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特開2024-158041化粧料、その製造法および紫外線防御剤組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024158041
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】化粧料、その製造法および紫外線防御剤組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/19 20060101AFI20241031BHJP
   A61K 8/35 20060101ALI20241031BHJP
   A61K 8/26 20060101ALI20241031BHJP
   A61K 8/37 20060101ALI20241031BHJP
   A61K 8/55 20060101ALI20241031BHJP
   A61K 8/894 20060101ALI20241031BHJP
   A61K 8/365 20060101ALI20241031BHJP
   A61K 8/25 20060101ALI20241031BHJP
   A61K 8/92 20060101ALI20241031BHJP
   A61Q 17/04 20060101ALI20241031BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20241031BHJP
【FI】
A61K8/19
A61K8/35
A61K8/26
A61K8/37
A61K8/55
A61K8/894
A61K8/365
A61K8/25
A61K8/92
A61Q17/04
A61Q19/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023072871
(22)【出願日】2023-04-27
(71)【出願人】
【識別番号】592106155
【氏名又は名称】ジェイオーコスメティックス株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】391001664
【氏名又は名称】株式会社海水化学研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100089484
【弁理士】
【氏名又は名称】和田 靖郎
(72)【発明者】
【氏名】柴田 大熙
(72)【発明者】
【氏名】中野 彰浩
(72)【発明者】
【氏名】宮田 茂男
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AB031
4C083AB032
4C083AB171
4C083AB172
4C083AB212
4C083AB221
4C083AB222
4C083AB232
4C083AB242
4C083AB332
4C083AB431
4C083AB432
4C083AB441
4C083AB442
4C083AC112
4C083AC122
4C083AC172
4C083AC211
4C083AC212
4C083AC302
4C083AC342
4C083AC421
4C083AC422
4C083AC441
4C083AC442
4C083AC472
4C083AC512
4C083AC901
4C083AC902
4C083AD091
4C083AD092
4C083AD152
4C083AD161
4C083AD162
4C083AD171
4C083AD172
4C083BB25
4C083BB46
4C083BB51
4C083CC12
4C083CC19
4C083DD32
4C083DD33
4C083EE01
4C083EE17
4C083FF05
(57)【要約】      (修正有)
【課題】日焼け止め効果、特にA波紫外線防止効果が高く、着色が少なく、かつ、安全性に優れた化粧料、その効率的な製造法、およびその製造に好適な紫外線防御剤組成物を提供する。
【解決手段】二価金属イオンと三価金属イオンと水酸化物イオンで構成された正に帯電した基本層と、二つの基本層の間に存在する有機酸イオンとt-ブチルメトキシジベンゾイルメタンを含有し、かつ、負に帯電した中間層を有する層状複水酸化物からなる紫外線防御剤(A)と、多価アルコール脂肪酸エステル型非イオン性界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸またはその塩、シリコーン系界面活性剤、ポリヒドロキシ脂肪酸、粘土鉱物、およびシリカからなる群から選択される少なくとも一種以上の紫外線防御能向上剤(B)を含む液状油(C)を油相成分として含有する化粧料である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
二価金属イオンと三価金属イオンと水酸化物イオンで構成された正に帯電した基本層と、二つの基本層の間に存在する有機酸イオンとt-ブチルメトキシジベンゾイルメタンを含有し、かつ、負に帯電した中間層を有する層状複水酸化物からなる紫外線防御剤(A)と、多価アルコール脂肪酸エステル型非イオン性界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸またはその塩、シリコーン系界面活性剤、ポリヒドロキシ脂肪酸、粘土鉱物、およびシリカからなる群から選択される少なくとも一種以上の紫外線防御能向上剤(B)を含む液状油(C)を油相成分として含有することを特徴とする化粧料。
【請求項2】
二価金属がマグネシウムおよび亜鉛から選ばれる1種以上であり、三価金属がアルミニウムである請求項1に記載の化粧料。
【請求項3】
層状複水酸化物におけるt-ブチルメトキシジベンゾイルメタンの含有量が2~80質量%である請求項1または2に記載の化粧料。
【請求項4】
前記成分(A)の含有量が1~50質量%、前記成分(B)の含有量が0.01~20質量%、前記成分(C)の含有量が7~98質量%である請求項1または2に記載の化粧料。
【請求項5】
前記成分(A)、前記成分(B)および前記成分(C)を混合して油性分散体を調製する工程を含む請求項1または2に記載の化粧料の製造方法。
【請求項6】
前記成分(A)、前記成分(B)および前記成分(C)を含有する紫外線防御剤組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高い紫外線防御効果を有する化粧料、その製造法、および該化粧料の製造に好適な紫外線防御剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
