(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024158053
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】燃料電池システム
(51)【国際特許分類】
H01M 8/04694 20160101AFI20241031BHJP
H01M 8/12 20160101ALI20241031BHJP
H01M 8/04 20160101ALI20241031BHJP
H01M 8/0612 20160101ALI20241031BHJP
H01M 8/0438 20160101ALI20241031BHJP
H01M 8/0432 20160101ALI20241031BHJP
H01M 8/04791 20160101ALI20241031BHJP
H01M 8/04746 20160101ALI20241031BHJP
【FI】
H01M8/04694
H01M8/12 101
H01M8/04 N
H01M8/0612
H01M8/0438
H01M8/0432
H01M8/04791
H01M8/04746
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023072893
(22)【出願日】2023-04-27
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100154380
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100081972
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 豊
(72)【発明者】
【氏名】山村 秀一
【テーマコード(参考)】
5H126
5H127
【Fターム(参考)】
5H126BB06
5H127AA07
5H127AC15
5H127BA03
5H127BA05
5H127BA12
5H127DB77
5H127DB79
5H127DC82
5H127EE12
5H127EE16
5H127EE18
5H127EE24
5H127EE27
(57)【要約】
【課題】ガス燃料と液体燃料の双方を発電に用いて、一方の燃料停止時にも他方の燃料に切り替えて発電を継続する。
【解決手段】燃料電池システム100は、固体酸化物形燃料電池11と、固体酸化物形燃料電池に供給される燃料を、水蒸気存在下で改質する改質器12と、改質器12に接続される蒸発器13と、蒸発器13を介して改質器12に水と燃料とを供給する供給部15,15a,16,21,22,24,25,27,28とを備える。燃料は、炭化水素からなるガス燃料とアルコールからなる液体燃料とを含む。供給部は、改質器12に供給する燃料を、ガス燃料と液体燃料との間で切り替える切替部15a,24を有する。改質器12は、供給部によりガス燃料が供給されると、供給されたガス燃料を水蒸気改質し、供給部により液体燃料が供給されると、供給された液体燃料をオートサーマル改質するように構成される。
【選択図】
図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
固体酸化物形燃料電池と、
前記固体酸化物形燃料電池に供給される燃料を、水蒸気存在下で改質する改質器と、
前記改質器に接続される蒸発器と、
前記蒸発器を介して前記改質器に水と燃料とを供給する供給部と、を備え、
前記燃料は、炭化水素からなるガス燃料とアルコールからなる液体燃料とを含み、
前記供給部は、前記改質器に供給する燃料を、前記ガス燃料と前記液体燃料との間で切り替える切替部を有し、
前記改質器は、前記供給部により前記ガス燃料が供給されると、供給された前記ガス燃料を水蒸気改質し、前記供給部により前記液体燃料が供給されると、供給された前記液体燃料をオートサーマル改質するように構成されることを特徴とする燃料電池システム。
【請求項2】
請求項1に記載の燃料電池システムにおいて、
前記供給部は、液体流路とガス流路とをさらに有し、前記切替部により前記改質器に供給する燃料を前記ガス燃料から前記液体燃料に切り替えるとき、前記液体燃料を前記液体流路に供給し、前記ガス流路を流れるガスの圧力が所定圧力以上になると、オートサーマル改質用の空気を前記ガス燃料とともに前記ガス流路に供給し、前記改質器の温度が所定温度以上になると、前記ガス燃料の供給を停止することを特徴とする燃料電池システム。
【請求項3】
請求項2に記載の燃料電池システムにおいて、
前記供給部は、前記切替部により前記改質器に供給する燃料を前記ガス燃料から前記液体燃料に切り替えるとき、前記液体燃料に含まれる炭素の物質量に対する前記水の物質量の比が1.5以上、かつ、2.5以下となるように前記液体燃料を供給し、前記液体燃料に含まれる炭素の物質量に対する前記オートサーマル改質用の空気に含まれる酸素の物質量の比が0.3以上、かつ、0.55以下となるように前記オートサーマル改質用の空気を供給することを特徴とする燃料電池システム。
【請求項4】
請求項1に記載の燃料電池システムにおいて、
前記供給部は、液体流路とガス流路とをさらに有し、前記切替部により前記改質器に供給する燃料を前記液体燃料から前記ガス燃料に切り替えるとき、前記液体流路に供給する前記水を増量し、前記ガス流路を流れるガスの圧力が所定圧力以上になると、前記ガス燃料を前記ガス流路に供給し、前記改質器の温度が所定温度以上になると、前記液体燃料の供給を停止することを特徴とする燃料電池システム。
【請求項5】
請求項4に記載の燃料電池システムにおいて、
