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特開2024-15804入力回路、電力変換装置、入力回路の診断方法、および、コンピュータプログラム
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  • 特開-入力回路、電力変換装置、入力回路の診断方法、および、コンピュータプログラム 図1
  • 特開-入力回路、電力変換装置、入力回路の診断方法、および、コンピュータプログラム 図2
  • 特開-入力回路、電力変換装置、入力回路の診断方法、および、コンピュータプログラム 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024015804
(43)【公開日】2024-02-06
(54)【発明の名称】入力回路、電力変換装置、入力回路の診断方法、および、コンピュータプログラム
(51)【国際特許分類】
   G01R 31/00 20060101AFI20240130BHJP
【FI】
G01R31/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022118113
(22)【出願日】2022-07-25
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(71)【出願人】
【識別番号】598076591
【氏名又は名称】東芝インフラシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】高木 隆志
【テーマコード(参考)】
2G036
【Fターム(参考)】
2G036AA19
2G036BA01
(57)【要約】      (修正有)
【課題】安全性および信頼性の高い入力回路を提供する。
【解決手段】実施形態による入力回路は、外部から電圧信号が入力される複数の入力端子A01-A07、AT1と、複数の電圧信号が順次出力される出力端子OUT1と、を備えたマルチプレクサMUX1と、マルチプレクサMUX1から出力された電圧信号の値を検出する検出回路21aと、検出回路21aで検出された電圧信号の値を取得し、取得した値から異常を判断する診断回路23と、を備え、複数の入力端子A01-A07、AT1は診断用入力端子AT1を含み、診断用入力端子AT1には診断用入力端子AT1を除く他の複数の入力端子A01-A07に供給される電圧信号の論理和に相当する電圧信号が入力される。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部から電圧信号が入力される複数の入力端子と、複数の前記電圧信号が順次出力される出力端子と、を備えたマルチプレクサと、
前記マルチプレクサから出力された前記電圧信号の値を検出する検出回路と、
前記検出回路で検出された前記電圧信号の値を取得し、取得した値から異常を判断する診断回路と、を備え、
複数の前記入力端子は診断用入力端子を含み、前記診断用入力端子には前記診断用入力端子を除く他の複数の前記入力端子に供給される前記電圧信号の論理和に相当する前記電圧信号が入力される、入力回路。
【請求項2】
前記診断用入力端子は、前記診断用入力端子を除く他の前記入力端子の各々に前記電圧信号を供給する複数の配線それぞれと、ダイオードを介して接続されている、請求項1記載の入力回路。
【請求項3】
前記マルチプレクサは、それぞれが複数の前記入力端子および前記出力端子を備えた第1マルチプレクサと第2マルチプレクサとを含み、
前記第1マルチプレクサから出力された前記電圧信号の値を検出する前記検出回路と、前記第2マルチプレクサから出力された前記電圧信号の値を検出する前記検出回路とは、基準電位が異なる、請求項1記載の入力回路。
【請求項4】
前記検出回路は、前記マルチプレクサから供給された前記電圧信号が所定の閾値以上であるときにハイレベルの信号を検出し、前記マルチプレクサから供給された前記電圧信号が所定の閾値未満であるときにローレベルの信号を検出し、
前記診断回路は、前記診断用入力端子を除く他の複数の前記入力端子の前記検出回路における検出値の第2論理和を演算し、前記診断用入力端子に入力された前記電圧信号の前記検出回路における検出値と前記第2論理和とが一致しないときに、異常と判断する、請求項1記載の入力回路。
【請求項5】
直流電力を交流電力に変換して出力する電力変換回路と、
前記電力変換回路の入力電圧および出力電流と、外部から供給される制御指令とが電圧信号として入力される入力回路を含み、前記入力回路に入力された前記電圧信号に基づいて前記電力変換回路の動作を制御する制御回路と、を備え、
前記入力回路は、
前記電圧信号が入力される複数の入力端子と、複数の前記電圧信号を順次出力する出力端子と、を備えたマルチプレクサと、
前記マルチプレクサから出力された前記電圧信号の値を検出する検出回路と、
