脂の体積)/(前記繊維の体積+前記樹脂の体積)≦45/100であった。もっと好ましくは、(前記樹脂の体積)/(前記繊維の体積+前記樹脂の体積)≦40/100であった。
【0047】
第2の発明は釣具品の製造方法である。例えば、前記釣糸ガイドの製造方法である。前記方法は、3Dプリンターが用いられて繊維を有する(例えば、繊維を含む)樹脂組成物が造形される造形工程を具備する。前記方法は、前記造形工程で得られた造形物が加熱・加圧される加熱・加圧工程を具備する。
【0048】
付加製造技術(Additive manufacturing:3Dプリンター(3D printer)造形技術)が知られている。この技術は、“平成25年度 特許出願技術動向調査報告書(概要) 3Dプリンター”において、次のように説明されている。3Dプリンター(付加製造技術)は、材料を付着することによって、物体を、三次元形状の数値表現から、作成するプロセスを指す。多くの場合、層の上に層を積むことによって、実現される。3Dプリンターの表現が、紙に出力される二次元の対比から、使用されている。ASTM F2792-12a(Standard Terminology for Additive Manufacturing Technologies)においては、付加製造技術(Additive manufacturing)の用語が用いられている。
付加製造技術のみで立体形状(シート(平板:平面)状では無い)の繊維強化樹脂製品を製造するのは大変であった。特に、機械的強度向上の為に繊維量を出来るだけ多く(相対的に樹脂量を少なく)した場合には、付加製造技術のみで前記製品を製造するのは大変であった。
そこで、前記釣具品の製造に当たっては、付加製造技術によって造形された造形物を、加熱・加圧する事にした。
【0049】
前記造形工程(付加製造技術工程)は、付加製造技術が用いられる工程である。前記付加製造技術工程では、例えばノズルを具備する付加製造装置が用いられる。前記工程では、樹脂(プラスチック)と、繊維とが用いられる。前記工程では、樹脂(マトリックスとなる樹脂)と、繊維とが、別々のノズルから、供給(排出)されても良い。各々の材料が同時に供給(排出)されても良い。時間差を持って供給(排出)されても良い。繊維強化プラスチック材料(樹脂中に繊維が分散した材料)が、一つのノズルから、供給(排出)されても良い。前記工程によって、所望形状の繊維強化プラスチック製品が得られた。前記付加製造技術工程では、例えば熱溶解積層法を用いた付加製造技術が用いられても良い。前記付加製造技術工程では、例えば積層体の上面に又は該積層体上に貼り合わされるシート面に3次元モデルの所定断面における積層体領域データに基づいて未凝固の凝固剤を塗布印刷する塗布印刷工程と前記未凝固の凝固剤が塗布印刷されたシートと積層体とを保温状態において重ね合わせ貼着する貼着工程とを具備せず、又は表面に凝固剤が選択的に塗布されたシートを積層して該凝固剤により前記シート間を選択的に接着する接着工程を具備しない付加製造技術が用いられ、かつ、繊維と樹脂とが用いられて成形される付加製造技術が用いられても良い。前記付加製造技術工程では、例えば凝固剤を塗布したシートを積層・接着する工程を具備しない付加製造技術が用いられ、かつ、繊維と樹脂とが用いられて成形される付加製造技術が用いられても良い。前記釣具品(例えば、前記釣糸ガイド)が、一つ(1回)の付加製造技術工程によって、成形される場合が有る。前記製品Aは、部分A1、…、部分Ak(kはn以下の整数)、…、部分An(nは2以上の整数)の合体になる場合が有る。このような場合は、前記部分A1は、一つ(1回)の付加製造技術工程A1によって、成形される。同様に、前記部分Akは、一つ(1回)の付加製造技術工程Akによって、成形される。前記部分Anは、一つ(1回)の付加製造技術工程Anによって、成形される。前記付加製造技術工程A1,…,Ak,…,Anによって成形された部分A1,…,Ak,…,Anを組み合わせた場合、この組み合わせたものが前記製品Aと同形状になる。すなわち、前記付加製造技術工程は、一つ(1回)で済む場合と、二つ以上(2回以上)を要する場合とが有る。どちらが採用されても良い。
【0050】