前記供給部は、前記切替部により前記改質器に供給する燃料を前記液体燃料から前記ガス燃料に切り替えるとき、前記ガス燃料に含まれる炭素の物質量に対する前記水の物質量の比が2.5以上、かつ、3.5以下となるように前記水を増量し、前記ガス燃料の物質量が前記液体燃料の物質量以下となるように前記ガス燃料を供給することを特徴とする燃料電池システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固体酸化物形燃料電池を用いて発電を行う燃料電池システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、固体酸化物形燃料電池にガス燃料を供給して発電を行うようにした装置が知られている(例えば特許文献1参照)。特許文献1記載の装置では、炭化水素を主成分とする都市ガスを改質器で改質して燃料電池スタックに供給する一方、改質器の温度が改質可能温度未満のときは、改質器に代えて起動用燃焼器に都市ガスを供給する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、固体酸化物形燃料電池には、都市ガス等のガス燃料以外にも、バイオアルコール等の液体燃料を用いることができる。したがって、エネルギーを効率利用するという観点から、ガス燃料と液体燃料の双方を発電に用いることができるように燃料電池システムを構成することが好ましい。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様である燃料電池システムは、固体酸化物形燃料電池と、固体酸化物形燃料電池に供給される燃料を、水蒸気存在下で改質する改質器と、改質器に接続される蒸発器と、蒸発器を介して改質器に水と燃料とを供給する供給部と、を備える。燃料は、炭化水素からなるガス燃料とアルコールからなる液体燃料とを含む。供給部は、改質器に供給する燃料を、ガス燃料と液体燃料との間で切り替える切替部を有する。改質器は、供給部によりガス燃料が供給されると、供給されたガス燃料を水蒸気改質し、供給部により液体燃料が供給されると、供給された液体燃料をオートサーマル改質するように構成される。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、ガス燃料と液体燃料の双方を発電に用いることができ、一方の燃料停止時にも他方の燃料に切り替えて発電を継続することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1A】本発明の実施形態に係る燃料電池システムが有する燃料電池モジュールの構成の一例を示すブロック図。
【
図1B】本発明の実施形態に係る燃料電池システムが有する燃料電池モジュールの構成の別の例を示すブロック図。
【
図3A】本発明の実施形態に係る燃料電池システムの制御構成の一例を示すブロック図。
【
図3B】本発明の実施形態に係る燃料電池システムの制御構成の別の例を示すブロック図。
【
図4】本発明の実施形態に係る燃料電池システムにより実行される、ガス燃料から液体燃料への切替処理の一例を示すフローチャート。
【
図5】ガス燃料から液体燃料への切替処理について説明するためのタイムチャート。
【
図6】改質器の温度およびガス流路の圧力の適正範囲について説明するための図。
【
図7】本発明の実施形態に係る燃料電池システムにより実行される、液体燃料からガス燃料への切替処理の一例を示すフローチャート。
【
図8】液体燃料からガス燃料への切替処理について説明するためのタイムチャート。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、
図1A~
図8を参照して本発明の実施形態について説明する。本発明の実施形態に係る燃料電池システムは、固体酸化物形燃料電池(SOFC(Solid Oxide Fuel Cell))を用いて、電気化学反応により発電を行う。SOFCの発電セルは、固体電解質膜と電極の接合体(MEA(Membrane Electrode Assembly))とMEAを挟持するセパレータとを有し、セパレータと電極との間の流路を介して供給された燃料のエネルギーを電気化学反応により直接電気エネルギーに変換する。より具体的には、酸素を含む酸化剤ガスが供給されるカソード電極では、外部回路からの電子を受け取って酸素分子がイオン化され、電解質膜を通ってアノード電極側へと移動する。水素を含む燃料ガスが供給されるアノード電極では、カソード電極からの酸化物イオンと水素が反応して水蒸気が生成され、電子が外部回路に放出される。
【0009】
酸化剤ガスとしては、酸素ガスや、酸素を含む空気等を用いることができる。燃料ガスとしては、水素ガスや、メタンを主成分とする都市ガス等のガス燃料やバイオアルコール等の液体燃料を改質して得られる、水素を含有する混合ガス等を用いることができる。そこで、本実施形態では、ガス燃料と液体燃料の双方を改質して得た燃料ガスを発電に用いて、一方の燃料停止時にも他方の燃料に切り替えて発電を継続することができるよう、以下のように燃料電池システムを構成する。
【0010】
図1Aおよび
図1Bは、本発明の実施形態に係る燃料電池システム100が有する燃料電池モジュール10の構成の一例を示すブロック図である。
図1Aに示すように、燃料電池モジュール10は、燃料電池スタック11と、改質器12と、蒸発器13と、水ポンプ14と、ガス燃料ポンプ15と、空気ポンプ16と、空気予熱器17と、オフガス燃焼器18と、起動用燃焼器19と、排気触媒20とを備える。
【0011】
燃料電池スタック11は、SOFCからなる複数の発電セルを積層して構成され、燃料ガスと酸化剤ガスとが供給されると、電気化学反応を介して発電を行い、反応後のオフガスを排出する。燃料電池スタック11の発電出力や温度、圧力は、コントローラ30(