人体に悪影響を及ぼす紫外線のうち、波長320~400nmの長波長紫外線(UV-A)を防御するための有機紫外線吸収剤としては、4-tert-ブチル-4‘-メトキシジベンゾイルメタン(化粧品表示名称:t-ブチルメトキシジベンゾイルメタン、本明細書においては「BMBM」と略す場合がある)がUV-A吸収能に優れていることから広く用いられている。しかし、このBMBMは、化粧料で一般に用いられる油剤に対するに溶解性が低いため高濃度で含有させることが難しく、また、溶解させた場合でも経時的に結晶が析出しやすいという問題があり、さらに、化粧料に配合される無機粉体や製造設備由来の金属イオンと反応して着色しやすいという問題があった。
【0003】
そこで、かかるBMBMの欠点を改良した新規な紫外線吸収剤の開発が進められており、たとえば、特許文献1には、正に帯電した基本層と負に帯電した中間層からなる層状複水酸化物であるハイドロタルサイト類の中間層に含まれる層間水を極性で非イオン性の有機系紫外線吸収剤、たとえば、BMBMで置換した構造を有する有機無機複合型の紫外線吸収剤が新しい紫外線吸収剤として開示されている(請求項1および6参照)。そして、同文献には、この有機無機複合型紫外線吸収剤は、有機系紫外線吸収剤がハイドロタルサイト類の層状結晶内部に閉じ込められているため、有機系紫外線吸収剤を光から守り、有機系紫外線吸収剤と遷移金属や皮膚との接触を防ぐことができる旨記載されており(段落0006参照)、また、この有機無機複合型紫外線吸収剤が化粧料用に用いられることも開示されている(請求項9参照)。しかし、この有機無機複合型紫外線吸収剤を用いた化粧料の具体例の記載はなく、また、化粧料として使用するに当たっての実施態様については何も開示されていない。このように、特許文献1に記載されている有機無機複合型紫外線吸収剤は優れたUV-A防御能を有するものであるが、近年の市場においてはさらなる高性能の日焼け止め化粧料の開発が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2021-161367号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明はこのような背景技術の下に完成したものであり、その主たる目的は、日焼け止め効果、特にA波紫外線(UV-A)防御効果が高く、着色が少なく、かつ、安全性に優れた化粧料を提供することにあり、他の目的は該化粧料を効率よく製造する方法を提供することにあり、さらに他の目的は該化粧料を製造するために好適な紫外線防御剤組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意研究した結果、特許文献1に記載されている有機無機複合型紫外線吸収剤のなかで中間層に紫外線吸収剤としてBMBMを含むものの場合には、その有機無機複合型紫外線吸収剤を油相に分散させるに当たって、特定の化合物を共存させることが有用であることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
かくして本発明によれば、第一の発明として、二価金属イオンと三価金属イオンと水酸化物イオンで構成された正に帯電した基本層と、二つの基本層の間に存在する有機酸イオンとBMBMを含有し、かつ、負に帯電した中間層を有する層状複水酸化物からなる紫外線防御剤(A)と、多価アルコール脂肪酸エステル型非イオン性界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸またはその塩、シリコーン系界面活性剤、ポリヒドロキシ脂肪酸、粘土鉱物、およびシリカからなる群から選択される少なくとも一種以上の紫外線防御能向上剤(B)を含む液状油(C)を油相成分として含有する化粧料が提供される。また、他の発明として、前記成分(A)、前記成分(B)および前記成分(C)を混合して油性分散体を調製する工程を含む上記化粧料を製造する方法が提供され、さらに他の発明として、前記成分(A)、前記成分(B)および前記成分(C)含む紫外線防御用組成物が提供される。
【発明の効果】
【0008】
本発明の化粧料は、日焼け防止効果、とくにUV-A防止効果が高く、金属イオンによる着色が少なく、かつ、BMBMが皮膚に触れる可能性が小さくなるため安全性にも優れている。また、本発明の製造方法および紫外線防御能向上剤によれば、上記の化粧料を効率よく製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の化粧料は有機無機複合体(A)、紫外線防御能向上剤(B)、および液状油(C)を必須成分として含有する。以下、それぞれの成分について詳細に説明する。
【0010】
(A:有機無機複合体)
本発明の成分(A)として用いられる有機無機複合体は、二価金属イオンと三価金属イオンと水酸化物イオンで構成された正に帯電した基本層と、二つの基本層の間に存在する、有機酸イオンとBMBMを含有し、かつ、負に帯電した中間層を有する層状複水酸化物(Layered Double Hydroxide)である。
【0011】
層状複水酸化物の代表例は粘土鉱物の一種であるハイドロタルサイトであり、ハイドロタルサイトの代表的な組成式はMgAl(OH)16CO・4HOである。ハイドロタルサイトは、タルクやスメクタイトと同じように層状の結晶構造を有しており、水酸化マグネシウムのMgの一部がAlで置換された、正八面体構造の金属複水酸化物が正に帯電した基本層(ホスト層とも称される)を形成し、その電荷を電気的に中和するCOイオンが中間層(ゲスト層とも称される)を形成しており、その中間層には水分子が含まれていることが知られている。そして、中間層に含まれている水分子は層間水と称されている。
【0012】
かかるハイドロタルサイトのMgを他の二価金属に置換したり、Alを他の三価金属に置換したり、両者の比率を変更したり、COイオンを他の陰イオンに置換した、ハイドロタルサイトに類似した構造を有する層状複水酸化物(「ハイドロタルサイト様化合物」ということがある)も多数知られており、それらは、通常、下記式(1)の組成式で表されている。
[(M2+1-x(M3+(OH)][(An-x/n・(HO)]・・・・(1)
(式中M2+は2価金属イオン、M3+は3価金属イオン、An-はn価の陰イオンをそれぞれ表し、nは1~6の整数を表し、xは0.1<x<0.5の数を表し、mは0より大きい数を表す。)
二価金属イオンとしては、Mg2+、Zn2+、Ca2+、Mn2+、Ni2+、Co2+などが例示され、好ましくはMg2+およびZn2+の少なくとも一種である。三価金属イオンとしては、Fe3+、Al3+、Ga3+.Cr3+、La3+、In3+などが例示され、好ましくはAl3+である。n価の陰イオンとしては、CO 2-,SO 2-、NO 、PO 3-などが例示される。
【0013】
ハイドロタルサイト様化合物は、二価と三価の混合金属塩水溶液とほぼ当量のアルカリで共沈反応させることによって容易に沈殿物として得ることができる。ハイドロタルサイト様化合物の層間アニオンはイオン交換性を有しており、その特性を利用して様々なアニオンを挿入する、いわゆる、インターカレーションに関する検討は従来から行われているが、層間水の交換に関する報告は数少ない。特許文献1はその数少ない報告の一つであり、その文献に記載されている有機無機複合体は、ハイドロタルサイト様化合物の層間水を極性で非イオン性の有機系紫外線吸収剤で置換したものである。本発明においては、特許文献1に記載されている有機無機複合体の中で、有機系紫外線吸収剤としてBMBMを使用したものが成分(A)として用いられる。
