(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024158026
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】車両の充電口構造
(51)【国際特許分類】
B62D 25/10 20060101AFI20241031BHJP
B60K 1/04 20190101ALI20241031BHJP
【FI】
B62D25/10 D
B60K1/04 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023072822
(22)【出願日】2023-04-27
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤川 義秀
【テーマコード(参考)】
3D004
3D235
【Fターム(参考)】
3D004AA09
3D004BA01
3D004CA13
3D004DA14
3D235AA01
3D235BB22
3D235BB41
3D235CC15
(57)【要約】
【課題】インレット周辺の被水状況を、充電コネクタ挿入前に解消可能とする。
【解決手段】リッド30は、トレイ10の開口12に対して縮小されている。シール部材40は、トレイ10の開口とリッド30との隙間をシールする。さらにシール部材40は、リッド30の、トレイ10の底面14と対向する裏面32から、当該底面14に向かって突出する。アーム50は、リッド30を枢支する。ガイド機構は、アーム50を移動させるガイド軌道を有する。アーム50の枢支軸C1に平行な、トレイ10の側面16には、リッド30及びシール部材40を収容する収容開口16Aが形成される。ガイド軌道は、第1ガイド溝19Aと第2ガイド溝19B軌道を備える。第1ガイド溝19Aは、トレイ10の深さ方向に延伸する。第2ガイド溝19Bは、第1ガイド溝19Aの、底面14に最近接する端部から、収容開口16Aに向かって延伸する
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
充電用のインレットが底面に配置されたトレイと、
前記トレイの開口に対して縮小されたリッドと、
前記リッドの周縁に配置され、前記トレイの開口と前記リッドとの隙間をシールし、さらに前記リッドの、前記トレイの前記底面と対向する裏面から当該底面に向かって突出する、弾性体からなるシール部材と、
前記リッドを枢支するアームと、
前記アームを移動させるガイド軌道を有するガイド機構と、
を備え、
前記アームの枢支軸に平行な、前記トレイの側面には、前記リッド及び前記シール部材を収容する収容開口が形成され、
前記ガイド軌道は、
前記トレイの深さ方向に延伸する第1ガイド軌道と、
前記第1ガイド軌道の、前記底面に最近接する端部から、前記収容開口に向かって延伸する第2ガイド軌道と、
を備える、車両の充電口構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書では、車両の充電口構造が開示される。
【背景技術】
【0002】
プラグインハイブリッド車両や電気自動車には、充電口が設けられる。例えば特許文献1には、車体の横側に凹部が設けられる。この凹部に充電用のインレットが配置される。インレットには充電コネクタが差し込まれる。また、凹部はリッドで閉止される。リッドによって、凹部内への水の浸入が抑制される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、充電口をリッドで塞ぐ場合に、例えば高圧洗浄時にリッドと凹部の隙間から水が浸入するおそれがある。そこで本明細書では、インレット周辺の被水状況を、充電コネクタ挿入前に解消可能な、車両の充電口構造が開示される。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書では、車両の充電口構造が開示される。この充電口構造は、トレイ、リッド、シール部材、アーム、及びガイド機構を備える。トレイは充電用のインレットが底面に配置される。リッドは、トレイの開口に対して縮小されている。シール部材は、リッドの周縁に配置される。またシール部材は、トレイの開口とリッドとの隙間をシールする。さらにシール部材は、リッドの、トレイの底面と対向する裏面から、当該底面に向かって突出する。またシール部材は弾性体からなる。アームは、リッドを枢支する。ガイド機構は、アームを移動させるガイド軌道を有する。アームの枢支軸に平行な、トレイの側面には、リッド及びシール部材を収容する収容開口が形成される。ガイド軌道は、第1ガイド軌道と第2ガイド軌道を備える。第1ガイド軌道は、トレイの深さ方向に延伸する。第2ガイド軌道は、第1ガイド軌道の、トレイ底面に最近接する端部から、収容開口に向かって延伸する。
【0006】