前記検出回路で検出された前記電圧信号の値を取得し、取得した値から異常を判断する診断回路と、を備え、
複数の前記入力端子は診断用入力端子を含み、前記診断用入力端子には前記診断用入力端子を除く他の複数の前記入力端子に供給される前記電圧信号の論理和に相当する信号が入力される、電力変換装置。
【請求項6】
外部から電圧信号が入力される複数の入力端子と、複数の前記電圧信号が順次出力される出力端子とを備えたマルチプレクサから供給された前記電圧信号が、所定の閾値以上であるときにハイレベルの信号を検出し、前記電圧信号が所定の閾値未満であるときにローレベルの信号を検出し、
前記マルチプレクサの診断用入力端子を除く他の複数の前記入力端子に入力された前記電圧信号の検出値の論理和を算出し、
前記診断用入力端子に入力された前記電圧信号の検出結果と前記論理和とが一致しないときに、異常であると判断する、入力回路の診断方法。
【請求項7】
コンピュータに請求項6に記載の方法を実行させるコンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、入力回路、電力変換装置、入力回路の診断方法、および、コンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
電力変換装置は様々な用途に使用されている。電力変換装置が、例えば、鉄道向けなどインフラ用途で使用される場合には、安全性や信頼性が要求される。このため、電力変換装置に内蔵される機器は長寿命かつ故障しないことが求められるが、現実的には故障のない機器の実現は困難である。
【0003】
一方で、機器の故障や異常な状態を検出し、早期に故障部位を切り離すことができれば、安全性は損なわれない。また、故障検出後に機器を交換し、異常状態から早期に復旧できれば、信頼性も大きく損なわれることはない。
【0004】
このような背景から、安全性と信頼性とが要求される電力変換装置では、内蔵する機器が自らの異常状態を検出する機能を有することが望ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第5401491号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
電力変換装置の制御回路は、様々な制御指令信号やセンサ信号に関する電圧信号を、外部から受信する入力回路を有している。制御回路への入力信号は、様々な機器から与えられるため、信号ごとに基準電位が異なっている可能性がある。基準電位の異なる信号が入力される回路は、互いに絶縁する必要がある。
【0007】
例えば、入力回路にテスト電圧(診断用電位)を与え、自身の故障や異常状態を検出する所謂自己診断機能を付加する場合、絶縁された回路毎に基準電位の異なるテスト電圧を供給する必要がある。この場合、制御回路は、複数の絶縁型DC-DCコンバータを備えることとなり、部品コスト、実装サイズが増加してしまう。
【0008】
なお、テスト電圧を利用しない信頼性向上の手法として、1つの入力信号に対して2つの検出回路で信号検出する、冗長なシステムを構成することも考えられる。しかしながら、検出回路が2倍となるため、この場合も部品コスト、実装サイズの増加が課題となる。
【0009】
本発明の実施形態は上記事情を鑑みて成されたものであって、安全性および信頼性の高い入力回路、電力変換装置、入力回路の診断方法、および、コンピュータプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
実施形態による入力回路は、外部から電圧信号が入力される複数の入力端子と、複数の前記電圧信号が順次出力される出力端子と、を備えたマルチプレクサと、前記マルチプレクサから出力された前記電圧信号の値を検出する検出回路と、前記検出回路で検出された前記電圧信号の値を取得し、取得した値から異常を判断する診断回路と、を備え、複数の前記入力端子は診断用入力端子を含み、前記診断用入力端子には前記診断用入力端子を除く他の複数の前記入力端子に供給される前記電圧信号の論理和に相当する前記電圧信号が入力される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、実施形態の電力変換装置の一構成例を概略的に示す図である。
図2図2は、実施形態の入力回路の一構成例を概略的に示す図である。
図3図3は、実施形態の入力回路の診断方法の一例を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、実施形態の入力回路、電力変換装置、入力回路の診断方法、および、コンピュータプログラムについて、図面を参照して説明する。
図1は、一実施形態の電力変換装置の一構成例を概略的に示す図である。
本実施形態の電力変換装置1は、例えば鉄道車両に搭載され、電力変換回路2と、電圧センサ3と、電流センサ4と、制御回路5と、を備えている。
【0013】
