(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024158074
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】変圧器の励磁突入電流抑制装置および変圧器の励磁突入電流抑制方法
(51)【国際特許分類】
H02J 3/00 20060101AFI20241031BHJP
H02H 9/02 20060101ALI20241031BHJP
【FI】
H02J3/00
H02H9/02 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023072935
(22)【出願日】2023-04-27
(71)【出願人】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002941
【氏名又は名称】弁理士法人ぱるも特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤原 孝洋
【テーマコード(参考)】
5G013
5G066
【Fターム(参考)】
5G013AA01
5G013AA04
5G013AA09
5G013BA01
5G066LA04
(57)【要約】
【課題】主変圧器を系統に接続する際に発生する励磁突入電流を、その接続が新規接続であっても、系統側から要求される上限値以下に抑制できる、変圧器の励磁突入電流抑制装置を提供する。
【解決手段】励磁突入電流抑制装置100は、主変圧器1の初期励磁のための励磁用変圧器2を主変圧器1と並列に備え、主変圧器1の初期励磁に先だって、励磁用変圧器2を系統10から初期励磁し、系統10から励磁用変圧器2を介して主変圧器1を低電圧側から初期励磁する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
主変圧器の励磁突入電流を抑制する励磁突入電流抑制装置において、
前記主変圧器の初期励磁のための励磁用変圧器を、前記主変圧器と並列に備え、
前記主変圧器の初期励磁に先だって、前記励磁用変圧器を系統から初期励磁し、
前記系統から前記励磁用変圧器を介して、前記主変圧器を低電圧側から初期励磁する、
変圧器の励磁突入電流抑制装置。
【請求項2】
前記主変圧器と前記励磁用変圧器とは、前記系統に接続される高電圧側接続点および低電圧側接続点で並列接続され、前記高電圧側接続点と前記主変圧器とは第1遮断器を介して接続され、前記高電圧側接続点と前記励磁用変圧器とは第2遮断器を介して接続され、前記低電圧側接続点と前記励磁用変圧器とは第3遮断器を介して接続される、
請求項1に記載の変圧器の励磁突入電流抑制装置。
【請求項3】
前記励磁用変圧器は、前記主変圧器より低容量であり、前記系統が許容する電流範囲で初期励磁されるように、容量およびインピーダンスが設定される、
請求項1または請求項2に記載の変圧器の励磁突入電流抑制装置。
【請求項4】
主変圧器の励磁突入電流を抑制する励磁突入電流抑制方法において、
前記主変圧器を系統から切り離して励磁用変圧器を前記系統に接続し、前記系統から電圧を印加して励磁用変圧器を初期励磁する第1ステップと、
次に、前記系統から前記励磁用変圧器を介して前記主変圧器に電圧を印加し、前記主変圧器を低電圧側から初期励磁する第2ステップと、
次に、前記主変圧器を前記系統に接続した後、前記励磁用変圧器を前記系統から切り離す第3ステップと、
を備える変圧器の励磁突入電流抑制方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、変圧器の励磁突入電流抑制装置および変圧器の励磁突入電流抑制方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
短絡容量が比較的小さい系統では、主変圧器を主回路に接続する際に発生する励磁突入電流によって瞬時の電圧低下あるいは高調波が発生し系統安定に影響する。
従来の励磁突入電流抑制装置では、負荷に接続された主変圧器を主回路に投入する前に主回路と同位相の補助励磁をする投入補助回路を備える(例えば、特許文献1参照)。
