特開 2024-158061 画像形成装置

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)

(12)【公報種別】公開特許公報(A)

(11)【公開番号】P2024158061

(43)【公開日】2024-11-08

(54)【発明の名称】画像形成装置

(51)【国際特許分類】

   B41J 2/01 20060101AFI20241031BHJP

【ＦＩ】

B41J2/01 207

B41J2/01 205

【審査請求】未請求

【請求項の数】4

【出願形態】ＯＬ

(21)【出願番号】P 2023072907

(22)【出願日】2023-04-27

(71)【出願人】

【識別番号】000006150

【氏名又は名称】京セラドキュメントソリューションズ株式会社

(74)【代理人】

【識別番号】100114971

【弁理士】

【氏名又は名称】青木 修

(72)【発明者】

【氏名】川嶋 奈緒子

(72)【発明者】

【氏名】仲辻 弘臣

(72)【発明者】

【氏名】中野 潤

(72)【発明者】

【氏名】臼井 将人

【テーマコード（参考）】

2C056

【Ｆターム（参考）】

2C056EB08

2C056EB27

2C056EB40

2C056EC69

2C056EC72

2C056HA58

(57)【要約】

【課題】 吐出不良ノズルを示すデータを記憶するための記憶容量が小さくて済む画像形成装置を得る。
【解決手段】 複数のテストパターンは、それぞれ、所定周期Ｎの複数のノズル位置について補正処理が施されたライン状またはバンド状の画像であって、複数のテストパターンのノズル位置は、互いに異なるオフセット位置Ｍで指定されている。そして、吐出不良ノズル検出部８３は、（ａ）複数のテストパターンの読取画像の濃度分布に基づいて、複数のテストパターンから、吐出不良ノズルによる周期的な吐出不良位置の濃度が補正されているテストパターンを特定し、（ｂ）特定したテストパターンのオフセット位置を吐出不良ノズルデータとして記憶装置７３に記憶する。
【選択図】 図３

【特許請求の範囲】

【請求項1】

プリントすべき画像に対応するインクを配列されたノズルで吐出する記録ヘッドと、
プリントシートの位置に応じて、プリントすべき画像に対応するノズルを決定し、前記記録ヘッドに、前記ノズルからインクを吐出させる制御部と、
（ａ）前記記録ヘッドで複数のテストパターンをプリントシートにプリントし、（ｂ）前記複数のテストパターンの読取画像に基づいて吐出不良ノズルを検出する吐出不良ノズル検出部と、
検出された前記吐出不良ノズルを示す吐出不良ノズルデータを記憶する記憶装置とを備え、
前記複数のテストパターンは、それぞれ、所定周期の複数のノズル位置について補正処理が施されたライン状またはバンド状の画像であって、
前記複数のテストパターンの前記ノズル位置は、互いに異なるオフセット位置で指定され、
前記吐出不良ノズル検出部は、（ａ）前記複数のテストパターンの読取画像の濃度分布に基づいて、前記複数のテストパターンから、前記吐出不良ノズルによる周期的な吐出不良位置の濃度が補正されているテストパターンを特定し、（ｂ）特定した前記テストパターンの前記オフセット位置を前記吐出不良ノズルデータとして前記記憶装置に記憶すること、
を特徴とする画像形成装置。

【請求項2】

複数の周期のそれぞれについて、前記複数のテストパターンは、互いに異なるオフセット位置で指定された当該周期の複数のノズル位置について補正処理が施されたライン状またはバンド状の画像であって、
前記吐出不良ノズル検出部は、（ａ）前記複数のテストパターンの読取画像の濃度分布に基づいて、前記複数のテストパターンから、前記吐出不良ノズルによる周期的な吐出不良位置の濃度が補正されているテストパターンを特定し、（ｂ）特定した前記テストパターンの前記周期および前記オフセット位置を前記吐出不良ノズルデータとして前記記憶装置に記憶すること、
を特徴とする請求項１記載の画像形成装置。

