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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024158075
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】高圧タンクの製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 70/32 20060101AFI20241031BHJP
   F16J 12/00 20060101ALI20241031BHJP
   F17C 1/06 20060101ALI20241031BHJP
【FI】
B29C70/32
F16J12/00 A
F17C1/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023072936
(22)【出願日】2023-04-27
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】三浦 雄三
(72)【発明者】
【氏名】上田 将人
(72)【発明者】
【氏名】永松 優一
【テーマコード(参考)】
3E172
3J046
4F205
【Fターム(参考)】
3E172AA02
3E172AA05
3E172AB01
3E172BA01
3E172BB05
3E172BB12
3E172BB17
3E172BC04
3E172BD03
3E172DA36
3E172DA38
3J046AA01
3J046AA14
3J046BA03
3J046CA04
3J046DA05
3J046EA02
4F205AD16
4F205AG07
4F205AH55
4F205AR07
4F205HA02
4F205HA23
4F205HA37
4F205HA46
4F205HB01
4F205HB11
4F205HC02
4F205HL02
4F205HL14
4F205HT22
(57)【要約】
【課題】層別に巻き付け角の異なる低ヘリカル層を積層させる際に、低強度部の発生を抑制可能とする。
【解決手段】バインダー樹脂が含浸された繊維トウ30をライナー20に巻き付けられることで繊維強化プラスチック層が形成される。繊維強化プラスチック層には、低ヘリカル層が含まれる。この製造方法は、低ヘリカル層を複数層に亘って形成する際に、層別に繊維トウ30の巻き付け角θを異ならせる。さらにこの製造方法は、所定層の低ヘリカル層の巻き付け終点{L(s),Pe(k-1)}、かつ、次層の低ヘリカル層の巻き付け起点{L(s+1),Ps(1)}である、ライナー20上における巻き付け角の切替点位置を、低ヘリカル層の各層で異ならせる。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒部、及び、前記円筒部の中心軸方向両端に設けられる一対のドーム部を備えるライナーを形成する工程と、
前記ライナー上に繊維強化プラスチック層を形成する、積層工程と、
を含み、
前記積層工程において、バインダー樹脂が含浸された繊維トウを前記ライナーに巻き付けられることで前記繊維強化プラスチック層を形成し、
前記繊維強化プラスチック層には、前記ライナーの中心軸に対する巻き付け角が鋭角となる低角度ヘリカル巻きにて、前記繊維トウを複数周に亘って前記ライナーに巻き付けることで形成される、低ヘリカル層が含まれ、
前記繊維強化プラスチック層において、前記低ヘリカル層を複数層に亘って形成し、
前記低ヘリカル層を複数層に亘って形成する際に、層別に前記繊維トウの前記巻き付け角を異ならせ、
所定層の前記低ヘリカル層の巻き付け終点、かつ、次層の前記低ヘリカル層の巻き付け起点である、前記ライナー上における前記巻き付け角の切替点位置を、前記低ヘリカル層の各層で異ならせる、
高圧タンクの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書では、高圧タンクの製造方法が開示される。
【背景技術】
【0002】