【0014】
本発明の成分(A)として用いられる有機無機複合体の基本層は、二価金属と三価金属の複水酸化物で形成されている。用いられる二価金属はMg、Ca、Zn、Ni、Cuなどであり、好ましくは、MgまたはZnである。三価金属はAl、Fe、Inなどであり、好ましくはAlである。二価金属と三価金属は、単独で使用しても二種以上を併用してもよい。
【0015】
また、有機無機複合体の中間層を形成する陰イオンは、炭酸イオンや硫酸イオンに比べて大きなイオン半径を有する有機酸イオンであり、好ましくは、中間層の厚さ(単位層厚さ)が10Å以上、さらには、13Å以上となるようなイオン半径を有する陰イオンである。中間層の厚みがBMBMの分子径(約8.3Å)より小さいと、層間にBMBMを挿入し難くなり、BMBM含有量の大きな有機無機複合体を得ることが難しくなる。好ましい有機酸イオンの具体例としては、たとえば、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘニン酸等の炭素数10以上の高級脂肪酸のイオンや、紫外線吸収能を有することが知られているフェルラ酸やフェニルベンズイミダゾールスルホン酸のイオンなどが挙げられ、なかでも、単位層厚さが31Åと大きくなるステアリン酸イオンがとくに好ましく用いられる。中間層を形成する陰イオンは単独の成分であっても、複数の成分であってもよい。
【0016】
上記有機無機複合体は、中間層にBMBMを含んでいる。BMBMはもともと含まれている水分子を置換する形で挿入されたものであり、一部の水分子が共存していてもよい。有機無機複合体中のBMBM含有量2~80質量%であることが好ましく、より好ましくは5~70質量%であり、とくに好ましくは10~60質量%である。BMBM含有量が過度に小さいと、化粧料に高い紫外線防御効果を付与することができず、また、過度に大きいと層間にBMBMを挿入することが難しく製造が困難になる。
【0017】
かかる有機無機複合体は特許文献1(特開2021-161367号公報)で公知の物質であり、同文献に記載されている方法にしたがって製造することができる。その概要を示すと以下のとおりである。
〈第1段階〉
水溶性の2価と3価の金属塩(金属の塩化物、硝酸塩、臭化物、硫酸塩等、好ましくは塩化物、硝酸塩)の混合水溶液と、金属イオンの当量にほぼ等しい当量のアルカリ(水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア、炭酸ナトリウム、水酸化カルシウム等)で共沈反応させた後、100~250℃、好ましくは150℃~250℃で5~20時間、水熱処理することにより、ハイドロタルサイト様化合物を製造する。
〈第2段階〉
上記ハイドロタルサイト様化合物の中間層にある陰イオンを、有機酸イオンでイオン交換する。
〈第3段階〉
第2段階の操作で単位層厚さが増大したハイドロタルサイト様化合物と、BMBMを溶解した有機溶媒溶液を混合して、撹拌下に有機溶媒の沸点以下で、好ましくは50~70℃で加熱することにより、層間水をBMBMで置換する。BMBMを溶解する有機溶媒の具体例は、エチルアルコール、イソプロピルアルコール等のアルコール類、n-ヘキサン、シクロヘキサン等の炭化水素等であり、好ましくはアルコール類である。この置換反応に用いるBMBMの量は、ハイドロタルサイト様化合物100質量部に対して、1~150質量部、好ましくは10~100質量部である。このあと、濾過、洗浄、乾燥、粉砕、分級等の慣用の工程を適宜選択して使用することにより、成分(A)として用いる有機無機複合体が得られる。
【0018】
かかる有機無機複合体は、そのままの状態で使用してもよいが、所望によりポリアニオン(ポリマー性アニオン)で処理して使用することもできる。用いられるポリアニオンの具体例としては、ポリアクリル酸、無水マレイン酸-オレフィン共重合体、ポリスチレンスルホン酸、アルギン酸、ポリリン酸、ポリケイ酸(水ガラス)、カルボキシメチルセルロース等が挙げられ、これらは、通常、NaOH等のアルカリで中和して用いられる。ポリアニオンによる処理は、水等の極性溶媒中に分散させたハイドロタルサイト様化合物にポリアニオンを溶解した水溶液を撹拌下添加混合することにより実施できる。処理に際して用いられるポリアニオンの量は、有機無機複合体の質量に対して、0.01~20質量%、好ましくは0.5~10質量%である。ポリアニオンで処理すると、ハイドロタルサイト様化合物の中間層の開口部を塞ぎBMBMを内部に閉じ込める込めることができる。
【0019】
成分(A)の有機無機複合体は、層状複水酸化物の層間にBMBMを含む粉体であることから、化粧料中のBMBM含有量は粉体配合量に比例する。したがって、BMBM配合量は有機無機複合体中のBMBM含量が大きいほど、また、化粧料中の有機無機複合体含量が大きいほど大きくなる。BMBMは、化粧料に一般的に用いられている油剤に溶解し難い物質であるため、BMBMを通常の手法で油剤に溶解するのであれば溶解度以上の濃度でBMBMを配合することは難しいが、本発明によれば、有機無機複合体のBMBM含量を大きくし、かつ、有機無機複合体の配合量を増やすことによって、BMBMを油剤への溶解度以上の濃度で配合することができる。ちなみに、化粧料において油剤として賞用されている流動パラフィンのBMBMの溶解度は常温において1質量%である。
【0020】
本発明の化粧料は、成分(A)の有機無機複合体を化粧料中に1~50質量%含有することが好ましい。より好ましくは、2~40質量%であり、特に好ましくは、5~30質量%である。また、成分(A)の有機無機複合体は、その中に包含されているBMBMの量が化粧料全体の0.5~20質量%となるような割合で配合することが好ましく、より好ましくは、BMBMの量が1~15質量%となるような割合、特に好ましくは、BMBMの量が2~10質量%となるような割合である。化粧料中の成分(A)の含有量が過度に少ない場合は、高い紫外線防御効果を得ることができず、過度に多い場合は、化粧料中の固形分濃度が高くなり、肌に伸ばしにくくなる。
【0021】
(B:紫外線防御能向上剤)
本発明に用いられる、成分(A)の有機無機複合体は、高濃度で配合した場合でもBMBMの結晶を析出することがなく、また、金属イオンとの接触による着色が少ないという利点を有しているが、紫外線防御効果の点ではいまだ十分とは言えない。そこで、本発明においては、成分(B)として、多価アルコール脂肪酸エステル型非イオン性界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸またはその塩、シリコーン系界面活性剤、ポリヒドロキシ脂肪酸、粘土鉱物、シリカからなる群から選択される少なくとも一種以上を紫外線防御能向上剤として配合することにより成分(A)の紫外線防御能を高めている。