【請求項3】

前記記憶装置から前記オフセット位置を読み出し、前記オフセット位置に基づいて複数の吐出不良ノズルを特定し、前記プリントすべき画像において、特定した前記複数の吐出不良ノズルに対応する補正処理を実行する補正処理部を備えることを特徴とする請求項１記載の画像形成装置。

【請求項4】

前記補正処理は、前記吐出不良ノズルを不吐出とし、前記吐出不良ノズルの吐出位置に隣接する吐出位置のノズルのインク吐出量を所定量に増加させることを特徴とする請求項１から請求項３のうちのいずれか１項記載の画像形成装置。

【発明の詳細な説明】

【技術分野】

【0001】

本発明は、画像形成装置に関するものである。

【背景技術】

【0002】

あるインクジェット方式の画像形成装置は、記録ヘッドでテストパターンをプリントし、プリントされたテストパターンの画像に基づいて、記録ヘッドにおけるインクを吐出するノズルのうち、インクを正常に吐出できなくなった吐出不良ノズルを検出し、隣接ドットのインク量を増加させている（例えば特許文献１参照）。

【0003】

別のインクジェット方式の画像形成装置は、着滴位置の初期ズレ以外の吐出不良ノズルを検出している（例えば特許文献２参照）。

【先行技術文献】

【特許文献】

【0004】

【特許文献1】特開２０１３－１６９７６０号公報

【特許文献2】特開２０１７－０２４２３３号公報

【発明の概要】

【発明が解決しようとする課題】

【0005】

上述の技術では、吐出不良ノズルのノズル位置のデータがメモリーなどに記憶され、ユーザーにより指定された画像をプリントするときに、そのデータに基づいて、吐出不良ノズルが特定され、その吐出不良ノズルの周囲のノズルを使用して補正処理が行われる。

【0006】

しかしながら、吐出不良ノズルの数が多いと、吐出不良ノズルを示すデータの量が多くなり、そのデータを記憶するために大きい記憶容量が必要となってしまう。

【0007】

本発明は、上記の問題に鑑みてなされたものであり、吐出不良ノズルを示すデータを記憶するための記憶容量が小さくて済む画像形成装置を得ることを目的とする。

【課題を解決するための手段】

【0008】

本発明に係る画像形成装置は、プリントすべき画像に対応するインクを配列されたノズルで吐出する記録ヘッドと、プリントシートの位置に応じて、プリントすべき画像に対応するノズルを決定し、前記記録ヘッドに、前記ノズルからインクを吐出させる制御部と、（ａ）前記記録ヘッドで複数のテストパターンをプリントシートにプリントし、（ｂ）前記複数のテストパターンの読取画像に基づいて吐出不良ノズルを検出する吐出不良ノズル検出部と、検出された前記吐出不良ノズルを示す吐出不良ノズルデータを記憶する記憶装置とを備える。前記複数のテストパターンは、それぞれ、所定周期の複数のノズル位置について補正処理が施されたライン状またはバンド状の画像であって、前記複数のテストパターンの前記ノズル位置は、互いに異なるオフセット位置で指定されている。そして、前記吐出不良ノズル検出部は、（ａ）前記複数のテストパターンの読取画像の濃度分布に基づいて、前記複数のテストパターンから、前記吐出不良ノズルによる周期的な吐出不良位置の濃度が補正されているテストパターンを特定し、（ｂ）特定した前記テストパターンの前記オフセット位置を前記吐出不良ノズルデータとして前記記憶装置に記憶する。

【発明の効果】

【0009】

本発明によれば、吐出不良ノズルを示すデータを記憶するための記憶容量が小さくて済む画像形成装置が得られる。

【0010】

本発明の上記又は他の目的、特徴および優位性は、添付の図面とともに以下の詳細な説明から更に明らかになる。

【図面の簡単な説明】

【0011】

【図1】図１は、本発明の実施の形態に係る画像形成装置の機械的な内部構成を説明する側面図である。

【図2】図２は、図１に示す画像形成装置１０における記録ヘッド１ａ，１ｂ，１ｃ，１ｄの一例を示す平面図である。

【図3】図３は、本発明の実施の形態に係る画像形成装置１０の電気的な構成を示すブロック図である。

【図4】図４は、複数のテストパターンがプリントされたテストチャートの一例を示す図である。

【図5】図５は、吐出不良ノズルがない場合のテストパターン１１１とテストパターン１１１の読取画像の濃度分布（輝度分布）を説明する図である。

【図6】図６は、周期的な吐出不良ノズルがある場合のテストパターン１１１とテストパターン１１１の読取画像の濃度分布（輝度分布）を説明する図である。

【図7】図７は、図６に示すような周期的な吐出不良ノズルがある場合におけるテストパターン１１２－３とテストパターン１１２－３の読取画像の濃度分布（輝度分布）を説明する図である。

