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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024158035
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】インクジェット記録装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/165 20060101AFI20241031BHJP
   B41J 2/17 20060101ALI20241031BHJP
【FI】
B41J2/165 401
B41J2/165 303
B41J2/17 207
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023072841
(22)【出願日】2023-04-27
(71)【出願人】
【識別番号】000006150
【氏名又は名称】京セラドキュメントソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111202
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 周彦
(72)【発明者】
【氏名】乾 靖隆
【テーマコード(参考)】
2C056
【Fターム(参考)】
2C056EA14
2C056EA16
2C056FA13
2C056JA01
2C056JB04
2C056JB07
2C056JB08
2C056JB15
2C056JC25
(57)【要約】      (修正有)
【課題】洗浄液供給部に確実に洗浄液を供給できるワイプユニットを備えるインクジェット記録装置を提供する。
【解決手段】インクジェット記録装置は、複数のノズルのインク吐出口が下向きに開口するノズル面が設けられたインクジェットヘッドと、洗浄液を供給する供給路123と、前記ノズル面に接触して移動可能なブレードと、前記ノズル面及び前記ブレードの少なくとも一方に洗浄液を供給する洗浄液供給部材と、を備え、前記洗浄液供給部材は、前記洗浄液が供給される少なくとも一つの供給孔94を有し、前記供給路123は、前記供給孔94に挿入される供給部124を有している。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のノズルのインク吐出口が下向きに開口するノズル面が設けられたインクジェットヘッドと、
洗浄液を供給する供給路と、
前記ノズル面に接触して移動可能なブレードと、
前記ノズル面及び前記ブレードの少なくとも一方に洗浄液を供給する洗浄液供給部材と、を備え、
前記洗浄液供給部材は、前記洗浄液が供給される少なくとも一つの供給孔を有し、前記供給路は、前記供給孔に挿入される供給部を有していることを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項2】
前記供給孔は、上方に向かって内寸が大きくなっていることを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録装置。
【請求項3】
前記供給孔の内寸は、前記供給孔の上端以外で、前記供給部の外寸よりも小さい部分があることを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録装置。
【請求項4】
前記供給孔は、途中で内寸が非連続に小さくなり、前記供給孔の前記洗浄液供給部材の洗浄液供給面に面する開口は、内寸が前記供給孔の外寸よりも小さいことを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録装置。
【請求項5】
前記洗浄液供給部材は、前記ノズル面から離間した離間位置と、前記ブレードが前記ノズル面に接触してワイプが行われる際の前記洗浄液供給部材の位置であるワイプ位置と、の間を移動可能であり、
前記供給部は、前記洗浄液供給部材が前記離間位置に移動した際に前記供給孔に挿入されることを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録装置。
【請求項6】
前記ブレードと前記洗浄液供給部材とを備えた、ワイプユニットを更に備え、
前記ワイプユニットが移動することで、前記ブレード及び前記洗浄部材が移動することを特徴とする請求項5に記載のインクジェット記録装置。
【請求項7】
前記ブレードと、前記洗浄液供給部材と、前記ブレード及び前記洗浄液供給部材の下方に配置されて、前記洗浄液供給部材から落下する洗浄液および前記ブレードによって拭き取られたインクを受け取る廃液トレイと、を備えた、ワイプユニットを更に備え、
前記洗浄液供給部材が、前記離間位置と前記ワイプ位置とに移動する際に、前記廃液トレイは、前記洗浄液供給部材の下方の位置を維持することを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録装置。
【請求項8】
前記供給部は、先端が前記供給孔から離間した離間位置と、前記供給孔内に位置する挿入位置と、前記供給孔から突き出た貫通位置と、に移動可能であることを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェットヘッドのノズル面に付着したインクを拭き取るワイプユニットを備えるインクジェット記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット記録装置には、インクジェットヘッドのノズル面に付着したインクを拭き取るワイプユニットが備えられている。ワイプユニットは、ノズル面に接触して、移動開始位置から移動終了位置まで一方向に移動するブレードを備え、インクジェットヘッドの下方のワイプ位置と、インクジェットヘッドの下方から離間した離間位置と、の間を移動可能である。ワイプ時には、ワイプユニットをワイプ位置に移動させ、ブレードをノズル面に接触させて移動開始位置から移動終了位置まで移動させることで、ノズル面に付着したインクがブレードで拭き取られる。
【0003】
