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特開2024-158069電源回路、電圧モニタ回路および電源装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024158069
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】電源回路、電圧モニタ回路および電源装置
(51)【国際特許分類】
   H02J 7/02 20160101AFI20241031BHJP
【FI】
H02J7/02 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023072921
(22)【出願日】2023-04-27
(71)【出願人】
【識別番号】000006220
【氏名又は名称】ミツミ電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100093045
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 良男
(72)【発明者】
【氏名】柴田 浩平
【テーマコード(参考)】
5G503
【Fターム(参考)】
5G503AA01
5G503BA03
5G503BB01
5G503CA11
5G503GD02
(57)【要約】
【課題】簡易な回路でADCの動作電圧を生成できる電源回路、及び、それを有する電圧モニタ回路、電源装置を提供する。
【解決手段】N個(Nは2以上の整数)のセルを有するバッテリーの最も高い第1電圧が接続される第1端子と、前記バッテリーの最も低い第2電圧が接続される第2端子と、前記N個のセルから1つのセルの高電位と低電位を選択する選択回路と、前記高電位と前記低電位が入力されるアナログデジタル変換回路と、前記アナログデジタル変換回路の動作電圧を生成する電源回路と、前記アナログデジタル変換回路の信号を受け、前記信号の処理を行い、第3端子から外部装置に信号を出力する論理回路と、を有し、前記動作電圧は、前記高電位と前記低電位の中点とする第1動作電圧であるように構成した。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
N個(Nは2以上の整数)のセルを有するバッテリーの最も高い第1電圧が接続される第1端子と、
前記バッテリーの最も低い第2電圧が接続される第2端子と、
前記N個のセルから1つのセルの高電位と低電位を選択する選択回路と、
前記高電位と前記低電位が入力されるアナログデジタル変換回路と、
前記アナログデジタル変換回路の動作電圧を生成する電源回路と、
前記アナログデジタル変換回路の信号を受け、前記信号の処理を行い、第3端子から外部装置に信号を出力する論理回路と、を有し
前記動作電圧は、前記高電位と前記低電位の中点を基準とする第1動作電圧であることを特徴とする電源モニタ回路。
【請求項2】
前記選択回路により選択されたセルが前記バッテリーの最も高電位側のセルの場合、前記動作電圧は前記動作電圧の高電位を前記第1電圧とする第2動作電圧であり、
前記選択回路により選択されたセルが前記バッテリーの最も低電位側のセルの場合、前記動作電圧は前記動作電圧の低電位を前記第2電圧とする第3動作電圧であることを特徴とする請求項1に記載の電源モニタ回路。
【請求項3】
前記電源回路は、第1差動増幅器と、前記高電位と前記低電位の間に電気的に接続された第1抵抗回路と、前記第1端子と前記第2端子の間に電気的に接続された第2抵抗回路と、を有し、
前記中点は、前記第1抵抗回路により分圧された第3電圧であり、前記第1差動増幅器に、前記第2抵抗回路によって分圧された第4電圧と、第5電圧に基づいた電圧が入力されることを特徴とする請求項1または2に記載の電源モニタ回路。
【請求項4】
前記第1抵抗回路は、前記高電位側から順に直列接続された第1抵抗と第2抵抗とを有し、
前記第2抵抗回路は、前記第1端子側から順に直列接続された第3抵抗と第4抵抗と第5抵抗とを有し、
前記第3電圧は前記第1抵抗と前記第2抵抗の接続点の電圧であり、
前記第4電圧は前記第4抵抗と前記第5抵抗の接続点の電圧であり、
前記第5電圧は前記第5抵抗の低電位側の電圧であり、
第6電圧を前記第3抵抗と前記第4抵抗の接続点の電圧とし、
前記第3電圧と前記第6電圧を入力とし、出力が前記第1差動増幅器に入力される第2差動増幅器をさらに有することを特徴とする請求項3に記載の電源モニタ回路。
【請求項5】
前記電源回路は、前記第2抵抗回路の高電位側に配置された第1トランジスタと、前記第2抵抗回路の低電位側に配置された第2トランジスタとを有し、
前記第1差動増幅器は前記第1トランジスタ、及び、前記第2トランジスタを制御し、前記第1トランジスタのドレインと前記第2トランジスタのドレインの電圧を前記動作電圧として出力することを特徴とする請求項3または請求項4に記載の電源モニタ回路。
【請求項6】
N個(Nは2以上の整数)のセルを有するバッテリーと、
前記N個のセルから1つのセルの高電位と低電位を選択する選択回路と、
前記高電位と前記低電位が入力されるアナログデジタル変換回路と、