前記造形工程(付加製造技術工程)は、前記樹脂が熱硬化性樹脂の場合、造形性の観点から、温度は0℃以上が好ましかった。更に好ましくは10℃以上であった。より更に好ましくは20℃以上であった。もっと好ましくは30℃以上であった。350℃以下が好ましかった。更に好ましくは150℃以下であった。もっと好ましくは100℃以下であった。前記樹脂が熱可塑性樹脂の場合、造形性の観点から、温度は30℃以上が好ましかった。更に好ましくは50℃以上であった。もっと好ましくは100℃以上であった。上限値に格別な制約はない。しかし、一般的には、好ましくは700℃以下であった。より好ましくは500℃以下であった。更に好ましくは450℃以下であった。もっと好ましくは400℃以下であった。
【0051】
前記付加製造技術工程を経て得られた製品は略平板状であった。三次元形状(立体形状)のものではない。例えば、平坦面部と、前記平坦面部に交差した交差面部を有すると言った立体形状のものではない。付加製造技術のみで前記三次元形状(立体形状)の製品を得るのは容易ではなかった。付加製造技術で略平板状の製品を得るのは容易(比較的容易)であった。前記付加製造技術工程を経て得られた製品は、前記繊維が多い為、前記繊維の全てが前記樹脂によって一体的(強固:リジッド)には結合していなかった。前記製品は前記繊維が部分的には離間している。繊維と繊維とが緩やかに繋がっている程度に過ぎない。前記離間は前記製品(前記付加製造技術工程を経て得られた製品)が固定された一つの形状では無いと言う程度の意味合いである。例えば、略弓状に折り曲げるような力を前記製品に加えた場合に、前記繊維は位置ズレが起きると言う程度の意味合いである。前記繊維の全てが前記樹脂によって一体的に(強く)結合していると、例えば前記の如きの力を前記製品に加えても、前記繊維が位置ズレを起こす事は無い。勿論、破壊される程の大きな力を加えれば別である。
【0052】
前記加圧工程(加熱・加圧工程)は、好ましくは、型内に配置されて加熱された前記造形物が加圧される工程である。前記加圧工程は複数回に分けて行われても良い。例えば、第1加圧工程と第2加圧工程と言った如くに2段階に分けて行われても良い。第1回目の前記加圧工程は比較的小さな圧力で行われる。第2回目の前記加圧工程(第2加圧工程)は前記第1回目の加圧工程(第1加圧工程)よりも大きな圧力で行われる。前記加圧工程における加圧力を小→大への変更は、ステップ関数的であっても、連続的であっても良い。つまり、加圧力が徐々に大きくなっても良い。このような加圧形態も複数回に分けて行われると見做される。前記第1加圧工程は、前記付加製造技術工程を経て得られた製品が加圧される工程である。前記第1加圧工程によって、前記繊維の殆どが前記樹脂によって一体的に結合する。すなわち、前記繊維が前記樹脂によって或る程度強固に一体的に結合する。前記繊維が前記樹脂によって一体的に結合していると、大きな力を前記製品に加えても、前記繊維が位置ズレを起こし難い。前記第1加圧工程を経た製品に、大きな力が前記製品に加えられても、前記製品が変形し難い。勿論、破壊される程の大きな力を加えれば別である。これに対して、前記付加製造技術工程を経て得られた段階の製品に大きな力を印加した場合に、前記繊維の位置ズレが起きる恐れが有った。前記第1加圧工程を経て得られた製品は曲部を有する。従って、前記製品の形状は三次元形状であった。これに対して、前記付加製造技術工程を経て得られた段階の製品は平板状である。従って、この段階にあっては、前記製品は曲部(平面に対して交差する面)を持たない。第1加圧工程では二次元的形状製品が三次元的形状製品に成形される。第1加圧工程で印加する力が大き過ぎた場合には、前記付加製造技術工程を経て得られた製品における繊維が樹脂で強固に一体的になっている訳ではないから、形崩れが起き易い。それ故に大き過ぎる力を印加しない方が好ましかった。すなわち、前記第1加圧工程で印加される力は、最終製品形状とする為に印加される力よりも、小さい。前記第1加圧工程は、前記付加製造技術工程を経て得られた製品が複数個重ねられて加圧される場合がある。勿論、場合によっては、一枚の場合も有る。前記第2加圧工程は、前記第1加圧工程を経て得られた製品が加熱下で加圧される工程である。前記第2加圧工程で印加される力は前記第1加圧工程で印加される力よりも大きい。すなわち、前記第2加圧工程で印加される力は、最終製品形状とする為に印加される力である。