図3A)に送信される。
【0012】
改質器12は、燃料電池スタック11のアノード流路の入口に接続され、触媒作用により、水蒸気存在下で燃料を改質する水蒸気改質反応と、酸素存在下で燃料を部分的に酸化する部分酸化改質反応とを促進する。改質器12では、水蒸気が存在し、酸素が存在しない場合、水蒸気改質反応のみが進行し、水蒸気と酸素とが存在する場合、吸熱反応である水蒸気改質反応と発熱反応である部分酸化改質反応とが進行する(オートサーマル改質反応)。メタンを主成分とする都市ガス等のガス燃料は、水蒸気改質反応により改質することができる。バイオアルコール等のアルコール系の液体燃料は、空気等のアシストガスによるガスアシスト効果を利用したオートサーマル改質反応により安定的に改質することができる。
【0013】
改質器12での改質反応により生成された混合ガスは、主に水素と一酸化炭素とを含有し、燃料ガスとして燃料電池スタック11のアノード流路に供給される。改質器12には、改質器12の温度Tを検出する温度センサ12aが設けられる。温度センサ12aの検出値は、コントローラ30(
図3A)に送信される。
【0014】
蒸発器13は、改質器12に接続され、改質器12に供給される水や液体燃料を蒸発させる。
図2は、蒸発器13の内部構成の一例を概略的に示す図である。
図2に示すように、蒸発器13の入口には、水や液体燃料が流れる液体流路21と、液体流路21を包囲するように設けられ、空気やガス燃料が流れるガス流路22とが接続される。蒸発器13内の入口側の拡散領域13aには、液体流路21の先端から液体(水、液体燃料)が噴射されるとともに、ガス流路22の先端からガス(ガス燃料、空気)が噴射される。拡散領域13aでは、液体流路21から噴射された液体が、ガス流路22から噴射されたガスで包み込まれて微粒化し、拡散する。
【0015】
蒸発器13内の中央から出口側の蒸発領域13bには、熱容量の大きいセラミック製の小径ボール等、比表面積の大きい伝熱部材13cが充填される。蒸発領域13b(伝熱部材13c)は、改質器12やオフガス燃焼器18、起動用燃焼器19からの伝熱により、蒸発温度以上の高温に保たれる。拡散領域13aで拡散された液体とガスとを含む微粒子は、蒸発領域13bに到達し、高温の伝熱部材13cに接触すると蒸発し、燃料と水蒸気とを含む混合ガスを形成する。蒸発領域13bに適当な伝熱部材13cを設け、伝熱面積を大きくし、温度分布を均一にすることで、急激な蒸発(突沸)を防ぐことができる。この場合、蒸発器13から改質器12および燃料電池スタック11に供給される混合ガスの圧力変動を抑制し、これらの流路での炭素析出を防止することができる。蒸発領域13bは、伝熱部材13cを充填する構造に代えて、モノリス構造やプレートフィン構造としてもよい。
【0016】
水ポンプ14は、液体流路21を介して蒸発器13と不図示の水源とに接続され、水源から蒸発器13に水を供給する。水ポンプ14は、水源のほか、流路23aを介して不図示の貯留タンクにも接続され、貯留タンクに貯留されたバイオアルコール等の液体燃料を蒸発器13に供給する。アルコール系の液体燃料は、親水性であり、液体流路21を流れる水と良好に混合される。流路23aには、電磁開閉弁24と電磁比例弁25とが設けられる。電磁比例弁25は、開度に応じて貯留タンクからの供給流量を絞ることで、液体流路21に供給される液体燃料の流量を調整する。水ポンプ14を利用して水とともに液体燃料を供給するため、燃料電池モジュール10の構成を簡易にすることができる。水ポンプ14、電磁開閉弁24および電磁比例弁25は、コントローラ30(
図3A)により制御される。
【0017】
ガス燃料ポンプ15は、ガス流路22を介して蒸発器13に接続され、蒸発器13にメタンを主成分とする都市ガス等のガス燃料を供給する。ガス流路22には、電磁開閉弁15aが設けられる。ガス流路22には、分岐流路26を介して、空気ポンプ16から空気が供給される。分岐流路26には、電磁開閉弁27と電磁比例弁28とが設けられる。電磁比例弁28は、開度に応じて空気ポンプ16からの供給流量を絞ることで、ガス流路22に供給される空気の流量を調整する。ガス燃料ポンプ15、電磁開閉弁15a,27および電磁比例弁28は、コントローラ30(
図3A)により制御される。
【0018】
分岐流路26を介して供給される空気は、改質器12で水蒸気改質反応と部分酸化改質反応とを組合せたオートサーマル改質反応を行うときの酸化剤として用いられる。以下では、分岐流路26を介して供給される空気を「改質用空気」と称する。空気ポンプ16から供給される空気の一部を改質用空気として用いるため、燃料電池モジュール10の構成を簡易にすることができる。ガス流路22には、ガス流路22を流れるガス(改質用空気、ガス燃料)の圧力Pを検出する圧力センサ22aが設けられる。圧力センサ22aの検出値は、コントローラ30(
図3A)に送信される。
【0019】
空気ポンプ16は、空気予熱器17を介して燃料電池スタック11のカソード側の流路入口に接続されるとともに、分岐流路26を介してガス流路22に接続される。空気ポンプ16は、空気を、酸化剤ガスとして燃料電池スタック11に供給するとともに、改質用空気としてガス流路22に供給する。空気ポンプ16は、コントローラ30(
図3A)により制御される。
【0020】