【図8】図８は、図６に示すような周期的な吐出不良ノズルがある場合におけるテストパターン１１２－４とテストパターン１１２－４の読取画像の濃度分布（輝度分布）を説明する図である。

【図9】図９は、図６に示すような周期的な吐出不良ノズルがある場合におけるテストパターン１１２－５とテストパターン１１２－５の読取画像の濃度分布（輝度分布）を説明する図である。

【図10】図１０は、図６に示すような周期的な吐出不良ノズルがある場合におけるテストパターン１１２－６とテストパターン１１２－６の読取画像の濃度分布（輝度分布）を説明する図である。

【発明を実施するための形態】

【0012】

以下、図に基づいて本発明の実施の形態を説明する。

【0013】

実施の形態１．

【0014】

図１は、本発明の実施の形態に係る画像形成装置の機械的な内部構成を説明する側面図である。この実施の形態に係る画像形成装置１０は、プリンター、コピー機、ファクシミリ機、複合機などといった装置である。

【0015】

図１に示す画像形成装置１０は、プリントエンジン１０ａと、シート搬送部１０ｂとを備える。プリントエンジン１０ａは、プリントすべきページ画像をプリントシート（プリントシートなど）上に物理的に形成する。この実施の形態では、プリントエンジン１０ａは、ライン型のインクジェット方式のプリントエンジンである。

【0016】

この実施の形態では、プリントエンジン１０ａは、シアン、マゼンタ、イエロー、およびブラックといった４つのインク色に対応するライン型の記録ヘッド１ａ～１ｄを備える。

【0017】

図２は、図１に示す画像形成装置１０における記録ヘッド１ａ，１ｂ，１ｃ，１ｄの一例を示す平面図である。例えば図２に示すように、この実施の形態では、各記録ヘッド１ａ，１ｂ，１ｃ，１ｄは、複数（ここでは３個）のヘッド部１１を有する。それらのヘッド部１１は、主走査方向に沿って配列されており、装置本体に対して着脱可能になっている。なお、記録ヘッド１ａ，１ｂ，１ｃ，１ｄのヘッド部１１は、１つでもよい。記録ヘッド１ａ，１ｂ，１ｃ，１ｄのヘッド部１１は、２次元状に配列された複数のノズルと、複数のノズルにそれぞれ接続されインクを供給される複数の圧力室と、圧力室に設けられ、プリントすべき画像の画像データに対応する駆動信号によって駆動され圧力室からノズルへインクを押し出してインクをノズルから吐出させる複数の圧電アクチュエーターとを備え、プリントすべき画像に対応するインクをそのノズルから吐出する。

【0018】

シート搬送部１０ｂは、所定の搬送路に沿って、プリント前のプリントシートをプリントエンジン１０ａに搬送するとともに、プリント後のプリントシートをプリントエンジン１０ａから所定の排出先（排出トレイ１０ｃなど）へ搬送する。

【0019】

シート搬送部１０ｂは、メインシート搬送部１０ｂ１と循環シート搬送部１０ｂ２とを備える。両面プリントにおいて、メインシート搬送部１０ｂ１は、第１面のページ画像のプリントに使用するプリントシートをプリントエンジン１０ａへ搬送し、循環シート搬送部１０ｂ２は、所定枚数のプリントシートを滞留させつつ、プリントエンジン１０ａの後段から前段へプリントシートを搬送する。