また、従来の別例による励磁突入電流抑制手法では、変圧器の運転停止後に運転再開する際、一次電圧よりも低い電圧で変圧器を励磁した後に運転再開する。その際、他系統の変圧器と一旦、並列運転状態にして他系統の変圧器を介して励磁する(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭59-11730号公報
【特許文献2】特開昭64-89915号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1記載の励磁突入電流抑制装置では、主変圧器を適切な位相角で励磁する必要があり、系統側から要求される電流上限値を満たすのが困難な場合があった。
また、上記特許文献2記載の手法では、他系統の変圧器と並列構成する必要があり、新設の発電所等において主変圧器を系統に新規接続する際には、適用できない。
【0005】
本願は、上記のような課題を解決するための技術を開示するものであり、主変圧器を系統に接続する際に発生する励磁突入電流を、その接続が新規接続であっても、系統側から要求される上限値以下に抑制できる、変圧器の励磁突入電流抑制装置および変圧器の励磁突入電流抑制方法を提供する事を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願に開示される変圧器の励磁突入電流抑制装置は、主変圧器の励磁突入電流を抑制するものであって、前記主変圧器の初期励磁のための励磁用変圧器を、前記主変圧器と並列に備え、前記主変圧器の初期励磁に先だって、前記励磁用変圧器を系統から初期励磁し、前記系統から前記励磁用変圧器を介して、前記主変圧器を低電圧側から初期励磁するものである。
【0007】
また、本願に開示される変圧器の励磁突入電流抑制方法は、主変圧器の励磁突入電流を抑制する方法であって、前記主変圧器を系統から切り離して励磁用変圧器を前記系統に接続し、前記系統から電圧を印加して前記励磁用変圧器を初期励磁する第1ステップと、次に、前記系統から前記励磁用変圧器を介して前記主変圧器に電圧を印加し、前記主変圧器を低電圧側から初期励磁する第2ステップと、次に、前記主変圧器を前記系統に接続した後、前記励磁用変圧器を前記系統から切り離す第3ステップと、を備えるものである。
【発明の効果】
【0008】
本願に開示される変圧器の励磁突入電流抑制装置は、主変圧器を系統に接続する際に発生する励磁突入電流を、その接続が新規接続であっても、系統側から要求される上限値以下に抑制できる。
【0009】
また、本願に開示される変圧器の励磁突入電流抑制方法は、主変圧器を系統に接続する際に発生する励磁突入電流を、その接続が新規接続であっても、系統側から要求される上限値以下に抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施の形態1による変圧器の励磁突入電流抑制装置の構成を示す図である。
【
図2】実施の形態1による変圧器の励磁突入電流抑制方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1による変圧器の励磁突入電流抑制装置の構成を示す図である。
図に示すように、励磁突入電流抑制装置100は、主変圧器1と、主変圧器1の初期励磁のための励磁用変圧器2とを備える。主変圧器1と励磁用変圧器2とは、系統10に接続される高電圧側接続点3Aおよび低電圧側接続点3Bで並列接続される。
主変圧器1は第1遮断器4を介して系統10に接続され、第1遮断器4よりも系統10側に高電圧側接続点3Aが位置する。即ち、高電圧側接続点3Aと主変圧器1とは第1遮断器4を介して接続される。
【0012】
また、高電圧側接続点3Aと励磁用変圧器2とは第2遮断器5を介して接続され、低電圧側接続点3Bと励磁用変圧器2とは第3遮断器6を介して接続される。
さらに主変圧器1には、遮断器7を介して負荷となる発電機8が接続され、遮断器7よりも主変圧器1側に低電圧側接続点3Bが位置する。この場合、遮断器7および発電機8は、励磁突入電流抑制装置100には含まれない。
【0013】
励磁用変圧器2は、主変圧器1より低容量であり、系統10が許容する電流範囲で初期励磁されるように、容量およびインピーダンスを含むパラメータが設定されている。
【0014】
このように構成される励磁突入電流抑制装置100の動作について、
図2に示すフローチャートに基づいて説明する。