オフガス燃焼器18は、燃料電池スタック11のアノード流路およびカソード流路の出口に接続され、燃料電池スタック11での電気化学反応により消費されなかった未反応の燃料ガスおよび酸化剤ガスを含むオフガスがオフガス燃焼器18に供給される。オフガス燃焼器18には、グロープラグ18aが設けられる。燃料電池モジュール10の起動時、燃料電池スタック11の温度が発電可能温度に達していないときは、グロープラグ18aがオンにされ、燃料電池スタック11を通過してオフガス燃焼器18に供給されたオフガスが点火されることで強制的に燃焼される。そして、オフガス燃焼器18での燃焼熱により改質器12、蒸発器13、空気予熱器17が昇温され、これにより間接的に燃料電池スタック11が昇温される。燃料電池スタック11の温度が発電可能温度に達すると、グロープラグ18aはオフにされる。燃料電池スタック11が発電可能温度以上の高温の場合は、オフガス燃焼器18に供給された高温のオフガスがグロープラグ18aの点火によらずに燃焼し、オフガス燃焼器18での燃焼が安定的に継続される。オフガス燃焼器18での失火が検知された場合にグロープラグ18aをオンにしてもよい。グロープラグ18aは、コントローラ30(
図3A)により制御される。
【0021】
オフガス燃焼器18の下流側には、改質器12が接続される。改質器12は、熱交換器として構成され、オフガス燃焼器18で燃焼された後の高温の排気により、蒸発器13からの燃料と水蒸気とを含む混合ガスを昇温する。
【0022】
起動用燃焼器19は、改質器12を介してオフガス燃焼器18に接続される。起動用燃焼器19には、グロープラグ19aが設けられる。燃料電池モジュール10の起動時、蒸発器13の温度が安定的に蒸発可能な蒸発可能温度に達していないときは、グロープラグ18aがオンにされ、燃料電池スタック11、オフガス燃焼器18、改質器12を通過して供給されたオフガスを点火し、燃焼させる。起動用燃焼器19での燃焼熱により蒸発器13が昇温され、蒸発器13の温度が蒸発可能温度に達すると、グロープラグ19aはオフにされ、オフガス燃焼器18のグロープラグ18aがオンにされる。グロープラグ19aは、コントローラ30(
図3A)により制御される。
【0023】
起動用燃焼器19の下流側には、空気予熱器17が接続される。空気予熱器17は、熱交換器として構成され、オフガス燃焼器18または起動用燃焼器19で燃焼された後の高温の排気により、空気ポンプ16から供給された空気(酸化剤ガス)を昇温する。燃料電池モジュール10の起動時、蒸発器13の温度が蒸発可能温度に達していないときは、起動用燃焼器19で燃焼された後の高温の排気により、空気ポンプ16からの空気が昇温され、燃料電池スタック11のカソード流路に供給される。これにより、燃料電池スタック11が昇温される。
【0024】
オフガス燃焼器18または起動用燃焼器19で燃焼された後の排気は、空気予熱器17を昇温した後、排気触媒20を介して外部に放出される。排気触媒20には、ヒータ20aが設けられ、必要に応じて排気触媒20を活性温度まで昇温する。ヒータ20aは、コントローラ30(
図3A)により制御される。
【0025】
図1Bに示すように、燃料電池モジュール10は、空気予熱器17を介して燃料電池スタック11のカソード側の流路入口に接続される空気ポンプ16aと、分岐流路26を介してガス流路22に接続される空気ポンプ16bとを個別に備えてもよい。空気ポンプ16aは、空気を酸化剤ガスとして燃料電池スタック11に供給する。空気ポンプ16bは、空気を改質用空気としてガス流路22に供給する。この場合、分岐流路26には電磁開閉弁27のみが設けられる。空気ポンプ16bを用いて改質用空気を供給する場合、より精度よく流量を調整し、より確実に発電出力を維持することができる。空気ポンプ16a,16bは、コントローラ30(
図3B)により制御される。
【0026】
また、燃料電池モジュール10は、分岐流路23bを介して液体流路21に液体燃料を供給する液体燃料ポンプ29を備えてもよい。この場合、分岐流路23bには電磁開閉弁24のみが設けられる。液体燃料ポンプ29を用いて液体燃料を供給する場合、より精度よく流量を調整し、より確実に発電出力を維持することができる。液体燃料ポンプ29は、コントローラ30(
図3B)により制御される。
【0027】
図3Aおよび
図3Bは、燃料電池システム100の制御構成の一例を示すブロック図である。
図3Aおよび
図3Bに示すように、燃料電池システム100は、燃料電池モジュール10を制御するコントローラ30を主に備える。コントローラ30は、CPU、RAM、ROM、I/Oインタフェース、その他の周辺回路を有するコンピュータを含んで構成される。
【0028】
コントローラ30には、燃料電池モジュール10の燃料電池スタック11、温度センサ12a、圧力センサ22a、ポンプ(ガス燃料ポンプ15、空気ポンプ16,16a,16b、液体燃料ポンプ29)、グロープラグ18a,19a、および電磁弁(電磁開閉弁15a、電磁開閉弁24,27、電磁比例弁25,28)が接続される。コントローラ30は、予め記憶されたプログラムに従い、燃料電池スタック11、温度センサ12aおよび圧力センサ22aからの信号に基づいて、ポンプ15,16,16a,16b,29、グロープラグ18a,19a、および電磁弁15a,24,25,27,28を制御する。
【0029】
液体流路21とガス流路22と、ポンプ15,16,16a,16b,29と、電磁弁15a,24,27,25,28と、コントローラ30とは、蒸発器13を介して改質器12に水と燃料と改質用空気とを供給する供給部として機能する。このうち、電磁開閉弁15a,24とコントローラ30とは、改質器12に供給する燃料をガス燃料と液体燃料との間で切り替える切替部として機能する。
【0030】
図4は、コントローラ30により実行される、ガス燃料から液体燃料への切替処理の一例を示すフローチャートであり、
図5は、ガス燃料から液体燃料への切替処理について説明するためのタイムチャートである。
図4の切替処理は、燃料電池モジュール10の起動後、所定周期で繰り返し実行される。ガス燃料から液体燃料への切替処理を行う前は、改質器12には、燃料と水蒸気のみが供給され、改質器12では、燃料が水蒸気存在下で水蒸気改質反応により改質される。