上記構成によれば、リッド及びシール部材は、トレイ内に入り込むようにして、アーム周りに回動する。さらに第1ガイド軌道によってアームがトレイの底面寄りにガイドされることで、シール部材の一部がトレイの底面に当接可能となる。さらにアームが第2ガイド軌道に沿って移動することで、シール部材の一部はトレイの底面を摺動する。仮に、インレットの周辺に水滴があったとしても、シール部材の摺動によって当該水滴が拭き取られる。
【発明の効果】
【0007】
本明細書で開示される、車両の充電口構造は、インレット周辺の被水状況を、充電コネクタ挿入前に解消可能である。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本実施形態に係る、車両の充電口構造を例示する分解斜視図である。
【
図2】
図1のA-A断面図であって、充電口の開放プロセス(1/2)を説明する図である。
【
図3】
図1のA-A断面図であって、充電口の開放プロセス(2/2)を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、実施形態に係る、車両の充電口構造が図面を用いて説明される。以下で説明する形状、材料、個数、及び数値は、説明のための例示であって、充電口構造の仕様に応じて適宜変更することができる。また以下ではすべての図面において同等の要素には同一の符号が付される。
【0010】
また
図1-
図3では、各構成の位置や方向を表すために、FR軸、LH軸、及びUP軸からなる直交座標系が用いられる。FR軸は車両前方を正方向とする車両前後方向軸である。LHは車両左側を正方向とする車幅方向軸である。UP軸は上方を正方向とする車両上下方向軸である。
【0011】
<部品構成>
図1には、本実施形態に係る、車両の充電口構造の分解斜視図が例示される。この充電口構造は、トレイ10、インレット20、リッド30、シール部材40、及びアーム50を備える。さらにこの充電口構造は、アーム50のガイド機構として、第1ガイド溝19A(第1ガイド軌道)及び第2ガイド溝19B(第2ガイド軌道)を備える。
【0012】
本実施形態に係る充電口構造は、例えば車両の外板パネルに設けられる。外板パネルは例えばクォーターパネルやフェンダパネルである。外板パネルに貫通孔が形成される。この貫通孔に、トレイ10が嵌め込まれる。
【0013】
トレイ10は外板パネルに対して車幅方向内側に窪む凹部となる。例えばトレイ10は角型トレイであって、底面14と、底面14を囲む4面の側面を備える。さらに底面14と対向して開口12が設けられる。例えば開口12は底面14と同形状の矩形開口である。
【0014】
トレイ10の底面14は貫通孔が穿孔される。この貫通孔にインレット20が挿入される。インレット20には外部充電機のコネクタ(図示せず)が挿入される。底面14から露出するインレット20の露出面21は、例えばトレイ10の底面14と同一平面上に位置決めされる。
【0015】
後述するように、本実施形態に係る充電口構造は、リッド30及びシール部材40が、トレイ10内に入り込む構造となっている。トレイ10の側面16には、リッド30及びシール部材40を収容する収容開口16Aが設けられる。
【0016】
収容開口16Aが設けられる側面16は、トレイ10の側面のうち、アーム50の回動軸C1(枢支軸)に平行な面である。また、側面16は、インレット20を挟んで、リッド30の把手33とは対向する側の面である。
【0017】
またトレイ10の上側面18には、第1ガイド溝19A,19A(第1ガイド軌道)及び第2ガイド溝19B(第2ガイド軌道)が設けられる。第1ガイド溝19A,19A(第1ガイド軌道)及び第2ガイド溝19B(第2ガイド軌道)は、アーム50を移動させるガイド溝となる。第1ガイド溝19A,19Aはトレイ10の深さ方向に延伸する。第2ガイド溝19Bは、第1ガイド溝19A,19Aの、底面14に最も近接する端部に接続する。また第2ガイド溝19Bは、収容開口16Aに向かって延伸する。
【0018】
また、上側面18は収容開口16Aからガイドプレート17に接続される。ガイドプレート17にも第2ガイド溝19Bが延伸される。
【0019】
リッド30は、シール部材40とともにトレイ10の開口12を塞ぐ、平板の蓋部品である。リッド30は、トレイ10の開口12よりも一回り小さい形状となっている。例えばリッド30は開口12と相似形状であって、開口12よりも縮小されている。例えば開口12が矩形であることから、リッド30も矩形である。またリッド30の縦横寸法(UP軸寸法及びFR軸寸法)は、開口12の縦横寸法の例えば80%以上95%以下に定められる。
【0020】
リッド30の露出面31には把手33が設けられる。把手33は例えば鉤形状である。露出面31に対向する裏面32には、ジョイントプレート34が設けられる。なおここでリッド30の裏面32は、トレイ10の底面14と対向する。
【0021】
ジョイントプレート34は、裏面32から略垂直に延伸する。ジョイントプレート34の先端には挿入孔35が穿孔される。挿入孔35は例えば丸孔であり、この挿入孔35に、アーム50のシャフト52が挿入される。これによりシャフト52の回動軸C1(枢支軸)周りにリッド30が回動する。
