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  • 特開-高電圧試験装置 図1
  • 特開-高電圧試験装置 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024158073
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】高電圧試験装置
(51)【国際特許分類】
   G01R 31/26 20200101AFI20241031BHJP
【FI】
G01R31/26 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023072933
(22)【出願日】2023-04-27
(71)【出願人】
【識別番号】000108797
【氏名又は名称】エスペック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100136353
【弁理士】
【氏名又は名称】高尾 建吾
(72)【発明者】
【氏名】徳永 裕太
【テーマコード(参考)】
2G003
【Fターム(参考)】
2G003AA02
2G003AB01
2G003AC08
2G003AE09
2G003AH06
(57)【要約】
【課題】ヒューズ素子及び大抵抗値の保護抵抗を使用することなく、大電流又はサージ電流に起因する試験対象物の焼損又は周辺機器の故障を回避することが可能な、高電圧試験装置を得る。
【解決手段】高電圧試験装置は、試験対象物に対する高電圧試験を実施する高電圧試験装置であって、前記試験対象物に印加する高電圧を出力する電源と、前記電源と前記試験対象物との間を流れる電流の電流値を検出する検出回路と、前記電源と前記試験対象物との間を導通接続又は導通遮断する切替回路と、前記切替回路と前記試験対象物との間に接続された定電流回路と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
試験対象物に対する高電圧試験を実施する高電圧試験装置であって、
前記試験対象物に印加する高電圧を出力する電源と、
前記電源と前記試験対象物との間を流れる電流の電流値を検出する検出回路と、
前記電源と前記試験対象物との間を導通接続又は導通遮断する切替回路と、
前記切替回路と前記試験対象物との間に接続された定電流回路と、
を備える、高電圧試験装置。
【請求項2】
前記検出回路によって検出された前記電流値がしきい値以下である場合には前記電源と前記試験対象物との間を導通接続し、前記検出回路によって検出された前記電流値が前記しきい値超である場合には前記電源と前記試験対象物との間を導通遮断するよう、前記切替回路を制御する制御部をさらに備える、請求項1に記載の高電圧試験装置。
【請求項3】
前記定電流回路と前記試験対象物との間に接続された保護抵抗をさらに備える、請求項1に記載の高電圧試験装置。
【請求項4】
前記高電圧試験装置は、複数の試験対象物に対して高電圧試験を並行して実施可能であり、
前記電源は、前記複数の試験対象物に対し共通に設けられ、
前記検出回路、前記切替回路、及び前記定電流回路は、前記複数の試験対象物の各々に対応して個別に設けられる、請求項1に記載の高電圧試験装置。
【請求項5】
前記試験対象物が配置される内部空間を有し、前記内部空間の環境を制御する試験槽をさらに備える、請求項1に記載の高電圧試験装置。
【請求項6】
前記定電流回路と前記試験対象物との間に接続され、前記試験槽内に配置された保護抵抗をさらに備える、請求項5に記載の高電圧試験装置。
【請求項7】
前記定電流回路は、前記試験槽外において前記試験槽に近接して配置されている、請求項5に記載の高電圧試験装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高電圧試験装置に関する。
【背景技術】
【0002】
パワーMOSFET等を試験対象物とする高温逆バイアス試験では、試験対象物に高温かつ高電圧のストレスを印加することによって、試験対象物が絶縁破壊を起こすまでの時間を測定する。
【0003】
試験対象物が絶縁破壊を起こすと、高電圧側の電極(例えばドレイン電極)と低電圧側の電極(例えばソース電極)とが短絡するため、電源と試験対象物とを含む閉回路に大電流又はサージ電流が流れる。その結果、当該大電流又はサージ電流に起因して、試験対象物が焼損し又は閉回路上の周辺機器が故障することがある。
【0004】
そこで、背景技術に係る試験装置では、閉回路の高電圧側の配線上にヒューズ素子又は保護抵抗を配置することによって、試験対象物の焼損又は周辺機器の故障に対する対策がとられている。
【0005】