【0022】
成分(B)が紫外線防御効果を向上させる作用機序は明らかではないが、粘土鉱物やシリカのような粉体の場合は、成分(A)の複合体が液状油中で凝集したり再凝集するのを妨げるように機能し、その他の有機化合物の場合は、成分(A)の複合体の濡れ性を向上させ、液状油中での再凝集を妨げるように機能するものと推察される。
【0023】
成分(B)として用いられる多価アルコール脂肪酸エステル型非イオン性界面活性剤の例としては、ポリステアリン酸スクロース、トリ酢酸テトラステアリン酸スクロース等のショ糖脂肪酸エステル: ステアリン酸グリセリル、ジイソステアリン酸グリセリル等のグリセリン脂肪酸エステル: オレイン酸ポリグリセリル-2、イソステアリン酸ポリグリセリル-2、ポリリシノレイン酸ポリグリセリル-6等のポリグリセリン脂肪酸エステル: イソステアリン酸ソルビタン、セスキイソステアリン酸ソルビタン、オレイン酸ソルビタン、セスキオレイン酸ソルビタン等の脂肪酸ソルビタンエステル: トリイソステアリン酸PEG-4ソルビタン等のポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル: ステアリン酸PEG-5グリセリル等のポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル: イソステアリン酸PEG-3、ステアリン酸PEG-2等のポリオキシエチレン脂肪酸エステル、PEG-5水添ヒマシ油、PEG-7水添ヒマシ油等のポリオキシエチレン硬化ヒマシ油等が挙げられる。これらの中でもオレイン酸ポリグリセリル-2、イソステアリン酸ポリグリセリル-2、イソステアリン酸ソルビタン、セスキイソステアリン酸ソルビタン、オレイン酸ソルビタン、セスキオレイン酸ソルビタンは、紫外線防御能向上率が高く、好ましく用いられる。
【0024】
成分(B)として用いられる多価アルコール脂肪酸エステル型非イオン性界面活性剤は、化粧料に用いられる油剤に溶解または分散して使用するため、親油性であることが好ましく、そのHLB値は、通常、8以下であり、好ましくは2~8、特に好ましくは3~6である。なお、HLBとは、非イオン性界面活性剤について、親水性と親油性のバランスを0~20までの値で示す指標であり、0に近づくほど親油性が高く、20に近づくほど親水性が高いことを示している。HLB値の算出法としては種々の計算法が知られている他、製造元から提供されるカタログなどにその値が記載されている。
【0025】
多価アルコール脂肪酸エステル型非イオン界面活性剤の市販品としては、例えば、セスキイソステアリン酸ソルビタンであるNIKKOL SI-15RV(日光ケミカルズ社製)、イソステアリン酸ポリグリセリル-2であるコスモール41V(日清オイリオ社製)、ポリリシノレイン酸ポリグリセリル-6であるNIKKOL HEXAGLYN PR-15(日光ケミカルズ社製)等を挙げることができる。
【0026】
成分(B)として用いられるポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸またはその塩の例としては、ポリオキシエチレンラウリルエーテルリン酸、ポリオキシエチレンミリスチルエーテルリン酸、ポリオキシエチレンセチルエーテルリン酸、ポリオキシエチレンステアリルエーテルリン酸、ポリオキシエチレンベヘニルエーテルリン酸およびそれらのナトリウム塩等が挙げられる。ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸またはその塩の市販品としては、例えば、トリラウレス-4リン酸であるNIKKOL TLP-4、ジラウレス-10リン酸であるDLP-10(いずれも日光ケミカルズ社製)等が挙げられる。
【0027】
成分(B)として用いられるシリコーン系界面活性剤の例としては、PEG-3ジメチコン、PEG-8ジメチコン、PEG-9ジメチコン、PEG-10ジメチコン、PEG-9ポリジメチルシロキシエチルジメチコン、ラウリルPEG-9ポリジメチルシロキシエチルジメチコン、セチルPEG/PPG-10/1ジメチコン等のポリオキシアルキレン基を有するシリコーン系界面活性剤: ポリグリセリル-3ジシロキサンジメチコン、ポリグリセリル-3ポリジメチルシロキエチルジメチコン、ラウリルポリグリセリル-3ポリジメチルシロキエチルジメチコン等のグリセリン基を有するシリコーン系界面活性剤等が挙げられる。シリコーン系界面活性剤のHLB値は8以下であることが好ましく、2~8であることがより好ましい。特に好ましいHLB値は3~6である。
【0028】
シリコーン系界面活性剤の市販品としては、例えば、ポリオキシアルキレン基を有するシリコーン系界面活性剤であるKF-6016、KF-6011P、KF-6012、KF-6013、KF-6018、KF-6019、KF-6017、KF-6028P、KF-6038(以上、信越化学工業社製)、ABIL EM-90、ABIL EM-97(以上、エボニック・ゴールドシュミット社製)、SH-3772M、SH3775M(以上、ダウ・東レ社製)、SILWET L-7604(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製)、グリセリン基を有するシリコーン系界面活性剤であるKF-6104、KF-6105、KF-6106(以上、信越化学工業社製)等が挙げられる。
【0029】
成分(B)として用いられるポリヒドロキシ脂肪酸の例としては、ポリヒドロキシステアリン酸、ポリリシノレイン酸等が挙げられる。ポリヒドロキシ脂肪酸の市販品としては、例えば、ポリヒドロキシステアリン酸であるサラコスHS-6C(日清オイリオ社製)等が挙げられる。
【0030】
成分(B)として用いられる粘土鉱物の例としては、ベントナイト、モンモリロナイト、ヘクトライト、サポナイト、ケイ酸(Li/Mg/Na)、ケイ酸(Al/Mg)等の水膨潤性粘土鉱物:ジステアルジモニウムヘクトライト(ジメチルジステアリルアンモニウムヘクトライト)、クオタニウム-18ヘクトライト、ステアラルコニウムヘクトライト(ベンジルジメチルステアリルアンモニウムヘクトライト)、塩化ジステアリルジメチルアンモニウム処理ケイ酸アルミニウムマグネシウム等の有機変性粘土鉱物:タルク、カオリン、マイカ、合成マイカ、セリサイト等の非膨潤性粘土鉱物などが挙げられ、また、シリカの例としては、煙霧状シリカ、湿式シリカなどを挙げることができる。これらの紫外線防御能向上剤の中でも有機変性粘土鉱物は、紫外線防御効果の向上率が高く、好ましく用いることができる。有機変性粘土鉱物の市販品としては、クオタニウム-18ヘクトライトであるスメクトンSAN-P(クニミネ工業社製)、クオタニウム-18ベントナイトであるエスベンWV60(ホージュン社製)、ジステアルジモニウムヘクトライトであるベントン38VCG(エレメンティスジャパン社製)、ステアラルコニウムヘクトライトであるベントン27(エレメンティスジャパン社製)等が挙げられる。