前記アナログデジタル変換回路の動作電圧を生成する電源回路と、
前記アナログデジタル変換回路の信号を受け、前記信号の処理を行う論理回路部と、を有し、
前記動作電圧は、前記高電位と前記低電位の中点を基準とする第1動作電圧であることを特徴とする電源装置。
【請求項7】
前記選択回路により選択されたセルが前記バッテリーの最も高電位側のセルの場合、前記動作電圧は当該動作電圧の高電位を前記バッテリーの最も高電位とする第2動作電圧であり、
前記選択回路により選択されたセルが前記バッテリーの最も低電位側のセルの場合、前記動作電圧は当該動作電圧の低電位を前記バッテリーの最も低電位とする第3動作電圧であることを特徴とする請求項6に記載の電源装置。
【請求項8】
N個(Nは2以上の整数)のセルを有するバッテリーの最も高い第1電圧が接続される第1ノードと、
前記バッテリーの最も低い第2電圧が接続される第2ノードと、
前記N個のセルから選択された1つのセルの高電位が入力される第3ノードと、前記選択された1つのセルの低電位が入力される第4ノードと、を有し、
アナログデジタル変換回路の動作電圧として、前記高電位と前記低電位の中点を基準とする第1動作電圧を生成とすることを特徴とする電源回路。
【請求項9】
前記第3ノードが、前記バッテリーの最も高電位側のセルの高電位の場合、前記動作電圧は当該動作電圧の高電位を前記第1電圧とする第2動作電圧であり、
前記第4ノードが、前記バッテリーの最も低電位側のセルの低電位の場合、前記動作電圧は当該動作電圧の低電位を前記第2電圧とする第3動作電圧であることを特徴とする請求項8に記載の電源回路。
【請求項10】
第1差動増幅器と、
前記第3ノードと前記第4ノードの間に電気的に接続された第1抵抗回路と、
前記第1ノードと前記第2ノードの間に電気的に接続された第2抵抗回路と、を更に有し、
前記中点は、前記第1抵抗回路により分圧された第3電圧であり、前記第1差動増幅器に、前記第2抵抗回路によって分圧された第4電圧と、前記第2抵抗回路によって分圧された第5電圧に基づいた電圧とが入力されることを特徴とする請求項8または9に記載の電源回路。
【請求項11】
前記第1抵抗回路は、前記第3ノード側から順に直列接続された第1抵抗と第2抵抗とを有し、
前記第2抵抗回路は、前記第1ノード側から順に直列接続された第3抵抗と第4抵抗と第5抵抗とを有し、
前記第3電圧は前記第1抵抗と前記第2抵抗の接続点の電圧であり、
前記第4電圧は前記第4抵抗と前記第5抵抗の接続点の電圧であり、
前記第5電圧は前記第5抵抗の低電位側の電圧であり、
第6電圧を前記第3抵抗と前記第4抵抗の接続点の電圧とし、前記第3電圧と前記第6電圧を入力とし、出力が前記第1差動増幅器に入力される第2差動増幅器をさらに有することを特徴とする請求項10に記載の電源回路。
【請求項12】
前記電源回路は、前記第2抵抗回路の高電位側に配置された第1トランジスタと、前記第2抵抗回路の低電位側に配置された第2トランジスタとを有し、
前記第1差動増幅器は前記第1トランジスタ、及び、前記第2トランジスタを制御し、前記第1トランジスタのドレインと前記第2トランジスタのドレインの電圧を前記動作電圧として出力することを特徴とする請求項10または請求項11に記載の電源回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電源用回路および電源装置に関し、例えば複数の電池セル(以降「セル」と略す)が直列接続されたバッテリーの電圧からアナログデジタル変換回路(以降「ADC」と称する場合がある)に用いられる電圧を生成する電源回路、及び、それを有する電圧モニタ回路、電源装置に利用することが有効な技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、二次電池としてリチウムイオン電池がデジタルカメラなど携帯機器にバッテリーとして搭載されている。機器を使用しているときに電池は放電を続けるため、使用中にバッテリー残量が無くなり突然停止してしまう可能性がある。また、過充電が発生すると二次電池が高温になり破裂、発火に至る可能性がある。
そのため、電池残量を正確に測定することは重要である。電池残量を正確に測定するため、測定した電池の電圧をデジタル処理する方法が提案されている(例えば特許文献1)。このとき、アナログデータをデジタル変換するためにADCが必要となる。
【0003】
ここで、ADCを動作させるためには、ADCに動作電圧を供給する必要がある。回路簡略化のために、ADCの動作電圧は二次電池の電圧を利用することが多い。また、複数のセルが直列接続された二次電池の場合、高電位側に配置されたセルの電圧を測定することがある。この時、高電位側のセルの電位とグランド電圧の電位差はADCの動作可能電圧を超えているため、測定対象のセルに応じて二次電池の電圧をADCの動作電圧に補正するレベルシフト回路が必要になる(例えば特許文献2)。
しかし、グランド電圧を基準として高電位側のセルの電位をADCの動作可能電圧の範囲内に補正するため、セルの電圧を一時的に保持するため複数のキャパシタ、複数のスイッチ回路、及び、スイッチ回路を駆動する制御回路が必要となり、回路が複雑になってしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2013/001682号公報
