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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024015806
(43)【公開日】2024-02-06
(54)【発明の名称】乗員保護装置
(51)【国際特許分類】
   B60R 21/2338 20110101AFI20240130BHJP
   B60R 21/18 20060101ALI20240130BHJP
【FI】
B60R21/2338
B60R21/18
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022118118
(22)【出願日】2022-07-25
(71)【出願人】
【識別番号】000241463
【氏名又は名称】豊田合成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076473
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 昭夫
(72)【発明者】
【氏名】野田 雄斗
(72)【発明者】
【氏名】松崎 雄士
(72)【発明者】
【氏名】田中 志幸
(72)【発明者】
【氏名】安田 陽
【テーマコード(参考)】
3D054
【Fターム(参考)】
3D054AA25
3D054CC11
(57)【要約】
【課題】シートベルト装着時に、乗員の体格差により、エアバッグの折畳収納部位がラップベルト部に沿ってずれても、膨張したエアバッグにより円滑に乗員を保護可能な乗員保護装置を提供すること。
【解決手段】乗員保護装置10は、シートベルトのラップベルト部13に収納されるエアバッグ29が、乗員を受止可能に膨張するバッグ本体部30と、ガス供給装置からの膨張用ガスをバッグ本体部に供給するガス供給路部45と、バッグ本体部と連通する膝前膨張部53と、を備える。膝前膨張部には、座部5の左右両側付近にそれぞれ連結されて、膝当接面56aを乗員の膝MK(L,R)に当てて、膝前膨張部を座部前面8側の中央8a付近に配置させる位置調整テザー61,62、が配設される。テザー62は、端部62b側を、タング18に連結させ、テザー61は、端部61b側を、シートベルトの固定端11b付近に連結させている。
【選択図】図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートの背もたれ部における左右方向の一方の上端部側に配設されたリトラクタから繰り出されるシートベルトが、先端を、シートの座部における左右方向の前記リトラクタを設けた側に固定される固定端として、前記座部の左右方向の前記固定端側と逆方向に配設されたバックルに対し、組み付けられたタングを締結させることにより、左右両端を前記座部の左右に連結させた状態として、シートに着座した乗員の腰部の前方側に、ラップベルト部、を配設させる構成とし、
前記ラップベルト部に折り畳まれて配設されて、作動時に、膨張用ガスを流入させて膨張し、前方移動する乗員の上半身を受け止めて保護可能なエアバッグ、を備えて構成されるとともに、
前記エアバッグが、
乗員を受止可能に膨張するバッグ本体部と、
前記シートベルトの固定端側に配設される膨張用ガスのガス供給装置に先端を連結させて、前記バッグ本体部に膨張用ガスを供給可能に、元部側を前記バッグ本体部に連通させるガス供給路部と、
を備えて構成される乗員保護装置であって、
前記エアバッグが、前記バッグ本体部と連通し、前記バッグ本体部の前端下部に配設されて、乗員の左右の膝の前方側に配設される膝前膨張部、を備えて構成され、
膨張完了時の前記膝前膨張部の左右両側に、前記座部の左右両側付近にそれぞれ連結されて、前記膝前膨張部の後面を乗員の左右の膝に当接させる膝当接面として、前記膝前膨張部を前記座部の前面側における左右方向の中央付近に配置させる位置調整テザー、が配設され、
前記ガス供給路部の元部側を連通させた前記バッグ本体部と膝前膨張部とが、折り畳まれて、左右の前記位置調整テザー及び前記ガス供給路部の元部側とともに、膨張時の前記バッグ本体部と前記膝前膨張部との突出を可能としたバッグカバーに覆われて、前記シートベルトの前記ラップベルト部の収納部位に、収納される構成として、
左右の前記位置調整テザーにおける一方の前記バックル側の前記テザーが、前記膝前膨張部から離れた端部側を、前記タングに連結させ、