電力変換回路2は、交流負荷と直流電源との間に接続され、直流電源から供給される直流電力の直流電圧を三相の交流電圧に変換して、交流負荷へ交流電力を供給する。電力変換回路2は、高電位側の直流リンクと低電位側の直流リンクとの間に接続された各相のレグを備えている。各相レグは、高電位側の直流リンクと交流負荷との間に接続された上アームと、低電位側の直流リンクと交流負荷との間に接続された下アームとを備えている。上アームと下アームとの各々は、少なくとも1つの半導体素子を含む。
【0014】
電圧センサ3は、高電位側の直流リンクと低電位側の直流リンクとの間の電圧の値(電力変換装置2の入力電圧の値)を検出し、制御回路5へ検出した値を供給する。
電流センサ4は、電力変換回路2から交流負荷へ供給される電流の値(電力変換回路2の出力電流の値)を検出し、制御回路5へ検出した値を供給する。
【0015】
制御回路5は、少なくとも1つのプロセッサと、プロセッサにより実行されるプログラムが記録されたメモリと、を備え、ソフトウエアにより又はソフトウエアとハードウエアとの組み合わせにより種々の機能を実現することができる。
【0016】
制御回路5は、電圧センサ3および電流センサ4から供給される値や、外部に設置されている運転指令設定部10で生成された加速、停止等の制御指令信号に基づいて、電力変換回路2の半導体素子のゲート信号を生成して出力する。
【0017】
具体的には、制御回路5は、運転指令設定部10からの制御指令信号を処理し、負荷をどのように制御するかを判断する。例えば、電力変換装置1から出力される三相交流電流によりモータ(交流負荷)を動作させる場合、まず電力変換回路2に入力される直流電源Vdcの電圧を電圧センサ3により取得し、電力変換回路2から出力される三相交流電流を電流センサ4により取得する。制御回路5は、運転指令設定部10からの制御指令信号と、検出した電圧および電流の情報とを用いて、直流電圧を任意の電圧および周波数の交流電圧に制御すべく、電力変換回路2に含まれる複数の半導体素子のオン/オフの動作を制御する。制御回路5は、例えば、電力変換回路2の電圧指令値と、キャリア波の値とを比較し、半導体素子のゲート信号を生成することができる。
【0018】
制御回路5は、入力回路20を備えている。入力回路20には、電圧センサ3と電流センサ4とにより検出された値、および、運転指令設定部10から供給される制御指令信号が入力される。
【0019】
図2は、実施形態の入力回路の一構成例を概略的に示す図である。
入力回路20は、第1マルチプレクサMUX1と、第2マルチプレクサMUX2と、ダイオード2401-2414と、検出回路21a、21bと、検出回路診断部(診断回路)23と、を備えている。
第1マルチプレクサMUX1は、3以上の任意の整数(N個)の入力端子A01-A07、AT1と、出力端子OUT1と、複数の切替器2201-2207、22T1と、を備える。
【0020】
入力端子A01-A07には、入力01-入力07が入力される。図2に示す例では、入力01-入力05は、運転指令設定部10からの制御指令信号、若しくは、電圧センサ3と電流センサ4との検出値の信号であり、入力06および入力07は不使用である。入力端子AT1は、入力回路20の自己診断のためのテスト信号が入力される診断用入力端子である。
【0021】
複数の切替器2201-2207、22T1は、複数の入力端子A01-A07、AT1の各々と出力端子OUT1との電気的接続を切り換える。複数の切替器2201-2207、22T1は、所定の順で周期的に切り替わるように制御される。したがって、複数の入力端子A01-A07、AT1に供給された電圧信号は、周期的に、順次出力端子OUT1に供給される。
【0022】
ダイオード2401-2407のアノードは、入力端子AT1を除く入力端子A01-A07へ電圧信号を供給する複数の配線の各々と電気的に接続されている。ダイオード2401-2407のカソードは、入力端子AT1と電気的に接続されている。したがって、入力端子A01-A07に供給される電圧信号(入力01-入力07)の論理和に相当する電圧信号が、ダイオード2401-2407を介して入力端子AT1に入力される。
入力01-入力07の少なくともいずれかがハイ(H)レベルの電圧信号であるときに、入力端子AT1の入力信号はハイ(H)レベルの電圧信号となり、入力01-入力07の全てがロー(H)レベルであるときに、入力端子AT1の入力信号はロー(L)レベルの電圧信号となる。
【0023】
すなわち、第1マルチプレクサMUX1において、切替器22T1により入力端子AT1と出力端子OUT1とが導通しているときには、出力端子OUT1から入力01-入力07の論理和に相当する信号が出力される。
【0024】