【0020】

この実施の形態では、メインシート搬送部１０ｂ１は、プリントエンジン１０ａに対向して配置されプリントシートを搬送する環状の搬送ベルト２と、搬送ベルト２を懸架される駆動ローラー３および従動ローラー４と、搬送ベルト２ととともにプリントシートをニップする吸着ローラー５と、排出ローラー対６，６ａとを備える。

【0021】

駆動ローラー３および従動ローラー４は、搬送ベルト２を周回させる。そして、後述の給紙カセット２０－１，２０－２から搬送されてきたプリントシートを吸着ローラー５がニップし、ニップされたプリントシートは、搬送ベルト２によって記録ヘッド１ａ～１ｄのプリント位置へ順番に搬送されていき、記録ヘッド１ａ～１ｄによりそれぞれの色の画像をプリントされる。そして、カラープリント完了後のプリントシートが排出ローラー対６，６ａによって、排出トレイ１０ｃなどに排出される。

【0022】

さらに、メインシート搬送部１０ｂ１は、複数の給紙カセット２０－１，２０－２を備えている。給紙カセット２０－１，２０－２は、プリントシートＳＨ１，ＳＨ２を収容しており、リフト板２１，２４でプリントシートＳＨ１，ＳＨ２を上方に押し上げてピックアップローラー２２，２５に当接させる。給紙カセット２０－１，２０－２に載置されたプリントシートＳＨ１，ＳＨ２は上側から１枚ずつピックアップローラー２２，２５によって給紙ローラー２３，２６へピックアップされる。給紙ローラー２３，２６は、給紙カセット２０－１，２０－２からピックアップローラー２２，２５によって給紙されたプリントシートＳＨ１，ＳＨ２を１枚ずつ搬送路上へ搬送するローラーである。搬送ローラー２７は、給紙カセット２０－１，２０－２から搬送されてくるプリントシートＳＨ１，ＳＨ２に共通な搬送路上の搬送ローラーである。

【0023】

循環シート搬送部１０ｂ２は、両面プリントの際にプリントシートをプリントエンジン１０ａの下流側の所定位置から上流側の所定位置（ここでは、後述のラインセンサー３１の上流側の所定位置）へ戻す。循環シート搬送部１０ｂ２は、搬送ローラー４１と、プリントエンジン１０ａに面するプリントシートの面を第１面から第２面へ切り替えるためにプリントシートの進行方向を反転させるスイッチバック搬送路４１ａを備える。

【0024】

さらに、画像形成装置１０は、ラインセンサー３１と、シート検知センサー３２とを備える。

【0025】

ラインセンサー３１は、プリントシートの搬送方向の垂直方向に沿って配置され、プリントシートの両端エッジ（両側面エッジ）の位置を検出する光学センサーである。例えば、ラインセンサー３１は、ＣＩＳ（Contact Image Sensor）である。この実施の形態では、ラインセンサー３１は、レジストローラー２８とプリントエンジン１０ａとの間に配置されている。

【0026】

シート検知センサー３２は、プリントシートＳＨ１，ＳＨ２の先端が搬送路上の所定の位置を通過したことを検知する光学式センサーである。ラインセンサー３１は、シート検知センサー３２によりプリントシートＳＨ１，ＳＨ２の先端が検出された時点で、プリントシートの両端エッジの位置を検出する。

【0027】

なお、例えば、図１に示すように、プリントエンジン１０ａは、プリントシートの搬送路の上方および下方の一方（ここでは上方）に配置され、ラインセンサー３１は、プリントシートの搬送路の上方および下方の他方（ここでは下方）に配置され、循環シート搬送部１０ｂ２は、プリントエンジン１０ａより下流側からラインセンサー３１より上流側へスイッチバックさせてプリントシートを搬送する。

【0028】

図３は、本発明の実施の形態に係る画像形成装置１０の電気的な構成を示すブロック図である。図３に示すように、画像形成装置１０は、図１および図２に示すような機械的構成を有する画像出力部７１の他、さらに、操作パネル７２、記憶装置７３、画像読取装置７４、およびコントローラー７５を備える。