左右の前記テザーにおける他方の前記テザーが、前記膝前膨張部から離れた端部側を、前記シートベルトにおける前記固定端付近に、連結させて、配設されていることを特徴とする乗員保護装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シートに着座した乗員を保護するための乗員保護装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、乗員保護装置としては、エアバッグが、シートベルトのラップベルト部の部位に、折り畳まれて配設されて、作動時に、膨張用ガスを流入させて膨張し、膨張完了時、下面側の支持面を、シートに着座した乗員の大腿部に支持させた状態で、後面側の乗員拘束面により、前方移動する乗員の上半身を受け止めて保護するものが知られている(例えば、特許文献1参照)。なお、シートベルトは、シートの背もたれ部における左右方向の一方の上端部側に配設されたリトラクタから繰り出される構成として、先端を、シートの座部における左右方向のリトラクタを設けた側に固定される固定端とし、シートの座部の左右方向の固定端側と逆方向に配設されたバックルに対し、組み付けられたタングを締結させることにより、左右両端をシートの左右に連結させた状態として、シートに着座した乗員の腰部の前方側に、ラップベルト部、を配設させる構成としていた。そして、エアバッグは、乗員を受止可能に膨張するバッグ本体部と、シートベルトの固定端側に配設される膨張用ガスのガス供給装置に先端を連結させて、バッグ本体部に膨張用ガスを供給可能なガス供給路部と、を備えて構成されていた。この乗員保護装置では、シートに着座した乗員が、シートベルトを引き出して、タングをバックルに締結させて、リトラクタからタングまでの部位のショルダーベルト部を乗員の上半身の前面側に配置させ、乗員の腰部の前面側にラップベルト部を配置させれば、乗員に対して装着することができる。その後、車両の衝突等に伴なって、ガス供給路部を経て、エアバッグのバッグ本体部に膨張用ガスが供給されれば、バッグ本体部が、膨張して、バッグ本体部の下面側の支持面を、シートに着座した乗員の大腿部に支持させた状態で、バッグ本体部の後面側の乗員拘束面により、前方移動する乗員の上半身を受け止めて保護することができた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-66425号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来の乗員保護装置では、シートベルトのタングをバックルに締結する際、例えば、乗員が小柄であれば、固定端側からバックルまでのラップベルト部の長さ寸法が、大柄乗員の場合に比べて、短くなり、ラップベルト部に収納したエアバッグのバッグ本体部の折畳収納部位が、バックル側にずれて、乗員(小柄乗員)に対して、正対させてバッグ本体部を膨張させ難くなってしまう。また、乗員が大柄であれば、逆に、シートベルトのタングをバックルに締結する際、バッグ本体部の折畳収納部位が、シートベルトの固定端側にずれ、乗員(大柄乗員)に対して、正対させてバッグ本体部を膨張させ難くなってしまう。
【0005】
本発明は、上述の課題を解決するものであり、シートベルト装着時に、乗員の体格差により、エアバッグの折畳収納部位がラップベルト部に沿ってずれても、膨張したエアバッグにより円滑に乗員を保護可能な乗員保護装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る乗員保護装置では、シートの背もたれ部における左右方向の一方の上端部側に配設されたリトラクタから繰り出されるシートベルトが、先端を、シートの座部における左右方向の前記リトラクタを設けた側に固定される固定端として、前記座部の左右方向の前記固定端側と逆方向に配設されたバックルに対し、組み付けられたタングを締結させることにより、左右両端を前記座部の左右に連結させた状態として、シートに着座した乗員の腰部の前方側に、ラップベルト部、を配設させる構成とし、
前記ラップベルト部に折り畳まれて配設されて、作動時に、膨張用ガスを流入させて膨張し、前方移動する乗員の上半身を受け止めて保護可能なエアバッグ、を備えて構成されるとともに、
前記エアバッグが、
乗員を受止可能に膨張するバッグ本体部と、
前記シートベルトの固定端側に配設される膨張用ガスのガス供給装置に先端を連結させて、前記バッグ本体部に膨張用ガスを供給可能に、元部側を前記バッグ本体部に連通させるガス供給路部と、