なお、特許文献1には、電源である蓄電池と試験対象物であるダイオードとを含む閉回路の配線上に可変抵抗器及びヒューズが直列に配置された回路構成の試験装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭61-139767号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
高電圧用のヒューズ素子は非常に高価であるため、試験を行う度にヒューズ素子を交換したのでは試験コストが増大する。また、大電流によってヒューズ素子が完全には切断されずに一部が残ってしまった場合には、残ったヒューズ素子が要因となって断続的に放電が発生し、その断続的な放電が周辺機器の故障を誘発する可能性がある。
【0008】
また、サージ電流等に対する十分な保護効果を得るためには、数10kΩ~数100kΩ程度の大きい抵抗値を有する抵抗素子を保護抵抗として使用する必要がある。従って、保護抵抗での電圧降下に起因して試験対象物に印加すべき電圧値が低下し、また、大電流が流れた時の大きな発熱に耐え得るよう耐電圧及び定格電力が大きい抵抗素子を使用する必要があるため、試験装置の設計上の障害となっている。
【0009】
本発明は、かかる問題を解決するために成されたものであり、ヒューズ素子及び大抵抗値の保護抵抗を使用することなく、大電流又はサージ電流に起因する試験対象物の焼損又は周辺機器の故障を回避することが可能な、高電圧試験装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第1態様に係る高電圧試験装置は、試験対象物に対する高電圧試験を実施する高電圧試験装置であって、前記試験対象物に印加する高電圧を出力する電源と、前記電源と前記試験対象物との間を流れる電流の電流値を検出する検出回路と、前記電源と前記試験対象物との間を導通接続又は導通遮断する切替回路と、前記切替回路と前記試験対象物との間に接続された定電流回路と、を備える。
【0011】
第1態様によれば、定電流回路は、試験対象物が絶縁破壊を起こした後に、試験対象物又は周辺機器に流れる電流を一定電流値に制限する。また、電源から出力される高電圧の大部分は、定電流回路が負担する。また、検出回路が大電流を検出した場合には切替回路が電源と試験対象物との間を導通遮断することによって、定電流回路からの発熱を抑制できる。その結果、ヒューズ素子及び大抵抗値の保護抵抗を使用することなく、大電流又はサージ電流に起因する試験対象物の焼損又は周辺機器の故障を回避することが可能となる。しかも、定電流回路を切替回路と試験対象物との間に接続することによって、定電流回路と試験対象物との間の配線長を短くできる。これにより、高電圧の印加によって当該配線に蓄積される電荷量を抑制できるため、試験対象物が絶縁破壊を起こした瞬間に当該電荷が試験対象物に向かって流れたとしても、当該電荷に起因する試験対象物の焼損又は周辺機器の故障を抑制することが可能となる。
【0012】
本発明の第2態様に係る高電圧試験装置は、第1態様において、前記検出回路によって検出された前記電流値がしきい値以下である場合には前記電源と前記試験対象物との間を導通接続し、前記検出回路によって検出された前記電流値が前記しきい値超である場合には前記電源と前記試験対象物との間を導通遮断するよう、前記切替回路を制御する制御部をさらに備える。
【0013】
第2態様によれば、検出回路によって検出された電流値がしきい値以下である場合には電源と試験対象物との間を導通接続することによって高電圧試験を継続でき、検出回路によって検出された電流値がしきい値超である場合には電源と試験対象物との間を導通遮断することによって定電流回路からの発熱を抑制できる。
【0014】
本発明の第3態様に係る高電圧試験装置は、第1又は第2態様において、前記定電流回路と前記試験対象物との間に接続された保護抵抗をさらに備える。
【0015】
第3態様によれば、高電圧の印加によって定電流回路と保護抵抗との間の配線に蓄積された電荷が、試験対象物が絶縁破壊を起こした瞬間に試験対象物に向かって流れ始めたとしても、保護抵抗の電流制限作用によって当該電荷の急激な移動を抑制できる。従って、当該蓄積電荷に起因する試験対象物の焼損又は周辺機器の故障を回避できる。しかも、配線に蓄積される電荷量は限られており、また、電源から出力される高電圧の大部分は定電流回路が負担するため、保護抵抗として大抵抗値の抵抗素子を使用する必要がない。従って、大抵抗値の保護抵抗に起因して試験対象物に印加すべき電圧値が低下すること及び試験装置の設計上の障害となることを回避できる。
【0016】
本発明の第4態様に係る高電圧試験装置は、第1~第3態様のいずれか一つにおいて、前記高電圧試験装置は、複数の試験対象物に対して高電圧試験を並行して実施可能であり、前記電源は、前記複数の試験対象物に対し共通に設けられ、前記検出回路、前記切替回路、及び前記定電流回路は、前記複数の試験対象物の各々に対応して個別に設けられる。