【0029】

操作パネル７２は、画像形成装置１０の筐体表面に配置され、液晶ディスプレイなどの表示装置７２ａ、およびハードキー、タッチパネルなどの入力装置７２ｂを備え、その表示装置７２ａでユーザーに対して各種メッセージを表示し、その入力装置７２ｂでユーザー操作を受け付ける。

【0030】

記憶装置７３は、画像形成装置１０の制御に必要なデータ、プログラムなどを記憶する不揮発性の記憶装置（フラッシュメモリー、ハードディスクドライブなど）である。記憶装置７３には、後述の吐出不良ノズルデータが記憶される。

【0031】

画像読取装置７４は、プラテングラスおよび自動原稿給紙装置を備え、プラテングラス上に載置された原稿、または自動原稿給紙装置によって搬送されてくる原稿の画像を光学的に読み取り、その画像の画像データを生成する。

【0032】

コントローラー７５は、プログラムに従ってソフトウェア処理を実行するコンピューター、所定のハードウェア処理を実行するＡＳＩＣ（Application Specific Integrated Circuit）などを備え、各種処理部として動作する。そのコンピューターは、ＣＰＵ（Central Processing Unit）、ＲＯＭ（Read Only Memory）、ＲＡＭ（Random Access Memory）などを備え、ＲＯＭ、記憶装置７３などに記憶されているプログラムをＲＡＭにロードし、ＣＰＵで実行することで、（必要に応じてＡＳＩＣとともに）各種処理部として動作する。ここでは、コントローラー７５は、制御部８１、画像処理部８２、吐出不良ノズル検出部８３、および補正処理部８４として動作する。

【0033】

制御部８１は、画像出力部７１（プリントエンジン１０ａ、シート搬送部１０ｂなど）を制御し、ユーザーにより要求されたプリントジョブを実行する。この実施の形態では、制御部８１は、画像処理部８２に所定の画像処理を実行させ、プリントエンジン１０ａ（ヘッド部１１）を制御してインクを吐出させてプリントシート上にプリント画像を形成する。具体的には、制御部８１は、駆動信号をヘッド部１１の各圧電アクチュエーターに供給してノズルからインクを吐出させる。画像処理部８２は、ＲＩＰ（Raster Image Processing）、色変換、ハーフトーニングなどの所定の画像処理を、プリントシートにプリントすべき画像の画像データに対して実行する。

【0034】

このようにして、制御部８１は、プリントエンジン１０ａに、ユーザーにより指定されたプリント画像データに基づくユーザー原稿画像をプリントさせる。

【0035】

この実施の形態では、制御部８１は、（ａ）ラインセンサー３１によって検出されたプリントシートの両端エッジの位置に基づきプリントシートのセンター位置をシートセンター実際位置として特定し、（ｂ）シートセンター実際位置に基づいてプリントすべき画像のセンター位置を調整する自動センタリング機能を有し、自動センタリング機能をハードウェア処理として実行する。具体的には、自動センタリング機能において、制御部８１は、主走査方向に沿って、プリントすべき画像の描画位置を、プリントエンジン１０ａの基準センター位置とシートセンター実際位置との差分だけ変更させている。この実施の形態では、記録ヘッド１ａ～１ｄにおけるノズルは移動しないため、プリントすべき画像の描画位置に応じて、プリントすべき画像における各画素に対応するノズルが変更される。

【0036】

このように、制御部８１は、プリントシートの位置に応じて、プリントすべき画像に対応するノズル（各画素に対応するノズル）を決定し、記録ヘッド１ａ～１ｄに、ノズルからインクを吐出させる。

【0037】

吐出不良ノズル検出部８３は、制御部８１を使用して、（ａ）記録ヘッド１ａ～１ｄで複数のテストパターンをプリントシートにプリントし、（ｂ）その複数のテストパターンの読取画像に基づいて吐出不良ノズル（つまり、不吐出、吐出ヨレ（着滴位置のズレ）などが発生しているノズル）を検出する。なお、テストパターンは、インク色ごとに独立してプリントされる。

【0038】

この実施の形態では、プリントシートの位置を検出するためのラインセンサー３１が設けられているため、例えば、上述のテストパターンがプリントシートにプリントされ、そのプリントシートが循環シート搬送部１０ｂ２で搬送されて、プリントされたテストパターンの画像がラインセンサー３１で読み取られる。