【0031】
図4に示すように、先ずステップS1で、ガス燃料から液体燃料への切り替えを行うか否かを判定する。ステップS1の判定は、ガス燃料の流量の不足、ガス流路22の圧力Pの不足、あるいは燃料電池スタック11の出力低下の有無に基づいて行ってもよく、外部からの燃料切替要求の有無に基づいて行ってもよい。燃料切替要求は、例えば、ガス燃料を供給できなくなった場合に行われてもよく、ユーザが液体燃料の利用を希望する場合に行われてもよい。ステップS1で肯定されるとステップS2に進み、ステップS1で否定されると処理を終了する。
【0032】
ステップS2では、電磁開閉弁24と電磁比例弁25(
図1A)または液体燃料ポンプ29(
図1B)とを制御し、流路23aまたは分岐流路23bを介して液体流路21に液体燃料を供給する。このとき、液体流路21を介して蒸発器13および改質器12に供給される液体燃料に含まれる炭素(C)の物質量に対する水(S(Steam))の物質量の比(S/C)が、1.5以上、かつ、2.5以下となるように、電磁比例弁25(
図1A)または液体燃料ポンプ29(
図1B)を制御する。S/Cを1.5以上とすることで、水蒸気不足に起因する炭素析出(コーキング)や改質温度過剰による改質器12の酸化劣化を抑制することができる。また、S/Cを2.5以下とすることで、水蒸気過剰に起因して改質温度が不足することによる発電出力低下やオフガス燃焼器18での失火を抑制することができる。
【0033】
図5に示すように、時刻t1で液体燃料の供給が開始されると、改質器12に供給される燃料(ガス燃料および液体燃料)が増加することで、改質器12の温度Tが上昇し、ガス流路22の圧力Pが上昇する。
【0034】
次いでステップS3で、ガス流路22の圧力Pが所定圧力P1に達したか否かを判定する。ガス流路22の圧力Pには、圧力センサ22aによる検出値の移動平均値を用いることができる。ステップS3は、肯定されるまで繰り返される。ステップS3で所定時間経過しても肯定されない場合は、処理を終了し、燃料電池モジュール10の運転を停止、あるいはガス燃料のみの供給に戻して運転を継続する。
図5では、ガス流路22の圧力Pが安定して上昇し、時刻t2で所定圧力P1に達する。
【0035】
ステップS3で肯定されるとステップS4に進み、電磁開閉弁27と電磁比例弁28(
図1A)または空気ポンプ16b(
図1B)とを制御し、分岐流路26を介してガス流路22に改質用空気を供給する。このとき、液体流路21を介して蒸発器13および改質器12に供給される液体燃料に含まれる炭素(C)の物質量に対する、ガス流路22を介して蒸発器13および改質器12に供給される改質用空気に含まれる酸素(O
2)の物質量の比(O
2/C)が、0.3以上、かつ、0.55以下となるように、電磁比例弁28(
図1A)または空気ポンプ16b(
図1B)を制御する。O
2/Cを0.3以上とすることで、ガス量不足に起因する蒸発の不安定化による炭素析出や、酸素不足に起因して部分酸化改質反応の発熱量が不足し、水蒸気改質反応が進行し難くなることによる発電出力低下を抑制することができる。また、O
2/Cを0.55以下とすることで、酸素過剰に起因して改質温度が過剰になることによる改質器12の酸化劣化を抑制することができる。
【0036】
図5に示すように、時刻t2で改質用空気の供給が開始されると、改質器12に燃料(ガス燃料および液体燃料)と水蒸気と酸素(改質用空気)とが供給されることで、部分酸化改質反応が開始し、改質器12の温度Tおよびガス流路22の圧力Pがさらに上昇する。このとき、改質用空気の供給量に応じて一部の燃料が部分酸化改質反応により改質され、残りの燃料が水蒸気改質反応により改質される。
【0037】
次いでステップS5で、改質器12の温度Tが所定温度T2に達したか否かを判定する。改質器12の温度Tには、温度センサ12aによる検出値(瞬時値)をそのまま用いることができる。ステップS5は、肯定されるまで繰り返される。ステップS5で所定時間経過しても肯定されない場合は、処理を終了し、燃料電池モジュール10の運転を停止、あるいはガス燃料のみの供給に戻して運転を継続する。
図5では、改質器12の温度Tが上昇し、時刻t3で所定温度T2に達する。時刻t3での改質器12の温度Tを初期温度T2、ガス流路22の圧力Pを初期圧力P2とする。
【0038】
ステップS5で肯定されるとステップS6に進む。ステップS6では、ガス燃料の流量を徐々に減少させるようにガス燃料ポンプ15を制御するとともに、ガス燃料の流量に応じて改質用空気の流量を徐々に減少させるように電磁比例弁28(
図1A)または空気ポンプ16b(
図1B)を制御する。このとき、改質器12の温度Tおよびガス流路22の圧力Pが、初期温度T2および初期圧力P2を基準とする適正範囲内となるように、ガス燃料ポンプ15と電磁比例弁28(
図1A)または空気ポンプ16b(
図1B)とを制御する。
【0039】
図6は、改質器12の温度Tおよびガス流路22の圧力Pの適正範囲について説明するための図である。
図6に示すように、改質器12の温度Tが不足すると、改質率を維持できなくなり、燃料電池スタック11に供給される燃料ガスが不足することで、発電出力を維持できなくなる。一方、改質器12の温度Tが過剰になると、改質器12が酸化により劣化する。また、ガス流路22の圧力Pが不足する、あるいは過剰になり、制御開始時からの変動が想定よりも大きくなると、蒸発が不安定となる。この場合、ポンプ15,16bや電磁比例弁28の制御によりガス流路22を流れるガス(改質用空気、ガス燃料)の流量を調整できなくなり、改質量を制御することが困難な状態となる。