を備えて構成される乗員保護装置であって、
前記エアバッグが、前記バッグ本体部と連通し、前記バッグ本体部の前端下部に配設されて、乗員の左右の膝の前方側に配設される膝前膨張部、を備えて構成され、
膨張完了時の前記膝前膨張部の左右両側に、前記座部の左右両側付近にそれぞれ連結されて、前記膝前膨張部の後面を乗員の左右の膝に当接させる膝当接面として、前記膝前膨張部を前記座部の前面側における左右方向の中央付近に配置させる位置調整テザー、が配設され、
前記ガス供給路部の元部側を連通させた前記バッグ本体部と膝前膨張部とが、折り畳まれて、左右の前記位置調整テザー及び前記ガス供給路部の元部側とともに、膨張時の前記バッグ本体部と前記膝前膨張部との突出を可能としたバッグカバーに覆われて、前記シートベルトの前記ラップベルト部の収納部位に、収納される構成として、
左右の前記位置調整テザーにおける一方の前記バックル側の前記テザーが、前記膝前膨張部から離れた端部側を、前記タングに連結させ、
左右の前記テザーにおける他方の前記テザーが、前記膝前膨張部から離れた端部側を、前記シートベルトにおける前記固定端付近に、連結させて、配設されていることを特徴とする。
【0007】
本発明に係る乗員保護装置では、シートに着座した乗員がシートベルトを装着した後、車両の衝突等により、作動されて、膨張用ガスがガス供給路部からバッグ本体部内に流入すれば、バッグカバーを押し開いて、バッグ本体部が膨張するとともに、膝前膨張部も膨張する。そして、膝前膨張部が、左右の位置調整テザーに左右両縁側を引っ張られて、後面を膝当接面として、乗員の左右の膝の前方側で膨張する。その際、膝前膨張部は、左右の位置調整テザーにより、座部の前面側における左右方向の中央付近に配置されるように膨張する。そのため、ラップベルト部の装着時に、装着した乗員が小柄乗員であって、バッグ本体部の折畳収納部位がラップベルト部のバックル側にずれても、膝前膨張部が膨張すれば、左右の位置調整テザーによって、膝前膨張部が、座部の前面側の左右方向の中央付近で膨張するように位置調整され、位置調整された膝前膨張部により、バックル側で膨張するバッグ本体部もずれ移動する。すなわち、バッグ本体部は、バックル側にずれて膨張しようとしても、そのずれを、位置調整された膝前膨張部により、修正されて、小柄乗員に正対させるように、バックル側から離れる側となる座部の左右方向の中央側に移動することとなり、その結果、小柄乗員に正対するように膨張したバッグ本体部により、小柄乗員が良好に保護可能となる。また、ラップベルト部を装着した乗員が大柄乗員であって、バッグ本体部の折畳収納部位がラップベルト部におけるシートベルトの固定端側にずれても、膝前膨張部が膨張すれば、左右の位置調整テザーによって、膝前膨張部が、座部の前面側の左右方向の中央付近で膨張するように位置調整され、位置調整された膝前膨張部により、固定端側で膨張するバッグ本体部もずれ移動する。すなわち、バッグ本体部は、固定端側にずれて膨張しようとしても、そのずれを、位置調整された膝前膨張部により、修正されて、大柄乗員に正対させるように、固定端側から離れる側となる座部の左右方向の中央側に移動することとなり、その結果、大柄乗員に正対するように膨張したバッグ本体部により、大柄乗員が良好に保護可能となる。勿論、膝前膨張部の左右の位置調整テザーは、膝前膨張部から離れた端部側を、シートに対して、直接、連結させずに、シートベルトのタングや固定端側付近に連結させており、単に、ラップベルト部を装着するだけで、左右の位置調整テザーにおける膝前膨張部から離れた端部側を、座部の左右両側に、円滑に配設させることができる。また、膨張を完了させた膝前膨張部は、乗員の左右の膝の前面側を覆えることから、膝の前方側の車体側部位(例えば、インストルメントパネルや前席等)から、乗員の膝を保護することができる。
【0008】
したがって、本発明に係る乗員保護装置では、シートベルト装着時に、乗員の体格差により、エアバッグの折畳収納部位がラップベルト部に沿ってずれても、膨張したエアバッグにより円滑に乗員を保護することができ、さらに、乗員の膝を保護することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施形態である乗員保護装置を搭載したシートの斜視図である。
図2】実施形態の乗員保護装置を搭載したシートの左側面図である。
図3】実施形態の乗員保護装置を搭載したシートの正面図であり、シートベルトが乗員に装着された状態を示し、また併せて、エアバッグの膨張時を二点鎖線で示すとともに、さらに、エアバッグの配設部位の概略縦断面図を示す。
