(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024158056
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】傘状構造体
(51)【国際特許分類】
A45B 25/14 20060101AFI20241031BHJP
A45B 25/02 20060101ALI20241031BHJP
A45B 25/06 20060101ALI20241031BHJP
【FI】
A45B25/14 Z
A45B25/02 A
A45B25/06 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023072902
(22)【出願日】2023-04-27
(71)【出願人】
【識別番号】591203831
【氏名又は名称】株式会社マーナ
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100139871
【弁理士】
【氏名又は名称】相良 由里子
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100170634
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 航介
(72)【発明者】
【氏名】谷口 諒太
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 健二
【テーマコード(参考)】
3B104
【Fターム(参考)】
3B104AA07
3B104AA10
3B104QA02
3B104QB01
(57)【要約】
【課題】傘布を内側に巻きこむ際に傘布と親受け骨との接触を少なくできる傘状構造体を提供する。
【解決手段】傘1は、操作部材60が傘軸10に沿って移動することにより、親骨20が親受け骨30を介して操作され、親骨20の露先側先端が傘軸10に対して離間した展開状態と、親骨20の露先側先端が傘軸10に対して近接した収納状態と、を移行可能であり、さらに、展開状態から収納状態に移行する際に、傘布の親骨の間の記張り拡げ部分を親受け骨30の内側に巻き込む巻込機構2を備え、親受け骨30は、半径方向外方に向かって凸な形状である。
【選択図】
図1D
【特許請求の範囲】
【請求項1】
傘軸と、
前記傘軸に対して展開可能な複数の親骨と、
前記親骨の間に張られた傘布と、
前記傘軸に沿って移動可能な操作部材と、
前記操作部材と、前記親骨とを結ぶように設けられた親受け骨と、を備え、
前記操作部材が前記傘軸に沿って移動することにより、前記親骨が前記親受け骨を介して操作され、前記親骨の露先側先端が前記傘軸に対して離間した展開状態と、前記親骨の露先側先端が前記傘軸に対して近接した収納状態と、を移行可能であり、
さらに、前記展開状態から前記収納状態に移行する際に、前記傘布の前記親骨の間の記張り拡げ部分を前記親受け骨の内側に巻き込む巻込機構を備える傘状構造体であって、
前記親受け骨は、半径方向外方に向かって凸な形状である、ことを特徴とする、傘状構造体。
【請求項2】
前記親受け骨は、屈曲部を有し、前記屈曲部よりも前記操作部材に接続される側の部分の前記傘軸に対する角度が、前記屈曲部よりも前記親骨に接続される側の部分の傘軸に対する角度よりも大きい、請求項1に記載の傘状構造体。
【請求項3】
前記親骨が、半径方向外方に向かって凸な形状である、請求項1に記載の傘状構造体。
【請求項4】
前記巻込機構は、前記傘布の前記親骨の間に取付られた布骨を含み、
当該巻込機構は、前記展開状態から前記収納状態への移行時に前記布骨を前記親受け骨の内側に引き込み、前記傘軸を中心として回転することにより前記傘布を巻き込み、
前記傘布は、前記布骨の露先側端部において、当該布骨の軸方向に対して摺動可能に前記布骨に取り付けられている、
請求項1に記載の傘状構造体。
【請求項5】
前記傘布の露先側端部に前記傘軸側が開口するポケット部を有し、
前記布骨の露先側端部端部は、前記傘軸側から前記ポケット部内に挿入されている、
請求項4に記載の傘状構造体。
【請求項6】
前記巻込機構は、前記傘布の前記親骨の間に取付られた布骨と、
前記布骨と前記操作部材とを結ぶように設けられた布受け骨とを含み、
当該巻込機構は、前記展開状態から前記収納状態への移行時に、前記布骨を前記親受け骨の内側に引き込み、前記傘軸を中心として回転することにより前記傘布を巻き込み、
前記布受け骨は、前記布骨に沿ってスライド可能なスライド部材を有し、
前記布受け骨は、前記スライド部材の長手方向中心よりも露先側の位置に回動可能に接続されている、
請求項1に記載の傘状構造体。
【請求項7】
前記布骨は、前記スライド部材の移動範囲を規定する規制部材を有し、前記スライド部材が前記規制部材に当接した状態で前記操作部材を移動させることにより、前記巻込機構が前記張り拡げ部分を巻き込む、
請求項6に記載の傘状構造体。
【請求項8】
前記巻込機構は、前記傘布の前記親骨の間に取付られた布骨と、
前記布骨と前記操作部材とを結ぶように設けられた布受け骨とを含み、
当該巻込機構は、前記展開状態から前記収納状態への移行時に、前記布骨を前記親受け骨の内側に引き込み、前記傘軸を中心として回転することにより前記傘布を巻き込み、
前記布受け骨は、前記布骨に沿ってスライド可能なスライド部材を有し、
前記スライド部材は前記布骨の所定のスライド区間内のみをスライド可能であり、
前記傘布は前記スライド区間外の露先側の取付位置で前記布骨に取り付けられている、
請求項1に記載の傘状構造体。
【請求項9】
前記取付位置は、前記スライド区間の露先側の端部と前記布骨の露先側の端部との間の中央よりも前記スライド区間側の部分に位置する、
請求項8に記載の傘状構造体。
【請求項10】
前記傘布は、前記傘布の外側縁が前記親骨の間で内向きの凹形状である、
請求項1に記載の傘状構造体。
【請求項11】
前記巻込機構は、前記傘布の前記親骨の間に取付られた布骨と、
前記布骨と前記操作部材とを結ぶように設けられた布受け骨とを含み、
当該巻込機構は、前記展開状態から前記収納状態への移行時に、前記布骨を前記親受け骨の内側に引き込み、前記傘軸を中心として回転することにより前記傘布を巻き込み、
前記傘布は、前記傘布の外側縁が前記親骨と前記布骨の間で内向きの凹形状である、
請求項10に記載の傘状構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は傘状構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の傘は閉じた状態で親骨間の傘布は外側に垂れ下がる。このように巻き布が外側に垂れた状態では、傘布についた水滴が衣服に付着するため、使用上、外観上好ましくはない。そこで、従来の傘では、使用後には傘布の外側に垂れる部分を傘軸周りに巻きつけて巻き紐で束ねているが、この巻き付けの際に使用者の手が濡れてしまう。そこで、例えば、特許文献1に記載されているように、発明者らは、親骨間の傘布を傘軸周りに巻きこむことができる傘状構造体を提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、特許文献1に記載された発明では親骨を広げるための親受け骨の内側に傘布を巻きこむが、傘布を巻き込む際に傘布と親受け骨とが接触してしまい、巻き込みがスムーズにできなかったり、傘布が損傷したりする原因となってしまう。
【0005】
本発明は、上記の問題に鑑みなされたものであり、その目的は、傘布を内側に巻きこむ際に傘布と親受け骨との接触を少なくできる傘状構造体を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様によれば、傘軸と、傘軸に対して展開可能な複数の親骨と、親骨の間に張られた傘布と、傘軸に沿って移動可能な操作部材と、操作部材と、親骨とを結ぶように設けられた親受け骨と、を備え、操作部材が傘軸に沿って移動することにより、親骨が親受け骨を介して操作され、親骨の露先側先端が傘軸に対して離間した展開状態と、親骨の露先側先端が傘軸に対して近接した収納状態と、を移行可能であり、さらに、展開状態から収納状態に移行する際に、傘布の親骨の間の記張り拡げ部分を親受け骨の内側に巻き込む巻込機構を備える 傘状構造体であって、親受け骨は、半径方向外方に向かって凸な形状である、ことを特徴とする、傘状構造体、が提供される。
上記の態様によれば、親受け骨が、半径方向外方に向かって凸な形状であるため、傘軸と親受け骨の間の隙間を大きくすることができ、傘布を内側に巻きこむ際に傘布と親受け骨との接触を少なくできる。
【0007】
本発明の一態様によれば、親受け骨は、屈曲部を有し、屈曲部よりも操作部材に接続される側の部分の傘軸に対する角度が、屈曲部よりも親骨に接続される側の部分の傘軸に対する角度よりも大きい。
親受け骨を金属で成形する際に、親受け骨を湾曲形状などに成形する場合には、成形の形状精度が低い。これに対して、上記の態様によれば、親受け骨に屈曲部を設ける構成としたため、成形の形状精度を向上することができる。
【0008】
本発明の一態様によれば、親骨は、半径方向外方に向かって凸な形状である。
上記の態様によれば、収納状態において親骨の露先側の端部が大きく外に広がることを抑制することができ、収納時の傘をコンパクトにすることができるとともに、意匠的にも向上することができる。
