(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024158067
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】半導体ダイの押し上げ装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/67 20060101AFI20241031BHJP
【FI】
H01L21/68 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023072917
(22)【出願日】2023-04-27
(71)【出願人】
【識別番号】519294332
【氏名又は名称】株式会社新川
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】前田 徹
(72)【発明者】
【氏名】土川 陽平
【テーマコード(参考)】
5F131
【Fターム(参考)】
5F131AA04
5F131BA53
5F131BA54
5F131CA01
5F131CA24
5F131DA03
5F131DA33
5F131DA42
5F131DB22
5F131DB62
5F131EA07
5F131EB01
5F131EC33
5F131EC72
5F131EC74
(57)【要約】
【課題】ステージを磁気吸着する半導体ダイの押し上げ装置において、移動要素をスムーズに移動可能とする。
【解決手段】磁性体のステージ10と、上部に複数の磁石25、26が取り付けられて上端面22にステージ10を磁気吸着するホルダ20と、ホルダ20の中央に設けられた穴23の中に配置され、先端面がステージ10の上面11に設けられた開口12を通して上面11より低い第1位置と上面11より高い第2位置との間で移動して、半導体ダイ50をピックアップする際に、先端面がダイシングシート40の下面42から半導体ダイ50を押し上げる外側移動要素31と内側移動要素34とを備え、複数の磁石25、26は、隣接する磁石の磁極が異なるように穴23の外周部に取付けられる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ダイシングシートの表面に貼り付けられた半導体ダイをピックアップする際に前記半導体ダイを押し上げる半導体ダイの押し上げ装置であって、
前記ダイシングシートの下面を吸着する吸着面を含む磁性体のステージと、
上部に複数の磁石が取り付けられて上端面に前記ステージを磁気吸着するホルダと、
前記ホルダの中央に設けられた穴の中に配置され、先端面が前記ステージの前記吸着面に設けられた開口を通して前記吸着面より低い第1位置と前記吸着面より高い第2位置との間で移動して、前記半導体ダイをピックアップする際に、前記先端面が前記ダイシングシートの下面から前記半導体ダイを押し上げる複数の移動要素と、を備え、
複数の前記磁石は、隣接する磁石の磁極が異なるように前記穴の外周部に取付けられていること、
を特徴とする半導体ダイの押し上げ装置。
【請求項2】
請求項1に記載の半導体ダイの押し上げ装置であって、
複数の前記磁石は、隣接する磁石の磁極が周方向に交互に異なるように配置されていること、
を特徴とする半導体ダイの押し上げ装置。
【請求項3】
請求項1に記載の半導体ダイの押し上げ装置であって、
複数の前記磁石は、隣接する磁石の磁極が半径方向に異なるように配置されていること、
を特徴とする半導体ダイの押し上げ装置。
【請求項4】
請求項1に記載の半導体ダイの押し上げ装置であって、
前記複数の移動要素は、移動機構により前記第1位置から前記第2位置に移動され、自重により前記第2位置から前記第1位置に戻ること、
を特徴とする半導体ダイの押し上げ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダイシングシートの表面に貼り付けられた半導体ダイをピックアップする際に前記半導体ダイを押し上げる半導体ダイの押し上げ装置の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体ダイは、6インチや8インチの大きさのウェーハを所定の大きさに切断して製造される。切断の際には切断した半導体ダイがバラバラにならないように、下面にダイシングシートを貼り付け、表面側からダイシングソーなどによってウェーハを切断する。この際、下面に貼り付けられたダイシングシートは若干切り込まれるが切断されないで各半導体ダイを保持した状態となっている。そして切断された各半導体ダイは一つずつダイシングシートからピックアップされてダイボンディング等の次の工程に送られる。
【0003】
ダイシングシートから半導体ダイをピックアップする装置としては、複数の移動要素によりダイシングシートの下面から半導体ダイを押し上げる押し上げ装置が用いられている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、このような押し上げ装置では、いろいろな大きさの半導体ダイを押し上げられるように、移動要素と、移動要素が貫通する開口が設けられたステージが交換可能となっている場合がある。この場合、ステージは移動要素を収容するホルダの上部に磁気吸着で取付けられる。一方、移動要素は磁性体で構成されている為、磁石の吸引力によって移動要素の上下方向の移動が阻害される場合があった。