図4】実施形態の乗員保護装置のエアバッグの膨張状態を示す後方側から見た概略斜視図である。
図5】実施形態のエアバッグの構成材料を示す図である。
図6】実施形態の乗員保護装置の作動時におけるエアバッグの膨張完了時を示す正面図である。
図7】実施形態の乗員保護装置の作動時におけるエアバッグの膨張完了時を示す左側面図である。
図8】実施形態の乗員保護装置の作動時におけるエアバッグの膨張完了時を示す右側面図である。
図9】実施形態の乗員保護装置の作動時における小柄乗員の場合の説明図である。
図10】実施形態の乗員保護装置の作動時における大柄乗員の場合の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明すると、実施形態の乗員保護装置10は、図1~4に示すように、車両のシート1に搭載されるもので、シートベルト11と、エアバッグ29と、エアバッグ29に膨張用ガスを供給するガス供給装置としてのインフレーター24と、を備えて構成されている。シート1は、背もたれ部2と座部5とを備えている。
【0011】
シートベルト11は、シート1に着座した乗員MPを拘束できるように、シート1の左右方向の一方側(実施形態では左方側)において、上端11a側を、背もたれ部2の上端3における左縁3a側の内部に配設されたリトラクタ15から繰り出し可能とし、先端としての下端11b側を、座部5の左側部6側に配設されたアンカ部材16に固定される固定端として配設されている。
【0012】
シートベルト11の中間部位には、タング18が配設され、タング18は、シート1の左右方向の他方側(実施形態では右方側)における座部5の右側部7側に配設されたバックル17に締結されることとなり、タング18をバックル17に締結させた状態のシートベルト11は、タング18からリトラクタ15側に延びる部位を、乗員MPの上半身MUの前面側に配置されるショルダーベルト部12とし、タング18から固定端11b側に延びる部位を、乗員MPの腰部MWの前面側に配置されるラップベルト部13としている。なお、バックル17には、図示しないリリースボタンが配設されており、締結したタング18を締結解除する際、リリースボタンを押圧操作すれば、タング18をバックル17から取り外すことができる。また、リトラクタ15は、シートベルト11の急激な引き出しがあれば、引き出しを停止させ、さらに、車両の衝突等があれば、引き出したベルト11を巻き取り可能なプリテンショナーを配設させて構成されている。
【0013】
ガス供給装置としてのインフレーター24は、膨張用ガスを吐出する略円柱状のインフレーター本体25と、インフレーター本体25から突出して略L字状に屈曲して配置されるパイプ部26と、を備えて、リトラクタ15の配設されている座部5の左側部6における後方側に取付固定されている(図1,2参照)。パイプ部26には、エアバッグ29の後述するガス供給路部45の先端部47側が、外装され、さらに、クランプ27で締め付けられて、連結されている。
【0014】
エアバッグ29は、図4に示すように、膨張用ガスを流入させて大きく膨張するバッグ本体部30と、バッグ本体部30の下端30a側に連通されて、ガス供給装置としてのインフレーター24からの膨張用ガスをバッグ本体部30に供給するガス供給路部45と、バッグ本体部30の下面32aの前端(前縁)32c側に連通される膝前膨張部53と、膝前膨張部53の左右両縁53a,53bから延びる位置調整テザー61,62と、ガス供給路部45の下面46b側に結合されて、ラップベルト部13を挿通させる筒状のベルト挿通部66と、を備えて構成されている。これらのバッグ本体部30、ガス供給路部45、膝前膨張部53、位置調整テザー61,62、及び、ベルト挿通部66は、ポリエステル等の可撓性を有した織布から形成されている。
【0015】
バッグ本体部30は、膨張完了時に、周壁31が、側方から見て略三角柱状に膨張する構成として、底面側の底壁部32、後面側の後壁部33、前面側の前壁部34、及び、左右の側壁部35(L,R)、を備えて構成されている。そして、膨張完了時のバッグ本体部30は、底壁部32の下面32aにおける前縁32cを除く部位を、乗員MPの大腿部MFに支持させる支持面37とし、後壁部33の後面33a側を、前方移動する乗員MPの上半身MUを受け止める乗員拘束面38としている(図7,8参照)。
【0016】