また、インクジェット記録装置には、ブレードの移動方向において移動開始位置よりも下流側に洗浄液を供給する洗浄液供給部材が備えられる場合がある。特許文献1に記載のインクジェット式記録装置においては、洗浄液供給部材が、インクジェットヘッドのノズル面に隣接して設けられている。ワイプ時には、洗浄液供給部材から洗浄液が供給され、ブレードによって洗浄液と共にノズル面に付着したインクが拭き取られるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2018-108711号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のように、特許文献1に記載のインクジェット式記録装置では、洗浄液供給部材がインクジェットヘッドのノズル面に隣接して設けられている。つまり、洗浄液供給部材がインクジェットヘッドに一体に設けられているので、印字時にも、洗浄液供給部材に供給されたインクがノズル面に隣接した状態となる。このため、印字時にインクジェットヘッドの下方を通過する用紙が上向きに湾曲した場合、洗浄液供給部に用紙が接触し、洗浄液で用紙が汚染されたり洗浄液供給部材が用紙によって損傷したりすることがある。
【0006】
また、洗浄液タンクから洗浄液供給部材に洗浄液を供給する際に、洗浄液が漏れたり適切な量の洗浄液を供給できなかったりするという問題がある。
【0007】
そこで、本発明は上記事情を鑑み、洗浄液供給部材に確実に洗浄液を供給できるワイプユニットを備えるインクジェット記録装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明のインクジェット記録装置は、複数のノズルのインク吐出口が下向きに開口するノズル面が設けられたインクジェットヘッドと、洗浄液を供給する供給路と、前記ノズル面に接触して移動可能なブレードと、前記ノズル面及び前記ブレードの少なくとも一方に洗浄液を供給する洗浄液供給部材と、を備え、前記洗浄液供給部材は、前記洗浄液が供給される少なくとも一つの供給孔を有し、前記供給路は、前記供給孔に挿入される供給部を有していることを特徴とする。
【0009】
本発明において、前記供給孔は、上方に向かって内寸が大きくなっていることを特徴としてもよい。
【0010】
本発明において、前記供給孔の内寸は、前記供給孔の上端以外で、前記供給部の外寸よりも小さい部分があることを特徴としてもよい。
【0011】
本発明において、前記供給孔は、途中で内寸が非連続に小さくなり、前記供給孔の前記洗浄液供給部材の洗浄液供給面に面する開口の内寸が前記供給孔の外寸よりも小さいことを特徴としてもよい。
【0012】
本発明において、前記洗浄液供給部材は、前記ノズル面から離間した離間位置と、前記ブレードが前記ノズル面に接触してワイプが行われる際の前記洗浄液供給部材の位置であるワイプ位置と、の間を移動可能であり、前記供給部は、前記洗浄液供給部材前記離間位置に移動した際に前記供給孔に挿入されることを特徴としてもよい。
【0013】
本発明において、前記ブレードと前記洗浄液供給部材とを備えた、ワイプユニットを更に備え、前記ワイプユニットが移動することで、前記ブレード及び前記洗浄部材が移動することを特徴としてもよい。
【0014】
本発明において、前記ブレードと、前記洗浄液供給部材と、前記ブレード及び前記洗浄液供給部材の下方に配置されて、前記洗浄液供給部材から落下する洗浄液および前記ブレードによって拭き取られたインクを受け取る廃液トレイと、を備えた、ワイプユニットを更に備え、前記洗浄液供給部材が、前記離間位置と前記ワイプ位置とに移動する際に、前記廃液トレイは、前記洗浄液供給部材の下方の位置を維持することを特徴としてもよい。
【0015】
本発明において、前記供給部は、先端が前記供給孔から離間した離間位置と、前記供給孔内に位置する挿入位置と、前記供給孔から突き出た貫通位置と、に移動可能であることを特徴としてもよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、供給管の供給部が洗浄液供給部材の供給孔に挿入された状態で、供給部から供給孔に洗浄液が供給されるので、供給管から洗浄液が漏れ出して周囲の部材に付着することがない。また、供給された所定量の洗浄液を、洗浄液供給部材に確実に保持させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の一実施形態に係るインクジェット記録装置の内部構造を模式的に示す正面図である。
図2A】本発明の一実施形態に係るインクジェット記録装置のヘッドユニット及びメンテナンス装置を模式的に示す平面図である。
図2B】本発明の一実施形態に係るインクジェット記録装置のヘッドユニット及びメンテナンス装置を模式的に示す正面図である。
図3A】本発明の一実施形態に係るインクジェット記録装置のインクジェットヘッドを示す側面図である。
図3B】本発明の一実施形態に係るインクジェット記録装置のインクジェットヘッドを示す下面図である。
図4】本発明の一実施形態に係るインクジェット記録装置のキャップユニットを示す斜視図である。
図5】本発明の一実施形態に係るインクジェット記録装置のワイプユニット及び洗浄液供給機構を示す斜視図である。
図6A】本発明の一実施形態に係るインクジェット記録装置のワイプユニットのキャリッジ及び洗浄液供給部材を示す斜視図である。
図6B】本発明の一実施形態に係るインクジェット記録装置のワイプユニットのキャリッジ及び洗浄液供給部材を示す側面図である。
図7】本発明の一実施形態に係るインクジェット記録装置のワイプユニットの洗浄液供給部材を示す断面図である。
図8A】本発明の一実施形態に係るインクジェット記録装置のワイプユニットにおいて、移動開始位置に移動したキャリッジを示す斜視図である。
図8B】本発明の一実施形態に係るインクジェット記録装置のワイプユニットにおいて、移動終了位置に移動したキャリッジを示す斜視図である。
図9A】本発明の一実施形態に係るインクジェット記録装置のワイプユニットにおいて、挿入位置に移動した洗浄液供給機構を示す側面図である。
図9B】本発明の一実施形態に係るインクジェット記録装置のワイプユニットにおいて、離間位置に移動した洗浄液供給機構を示す側面図である。
図10】本発明の一実施形態に係るインクジェット記録装置の制御部を示すブロック図である。
図11A】本発明の一実施形態に係るインクジェット記録装置において、ワイプ動作時(ホームポジション時)のヘッドユニット、ワイプユニット、ブレード、洗浄液供給機構を模式的に示す図である。
図11B】本発明の一実施形態に係るインクジェット記録装置において、ワイプ動作時(洗浄液供給機構上昇時)のヘッドユニット、ワイプユニット、ブレード、洗浄液供給機構を模式的に示すある。