【0006】
そこで、本開示は、ステージを磁気吸着する半導体ダイの押し上げ装置において、移動要素をスムーズに移動可能とすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の半導体ダイの押し上げ装置は、ダイシングシートの表面に貼り付けられた半導体ダイをピックアップする際に半導体ダイを押し上げる半導体ダイの押し上げ装置であって、ダイシングシートの下面を吸着する吸着面を含む磁性体のステージと、上部に複数の磁石が取り付けられて上端面にステージを磁気吸着するホルダと、ホルダの中央に設けられた穴の中に配置され、先端面がステージの吸着面に設けられた開口を通して吸着面より低い第1位置と吸着面より高い第2位置との間で移動して、半導体ダイをピックアップする際に、先端面がダイシングシートの下面から半導体ダイを押し上げる複数の移動要素と、を備え、複数の磁石は、隣接する磁石の磁極が異なるように穴の外周部に取付けられていること、を特徴とする。
【0008】
これにより、磁石の磁束がホルダ中央の穴に収容された移動要素の中を通ることが抑制され、移動要素の上下方向の移動が阻害されることを抑制できる。
【0009】
本開示の半導体ダイの押し上げ装置において、複数の磁石は、隣接する磁石の磁極が周方向に交互に異なるように配置されてもよい。
【0010】
本開示の半導体ダイの押し上げ装置において、複数の磁石は、隣接する磁石の磁極が半径方向に異なるように配置されてもよい。
【0011】
本開示の半導体ダイの押し上げ装置において、複数の移動要素は、移動機構により第1位置から第2位置に移動され、自重により第2位置から第1位置に戻るようにしてもよい。
【0012】
これにより、簡便な構成で移動要素を上下方向に移動させることができる。
【発明の効果】
【0013】
本開示は、ステージを磁気吸着する半導体ダイの押し上げ装置において、移動要素をスムーズに移動可能とできる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】実施形態の半導体ダイの押し上げ装置を示す分解斜視図である。
【
図3】
図1に示す半導体ダイの押し上げ装置のホルダを上部から見た平面図である。
【
図4】
図1に示す半導体ダイの押し上げ装置の動作を示す説明図であって、移動要素の先端面が吸着面より低い第1位置にある状態を示す断面図である。
【
図5】
図1に示す半導体ダイの押し上げ装置の動作を示す説明図であって、移動要素の先端面が吸着面より高い第2位置にある状態を示す断面図である。
【
図6】他の実施形態の半導体ダイの押し上げ装置のホルダを上部から見た平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照しながら実施形態の半導体ダイの押し上げ装置100について説明する。
図1に示すように、半導体ダイの押し上げ装置100は、ステージ10と、ホルダ20と、移動体30とで構成されている。
【0016】
ステージ10は磁性体で構成された円板状の板部材である。上面11は、ダイシングシート40の下面42(
図4、5参照)を真空吸着する吸着面となっている。上面11の中央には、移動体30の突部33、36が貫通する開口12が設けられている。上面11の開口12の外側には、複数条の真空吸着溝13が設けられている。各真空吸着溝13の底部には、下面14まで貫通する真空孔(図示せず)が設けられている。
【0017】
ホルダ20は、上蓋付円筒状のケーシングである。ホルダ20の上蓋部の中央には四角い穴23が設けられている。穴23の内部には、移動体30の本体32、35が上下方向に移動可能に収容されている。穴23の外周部には、複数の磁石25、26が周方向に並べて取付けられている。各磁石25、26の各上面はホルダ20の上端面22から僅かに凹んでいる。磁石25と磁石26とは上面の磁極が異なっている。例えば、磁石25は上面がN極であり、磁石26は上面がS極である。このように、磁石25と磁石26とは、異なる磁極が周方向に交互に配置されるように穴23の外周部に取付けられている。つまり、隣接する磁石25と磁石26とは、磁極が異なるように穴23の外周部に取付けられている。また、穴23の外周部には、磁石25、26と並んで複数の真空孔29が配置されている。各真空孔29は図示しない真空装置に接続されて内部が真空となる。
【0018】
図2に示すように、移動体30は、外側移動要素31と内側移動要素34の複数の移動要素で構成される。外側移動要素31と内側移動要素34とは共に磁性体である。外側移動要素31は、四角環状の本体32と、本体32の上面から上方に突出する四角環状の突部33とで構成されている。内側移動要素34は四角環状の本体35と、本体35の上面から上方に突出する四角柱状の突部36とで構成されている。内側移動要素34の本体35と突部36とは、外側移動要素31の四角環状の本体32と突部33の内側に入れ子状に配置されている。また、本体32の外側面は、ホルダ20の穴23の内面にガイドされて