【0009】
本発明の一態様によれば、巻込機構は、傘布の親骨の間に取付られた布骨を含み、巻込機構は、展開状態から収納状態への移行時に布骨を親受け骨の内側に引き込み、傘軸を中心として回転することにより傘布を巻き込み、傘布は、布骨の露先側端部において、当該布骨の軸方向に対して摺動可能に布骨に取り付けられている。
親骨と傘布とは展開状態から収納状態の移行時に一体となって移動する。このため、傘布の親骨が取り付けられる部分の長さは、親骨の長さと同じになっている。これに対して、親骨と布骨とを有する傘では、親骨により傘布を張っており、この親骨の間に布骨が配置されるため、布骨と傘布の間にわずかに隙間が生じる。このため、傘布の布骨が取り付けられる部分の長さと、布骨の長さは一致していない。また、布骨は親骨よりも短く、収納状態で親骨の内側に巻き込むため、親骨とは異なる挙動をする。このため、仮に、布骨の先端を傘布に固定してしまうと、収納状態と展開状態との移行の際に、傘布が布骨の移動を拘束してしまい、スムーズな開閉作業を阻害してしまう。これに対して上記の態様によれば、傘布は、布骨の露先側端部において布骨の軸方向に対して摺動可能に布骨に取り付けられているため、収納状態から展開状態へ移行する際に、布骨が傘布に対して摺動することができ、収納状態から展開状態への移行が妨げられることがない。
【0010】
本発明の一態様によれば、傘布の露先側端部に傘軸側が開口するポケット部を有し、布骨の露先側端部端部は、傘軸側からポケット部内に挿入されている。
上記の態様によれば、傘布の露先側端部を布骨に対して摺動可能に取り付けることができる。
【0011】
本発明の一態様によれば、巻込機構は、傘布の親骨の間に取付られた布骨と、布骨と操作部材とを結ぶように設けられた布受け骨とを含み、巻込機構は、展開状態から収納状態への移行時に、布骨を親受け骨の内側に引き込み、傘軸を中心として回転することにより傘布を巻き込み、布受け骨は、布骨に沿ってスライド可能なスライド部材を有し、布受け骨は、スライド部材の長手方向中心よりも露先側の位置に回動可能に接続されている。
本発明の一態様によれば、布骨は、スライド部材の移動範囲を規定する規制部材を有し、スライド部材が規制部材に当接した状態で操作部材を移動させることにより、巻込機構が張り拡げ部分を巻き込む。
本態様による傘状構造体は、布受け骨が布骨に沿ってスライド可能に接続されることにより、布骨が親骨と異なる挙動をすることを可能にしている。そして、スライド部材が規制部材に当接した状態で操作部材を移動させることにより、巻込機構が張り拡げ部分を巻き込む。これに対して、上記の態様によれば、布受け骨は、スライド部材の長手方向中心よりも露先側の位置に回動可能に接続されているため、スライド部材が規制部材に当接するとすぐに、巻き込み機構が駆動され、張り拡げ部分の巻き込みが開始される。
【0012】
本発明の一態様によれば、巻込機構は、傘布の親骨の間に取付られた布骨と、布骨と操作部材とを結ぶように設けられた布受け骨とを含み、巻込機構は、展開状態から収納状態への移行時に、布骨を親受け骨の内側に引き込み、傘軸を中心として回転することにより傘布を巻き込み、布受け骨は、布骨に沿ってスライド可能なスライド部材を有し、スライド部材は布骨の所定のスライド区間内のみをスライド可能であり、傘布はスライド区間外の露先側の取付位置で布骨に取り付けられている。
布骨を巻き込む際に布骨の中間部で傘布に取り付けられていない場合には、傘布を巻き込むことができない。また、傘布の取付位置が、巻き込む際のスライド部材の位置に近いと傘布の張りが巻き込みの際の抵抗として作用してしまう。これに対して、上記の態様によれば、傘布と布骨との取付位置と、スライド部材とを離間させることができるため、スムーズな傘布の巻き込みが可能になる。
【0013】
本発明の一態様によれば、取付位置は、スライド区間の露先側の端部と布骨の露先側の端部との間の中央よりもスライド区間側の部分に位置する。
第1の位置がスライド区間の露先側の端部と布骨の露先側の端部との間の中央よりも露先側であると、傘布を巻き込む際に、傘布を布骨に十分に追従させることができない。これに対して、上記の態様によれば、取付位置が、スライド区間の露先側の端部と布骨の露先側の端部との間の中央よりもスライド区間側の部分に位置するため、確実に傘布を布骨に追従させることができる。
【0014】
本発明の一態様によれば、傘布は、傘布の外側縁が親骨間の間で内向きの凹形状である。
また、親骨の間の傘布の外側縁の部分は、収納状態においても親受け骨の内側に巻き込むことができず、外部に広がってしまい、外観を損なってしまう。これに対して上記の態様によれば、傘布の親骨の間の外側縁が内向きに凹形状になっているため、収納状態における傘布の外側縁の広がりを抑えることができ、外観を向上できる。また、傘布を親受け骨の内側に巻き込む際には、傘布の縁部が親受け骨と干渉しやすい。これに対して、上記の態様によれば、傘布の外側縁が親骨の間で内向きの凹形状であるため、巻き込み時における傘布と親受け骨との干渉を抑制することができる。
【0015】
本発明の一態様によれば、巻込機構は、傘布の親骨の間に取付られた布骨と、布骨と操作部材とを結ぶように設けられた布受け骨とを含み、巻込機構は、展開状態から収納状態への移行時に、布骨を親受け骨の内側に引き込み、傘軸を中心として回転することにより傘布を巻き込み傘布は、傘布の外側縁が親骨と布骨の間で内向きの凹形状である。
上記の態様によれば、傘布の親骨と布骨との間の外側縁が内向きに凹形状になっているため、収納状態における傘布の外側縁の広がりを抑えることができ、外観を向上できる。また、傘布の外側縁が親骨と布骨の間で内向きの凹形状であるため、巻き込み時における傘布と親受け骨との干渉をより抑制することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、傘布を内側に巻きこむ際に傘布と親受け骨との接触を少なくできる傘状構造体が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1A】本実施形態による展開状態の傘の骨組みを示す図である。
【
図1B】本実施形態による展開状態と収納状態の中間の状態の傘の骨組みを示す図である。
【
図1C】本実施形態による展開状態と収納状態の中間の状態の傘の骨組みを示す図である。
【
図1D】本実施形態による収納状態の傘の骨組みを示す図である。
【
図2】本実施形態による収納状態の傘の正面図である。
【
図3A】本実施形態による収納状態からわずかに開いた状態の傘の骨組みを拡大して示す図である。
【
図3B】本実施形態による収納状態の傘の骨組みを拡大して示す図である。
【
図4】本実施形態の傘の骨組みの収納状態と展開状態の中間状における斜視図である。
【
図6A】展開状態における操作部材の斜視図である。
【
図6B】展開状態における操作部材の斜視断面図でる。
【
図6E】展開状態における操作部材の下面図である。
【
図7A】収納状態における操作部材の斜視図である。
【
図7B】収納状態における操作部材の斜視断面図でる。
【
図7E】収納状態における操作部材の下面図である。
【
図10A】中ろくろが下ろくろに対して突出した状態を示す斜視図である。
【
図10B】中ろくろが下ろくろ内に退行した状態を示す斜視図である。
【
図10C】中ろくろが下ろくろ内に退行した状態の水平断面図である。
【
図13D】収納保持部を構成する固定パーツを示す斜視図である。
【
図13E】収納保持部を構成する保護パーツを示す斜視図である。
【
図14】中間保持部の構成を示す鉛直断面図である。
【
図15】本実施形態による展開状態の傘における傘布の一部を拡大して示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の一実施形態について図面を参照しながら、詳細に説明する。以下の説明では、本発明の傘状構造体の一実施形態として手持ちの傘を例として説明するが、本発明はこれに限らず、パラソルなどにも適用できる。なお、以下の説明では、石突きが設けられ、傘を展開状態で使用する際に上方を向く方向を上方といい、ハンドルが設けられ、下方を向く方向を下方という。また、親骨及び布骨の傘軸に接続される側を、上方といい、親骨及び布骨の傘軸と反対側を露先側又は下方という。
【0019】
<全体構成>
図1A~
図1Dは、本実施形態による傘の骨組みを示す図である。
図1Aは傘の展開状態であり、
図1Dは傘の収納状態であり、
図1B及び
図1Cは展開状態と収納状態の中間の状態を示す。なお、
図1A~
図1Dでは、親骨20、親受け骨30、布骨40、及び、布受け骨50については、説明のため一つずつのみ示している。また、
図2は、本実施形態による収納状態の傘の正面図である。また、
図3A及び
図3Bは、本実施形態による傘の骨組みを拡大して示す図であり、
図3Aは収納状態からわずかに開いた状態を示し、
図3Bは収納状態を示す。また、
図4は、本実施形態の傘の骨組みの収納状態と展開状態の中間状における斜視図である。
【0020】
これらの図に示すように、本実施形態の傘1は、骨組みとして、傘軸10と、複数の親骨20と、複数の親受け骨30と、複数の布骨40と、複数の布受け骨50と、操作部材60と、を有する。操作部材60を傘軸10に沿って移動させることにより、傘1を、親骨が傘軸10に対して開いた展開状態と、親骨20が傘軸10に対して閉じた収納状態との間で移行(変形)させることができる。