この場合、励磁突入電流抑制装置100は新設の発電所等に設けられた装置であって、主変圧器1および励磁用変圧器2は、系統10に初めて接続する新規接続となる。即ち、励磁突入電流抑制装置100の動作は、主変圧器1を系統10に新規接続する際の、主変圧器1の励磁突入電流を抑制する動作である。また、主変圧器1を系統10に接続した後に、発電機8を主変圧器1に接続する。このため、以下の動作では、遮断器7は開放状態を保持する。
【0015】
まず、第1遮断器4および第3遮断器6を開放し、第2遮断器5を閉じる。これにより、主変圧器1を系統10から切り離して、励磁用変圧器2に系統10から電圧を印加して励磁用変圧器2を初期励磁する(ステップS1)。
次に、第3遮断器6を閉じると、第1遮断器4を開放し第2遮断器5および第3遮断器6を閉じた状態になる。これにより、矢印20に示す電流経路にて、系統10から励磁用変圧器2を介して主変圧器1に電圧を印加して、主変圧器1を低電圧側から初期励磁する(ステップS2)。
次に、第1遮断器4を閉じて主変圧器1を系統10に接続した後、第2遮断器5および第3遮断器6を開放して励磁用変圧器2を切り離す(ステップS3)。
【0016】
これにより、主変圧器1が系統10に新規接続される。
この後、上述したように、遮断器7を閉じて発電機8を、主変圧器1を介して系統10に接続する。
【0017】
以上のように、この実施の形態では、励磁突入電流抑制装置100が、主変圧器1の初期励磁のための励磁用変圧器2を、主変圧器1と並列に備えて、主変圧器1の初期励磁に先だって励磁用変圧器2を系統10から初期励磁する。そして、系統10から励磁用変圧器2を介して、主変圧器1を低電圧側から初期励磁する。このため、主変圧器1を系統10に新規接続する際にも、励磁突入電流を系統10側から要求される上限値以下に抑制できる。これにより、系統10の安定に貢献できる。
【0018】
また、主変圧器1と励磁用変圧器2とは、系統10に接続される高電圧側接続点3Aおよび低電圧側接続点3Bで並列接続される。高電圧側接続点3Aと主変圧器1とは第1遮断器4を介して接続され、高電圧側接続点3Aと励磁用変圧器2とは第2遮断器5を介して接続され、低電圧側接続点3Bと励磁用変圧器2とは第3遮断器6を介して接続される。このため、主変圧器1を系統10に新規接続する際にも、容易かつ高い信頼性で、励磁突入電流を系統10側から要求される上限値以下に抑制できる。
【0019】
また、励磁用変圧器2は、主変圧器1より低容量であり、系統10が許容する電流範囲で初期励磁されるように、容量およびインピーダンスが設定される。このため、励磁突入電流を系統10側から要求される上限値以下に確実に抑制できる。
【0020】
また、この実施の形態による励磁突入電流抑制方法では、主変圧器1を系統10から切り離して励磁用変圧器2を系統10に接続し、系統10から電圧を印加して励磁用変圧器2を初期励磁する第1ステップと、次に、系統10から励磁用変圧器2を介して主変圧器1に電圧を印加し、主変圧器1を低電圧側から初期励磁する第2ステップと、次に、主変圧器1を系統10に接続した後、励磁用変圧器2を切り離す第3ステップとを備える。このため、主変圧器1を系統10に新規接続する際にも、励磁突入電流を系統10側から要求される上限値以下に抑制できる。これにより、系統10の安定に貢献できる。
【0021】
なお、上記実施の形態では、主変圧器1および励磁用変圧器2は、系統10に初めて接続する新規接続の場合を説明したが、休止状態の主変圧器1を再接続して運転再開する際にも、同様の手法で励磁突入電流を抑制できる。
【0022】
本願は、例示的な実施の形態が記載されているが、実施の形態に記載された様々な特徴、態様、及び機能は特定の実施の形態の適用に限られるのではなく、単独で、または様々な組み合わせで実施の形態に適用可能である。
従って、例示されていない無数の変形例が、本願に開示される技術の範囲内において想定される。例えば、少なくとも1つの構成要素を変形する場合、追加する場合または省略する場合が含まれるものとする。
【符号の説明】
【0023】
1 主変圧器、2 励磁用変圧器、3A 高電圧側接続点、3B 低電圧側接続点、
4 第1遮断器、5 第2遮断器、6 第3遮断器、10 系統、
100 励磁突入電流抑制装置。