図12A】本発明の一実施形態に係るインクジェット記録装置において、ワイプ動作時(ヘッドユニット上昇時)のヘッドユニット、ワイプユニット、ブレード、洗浄液供給機構を模式的に示す図である。
図12B】本発明の一実施形態に係るインクジェット記録装置において、ワイプ動作時(ワイプユニット移動時)のヘッドユニット、ワイプユニット、ブレード、洗浄液供給機構を模式的に示す図である。
図13A】本発明の一実施形態に係るインクジェット記録装置において、ワイプ動作時(ヘッドユニット下降時)のヘッドユニット、ワイプユニット、ブレード、洗浄液供給機構を模式的に示す図である。
図13B】本発明の一実施形態に係るインクジェット記録装置において、ワイプ動作時(キャリッジ移動時)のヘッドユニット、ワイプユニット、ブレード、洗浄液供給機構を模式的に示す図である。
図14A】本発明の一実施形態に係るインクジェット記録装置において、ワイプ動作時(ヘッドユニット上昇時)のヘッドユニット、ワイプユニット、ブレード、洗浄液供給機構を模式的に示す平面図である。
図14B】本発明の一実施形態に係るインクジェット記録装置において、ワイプ動作時(キャリッジ移動時)のヘッドユニット、ワイプユニット、ブレード、洗浄液供給機構を模式的に示す図である。
図15A】本発明の一実施形態に係るインクジェット記録装置において、ワイプ動作時(ワイプユニット移動時)のヘッドユニット、ワイプユニット、ブレード、洗浄液供給機構を模式的に示す図である。
図15B】本発明の一実施形態に係るインクジェット記録装置において、ワイプ動作時(洗浄液供給機構下降時)のヘッドユニット、ワイプユニット、ブレード、洗浄液供給機構を模式的に示す図である。
図16】本発明の一実施形態に係るインクジェット記録装置において、ワイプ動作時(ヘッドユニット下降時)のヘッドユニット、ワイプユニット、ブレード、洗浄液供給機構を模式的に示す図である。
図17A】本発明の一実施形態に係るインクジェット記録装置において、洗浄液供給機構の供給部による洗浄液供給過程を説明する図である。
図17B】本発明の一実施形態に係るインクジェット記録装置において、洗浄液供給機構の供給部による洗浄液供給過程を説明する図である。
図17C】本発明の一実施形態に係るインクジェット記録装置において、洗浄液供給機構の供給部による洗浄液供給過程を説明する図である。
図18】本発明の一実施形態に係るインクジェット記録装置において、洗浄液供給機構の供給部の変形例を示す図である。
図19】本発明の一実施形態に係るインクジェット記録装置において、洗浄液供給機構の供給部の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、添付の図面を参照しつつ、本発明の一実施形態に係るインクジェット記録装置について説明する。
【0019】
最初に、図1図2A及び図2Bを参照して、インクジェット記録装置1の全体の構成について説明する。図1はインクジェット記録装置1の内部を模式的に示す正面図である。図2Aはヘッドユニット11及びメンテナンス装置13を模式的に示す平面図、図2Bはヘッドユニット11及びメンテナンス装置13を模式的に示す側面図である。以下、図1における紙面手前側をインクジェット記録装置1の正面側(前側)とする。各図において、U、Lo、L、R、Fr、Rrは、それぞれ上、下、左、右、前、後を示す。
【0020】
インクジェット記録装置1(図1参照)は、インクを吐出することで画像を形成するインクジェット方式の画像形成装置である。インクジェット記録装置1は、直方体状の本体ハウジング3を備える。本体ハウジング3の内部の下部には、普通紙、コート紙等のシートSが収容される給紙カセット5と、給紙カセット5からシートSを送り出す給紙ローラー7と、が設けられている。給紙カセット5の上方には、シートSを搬送する搬送ユニット9が設けられている。搬送ユニット9の上方には、4つのヘッドユニット11M、11C、11Bk、11Y(ヘッドユニット11と総称する)と4つのメンテナンス装置13(図2A及び図2Bも参照)とが設けられている。本体ハウジング3の左上部には、画像が形成されたシートSを排出する排出ローラー対15と、排出されたシートSが積載される排出トレイ17と、が設けられている。
【0021】
本体ハウジング3の内部には、給紙カセット5から搬送ユニット9を経て排出ローラー対15に至る搬送路19が設けられている。搬送路19には、シートSを搬送する複数の搬送ローラー対21が設けられている。また、搬送路19には、搬送ユニット9よりも搬送方向上流側に、レジストローラー対23が設けられている。
【0022】
搬送ユニット9について、図1を参照して説明する。搬送ユニット9は、無端状の搬送ベルト25を備えている。搬送ベルト25には、厚さ方向に貫通する多数の貫通孔(図示省略)が開けられている。搬送ベルト25は、左右に離間して配置された駆動ローラー27Aと従動ローラー27Bとに巻き掛けられている。駆動ローラー27Aは、モーター(図示省略)により駆動されて回転する。駆動ローラー27Aが回転することで、搬送ベルト25は図1の反時計回り方向に走行する。上側の軌道に沿って走行する搬送ベルト25が、図1の右から左に向かう搬送方向に沿ってシートSが搬送される搬送路19を形成している。
【0023】
搬送ベルト25の中空部には、搬送板29と、吸引装置31と、が備えられている。搬送板29には、厚さ方向に貫通する多数の貫通孔が開けられている。搬送板29は、上側の軌道に沿って走行する搬送ベルト25の内面に接触する。吸引装置31は、搬送板29の下方に設けられて、搬送ベルト25の貫通孔と搬送板29の貫通孔を介して空気を吸引することで、シートSを搬送ベルト25に引き付ける。
【0024】
次に、ヘッドユニット11について説明する。4つのヘッドユニット11Y、11Bk、11C、11Mは、それぞれイエロー、ブラック、シアン、マゼンタのインクに対応しており、搬送ベルト25の上方に、搬送方向に沿って所定の間隔を開けて配置されている。4つのヘッドユニット11には、それぞれイエロー、ブラック、シアン、マゼンタのインクが充填されたインクコンテナ33Y、33Bk、33C、33M(インクコンテナ33と総称、図1参照)が接続されている。各ヘッドユニット11は、図2A及び図2Bに示されるように、3個のインクジェットヘッド37と、3個のインクジェットヘッド37を支持するプレート39と、を備える。3個のインクジェットヘッド37には、対応するインクコンテナ33からインクが供給される。