【0021】
さらに、
図2に示すように、本実施形態の傘1は、骨組みに取り付けられた傘布70を有する。傘布70は展開状態で略正多角形状に形成されており(
図15)、後述するように外周の縁部が凹形状に形成されている。傘布70は、中心が傘軸10の上ろくろ12に固定され、対角線が親骨20に沿うように配置されている。傘布70は、親骨20の露先側の先端部及び中間部において親骨20に取り付けられ、布骨40の露先側の先端部及び中間部において布骨40に取り付けられている。さらに、本実施形態の傘1は、上ろくろ12と、布骨40と、布受け骨50と、スライド部材140と、操作部材60の中ろくろ100及び下ろくろ110を有する巻込機構2を備える。この巻込機構2は、傘1を親骨20が開いて傘布70が親骨20の間の張り拡げ部76(
図15)が張られた展開状態から、親骨20が閉じた収納状態に移行する際に、傘布70の親骨20の間の張り拡げ部76の一部を親受け骨30の内側に巻き込むように構成されている。
【0022】
本実施形態の傘1は、操作部材60を傘軸10の中棒11に沿って石突き側に移動させることにより、上ろくろ12と操作部材60とが近接するため、傘軸10を含む鉛直面内において親受け骨30及び布受け骨50がそれぞれ傘軸10から離間する方向に回動する(すなわち、広がる)とともに、親骨20及び布骨40が傘軸10から離間する方向に回動する(すなわち、広がる)。これにより親骨20及び布骨40が開いて親骨20の間に傘布70の張り拡げ部76が張られた展開状態へ移行することができる。
【0023】
また、操作部材60をハンドル13側に移動させることにより、上ろくろ12と操作部材60とが離間するため、鉛直面内において)親受け骨30及び布受け骨50がそれぞれ傘軸10に近接する方向に回動する(すなわち、閉じる)とともに親骨20及び布骨40が傘軸10に近接する方向に回動する(すなわち、閉じる)。これにより、親骨20及び布骨40が閉じて親骨20の間の傘布70の張り拡げ部76の緊張が解除された収納状態へ移行する。
【0024】
収納状態に移行する際に、操作部材60をハンドル13側へ移動させると、
図1B及び
図1Cに示すように、布骨40及び布受け骨50が親骨20及び親受け骨30よりも内側まで閉じ、隣接する親骨20及び親受け骨30の間に入り込み、傘布70の布骨40が取り付けられた部分を親骨20及び親受け骨30の内側に引き込む。また、操作部材60を所定の位置よりもハンドル13側へ移動させると、操作部材60の中ろくろ61の移動が布受け骨50により拘束される。この状態で、さらに操作部材60をハンドル13側へ移動すると、中ろくろ61が傘軸を中心として回動する。これにより、布骨40及び布受け骨50が傘軸10に対して回動し、傘布70の親骨20の間の張り拡げ部76が布骨40により周方向に引っ張られて親骨20及び親受け骨30の内側に引き込まれる。このようにして、
図3Bに示すような傘1を、傘布70が親骨20及び親受け骨30の内側に引き込まれた収納状態へ移行することができる。
【0025】
以下、本実施形態の傘1の各部の構成について詳細に説明する。
<傘の骨組み>
傘軸10は、例えば、アルミニウムからなる中空の棒状の部材であり、水平断面が全体として略円形であり、一側に長手方向に延びる内方に突出する突部10A(
図13C)が形成されている。傘軸10の先端には石突き17が設けられ、石突き17の下方には円形の上ろくろ12が固定されている。また、傘軸10の下端側にはハンドル13が取り付けられている。上ろくろ12の縁には、親骨20及び布骨40の先端が等しい角度間隔で回動可能に接続されている。
【0026】
図4に示すように、傘軸10の先端側の所定の位置には、操作部材60を展開状態で保持できるように展開保持部15が形成されており、傘軸10の先端側の所定の位置には、操作部材60を展開状態で保持できるように収納保持部14が形成されている。また、傘軸10の展開保持部15と収納保持部14との間には、操作部材60を保持することができるように、中間保持部16が形成されている。
【0027】
親骨20は、展開状態において、平面視で傘軸10から等しい角度間隔で放射状に延びるように設けられている。本実施形態の傘1は、8本の親骨20を有しており、親骨20は周方向に45度間隔で設けられている。ただし、親骨20の本数はこれに限られず、親骨20の間の角度もこれに限れない。親骨20の上端は、中心軸を通る鉛直断面において、上ろくろ12に対して上下方向に回動できるように接続されている。また、親骨20は下方(ハンドル側)に向かって半径方向外方に傾斜するように設けられている。
図1Aに示すように、展開状態では、親骨20は傘軸10に対する角度が大きくなるように広がり、傘布70の張力により傘布70の内面に沿うような湾曲形状となっている。
図1D、
図3A、及び
図3Bに示すように、収納状態では、親骨20は、傘軸10に対する角度が小さくなるように閉じている。
【0028】
また、
図3A及び
図3Bに示すように、親骨20には、長手方向中間に屈曲部20Aが形成されている。なお、この屈曲部20Aは、収納状態、すなわち、外力が作用していない状態において現れるものの、展開状態では傘布70に沿うように湾曲形状に変形してもよい。収納状態において、屈曲部20Aよりも石突き側の上側部20Bと、屈曲部20Aよりも露先側の下側部20Cとは、鉛直断面内においてこの屈曲部20Aにおいて屈曲している。本実施形態では、屈曲部20Aは親骨20の長手方向の略中央に形成されている。上側部20B及び下側部20Cはそれぞれ直線状に延びている。これにより、親骨20は、石突き側の端部における傘軸10(鉛直方向)に対する角度が、露先側(下端側)の端部における傘軸10に対する角度よりも大きくなっている。すなわち、親骨20は全体として外方に凸な形状となっている。本実施形態でいう半径方向外方に向かって凸な形状とは、親骨20の両端部を結んだ直線に対して、親骨20の少なくとも一部が半径方向外方に位置することをいう。本実施形態では、親骨20の両端部を結んだ直線に対して、親骨20の全体が半径方向外方に位置する。なお、本実施形態では、親骨20が中間の屈曲部20Aで屈曲する形状としているが、これに限らず、複数個所で屈曲する形状としたり、全体又は一部を湾曲形状にしたりしてもよく、石突き側の一部における傘軸(鉛直方向)に対する角度が、露先側(下端側)の一部における傘軸10に対する角度よりも大きくなっていればよい。屈曲部20Aを形成する位置としては、親受け骨30に対して接続される位置よりも露先側であることが好ましい。
また、屈曲部20Aにおける曲げ角度(上側部20Bに対する下側部20Cの角度)は、収納状態において下側部20Cが傘軸10と略平行になるような角度が好ましい。屈曲部20Aにおける曲げ角度は、5~15度が好ましく、8~12度がより好ましい。屈曲部20Aの曲げ角度がこの角度範囲よりも小さい場合には、収納状態において親骨20の先端が外方に過度に広がってしまい、この角度範囲よりも大きい場合には、下側部20Cが露先側先端が内向きに傾斜してしまい、意匠的に好ましくなく、親骨20の強度的にも好ましくない。
【0029】
本実施形態のように親骨20及び親受け骨30の内側に傘布70を巻き込む構成の傘では、収納状態において親骨20及び親受け骨30の内側に傘布70を収納するための空間を形成しなければならなく、従来の折りたたんだ状態で傘布70が親骨20の外方に位置する傘よりも収納状態における親骨20の傘軸10に対する角度が大きく、親骨20の露先側先端が半径方向外方に位置しやすい。これに対して、本実施形態のように親骨20に屈曲部20Aを形成することにより、親骨20が半径方向外方に凸な形状となっているため、親骨20及び親受け骨30の内側に傘布70を収納するための空間を設けたとしても親骨20が必要以上に半径方向外方に広がることを抑制することができる。これにより、収納状態において親骨20の露先側の端部が大きく外に広がることを抑制することができ、収納時の傘1をコンパクトにすることができるとともに、意匠的にも向上することができる。特に本実施形態の傘1は、従来の傘のような傘の外周に巻き付けて傘布の広がりを防止するバンドを備えていない。このため、親骨20が直線状であると、収納状態で親骨20の露先側端部がより傘軸から離間して広がってしまう。これに対して、本実施形態の傘によれば親骨20に屈曲部20Aを形成することにより、このような親骨20の広がりを防止できる。
【0030】
親受け骨30は、上方端部が親骨20に回動可能に接続されており、下方端部が操作部材60の下ろくろ62に接続されている。親受け骨30は、各親骨20に対応して設けられている。親受け骨30は、石突き側に向かって半径方向外方に向かって開くように傾斜するように設けられている。本実施形態では、親受け骨30の操作部材60と反対側の先端には、親骨20が回動可能に接続されている。
【0031】