高圧タンクは多層構造を備える。例えば特許文献1-3に開示されるように、高圧タンクは、ライナー及び繊維強化プラスチック層を備える。
【0003】
ライナーは高圧タンクの最内層部品である。ライナーは中心部品である円筒部と、円筒部の中心軸方向両端に接続される一対のドーム部を備える。ライナー内に水素ガス等の流体が封入される。
【0004】
ライナー上に繊維強化プラスチック層が積層される。繊維強化プラスチック層は、例えば繊維束である繊維トウがライナーに巻回されることで形成される。
【0005】
繊維トウのライナーへの巻回手段について、いわゆる低角度ヘリカル巻きが実行される。低角度ヘリカル巻きでは、繊維トウの巻き付け角が、ライナーの中心軸に対して平行に近い角度に設定される。低角度ヘリカル巻きにて巻回された、繊維強化プラスチックの層は、低ヘリカル層とも呼ばれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2020-122543号公報
【特許文献2】特開2019-195955号公報
【特許文献3】特開2012-149739号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、低ヘリカル層が複数層に亘って形成される場合がある。このような場合に、多層構造の低ヘリカル層は、繊維トウの巻き付け角が、各層で異なるように設定される。
【0008】
例えば図5に例示されるように、低ヘリカル層の所定層において、巻き付け角θ101にて繊維トウ102がライナー100に巻き付けられる。またその上層では、巻き付け角θ102(≠θ101)にて繊維トウ102がライナー100に巻き付けられる。さらにその上層では、巻き付け角θ103(≠θ102)にて繊維トウ102がライナー100に巻き付けられる。
【0009】
巻きつけ角の切り替わり時、繊維トウ102を巻きつけ角θ101からθ102に変更すると、図5上段の切替点P100において、繊維トウ102が図5上段の上方向に滑る。つまり切替点P100付近の繊維トウ102は本来巻きつけたい位置から外れる。同様にして、図5中段及び下段に示すように、他の層においても、切替点P100において繊維トウ102の滑り(ずれ)が生じる。他層に亘って切替点P100における繊維トウ102の滑りが生じることで、切替点P10の強度が、他の部位と比べて低くなるおそれがある。
【0010】
そこで本明細書では、層別に巻き付け角の異なる低ヘリカル層を積層させる際に、低強度部の発生を抑制可能な、高圧タンクの製造方法が開示される。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本明細書では、高圧タンクの製造方法が開示される。この製造方法は、ライナーを形成する工程、及び積層工程を含む。ライナーは、円筒部、及び、円筒部の中心軸方向両端に設けられる一対のドーム部を備える。積層工程では、ライナー上に繊維強化プラスチック層が形成される。積層工程において、バインダー樹脂が含浸された繊維トウがライナーに巻き付けられることで繊維強化プラスチック層が形成される。繊維強化プラスチック層には、低ヘリカル層が含まれる。ライナーの中心軸に対する巻き付け角が鋭角となる低角度ヘリカル巻きにて、繊維トウを複数周に亘ってライナーに巻き付けることで、低ヘリカル層が形成される。繊維強化プラスチック層において、低ヘリカル層が複数層に亘って形成される。この製造方法は、低ヘリカル層を複数層に亘って形成する際に、層別に繊維トウの巻き付け角を異ならせる。さらにこの製造方法は、所定層の低ヘリカル層の巻き付け終点、かつ、次層の低ヘリカル層の巻き付け起点である、ライナー上における巻き付け角の切替点位置を、低ヘリカル層の各層で異ならせる。
【0012】
上記構成によれば、繊維トウの巻き付け角の切替点位置が、低ヘリカル層の各層で異なる。切替点位置がライナー上で分散することで、周辺と比べて過度に繊維トウが薄くなる、低強度領域の発生が抑制可能となる。
【発明の効果】
【0013】