【0025】
インクジェットヘッド37について、図3A及び図3Bを参照して説明する。図3Aはインクジェットヘッド37を示す側面図、図3Bはインクジェットヘッド37を示す下面図である。インクジェットヘッド37は、シートSの搬送方向と交差する幅方向(前後方向)に長い直方体形状を有している。インクジェットヘッド37は、インクが供給される多数のノズル(図示省略)と、ノズルごとに設けられた圧電素子(図示省略)と、を備えている。多数のノズルの吐出口は、インクジェットヘッド37の下面に開口している。圧電素子が駆動されることで、ノズル内のインクがノズルの吐出口から下方に吐出される。図3Bに示されるように、吐出口が開口した領域をノズル面Nとする。
【0026】
3個のインクジェットヘッド37は、図2Aに示されるように、幅方向に沿って千鳥状に配置されて、図3Aに示されるように、下端部がプレート39から突き出るようにプレート39に支持されている。
【0027】
各ヘッドユニット11は、ヘッドユニット移動機構41(図1図2A及び図2Bには図示省略、図10参照)によって、印字位置と退避位置との間を上下方向に移動可能に支持されている。印字位置は、各ヘッドユニット11のインクジェットヘッド37のノズル面Nが、上側の軌道に沿って走行する搬送ベルト25と、所定の間隔(例えば1mm)を開けて対向する位置である(図1参照)。退避位置は、搬送ベルト25に対して印字位置よりも上方に離間して、搬送ユニット9の上方に、後述するメンテナンス装置13のキャップユニット51及びワイプユニット53が収容可能な空間を形成する位置である。印字位置を、ヘッドユニット11のホームポジションとする。ヘッドユニット移動機構41(図9参照)は、制御部201(図1図9参照)と電気的に接続されている。
【0028】
次に、メンテナンス装置13について、図4及び図5も参照して説明する。図4はキャップユニット51を示す斜視図、図5はワイプユニット53及び洗浄液供給機構57を示す斜視図である。メンテナンス装置13は、キャップユニット51(図4参照)と、ワイプユニット53(図5参照)と、キャップユニット51とワイプユニット53を収容するハウジング55(図2A及び図2B参照)と、ワイプユニット53に洗浄液を供給する洗浄液供給機構57(図5参照)と、を備えている。メンテナンス装置13は、ヘッドユニット11毎に設けられて、対応するヘッドユニット11に搬送方向に隣接して配置されている。この例では、図2A及び図2Bに示されるように、対応するヘッドユニット11の左側(シートSの搬送方向の下流側)に隣接して配置されている。
【0029】
まず、ハウジング55(図2B参照)について説明する。ハウジング55は、幅方向に長い直方体状を有している。ハウジング55の上面及び右側面(対応するヘッドユニット11に対向する面)は開口している。なお、メンテナンス装置13は、対応するヘッドユニット11の右側(搬送方向の上流側)に設けられてもよい。この場合は、ハウジング55の左側面が開口する。
【0030】
次に、キャップユニット51について、図4を参照して説明する。キャップユニット51は、支持プレート61と、支持プレート61に支持された3つのキャップ63と、を備えている。支持プレート61は、幅方向に長い矩形状に形成されている。3つのキャップ63は、ヘッドユニット11の3個のインクジェットヘッド37と同様に、幅方向に沿って千鳥に配置されている。各キャップ63は、上面が開口した凹部63aと、凹部63aの底部に設けられた排出口(図示省略)と、を備える。凹部63aは、1つのインクジェットヘッド37のノズル面Nを包囲する大きさを有する。
【0031】
キャップユニット51は、図2Bに示されるように、ハウジング55の下部空間に収容されている。キャップユニット51は、キャップユニット移動機構(図示省略)によって、ハウジング55に収容される離間位置(図2B参照)と、ハウジング55の開口を通って右方向に引き出されたキャップ位置と、の間を移動可能である。
【0032】
次に、ワイプユニット53及び洗浄液供給機構57について、図5を参照して説明する。まず、ワイプユニット53について説明する。ワイプユニット53は、支持プレート71と、3つのキャリッジ73と、3つの洗浄液供給部材75と、3つの廃液トレイ77と、を備えている。
【0033】
支持プレート71には、幅方向に沿った3つの一対のレール79が設けられている。3つの一対のレール79は、ヘッドユニット11の3個のインクジェットヘッド37と同様に、幅方向に沿って千鳥に配置されている。
【0034】
次に、キャリッジ73と洗浄液供給部材75とについて、図6A及び図6B図7も参照して説明する。図6Aはキャリッジ73及び洗浄液供給部材75を示す斜視図、図6Bはキャリッジ73及び洗浄液供給部材75を示す側面図である。図7は洗浄液供給部材75を示す断面図である。
【0035】
まず、キャリッジ73について説明する。図6A及び図6Bに示されるように、キャリッジ73は、移動体81と、ブレード83と、ブレード83を支持すると共に移動体81に支持されるホルダー85と、を有している。移動体81は、支持プレート71に形成されたレール79に係合して、キャリッジ移動機構87(図6A図6Bには図示省略、図10参照)によって、移動開始位置と移動終了位置との間を、レール79に沿って移動可能である。移動開始位置及び移動終了位置は、キャリッジ73が、幅方向(前後方向)において、インクジェットヘッド37のノズル面Nの両外側に対応する位置である。この例では、移動開始位置はノズル面Nよりも後方に対応する位置であり、移動終了位置はノズル面Nよりも前方に対応する位置である。移動開始位置から移動終了位置へ向かう方向(この例では、後ろから前へ向かう方向)を、キャリッジ73の移動方向X1とする。移動開始位置を、キャリッジ73のホームポジションとする。キャリッジ移動機構87は、制御部201(図10参照)と電気的に接続されている。
【0036】