また、親受け骨30は、収納状態において、長手方向中間部、本実施形態では操作部材60側の端部近傍に屈曲部30Aが形成されており、屈曲部30Aよりも親骨20側の上側部30Bと、屈曲部30Aよりも操作部材60側の下側部30Cとが鉛直断面内において屈曲部30Aにおいて屈曲している。この屈曲部30Aは親受け骨30の長手方向中央よりも操作部材60側の位置に形成されている。これにより、親受け骨30は、操作部材60に接続される側の部分の傘軸10に対する角度が、親骨20に接続される側の部分の傘軸10に対する角度よりも大きくなっている。すなわち、親受け骨30は全体として半径方向外方に向かって凸な形状となっている。本実施形態でいう半径方向外方に向かって凸な形状とは、親受け骨30の両端部を結んだ直線に対して、親受け骨30の少なくとも一部が半径方向外方に位置することをいう。本実施形態では、親受け骨30の両端部を結んだ直線に対して、親受け骨30の全体が半径方向外方に位置する。なお、本実施形態では、親受け骨30が中間の屈曲部30Aのみで屈曲する形状としているが、これに限らず、複数個所で屈曲する形状としたり、湾曲形状にしたりしてもよく、操作部材60に接続される側の一部における傘軸(鉛直方向)に対する角度が、親骨20に接続される側の一部における傘軸10に対する角度よりも大きくなっていればよい。
【0032】
本実施形態では、親受け骨30の屈曲部30Aにおける曲げ角度(上側部30Bと下側部30Cの角度)は、好ましくは3~15度であり、より好ましくは5~12度である。屈曲角度がこの範囲よりも大きすぎると、収納状態への移行時に親骨20を半径方向内側に引き込む力が小さくなる。また、屈曲角度がこの範囲よりも小さいと親受け骨30の内側に傘布70を巻き込むための十分な空間を確保することができなくなる。
【0033】
上記の構成によれば、親受け骨30が、操作部材60に接続される側の部分の傘軸10に対する角度が、親骨20に接続される側の部分の傘軸10に対する角度よりも大きくなるように構成されているため、親受け骨30が半径方向外方に向かって凸な形状となる。これにより、傘軸10と親受け骨30の間の隙間を大きくすることができ、傘布70を内側に巻きこむ際に傘布70と親受け骨30との接触を少なくできる。特に、本実施形態では、屈曲部30Aを形成する構成としているため、下側部30Cにおいてハンドル側で十分に拡径することができ、ハンドル側の端部においても親受け骨30内側に広い空間を形成することができる。さらに、親受け骨30を金属で成形する際に、親受け骨30を湾曲形状などに成形する場合には、成形の形状精度が低い。これに対して、本実施形態によれば、親受け骨30に屈曲部30Aを設ける構成としたため、成形の形状精度を向上することができる。
【0034】
なお、本実施形態では、親受け骨30に屈曲部30Aを形成することとしているが、これに限らず、複数の屈曲部30Aを設けたり、親受け骨30の一部又は全体を湾曲形状としてもよい。ただし、本実施形態では、屈曲部30Aを形成することにより、所望の形状に成形しやすいという利点がある。例えば、親受け骨30を湾曲形状にする場合には、親受け骨30を曲げ加工する際の再現性が高くない。これに対して、本実施形態では、屈曲部30Aを形成する構成としているため、正確な曲げ可能が可能になる。
【0035】
布骨40は、断面円形の棒状部材であり、平面視において傘軸10から等しい角度間隔で放射状に延びるように設けられている。本実施形態の傘1は、8本の布骨40を有しており、布骨40は45度間隔で設けられている。また、布骨40は平面視において親骨20の間の中央を延びるように設けられている。すなわち、親骨20と布骨40との間隔は22.5度になっている。布骨40の上端は、傘軸10を通る鉛直断面において、上ろくろ12に上下方向に回動可能に接続されている。布骨40は、ハンドル側に向かって半径方向外方に開くように設けられている。布骨40は、収納状態で略直線状に延び、展開状態で隣接する親骨20によって張られた状態の張り拡げ部76(
図15)の内面に沿うように湾曲して延びる。
【0036】
布受け骨50は、以下に詳細に説明するように、上方端部が布骨40の中間部にスライド部材140を介して、摺動可能かつ回動可能に接続されており、下方端部が操作部材60の中ろくろ61に回動可能に接続されている。布受け骨50は、各布骨40に対応して設けられている。布受け骨50は、略直線状に延びており、石突き側に向かって半径方向外方に向かって開くように傾斜して設けられている。
【0037】
<スライド部材>
図5Aは、布骨と布受け骨の接続部を示す図であり、
図5Bは、スライド部材を拡大して示す図であり、
図5Cは
図5BにおけるC-C断面図である。
図5A~
図5Cに示すように、布受け骨50の露先側の先端には、スライド部材140が回動可能に接続されており、このスライド部材140が布骨40に摺動可能に取り付けられている。
【0038】
本実施形態において、布骨40に対してスライド部材140を介して布受け骨50を接続しているのは、以下の理由からである。
布骨40は親骨20によって張られた傘布70の中間に張られている。このため、展開状態における傘軸10に対する親骨20の角度と、傘軸10に対する布骨40の角度は異なっている。また、親受け骨30の操作部材60への接続位置と、布受け骨50の操作部材60への接続位置は異なっている。これらの理由から、収納状態から展開状態への移行時における親骨20及び親受け骨30の挙動と、布骨40及び布受け骨50の挙動とは異なっている。このため、布骨40に布受け骨50を単に回動可能に接続してしまうと、布骨40と布受け骨50の挙動が阻害されてしまう。このため、本実施形態では、布骨40に対してスライド部材140を介して布受け骨50を接続している。
【0039】
スライド部材140は、例えば、ABS樹脂などの弾性変形可能な樹脂により形成されている。スライド部材140は、布骨40が接続される摺動接続部141と、布受け骨50が接続される回動接続部142とを有する。摺動接続部141は、半径方向外方が開口する保持溝141Aを有する。保持溝141Aは、溝の底部に位置する断面円形の円形断面部141Bと、円形断面部141Bに傘軸10から離間する方向(半径方向外方)に連続する幅が一定の一定幅部141Cと、一定幅部141Cに連続して半径方向外方に向かって幅が広がる拡幅部141Dとを有する。布骨40は保持溝141Aの円形断面部141B内に位置しており、これによりスライド部材140は布骨40に沿って摺動可能に接続されている。本実施形態では、布骨40の直径が1.6mmであり、円形断面部141Bの内径が1.8mmとなっている。このように、円形断面部141Bの直径が、布骨40の直径よりも0.2mm大きいため、スライド部材140が布骨40に対してスムーズに摺動することができる。なお、スムーズに摺動可能であるためには、円形断面部141Bの直径が、布骨40の直径よりも0.1mm~0.3mm程度大きいことが好ましい。
【0040】
また、拡幅部141Dは、半径方向外方に向かって幅が広がるように形成されている。拡幅部141Dの半径方向内方端における幅は、0.8mmとなっている。布骨40にスライド部材140を取り付ける際には、拡幅部141Dの開口する側から布骨40を保持溝141Aに押し込む。これにより、摺動接続部141を構成する樹脂が弾性変形して広がり、布骨40を円形断面部141B内に配置することができる。このように、布骨40の直径に対する拡幅部141Dの半径方向内方端における幅の比は、0.5倍程度が好ましくは、0.3~0.7倍程度が好ましい。この比の上限値よりも大きい場合には、布骨40がスライド部材140から離脱する可能性があり、この比の上限値よりも小さい場合には、布骨40を取り付けるのに大きな力が必要になったり、スライド部材140が破損する可能性がある。
【0041】
回動接続部142は、摺動接続部141から半径方向内側に向けて立設された一対の板状部142Bを備える。これら一対の板状部142Bは、周方向に間隔をあけて平行に立設されている。布受け骨50は先端部に貫通孔を有する。布受け骨50の先端部が一対の板状部142B内に配置された状態で、貫通孔を挿通するように一対の板状部142Bの間にピン142Aが固定されることにより、布受け骨50は、スライド部材140に対して回動可能に接続されている。
【0042】
また、回動接続部142は、摺動接続部141の露先側の端部に立設されている。これにより、スライド部材140は全体として略L字状になっている。このように、回動接続部142が摺動接続部141の露先側の端部に立設されているため、展開状態から収納状態へ移行する際に、スライド部材140が下方の規制部材143Bに当接すると、すぐに回動接続部142の移動が拘束されるため、スムーズに下ろくろ110に対する中ろくろ100の軸方向の移動が開始される。なお、本実施形態では、回動接続部142を摺動接続部141の露先側の端部に立設し、スライド部材140を全体としてL字状としているが、本発明はこれに限られない。回動接続部142は、摺動接続部141の布骨40の延びる方向の中心よりも露先側に設けられていればよい。
【0043】
また、布骨40には、スライド部材140の移動範囲を規制するための上方及び下方の規制部材143A、143Bが取り付けられている。上方及び下方の規制部材143A、143Bは、それぞれ例えば布骨40に固定された円柱状の樹脂製の部材からなる。布骨40に上方及び下方の規制部材143A、143Bが取り付けられていることにより、布骨40におけるスライド部材140のスライド可能なスライド区間が所定の範囲内に規制される。
【0044】