本明細書で開示される高圧タンクの製造方法によれば、層別に巻き付け角の異なる低ヘリカル層を積層させる際に、低強度部の発生が抑制可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本実施形態に係る製造方法で製造される、高圧タンクの構成を説明する正面図である。
図2】高圧タンクの製造工程のうち、フィラメントワインディング工程について説明する図である。
図3】低角度ヘリカル巻きにおけるサーキットの定義について説明する斜視図である。
図4】本実施形態に係る製造方法による、複数層の低ヘリカル層を積層する工程を説明する図である。
図5】従来技術に係る製造方法による、複数層の低ヘリカル層を積層する工程を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、実施形態に係る、高圧タンクの製造方法が図面を用いて説明される。以下で説明する形状、材料、個数、及び数値は、説明のための例示であって、高圧タンクの仕様に応じて適宜変更することができる。また以下ではすべての図面において同等の要素には同一の符号が付される。
【0016】
図1には、本実施形態に係る製造方法の製造対象である高圧タンク10が例示される。例えば高圧タンク10は、水素ガスが封入された水素タンクである。例えば高圧タンク10は、燃料電池車両(FCEV,Fuel Cell Electric Vehicle)に搭載される。
【0017】
本実施形態に係る、高圧タンク10の製造方法は、ライナー形成工程、フィラメントワインディング工程、及び検査工程を含む。ライナー形成工程では、複数の部品からライナー20が形成される。フィラメントワインディング工程では、ライナー20上に繊維強化プラスチックが積層される。フィラメントワインディング工程は積層工程とも呼ばれる。さらに検査工程では、高圧タンク10に対して、水圧検査や機密検査が行われる。
【0018】
高圧タンク10は、積層構造を備える。例えば高圧タンク10は、ライナー20及び繊維強化プラスチック層を備える。
【0019】
ライナー20は、水素ガスが封入される中空体である。ライナー20は円筒部22及びドーム部24,26を備える。円筒部22の中心軸C1方向両端に、一対のドーム部24,26が配置される。例えばライナー形成工程において、ドーム部24,26と円筒部22は溶着される。
【0020】
ライナー20にはガスバリア性が要求される。このため、ライナー20はナイロン系樹脂等の樹脂材料から構成される。また、ドーム部24,26の、中心軸C1に沿った両端には、口金25,27が取り付けられる。
【0021】
繊維強化プラスチック層は、ライナー20上に積層される。繊維強化プラスチック層は、繊維の束である繊維トウにバインダー樹脂が含浸された、いわゆるトウプレグ(トウプリプレグとも呼ばれる)が巻回されることで形成される。
【0022】
トウプレグの繊維は、繊維強化プラスチック(FRP)から構成される。例えば炭素繊維強化プラスチック(CFRP)や、ガラス繊維強化プラスチック(GFRP)が、トウプレグの繊維として用いられる。
【0023】
繊維強化プラスチック層は積層構造を備える。その積層構造に、複数層の低ヘリカル層が含まれる。低ヘリカル層は、低角度ヘリカル巻きでライナー20上に繊維トウ30を巻き付けることで形成される。
【0024】
低角度ヘリカル巻きとは、ライナー20の中心軸C1に対する巻き付け角θが鋭角となるような巻回態様を指す。例えば低角度ヘリカル巻きにおいては、巻き付け角θは10°以上80°以下の巻き付け角が設定される。
【0025】
図2には、フィラメントワインディング工程が例示される。この工程では、ライナー20に繊維トウ30が巻き付けられる。ライナー20は口金25を介してモータ50に結合される。モータ50によって、ライナー20は、中心軸C1周りに回転駆動される。
【0026】
さらにガイド52が、ライナー20の中心軸C1から径方向に離隔配置される。ガイド52は繊維トウ30のクリール(整経器具)の機能を備える。すなわちガイド52から、バインダー樹脂が含浸された繊維トウ30が供給され、ライナー20に巻き付けられる。
【0027】