【特許文献2】特開2010-019810号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、ADCの動作電圧を測定対象のセルの高電位と低電位の中点を基準として生成する。その結果、簡易な回路でADCの動作電圧を生成できる電源回路、及び、それを有する電圧モニタ回路、電源装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明は、
N個(Nは2以上の整数)のセルを有するバッテリーの最も高い第1電圧が接続される第1端子と、前記バッテリーの最も低い第2電圧が接続される第2端子と、前記N個のセルから1つのセルの高電位と低電位を選択する選択回路と、前記高電位と前記低電位が入力されるアナログデジタル変換回路と、前記アナログデジタル変換回路の動作電圧を生成する電源回路と、前記アナログデジタル変換回路の信号を受け、前記信号の処理を行い、第3端子から外部装置に信号を出力する論理回路と、を有し、前記動作電圧は、前記高電位と前記低電位の中点を基準とする第1動作電圧であるように構成したものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、ADCの動作電圧を測定対象のセルの高電位と低電位の中点を基準として生成することにより、電源回路、及び、それを有する電圧モニタ回路、電源装置の構成を簡易にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明を適用した電源回路の一実施形態を有する電圧モニタ回路、及び、電源装置の一例を示す回路構成図である。
図2】本発明を適用した電源回路の一実施形態における電源生成方法の一例を示す図である。
図3】本発明を適用した電源回路の一実施形態における電源生成方法の別の一例を示す図である。
図4】本発明を適用した電源回路の一実施形態における電源生成方法のさらに別の一例を示す図である。
図5】本発明を適用した電源回路の一実施形態における電源生成方法のさらに別の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の好適な実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明を適用した電源回路の一実施形態を有する電圧モニタ回路、及び、電源装置1の一例を示す回路構成図である。図1に示すように、電源装置1はN個(Nは2以上の整数)のセルVC_N~VC_1が直列接続されたバッテリー2と、電圧モニタ回路10とマイコン3を有する。
【0010】
バッテリー2は、例えば、リチウムイオン電池などの充電可能な二次電池である。電圧モニタ回路10はバッテリー2のそれぞれのセルの電圧を測定することが可能である。電圧モニタ回路10はバッテリー2の高電位側が接続される端子T1と低電位側が接続される端子T2を有している。なお、端子T2はグランド電圧(VSS)に接続されていても良い。
また、それぞれのセルVC_N~VC_1の電圧を測定可能にするため、セルVC_N~VC_1の高電位側、及び、低電位側をそれぞれ接続する端子T_Vn-1~T_V1が設けられている。なお、最も高電位側に位置するセルVC_Nの高電位V_nの端子は端子T1と共通にすることができる。また、最も低電位側に位置するセルVC_1の低電位V_0の端子は端子T2と共通にすることができる。
【0011】
電圧モニタ回路10は、マイコン3とデータ通信を行うための端子T3を有している。例えば、マイコン3は、端子T3を通じてコマンドを入力し、論理回路14がそのコマンドに対応したセルVC_N~VC_1のいずれかを指定して電圧をモニタする。また、電圧モニタ回路10は、マイコン3の指示に基づき指定されたセルの電圧を測定した結果を、端子T3を通じてマイコン3に出力することができる。マイコン3は、例えば、バッテリーマネージメントシステムであり、電圧モニタ回路10が測定したセルの電圧に応じて電源装置を制御することができる。なお、図1ではシリアル通信を例として示しているため端子T3は1つであるが、パラレル通信の場合は端子T3が複数配置されていても良い。
【0012】
電圧モニタ回路10は、マルチプレクサ11、電源回路12、ADC13、論理回路14を有している。マルチプレクサ11にはそれぞれのセルの高電位側及び低電位側が接続されている。すなわち、マルチプレクサ11には、バッテリー2の端子T1、端子T2、端子T_Vn-1~T_V1が接続されている。論理回路14などの制御により、マルチプレクサ11は測定対象のセルの高電位側と低電位側を選択することができる。すなわち、マルチプレクサ11は測定対象セルを選択する選択回路として機能する。
【0013】
ここで、一例としてセルVC_N-1が測定対象となり、セルVC_N-1の高電位V_n-1、低電位V_n-2が選択された場合について説明する。マルチプレクサ11で選択された高電位V_n-1、低電位V_n-2は電源回路12に入力される。電源回路12は高電位V_n-1、低電位V_n-2を用いて、高電位V_n-1と低電位V_n-2を中点とする電圧を生成し、この電圧をADC13に動作電圧として供給することができる。