検出回路21aは電位LGaに設置され、第1マルチプレクサMUX1の出力端子OUT1から出力された電圧信号の値に基づいて、入力01-入力07がハイ(H)レベルであるかロー(L)レベルであるか検出する。検出回路21aは、負荷抵抗を介して第1マルチプレクサMUX1の出力信号を取得する。検出回路21aは、例えば、第1マルチプレクサMUX1から入力された電圧信号が所定の閾値以上であるときにハイレベルの信号を検出し、第1マルチプレクサMUX1から入力された電圧信号が所定の閾値未満であるときにローレベルの信号を検出する。検出回路21aは、検出結果を検出回路診断部23に供給する。また、制御回路5は、検出回路21aの検出結果を用いて、電力変換回路2の動作を制御することができる。
【0025】
第2マルチプレクサMUX2は、3以上の任意の整数(N個)の入力端子A08-A14、AT2と、出力端子OUT2と、複数の切替器2208-2214、22T2と、を備える。
入力端子A08-A14には、入力08-入力14が入力される。図2に示す例では、入力08-入力13は、運転指令設定部10からの制御指令信号、若しくは、電圧センサ3と電流センサ4との検出値の信号であり、入力14は不使用である。入力端子AT2は、入力回路20の自己診断のためのテスト信号が入力される診断用入力端子である。
【0026】
複数の切替器2208-2214、22T2は、複数の入力端子A08-A14、AT2の各々と出力端子OUT2との電気的接続を切り換える。複数の切替器2208-2214、22T2は、所定の順で周期的に切り替わるように制御される。したがって、複数の入力端子A08-A14、AT2に供給された電圧信号は、周期的に、順次出力端子OUT2に供給される。
【0027】
ダイオード2408-2414のアノードは、入力端子AT2を除く入力端子A08-A14へ電圧信号を供給する配線の各々と電気的に接続されている。ダイオード2408-2414のカソードは、入力端子AT2と電気的に接続されている。したがって、入力端子A08-A14に供給される電圧信号(入力08-入力14)の論理和に相当する電圧信号が、ダイオード2408-2414を介して入力端子AT2に入力される。
入力08-入力14の少なくともいずれかがハイ(H)レベルの電圧信号であるときに、入力端子AT2の入力信号はハイ(H)レベルの電圧信号となり、入力08-入力14の全てがロー(H)レベルであるときに、入力端子AT2の入力信号はロー(L)レベルの電圧信号となる。
【0028】
すなわち、第2マルチプレクサMUX2において、切替器22T2により入力端子AT2と出力端子OUT2とが導通しているときには、出力端子OUT2から入力01-入力07の論理和に相当する信号が出力される。
【0029】
検出回路21bは電位LGbに設置され、第2マルチプレクサMUX2の出力端子OUT2から出力された電圧信号の値に基づいて、入力08-入力14がHレベルであるかLレベルであるか検出する。検出回路21bは、負荷抵抗を介して第2マルチプレクサMUX2の出力信号を取得する。検出回路21bは、例えば、第2マルチプレクサMUX2から入力された電圧信号が所定の閾値以上であるときにハイレベルの信号を検出し、第2マルチプレクサMUX2から入力された電圧信号が所定の閾値未満であるときにローレベルの信号を検出する。検出回路21bは、検出結果を検出回路診断部23に供給する。また、制御回路5は、検出回路21bの検出結果を用いて、電力変換回路2の動作を制御することができる。
【0030】
検出回路診断部23は、検出回路21aから出力された値と、検出回路21bから出力された値とを取得し、入力回路20が正常に動作しているか否かを判断する。
検出回路診断部23は、検出回路21aから出力された入力01-入力07の検出値の論理和を演算し、演算結果と入力端子AT1に入力された電圧信号の検出値とを比較することにより、第1マルチプレクサMUX1および検出回路21aが正常に動作しているか判断することができる。同様に、検出回路診断部23は、検出回路21bから出力された入力08-入力14の検出値の論理和を演算し、演算結果と入力端子AT2に入力された電圧信号の検出値とを比較することにより、第2マルチプレクサMUX2および検出回路21bが正常に動作しているか判断することができる。
【0031】
検出回路診断部23は、例えば、入力端子AT1、AT2に入力された電圧信号の検出値がローレベルであるとき、入力回路20の異常と判断してもよい。また、検出回路診断部23は、入力01-入力07の検出値の論理和と入力端子AT1に入力された電圧信号の検出値とが一致しないとき、および、入力08-入力14の検出値の論理和と入力端子AT2に入力された電圧信号の検出値とが一致しないときに、入力回路20の異常と判断してもよい。
【0032】
本実施形態の入力回路20では、第1マルチプレクサMUX1および第2マルチプレクサMUX2を用いることにより、入力信号ごとに検出回路を設けることを回避している。例えば、検出回路が高コストで広い実装スペースが必要な場合には、入力回路20の製造コストを削減するとともに、制御回路5を小型化することが可能である。
【0033】