底壁部32の後縁32b付近には、ガス供給路部45からの膨張用ガスを流入させる複数(実施形態では左右に並設された2個)の流入口40aを開口させた流入口部40が配設されている。また、左右の側壁部35L,35Rの前部側には、バッグ本体部30内に流入する膨張用ガスの余剰分を排気するベントホール43が開口されている。さらに、底壁部32の前縁32c側には、膝前膨張部53に膨張用ガスを供給するガス供給口41が、左右に並設されるように、2個配設されている。
【0017】
バッグ本体部30の周壁31は、図5に示すように、前側部位31aと後側部位31bとの二枚のシート材を縫合して形成されている。前側部位31aは、前壁部34と、左右の側壁部35(L,R)の前部側と、の領域を備えて構成され、後側部位31bは、後壁部33と、底壁部32と、側壁部35(L,R)の後部側と、の領域を備えて構成されている。
【0018】
ガス供給路部45は、元部46を、エアバッグ29のバッグ本体部30における膨張用ガスを流入させるための流入口部40に、連結させ、先端部47を、インフレーター24のパイプ部26に、連結させている。ガス供給路部45は、外形形状を相互に等しくした外側材49とバッグ側材50との外周縁相互を縫合して形成されている(図5参照)。ガス供給路部45の元部46には、バッグ本体部30の流入口部40の流入口40aと連通する連通口46cが、配設され、連通口46cの周縁が、流入口40aの周縁に縫合されて、ガス供給路部45が、バッグ本体部30の下端30aとなる底壁部32の後縁32b側に連結されている。ガス供給路部45は、既述したように、先端部47が、インフレーター24のパイプ部26に連結されて、インフレーター本体25からの膨張用ガスをバッグ本体部30に供給するように構成されている。
【0019】
なお、ガス供給路部45は、外形寸法を同じとした下面側の外側材49と、バッグ本体部30側のバッグ側材50と、の外周縁相互を縫合して形成されて、外側材49とバッグ側材50との外周縁相互の縫合前に、バッグ側材50の連通口46cの周縁が、バッグ本体部30の流入口40aの周縁に縫合させておくこととなる。
【0020】
膝前膨張部53は、図4,6~8に示すように、膨張完了時に、着座した乗員MPの左右の膝MK(L,R)を覆い可能な略直方体形状としている。膝前膨張部53は、膨張完了時、バッグ本体部30の底壁部32の前縁32c側に連結させた天井壁54と、天井壁54の後縁から下方に延びる後壁56と、天井壁54の左右の縁から下方に延びる左右の側壁57(L,R)と、天井壁54の前縁から下方に延びる前壁55と、天井壁54と対向するように配設される底壁58と、を備えて構成されている。天井壁54には、バッグ本体部30から膨張用ガスを流入させる連通口54aが、バッグ本体部30のガス供給口41に対応して、2個配設されている。
【0021】
また、膝前膨張部53は、膨張完了時の後面56aを乗員MPの左右の膝MKL,MKRに当接させる膝当接面として、座部5の前面8側における左右方向の中央8a付近に配置させるように、左右の両縁53a,53bに、位置調整テザー61,62を連結させている。
【0022】
位置調整テザー61は、元部61aを膨張完了時の膝前膨張部53の左縁53aに連結させて、膝前膨張部53から離れた端部61bを、シートベルト11における固定端11b付近に連結させている。
【0023】
位置調整テザー62は、元部62aを膨張完了時の膝前膨張部53の右縁53b側に連結させて、膝前膨張部53から離れた端部62bを、タング18に連結させている。
【0024】
テザー61,62の元部61a,62aから端部61b,62bまでの長さ寸法LL,LRは、バッグ本体部30の膨張に伴なって膝前膨張部53が膨張を完了させた際、後面の膝当接面56aを乗員MPの膝MK(L,R)に当接させた状態で、座部5の前面8側における左右方向の中央8a付近に、膝前膨張部53を配置させる長さ寸法に、設定されている。
【0025】