【0039】

このように、上述のように吐出不良ノズルの検出にラインセンサー３１が使用される場合には、自動的に吐出不良ノズルが検出され、テストパターンがプリントされたプリントシートが排出される。なお、ラインセンサー３１の代わりに、テストパターンがプリントされたプリントシートをただちに排出し、ユーザーによって画像読取装置７４にセットされたそのプリントシートの画像を画像読取装置７４で読み取るようにしてもよい。

【0040】

図４は、複数のテストパターンがプリントされたテストチャートの一例を示す図である。例えば図４に示すように、上述の複数のテストパターン１１２－１～１１２－Ｎは、それぞれ、所定周期Ｎの複数のノズル位置について補正処理（そのノズル位置のノズルが吐出不良ノズルと仮定した場合の擬似補正）が施されたライン状またはバンド状の画像である。そして、そのノズル位置は、互いに異なるオフセット位置Ｍで指定される。

【0041】

なお、実施の形態１では、所定周期Ｎは、予め特定される。

【0042】

なお、図４に示すように、補正処理が施されていないテストパターン１１１も、テストパターン１１２－１～１１２－Ｎとともにプリントされる。

【0043】

そして、吐出不良ノズル検出部８３は、（ａ）上述の複数のテストパターンの読取画像の濃度分布に基づいて、その複数のテストパターン１１２－１～１１２－Ｎから、吐出不良ノズルによる周期的な吐出不良位置の濃度が補正されているテストパターンを特定し、（ｂ）特定したテストパターンのオフセット位置Ｍｐを吐出不良ノズルデータとして記憶装置７３に記憶する。

【0044】

なお、記録ヘッド１ａ～１ｄのそれぞれについて（つまり、各インク色について）、互いに独立して、上述のようにして、吐出不良ノズルが補正処理の対象として特定される。

【0045】

補正処理部８４は、記憶装置７３からオフセット位置Ｍｐを読み出し、そのオフセット位置Ｍｐに基づいて複数の吐出不良ノズルを特定し、プリントすべき画像において、特定した複数の吐出不良ノズルに対応する補正処理を実行する。

【0046】

補正処理は、吐出不良ノズルを不吐出とし、吐出不良ノズルの吐出位置に隣接する吐出位置のノズルのインク吐出量を所定量に増加させる。

【0047】

上述の複数のテストパターン１１２－１～１１２－Ｎは、周期Ｎ（ノズル数）と同数のテストパターンであり、テストパターン１１２－Ｍについて、補正処理で液滴のインク量が増加されるノズル位置は、複数の整数ｎ＝０，・・・，（Ｐ／Ｎ）についてのＮ×ｎ＋Ｍ－１およびＮ×ｎ＋Ｍ＋１となる（ここで、Ｐは、主走査方向における全ノズル数（ドット位置の数）である）。また、補正処理で液滴のインク量がゼロにされるノズル位置は、複数の整数ｎ＝０，・・・，（Ｐ／Ｎ）についてのＮ×ｎ＋Ｍとなる。

【0048】

具体的には、補正処理では、プリントすべき画像において、吐出不良ノズルに対応する画素が特定され、その画素の画素値が、不吐出や増加されたインク吐出量に対応した値に変更される。

【0049】

次に、上記画像形成装置１０の動作について説明する。

【0050】

（ａ）吐出不良ノズルの検出

【0051】

吐出不良ノズル検出部８３は、制御部８１を使用して、画像出力部７１に、プリントシート上に、上述の複数のテストパターン１１１，１１２－１～１１２－Ｎをプリントさせる。

【0052】

次に、吐出不良ノズル検出部８３は、上述のように、ラインセンサー３１や画像読取装置７４を使用して、複数のテストパターンの読取画像を取得する。

【0053】

そして、吐出不良ノズル検出部８３は、各テストパターン１１１，１１２－１～１１２－Ｎの読取画像についてそれぞれ、主走査方向における読取画像の濃度分布を特定し、その濃度分布に基づいて、吐出不良ノズルによる周期的な吐出不良位置の濃度が補正されているテストパターンを特定し、（ｂ）特定したテストパターンのオフセット位置Ｍｐを吐出不良ノズルデータとして記憶装置７３に記憶する。