なお、制御回路5への入力信号は、様々な機器から与えられるため、信号ごとに基準電位が異なっている可能性がある。上記入力回路20では、第1マルチプレクサMUX1に入力される信号と、第2マルチプレクサMUX2に入力される信号とは、基準電位が異なっている。基準電位の異なる信号が入力される回路は、互いに絶縁する必要があるため、検出回路21aと検出回路21bとは基準電位が異なり、互いに絶縁されている。
【0034】
例えば、第1マルチプレクサMUX1の入力端子AT1と第2マルチプレクサMUX2の入力端子AT2とのそれぞれに、基準電位の異なるテスト電圧(常時Hレベル)を自己診断用に供給すると、複数の絶縁型DC-DCコンバータが必要となり、制御回路5の部品コストや実装サイズが増加してしまう。また、テスト電圧を利用せず、1つの入力信号に対して複数の検出回路で信号検出することにより回路の診断を行うと、入力端子の数倍の検出回路が必要となるため、制御回路5の部品コストや実装サイズの増加が増加する。
【0035】
これに対し、本実施形態の入力回路20では、マルチプレクサMUX1、MUX2の一つの入力端子を診断用信号の入力端子とし、診断用のテスト信号(テスト電圧)を他の入力端子の論理和に相当する信号としている。
【0036】
上記のように、本実施形態の入力回路20によれば、同じ基準電位の複数の入力信号からテスト電圧を生成することで、絶縁型DC-DCコンバータを用いたテスト電圧の生成手段が不要であるとともに、多数の検出回路による信号検出も不要であり、低コストかつ小型な自己診断機能を実装することができる。
【0037】
次に、本実施形態の入力回路の診断方法の一例について説明する。
図3は、一実施形態の入力回路の診断方法の一例について説明するためのフローチャートである。
ここでは、電力変換装置1に三相交流負荷としてモータが接続された場合を想定して、入力回路20の診断方法の一例を説明する。
【0038】
まず、入力回路20は、第1マルチプレクサMUX1および第2マルチプレクサMUX2の切替器2201-2214、22T1、22T2を順次切り替えて、検出回路21a、21bに入力端子A01-A14、AT1、AT2に入力された電圧信号(入力01-入力14)を順次供給し、複数の電圧信号を個別に検出する(ステップS1)。
【0039】
例えば、電力変換装置1の負荷であるモータを最大パワーで力行する場合、入力01-04までの力行(1)-力行(4)の信号は全てハイ(H)レベルとなる。入力05のブレーキはロー(L)レベルのままである。また、入力06および入力07は不使用のため、いずれもロー(L)レベルである。
【0040】
このとき、診断用入力端子AT1に入力された信号の検出結果は、入力端子A01-A07に供給された電圧信号の論理和に相当し、ハイ(H)レベルとなる。
【0041】
検出回路診断部23は、検出回路21a、21bの検出結果を取得し、入力01-入力07の検出結果の論理和(第2論理和)と、入力08-入力14の論理和(第2論理和)とを算出する(ステップS2)。
【0042】
検出回路診断部23は、診断用入力端子AT1、AT2に入力された信号の検出結果と、算出した論理和とが不一致であるか否かを判定し(ステップS3)、不一致の場合、入力回路20に異常が発生している判断し、制御回路5のプロセッサに異常を通知する(ステップS4)。
【0043】
例えば、上述のように診断用入力端子AT1に入力された信号の検出結果がハイ(H)レベルであるときに、入力01-入力07の検出結果の論理和がロー(L)レベルであった場合に、検出回路診断部23は入力回路20に異常が発生していると判断する。
【0044】
また、モータを最大パワーで力行させているときに、本来ハイ(H)レベルとなるべきである診断用入力端子AT1に入力された信号の検出結果がロー(L)レベルであり、入力01-入力07の検出結果の論理和がハイ(H)レベルである場合、検出回路診断部23は入力回路20に異常が発生していると判断する。
検出回路診断部23により入力回路20に異常が発生していると判断されると、例えば、制御回路5により電力変換回路2の動作が停止される。
【0045】
上記のように、本実施形態の入力回路20は、マルチプレクサMUX1、MUX2の構成を利用した診断機能を有し、回路の異常による電力変換装置1の誤動作を回避すると共に、入力回路20の異常を早期に発見することが可能となる。
すなわち、本実施形態によれば、安全性および信頼性の高い入力回路、電力変換装置、入力回路の診断方法、および、コンピュータプログラムを提供することができる。
【0046】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0047】
1…電力変換装置、2…電力変換回路、3…電圧センサ、4…電流センサ、5…制御回路、10…運転指令設定部、20…入力回路、21a…検出回路、21b…検出回路、2201-2214、22T1、22T2…切替器、23…検出回路診断部、2401-2414…ダイオード、A01-A14…入力端子、AT1、AT2…診断用入力端子、OUT1、OUT2…出力端子、MUX1、MUX2…マルチプレクサ
図1
図2
図3