【0031】
また、紫外線防御能向上剤としては、以下に示す評価法において、紫外線防御能指数が1.2以上、とくに1.5以上となる化合物が好ましく用いられる。紫外線防御能指数が1.5以上の化合物としては、たとえば、多価アルコール脂肪酸エステル型非イオン性界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸またはその塩、シリコーン系界面活性剤、ポリヒドロキシ脂肪酸、粘土鉱物、シリカなどがあり、とくに有機変性粘土鉱物が大きな紫外線防御能指数を有している。
【0032】
(紫外線防御指数の評価法)
基本層がMg0.75Al0.25(OH)の組成を有し、かつ、BMBM含量が36質量%の有機無機複合体13.9質量部とイソノナン酸イソトリデシル13.9質量部を、3本ロールを用いて混合した後、得られた混合物にイソノナン酸イソトリデシル72.2質量部を加えて全体で100質量部の油性分散体(1)を調製する。この油性分散体(1)に含まれるBMBMの量は5質量%である。この油性分散体(1)の紫外線防止因子(UVAPF)をColipa(欧州香水化粧品類工業連盟)ガイドライン(Method for in vitro determination of UVA protection, 2009)に従って測定し、その値を基準値とする。
【0033】
一方、有機無機複合体13.9質量部とイソノナン酸イソトリデシル13.9質量部を、3本ロールを用いて混合する際に紫外線防御能向上剤1質量部を加えること、追加で加えるイソノナン酸イソトリデシルの量を71.2質量部に減らすこと以外は上記と同様にして全体で100質量部の油性分散体(2)を調製し、そのUVAPFを測定して、その値をUVAPF―1とする。油性分散体(2)に含まれるBMBMの量は5質量%、紫外線防御能向上剤の量は1質量%である。得られたUVAPF―1の基準値に対する比率(UVAPF―1/基準値)を算出し、その比率を紫外線防御能向上剤の紫外線防御能向上指数とする。紫外線防御能向上指数が1を上回ると、紫外線防御能向上剤を加えたことにより、それを加えない場合に比較して紫外線防御能が向上していることを示し、たとえば、紫外線防御能向上指数が1.2の場合には、紫外線防御能向上剤を添加することにより無添加の場合に比較して紫外線防御能が20%向上していることを示す。
【0034】
本発明の化粧料において、成分(B)の紫外線防御能向上剤の含有量は、化粧料全体に対し、0.001~20質量%であることが好ましい。より好ましくは0.01~10質量%である。また、本発明の化粧料において、油相中の成分(B)の含有量は、油相全体に対し、0.01~40質量%であることが好ましい。より好ましくは0.02~20質量%である。成分(B)の量がこの範囲にあることによって、高い日焼け止め効果が達成される。また成分(B)の成分(A)に対する質量比[(B)/(A)]は、1/99~50/50であることが好ましく、より好ましくは2/98~30/70である。
【0035】
(C:液状油)
本発明においては、必須成分として上記成分(A)、成分(B)とともに(C)液状油が配合される。ここで「液状油」とは、常温(25℃)で流動性を有する油分および融点50℃未満の半固形油分を意味する。
【0036】
(C)液状油は、通常の化粧料に用いられるものであれば特に制限されず、動物油、植物油、合成油のいずれであってもよい。液状油の具体例としては、トリエチルヘキサノイン、トリ(カプリル/カプリン酸)グリセリル、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、イソノナン酸イソノニル、イソノナン酸イソトリデシル、パルミチン酸エチルヘキシル、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、ミリスチン酸オクチルドデシル、リンゴ酸ジイソステアリル、ダイマー酸とダイマージオールとのオリゴマーエステル、テトライソステアリン酸ペンタエリトリット、テトライソステアリン酸ジグリセリル、イソオクタン酸セチル、コレステロール脂肪酸エステル、ホホバ油等のエステル類: 揮発性イソパラフィン、(C13-15)アルカン、(C15-19)アルカン、ブチレン、重質流動イソパラフィン、流動パラフィン、α - オレフィンオリゴマー、スクワラン、ワセリン等の炭化水素類: オリーブ油、ヒマシ油、ミンク油、マカデミアンナッツ油等の油脂類: イソステアリン酸、オレイン酸等の脂肪酸類: オレイルアルコール、イソステアリルアルコール等の高級アルコール類: 低重合度ジメチルポリシロキサン、環状シリコーン、高重合度ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、メチルトリメチコン、カプリリルトリメチコン、架橋型オルガノポリシロキサン、フッ素変性ポリシロキサン等のシリコーン油類: パーフルオロポリエーテル等のフッ素系油剤類: ラノリン、酢酸ラノリン、ラノリン脂肪酸イソプロピル、ラノリンアルコール等のラノリン誘導体類等が挙げられる。
【0037】
これらの液状油のなかでも、エステル油は成分(A)の分散性に優れており、液状油としてエステル油を使用すると良好なUVAPFを示す化粧料を容易に得ることができる。エステル油の具体例としては、たとえば、トリエチルヘキサノイン、トリ(カプリル/カプリン酸)グリセリル、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、イソノナン酸イソノニル、イソノナン酸イソトリデシル、パルミチン酸エチルヘキシル、ミリスチン酸イソプロピル等が例示される。
【0038】
液状油の25℃における粘度は、通常、0.5~5,000mPa・s、好ましくは1~500mPa・s、好ましくは5~500mPa・sである。なお、液状油の粘度は、B型粘度計で測定される。とくに、25℃の粘度が1~200mPa・sであるエステル油が好ましく用いられ、その含有量は、液状油全体に対し、10~100質量%であることが好ましい。
【0039】
(C)液状油の含有量は化粧料全体に対し7~98質量%であることが好ましく、より好ましくは10~95質量%、さらに好ましくは12~90質量%である。(C)成分が過度に少ないと(A)成分の有機無機複合体を分散させることが困難になり、伸ばしやすさも低下する。過度に多い場合は、みずみずしさに欠け、べたついた使用感となる。
【0040】
本発明の化粧料は、ローション状(液状)、ジェル状、乳液状、懸濁液状、クリーム状、軟膏状、エアゾール状、ミスト状、固形状、固形スティック状の何れの形態であってもよい。この化粧料は、日焼け止め化粧料として用いられるだけでなく、紫外線防御能を付与した他の化粧料として使用することができる。他の化粧料の具体例としては、ファンデーション、下地等のメイクアップ化粧料や、乳液、クリーム、美容液、BBクリーム、CCクリーム等のスキンケア化粧料および頭髪化粧料等が挙げられる。
【0041】