本実施形態では、操作部材60を傘軸10に沿って移動させると、親骨20及び布骨40が上ろくろ100を中心として回動する。また、操作部材60を傘軸10に沿って移動させると、中ろくろ100が下ろくろ110に対して軸方向に移動し、これにより中ろくろ100が下ろくろ110に対して回動する。これにより、布骨40及び布受け骨50が中ろくろ100とともに回動し、傘布70を親骨20及び親受け骨30の内側に巻き込む。本実施形態の傘1では、上方及び下方の規制部材143A、143Bは、布骨40におけるスライド部材140の可能範囲を規制することにより、操作部材60を傘軸10に沿って移動させた際に、中ろくろ100を下ろくろ110に対して軸方向に移動させることを可能にしている。
【0045】
展開状態から操作部材60を傘軸10に沿って下方に移動させると、中ろくろ100及び下ろくろ110は下方に移動する。これにより、上ろくろ12と中ろくろ100の間の距離、及び、上ろくろ12と下ろくろ110の間の距離が長くなる。また、この際、スライド部材140が布骨40に沿って露先側に摺動するため、中ろくろ100と下ろくろ110とは傘軸10に沿った方向に相対移動することなく、ハンドル側に移動する。これにより、親受け骨30及び布受け骨50により親骨20及び布骨40が傘軸10に向かって、すなわち、半径方向中心に向かって回動する。このように親骨20が閉じることにより、親骨20の間に張られた傘布70にたるみが生じるようになる。
【0046】
そして、スライド部材140が下方の規制部材143Bに当接する。スライド部材140が下方の規制部材143Bに当接した状態で、さらに、操作部材60を下方に移動させると、スライド部材140の移動が規制されるため、中ろくろ100の下方への移動距離が、下ろくろ110の下方への移動距離よりも小さくなる。これにより、中ろくろ100が下ろくろ110に対して上方に引き上げられる。中ろくろ100と下ろくろ110とは螺合しているため、中ろくろ100が下ろくろ110に対して上方に相対移動することにより、中ろくろ100が回動する。これにより、中ろくろ100とともに布骨40が傘軸を中心として回動し、傘布70が布骨40に沿って親骨20及び親受け骨30の半径方向内側に引き込まれる。これにより、傘1を収納状態とすることができる。
【0047】
また、収納状態から操作部材60を上方に向かって移動させると、下ろくろ110が上方に移動することにより親骨20が親受け骨30を介して半径方向外方に広がるように回動する。また、これと同時に、下ろくろが上方に移動し、中ろくろ100と下ろくろ110が近接するような力が作用する。このように親骨20が広がるとともに、中ろくろ100及び下ろくろ110が近接することにより、傘布70が親骨20及び親受け骨30の内側から引き出される。
【0048】
さらに、操作部材60を上方に移動することにより、親骨20が親受け骨30を介して拡げられて半径方向外方に回動するとともに、上方の規制部材143Aによりスライド部材140の移動が規制されているため、布骨40が布受け骨50を介して半径方向外側に拡げられて半径方向外方に回動する。この際、仮に上方の規制部材143Aがない場合には、スライド部材140が過度に石突き側に摺動してしまい、傘1の展開動作が阻害されてしまうことがある。これに対して、上方の規制部材143Aがスライド部材140の移動範囲を規制することにより、傘1のスムーズな展開動作が確保されている。
【0049】
このように、本実施形態による、傘1は、布受け骨50が布骨40に沿ってスライド可能に接続されることにより、布骨40が親骨20と異なる挙動をすることを可能にしている。そして、スライド部材140が上方の規制部材143Aに当接した状態で操作部材60を移動させることにより、巻込機構2が張り拡げ部分を巻き込む。これに対して、本実施形態によれば、布受け骨50は、スライド部材140の長手方向中心よりも露先側の位置に回動可能に接続されているため、スライド部材140が上方規制部材143Aに当接するとすぐに、巻込機構2が駆動され、張り拡げ部分の巻き込みが開始される。
【0050】
<操作部材>
図6A~
図6Eは、それぞれ展開状態における操作部材の斜視図、斜視断面図、側面図、
図6CにおけるD-D断面図、及び下面図である。
図7A~
図7Eは、それぞれ収納状態における操作部材の斜視図、斜視断面図、側面図、
図7CにおけるD-D断面図及び下面図である。また、
図8A~
図8Cは、それぞれ中ろくろの正面図、側面図、及び水平断面図であり、
図9A及び
図9Bは、それぞれ下ろくろの鉛直断面図及び
図9AにおけるB-B断面図である。また、
図10A~
図10Cは、それぞれ中ろくろが下ろくろに対して突出した状態を示す斜視図と、中ろくろが下ろくろ内に退行した状態を示す斜視図、中ろくろが下ろくろ内に退行した状態の水平断面図である。
【0051】
操作部材60は、中ろくろ100と、下ろくろ110と、把持部材120と、を備える。中ろくろ100は全体として略円筒状であり、内側を傘軸10が挿通している。下ろくろ110は、全体として略円筒状であり、中ろくろ100の外周を包囲するように設けられている。把持部材120は、全体として略円筒状であり、下ろくろ110の外周を包囲するように設けられている。
【0052】
中ろくろ100は軸方向に延びる円柱状の貫通孔100Aを有し、この貫通孔100Aを傘軸10が挿通している。これにより、中ろくろ100は傘軸10に対して軸方向移動可能であるとともに、周方向に回動可能に傘軸10に取り付けられている。中ろくろ100は、上側に位置する布受け骨ガイド部101と、下側に位置する螺条部103と、布受け骨ガイド部101と螺条部103との間の布骨接続部102と、を有する。
【0053】
布骨接続部102には、布骨40の端部が周方向に等しい角度間隔で回動可能に接続される。布骨40には、石突き側に向かって径方向外方に向かうように傾斜した状態で布骨40に接続されている。布骨接続部102には各布骨40に対応する位置に軸方向に延び、半径方向外方及び石突き側が開口する切欠き102Aが形成されており、この切欠き102A内に布骨40の端部を配置した状態で、布骨40の端部が回動可能に保持されている。
【0054】
布受け骨ガイド部101は、各布骨40に対応するように形成された複数のガイド溝101Aを有する。各ガイド溝101Aは、外周面に等しい角度間隔で形成されており、軸方向(上下方向)に延びている。各ガイド溝101Aは、半径方向外周面に開口するとともに、中ろくろ100の石突き側の端面に開口している。
【0055】
螺条部103は、外周面が布骨接続部102及び布受け骨ガイド部101よりも小径になっている。螺条部103の外周面には、半径方向外方に突出するように複数の螺条凸部103Aが形成されている。螺条凸部103Aは中ろくろ100の中心軸周りに間欠的な螺旋状に形成されている。螺条凸部103Aは、平面視において対向する部分に、螺旋の中心軸に対して所定の角度範囲にわたって形成されており、その他の角度範囲には形成されていない。各螺条凸部103Aが形成された角度範囲は60~90度であるのが好ましい。この角度範囲よりも小さい場合には、中ろくろ100の下ろくろ110に対する軸方向の進出がスムーズにいかなくなり、この角度範囲よりも大きい場合には、中ろくろ100の下ろくろ110の回動の抵抗が大きくなり、スムーズな回動が阻害される。
【0056】
下ろくろ110は軸方向に延びる円柱状の貫通孔110Aを有し、この貫通孔110Aの上部に中ろくろ100の下部が入り込むとともに、傘軸10が挿通している。また、下ろくろ110の貫通孔内の一側には突出部119(
図7E)が形成されており、この突出部119が傘軸10の突部10A内に位置している。これにより、下ろくろ110は傘軸10に対して軸方向移動可能であるとともに、周方向の回動が拘束された状態となっている。
【0057】
下ろくろ110は、上端に他の部分よりも外径が大きいフランジ部113が形成されており、このフランジ部113に親骨接続部111が形成されている。親骨接続部111には、親骨20の端部が等しい角度間隔で回動可能に接続される。親骨20は、石突き側に向かって径方向外方に向かうように傾斜した状態で親骨20に接続されている。親骨接続部111には各親骨20に対応する位置に軸方向に延び、半径方向外周面及び石突き側の端面に開口する切欠きが形成されており、この切り欠き内に親骨20の端部を配置した状態で、親骨20の端部が回動可能に保持されている。
【0058】
また、下ろくろ110の貫通孔の内面には、螺条部112が形成されている。螺条部112の内周面には、半径方向内方に向かって突出する連続する螺旋状の螺条凸部112Aが形成されている。下ろくろ110の螺条凸部112Aの形状は、中ろくろ100の螺条凸部103Aと螺合可能な相補的形状に形成されている。
【0059】
中ろくろ100は下方の部分が下ろくろ110の上部の貫通孔110A内に位置するように配置されている。そして、中ろくろ100の貫通孔の螺条部103に形成された螺条凸部103Aは、下ろくろ110の貫通孔110Aの内面の螺条部112に形成された螺条凸部112Aと螺合している。これにより、中ろくろ100が下ろくろ110に対して軸方向に相対的に移動すると、中ろくろ100が下ろくろ110に対して回動する。
【0060】