例えばガイド52は中心軸C1に平行なX軸方向、ライナー20の径方向に平行なY軸方向、及び高さ方向であるZ軸方向に移動可能となっている。例えばガイド52はXYZステージ機構を備える。さらにガイド52は、供給する繊維トウ30を捩じることが可能となっている。例えばガイド52のフィーダ(図示せず)には、繊維トウ30のフィード軸周りにフィーダを回動可能なサーボモータが設けられる。
【0028】
ここで、繊維トウ30のフィード時の捩じり角φ、ガイド52の移動軸X,Y,Z、及びライナー20の回転角αの合計5つのパラメータを用いて、低角度ヘリカル巻きが制御される。例えば、フィラメントワインディング装置の巻き付け制御部(図示せず)は、ライナー20の回転速度とガイド52のX軸方向の移動速度を制御することで、巻き付け角θを一定にしたまま、ライナー20に繊維トウ30を巻き付ける。
【0029】
低角度ヘリカル巻きでは、低ヘリカル層を一層分形成するために、繊維トウ30がライナー20上に複数周に亘って巻回される。低角度ヘリカル巻きにおける巻き付け回数を示すパラメータとして「サーキット周回数」が用いられる。
【0030】
図3を参照して、低角度ヘリカル巻きでは、例えば円筒部22上の任意の点を巻き付け起点としたときに、一方の口金27周りに繊維トウ30を巻き回した後に再度円筒部22上を移動して、他方の口金25周りに繊維トウ30を巻き回す、という巻回ルートが採られる。
【0031】
巻回の周期性を考慮して、サーキット周回数は以下のように定められる。図3には、s層目の低ヘリカル層L(s)の、サーキットk周目の巻き付け起点Ps(k)、つまり巻き付け起点{L(s),Ps(k)}がライナー20上に位置決めされる。
【0032】
巻き付け起点{L(s),Ps(k)}から繊維トウ30が円筒部22上に巻き付けられる。更に繊維トウ30は、口金27を取り囲むようにして巻き付けられる。口金27を折り返し点として、繊維トウ30は再度円筒部22上に巻き付けられる。さらに繊維トウ30は他方の口金25を取り囲むようにして巻き付けられる。その後繊維トウ30は円筒部22上に巻き付けられる。
【0033】
この巻き付けプロセスにおいて、ガイド52(図2参照)は、中心軸C1方向に移動して、軸方向位置が口金27と一致したところで折り返す。更にガイド52は、中心軸C1方向に移動して、軸方向位置が口金25と一致したところでまた折り返す。そしてさらにガイド52は、巻き付け起点{L(s),Ps(k)}と軸方向位置が一致する。このときの繊維トウ30の位置が、k周目のサーキットの巻き付け終点{L(s),Pe(k)}となる。
【0034】
図3には、巻き付け起点と巻き付け終点の位置を示すコントロールラインCLが破線で示される。巻き付け起点{L(s),Ps(k)}を通って円筒部22の円周に沿って、ライナー20上にコントロールラインCLが図示される。口金25から円筒部22に戻った繊維トウ30と、コントロールラインCLとの交点が、サーキットk周目の巻き付け終点{L(s),Pe(k)}となる。またこのサーキットk周目の巻き付け終点{L(s),Pe(k)}は、次のサーキットk+1周目の巻き付け起点{L(s),Ps(k+1)}となる。
【0035】
本実施形態に係る高圧タンク10では、繊維強化プラスチック層として、複数層の低ヘリカル層が形成される。さらに複数層の低ヘリカル層は、送別に繊維トウ30の巻き付け角θが異なるように設定される。
【0036】
上述のように、巻き付け角θの切替点位置がどの層においても固定されている場合、切替点位置が、繊維トウ30の層が周囲と比べて薄くなる低強度部となるおそれがある。そこで本実施形態に係る高圧タンクの製造方法では、ライナー20上における巻き付け角θの切替点位置を、各層で異ならせるような巻き付けが実行される。
【0037】
<低ヘリカル層の形成工程>
図4には、本実施形態に係る高圧タンク10の製造工程の内、フィラメントワインディング工程が例示される。この工程は、ライナー20上に繊維強化プラスチック層を形成する工程であることから、積層工程とも呼ばれる。
【0038】