ブレード83は、ノズル面Nの幅よりも広い幅を有する板状の部材であり、可撓性を有する樹脂等で作成されている。ブレード83は、移動方向X1において上流側に傾斜すると共に移動方向X1(前後方向)と交差するブレード幅方向X2(左右方向)において傾斜した姿勢で、下端部がホルダー85に支持されている。ホルダー85の下端部は、ブレード83よりも移動方向X1の上流側で、移動体81に回動軸89(図6B参照)を中心として回動可能に支持されている。これにより、ブレード83は、回動軸89を中心として、ホルダー85と共に移動方向X1の上流側及び下流側に回動可能である。また、ホルダー85は、ブレード幅方向X2に離間して、上方に延びる一対のアーム85aを有している。
【0037】
次に、洗浄液供給部材75について説明する。洗浄液供給部材75は、キャリッジ73とは別に設けられ、洗浄液収容部材91と、洗浄液収容部材91を支持して支持プレート71に支持される一対のホルダー93と、を有している。洗浄液収容部材91は矩形の板状部材であり、上面は平坦に形成されている。洗浄液収容部材91の下面には、ブレード幅方向X2に沿って凹部91aが形成されていてもよい。凹部91aの、移動方向X1の下流側の側面は、移動方向X1の下流側に向かって傾斜している。洗浄液収容部材91は、凹部91aよりも移動方向X1の下流側の先端部91bと、上流側の基端部91cと、を有している。先端部91bは、基端部91cよりも厚さが薄く形成されている。
【0038】
先端部91bの下面は平面状に形成されている。図6A及び図7に示されるように、先端部91bには、上下方向に貫通する天板貫通孔95が開けられている。具体的には、先端部91bの底板には、上下方向に貫通する1個あるいは複数個の供給孔94が開けられている。供給孔94は、先端部91bの下面に開口している。供給孔94の断面形状は、円形としてもよい。供給孔94は、上方に向かって内寸が大きくなっていてもよい。供給孔94は、途中に水平な平坦面がないか、図18に示されるように、平坦部があったとしても、供給孔194の断面の中で最も狭い位置の断面の面積の10倍以下、好ましくは5倍以下の面積を有する。すなわち、供給孔94の内部に洗浄液が供給された場合、その洗浄液のほぼ全てが一旦供給孔94に入り、洗浄液収容部材91から落下しなかった洗浄液は、供給孔94の内部及び洗浄液収容部材91(シート部材99)の下面に保持される。さらに、先端部91bの下面には、移動方向X1の下流側に突出するシート部材99が貼り付けられていてもよい。シート部材99には、先端部91bの供給孔94と連通する貫通孔101(図6Bも参照)が開けられている。貫通孔101は、シート部材99の下面に開口している。貫通孔101が開口するシート部材99の下面は、本発明の洗浄液供給面の一例である。供給孔94は、ブレード幅方向X2に沿って複数個形成されていてもよい。この場合、シート部材99の貫通孔101は、複数個の供給孔94と連通するように複数個設けられる。
【0039】
一対のホルダー93のそれぞれは、側面から見てL字の板状部材である。ホルダー93の一方の端部は、洗浄液収容部材91の基端部91cの側面に回動軸103を中心とした所定の範囲内を回動可能に支持されている。ホルダー93の他方の端部は、移動開始位置に移動したキャリッジ73よりも移動方向X1の上流側において、支持プレート71に回動軸105(図6B参照)を中心として回動可能に支持されている。詳細には、回動軸105は、支持プレート71に設けられた凹部71aに収容されている。これにより、ホルダー93は回動軸105を中心として上下方向に回動可能であり、上方に回動することで、洗浄液収容部材91がホルダー93と共に上方に回動し、下方に回動することで、洗浄液収容部材91がホルダー93と共に下方に回動する。回動軸105にはねじりコイルバネ(図示省略)が外嵌している。ねじりコイルバネは、ホルダー93を下方に回動するように付勢している。また、キャリッジ73のホルダー85の一対のアーム85aは、洗浄液収容部材91の基端部91cと一対のホルダー93との間を通って上方に延びている。
【0040】
図8A及び図8Bを参照して、キャリッジ73の移動について説明する。図8A及び図8Bワイプユニット53を示す斜視図である。図8Aは移動開始位置に移動したキャリッジ73を示し、図8Bは移動終了位置に移動したキャリッジ73を示す。図8Aに示されるように、キャリッジ73が移動開始位置に移動すると、ブレード83の先端部は、洗浄液収容部材91の凹部91aに収容される(図6A及び図6Bも参照)。キャリッジ73は、キャリッジ移動機構87(図10参照)によって、移動開始位置から、図8Bに示される移動終了位置へ移動する。ここで、洗浄液供給部材75は、前述のように支持プレート71に移動不能に支持されているので、キャリッジ73が移動しても、洗浄液供給部材75は移動しない。
【0041】
図2Bに示されるように、ワイプユニット53は、ハウジング55の上部空間に収容されている。ワイプユニット53は、ワイプユニット移動機構111(図2Bには図示省略、図10参照)によって、ハウジング55に収容される離間位置(図2B参照)から、ハウジング55の開口から右方向に引き出されたワイプ位置に移動可能である。後述するように、ワイプ位置においては、ワイプユニット53の各ブレード83がインクジェットヘッド37のノズル面Nに接触可能であり、離間位置においては、ワイプユニット53の各ブレード83がインクジェットヘッド37のノズル面Nから離間する。離間位置を、ワイプユニット53のホームポジションとする。ワイプユニット移動機構111は、制御部201(図10参照)と電気的に接続している。
【0042】
次に、洗浄液供給機構57について、図5と、図9A及び図9Bを参照して説明する。図9A及び図9Bは、離間位置と挿入位置とに移動した洗浄液供給機構57を示す側面図である。
【0043】
洗浄液供給機構57は、ワイプユニット53の各洗浄液供給部材75に、洗浄液(例えば、水)を供給する。図5に示されるように、洗浄液供給機構57は、支持プレート121と、支持プレート121に支持された3つの供給管123と、を備えている。支持プレート121は、ワイプユニット53の支持プレート71と同様の大きさを有する矩形状部部材である。3つの供給管123は、ワイプユニット53の3つの洗浄液供給部材75の洗浄液収容部材91の天板貫通孔95に上方から対向するように配置されて、下端部が支持プレート121から下方に突き出ている。供給管123は、本発明における、ワイプユニット53に洗浄液を供給する供給路の一例である。
【0044】
各供給管123の下端部には、長手方向に沿った貫通孔を有する供給部124が設けられている。供給部124は、供給管123の外寸及び洗浄液供給部材75の洗浄液収容部材91の先端部91bに形成された供給孔94の上端部