本実施形態では、中ろくろ100の螺条部103の螺条凸部103Aを間欠的に形成しているが、これに限らず、下ろくろ110の螺条部112の螺条凸部112Aを間欠的に形成してもよく、中ろくろ100の螺条凸部103A及び下ろくろ110の螺条凸部112Aの両者を間欠的に形成してもよい。また、本実施形態では、布受け骨50が接続される中ろくろ100が半径方向内側に位置する構成としたが本発明はこれに限られない。例えば、布受け骨50が接続される中ろくろを外ろくろの半径方向外側に配置する構成とすることも可能である。この場合には、中ろくろの外周面に形成された螺条部と、外ろくろの内周面に形成された螺条部の少なくともいずれか一方を間欠的に形成すればよい。
【0061】
このように、中ろくろ100の螺条部103の螺条凸部103Aを間欠的に形成することにより、中ろくろ100の螺条凸部103Aと、下ろくろ110の螺条凸部112Aとの接触面積を抑えることができる。上記の通り、展開状態から収納状態への移行時には、スライド部材140が下方の規制部材143Bに当接することにおり、中ろくろ100が下ろくろ110に対して引き上げられ、これにより中ろくろ100が回転する。この際、中ろくろ100の螺条凸部103Aと、下ろくろ110の螺条凸部112Aとの接触面積が大きいと、下ろくろ110に対する中ろくろ100のスムーズな回転が阻害されるとともに、下方の規制部材143Bに過大な力が作用してしまう。これに対して、本実施形態によれば、中ろくろ100の螺条凸部103Aを間欠的に形成するすることにより、中ろくろ100が下ろくろ110に対してスムーズに回転し、さらに、下方の規制部材143Bに過大な力が作用するのを防止することができる。
【0062】
さらには、傘1が濡れてしまうと、中ろくろ100の外周面と下ろくろ110の内周面との間に雨水が入り込むことがある。このように中ろくろ100と下ろくろ110の間に雨水が入り込むと、再度傘を使用する際に手にたれるなど使用者の不快感につながる。中ろくろ100及び下ろくろ110の螺条が連続的であると、中ろくろ100と下ろくろ110の間の隙間が小さいため、中に入り込んだ雨水がなかなか排出されないという問題があった。これに対して、本実施形態によれば、中ろくろ100の螺条部103の螺条凸部103Aを間欠的に形成することにより、中ろくろ100と下ろくろ110との間の隙間が大きくなり、入り込んだ雨水が外部に排出されやすくなるとともに、このような雨水が容易に蒸発するようになる。特に、本実施形態では、螺条凸部103Aが螺旋の中心軸に対して所定の角度範囲にわたって形成されているため、螺条凸部103Aが形成されていない部分が軸方向に連続するため、内部に入り込んだ雨水が容易に排出される。
【0063】
また、収納状態から展開状態への移行する際には、まず、
図10Aに矢印で示すように、布受け骨50が上方に向かって傘軸10と平行になるまで回動し、折りたたまれる。これにより、布受け骨50が布受け骨ガイド部101のガイド溝101A内に収容される。このように布受け骨50がガイド溝101A内に収容された後、中ろくろ100が下ろくろ110に対して周方向に回動を開始し、布受け骨50が中ろくろ100とともに周方向に回動する。このように布受け骨50の基端部がガイド溝101A内に収容されることにより、布受け骨50の基端部(中ろくろ100に接続された側の端部)がガイド溝101Aにより支持されるため、布受け骨50に過度な力が作用することを防止できる。
【0064】
また、これとは逆に、展開状態から収納状態へ移動する際には、まず、中ろくろ100が布受け骨50とともに下ろくろ110に対して回動し、その後、布受け骨50が半径方向外方に向かって回動する。中ろくろ100が布受け骨50とともに回動する際には、布受け骨50が布受け骨ガイド部101のガイド溝101A内に収容されている。これにより、収納状態から展開状態へ移行する際にも、布受け骨50の基端部(中ろくろ100に接続された側の端部)がガイド溝101Aにより支持されるため、布受け骨50に過度な力が作用することを防止できる。
【0065】
なお、中ろくろ100が回転を開始するタイミングや、収納状態における布受け骨50の角度などは、布受け骨50の長さや、規制部材143A、143Bの位置を布骨40に沿って変更することにより調整することができる。
【0066】
このように、本実施形態によれば、布受け骨50が折りたたまれて回転する際に、布受け骨がガイド溝101Aにより支持されるため、布受け骨50がガイド溝101Aの内面により支持されるため、布受け骨50に過度な力が作用することを防止できる。さらに、本実施形態によれば、ガイド溝101A内に布受け骨50が収容されることにより、布受け骨50の両側を支持することができ、強固に布受け骨50を支持することができる。
【0067】
また、
図9A及び
図9Bに示すように、下ろくろ110の下部には一側に向かって開口する開口部114が形成されている。開口部114は水平断面において奥部が円弧状であり、両側が平行な断面形状になっている。また、開口部114の軸方向の中心高さには開口部114の内面に沿って所定の幅の仕切板115が立設されている。開口部114の仕切板115の上下には、それぞれロック部材130が配置されている。
【0068】
また、下ろくろ110の開口部114が開口する側の面には、下端から延びるようにガイド凹部116が形成されている。ガイド凹部116は軸方向に延びる溝からなり、開口部114を超えて下ろくろ110の中間高さまで延びている。また、ガイド凹部116の下端にはフラップ117が形成されている。フラップ117は下端が固定され、軸方向に延びる片持ち梁状に支持された部分である。フラップ117は半径方向外方の面が上方に向かって外側に広がるように傾斜し、ガイド凹部116内に突出している。
【0069】
把持部材120は、上端部に上方に向かって拡径する拡径部121が形成されており、拡径部121の下方は一定の径になっている。また、把持部材120の内周面の一側には周方向に所定の幅を有し、軸方向に所定の長さを有するガイド凸部122が形成されている。ガイド凸部122の水平断面形状は矩形であり、下ろくろ110のガイド凹部116の水平断面形状に対応している。ガイド凸部122の長さは、下ろくろ110に対する把持部材120の軸方向の可動範囲に応じて決定されている。ガイド凸部122の下端面は略水平になっている。また、ガイド凸部122の中間には、凹部123が形成されている。凹部123の軸方向上端及び下端は傾斜面になっている。
【0070】
組立状態において、
図6B及び
図7Bに示すように、把持部材120は、ガイド凸部122が、下ろくろ110のガイド凹部116内に位置している。これにより、把持部材120の下ろくろ110に対する軸方向の移動が案内されるとともに、下ろくろ110に対する回動が拘束される。また、下ろくろ110に対して把持部材120を上方に移動すると、下ろくろ110のフランジ部113に把持部材120の上面が当接する。これにより、把持部材120の下ろくろ110に対する移動範囲の上端が規定される。
【0071】
また、組立時には、下ろくろ110を把持部材120の上方から貫通孔内に挿入する。これにより、下ろくろ110のフラップ117が内方に湾曲した状態で把持部材120のガイド凸部122を乗り越えて、ガイド凸部122の下方に位置する。これにより、把持部材120を下ろくろ110に対して下方に移動すると、フラップ117がガイド凸部122の下面と係合する。これにより、把持部材120の下ろくろ110に対する移動範囲の下端が規定される。このように、本実施形態では、上端位置では把持部材120の拡径部121と下ろくろ110のフランジ部113とが係合して、これが把持部材120の下ろくろ110に対する移動範囲の上端を規定する。また、下端位置では、下ろくろ110のフラップ117が把持部材120のガイド凸部122の下面と係合し、これが把持部材120の下ろくろ110に対する移動範囲の下端を規定する。すなわち、これらの構成が把持部材120の下ろくろ110の移動範囲を規定する規制構造として機能する。さらに、本実施形態では、ねじやボルトなどの他の部材を用いることなく、フラップ117とガイド凸部122の係合により、把持部材120が下ろくろ110に対して離脱できない状態、すなわち、嵌め殺し状態となっている。
【0072】
本実施形態によれば、嵌め殺しにより把持部材120の下ろくろ110の移動範囲が規定されており、ボルトを用いていないため、意匠的に向上することができるとともに、ボルトの腐食などによる劣化を防止できる。
また、下ろくろ110は貫通孔内に突出可能な上方及び下方のロック部材130を有する。
図11は、ロック部材の構成を示す斜視図である。
図11では、中ろくろ、下ろくろ、及び把持部材を省略している。
図11に示すように、ロック部材130は、傘軸10を包囲するように配置された第1の支持部材131及び第2の支持部材132と、これら第1の支持部材131及び第2の支持部材132により支持されたロックリング133とを有する。第1の支持部材131及び第2の支持部材132は例えばABS樹脂などにより形成されている。第1の支持部材131はU字型に形成されており、第2の支持部材132は円弧状に形成されている。第1の支持部材131と第2の支持部材132とが組み合わさることによりロック部材130は傘軸10を包囲するような環状な形状になっている。上方のロック部材130の第1の支持部材131の上面及び下方のロック部材130の第1の支持部材131の下面には、内縁に沿ってロックリング133に合わせた切欠きが形成されている。第1の支持部材131の湾曲した部分の外周面には、円柱状の凹部131Aが形成されている。
【0073】
また、第2の支持部材132の外周側には突出部132A(