【0054】

図５は、吐出不良ノズルがない場合のテストパターン１１１とテストパターン１１１の読取画像の濃度分布（輝度分布）を説明する図である。図６は、周期的な吐出不良ノズル（周期：２０ノズル（２０ドット））がある場合のテストパターン１１１とテストパターン１１１の読取画像の濃度分布（輝度分布）を説明する図である。図６における吐出不良ノズルの周期は一例である。

【0055】

例えば図５に示すように、吐出不良ノズルがない場合には、読取画像の主走査方向の濃度分布はほぼ一定となり、例えば図６に示すように、周期的な吐出不良ノズルがある場合には、読取画像の主走査方向の濃度分布において、周期的なディップ（輝度分布のピーク）が現れる。例えば、テストパターンのドット解像度（ノズル密度）と読取画像の解像度が同一である場合、２０画素周期で濃度ディップ（輝度ピーク）が現れる。

【0056】

図７は、図６に示すような周期的な吐出不良ノズルがある場合におけるテストパターン１１２－３とテストパターン１１２－３の読取画像の濃度分布（輝度分布）を説明する図である。図８は、図６に示すような周期的な吐出不良ノズルがある場合におけるテストパターン１１２－４とテストパターン１１２－４の読取画像の濃度分布（輝度分布）を説明する図である。図９は、図６に示すような周期的な吐出不良ノズルがある場合におけるテストパターン１１２－５とテストパターン１１２－５の読取画像の濃度分布（輝度分布）を説明する図である。図１０は、図６に示すような周期的な吐出不良ノズルがある場合におけるテストパターン１１２－６とテストパターン１１２－６の読取画像の濃度分布（輝度分布）を説明する図である。

【0057】

例えば図７～図１０に示すように、テストパターン１１２－１からテストパターン１１２－Ｎまで、テストパターン１１２－ｉごとに補正処理のノズル位置が１ノズルずつシフトされており、例えば図９に示すように、補正処理において液滴インク量が増加された２つのドットが、吐出不良ノズルのドット位置の両側に位置するときに、読取画像の濃度分布におけるディップ（輝度分布におけるピーク）が小さくなり、その場合のオフセット位置（ここでは、Ｍ＝５）が、補正処理が良好となるオフセット位置Ｍｐとして特定される。

【0058】

このようにして、補正処理の対象となる吐出不良ノズルのオフセット位置Ｍｐが特定される。

【0059】

（ｂ）プリント時の動作

【0060】

制御部８１は、プリント要求を受け付けると、画像処理部８２で、そのプリント要求により指定された画像に対して画像処理を実行して、プリントすべき画像の画像データを取得し、画像出力部７１で、プリントシートを搬送し、その画像データに基づいて、そのプリントすべき画像をそのプリントシート上にプリントする。

【0061】

その際、補正処理部８４は、プリント開始前に記憶装置７３から上述の吐出不良ノズルデータ（オフセット位置Ｍｐ）を読み出して吐出不良ノズルを特定しておき、ラインセンサー３１でプリントシートの位置が検出されると、（ａ）上述の画像における各画素に対応するノズルを特定し、（ｂ）上述の画像における吐出不良ノズルに対応する画素を特定して、その画素およびその隣接画素に対する補正処理を実行する。そして、制御部８１は、補正処理後の画像データに基づいて上述のプリントを実行する。

【0062】

以上のように、上記実施の形態１によれば、複数のテストパターン１１２－１～１１２－Ｎは、それぞれ、所定周期Ｎの複数のノズル位置について補正処理が施されたライン状またはバンド状の画像であって、複数のテストパターンのノズル位置は、互いに異なるオフセット位置Ｍで指定されている。そして、吐出不良ノズル検出部８３は、（ａ）複数のテストパターン１１２－１～１１２－Ｎの読取画像の濃度分布に基づいて、複数のテストパターン１１２－１～１１２－Ｎから、吐出不良ノズルによる周期的な吐出不良位置の濃度が補正されているテストパターンを特定し、（ｂ）特定したテストパターンのオフセット位置Ｍｐを吐出不良ノズルデータとして記憶装置７３に記憶する。