【0022】
リッド30の周縁にシール部材40が配置される。シール部材40は、矩形のリッド30を囲むような枠形状である。つまりシール部材40は一対の縦片43,44と横片41,42を備える。
【0023】
シール部材40はゴム等の弾性体から構成される。シール部材40は、トレイ10の開口12と、リッド30との隙間をシールする。例えばシール部材40の断面形状は円弧形状となっている。
図2を参照して、シール部材40は、リッド30の裏面32に取り付けられる。またシール部材40は、リッド30の裏面32からトレイ10の底面14に向かって突出する。シール部材40の末端は、トレイ10の側面に当接する。
【0024】
図1を参照して、例えばシール部材40の幅(FR軸方向寸法)W1は、開口12の幅W2より僅かに大きい。例えばリッド30及びシール部材40を開口12内に押し込んだ時に、シール部材40が撓む。このような弾性変形により開口12がシールされる。
【0025】
アーム50はリッド30を枢支する。アーム50はメインバー51、シャフト52、ストッパ53,54、及びガイドピン55,55を備える。メインバー51の長手方向中心からシャフト52が下方に延伸される。シャフト52はリッド30の挿入孔35に挿入される。またシャフト52の下端には図示しない抜け止めリングが挿入される。シャフト52の回動軸C1周りにリッド30が回動可能となる。
【0026】
ストッパ53,54はメインバー51の長手方向両端かつ下方に設けられる。ストッパ53,54はシャフト52と平行に下方に延伸する。またストッパ53,54は正面視(FR軸視)でL字形状となっている。
【0027】
ストッパ53はストッパ54よりも車幅方向に長く延伸する。
図2左側に示されるように、ストッパ53にリッド30の裏面32が当接することで、リッド30がトレイ10をシールする。リッド30の裏面32をストッパ53に当接させるための付勢バネ(図示せず)が、シャフト52に設けられていてもよい。
【0028】
ストッパ54は、リッド30の開放時に、その開き角を規制する。後述されるように、リッド30の開放プロセスでは、まず把手33が押されてリッド30が回動する。この回動によりリッド30の裏面32がストッパ54に当接する。これによりリッド30の回動が止められる。
【0029】
図1を参照して、ガイドピン55はメインバー51の長手方向両端かつ上方に設けられる。ガイドピン55はトレイ10の第1ガイド溝19A,19A及び第2ガイド溝19Bに差し込まれる。つまり、ガイドピン55,55、第1ガイド溝19A,19A及び第2ガイド溝19Bにより、ガイド機構が構成される。
【0030】
<充電口の開放プロセス>
図2左側には、閉止状態の充電口構造が例示される。充電口を開放する際に、まず把手33が車幅方向内側に押し込まれる。このときアーム50のシャフト52を中心にリッド30及びシール部材40が回動する。この回動は、リッド30の裏面32がストッパ54に当接するまで続けられる。
図2右側に例示されるように、裏面32がストッパ54に当接すると、シール部材40の縦片44は、アーム50よりもトレイ10の底面14に近接する。
【0031】
さらに把手33が車幅方向内側に押し込まれると、
図3左側に例示されるように、アーム50が第1ガイド溝19A,19Aに沿ってトレイ10の底面14側に移動させられる。その後、
図3右側に例示されるように、使用者が把手33を持ってリッド30を前方(FR軸正方向)にスライド移動する。これにより、リッド30が収容開口16Aから収容空間60内に収容される。
【0032】
この収容過程で、シール部材40の縦片44がトレイ10の底面14及びインレット20の露出面21を摺動する。この摺動により、トレイ10の底面14及びインレット20の露出面21上に付着した水滴が拭き取られる。縦片44が露出面21を通過して、リッド30が収容空間60内に収容されると、水滴が拭き取られた状態のインレット20に充電用のコネクタが挿入される。
【0033】
<充電口構造の別例>
図1-
図3に例示される充電口構造では、リッド30が手動で開閉されていた。しかしながら、本実施形態に係る充電口構造は、自動にてリッド30を開閉する構造を備えてもよい。
【0034】
例えば、アーム50に対してリッド30を回動させるサーボモータが、シャフト52に設けられる。さらに、アーム50を第1ガイド溝19A,19A及び第2ガイド溝19Bに沿って移動させるステージ機構が、アーム50に設けられる。例えば車両のキーに設けられた充電口開閉ボタンを運転者が操作することで、自動的に
図2、
図3のような動作が実行され、充電口が開放される。
【符号の説明】
【0035】
10 トレイ、12 トレイ開口、14 トレイ底面、16 トレイ側面、16A 収容開口、18 トレイ上側面、19A 第1ガイド溝(第1ガイド軌道)、19B 第2ガイド溝(第2ガイド軌道)、20 インレット、30 リッド、32 リッド裏面、33 :把手、40 シール部材、41,42 シール部材の横片、43,44 シール部材の縦片、50 アーム。