【0014】
電源回路12は、抵抗R1と抵抗R2を有する第1抵抗回路と、抵抗R3、抵抗R4及び抵抗R5を有する第2抵抗回路と、第2抵抗回路の両端に配置された第1トランジスタTr1と第2トランジスタTr2と、第1差動増幅器21と、第2差動増幅器22と、基準電圧Vrefとを有している。
【0015】
第1抵抗回路の抵抗R1と抵抗R2は直列接続されている。また、第1抵抗回路は高電位V_n-1と低電位V_n-2に電気的に接続されている。具体的には、第1抵抗回路の一端は高電位V_n-1に電気的に接続され、第1抵抗回路の他端は高電位V_n-1に電気的に接続され、高電位V_n-1側から順に抵抗R1、抵抗R2が配置されている。ここで抵抗R1と抵抗R2の接続点をノードV1とする。
第2抵抗回路の抵抗R5、抵抗R4、抵抗R3は直列接続されている。また、第2抵抗回路は、端子T1と端子T2に電気的に接続されている。また、抵抗R3~抵抗R5は高電位側(端子T1側)から順に抵抗R5、抵抗R4、抵抗R3と配置されている。
【0016】
第1トランジスタTr1は第2抵抗回路の高電位側に配置され、第2抵抗回路は第1トランジスタTr1を介して端子T1と接続されている。また、第2トランジスタTr2は第2抵抗回路の低電位側に配置され、第2抵抗回路は第2トランジスタTr2を介して端子T2に接続されている。ここで、第1トランジスタTr1は、例えば、P型のMOSトランジスタであり、ドレイン側が抵抗R5と接続されている。第2トランジスタTr2は、例えば、N型のMOSトランジスタであり、ドレイン側が抵抗R3と接続されている。
【0017】
第1トランジスタTr1と抵抗R5の接続点をノードVAとする。抵抗R5と抵抗R4の接続点をノードVcomとする。抵抗R4と抵抗R3の接続点をノードV2とする。抵抗R3の低電位側をノードV3とする。また、第2トランジスタTr2と抵抗R3の接続点をノードVBとする。なお、ノードV3はノードVBとほぼ同電位である。
【0018】
第1差動増幅器21は、例えば、完全差動増幅器であり、2つの入力端子IN+、IN-と2つの出力端子OUT+、OUT-、及び、出力端子OUT+、OUT-の差動出力電圧の出力同相電圧を設定する電圧が入力される端子VCを有している。第1差動増幅器21の入力端子IN+は基準電圧Vrefを介してノードV3に接続されている。すなわち、第1差動増幅器21の入力端子IN+にはノードV3の電位に基づいた電圧が入力されている。第1差動増幅器21の入力端子IN-はノードV2に接続されている。第1差動増幅器21の出力端子OUT+が第1トランジスタTr1のゲートに、出力端子OUT-が第2トランジスタTr2のゲートに接続されている。
【0019】
第2差動増幅器22は2つの入力端子IN+、IN-と1つの出力端子OUTを有している。第2差動増幅器22の入力端子IN-は第1抵抗回路のノードV1に接続されている。第2差動増幅器22の入力端子IN+は第2抵抗回路のノードVcomに接続されている。第2差動増幅器22の出力端子OUTは第1差動増幅器21の端子VCに接続されている。
ここで、第1差動増幅器21の入力端子IN+と入力端子IN-はイマジナリーショートされているため、抵抗R3の両端に加わる電位差Vr3は基準電圧Vrefと等しくなる。
また、第2差動増幅器22はコモンモードフィードバックアンプとして働いている。ノードV1とノードVcomはイマジナリーショートとなっており、ノードVcomの電位とノードV1の電位とを等しくするように第1差動増幅器21、第2差動増幅器22が動作する。
【0020】
ゆえに、抵抗値が抵抗R1=R2、抵抗R5=R4+R3の条件で、第1差動増幅器21は第1トランジスタTr1、第2トランジスタTr2を制御し、セルVCn-1の高電位V_n-1と低電位V_n-2の中点を基準とした動作電圧が第2抵抗回路からADC13へ出力される。また、ADC13に供給する動作電圧の幅(ノードVAとノードVBの差)は基準電圧Vrefと、抵抗R3と抵抗R4の抵抗値で設定することができる。
【0021】
ADC13の入力端子にはマルチプレクサ11で選択された高電位V_n-1と低電位V_n-2が入力され、高電位V_n-1と低電位V_n-2の差をデジタル信号として論理回路14に出力する。このデジタル信号がセルVC_N-1の電圧情報となり、この電圧情報を使用してセルVC_N-1の電池残量が計算される。
また、ADC13の動作電圧として高電位側にノードVAの電位、低電位側にノードVBの電位が供給されている。そのため、出力されるデジタル信号はノードVBの電位を基準としたデジタル信号となっている。
【0022】
論理回路14はデジタルレベルシフタ31とロジック回路32を有する。ロジック回路32の演算処理は、クロック信号などの他の回路から出力されるデジタル信号の処理、マイコン3への出力を考慮して、ロウレベルがVSS(=0V)であるVSS基準のデジタルデータで処理を行う。しかし、ADC13から出力されたデジタル信号のロウレベルは、ノードVBの電位が基準となっているため、VSSの電位が基準にならない場合がある。そこで、ADC13から出力されたデジタル信号は、デジタルレベルシフタ31に入力される。ここで、デジタルレベルシフタ31はデジタル信号の電圧基準をVSS基準となるように補正する。