例えばフィラメントワインディング装置のコンピュータ(図示せず)は、巻き付け設定部を備える。巻き付け設定部は、低ヘリカル層の各層における、繊維トウ30の巻き付け経路を設定する。巻き付け経路の設定に当たり、下記に説明されるように、いわゆるライナー位相が意図的にずらされる。
【0039】
図4の上段には、1層目L(1)の低ヘリカル層をライナー20上に形成する工程が例示される。まず円筒部22上の任意の位置に、1層目かつサーキット1周目の巻き付け起点{L(1),Ps(1)}(図示せず)が設定される。
【0040】
巻き付け設定部には、複数層に亘る低ヘリカル層の、各層におけるサーキット周回数が設定される。巻き付け設定部は、1層目におけるサーキット周回数及び巻き付け角θ1に基づき、サーキット間のピッチを算出する。
【0041】
サーキット間のピッチは、サーキットの周回ごとの巻き付け起点Ps(k)の、コントロールラインCL上の離隔距離を指す。つまり、サーキットの周回ごとに、中心軸C1に沿って、1ピッチ分ずれながらライナー20上に繊維トウ30が巻き付けられる。
【0042】
サーキット間のピッチを定めるに当たって、巻き付け設定部は、サーキットの、仮の巻き付け終点を定める。例えば、設定されたサーキット周回数をn周として、仮の巻き付け終点{L(1),Pe(n)}は、コントロールラインCL上の、巻き付け起点{L(1),Ps(1)}と同一点となる。
【0043】
次に巻き付け設定部は、仮の巻き付け終点{L(1),Pe(n)}のサーキット1周前の巻き付け終点{L(1),Pe(n-1)}を、真の巻き付け終点に設定する。つまり第1層目の低ヘリカル層において、繊維トウ30の巻き付け終点は、サーキット1周目の巻き付け起点{L(1),Ps(1)}よりも、1ピッチ分周方向にずれた位置に設定される。
【0044】
1層目の低ヘリカル層の、サーキット最終周の巻き付け終点{L(1),Pe(n-1)}は、2層目の低ヘリカル層の、サーキット1周目の巻き付け起点{L(2),Ps(1)}となる。図4の上段及び中段に例示されるように、2層目の低ヘリカル層では、巻き付け角θ2は、1層目の低ヘリカル層の巻き付け角θ1とは異なる。
【0045】
2層目の低ヘリカル層の形成においても、巻き付け設定部は、1層目と同様にして、仮の巻き付け終点{L(2),Pe(n)}のサーキット1周前の巻き付け終点{L(2),Pe(n-1)}を、真の巻き付け終点に設定する。つまり第2層目の低ヘリカル層において、繊維トウ30の巻き付け終点は、サーキット2周目の巻き付け起点{L(2),Ps(1)}よりも、1ピッチ分周方向にずれた位置に設定される。
【0046】
2層目の低ヘリカル層の、サーキット最終周の巻き付け終点{L(2),Pe(n-1)}は、3層目の低ヘリカル層の、サーキット1周目の巻き付け起点{L(3),Ps(1)}となる。図4の中段及び下段に例示されるように、3層目の低ヘリカル層では、巻き付け角θ3は、2層目の低ヘリカル層の巻き付け角θ2とは異なる。
【0047】
3層目の低ヘリカル層の形成においても、1層目及び2層目と同様にして、巻き付け設定部は、仮の巻き付け終点{L(3),Pe(n)}のサーキット1周前の巻き付け終点{L(3),Pe(n-1)}を、真の巻き付け終点に設定する。つまり第3層目の低ヘリカル層において、繊維トウ30の巻き付け終点は、サーキット3周目の巻き付け起点{L(3),Ps(1)}よりも、1ピッチ分周方向にずれた位置に設定される。
【0048】
このようにして、所定層(例えばk層)の低ヘリカル層において、サーキット1周目の巻き付け起点{L(k),Ps(1)}と、サーキット最終周の巻き付け終点(L(k),Pe(n-1))のライナー20上の位置を異ならせるようにして、繊維トウ30の巻き付けが行われる。これにより、各層に亘って、巻き付け角θの切替点位置を異ならせることができる。ライナー20上の、巻き付け角θの切替点位置を異ならせることで、局所的に繊維トウ30が薄くなる低強度部の発生が抑制される。
【符号の説明】
【0049】
10 高圧タンク、20 ライナー、22 円筒部、24,26 ドーム部、30 繊維トウ。
図1
図2
図3
図4
図5