【0017】
第4態様によれば、複数の試験対象物に対して高電圧試験を並行して実施でき、また、検出回路、切替回路、及び定電流回路は、複数の試験対象物の各々に対応して個別に設けられるため、一の試験対象物が絶縁破壊を起こしたとしても他の試験対象物に対する高電圧試験を継続できる。その結果、複数の試験対象物に対する高電圧試験を効率化することが可能となる。
【0018】
本発明の第5態様に係る高電圧試験装置は、第1~第4態様のいずれか一つにおいて、前記試験対象物が配置される内部空間を有し、前記内部空間の環境を制御する試験槽をさらに備える。
【0019】
第5態様によれば、試験対象物を試験槽内に配置することにより、試験対象物に環境ストレスを印加できる。その結果、パワーMOSFET等を試験対象物とする高温逆バイアス試験等を実施することが可能となる。
【0020】
本発明の第6態様に係る高電圧試験装置は、第5態様において、前記定電流回路と前記試験対象物との間に接続され、前記試験槽内に配置された保護抵抗をさらに備える。
【0021】
第6態様によれば、高電圧の印加によって定電流回路と保護抵抗との間の配線に蓄積された電荷が、試験対象物が絶縁破壊を起こした瞬間に試験対象物に向かって流れ始めたとしても、保護抵抗の電流制限作用によって当該電荷の急激な移動を抑制できる。従って、当該蓄積された電荷に起因する試験対象物の焼損又は周辺機器の故障を回避できる。しかも、配線に蓄積される電荷量は限られており、また、電源から出力される高電圧の大部分は定電流回路が負担するため、保護抵抗として大抵抗値の抵抗素子を使用する必要がない。従って、大抵抗値の保護抵抗に起因して試験対象物に印加すべき電圧値が低下すること及び試験装置の設計上の障害となることを回避できる。さらに、試験槽内に配置することによって保護抵抗を試験対象物に近接して配置できるため、保護抵抗と試験対象物との間の配線に蓄積される電荷による影響を抑制することが可能となる。
【0022】
本発明の第7態様に係る高電圧試験装置は、第5又は第6態様において、前記定電流回路は、前記試験槽外において前記試験槽に近接して配置されている。
【0023】
第7態様によれば、定電流回路を試験槽外において試験槽に近接して配置することにより、定電流回路と試験対象物との間の配線長を短くできる。従って、高電圧の印加によって当該配線に蓄積される電荷量を抑制できるため、試験対象物が絶縁破壊を起こした瞬間に当該電荷が試験対象物に向かって流れたとしても、当該電荷に起因する試験対象物の焼損又は周辺機器の故障を抑制することが可能となる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、ヒューズ素子及び大抵抗値の保護抵抗を使用することなく、大電流又はサージ電流に起因する試験対象物の焼損又は周辺機器の故障を回避することが可能な、高電圧試験装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明の実施形態に係る高電圧試験装置の全体構成を簡略化して示す図である。
図2】電源及び試験対象物を含む閉回路の回路構成を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施形態について、図面を用いて詳細に説明する。なお、異なる図面において同一の符号を付した要素は、同一又は相応する要素を示すものとする。
【0027】
図1は、本発明の実施形態に係る高電圧試験装置1の全体構成を簡略化して示す図である。また、図2は、電源21及び試験対象物42を含む閉回路61の回路構成を示す回路図である。
【0028】
高電圧試験装置1によって実施される高電圧試験は、供試品である試験対象物42に高電圧を印加することによって供試品の耐久性又は性能等を評価するための試験である。高電圧試験には、パワーMOSFET等を試験対象物42とする高温逆バイアス試験又は耐電圧試験等が含まれる。例えば高温逆バイアス試験では、試験対象物42への高温及び高電圧のストレス印加を長時間継続することによって、試験対象物42が破壊に至るまでの時間を測定及び記録する。
【0029】
高電圧試験装置1は、電源21及び試験対象物42を含む閉回路61と、閉回路61上において電源21と試験対象物42との間の高電圧側経路に配置された保護回路51とを備えている。保護回路51は、電源21側からこの順に接続された、検出回路22、切替回路23、及び定電流回路31を備えている。
【0030】
また、高電圧試験装置1は、試験槽13を備えている。試験槽13は、試験対象物42が配置される内部空間を有し、当該内部空間の温度又は湿度等の環境を制御する。試験槽13は、例えば、内部空間の温度を200~300℃程度の高温に制御可能である。
【0031】