【0040】
改質器12の温度Tの適正範囲は、初期温度T2を基準とする所定温度ΔT以内(T2-ΔT≦T≦T2+ΔT)であり、ガス流路22の圧力Pの適正範囲は、初期圧力P2を基準とする所定圧力ΔP以内(P2-ΔP≦P≦P2+ΔP)である。ガス燃料および改質用空気を減少させると、改質器12の温度Tおよびガス流路22の圧力Pが低下する。改質器12の温度Tおよびガス流路22の圧力Pが維持範囲を下回った場合は、ガス燃料の流量および改質用空気を増加させ、改質器12の温度Tおよびガス流路22の圧力Pを上昇させる。改質器12の温度Tおよびガス流路22の圧力Pが維持範囲を上回った場合は、ガス燃料の流量および改質用空気を減少させ、改質器12の温度Tおよびガス流路22の圧力Pを低下させる。改質器12の温度Tを適正範囲内に維持することで、改質率を維持し、発電出力を維持することができる。また、ガス流路22の圧力Pを適正範囲内に維持することで、蒸発器13内の圧力変動を抑制し、突沸や炭素析出を抑制することができる。
【0041】
図4のステップS7では、発電出力および改質用空気の流量が、改質器12でオートサーマル改質反応を行い、燃料電池スタック11で発電(オートサーマル改質発電)を行うときの目標範囲内であるか否かを判定する。ステップS7は、肯定されるまで繰り返される。ステップS7で所定時間経過しても肯定されない場合は、処理を終了し、燃料電池モジュール10の運転を停止、あるいはガス燃料のみの供給に戻して運転を継続する。
図5では、時刻t4で発電出力および改質用空気の流量がオートサーマル改質発電を行うときの目標範囲内となる。
【0042】
ステップS7で肯定されるとステップS8に進み、電磁開閉弁15aおよびガス燃料ポンプ15を制御し、ガス流路22へのガス燃料の供給を停止する。このとき、改質器12では、燃料の全量がオートサーマル改質反応により改質される。そして、燃料電池スタック11では、オートサーマル改質反応により得られた燃料ガスを用いたオートサーマル改質発電が行われる。
【0043】
図7は、コントローラ30により実行される、液体燃料からガス燃料への切替処理の一例を示すフローチャートであり、
図8は、液体燃料からガス燃料への切替処理について説明するためのタイムチャートである。
図7の切替処理は、燃料電池モジュール10の起動後、所定周期で繰り返し実行される。液体燃料からガス燃料への切替処理を行う前は、改質器12には、燃料と水蒸気と改質用空気とが供給され、改質器12では、燃料が水蒸気および酸素の存在下でオートサーマル改質反応により改質される。
【0044】
図7に示すように、先ずステップS10で、液体燃料からガス燃料への切り替えを行うか否かを判定する。ステップS10の判定は、液体燃料の流量の不足、改質器12の温度Tやガス流路22の圧力Pの過剰や不足、あるいは燃料電池スタック11の出力低下の有無に基づいて行ってもよく、外部からの燃料切替要求の有無に基づいて行ってもよい。燃料切替要求は、例えば、液体燃料を供給できなくなった場合に行われてもよく、ユーザがガス燃料の利用を希望する場合に行われてもよい。ステップS10で肯定されるとステップS11に進み、ステップS10で否定されると処理を終了する。
【0045】
ステップS11では、液体流路21に供給される水の流量を増加させるように水ポンプ14を制御する。このとき、ガス流路22を介して蒸発器13および改質器12に供給されるガス燃料に含まれる炭素(C)の物質量に対する、液体流路21を介して蒸発器13および改質器12に供給される水(S(Steam))の物質量の比(S/C)が、2.5以上、かつ、3.5以下となるように、水ポンプ14を制御する。S/Cを2.5以上とすることで、水蒸気不足に起因する炭素析出や改質温度過剰による改質器12の酸化劣化を抑制することができる。また、S/Cを3.5以下とすることで、水蒸気過剰に起因して改質温度が不足することによる発電出力低下やオフガス燃焼器18での失火を抑制することができる。
【0046】
図8に示すように、時刻t10で水の流量が増加し、蒸発器13で生成されて改質器12に供給される水蒸気が増加すると、改質器12の温度Tが低下し、ガス流路22の圧力Pが上昇する。
【0047】
次いでステップS12で、ガス流路22の圧力Pが所定圧力P3に達したか否かを判定する。ステップS12は、肯定されるまで繰り返される。ステップS12で所定時間経過しても肯定されない場合は、処理を終了し、燃料電池モジュール10の運転を停止、あるいは液体燃料のみの供給に戻して運転を継続する。
図8では、ガス流路22の圧力Pが安定して上昇し、時刻t11で所定圧力P3に達する。
【0048】
ステップS12で肯定されるとステップS13に進み、電磁開閉弁15aおよびガス燃料ポンプ15を制御し、ガス流路22にガス燃料を供給する。このとき、ガス流路22を介して蒸発器13および改質器12に供給されるガス燃料の物質量が、液体流路21を介して蒸発器13および改質器12に供給される液体燃料の物質量以下となるように、ガス燃料ポンプ15を制御する。
【0049】
また、ガス流路22を介して蒸発器13および改質器12に供給されるガス燃料に含まれる炭素(C)の物質量に対する、ガス流路22を介して蒸発器13および改質器12に供給される改質用空気に含まれる酸素(O2)の物質量の比(O2/C)が、0.55以下となるように、ガス燃料ポンプ15を制御する。O2/Cを0.55以下とすることで、酸素過剰に起因して改質温度が過剰になることによる改質器12の酸化劣化を抑制することができる。
【0050】
オートサーマル改質反応から水蒸気改質反応へと切り替える場合、S/Cを高め、改質器12に供給される燃料に対する水蒸気の割合を増加させる必要がある。ガス燃料の流量を最小限に制御し、S/Cを最大限にすることで、ガス燃料の急増による炭素析出を抑制しつつ、蒸発器13における蒸発の安定性を確保することができる。