また、本発明の化粧料は、上記(A)、(B)、および(C)の成分に加えてその他の成分を適宜配合することができる。その他の成分は化粧料の分野で一般に使用されているものであればとくに限定されず、その配合量は本発明の効果を本質的に損なわない範囲であればとくに限定されない。その他の成分の具体例としては、固形油、油溶性樹脂、油性ゲル化剤、紫外線吸収剤(たとえば、ジメチコジエチルベンザロマロネート、メトキシケイヒ酸エチルヘキシルなど)、紫外線散乱剤(たとえば、酸化チタン、酸化亜鉛など)、多価アルコール類(たとえば、グリセリン、プロピレングリコール、ブタンジオールなど)、低級アルコール(エタノール、イソプロピルアルコールなど)、界面活性剤、水溶性高分子、ビタミン類、保湿剤、香料、酸化防止剤、美白剤、pH調整剤、キレート剤、防腐剤、消泡剤、繊維、各種エキスなどが挙げられる。
【0042】
上記成分(A)はUV-Aに対する防御能には優れているが、波長の短いUVに対する防御能は十分ではないので本発明の化粧料を日焼け止め用途に使用する場合には、短波長紫外線(UV-B)に対する防御能に優れた油溶性紫外線吸収剤や、紫外線散乱剤を配合することが好ましい。以下、油溶性紫外線吸収剤および紫外線散乱剤について説明する。
【0043】
配合可能な油溶性紫外線吸収剤としては、たとえば、パラメトキシケイ皮酸ベンジル、パラメトキシケイ皮酸2-エチルヘキシル、ジパラメトキシケイ皮酸モノ-2-エチルヘキサン酸グリセリル等のケイ皮酸系紫外線吸収剤: ヒドロキシメトキシベンゾフェノン、ジヒドロキシメトキシベンゾフェノン、ジヒドロキシベンゾフェノン、テトラヒドロキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン系紫外線吸収剤: パラアミノ安息香酸、パラアミノ安息香酸エチル、パラアミノ安息香酸グリセリル、パラジメチルアミノ安息香酸アミル、パラジメチルアミノ安息香酸オクチル、4-[N,N-ジ(2-ヒドロキシプロピル)アミノ]安息香酸エチル、ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル等の安息香酸エステル系紫外線吸収剤: サリチル酸エチレングリコール、サリチル酸フェニル、サリチル酸オクチル、サリチル酸ベンジル、サリチル酸パラ-ターシャリーブチルフェニル、サリチル酸ホモメンチル等のサリチル酸系紫外線吸収剤: エチルヘキシルトリアゾン(2,4,6-トリス[4-(2-エチルヘキシルオキシカルボニル)アニリノ]1,3,5-トリアジン)、ビス-エチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジン等のトリアジン系紫外線吸収剤: アントラニル酸メンチル、2-(2-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、ジメトキシベンジリデンジオキソイミダゾリジンプロピオン酸2-エチルヘキシル、オクトクリレン、ジメチコジエチルベンザルマロネート等のその他の紫外線吸収剤などが挙げられる。また、遊離のBMBMも本発明の効果を損なわない範囲で含有させることができる。
【0044】
油溶性紫外線吸収剤を配合する場合、その含有量は化粧料全体に対し2~30質量%、好ましくは5~25質量%、さらに好ましくは8~22質量%である。
【0045】
配合可能な紫外線散乱剤としては、例えば、微粒子系金属酸化物を挙げることができる。より具体的には、微粒子酸化チタン、微粒子酸化亜鉛、微粒子酸化鉄、微粒子酸化セリウム、微粒子酸化ジルコニウム等を挙げることができる。これらの微粒子の形状はとくに限定されず、不定形、粒状、球状、針状、紡錘状、板状などのいずれでもよい。
【0046】
紫外線散乱剤は、通常、油相に加えられるため、油相への分散性の観点から、その表面を疎水化処理したものを採用することが好ましい。このような表面疎水化処理の手法はとくに限定されず、たとえば、シリコーン、金属セッケン、N-アシルアミノ酸塩、パーフルオロアルキル化合物などを処理剤として用いた疎水化処理品が例示される。なお、疎水化処理は、処理剤を単独で又は二種以上を組み合わせて使用して行うことができる。
【0047】
紫外線散乱剤は、通常、5nm以上100nm以下、好ましくは、8nm以上85nm以下、更に好ましくは、10nm以上35nm以下の数平均粒子径を有する微粒子である。数平均粒子径が過度に小さい場合は、紫外線防御効果が低下し、過度に大きい場合は、紫外線防御効果が低下するとともに、透明性が低下する。
【0048】
化粧料が水中油型または油中水型等の乳化化粧料である場合には、 紫外線散乱剤は、水相に配合することもできるが、日焼け防止効果の持続性の観点から、油相に配合することが好ましい。
【0049】
本発明においては、油相中に固形油を含有させることができる。固形油を含有することにより、化粧持ちや保湿感等の感触を調整することができる。また、これを配合することにより、コンパクト形状やスティック状の油性固形化粧料や固形W/O型化粧料とすることができ、携帯性や部分使用時の使い勝手の良さ等の機能を付与することができる。本発明において固形油は常温(25℃)で固体の油であり、その融点は50~120℃、好ましくは55℃~105℃である。
【0050】
かかる固形油としては、具体的には、例えばパラフィンワックス、ポリエチレンワックス、エチレン-プロピレンコポリマー、マイクロクリスタリンワックス、セレシン、オゾケライト、フィッシャートロプシュワックス等の炭化水素系ワックスや、モクロウ、カルナウバワックス、キャンデリラワックス、ライスワックス、ミツロウ(ビーズワックス)、水添ホホバ油、硬化油、高級アルコール、シリコーンワックス等が挙げられる。
【0051】
本発明の化粧料の剤型はとくに限定されず、たとえば、油性化粧料、油中水(W/O)型乳化化粧料、水中油(O/W)型乳化化粧料とすることができる。以下、それぞれの剤型について説明する。
【0052】
(油性化粧料)
本発明の化粧料が油性化粧料の場合は、必須成分として、成分(A)、成分(B)および成分(C)を含有する、油性液状、油性ペースト状、油性固形状の剤型とすることができる。
【0053】
剤型が油性ペースト状または油性固形状の場合は、油性ゲル化剤および固形油から選ばれる1種以上を含有することが好ましい。油性ゲル化剤としては、例えばデキストリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、デンプン脂肪酸エステル、ステアリン酸アルミニウム等を挙げることができる。油性ゲル化剤および/または固形油の含有量は、化粧料全体に対し、通常、1~30質量%であり、好ましくは2~20質量%、より好ましくは3~15質量%である。
【0054】
(油中水型乳化化粧料)
本発明の日焼け止め化粧料が油中水型乳化化粧料の場合は、(A)、(B)、および(C)の各成分を含有するほか、水相を形成する水、水溶性成分および水分散性成分を含有することができる。油中水型乳化化粧料においては、乳化安定性の観点から、成分(B)に該当しない親油性界面活性剤を含有することができ、水相中に塩化ナトリウム、硫酸マグネシウム等の無機塩を化粧料全体に対し0.01~3質量%含有することが好ましい。