図6B、
図7B)が形成されている。上方のロック部材130を構成する第2の支持部材132の突出部132Aの半径方向外周面の上部は、上方に向かって内側に傾斜している。また、下方のロック部材130を構成する第2の支持部材132の突出部132Aの半径方向外周面の下部は下方に向かって内側に傾斜している。
【0074】
図12は、ロックリングを示す斜視図である。
図12に示すように、ロックリング133は、略U字形に形成された板材からなる。第1の支持部材131及び第2の支持部材のロックリング133の材料はそれぞれ、対応する展開保持部15及び収納保持部14の保護パーツ71と同一の材料からなり、本実施形態では銅からなる。ロックリング133は、U字形の基部133Aと、U字形の基部133Aの湾曲部の中央から傘軸10に向けて半径方向内方に突出する係合部133Bとを備える。
【0075】
上方のロック部材130では、第1の支持部材131の上面の内縁に沿ってロックリング133が取り付けられており、下方のロック部材130では第1の支持部材131の下面の内縁に沿ってロックリング133が取り付けられている。組立状態では、第1の支持部材131の湾曲部が下ろくろ110の開口部114の奥側に位置し、第2の支持部材132が開口部114の手前側に位置するように、第1の支持部材131及び第2の支持部材132が配置されている。また、組立状態では、第1の支持部材131の凹部131A内に収縮状態のばね134(
図6D、
図7D)が配置されており、これにより上方及び下方のロック部材130が一側(
図6D、
図7Dの右側)に向かって付勢される。
【0076】
<収納保持部、中間保持部、展開保持部>
図13A~
図13Eは、収納保持部の構成を説明するための図であり、
図13Aは収納保持部の斜視図、
図13Bは収納保持部の正面図、
図13Cは
図13BにおけるC-C断面図、
図13Dは収納保持部を構成する固定パーツを示す斜視図、
図13Eは収納保持部を構成する保護パーツを示す斜視図である。
図13A~
図13Cに示すように、収納保持部14は傘軸10内に保護パーツ71を保持した固定パーツ72がはめ込まれることにより構成されている。傘軸10の一側には開口73が形成されている。開口73は、連続するハンドル13側の幅広の長方形状の部分と、石突き側の幅狭の長方形状の部分とから構成されている。
【0077】
固定パーツ72は、水平断面形状が傘軸10の内面形状と同一形状の柱体状の部材からなり、一側に溝部72C(
図13C)が形成されている。固定パーツ72の開口側の面には直方体状の凹部72Aが形成されている。さらに、固定パーツ72の凹部72Aの高さ方向中央には水平に延びる貫通孔72Bが形成されている。貫通孔72Bは側方視において長方形状である。
【0078】
保護パーツ71は、基部71Aと突出部71Bとを有する板状の部材である。保護パーツ71は、例えば、銅などのアルミニウムよりも剛性の高い材料からなる。保護パーツ71を構成する材料は、操作部材60のロックリング133と同じ材料により形成されている。基部71Aは両側辺が平行に形成され、前面及び後面が傘軸10の内面に合わせた円弧状となっている。突出部71Bは両側辺が平行に形成され、前面が傘軸10の外面に合わせた円弧状となっている。
【0079】
保護パーツ71は、固定パーツ72の貫通孔72B内に基部71Aが挿入された状態で固定パーツ72を傘軸10にかしめ固定することにより傘軸10に固定されている。固定された状態で、固定パーツ72の凹部72Aが傘軸10の開口73を通じて外部に露出している。また、固定された状態で、保護パーツ71の突出部71Bが傘軸10の開口73の幅狭の長方形状の部分内に位置している。これにより、保護パーツ71の基部71Aの突出部71B側の縁が開口73の縁に係合し、保護パーツ71の離脱を防止できる。
【0080】
なお、
図13A~
図13Eを参照して、収納保持部14の構成について説明したが、展開保持部15の構成は、収納保持部14と上下対称であるため、詳細な説明は省略する。
【0081】
図6A~
図6Eに示すように、把持部材120を保持して、操作部材60を上方に移動する際には、把持部材120の上面が下ろくろ110のフランジ部113に当接する上端位置となる。この状態では、上方のロック部材130の第2の支持部材132の突出部132Aが把持部材120の凹部123と水平方向に並ぶことになる。この状態で、操作部材60を、上方のロック部材130が、展開保持部15の高さとなるまで移動させることにより、上方のロック部材130のロックリング133の係合部133Bが、上方のロック部材130がばね134により側方に付勢されて、展開保持部15の開口部内に入りこむ。これにより、上方のロック部材130のロックリング133の係合部133Bと、展開保持部15の保護パーツ71とが当接し、操作部材60が傘軸10に対して固定される。
【0082】
この状態から、把持部材120を下降させることにより、把持部材120が下ろくろ110に対して下方に移動し、下端位置となる。これにより、
図6B及び
図6Dに示すように、上方のロック部材130の第2の支持部材132の突出部132Aがガイド凸部122により側方に押圧され、上方のロック部材130がばね134を圧縮しながら側方に移動し、上方のロック部材130のロックリング133の係合部133Bと、展開保持部15の保護パーツ71との係合が解除される。
【0083】
そして、
図7A~
図7Eに示すように、把持部材120を保持して、操作部材60を下方に移動する際には、把持部材120のガイド凸部122が下ろくろ110のフラップ117と当接する下端位置となる。この状態では、下方のロック部材130の第2の支持部材132の突出部132Aが把持部材120の凹部123と水平方向に並ぶことになる。この状態で、操作部材60を、下方のロック部材130が、収納保持部14の高さとなるまで移動させることにより、下方のロック部材130のロックリング133の係合部133Bが、上方のロック部材130がばね134により側方に付勢されて、収納保持部14の開口部内に入りこむ。これにより、下方のロック部材130のロックリング133の係合部133Bと、収納保持部14の保護パーツ71とが当接し、操作部材60が傘軸10に対して固定される。
【0084】
この状態から、把持部材120を上昇させることにより、把持部材120が下ろくろ110に対して上方に移動し、上端位置となる。これにより、
図7B及び
図7Dに示すように、下方のロック部材130の第2の支持部材132の突出部132Aがガイド凸部122により側方に押圧され、下方のロック部材130がばね134を圧縮しながら側方に移動し、下方のロック部材130のロックリング133の係合部133Bと、収納保持部14の保護パーツ71との係合が解除される。
【0085】
このように、保護パーツ71と、ロックリング133と同じ材料により形成されているため、長期間にわたって使用してもこれら保護パーツ71と、ロックリング133のすり減りや破損を抑制することができる。
【0086】
図14は、中間保持部の構成を示す鉛直断面図である。
図14に示すように、中間保持部16は、傘軸10内に配置された突出部材75を有する。傘軸10の中間保持部16に当たる位置には、円形の開口10Bが形成されている。突出部材75は、板バネ部75Aと、板バネ部75Aに接続された突出部75Bとを備える。突出部75Bは、例えば、略半球状である。突出部材75は、板バネ部75Aが傘軸10の内側に配置され、突出部75Bが傘軸10の開口10B内に配置されている。板バネ部75Aが突出部75Bを付勢することにより、突出部75Bは傘軸10の開口10Bから側方に突出した状態で保持される。また、突出部75Bは押圧されることにより、板バネ部75Aが収縮して傘軸10内まで退行する。
【0087】
操作部材60を傘軸10に沿って移動させて、操作部材60の開口部114が中間保持部16に当たる高さまで移動すると、開口部114内に突出部材75の突出部75Bが進出する。これにより、傘布70などの重量によって操作部材60が傘軸10に沿って移動しようとしても、突出部75Bが開口部114の上下の面に当接するため、操作部材60の傘軸10に対する移動を規制することができる。これにより、傘1を展開状態と収納状態の中間の半展開状態で保持することができる。半展開状態としては、展開状態から収納状態へ移行する際の中ろくろ100が回転し、傘布70が巻き込まれる前の状態が好ましく、布骨40が親骨20の内側に巻き込まれる前の状態がより好ましい。なお、使用者が操作部材60を傘軸10に沿って移動させると、板バネ部75Aの反力に抗して突出部75Bが開口10B内に退行する。これにより、操作部材60を傘軸10に沿って移動させることができる。
【0088】
傘布70を親骨20の内側に巻き込む構成では、収納状態にしてしまうと、傘布が巻かれた状態となってしまうため、傘布70に付着した雨水の渇きが遅くなる。これに対して、本実施形態によれば、傘軸10は、操作部材60を展開状態と収納状態との間の所定の状態で保持するための中間保持部16を有するため、中間保持部16で操作部材60を保持することにより、傘布70を効率よく乾かすことができる。
【0089】
<傘布>