試験対象物42は、パワー半導体等である。パワー半導体は、パワーMOSFET等である。試験対象物42は、治具43に固定され、治具43がラック44に取り付けられた状態で、試験槽13の内部空間に収容される。
【0032】
図2に示すように、試験対象物42は、例えばN型チャネルのパワーMOSFETであり、高電圧側のドレイン電極Dと、低電圧側のソース電極Sと、ゲート電圧の印加によってドレイン電極D及びソース電極S間を導通状態又は絶縁状態に制御するためのゲート電極Gとを有する。ゲート電極Gには、電流計71及びゲート電源72を含むゲート回路73が接続されている。ゲート電源72は、逆バイアスのゲート電圧をゲート電極Gに印加することにより、ドレイン電極D及びソース電極S間を絶縁状態に制御する。
【0033】
電源21は、高電圧試験において試験対象物42に印加するための高電圧を出力する。高電圧は、例えば600~10000V程度である。図1に示すように、電源21は、検出回路22に接続された正極と、中継コネクタ26に接続された負極とを有している。中継コネクタ26は、中継コネクタ32及びコネクタ46を介して、試験対象物42のソース電極S(図2参照)に接続されている。中継コネクタ26,32及びコネクタ46は、閉回路61上において電源21と試験対象物42との間の低電圧側経路に配置されている。コネクタ46は、試験槽13の壁面に形成されており、試験槽13の内部配線と外部配線とを接続する。
【0034】
検出回路22は、例えば高電圧用の電流計であり、閉回路61上を電源21から試験対象物42に向かって流れる電流の電流値を検出する。
【0035】
切替回路23は、例えば高電圧用の遮断リレーであり、物理接点の開閉を制御することによって電源21と試験対象物42との間を導通遮断(つまり電気的に遮断)又は導通接続(つまり電気的に接続)する。
【0036】
高電圧試験装置1はさらにマイコン等の制御部24を備えている。制御部24は、検出回路22によって検出された電流値が所定のしきい値以下である場合には電源21と試験対象物42との間を導通接続し、検出回路22によって検出された電流値が上記しきい値超である場合には電源21と試験対象物42との間を導通遮断するよう、切替回路23の物理接点を制御する。しきい値は、任意に設定可能である。例えば、試験対象物42を完全に絶縁破壊させる場合に設定するしきい値(例えば数100mA)よりも低いしきい値(例えば数10mA)が設定されている。この場合、高電圧試験装置1は、試験対象物42が完全に絶縁破壊を起こす前に高電圧試験を終了する。このため、試験対象物42の事後解析が容易になる。
【0037】
高電圧試験装置1はさらに記録計25を備えている。記録計25は、検出回路22によって検出された電流値を時系列データとして記録する。
【0038】
電源21、検出回路22、切替回路23、制御部24、記録計25、及び中継コネクタ26は、システムラック11上に配置されている。
【0039】
定電流回路31は、高電圧用の定電流回路であり、閉回路61上において切替回路23と試験対象物42との間に接続されている。定電流回路31は、試験対象物42が絶縁破壊を起こした後に、試験対象物42又はゲート回路73等の周辺機器に流れる電流を一定電流値(例えば1~10mA)に制限する。この制限される電流値は、上記所定のしきい値以上の電流値に設定されている。また、試験対象物42が絶縁破壊を起こした場合、電源21から出力される高電圧の大部分は定電流回路31が負担する。
【0040】
定電流回路31の出力側は、高圧側配線を介して試験対象物42のドレイン電極Dに接続されている。高圧側配線の配線長を短くすべく、定電流回路31は可能な限り試験対象物42に近付けて配置するのが望ましい。図1に示した例では、定電流回路31は、温度又は湿度等に対する環境耐性が低いため、試験槽13の外部において試験槽13に近接した中継ボックス12内に配置されている。これにより、定電流回路31と試験対象物42との間の高圧側配線の配線長をより短くできる。なお、定電流回路31が高い環境耐性を有する場合には、試験槽13の内部に定電流回路31を配置しても良い。
【0041】
定電流回路31及び中継コネクタ32は、中継ボックス12内に配置されている。図1に示した例では、中継ボックス12は試験槽13に隣接し、システムラック11は中継ボックス12から離間しているが、この例に限定されない。システムラック11は、中継ボックス12に隣接していても良い。また、システムラック11を省略して、図1においてシステムラック11内に配置されている全ての要素を、中継ボックス12内に配置しても良い。
【0042】