なお、膝前膨張部53は、図5に示すように、天井壁54を形成する天井側部59aから、前壁55を形成する前側部59bと、左右の側壁57(L,R)を形成する左側部59d及び右側部59eと、後壁56を形成する後側部59fと、が延び、さらに、前側部59bに底壁58を形成する底側部59cが延びている形状のシート状の膝膨張部用素材59から形成されている。そして、膝前膨張部53は、膝膨張部用素材59の連通口54aの周縁と、さらに、その周縁の前側縁59aa及び後側縁59abと、をバッグ本体部30の底壁部32の前縁32c側の部位に縫合するとともに、膝膨張部用素材59の対応する縁相互を縫合して略直方体形状の膝前膨張部53を形成するとともに、後側部59fの隣接する左側部59dと右側部59eとの縫合時、左側の左側連結部59flに、位置調整テザー61の元部61a側を縫合し、また、右側の右側連結部59frに、位置調整テザー62の元部62a側を縫合して、形成されている。なお、テザー61,62の元部61a,62aから離れた端部61b,62b側は、エアバッグ29のバッグ本体部30と膝前膨張部53とを折り畳んでラップベルト部13の折畳収納部位22に取り付ける際、固定端11b付近とタング18とに連結される。
【0026】
ベルト挿通部66は、略長方形の挿通部用素材67(図5参照)の前後の縁部67a,67a相互を連結させて、筒状に形成され、ラップベルト部13におけるエアバッグ29(バッグ本体部30)の折畳収納部位22を包むように、配設されている。ベルト挿通部66は、ループ状に縁部67a,67a相互を結合させる前に、ガス供給路部45の外側材49に縫合して結合されており、折り畳んだバッグ本体部30をラップベルト部13の折畳収納部位22に配置させた後、縁部67a,67a相互を結合させて、筒状(ループ状)に形成している。
【0027】
また、エアバッグ29をラップベルト部13の折畳収納部位22に組み付ける際には、ガス供給路部45の元部46側を連通(連結)させたバッグ本体部30と膝前膨張部53とが折り畳まれて、左右の位置調整テザー61,62及びガス供給路部45の元部46側とともに、バッグ組付体75として構成され、さらに、膨張時のバッグ本体部30と膝前膨張部53との突出を可能としたバッグカバー69に覆われて、折畳収納部位22に、組み付けられる構成としている。
【0028】
すなわち、エアバッグ29は、ガス供給路部45や縁部67a,67a相互の縫合前のベルト挿通部66を取り付けたバッグ本体部30と膝前膨張部53とを折り畳み、ついで、折畳部位が折り崩れしないように、図示しない帯状のラッピング材で部分的に包んだ後、筒状にする前のベルト挿通部66により、ラップベルト部13の折畳収納部位22を包んで、縁部67a,67a相互を縫合させて、ラップベルト部13にベルト挿通部66を取り付け、膝前膨張部53から延びる位置調整テザー61,62の端部61b,62bを固定端11b付近とタング18とに連結させつつ、エアバッグ29のバッグ本体部30、ガス供給路部45の元部46、膝前膨張部53、ベルト挿通部66、及び、テザー61,62が、露出しないように、バッグカバー69により覆えば、エアバッグ29は、バッグ組付体75として、ラップベルト部13の折畳収納部位22に配設されることとなる。
【0029】
バッグカバー69は、二つ折りするシート状のカバー素材70から形成され(図5参照)、折り畳まれたバッグ本体部30等を包んで、重ねた縁70a相互を縫合して、配設されている(図3参照)。
【0030】
実施形態の乗員保護装置10では、シート1に装着済みのシートベルト11におけるラップベルト部13の折畳収納部位22に、テザー61,62の端部61b,62bを固定端11b付近やタング18に連結させつつバッグ組付体75を組み付け、また、インフレーター24のパイプ部26に、エアバッグ29のガス供給路部45の先端部47を、クランプ27を利用して、連結させれば、シート1に搭載することができる。
【0031】
実施形態の乗員保護装置10では、シート1への搭載後、シート1に着座した乗員MPがシートベルト11を装着した状態で、車両が衝突等すれば、作動される(図6~8参照)。その際、インフレーター24からの膨張用ガスが、ガス供給路部45を経て、流入口部40の流入口40aからバッグ本体部30内に流入し、バッグ本体部30が膨張する。バッグ本体部30が膨張すれば、下面32a側の支持面37を乗員MPの大腿部MFに支持させて、後面33a側の乗員拘束面38を、乗員MPの上半身MUを受止可能に、配置させることができる。また、バッグ本体部30が膨張する際、バッグ本体部30のガス供給口41を経て連通口54aから流入する膨張用ガスにより、膝前膨張部53も膨張する。膨張する膝前膨張部53は、左右の位置調整テザー61,62に左右両縁53a,53b側を引っ張られて、後面を膝当接面56aとして、乗員MPの左右の膝MKL,MKRの前方側で膨張する。その際、膝前膨張部53は、左右の位置調整テザー61,62により、座部5の前面8側における左右方向の中央8a付近に配置されるように膨張する。
【0032】