図15は、本実施形態による展開状態の傘における傘布の一部を拡大して示す図である。同図に示すように、傘布70は全体として略正多角形状を呈している。親骨20は傘布70の対角線に沿うように配置されている。また、布骨40は先端部が傘布70の各辺の中心に向かって延びるように配置されている。また、傘布70の親骨20の間の外側縁は、内向きに凹形状になっている。ここでいう、内向きに凹形状になっているとは、親骨20の先端を結ぶ直線よりも傘布70の縁が半径方向内側に位置していることをいう。
【0090】
さらに、本実施形態の傘布70では、展開状態において布骨40の先端は、親骨20の先端よりも内側に位置している。そして、傘布70の親骨20と布骨40との間の外側縁は、親骨20の先端と布骨40の先端とを結ぶ直線に対して、半径方向内側に向かって凹形状になっている。
【0091】
本実施形態では、傘布70の外側縁は親骨20と布骨40との間で湾曲形状になっている。しかしながら、これに限らず、折れ曲がり形状などの形状とすることも可能である。ただし、展開状態では傘布70には張力が作用するため、外側縁は湾曲形状などの滑らかな形状が好ましい。
【0092】
また、本実施形態では、親骨20の先端と布骨40の先端とを結ぶ直線に対する外側縁の距離は親骨20と布骨40の中央近傍で最も大きくなっているが、これに限らず、例えば、中央よりも親骨20側で最も大きくなる形状としてもよい。本実施形態のように親骨20の長さが布骨40に対して長い場合には、親骨20の先端部の近傍の傘布70が特に、親受け骨30内に巻き込む際に、親受け骨30に干渉しやすい。これに対して、親骨20の先端と布骨40の先端とを結ぶ直線に対する外側縁の距離が中央よりも親骨20側で最も大きくなるようにすることで、より親受け骨30との干渉を抑えることができる。
【0093】
また、親骨20の間の傘布70の外側縁の部分は、収納状態においても親受け骨30の内側に巻き込むことができず、外部に広がってしまい、外観を損なってしまう。本実施形態のような傘1では、収納状態における傘布70の広がりを防止するべく、傘布70を内側に巻き込む構成を採用しているため、このような外側縁の広がりも抑えることが好ましい。これに対して、本実施形態によれば、傘布70の親骨20の間の外側縁は、内向きに凹形状になっており、さらに、傘布70の親骨20と布骨40との間の外側縁も内向きに凹形状になっているため、収納状態における傘布70の外側縁の広がりを抑えることができ、外観を向上できる。また、傘布70を親受け骨30の内側に巻き込む際には、傘布70の縁部が親受け骨30と干渉しやすい。これに対して、本実施形態によれば、傘布70の外側縁が親骨20の間で内向きの凹形状であるため、巻き込み時における傘布70と親受け骨30との干渉を抑制することができる。さらに、本実施形態によれば、傘布70の外側縁が親骨20と布骨40の間で内向きの凹形状であるため、巻き込み時における傘布70と親受け骨30との干渉をより抑制することができる。
【0094】
<傘布と親骨及び布骨との接続>
傘布70はその中心において上ろくろ12に固定されている。
また、
図15に示すように、親骨20に対して、露先側の先端の位置と、その中間部の位置で傘布70に固定されている。親骨20の露先側の先端の位置では、傘布70は親骨20の先端に取り付けられた露先部材21に対して移動が拘束された状態で固定されている。親骨20の中間部の位置では縫製部22により傘布70を親骨20と一体に縫製することにより傘布70は親骨20に取り付けられている。傘布70を親骨20と一体に縫製した位置において、親骨20は傘布70に対して親骨20の延びる方向に移動可能であってもよいし、完全に移動を拘束してもよい。
【0095】
また、傘布70は布骨40に対して露先側の先端の位置と、その中間部の複数の位置で傘布70に固定されている。
【0096】
傘布70の布骨40に当たる位置の露先側の先端には、ポケット部77が形成されている。ポケット部77は傘布70の中心に向かって延びており、周方向側部及び露先側の端部が閉鎖され、半径方向中心側、すなわち、傘軸10側が開口している。布骨40の露先側の先端部はこのポケット部77内に収納されている。これにより布骨40の露先側の先端部は、傘布70に対して布骨40の延びる方向に移動可能に傘布70に取り付けられている。
【0097】
また、布骨40の中間部において、露先側縫製部150と、石突き側縫製部151とにおいて傘布70は布骨40に取り付けられている。露先側縫製部150と、石突き側縫製部151は、傘布70を布骨40と一体に縫製することにより形成されている。露先側縫製部150と、石突き側縫製部151とにおいて、布骨40は傘布70に対して布骨40の延びる方向に移動可能に取り付けられてもよいし、完全に移動を拘束してもよい。露先側縫製部150と、石突き側縫製部151とは、布骨40におけるスライド部材140のスライド区間の外側に設けられている。
【0098】
石突き側縫製部151は、下方の規制部材143Bよりも石突き側に形成されているのが好ましいが、下方の規制部材143Bよりも露先側に形成してもよい。
【0099】
また、露先側縫製部150は、下方の規制部材143B(スライド区間の露先側の端部)よりも露先側に形成されている。さらに、露先側縫製部150は、下方の規制部材143Bと露先側の先端との中央よりも下方の規制部材143B側に設けられている。
【0100】
親骨20と傘布70とは展開状態から収納状態の移行時に一体となって移動する。このため、傘布70の親骨20が取り付けられる部分の長さは、親骨20の長さと同じになっている。これに対して、本実施形態のように親骨20と布骨40とを有する傘では、親骨20により傘布70を張っており、この親骨20の間に布骨40が配置されるため、布骨40と傘布70の間にわずかに隙間が生じる。このため、傘布70の布骨40が取り付けられる部分の長さと、布骨40の長さは一致していない。また、布骨40は親骨20よりも短く、収納状態で親骨20の内側に巻き込むため、親骨20とは異なる挙動をする。このため、仮に、布骨40の先端を傘布70に固定してしまうと、収納状態と展開状態との移行の際に、傘布70が布骨40の移動を拘束してしまい、スムーズな開閉作業を阻害してしまう。
【0101】
これに対して、本実施形態によれば、布骨40の露先側の端部が、傘布70に設けられたポケット部77内に収容されているため、傘1が収納状態と展開状態との間で移行する際にも、傘布70に対して布骨40が摺動できるため、収納状態から展開状態への移行が妨げられることがない。さらに、本実施形態によれば、傘布70の露先側端部には傘軸側が開口するポケット部77が設けられ、布骨40の露先側端部端部は、傘軸側からポケット部77内に挿入されている。これにより、傘布70の露先側端部を布骨40に対して摺動可能に取り付けることができる。
【0102】
また、仮に布骨40の中間部で傘布70に取り付けられていない場合には、傘布70を巻き込むことができない。しかしながら、傘布70の取付位置が、巻き込む際のスライド部材140の位置に近いと傘布70の張りが巻き込みの際の抵抗として作用してしまう。これに対して、本実施形態によれば、傘布70と布骨40との取付位置と、スライド部材140とを離間させることができるため、スムーズな傘布70の巻き込みが可能になる。
【0103】
さらに、この取付位置がスライド区間の露先側の端部と布骨40の露先側の端部との間の中央よりも露先側であると、傘布70を巻き込む際に、傘布70を布骨40に十分に追従させることができない。これに対して、本実施形態によれば、取付位置が、スライド区間の露先側の端部と布骨40の露先側の端部との間の中央よりもスライド区間側の部分に位置するため、確実に傘布70を布骨40に追従させることができる。
【符号の説明】
【0104】
1 :傘
2 :巻込機構
10 :傘軸
10A :突部
10B :開口
11 :中棒
13 :ハンドル
14 :収納保持部
15 :展開保持部
16 :中間保持部
17 :石突き
20 :親骨
20A :屈曲部
20B :上側部
20C :下側部
21 :露先部材
22 :縫製部
30 :親受け骨
30A :屈曲部
30B :上側部
30C :下側部
40 :布骨
50 :布受け骨
60 :操作部材
70 :傘布
71 :保護パーツ
71A :基部
71B :突出部
72 :固定パーツ
72A :凹部
72B :貫通孔
73 :開口
75 :突出部材
75A :板バネ部
75B :突出部
76 :張り拡げ部
77 :ポケット部
100 :中ろくろ
100A :貫通孔
101 :布受け骨ガイド部
101A :ガイド溝
102 :布骨接続部
102A :切欠き
103 :螺条部
103A :螺条凸部
110 :下ろくろ
110A :貫通孔
111 :親骨接続部
112 :螺条部
112A :螺条凸部
113 :フランジ部
114 :開口部
115 :仕切板
116 :ガイド凹部
117 :フラップ
119 :突出部
120 :把持部材
121 :拡径部
122 :ガイド凸部
123 :凹部
130 :ロック部材
131 :第1の支持部材
131A :凹部
132 :第2の支持部材
132A :突出部
133 :ロックリング
133A :基部
133B :係合部
134 :ばね
140 :スライド部材
141 :摺動接続部
141A :保持溝
141B :円形断面部
141C :一定幅部
141D :拡幅部
142 :回動接続部
142A :ピン
142B :板状部
143A :上方の規制部材
143B :下方の規制部材
150 :露先側縫製部
151 :石突き側縫製部