【0055】
油中水型乳化化粧料において、油相の含有量は化粧料全体に対し20~95質量%であることが好ましく、より好ましくは30~90質量%である。水相の含有量は化粧料全体に対し5~80質量%であることが好ましく、より好ましくは10~70質量%である。
【0056】
(水中油型乳化化粧料)
本発明の化粧料が水中油型乳化化粧料の場合は、(A)、(B)、および(C)の各成分を含有するほか、水相を形成する水、水溶性成分および水分散性成分を含有することができる。水中油型乳化化粧料においては、乳化安定性の観点から、水相中に親水性界面活性剤、水溶性高分子、多価アルコールを含有することが好ましい。親水性界面活性剤の例としては、陰イオン性界面活性剤、両性界面活性剤、HLB値が8を越える非イオン性界面活性剤が挙げられる。
【0057】
水中油型乳化化粧料の場合は、水相の含有量は、化粧料全体に対し、30~80質量%であることが好ましく、より好ましくは、40~75質量%である。油相の含有量は、化粧料全体に対し、20~70質量%であることが好ましく、より好ましくは、25~60質量%である。
【0058】
(化粧料の製造方法)
本発明の化粧料は、常法にしたがって調製することができるが、(A)、(B)、および(C)の各成分を含む油性分散体を予め調製し、必要に応じて他の成分を加えて混合することによって有機無機複合体が分散した油相を形成することが好ましい。このような製造方法によると、日焼け防止効果、感触、使用性に優れた化粧料を効率よく製造することができる。
【0059】
油性分散体の調製法は特に限定されないが、分散機を用いて製造することが日焼け防止効果向上の面から好ましい。分散機としては、例えば2本ロール、3本ロールなどのロールミル、ボールミル、振動ボールミルなどのボールミル、ペイントシェーカー、連続ディスク型ビーズミル、連続アニュラー型ビーズミルなどのビーズミル、ヘンシェルミキサー、ディスパーミキサー、ホモミキサー、高圧ホモジナイザー、プラネタリーミキサー、ニーダーなどが挙げられる。これらの中でも分散力の高さと設備洗浄の容易さから、ロールミルを使用することが好ましい。
【0060】
分散機を用いて油性分散体を調製する場合、分散体を構成する成分(A)、成分(B)および成分(C)の全量を分散機に投入しても良いが、予め成分(A)および成分(B)と、成分(C)の一部を用いて分散操作を行い、その後、残りの成分(C)により希釈する方法でもよい。三本ロールミル等の混錬機を使用して分散体を製造する場合は、分散操作を行う際の成分(A)の量と、成分(B)および成分(C)の合計量との質量比〔(A):[(B)+(C)]〕は、2:8~8:2であることが好ましく、より好ましくは、4:6~7:3である。この質量比が小さい場合は、微細な分散が得られにくく、また、この質量比が大きすぎると油剤が連続相とならず、分散体を得ることが難しくなる。
【0061】
(紫外線防御用組成物)
本発明は、成分(A)の有機無機複合体を含有する紫外線防御用組成物をも提供する。本発明の紫外線防止用組成物は、成分(C)の液状油中に成分(A)の有機無機複合体および成分(B)の紫外線防御能向上剤が含まれている油性分散体であり、化粧料の調製に好適に使用できる。
【0062】
本発明の紫外線防御用組成物おける成分(A)の好ましい含有量は、組成物中に1~70質量%であり、より好ましくは2~50質量%である。成分(B)の好ましい含有量は、組成物中に0.01~50質量%であり、より好ましくは0.02~40質量%である。成分(C)の好ましい含有量は、組成物中に10~98質量%であり、より好ましくは20~90質量%である。
【0063】
本発明の紫外線防御用組成物は、成分(A)の有機無機複合体、成分(B)の紫外線防御能向上剤、および成分(C)の液状油と、必要に応じて添加されるその他の成分を混合することによって製造することができる。その調製法は、前述の化粧料の製造法における油性分散体の調製法と同様である。
【実施例0064】
以下、実施例に基づいて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって何ら限定されるものではない。なお、以下に示す製造例、実施例および比較例における「部」および「%」は特記しない限り「質量部」および「全量に対する質量%」を表す。また、以下の実施例および比較例における化粧料の評価方法は、以下のとおりである。
【0065】
(UVAPFの測定)
Labshere社製SPF Analyzer UV-1000Sを用いてUVAPFを測定する。測定に当たり、サンプル塗布プレートは、資生堂医理化テクノロジー社製SPFMASTER-PA01を使用し、塗布量は、2mg/cmとする。
【0066】
(着色性試験)
評価用試料20gを30mLガラス瓶に入れ、さらに鉄製の釘(鉄丸くぎN32)を入れて40℃で1日保存した後、試料の着色度合いを目視で観察し、下記の評価基準に基づいて4段階で判定する。
【0067】
(評価基準)
A: 色の変化がない。
B: 釘の周辺がわずかに赤ないし茶褐色に変色している。
C: 釘の周辺が濃く赤ないし茶褐色に変色している。
D: 釘の周辺が広範囲に赤ないし茶褐色に変色している。
【0068】
製造例1
(有機無機複合体Iの製造)
1.5M/Lの塩化マグネシウム水溶液と0.5M/Lの塩化アルミニウム水溶液の混合液2Lと4.0M/Lの水酸化ナトリウム水溶液2Lを、計量ポンプを用いて、それぞれ100mL/分の流速で、予め500mLの水を満たした容量5Lの反応槽に撹拌下に供給し、pHを約9.4-9.6、温度を約35℃に保ちながら共沈反応を行い、ハイドロタルサイト様化合物を得た。沈殿物の一部を採取し、それを塩酸に溶解してキレート滴定法によりMgとAlの量を測定したところ、Mg:Alの原子比が3:1であった。また、沈殿物のX線回折パターンとハイドロタルサイトのX線回折パターンを対比することによって、このハイドロタルサイト様化合物は、Mg0.75Al0.25(OH)の組成を有する複水酸化物が基本層を形成し、塩素イオンと水分子が中間層を形成する複水酸化物であることがわかった。次いで、反応物を減圧濾過して水洗した後、ケミスターラーで水に再分散させて全量を5Lにした。そこから1L分を採取し、容量1Lのオートクレーブに入れ、180℃で15時間水熱処理した。約90℃まで冷却した後、2Lのビーカーに移し、撹拌下にAlと当モルのステアリン酸ナトリウム水溶液(約90℃)を加えて30分間反応させ、層間の塩素イオンをステアリン酸イオンでイオン交換した。この後、濾過、温水洗(約90℃)、乾燥(約120℃で3時間)し、100メッシュで篩過し、層間陰イオンがステアリン酸イオンであり、層間水を含むハイドロタルサイト様化合物の粉末(BMBM未含有複合体)を得た。この粉末50gを、BMBM38gを溶解した800mLのエチルアルコール溶液に加え、60℃で1時間加熱処理して層間水をBMBMで置換した。続いて、無水マレイン酸/ジイソブチレン共重合体ナトリウム塩(ポリスターOMR、日油社製)0.5gを添加し、更に20分撹拌した。減圧濾過後、アルコールで洗浄し、120℃で2時間、100メッシュで篩過して、有機無機複合体Iを得た。篩過粉末を塩酸に溶解後、ジエチルエーテルを加え、BMBMをジエチルエーテル中に抽出した。抽出物の一部を取り、分光光度計を使用し、波長357nmの吸収強度からBMBM量を測定したところ、BMBMの含有量は36%であった。