【0063】

これにより、周期的な複数の吐出不良ノズルのノズル位置を個別的に記憶せず周期的な複数の吐出不良ノズルについてオフセット位置Ｍｐのみを記憶するため、吐出不良ノズルデータを記憶するための記憶容量が小さくて済む。

【0064】

また、テストパターンのドット解像度（ノズル密度）より読取画像の解像度が低くてもよく、その場合でも、周期的な濃度ディップ（輝度ピーク）の強度に基づいて、良好に、オフセット位置Ｍｐを特定することができる。

【0065】

実施の形態２．

【0066】

実施の形態２では、上述の周期Ｎが一意に特定されていない場合において、上述のオフセット位置Ｍとともに周期Ｎがテストパターンを使用して探索され特定される。

【0067】

実施の形態２では、複数の周期Ｎ（１）～Ｎ（Ｋ）のそれぞれについて、複数のテストパターンは、互いに異なるオフセット位置で指定された当該周期の複数のノズル位置について補正処理が施されたライン状またはバンド状の画像である。

【0068】

そして、実施の形態２では、吐出不良ノズル検出部８３は、（ａ）複数のテストパターンの読取画像の濃度分布に基づいて、複数のテストパターンから、吐出不良ノズルによる周期的な吐出不良位置の濃度が補正されているテストパターンを特定し、（ｂ）特定したテストパターンの周期Ｎ（ｐ）およびオフセット位置Ｍｐを吐出不良ノズルデータとして記憶装置７３に記憶する。

【0069】

そして、補正処理部８４は、記憶装置７３から周期Ｎ（ｐ）およびオフセット位置Ｍｐを読み出し、その周期Ｎ（ｐ）およびオフセット位置Ｍｐに基づいて複数の吐出不良ノズルを特定し、プリントすべき画像において、特定した複数の吐出不良ノズルに対応する補正処理を実行する。

【0070】

実施の形態２に係る画像形成装置のその他の構成および動作については、実施の形態１と同様であるので、その説明を省略する。

【0071】

なお、上述の実施の形態に対する様々な変更および修正については、当業者には明らかである。そのような変更および修正は、その主題の趣旨および範囲から離れることなく、かつ、意図された利点を弱めることなく行われてもよい。つまり、そのような変更および修正が請求の範囲に含まれることを意図している。

【0072】

例えば、上記実施の形態において、１枚のプリントシートにおいて、上述の複数のテストパターンをプリントし、その１枚のプリントシートからテストパターンの画像を上述の読取画像として取得するようにしてもよいし、複数枚のプリントシートに分散して上述の複数のテストパターンをプリントし、その複数枚のプリントシートからテストパターンの画像を上述の読取画像として取得するようにしてもよい。

【0073】

また、上記実施の形態において、非周期的な吐出不良ノズルがある場合には、その非周期的な吐出不良ノズルのノズル位置を吐出不良ノズルデータに含め、補正処理部８４は、周期的な吐出不良ノズルについての補正処理とは別に、非周期的な吐出不良ノズルについての補正処理を、そのノズル位置のデータに基づいて行うようにしてもよい。

【0074】

また、上記実施の形態において、テストパターン１１１の読取画像の濃度分布（濃度ディップ（輝度ピーク）の有無）に基づいて吐出不良ノズルの有無を判定し、吐出不良ノズルがあると判定した場合に、読取画像からの上述のオフセット位置Ｍｐなどの特定を行い、そうではない場合には、読取画像からの上述のオフセット位置Ｍｐなどの特定を行わないようにしてもよい。

【産業上の利用可能性】

【0075】

本発明は、例えば、インクジェット方式の画像形成装置に適用可能である。

【符号の説明】

【0076】

１０ 画像形成装置
７３ 記憶装置
８１ 制御部
８３ 吐出不良ノズル検出部
８４ 補正処理部

【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】

【図7】

【図8】

【図9】

【図10】