【0023】
ここで、比較例として、セルの電圧を一時的に保持するために複雑な回路が必要となるアナログレベルシフトによりADC13の動作電圧をVSS基準に変更してからデジタル変換を行うことにより、ADC13がVSS基準のデジタル信号を出力するようにして、デジタルレベルシフタを用いずにロジック回路32にデジタル信号を入力する回路を想定する。一方、本発明は、ADC13の動作電圧を簡易な回路で生成してADC13でデジタル変換を行った後に、デジタルレベルシフタ31でデジタル信号の電圧基準をVSS基準に変更する。すなわち、本発明は比較例に比べて、セルの電圧を一時的に保持するための複雑な回路が不要である。そのため、ADC13のデジタル変換より前に処理を行うアナログ回路が簡易であり、ノイズに弱いアナログ回路の素子数を減らすことができる。その結果、回路素子に起因する誤差要因を減らすことができ、本発明は比較例に比べて測定電圧の精度を向上させることができる。
【0024】
デジタルレベルシフタ31で電圧基準が補正されたデジタル信号(セルVC_N-1の電圧値)はロジック回路32に入力される。その後、ロジック回路32は、シリアル通信のためのパラレル-シリアル変換や、セルの位置情報を加えるなどのデータ処理を適時行い、セルVC_Nの電圧値を端子T3からマイコン3に出力する。
【0025】
次に、図2~5を用いて本発明を適用した電源回路の電源生成方法の一例を説明する。
ここで、通常バッテリー2は高電圧を要求されることが多いため、ADC13の動作可能電圧を超えてしまう。例えば、バッテリー2の電圧を14V、ADC13の動作可能電圧を5Vとすると、バッテリー2が有するセルVC_N~VC_1からどのセルの電圧を選択して測定する場合でもノードVAとノードVBの電位差を5V以内にしなくてはならない。
【0026】
そこで、電源回路12の各抵抗、電圧の数値を下のように設定する。なお、次に示す数値は一例であり、本発明の概念に基づいた全ての数値が含まれる。なお、第1トランジスタ、第2トランジスタのオン抵抗などにより電圧降下が生じるが、計算思想を明確にするため第1トランジスタ、第2トランジスタのオン抵抗などによる電圧降下は考えないものとする。
条件A:基準電圧Vref=1.0V
条件B:抵抗R1、抵抗R2の抵抗値の比、R1:R2=1:1
条件C:抵抗R5、抵抗R4、抵抗R3の抵抗値の比、R5:R4:R3=5:3:2
また、抵抗R3の両端の電位差をVr3(=V2-V3)、抵抗R4の両端の電位差をVr4(=Vcom-V2)、抵抗R5の両端の電位差をVr5(=VA-Vcom)、ADC13の動作電圧をVDD_ADC(=VA-VB)とする。
【0027】
<ケース1(図2):測定セルVC_N-1、高電位V_n-1=12.0V、低電位V_n-2=8.0V>
第1差動増幅器21は完全差動アンプであり、入力端子IN+と入力端子IN-はイマジナリーショートされている、抵抗R3の両端に加わる電位差Vr3は基準電圧Vrefと等しくなるため、
Vr3= V2 - V3 = Vref = 1.0V・・・(1-1)
となる。抵抗R4の高電位側と抵抗R3の低電位側の電位差Vr4 + Vr3は(1-1)式の結果と、抵抗R4、抵抗R3の抵抗比から
Vr4 + Vr3 = Vr3 * (R4 + R3) / R3 =1.0*(3+2)/2 = 2.5V・・・(1-2)
となる。抵抗R5の両端に加わる電位差Vr5は(1-1)式の結果と、抵抗R5、抵抗R3の抵抗比から
Vr5 = Vr3 * R5 / R3 = 1.0*(5/2)=2.5V・・・(1-3)
となる。また、抵抗R1と抵抗R2の抵抗値を等しくすることによりノードV1の電位を高電位V_n-1、低電位V_n-2の中点にすることができる。
V1 = (V_n-1 - V_n-2) * R1 / (R1 + R2) + V_n-1 = (12.0-8.0)*1/(1+1)+8.0 = 10.0V・・・(1-4)
【0028】
また、第2差動増幅器22はコモンモードフィードバックアンプとして働くため、ノードV1とノードVcomはイマジナリーショートしており、ノードVcomの電圧をノードV1と等しくするように第1差動増幅器21が動作するため、
Vcom=V1=10.0V・・・(1-5)
となる。(1-1)式から(1-5)式の結果からノードVAとノードVBは、
VA = Vcom + Vr5 = 10.0V + 2.5V = 12.5V・・・(1-6)
VB = Vcom - (Vr4 + Vr3) = 10.0V - 2.5V = 7.5V・・・(1-7)
となる。ADC13に入力される動作電圧VDD_ADCはノードVAとノードVBの電位差であり、
VDD_ADC = VA - VB = 5.0V・・・(1-8)
となる。
【0029】
このように、電源回路12はセルVC_N-1の高電位と低電位の中点である10Vを動作電圧VDD_ADCとして出力することができる。また、基準電圧Vrefが動作電圧VDD_ADCの幅(最高電位と最低電位の差)を決める倍率となる。また、動作電圧VDD_ADCの幅は、抵抗R5~抵抗R3の抵抗比を変えることにより変更することができる。例えば、R5:R4:R3=2:1:1にすれば(1-2)(1-3)式の結果がそれぞれ2.0Vとなり、VDD_ADCの幅は4.0Vとなる。