よりも小さい外寸を有している。供給部124の外形は、円柱状であってもよい。
【0045】
3つの供給管123の上端部は、チューブ125に接続されている。各チューブ125は、ポンプ127を介して洗浄液タンク129に接続している。ポンプ127が駆動されることで、洗浄液タンク129から洗浄液が汲み上げられ、チューブ125を通って各供給管123に供給されるようになっている。ポンプ127は、制御部201(図10参照)と電気的に接続している。
【0046】
さらに、図9A及び図9Bに示されるように、支持プレート121の下面には、ブレード幅方向X2における供給管123の両側に、一対の円筒状の位置決めピン131が形成されている。さらに、支持プレート121の下面には、各供給管123よりも移動方向X1の上流側に、ブレード幅方向X2に離間した一対の直方体状の突部133が形成されている。
【0047】
洗浄液供給機構57は、昇降機構137(図5図9A及び図9Bには図示省略、図10参照)によって、挿入位置(図9A参照)と離間位置(図9B参照)とを含む複数の位置に上下方向に移動可能に支持されている。図9Aに示されるように、挿入位置においては、一対の位置決めピン131が、洗浄液収容部材91の先端部91bの上面に当接し、供給管123の供給部124が、洗浄液収容部材91の供給孔94に挿入される。挿入位置では、供給部124の先端は、供給孔94の上端と同じ高さとなる位置(便宜上、このような位置も含めて挿入位置とする)から、洗浄液収容部材91の下面(供給孔94の開口)と同じ面に達する位置までの、いずれかの位置に位置する。シート部材99がある場合、供給部124の先端が、シート部材99の下面(貫通孔101)と同じ面に達するまで挿入されてもよい。さらに、一対の突部133が、キャリッジ73のホルダー85の一対のアーム85aを押し下げる。これにより、ホルダー85が移動体81に対して回動して、ブレード83が移動方向X1の上流側に傾斜する。また、図9Bに示されるように、離間位置においては、各供給管123の供給部124が供給孔94から上方に離間し、さらに天板貫通孔95から上方に離間する。昇降機構137は、制御部201(図10参照)と電気的に接続している。
【0048】
昇降機構137は、洗浄液供給機構57を、挿入位置と離間位置の他、供給管123の供給部124の先端が供給孔94から突き出る貫通位置に移動させてもよい。シート部材99がある場合、貫通位置では、供給部124の先端が、シート部材99の貫通孔101から突き出る。
【0049】
図5に示されるように、廃液トレイ77は、キャリッジ73の移動領域を覆う大きさを有し、移動領域の下方に対応するように支持プレート71に支持されている。
【0050】
次に、図10を参照して、制御部201について説明する。図10は制御部201のブロック図である。制御部201は、ヘッドユニット移動機構41を動作させて、ヘッドユニット11を印字位置と退避位置とを含む複数の位置に上下方向に沿って移動させる。制御部201は、キャリッジ移動機構87を動作させて、キャリッジ73を、移動開始位置と移動終了位置とを間を移動させる。制御部201は、ワイプユニット移動機構111を動作させて、ワイプユニット53をワイプ位置と離間位置との間を、左右方向に沿って移動させる。制御部201は、ポンプ127を動作させて、洗浄液タンク129から洗浄液の汲み上げを開始及び汲み上げを停止させる。また、制御部201は、昇降機構137を動作させて、洗浄液供給機構57を挿入位置と離間位置を含む複数の位置に上下方向に沿って移動させる。
【0051】
上記構成を有するインクジェット記録装置1において、画像形成動作とメンテナンス装置13におけるワイプ動作について、図11A図17Cを主に参照して説明する。図11A図16は、ワイプユニット53とインクジェットヘッド37とを模式的に示す図であり、各図の左側の図は平面図、各図の右側の図は正面図を示す。図17A図17Cは洗浄液供給機構57の供給部124による洗浄液供給過程を説明する図である。図11A図16には、供給部124が図示省略されている。キャップ動作については説明を省略する。
【0052】
画像形成動作及びワイプ動作は、制御部201が各移動機構やポンプ等を制御することで実行される。初期状態において、ヘッドユニット11、ワイプユニット53、キャリッジ73、洗浄液供給機構57は、ホームポジションに移動している。すなわち、ヘッドユニット11は印字位置に移動し、ワイプユニット53は離間位置に移動し、キャリッジ73は移動開始位置に移動し、洗浄液供給機構57は挿入位置に移動している。
【0053】
まず、画像形成動作について説明する。外部のコンピューター等からインクジェット記録装置1に画像形成ジョブが入力されると、給紙ローラー7によって給紙カセット5から搬送路19にシートSが送り出される。送り出されたシートSは、レジストローラー対23によって斜行が補正された後で、所定のタイミングで搬送ユニット9に送り出される。シートSは、搬送ベルト25に引き付けられて搬送方向に搬送される。この際、制御部201がシートSの搬送と同期させてヘッドユニット11の各ノズルに対応する階調データを駆動回路に供給すると、駆動回路が階調データに応じた駆動信号を圧電素子に供給することでノズルからインク滴が吐出され、シートSに画像が形成される。画像が形成されたシートSは、排出ローラー対15によって排出トレイ17に排出される。
【0054】
このように、画像形成動作時、ヘッドユニット11は印字位置に移動している。ヘッドユニット11の各インクジェットヘッド37には、図3Bに示されるように、洗浄液を供給する構成が備えられていない。したがって、洗浄液が誤ってシートSに接触するような不具合が発生しない。
【0055】
次に、ワイプ動作について説明する。図11Aに示されるように、初期状態において、ワイプユニット53は離間位置に移動し、キャリッジ73(ブレード83)は移動開始位置に移動し、洗浄液供給機構57は挿入位置に移動している。すなわち、図17Aに示されるように、洗浄液供給機構57の各供給管123の供給部124が、ワイプユニット53の各洗浄液供給部材75の供給孔94に挿入されている。具体的には、供給部124の先端は、供給孔94もしくは貫通孔101の下端に位置している。さらに、洗浄液供給機構57の一対の突部133が、キャリッジ73のホルダー85の一対のアーム85aを押し下げ、ブレード83が移動方向X1の上流側に傾斜している(図9A参照)。