【0069】
製造例2
(有機無機複合体IIの製造)
BMBM38gを溶解した800mLのエチルアルコール溶液の代わりにBMBM45gを溶解した800mLのエチルアルコールを用いること以外は製造例1と同様にして有機無機複合体IIを得た。製造例1に記載した方法と同様にして分析したところ、BMBMの含有量は43%であった。
【0070】
比較例1
製造例1で得た有機無機複合体I(BMBM含有量36%)13.9部と、同質量のイソノナン酸イソトリデシルとを3本ロールミルを用いて混錬し、さらにイソノナン酸イソトリデシル72.2部を加えて混合し、全量で100部の油性分散体を調製した。この油性分散体に含まれるBMBMの量は全体の5%に相当する。この組成物のUVAPFを測定したところ23.6であった。以下の実施例1~13においては、この値を基準値として紫外線防御能向上剤の紫外線防御能向上指数を算出した。
【0071】
実施例1
比較例1において、3本ロールミルによる混錬に先立ち、セスキイソステアリン酸ソルビタン1質量部を加えること、および追加で添加するイソノナン酸イソトリデシルの量を71.2部とすること以外は比較例1と同様にして紫外線吸収剤組成物を得た。この組成物に含まれるBMBMは5%であり、セスキイソステアリン酸ソルビタンは1%である。この組成物のUVAPFを測定したところ36.5であり、セスキイソステアリン酸ソルビタンの紫外線防御能向上指数は1.5であった。すなわち、セスキイソステアリン酸ソルビタンが共存することによって、UVAPFは上記の基準値に対して1.5倍に向上していた。
【0072】
実施例2~13
セスキイソステアリン酸ソルビタンに代えて表1に記載の化合物を用いること以外は実施例1と同様にして紫外線吸収剤組成物を調製し、そのUVAPFを測定して、それぞれの化合物の紫外線防御能向上指数を算出した。結果を表1に示す。
【0073】
【表1】
【0074】
表1の結果から、多価アルコール脂肪酸エステル型非イオン性界面活性剤(実施例1~3)、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸またはその塩(実施例4)、シリコーン系界面活性剤(実施例5、6)、ポリヒドロキシ脂肪酸(実施例7)、粘土鉱物(実施例8~12)、シリカ(実施例13)、を共存させると基準値を大きく上回るUVAPFを示すことがわかる。なかでも、セスキイソステアリン酸ソルビタン(実施例1)、オレイン酸ソルビタン(実施例2)、トリラウレス-4リン酸(実施例4)、PEG-10ジメチコン(実施例5)、ポリヒドロキシステアリン酸(実施例7)、粘土鉱物(実施例8~12)、および煙霧状シリカ(実施例13)は、紫外線防御能を大きく向上させており、とくに、有機変性粘土鉱物(実施例8、9)は、紫外線防御能を著しく向上させることがわかった。
【0075】
実施例14、15及び比較例2、3
<油中水型(W/O型)日焼け止め化粧料>
表2に示す油中水型日焼け止め化粧料を下記の製造手順に従って調製し、上記の評価方法により評価した。その結果も併せて表2に示す。
(製造手順)
(1)表2のA部に記載されている成分を、3本ロールミルを用いて混錬し、油性分散体を調製する。
(2)上記の油性分散体に、B部に記載されている成分を溶解または分散させて十分に混合して油相を調製する。なお、B部に記載されているホモサレート(サリチル酸ホモメンチル)、オクトクリレン、サリチル酸オクチルは油溶性紫外線吸収剤である。
(3)C部に記載されている成分を混合して水相を調製する。なお、C部に記載されているブチレングリコールは保湿剤である。
(4)常温(25℃前後)にて、上記の油相に上記の水相を撹拌しながら添加し、化粧料を調製する。
【0076】
【表2】
【0077】
表2の結果から明らかなように、本発明の油中水型化粧料は、優れたUVAPFを示すとともに、金属との接触による着色も生じにくいことが分かる(実施例14および15)。これに対して、BMBMを含有しない化粧料は、UVAPFが著しく低く(比較例2)、BMBMを複合化せず、油相に溶解して含有させた化粧料は、金属との接触による着色が見られた(比較例3)。
【0078】
実施例16及び比較例4
<W/O型乳化ファンデーション>
表3に示す組成のW/O型乳化ファンデーションを実施例14と同様の製造手順に従って調製し、上記の評価方法により評価した。その結果も併せて表3に示す。なお、B部に記載されているハイドロゲンジメチコン処理微粒子酸化亜鉛は紫外線散乱剤であり、ジミリスチン酸AL処理酸化チタンは着色剤である。
【0079】
【表3】
【0080】
表3の結果から明らかなように、実施例16のW/O型ファンデーションは大きなUVAPFを示すとともに、金属との接触による着色も生じにくいことが分かる。これに対して、BMBMを油相に溶解して含有させた比較例4のファンデーションは、UVAPFが実施例に比べて低く、また金属との接触による着色が見られた。
【0081】
実施例17、比較例5
<水中油型日焼け止め化粧料>
表4に示す組成の水中油型日焼け止め化粧料を、D相乳化法を用いて下記の製造手順に従って調製し、上記の評価方法により評価した。その結果も併せて表4に示す。
(製造手順)
(1)A部の成分を、3本ロールミルを用いて混錬し、油性分散体を調製する。なお、A部に記載されているトリエトキシカプリリルシラン処理微粒子酸化チタンは紫外線散乱剤である。
(2)比較例5では、B部の成分を溶解混合した後、A部の成分と合わせて混合し、油相とする。
(3)C部の成分を混合してD相(界面活性剤相)を調製する。
(4)常温にてD相に油相(比較例5の場合)または油性分散体(実施例17の場合)を少量ずつ混合し、ゲル状乳化物のO/D相を調製する。
(5)上記O/D相にD部の成分を混合して調製した水相を添加し混合して化粧料を調製する。
【0082】
【表4】
【0083】
表4の結果から明らかなように、実施例17の日焼け止め化粧料は優れたA波紫外線防止効果を示し、金属との接触による着色も生じなかった。これに対し、比較例5の日焼け止め化粧料は、良好なA波紫外線防止効果を示したものの金属との接触により著しい着色を示した。
【産業上の利用可能性】
【0084】
本発明によれば、日焼け防止効果が高く、金属イオンによる着色が少なく、かつ、安全性に優れた化粧料、および該化粧料の効率的な製造法が提供され、また、該化粧料の調製に有用な紫外線防御剤組成物が提供される。