【0030】
セルVC_N-1の電圧値Vcell_N-1はADC13によりデジタル信号に変換される。このデジタル信号は、デジタルレベルシフタ31により、ロウレベルをVSS(=0V)基準とするデジタル信号に変換される。このとき、デジタルレベルシフタ31により明らかな異常データを除くなどのノイズ除去や、デジタル信号の幅(ハイレベルとローレベルの差)の変更を行うことも可能である。
【0031】
<ケース2(図3):測定セルVC_4、高電位V_4=6.0V、低電位V_3=4.0V>
ケース1と同じ回路を用いて測定するため、条件Aから条件Cはケース1と同じである。第1差動増幅器21は完全差動アンプであり、入力端子IN+と入力端子IN-はイマジナリーショートされている、抵抗R3の両端に加わる電位差Vr3は基準電圧Vrefと等しくなるため、
Vr3= V2 - V3 = Vref = 1.0V・・・(2-1)
となる。抵抗R2の高電位側と抵抗R3の低電位側の電位差Vr4 + Vr3は(2-1)式の結果と、抵抗R4、抵抗R3の抵抗比から
Vr4 + Vr3 = Vr3 * (R4 + R3) / R3 =1.0*(3+2)/2 = 2.5V・・・(2-2)
となる。
【0032】
抵抗R5の両端に加わる電位差Vr5は(2-1)式の結果と、抵抗R5、抵抗R3の抵抗比から
Vr5 = Vr3 * R5 / R3 = 1.0*(5/2)=2.5V・・・(2-3)
となる。抵抗R1と抵抗R2の抵抗値を等しくすることによりノードV1の電位を高電位V_4、低電位V_3の中点にすることができる。
V1 = (V_4 - V_3) * R1 / (R1 + R2) + V_3 = (6.0-4.0)*1/(1+1)+4.0 = 5.0V・・・(2-4)
また、第2差動増幅器22はコモンモードフィードバックアンプとして働くため、ノードV1とノードVcomはイマジナリーショートしており、ノードVcomの電圧をノードV1と等しくするように第1差動増幅器21が動作するため、
Vcom=V1=5.0V・・・(2-5)
となる。(2-1)式から(2-5)式の結果からノードVAとノードVBは、
VA = Vcom + Vr5 = 5.0V + 2.5V = 7.5V・・・(2-6)
VB = Vcom - (Vr4 + Vr3) = 5.0V - 2.5V = 2.5V・・・(2-7)
ADC13に入力される動作電圧VDD_ADCはノードVAとノードVBの電位差であり、
VDD_ADC=VA - VB = 5.0V・・・(2-8)
となる。
【0033】
このように、電源回路12はセルVC_4の高電位と低電位の中点である5.0Vを動作電圧VDD_ADCとして出力することができる。また、基準電圧Vrefが動作電圧VDD_ADCの幅(最高電位と最低電位の差)を決める倍率となる。また、動作電圧VDD_ADCの幅は、抵抗R5~抵抗R3の抵抗比を変えることにより変更することができる。例えば、R5:R4:R3=2:1:1にすれば(2-2)(2-3)式の結果がそれぞれ2.0Vとなり、VDD_ADCの幅は4.0Vとなる。
【0034】
セルVC_4の電圧値Vcell_4はADC13によりデジタル信号に変換される。このデジタル信号は、デジタルレベルシフタ31により、ロウレベルをVSS(=0V)とするデジタル信号に変換される。このとき、デジタルレベルシフタ31により明らかな異常データを除くなどのノイズ除去や、デジタル信号の幅(ハイレベルとローレベルの差)の変更を行うことも可能である。
このように、セルVC_N-1よりも低電位側のセルVC_4の電圧を測定するときも、ケース1と同じ条件Aから条件Cで、電源回路12は動作電圧VDD_ADCをADC13の動作可能範囲内にすることができる。
【0035】
<ケース3(図4):測定セルVC_N、高電位V_n=14.0V、低電位V_n-1=12.0V>
ケース1、及び、ケース2と同じ回路を用いて測定するため、条件Aから条件Cはケース1、及び、ケース2と同じである。バッテリー2の最大電位が14.0Vのため、ADC13に供給される動作電圧の上限は14.0Vになる。そのため、電源回路12から出力される動作電圧は測定セルVC_Nの高電位V_nと低電位V_n-1の中点が基準とならない。
第1差動増幅器21は完全差動アンプであり、入力端子IN+と入力端子IN-はイマジナリーショートされている、抵抗R3の両端に加わる電位差Vr3は基準電圧Vrefと等しくなるため、
Vr3= V2 - V3 = Vref = 1.0V・・・(3-1)
となる。
【0036】
抵抗R2の高電位側と抵抗R3の低電位側の電位差Vr4 + Vr3は(3-1)式の結果と、抵抗R4、抵抗R3の抵抗比から
Vr4 + Vr3 = Vr3 * (R4 + R3) / R3 =1.0*(3+2)/2 = 2.5V・・・(3-2)
となる。抵抗R5の両端に加わる電位差Vr5は(3-1)式の結果と、抵抗R5、抵抗R3の抵抗比から