【0056】
次に、制御部201はポンプ127を動作させる。これにより、洗浄液タンク129から洗浄液が汲み上げられ、チューブ125と各供給管123を通って供給部124から供給される。制御部201は、所定時間後ポンプ127の駆動を停止する。図17Bに示されるように、各供給部124から供給された洗浄液は、供給孔94の内壁に接触して、内壁を濡らし、シート部材99の貫通孔101を通り、貫通孔101の開口101aから下方に流れ、供給孔94の内壁との濡れ、さらに、シート部材99との濡れにより液滴として保持され、凸のメニスカスLを形成する。
【0057】
次に、制御部201は、図11Bに示されるように、昇降機構137を動作させて、洗浄液供給機構57を挿入位置から離間位置へ上昇させる。これにより、図17Cに示されるように、供給部124は洗浄液収容部材91の供給孔94から上方に離間し、さらに、天板貫通孔95から離間する。一方で、下方に凸のメニスカスを形成した洗浄液Lは、開口101aに保持される。
【0058】
その後、図12Aに示されるように、制御部201は、ヘッドユニット移動機構41を動作させて、ヘッドユニット11(インクジェットヘッド37)を印字位置から退避位置へ移動させる。その後、図12Bに示されるように、制御部201は、ワイプユニット移動機構111を動作させて、ワイプユニット53を離間位置からワイプ位置へ移動させる。すなわち、ワイプユニット53は洗浄液供給機構57の下方から離間する。この際、ワイプユニット53は、シート部材99(図6A及び図6B参照)の貫通孔101の開口101aに、下方に凸のメニスカスを形成した洗浄液を保持したまま移動する。ワイプユニット53が移動をしている間、廃液トレイ77は、洗浄液収容部材91の下方の位置を維持しているので、洗浄液が洗浄液収容部材91から落下したとしても、廃液トレイ77に受け止めらる。これにより、搬送中のシートS、搬送ベルト25、その他のインクジェット記録装置1内部が洗浄液で濡れることを抑制できる。
【0059】
次に、制御部201は、図13Aに示されるように、ヘッドユニット移動機構41を動作させて、各インクジェットヘッド37の下面(ノズル面N)が、ワイプユニット53の各洗浄液収容部材91の先端部91bの下面と面一となる高さまでヘッドユニット11を下降させる。すると、ワイプユニット53の各キャリッジ73は、移動開始位置(ノズル面Nよりも移動方向の上流側の位置)に位置し、インクジェットヘッド37の下面に各キャリッジ73のシート部材99の上面が当接する。このシート部材99により、インクジェットヘッド37の下面と洗浄液収容部材91の先端部91bの下面との間の隙間が封止される。
【0060】
次に、制御部201は、図13Bに示されるように、キャリッジ移動機構87を動作させて、キャリッジ73を移動開始位置から移動終了位置へ移動させる。すると、キャリッジ73と共にブレード83が移動する。ブレード83は、まず、洗浄液収容部材91の凹部91aの側面に沿って移動方向X1の上流側に弾性変形して湾曲し、先端部91bの下面に達すると、開口101aに保持された凸状のメニスカスを形成した洗浄液を拭き取る。この際、洗浄液収容部材91の先端部91bがブレード83で押し上げられ、洗浄液収容部材91がホルダー93に対して回動軸103を中心として上方に回動すると共に、ホルダー93が回動軸105を中心として上方に回動する(図6A及び図6B参照)。
【0061】
その後、ブレード83は、洗浄液と共にシート部材99を介してインクジェットヘッド37のノズル面Nに沿って移動する。これにより、ノズル面Nに付着したインクが拭き取られる。このように、ヘッドユニット11が移動したワイプ位置は、ブレード83がインクジェットヘッド37のノズル面Nに接触する位置である。拭き取られたインクや洗浄液は、下方の廃液トレイ77に落下する。なお、前述のように、洗浄液供給部材75は移動してない。また、ブレード83がシート部材99から離間すると、ホルダー93はねじりコイルバネで付勢されて下方に回動する。
【0062】
次に、制御部201は、図14Aに示されるように、ヘッドユニット移動機構41を動作させて、ヘッドユニット11(インクジェットヘッド37)を退避位置へ移動させる。これにより、各インクジェットヘッド37のノズル面Nがブレード83から上方へ離間する。その後、制御部201は、図14Bに示されるように、キャリッジ移動機構87を動作させて、キャリッジ73を移動終了位置から移動開始位置へ戻す。その後、前述の拭き取り動作を繰り返してもよい。
【0063】
拭き取り動作が終了した後、制御部201は、図15Aに示されるように、ワイプユニット移動機構111を動作させて、ワイプユニット53をワイプ位置から離間位置(ホームポジション)へ移動させ、その後、制御部201は、図15Bに示されるように、昇降機構137を動作させて、洗浄液供給機構57を離間位置から挿入位置へ下降させる。この際、供給管123の供給部124が、キャリッジ73の洗浄液供給部材75の洗浄液収容部材91の供給孔94に挿入される。供給孔94は、上方に向かって拡径されているので、供給部124を供給孔94に挿入させやすくなる。また、供給部124の外寸を、供給孔94の最小内寸よりも大きくして、ワイプユニット53と洗浄液供給機構57との位置ズレに対応可能としてもよい。次に、制御部201は、図16に示されるように、ヘッドユニット移動機構41を動作させて、ヘッドユニット11(インクジェットヘッド37)を退避位置から印字位置(ホームポジション)へ下降させる。
【0064】