【0051】
図8に示すように、時刻t11でガス燃料の供給が開始され、ガス流路22に供給されるガス(改質用空気およびガス燃料)の流量が増加すると、ガス流路22の圧力Pが上昇する。また、改質器12に供給される燃料(液体燃料およびガス燃料)が増加することで、改質器12の温度Tが上昇し、ガス流路22の圧力Pがさらに上昇する。
【0052】
次いでステップS14で、改質器12の温度Tが所定温度T4に達したか否かを判定する。ステップS14は、肯定されるまで繰り返される。ステップS14で所定時間経過しても肯定されない場合は、処理を終了し、燃料電池モジュール10の運転を停止、あるいは液体燃料のみの供給に戻して運転を継続する。
図8では、改質器12の温度Tが上昇し、時刻t12で所定温度T4に達する。
【0053】
ステップS14で肯定されるとステップS15に進み、電磁開閉弁24と電磁比例弁25(
図1A)または液体燃料ポンプ29(
図1B)とを制御し、液体流路21への液体燃料の供給を停止する。
図8に示すように、時刻t12で液体燃料の供給が停止されると、改質器12に供給される燃料が減少することで、改質器12の温度Tが低下し、ガス流路22の圧力Pが低下する。時刻t12から所定時間経過後の時刻t13での改質器12の温度Tを初期温度T5、ガス流路22の圧力Pを初期圧力P5とする。
【0054】
次いでステップS16で、ガス燃料の流量を徐々に増加させるようにガス燃料ポンプ15を制御するとともに、ガス燃料の流量に応じて改質用空気の流量を徐々に減少させるように電磁比例弁28(
図1A)または空気ポンプ16b(
図1B)を制御する。このとき、改質器12の温度Tおよびガス流路22の圧力Pが、初期温度T5および初期圧力P5を基準とする適正範囲内(T5-ΔT≦T≦T5+ΔT,P5-ΔP≦P≦P5+ΔP)となるように、ガス燃料ポンプ15と電磁比例弁28(
図1A)または空気ポンプ16b(
図1B)とを制御する。
【0055】
ガス燃料を増加させると、改質される燃料が増加することで、改質器12の温度Tおよびガス流路22の圧力Pが上昇する。一方、改質用空気を減少させると、発熱反応である部分酸化改質反応を伴うオートサーマル改質反応の割合が減少することで、改質器12の温度Tおよびガス流路22の圧力Pが低下する。ガス燃料を増加させるとともに改質用空気を減少させることで、改質器12の温度Tおよびガス流路22の圧力Pを適正範囲内に維持することができる。改質器12の温度Tを適正範囲内に維持することで、改質率を維持し、発電出力を維持することができる。また、ガス流路22の圧力Pを適正範囲内に維持することで、蒸発器13内の圧力変動を抑制し、突沸や炭素析出を抑制することができる。
【0056】
ステップS16では、さらに、ガス燃料の流量に応じて液体流路21に供給される水の流量を増加させるように水ポンプ14を制御する。このとき、ガス流路22を介して蒸発器13および改質器12に供給されるガス燃料に含まれる炭素(C)の物質量に対する、液体流路21を介して蒸発器13および改質器12に供給される水(S(Steam))の物質量の比(S/C)が、2.5以上、かつ、3以下となるように、水ポンプ14を制御する。S/Cを2.5以上とすることで、水蒸気不足に起因する炭素析出や改質温度過剰による改質器12の酸化劣化を抑制することができる。また、S/Cを3以下とすることで、水蒸気過剰に起因して改質温度が不足することによる発電出力低下やオフガス燃焼器18での失火を抑制することができる。
【0057】
ステップS17では、発電出力およびガス燃料の流量が、改質器12で水蒸気改質反応を行い、燃料電池スタック11で発電(水蒸気改質発電)を行うときの目標範囲内であるか否かを判定する。ステップS17は、肯定されるまで繰り返される。ステップS17で所定時間経過しても肯定されない場合は、処理を終了し、燃料電池モジュール10の運転を停止、あるいは液体燃料のみの供給に戻して運転を継続する。
図8では、時刻t14で発電出力およびガス燃料の流量が水蒸気改質発電を行うときの目標範囲内となる。
【0058】
ステップS17で肯定されるとステップS18に進み、電磁開閉弁27と電磁比例弁28(
図1A)または空気ポンプ16b(
図1B)とを制御し、ガス流路22への改質用空気の供給を停止する。このとき、改質器12では、燃料の全量が水蒸気改質反応により改質される。そして、燃料電池スタック11では、水蒸気改質反応により得られた燃料ガスを用いた水蒸気改質発電が行われる。
【0059】
このように、SOFCからなる燃料電池スタック11に供給される燃料ガスを、都市ガス等のガス燃料を水蒸気改質した燃料ガスと、バイオアルコール等の液体燃料をオートサーマル改質した燃料ガスとで切り替えることで、エネルギーを効率利用することができる。このとき、
図4および
図7の手順に従い、燃料の種類に応じて改質器12に供給される燃料と水蒸気と酸素(改質用空気)との適正なバランスを維持することで、燃料を切り替えるときでも改質率を維持し、発電出力を維持することができる。また、改質温度および圧力を適正範囲内に維持し、改質器12の酸化劣化やオフガス燃焼器18での失火を抑制することができる。また、蒸発器13に供給される水や液体燃料の流量に応じ、
図2のように蒸発を助けるアシストガスとしてのガス燃料や改質用空気の流量を適正範囲内に維持することで、蒸発の安定性を確保して圧力変動を抑制し、突沸や炭素析出を抑制することができる。
【0060】
本実施形態によれば以下のような作用効果を奏することができる。