前記第2加圧工程を経て得られた製品の体積は前記第1加圧工程によって得られた製品の体積よりも小さい。前記第1加圧工程における圧力は前記第2加圧工程における圧力より小さい。例えば、(前記第1加圧工程における圧力)/(前記第2加圧工程における圧力)が0.8以下であった。例えば、0.7以下であった。例えば、0.6以下であった。例えば、0.5以下であった。例えば、0.4以下であった。例えば、0.02以上であった。例えば、0.05以上であった。例えば、0.1以上であった。前記第1加圧工程における圧力は0.8kPa以上であった。例えば、4kPa以上であった。例えば、8.0×105kPa以下であった。例えば、4.0×105kPa以下であった。前記第2加圧工程における圧力は1kPa以上であった。例えば、5kPa以上であった。例えば、1.0×106kPa以下であった。例えば、5.0×105kPa以下であった。(前記第1加圧工程を経て得られた製品の体積)/(前記第2加圧工程を経て得られた製品の体積)≦2.5であった。例えば、2以下であった。例えば、1.5以下であった。例えば、1.05以上であった。例えば、1.1以上であった。
【0053】
前記加圧工程は、好ましくは、加熱条件下で行われる。その理由は、温度を常温(室温:例えば25℃)よりも高くする事によって、樹脂(樹脂組成物)が軟らかくなるからである。その結果、加圧による造形性が向上したからである。
前記加熱の温度は次の条件が満たされれば良かった。
例えば、フローテスターCFT-500D(株式会社島津製作所製)が用いられて該装置付属のマニュアルに則って行われた1/2法における溶融温度以上の温度であった。
好ましくは、{前記溶融温度+10℃}以上の温度であった。更に好ましくは、{前記溶融温度+20℃}以上の温度であった。好ましくは、{前記溶融温度+60℃}以下の温度であった。更に好ましくは、{前記溶融温度+50℃}以下の温度であった。もっと好ましくは、{前記溶融温度+40℃}以下の温度であった。よりもっと好ましくは、{前記溶融温度+30℃}以下の温度であった。
樹脂が熱可塑性樹脂の場合は、例えば前記溶融温度を越えた温度であれば良い。
樹脂が熱硬化性樹脂の場合は、例えば硬化温度未満の温度であれば良い。
前記溶融温度は軟化点(軟化温度)とも謂われる。前記温度は次の手法で求められた。定荷重押し出し方式の細管式レオメータ(流動特性評価装置:フローテスターCFT-500D(株式会社島津製作所製))が用いられ、該当置付属のマニュアルに従って行われた。本装置では、測定試料(この場合の試料とは、繊維が配合された樹脂ではなく、繊維が配合されていない樹脂である。)の上部からピストンによって一定荷重が加えられる。シリンダに充填された測定試料が加熱されて溶融する。シリンダ底部のダイから溶融した測定試料が押し出される。ピストン降下量と温度との関係を示す流動曲線が得られる。前記マニュアルに記載の1/2法における溶融温度は次のようにして算出された。流出が終了した時点におけるピストンの降下量Smaxと、流出が開始した時点におけるピストンの降下量Sminとの差の1/2が求められる(これをXとする。X=(Smax-Smin)/2)。流動曲線においてピストンの降下量がXとなる時点の流動曲線の温度が1/2法における溶融温度である。
例えば、樹脂がエポキシ樹脂(熱硬化性樹脂)の場合には、前記方法によって求められた溶融温度(軟化温度)は約70℃であった。樹脂がベンゾオキサジン(熱硬化性樹脂)の場合には、前記方法によって求められた溶融温度(軟化温度)は約80℃であった。樹脂がシアネート樹脂(熱硬化性樹脂)の場合には、前記方法によって求められた溶融温度(軟化温度)は約80℃であった。
樹脂が熱硬化性樹脂の場合、加熱温度は、好ましくは、(樹脂の硬化温度-70℃)以上の温度であった。より好ましくは、(樹脂の硬化温度-60℃)以上の温度であった。更に好ましくは、(樹脂の硬化温度-50℃)以上の温度であった。より更に好ましくは、(樹脂の硬化温度-40℃)以上の温度であった。好ましくは、(樹脂の硬化温度+20℃}以下の温度であった。更に好ましくは、(樹脂の硬化温度+10℃}以下の温度であった。もっと好ましくは、樹脂の硬化温度以下の温度であった。前記硬化温度とはDSC曲線におけるピーク温度である。