上記説明したように、本発明によれば、洗浄液供給機構57の供給管123の供給部124が洗浄液収容部材91の供給孔94に挿入された状態(挿入位置)で、供給部124から供給孔94に洗浄液が供給されるので、供給管123から洗浄液が漏れ出して周囲の部材に付着することがない。また、供給部124が、供給孔94に挿入されない状態、すなわち、先端部91bの底板より上方にある状態で洗浄液を供給すると、供給孔94に入らず、先端部91bの底板の上に残る洗浄液もあるため、供給孔94から下に流れる洗浄液の量が安定せず、洗浄液収容部材91の下面に溜まる洗浄液の量も安定し難い。供給部124が供給孔94に挿入された状態で洗浄液が供給されることで、そのようなことが起き難く、洗浄液の量が安定する。さらに、洗浄液供給機構57から供給された所定量の洗浄液を、洗浄液収容部材91に確実に保持させることができる。さらに、また、供給孔94は、上方に向かって内寸が大きくなるように形成されている。したがって、供給部124を供給孔94に確実に挿入させることができる。また、供給孔94の内寸は、供給孔94の上端以外で、供給部124の外寸よりも小さい部分があってもよい。供給孔94の内寸が最も小さくなって位置は、供給孔94の下端であるか、下端から同じ寸法で上に延びる部分であるのがよい。供給孔94に供給部124より小さ部分があることにより、挿入位置において、供給部124の先端が供給孔94の内壁の近くに位置し、供給部124から出る洗浄液が供給孔94の内壁を伝わって下に流れやすくなる。洗浄液が供給孔94の内壁に接触しないで落下すると、洗浄液収容部材91の下面に洗浄液が溜まらず落下する可能性があるが、洗浄液が供給孔94の内壁に接触することで、そのような可能性を小さくできる。挿入位置において、供給部124の先端が供給孔94に接触するようにしてもよい。
【0065】
さらに、ワイプユニット53がブレード83と洗浄液供給部材75とを備え、画像形成動作時には離間位置に移動している。つまり、ヘッドユニット11に洗浄液供給部材75が備えられていないので、画像形成動作時にシートSが誤って上方に湾曲したような場合でも、洗浄液供給部材75から供給される洗浄液がシートSに付着したり、洗浄液供給部材75にシートSが接触したりすることがない。したがって、洗浄液によるシートSの汚染やシートSによる洗浄液供給部材75の損傷を防止できる。
【0066】
また、洗浄液供給機構57は、昇降機構137によって挿入位置と貫通位置に移動可能である。洗浄液の供給は、供給部124の先端が供給孔94の途中に位置する中間挿入位置において行ってもよい。供給部124から供給された洗浄液を供給孔94の途中から下方の部分に供給することができるので、供給される洗浄液の量を比較的多くすることができる。また、貫通位置においては、洗浄液に気泡等が含まれていた場合、気泡を含む洗浄液を供給孔94に接触させずに排出することができる。すなわち、気泡等を排出する際に、供給部124から排出された洗浄液が、洗浄液供給部材75の供給孔94及び下面に溜まらないようにできる。なお、この際排出された洗浄液は、下方の廃液トレイ77で受けられる。洗浄液供給部材75の供給孔94および下面に溜める洗浄液を供給する前に、供給部124を貫通位置に配置し、洗浄液を供給することで、供給部124内部の気泡等を排出することができる。その後、供給部124を挿入位置に移動させ、供給孔94に洗浄液を供給すれば、洗浄液の供給量を安定させることができる。
【0067】
また、洗浄液収容部材91に複数個の供給孔94を形成してもよい。この場合、洗浄液供給機構57は、供給孔94毎に供給管123及び供給部124を備える。この場合、供給される洗浄液の量を多くすることができる。
【0068】
また、洗浄液供給部材75に洗浄液を供給する洗浄液供給機構57の供給管123は、挿入位置と離間位置とに上下方向に移動するのみで、左右方向には移動しない。このように、供給管123の移動距離が比較的短いので、供給管123に接続するチューブ125が折れ曲がって供給不良になることを抑制できる。さらに、狭い空間内でチューブ125の引き回しを行うことができる。
【0069】
次に、本発明の変形例について、図18を参照して説明する。この変形例においては、図18に示すように、供給孔194は下方に向かう途中で非連続に狭くなっている。換言すれば、内寸が急激に狭くなっている。内寸が急激に狭くなる部分は、段差ができ、水平な平坦部が構成されていてもよい。供給孔194の下端側で狭くなっている部分では、内寸が供給部124の先端の外寸より小さくなっていてもよい。そのようになっていれば、供給部124が挿入位置で洗浄液を供給する際、平坦部の近くで洗浄液が供給されるので、供給孔194の内壁に接触することなく、洗浄液が洗浄液供給部材75から落下することを起こり難くできる。また、洗浄液は、平坦部に当たって、流れの勢いが弱まるので、それによっても、洗浄液が不必要に洗浄液供給部材75から落下し難くできる。供給部124が挿入位置で洗浄液を供給する際、供給部124の先端を、平坦部に接触させるようにしてもよい。
【0070】
次に、本発明の変形例について、図19を参照して説明する。この変形例においては、図19に示すように供給孔94の開口の内側に、メッシュ部材96が設けられている。メッシュ部材96の目開きの大きさは、天板貫通孔95の最小内寸よりも小さい。供給部124は、先端が、メッシュ部材96に接するまで挿入される。
【0071】
さらに、供給孔94が洗浄液供給面に面する開口には、目開きの大きさが供給孔94の最小内寸よりも小さいメッシュ部材96が設けられているので、供給孔94の流路抵抗が高められる。これにより、供給部124から供給される洗浄液の勢いが緩衝され、メッシュ部材96や開口101aに洗浄液を保持しやすくなる。
【0072】
本実施形態では、4個のヘッドユニット11がインクの色毎に設けられ、メンテナンス装置13がヘッドユニット11毎に設けられている例について説明した。しかし、4個のヘッドユニット11が一体に設けられ、メンテナンス装置13が、4個のキャップユニット51と4個のワイプユニット53とが一体に設けられるように構成されてもよい。
【0073】
また、本実施形態では、ヘッドユニット11が印字位置と退避位置とに上下方向に移動し、搬送ユニット9が移動不能である例について説明した。しかし、搬送ユニット9が、印字位置と退避位置とに上下方向に移動し、搬送ユニット9が移動不能であってもよい。この場合は、メンテナンス装置13は、搬送ユニット9が退避位置に移動した後に形成される空間に移動可能に設けられる。
【0074】
本発明は特定の実施形態について記載されてきたが、本発明は上記実施形態に限定されない。本発明の範囲及び主旨を逸脱しない限りにおいて、当業者は上記実施形態を改変可能である。
【符号の説明】
【0075】
1 インクジェット記録装置
37 インクジェットヘッド
53 ワイプユニット
75 洗浄液供給部材
83 ブレード
94 供給孔
123 供給管
124 供給部
図1
図2A
図2B
図3A
図3B
図4
図5
図6A
図6B
図7
図8A
図8B
図9A
図9B
図10
図11A
図11B
図12A
図12B
図13A
図13B
図14A
図14B
図15A
図15B
図16
図17A
図17B
図17C
図18
図19