そして、実施形態の乗員保護装置10では、ラップベルト部13の装着時に、例えば、図9のAに示すように、装着した乗員が小柄乗員MPSであって、バッグ本体部30の折畳収納部位22がラップベルト部13のバックル17側にずれても、図9のB,Cに示すように、膝前膨張部53が膨張すれば、左右の位置調整テザー61,62によって、膝前膨張部53が、座部5の前面8側の左右方向の中央8a付近で膨張するように位置調整され、位置調整された膝前膨張部53により、バックル17側で膨張するバッグ本体部30もずれ移動する。すなわち、バッグ本体部30は、バックル17側にずれて膨張しようとしても、そのずれを、位置調整された膝前膨張部53により、修正されて、小柄乗員MPSに正対させるように、バックル17側から離れる側となる座部5の左右方向の中央側に移動することとなり、その結果、小柄乗員MPSに正対するように膨張したバッグ本体部30により、小柄乗員MPSが良好に保護可能となる。
【0033】
また、図10のAに示すように、ラップベルト部13を装着した乗員が大柄乗員MPLであって、バッグ本体部30の折畳収納部位22がラップベルト部13におけるシートベルト11の固定端11b側にずれても、図10のB,Cに示すように、膝前膨張部53が膨張すれば、左右の位置調整テザー61,62によって、膝前膨張部53が、座部5の前面8側の左右方向の中央8a付近で膨張するように位置調整され、位置調整された膝前膨張部53により、固定端11b側で膨張するバッグ本体部30もずれ移動する。すなわち、バッグ本体部30は、固定端11b側にずれて膨張しようとしても、そのずれを、位置調整された膝前膨張部53により、修正されて、大柄乗員MPLに正対させるように、固定端11b側から離れる側となる座部5の左右方向の中央側に移動することとなり、その結果、大柄乗員MPLに正対するように膨張したバッグ本体部30により、大柄乗員MPLが良好に保護可能となる。
【0034】
勿論、膝前膨張部53の左右の位置調整テザー61,62は、膝前膨張部53から離れた端部61b,62b側を、シート1に対して、直接、連結させずに、シートベルト11のタング18や固定端11b側付近に連結させており、単に、ラップベルト部13を装着するだけで、左右の位置調整テザー61,62における膝前膨張部53から離れた端部61b,62b側を、座部5の左右両側に、円滑に配設させることができる。また、膨張を完了させた膝前膨張部53は、乗員MP、MPS,MPLの左右の膝MK(L,R)の前面側を覆えることから、膝MK(L,R)の前方側の車体側部位(例えば、インストルメントパネルや前席等)から、乗員の膝MKL,MKRを保護することができる。
【0035】
したがって、実施形態の乗員保護装置10では、シートベルト11の装着時に、乗員MP,MPS,MPLの体格差により、エアバッグ29の折畳収納部位22がラップベルト部13に沿ってずれても、膨張したエアバッグ29により円滑に乗員MP,MPS,MPRを保護することができ、さらに、乗員の膝MK(L,R)を保護することもできる。
【0036】
なお、実施形態では、位置調整テザー61の端部61bを、シートベルト11の固定端11b付近のシートベルト11自体に連結させているが、シートベルト11自体で無く、シート1の座部5の左側部6に連結させたり、あるいは、図7の二点鎖線に示すテザー61Aのように、端部61bを、固定端11b付近としてのガス供給路部45の先端部47付近に、連結させてもよい。
【符号の説明】
【0037】
1…シート、2…背もたれ部、3…上端、3a…左縁、5…座部、8…前面、8a…中央、10…乗員保護装置、11…シートベルト、11a…上端、11b…(固定端)下端、13…ラップベルト部、15…リトラクタ、17…バックル、18…タング、22…折畳収納部位、24…(ガス供給装置)インフレーター、29…エアバッグ、30…バッグ本体部、32a…下面、32c…前縁、37…支持面、38…乗員拘束面、45……ガス供給路部、46…元部、47…先端部、53…膝前膨張部、53a…左縁、53b…右縁、56a…後面・膝当接面、61…(固定端側)位置調整テザー、61a…(バッグ側)元部、61b…端部、62…(バックル側)位置調整テザー、62a…(バッグ側)元部、62b…端部、69…バッグカバー、
MP…乗員、MPS…小柄乗員、MPL…大柄乗員、MW…腰部、MF…大腿部、MK(L,R)…膝、MU…上半身。

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10