エポキシ樹脂(熱硬化性樹脂)の熱硬化温度は約120~180℃である。ベンゾオキサジン樹脂(熱硬化性樹脂)の熱硬化温度は約120~200℃である。シアネート樹脂(熱硬化性樹脂)の熱硬化温度は約150~250℃である。
樹脂が熱硬化性樹脂の場合、アフターキュアが行われても良い。
【0054】
前記加圧工程には型が用いられる。前記型は型半体Aと型半体Bとを具備する。前記型半体Aおよび前記型半体Bには、前記型半体Aと前記型半体Bとの対向面に、各々、凹面に角が無い凹部(溝)が形成されている。前記型半体Aの前記凹部に前記前記付加製造技術工程で得られた造形物が配置される。前記型半体Bが被せられて加圧される。前記型半体Aと前記型半体Bとを組み合わせた場合において、前記型半体A,Bの凹部によって構成される空間(キャビティ)が最終製品の形状である。前記凹部(溝)の内面には角が無い。従って、型半体Aと型半体Bとの間に圧力が加えられて得られた製品には、前記凹部(溝)の内面に角が無いので、角が無い。前記キャビティが前記型半体Aの上面に形成された溝のみで構成された場合(前記型半体Aの凹部(溝)に対向する前記型半体Bには凸部が形成されているとか平坦である場合)、前記溝に角が無くても、このようにして得られた製品には角が出来てしまう。
【0055】
以下、本発明が具体的に説明される。下記実施例は本発明の一実施例に過ぎない。本発明は下記実施例に限定されない。すなわち、本発明の特長が大きく損なわれない変形・応用例も本発明に含まれる。
【0056】
[実施例1]
熱硬化性樹脂(ベンゾオキサジン樹脂:アイカ工業製)が用いられた。炭素繊維(三菱レイヨン(株)製、Pyrofil-TR-50S-12000-AD、8000dtex、繊維数12000f。繊維長6m)が用いられた。配合割合は、前記樹脂が40体積部で、前記炭素繊維が60体積部であった。
【0057】
3Dプリンター(Velleman社製K8200)が用いられた。付加製造技術が実施(ノズル温度;135℃,ステージ温度;50℃)された。これによって、前記組成物製の製品Xが得られた。前記付加製造技術の工程を経て得られた製品Xは略平板状である。三次元形状(立体形状)ではない。前記製品Xは、樹脂の量が相対的に少ないので、前記繊維の全てが前記樹脂によって一体的には結合していない。前記製品X中の前記繊維は部分的に離間していた。
【0058】
前記付加製造技術工程を経て得られた製品Xが成形型内に配置された。先ず、1.5×10
3kPaの圧力が加えられた。前記加圧後の成型品Yが前記成形型内から取り出され、金型内に配置された。前記金型は金属製金型半体A(
図5参照)と金属製金型半体B(
図6参照)とを具備する。前記金型半体A,Bの表面には凹溝(凹部)11,12が形成されている。前記金型半体Aと前記金型半体Bとが合体した際の前記凹溝(凹部)11,12で構成される空間(キャビティ)形状が最終製品Zの形状である。前記凹溝(凹部)11,12の凹面には角が無い。前記取り出された成型品Yが、先ず、金型半体Aの凹溝(凹部)11内に配置された。前記成型品Yが配置された金型半体Aに対して前記金型半体Bが被せられた。前記成型品Yの半分は前記金型半体Aの溝11内に位置しており、前記成型品Yの残り半分は前記金型半体Bの溝12内に位置している。180℃に加熱された状態にて6.0×10
4kPaの圧力が前記成型品Yに加えられた。
【0059】
このようにして得られた釣糸ガイドZが
図1,2,3,4に示される。
図1は釣糸ガイドZの斜視図である。
図2は釣糸ガイドZを
図1とは反対側の面から見た斜視図である。
図3は、
図1の状態における釣糸ガイドZを、釣糸ガイドZの略リング形状部1の頂点と略Y形状部2の基端部3fとを結ぶ線での断面図である。
図4は、釣糸ガイドZの開口部6を横切る
図3の断面線とは直交する線で断面図である。
各図中、1は、釣糸が通される事になる略リング形状部(リングの内径(直径):約20.5mm、リングの外径(直径):約23.7mm、厚さ:約2.3mm、幅:約1.6mm)である。
【0060】