また、高電圧試験装置1は、定電流回路31と試験対象物42との間に接続され、試験槽13内に配置された保護抵抗41を備えている。保護抵抗41の抵抗値は、数kΩ程度であり、背景技術に係る保護抵抗の抵抗値(数十~数百kΩ)よりも十分低い。定電流回路31の出力側は、コネクタ45及び保護抵抗41を介して試験対象部42に接続される。コネクタ45は、試験槽13の壁面に形成されており、試験槽13の内部配線と外部配線とを接続する。高電圧の印加によって定電流回路31と保護抵抗41との間の配線に蓄積された電荷が、試験対象物42が絶縁破壊を起こした瞬間に試験対象物42に向かって流れ始めたとしても、保護抵抗41の電流制限作用によって当該電荷の急激な移動を抑制できる。
【0043】
本実施形態に係る高電圧試験装置1は、複数の試験チャネルを有しており、複数の試験対象物42に対して高電圧試験を並行して実施可能である。電源21は、複数の試験チャネルに対し共通に設けられている。保護回路51、保護抵抗41、及び治具43は、複数の試験チャネルの各々に対応して個別に設けられている。ある試験チャネルにおいて検出回路22が上記しきい値超の電流値を検出した場合には、その試験チャネルにおいてのみ切替回路23によって電源21と試験対象物42との間が導通遮断され、他の試験チャネルでは切替回路23によって電源21と試験対象物42との間の導通接続が維持されて高電圧試験が継続される。
【0044】
なお、高電圧試験装置1は、一つの試験チャネルのみを有していても良い。この場合、切替回路23を省略し、検出回路22が上記しきい値超の電流値を検出した場合には、電源21からの高電圧の出力を停止することによって、試験対象物42への高電圧の印加を停止しても良い。
【0045】
本実施形態によれば、定電流回路31は、試験対象物42が絶縁破壊を起こした後に、試験対象物42又は周辺機器(ゲート回路73等)に流れる電流を一定電流値に制限する。また、電源21から出力される高電圧の大部分は、定電流回路31が負担する。また、検出回路22が上記しきい値超の大電流を検出した場合には、切替回路23が電源21と試験対象物42との間を導通遮断することによって、定電流回路31からの発熱を抑制できる。その結果、ヒューズ素子及び大抵抗値の保護抵抗を使用することなく、大電流又はサージ電流に起因する試験対象物42の焼損又は周辺機器の故障を回避することが可能となる。しかも、定電流回路31を切替回路23と試験対象物42との間に接続することによって、定電流回路31と試験対象物42との間の配線長を短くできる。これにより、高電圧の印加によって当該配線に蓄積される電荷量を抑制できるため、試験対象物42が絶縁破壊を起こした瞬間に当該電荷が試験対象物42に向かって流れたとしても、当該電荷に起因する試験対象物42の焼損又は周辺機器の故障を抑制することが可能となる。
【0046】
また、本実施形態によれば、検出回路22によって検出された電流値が上記しきい値以下である場合には電源21と試験対象物42との間を導通接続することによって高電圧試験を継続でき、検出回路22によって検出された電流値が上記しきい値超である場合には電源21と試験対象物42との間を導通遮断することによって定電流回路31からの発熱を抑制できる。
【0047】
また、本実施形態によれば、試験対象物42を試験槽13内に配置することにより、試験対象物42に環境ストレスを印加できる。その結果、パワーMOSFET等を試験対象物42とする高温逆バイアス試験等を実施することが可能となる。
【0048】
また、本実施形態によれば、高電圧の印加によって定電流回路31と保護抵抗41との間の配線に蓄積された電荷が、試験対象物42が絶縁破壊を起こした瞬間に試験対象物42に向かって流れ始めたとしても、保護抵抗41の電流制限作用によって当該電荷の急激な移動を抑制できる。従って、当該電荷に起因する試験対象物42の焼損又は周辺機器の故障を回避できる。しかも、配線に蓄積される電荷量は限られており、また、電源21から出力される高電圧の大部分は定電流回路31が負担するため、保護抵抗41として大抵抗値の抵抗素子を使用する必要がない。従って、大抵抗値の保護抵抗に起因して試験対象物42に印加すべき電圧値が低下すること及び試験装置の設計上の障害となることを回避できる。さらに、試験槽13内に配置することによって保護抵抗41を試験対象物42に近接して配置できるため、保護抵抗41と試験対象物42との間の配線に蓄積される電荷による影響を抑制することが可能となる。
【0049】
また、本実施形態によれば、定電流回路31を試験槽13外において試験槽13に近接して配置することにより、定電流回路31と試験対象物42との間の配線長を短くできる。従って、高電圧の印加によって当該配線に蓄積される電荷量を抑制できるため、試験対象物42が絶縁破壊を起こした瞬間に当該電荷が試験対象物42に向かって流れたとしても、当該電荷に起因する試験対象物42の焼損又は周辺機器の故障を抑制することが可能となる。
【符号の説明】
【0050】
1 高電圧試験装置
13 試験槽
21 電源
22 検出回路
23 切替回路
24 制御部
31 定電流回路
41 保護抵抗
42 試験対象物
図1
図2