図2中の矢印91に示すように上下方向に移動する。
【0019】
次に、
図3を参照しながらホルダ20に取付けられた磁石25、26の間の磁束の流れについて説明する。以下の説明では、磁石25の上面はN極で、磁石26の上面はS極であるとして説明する。磁束は、
図3中の矢印92に示すように、磁石25の上面からホルダ20の外周部を回って磁石26の上面に流れる。尚、図示はしないが、磁石26の下面はN極で、磁石25の下面はS極となるから、各磁石25、26の下側では、磁束は磁石26の下面からホルダ20の下側の外周部を回って磁石25の下面に流れる。このように、各磁石25、26の磁束はホルダ20の外周部を流れるので、ホルダ20の中央に配置されている移動体30を通過する磁束は外周部よりも小さくなっている。
【0020】
ホルダ20の上端面22にステージ10の下面14を密着させると、ステージ10は磁石25、26の磁力によってホルダ20の上端面22に磁気吸着してホルダ20の上端面22に固定される。また、ステージ10の真空吸着溝13に設けられた真空孔はホルダ20に設けられた真空孔29と連通する。
【0021】
次に、
図4、5を参照しながら実施形態の半導体ダイの押し上げ装置100を用いて半導体ダイ50をピックアップする工程について、説明する。
【0022】
図4に示すように、表面41に半導体ダイ50が貼り付けられたダイシングシート40をステージ10の上面11に載置し、半導体ダイ50の位置がステージ10の開口12の位置となるように位置合わせする。この際、移動体30は、外側移動要素31の突部33の先端面と内側移動要素34の突部36の先端面とがステージ10の上面11よりも低い第1位置に位置している。
【0023】
次に図示しない真空装置によってホルダ20の真空孔29を真空にする。真空孔29はステージ10の真空孔と連通しているので、真空孔29が真空になると、ステージ10の真空孔と真空吸着溝13が真空となる。これにより、ダイシングシート40の下面42がステージ10の上面11に真空吸着される。
【0024】
次に
図5に示すように、図示しない移動機構により、外側移動要素31と内側移動要素34とを上方向に移動させる。そして、外側移動要素31の突部33の先端面と、内側移動要素34の突部36の先端面とをステージ10の上面11よりも上方に突出させて、各先端面をステージ10の上面11よりも高い第2位置まで上昇させる。この際、突部36の先端面が突部33の先端面よりも高くなるように内側移動要素34を上方向に移動させる。これにより、
図5に示すように、突部33の先端面と突部36の先端面とでダイシングシート40の下面42が押し上げられる。すると、ダイシングシート40の表面41と半導体ダイ50の下面との間に隙間ができ、半導体ダイ50の周辺部がダイシングシート40の表面41から剥がれる。この状態で、図示しないコレットによって半導体ダイ50をピックアップする。
【0025】
半導体ダイ50がピックアップされると、移動機構は外側移動要素31、内側移動要素34の上方への移動を開放する。先に説明したように、各磁石25、26の磁束はホルダ20の外周部を流れるので、ホルダ20の中央に配置されている移動体30を通過する磁束は外周部よりも小さくなっている。このため、磁性体であるステージ10と外側移動要素31、内側移動要素34との間を通過する磁束は小さく、磁力によって外側移動要素31、内側移動要素34がステージ10に吸着してしまうことが抑制される。このため、移動機構が外側移動要素31、内側移動要素34の上方への移動を開放すると、外側移動要素31、内側移動要素34は、自重で下方向に移動し、
図4に示す第1位置に戻る。
【0026】
以上、説明したように、実施形態の半導体ダイの押し上げ装置100は、各磁石25、26の磁束がホルダ20の中央の穴23に収容された外側移動要素31、内側移動要素34の中を通ることが抑制され、外側移動要素31、内側移動要素34の上下方向の移動が阻害されることを抑制できる。また、外側移動要素31、内側移動要素34は、自重により下方向に移動して第2位置から第1位置まで戻るので、移動機構を簡便な構成とすることができる。
【0027】
また、ホルダ20の磁石25、26は、周方向においてその磁極が異なるように配置されていると説明したがこれに限らない。例えば、
図6に示すように、半径方向に隣接する磁石25、26の磁極が異なるように配置してもよい。
図6では、磁石25を内周に配置し、磁石26を磁石25の外周で磁石26とホルダ20の半径方向に並ぶように配置したものである。この場合も、磁束は
図6中の矢印93に示すように穴23の外周部を通る。これにより、磁束が外側移動要素31、内側移動要素34の中を通ることが抑制され、外側移動要素31、内側移動要素34の上下方向の移動が阻害されることを抑制できる。
【符号の説明】
【0028】
10 ステージ、11 上面、12 開口、13 真空吸着溝、14 下面、20 ホルダ、22 上端面、23 穴、25、26 磁石、29 真空孔、30 移動体、31 外側移動要素、32、35 本体、33、36 突部、34 内側移動要素、40 ダイシングシート、41 表面、42 下面、50 半導体ダイ、100 半導体ダイの押し上げ装置。