2は略Y形状部である。前記略Y形状部2の先端側は分岐構造である。すなわち、前記略Y形状部2は先端側に2本の分岐部(枝部)2a,2bを有する。分岐部2a,2bの先端部3a,3bが略リング形状部1に繋がっている。分岐部2a,2bの延在方向は略リング形状部1に対する接線の方向である。分岐部2a,2bと略リング形状部1との連結方向が略リング形状部1に対する接線の略方向である事から、略リング形状部1に加わった力を分岐部2a,2bが無理なく受け止める事が出来た。前記略Y形状部2の基部(幹部)2cは一つの幹である。分岐部(枝部)2aと分岐部(枝部)2bとの交差位置3cが基部(幹部)2cの先端部である。
【0061】
略リング形状部1と略Y形状部2とは一体構成である。斯の事は、前記製品Xが付加製造技術によって得られた物である事からも了解されるであろう。前記熱硬化性樹脂中に分散して存在している幾つかの炭素繊維は、{(略リング形状部1の円周の長さ)+(略Y形状部2の長さ)}よりも長い。従って、幾つかの炭素繊維が略リング形状部1と略Y形状部2とに跨って存在しているであろう。
【0062】
前記分岐部2a,2bは、分岐部2a,2bの途中位置(例えば、先端部3a,3bから全長の約2/3位置)3d付近において、僅かに、曲がっている(開角度が、例えば約160~175°(例えば、170°))。基部2cは途中位置3eにおいて曲がっている(開角度が、例えば約125~145°(例えば、135°))。分岐部2a,2bの長さは約40mmである。分岐部2a,2bの幅は、分岐部2a,2bの肉厚部の厚さと略リング形状部1の厚さとを略同じにした場合でも、略リング形状部1をしっかり支持できるようにする為、略リング形状部1の幅よりも大きくしている。分岐部2a,2bの幅は約3.2mmである。分岐部2a,2bの肉厚部における厚さは約2.3mmである。分岐部2a,2bの薄肉部における厚さは約1mmである。基部2cの長さは約35mmである。基部2cの先端部(分岐部2aと分岐部2bとの交差位置)3cにおける幅は約7mmである。屈曲位置3eにおける基部(幹部)2cの幅は約4.6mmである。基部2cの先端部3cにおける厚さは約2.5mmである。屈曲位置3eにおける基部2cの厚さは約2.7mmである。基部2cの基端部3fおける厚さは約1mmである。基部2cの幅は先端部3cから基端部3fに向かってほぼ単調減少である。基部2cの厚さは先端部3cから屈曲位置3eに向けて単調増加である。厚さを増加させた理由は、基部2cの幅を順に狭くしているので、基部2cの機械的強度を確保する為である。屈曲位置3eから基端部3fに向かって厚さは薄くなる。但し、屈曲位置3eと基端部3fとの略中間位置から基端部3fに向かっての減少度合は急激に大きくなる。基部2cが釣竿に取り付けられる個所(屈曲位置3eと基端部3fとの略中間位置から基端部3fに掛けての個所)は、釣竿に固定し易くする為、当該箇所の厚さを薄くした。
【0063】
4a,4bは分岐部2a,2bにおける肉厚部(リブ)である。5a,5bは分岐部2a,2bにおける薄肉部である。肉厚部(リブ)4a,4bは分岐部2a,2bにおける外側に位置している。薄肉部5a,5bは分岐部2a,2bにおける内側(分岐部2a,2bによって構成された開口部6側)に位置している。肉厚部の「肉厚」の意味合いは薄肉部の「肉厚」に比べて「厚い」と言う意味合いである。肉厚部(リブ)4a,4bにおける肉厚は分岐部2a,2bにおける前記厚さ(約2.3mm)である。肉厚部(リブ)4a,4bにおける幅は約1mmである。薄肉部5a,5bにおける幅は約2.2mmである。
【0064】
略リング形状部1にも薄肉部が構成された。分岐部2aと分岐部2bとに挟まれた位置の略リング形状部1に薄肉部7aが構成された。薄肉部7aの幅は約1mmである。厚肉部7bの幅が約0.6mmである。厚肉部7bの厚さは約2.3mmである。薄肉部7aの厚さは約1mmである。
【0065】
[比較例1]
実施例1において、リブを構成しなかった。
リブが有ることで必要な剛性を維持したまま軽量化を達成できた。
すなわち、実施例1の釣糸ガイドが装備された釣竿と、比較例1の釣糸ガイドが装備された釣竿とを比べた場合、実施例1の釣糸ガイドが装備された釣竿の方が格段に使い易かった。
【符号の説明】
【0066】
1 略リング形状部
2 略Y形状部
2a,2b 分岐部(枝部)
2c 基部(幹部)
3a,3b 先端部
3c 分岐部(枝部)2aと分岐部(枝部)2bとの交差位置
3e 屈曲位置
3f 基端部
4a,4b,7b 肉厚部(リブ)
5a,5b,7a 薄肉部
6 開口部