(1)燃料電池システム100は、SOFCからなる燃料電池スタック11と、燃料電池スタック11に供給される燃料を、水蒸気存在下で改質する改質器12と、改質器12に接続される蒸発器13と、蒸発器13を介して改質器12に水と燃料とを供給する供給部(液体流路21、ガス流路22、ポンプ15,16,16a,16b,29、電磁弁15a,24,27,25,28、コントローラ30)とを備える(
図1A、
図1B)。燃料は、炭化水素からなるガス燃料(例えばメタンを主成分とする都市ガス)とアルコール(例えばバイオアルコール)からなる液体燃料とを含む。供給部は、改質器12に供給する燃料を、ガス燃料と液体燃料との間で切り替える切替部(電磁開閉弁15a,24、コントローラ30)を有する(
図1A、
図1B)。改質器12は、供給部によりガス燃料が供給されると、供給されたガス燃料を水蒸気改質し、供給部により液体燃料が供給されると、供給された液体燃料をオートサーマル改質するように構成される。これにより、ガス燃料と液体燃料の双方を発電に用いることができ、一方の燃料停止時にも他方の燃料に切り替えて発電を継続することができる。
【0061】
(2)供給部は、液体流路21とガス流路22とを有する(
図1A、
図1B)。供給部は、切替部により改質器12に供給する燃料をガス燃料から液体燃料に切り替えるとき(
図4のステップS1)、液体燃料を液体流路21に供給し(ステップS2)、ガス流路22を流れるガスの圧力Pが所定圧力P1以上になると(ステップS3)、オートサーマル改質用の空気(改質用空気)をガス燃料とともにガス流路22に供給し(ステップS4)、改質器12の温度Tが所定温度T2以上になると(ステップS5)、ガス燃料の供給を停止する(ステップS6~S8)。このように、水蒸気改質される燃料の増加により改質温度および圧力が上昇してから、改質用空気を供給し、発熱反応である部分酸化改質反応を開始させることで、改質温度および圧力の上昇を緩やかにすることができる(
図5の時刻t1~t3)。
【0062】
(3)供給部は、切替部により改質器12に供給する燃料をガス燃料から液体燃料に切り替えるとき(
図4のステップS1)、液体燃料に含まれる炭素(C)の物質量に対する水(S(Steam))の物質量の比(S/C)が1.5以上、かつ、2.5以下となるように液体燃料を供給し(ステップS2)、液体燃料に含まれる炭素(C)の物質量に対する改質用空気に含まれる酸素(O
2)の物質量の比(O
2/C)が0.3以上、かつ、0.55以下となるように改質用空気を供給する(ステップS4)。
【0063】
S/Cを1.5以上とすることで、水蒸気不足に起因する炭素析出や改質温度過剰による改質器12の酸化劣化を抑制することができる。S/Cを2.5以下とすることで、水蒸気過剰に起因して改質温度が不足することによる発電出力低下やオフガス燃焼器18での失火を抑制することができる。O2/Cを0.3以上とすることで、ガス量不足に起因する蒸発の不安定化による炭素析出や、酸素不足に起因して部分酸化改質反応の発熱量が不足し、水蒸気改質反応が進行し難くなることによる発電出力低下を抑制することができる。O2/Cを0.55以下とすることで、酸素過剰に起因して改質温度が過剰になることによる改質器12の酸化劣化を抑制することができる。
【0064】
(4)供給部は、液体流路21とガス流路22とを有する(
図1A、
図1B)。切替部により改質器12に供給する燃料を液体燃料からガス燃料に切り替えるとき(
図7のステップS10)、液体流路21に供給する水を増量し(ステップS11)、ガス流路22を流れるガスの圧力Pが所定圧力P3以上になると(ステップS12)、ガス燃料をガス流路22に供給し(ステップS13)、改質器12の温度Tが所定温度T4以上になると(ステップS14)、液体燃料の供給を停止する(ステップS15)。このように、水蒸気の増加により改質温度が低下してから、ガス燃料を供給し、改質される燃料を増加させることで、改質温度および圧力の上昇を緩やかにすることができる(
図8の時刻t10~t12)。
【0065】
(5)供給部は、切替部により改質器12に供給する燃料を液体燃料からガス燃料に切り替えるとき(
図7のステップS10)、ガス燃料に含まれる炭素(C)の物質量に対する水(S(Steam))の物質量の比(S/C)が2.5以上、かつ、3.5以下となるように水を増量し(ステップS11)、ガス燃料の物質量が液体燃料の物質量以下となるようにガス燃料を供給する(ステップS13)。S/Cを2.5以上とすることで、水蒸気不足に起因する炭素析出や改質温度過剰による改質器12の酸化劣化を抑制することができる。S/Cを3.5以下とすることで、水蒸気過剰に起因して改質温度が不足することによる発電出力低下やオフガス燃焼器18での失火を抑制することができる。
【0066】
以上の説明はあくまで一例であり、本発明の特徴を損なわない限り、上述した実施形態および変形例により本発明が限定されるものではない。上記実施形態と変形例の1つまたは複数を任意に組み合わせることも可能であり、変形例同士を組み合わせることも可能である。
【符号の説明】
【0067】
10 燃料電池モジュール、11 燃料電池スタック、12 改質器、12a 温度センサ、13 蒸発器、13a 拡散領域、13b 蒸発領域、13c 伝熱部材、14 水ポンプ、15 ガス燃料ポンプ、15a 電磁開閉弁、16,16a,16b 空気ポンプ、17 空気予熱器、18 オフガス燃焼器、18a グロープラグ、19 起動用燃焼器、19a グロープラグ、20 排気触媒、20a ヒータ、21 液体流路、22 ガス流路、22a 圧力センサ、23a 流路、23b 分岐流路、24 電磁開閉弁、25 電磁比例弁、26 分岐流路、27 電磁開閉弁、28 電磁比例弁、29 液体燃料ポンプ、30 コントローラ、100 燃料電池システム