Vr5 = Vr3 * R5 / R3 = 1.0*(5/2)=2.5V・・・(3-3)
となる。ノードV1は抵抗R1と抵抗R2の抵抗比から
V1 = (V_n - V_n-1) * R1 / (R1 + R2) + Vn-1 = (14.0-12.0)*1/(1+1)+12.0 = 13.0V・・・(3-4)
となる。
【0037】
また、第2差動増幅器22はコモンモードフィードバックアンプとして働くため、ノードV1とノードVcomはイマジナリーショートしており、ノードVcomの電圧をノードV1と等しくするように第1差動増幅器21が動作するため、
Vcom=V1=13.0V・・・(3-5)
となる。(3-3)式から(3-5)式の結果からノードVAは、第2差動増幅器22はコモンフィードバックアンプとして動作すれば、(3-6)式のようになる。
VA = Vcom + Vr5 = 13.0V + 2.5V = 15.5V・・・(3-6)
【0038】
しかし、バッテリー2から供給される最大電位が14.0Vとなるため、ノードVAは14.0V以上にはならない。すなわち、第2差動増幅器22はコモンフィードバックアンプとして機能せず、第1差動増幅器21は第1トランジスタTr1がバッテリー2から供給される最大電位をノードVAへ出力するよう制御し、第2トランジスタTr2がノードVBをノードVAに対して、指定した電位差となるように制御する。その結果、(3-7)式のようにノードVAはバッテリー2から供給される最高電位であるV_n=14.0Vとなる。
VA = V_n = 14.0V・・・(3-7)
【0039】
第2差動増幅器22はコモンフィードバックアンプとして機能しないため、ノードVBは(3-2)式、(3-3)式より
VB = VA - (Vr5+Vr4+Vr3) = 14.0V - 5.0V = 9.0V・・・(3-8)
となる。ADC13に入力される動作電圧VDD_ADCは14.0Vと9.0Vであり、ADC13に供給される動作電圧VDD_ADCは、ノードVAとノードVBの電位差で、
VDD_ADC=VA-VB=5.0V・・・(3-9)
となる。
【0040】
このように、マルチプレクサ11により選択されたセルがバッテリー2の最も高電位側のセルVC_Nの場合、電源回路12は、ADC13に供給する動作電圧の基準をセルVC_Nの高電位と低電位の中点である13.0Vにできない。
しかし、電源回路12は、ノードVAから動作電圧VDD_ADCの高電位として、セルVC_Nの高電位を出力することができる。また、電源回路12は、ノードVBから動作電圧VDD_ADCの低電位として、ノードVAから抵抗R3~抵抗R5の電圧降下を考慮した電位を出力することができる。
その結果、動作電圧VDD_ADCとして5.0VをADC13に供給できる。ここで、デジタル信号の波形のハイ、ローを決める電位差となる動作電圧VDD_ADCの幅はケース1、ケース2と同じ5.0Vにできる。
【0041】
また、選択したセルが最も高電位側のセルVC_Nでない場合でも、(3-10)式を満たす場合は、電源回路12は(3-7)式から(3-9)式となる電圧を生成する。
Vcom+Vr5>V_n(Nは整数)・・・(3-10)
また、基準電圧Vrefが動作電圧VDD_ADCの幅(最高電位と最低電位の差)を決める倍率となる。また、動作電圧VDD_ADCの幅は、抵抗R5~抵抗R3の抵抗比を変えることにより変更することができる。例えば、R5:R4:R3=2:1:1にすれば(3-2)(3-3)式の結果がそれぞれ2.0Vとなり、VDD_ADCの幅は4.0Vとなる。
【0042】
セルVC_Nの電圧値Vcell_nはADC13によりデジタル信号に変換される。このデジタル信号は、デジタルレベルシフタ31により、ロウレベルをVSS(=0V)とするデジタル信号に変換される。このとき、デジタルレベルシフタ31により明らかな異常データを除くなどのノイズ除去や、デジタル信号の幅(ハイレベルとローレベルの差)の変更を行うことも可能である。
このように、最も高電位側のセルVC_Nを選択したときでも、電源回路12はケース1、ケース2と同じ条件Aから条件Cで、電源回路12は動作電圧VDD_ADCをADC13の動作可能範囲内にすることができる。
【0043】
<ケース4(図5):測定セルVC_1、高電位V_1=2.0V、低電位V_0=0V>
ケース1からケース3と同じ回路を用いて測定するため、条件Aから条件Cはケース1、からケース3と同じである。バッテリー2の最低電位が0Vのため、ADC13に供給される動作電圧の下限は0Vになる。そのため、電源回路12から出力される動作電圧は測定セルVC_1の高電位V_1と低電位V_0の中点にならない場合がある。
【0044】
第1差動増幅器21は完全差動アンプであり、入力端子IN+と入力端子IN-はイマジナリーショートされている、抵抗R3の両端に加わる電位差Vr3は基準電圧Vrefと等しくなるため、
Vr3= V2 - V3 = Vref = 1.0V・・・(4-1)
となる。抵抗R4の高電位側と抵抗R3の低電位側の電位差Vr4 + Vr3は(4-1)式の結果と、抵抗R4、抵抗R3の抵抗比から
Vr4 + Vr3 = Vr3 * (R4 + R3) / R3 =1.0*(3+2)/2 = 2.5V・・・(4-2)
となる。
抵抗R5の両端に加わる電位差Vr5は(4-1)式の結果と、抵抗R5、抵抗R3の抵抗比から
Vr5 = Vr3 * R5 / R3 = 1.0*(5/2)=2.5V・・・(4-3)
となる。ノードV1は抵抗R1と抵抗R2の抵抗比から
V1 = (V_1 - V_0) * R1 / (R1 + R2) + V_0 = (2.0-0.0)*1/(1+1)+0 = 1.0V・・・(4-4)
となる。
【0045】
また、第2差動増幅器22はコモンモードフィードバックアンプとして働くため、ノードV1とノードVcomはイマジナリーショートしており、ノードVcomの電圧をノードV1と等しくするように第1差動増幅器21が動作するため、
Vcom=V1=1.0V・・・(4-5)
となる。(4-3)式から(4-5)式の結果からノードVBは、第2差動増幅器22はコモンフィードバックアンプとして動作すれば、(4-6)式のようになる。
VB = Vcom - (Vr4 + Vr3) = 1.0V - 2.5V = -1.5V・・・(4-6)
【0046】
しかし、バッテリー2から供給される最低電位が0Vとなるため、ノードVBは0V以下にはならない。すなわち、第2差動増幅器22はコモンフィードバックアンプとして機能せず、第1差動増幅器21は第2トランジスタTr2がバッテリー2から供給される最低電位をノードVBへ出力するよう制御し、第1トランジスタTr1がノードVAをノードVBに対して、指定した電位差となるように制御する。その結果、(4-7)式のようにノードVBはバッテリー2から供給される最低電位であるV_0=0Vとなる。
VB = V_0 = 0V・・・(4-7)
【0047】
第2差動増幅器22はコモンフィードバックアンプとして機能しないため、ノードVAは(4-2)式、(4-3)式より、
VA = VB + (Vr5+Vr4 + Vr3) = 0V + 5.0V = 5.0V・・・(4-8)
となる。ADC13に入力される動作電圧VDD_ADCは5.0Vと0Vであり、ADC13に供給される動作電圧VDD_ADCは、ノードVAとノードVBの電位差で、
VDD_ADC=VA-VB=5.0V・・・(4-9)
となる。
【0048】
このように、マルチプレクサ11により選択されたセルがバッテリー2の最も低電位側のセルVC_1の場合、電源回路12は、ADC13に供給する動作電圧の基準をセルVC_1の高電位と低電位の中点である1.0Vにできない。
しかし、電源回路12は、ノードVBから動作電圧VDD_ADCの低電位として、セルVC_1の低電位を出力することができる。また、電源回路12は、ノードVAから動作電圧VDD_ADCの高電位として、ノードVBから抵抗R3~抵抗R5の電圧上昇を考慮した電位を出力することができる。
その結果、動作電圧VDD_ADCとして5.0VをADC13に供給できる。ここで、デジタル信号の波形のハイ、ローを決める電位差となる動作電圧VDD_ADCの幅はケース1からケース3と同じ5.0Vにできる。
【0049】
また、選択したセルが最も低電位側のセルVC_1でない場合でも、(4-10)式を満たす場合は、電源回路12は(4-7)式から(4-9)式となる電圧を生成する。
Vcom - Vr5 < V_0・・・(4-10)
また、基準電圧Vrefが動作電圧VDD_ADCの幅(最高電位と最低電位の差)を決める倍率となる。また、動作電圧VDD_ADCの幅は、抵抗R5~抵抗R3の抵抗比を変えることにより変更することができる。例えば、R5:R4:R3=2:1:1にすれば(4-2)(4-3)式の結果がそれぞれ2.0Vとなり、VDD_ADCの幅は4.0Vとなる。
【0050】
セルVC_Nの電池残量Vcell_1はADC13によりデジタル信号に変換される。このデジタル信号は、デジタルレベルシフタ31により、ロウレベルをVSS(=0V)とするデジタル信号に変換される。このとき、デジタルレベルシフタ31により明らかな異常データを除くなどのノイズ除去や、デジタル信号の幅(ハイレベルとローレベルの差)の変更を行うことも可能である。
このように、最も低電位側のセルVC_1を選択したときでも、電源回路12はケース1~ケース3と同じ条件Aから条件Cで、電源回路12は動作電圧VDD_ADCをADC13の動作可能範囲内にすることができる。
【0051】
以上、本発明を実施形態に基づいて説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。他の実施形態の一部又は全部との組み合わせや置換などの種々の変形及び改良が、本発明の範囲内で可能である。例えば、抵抗素子としてトランジスタを用いることも可能である。また、例えば、電源回路は電源装置に内蔵されずに、対象製品に取り付けられてもよい。
【符号の説明】
【0052】
1…電源装置、2…バッテリー、3…マイコン、11…マルチプレクサ、12…電源回路、13…ADC(アナログデジタル変換回路)、14…論理回路、21…第1差動増幅器、22…第2差動増幅器、31…デジタルレベルシフタ、32…ロジック回路、Tr1…第1トランジスタ、Tr2…第2トランジスタ
図1
図2
図3
図4
図5